JP2004069730A - 光学補償シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シュリーレン欠陥などの光学欠陥のない、液晶性分子がハイブリッド配向した光学異方性層を有する光学補償シートを提供する。
【解決手段】透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償シートであって、該光学異方性層が水素結合性極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする光学補償シートである。
【選択図】 なし
【解決手段】透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償シートであって、該光学異方性層が水素結合性極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする光学補償シートである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な光学補償シートおよびその製造方法に関する。特に、ディスコティック液晶組成物からなる光学異方性層を有する光学補償シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学補償シートは画像着色解消や視野角拡大のために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来から光学補償シートとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶分子からなる光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。この光学異方性層は、通常、ディスコティック液晶分子を含む組成物を配向膜上に塗布し、配向温度よりも高い温度に加熱してディスコティック液晶分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。
【0003】
一般に、ディスコティック液晶分子は、大きな複屈折率を有するとともに、多様な配向形態がある。ディスコティック液晶分子を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。一方で、ディスコティック液晶分子では多様な配向形態が存在するため、所望の光学特性の発現には光学異方性層におけるディスコティック液晶分子の配向状態を厳密に制御する必要がある。
特に光学補償性能の発現には、ディスコティック液晶分子の傾斜角を支持体面からの距離に伴って変化するように配向させる、いわゆる「ハイブリッド配向」の状態を実現することが重要であり、光学補償シートの性能、すなわち、視野角拡大、視角変化によるコントラスト低下、階調反転、黒白反転、および色相変化等を決める最も重要な因子となる。
【0004】
このハイブリッド配向は、ディスコティック液晶分子の配向の方位角を規制する目的で支持体上に設けられる配向膜表面のプレチルト角と光学補償シートの最外面である空気側界面のプレチルト角との差を利用して実現されている。ディスコティック液晶分子を用いて光学補償シートを塗設・乾燥した後、ディスコティック液晶分子は、空気界面と配向膜界面の両方でそれぞれ安定なプレチルト角でモノドメイン配向する。その結果、膜の厚み方向に連続的に傾斜角が変化した配向状態が形成される。
ディスコティック液晶性分子は、空気界面では50°以上の高いプレチルト角を持つ性質がある。そのため、ハイブリッド配向を実現するには、配向膜界面のプレチルト角は、空気界面のプレチルト角よりも大幅に小さくしなくてはならない。特開平8−50206号公報に記載のポリビニルアルコールを用いた配向膜は、そのプレチルト角が0°に近いために目的のハイブリッド配向の実現に好適に用いられる。
【0005】
一方で所望の光学補償能を得るためには、空気界面側のプレチルト角を増大させる必要がある。通常の空気界面で得られるプレチルト角である50°を凌ぐ角度を得るために、特開平8−95030号公報にはセルロース部分エステル化物を添加する方法が記載されている。
【0006】
しかしながらこれらの方法では空気界面でディスコティック液晶分子を方位角方向で規制することができないため、方位角方向の異なる領域が生じ、その結果配向欠陥(シュリーレン欠陥)が生じ易すい状態を形成する。光学異方性層にシュリーレン欠陥が生じると、光散乱が起こり、光学特性を損なうという問題がある。
シュリーレン欠陥は、温度コントロールにより液晶状態を保持して充分な配向熟成時間を与えれば、ディスコティック液晶分子が欠陥を打ち消し合う様に配向の方位角方向を変動させて、時間とともに消失し、最終的にはモノドメイン化して無欠陥のハイブリッド配向が達成される。そのため、製造の効率化のために熟成時間を短縮すると、シュリーレン欠陥の発生が顕著になり易いという問題があり、モノドメイン化時間の短縮を実現させる技術の開発が必要であった。
特に所望の光学性能を得るために、前記セルロース部分エステル化物を添加して空気界面側のプレチルト角を大きくした場合には、欠陥消失速度が著しく遅延化して、製造の極端な非効率化を招いてしまう。そのため、表面配向欠陥の消失を阻害しない空気界面側のプレチルト角の制御技術の開発が強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シュリーレン欠陥などの光学欠陥のない液晶性分子がハイブリッド配向した光学異方性層を有する光学補償シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記光学補償シートを迅速に製造可能な製造方法を提供し、かつ、画像表示装置に適用した場合に、広い視野角拡大性能を有する新規な光学補償シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の発明によって解決される。
(1)透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償シートであり、該光学異方性層が水素結合性を有する極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする光学補償シート。
(2)前記光学異方性層が、下記式(1)で表され、且つ平均重合度が2〜30であるポリマーの少なくとも一種を含有することを特徴とする前記(1)に記載の光学補償シート。
【0009】
一般式(1)
【化1】
【0010】
上記一般式(1)中、Aは下記一般式(2)で表される繰り返し単位を表し、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表すが、繰り返し単位A及びBは、それぞれが定義された範囲から選択された2種以上の繰り返し単位の混合体でもよい。Xは少なくとも1つの炭素原子を有する1価の基を表し、Zは1価の基を表す。aおよびbはそれぞれ共重合比を表す質量百分率であり、aは1〜100質量%、bは0〜99質量%の範囲を表し、a+b=100質量%である。
【0011】
一般式(2)
【化2】
【0012】
上記一般式(2)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子または−L−Qで表される基を表す。Qは水素結合性を有する極性基を表し、Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、またはそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5)−、アルキレン基、アリーレン基(R4は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R5はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。)。
【0013】
(3)前記光学異方性層がハイブリッド配向したディスコティック液晶分子からなる光学異方性層であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の光学補償シート。
(4)前記一般式(2)中のQで表される水素結合性を有する極性基が、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、またはホスホリル基(−OPO3H)もしくはその塩のいずれかであることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の光学補償シート。
(5)前記一般式(1)で表されるポリマーが、前記一般式(2)で表される水素結合性を有する極性基として水酸基(−OH)およびカルボキシル基(−COOH)を同時に有することを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の光学補償シート。
(6)前記一般式(1)で表されるポリマーが0.2〜10mmol/gの極性基を含有していることを特徴とする上記(2)〜(5)に記載の光学補償シート。
【0014】
(7)前記一般式(1)で表されるポリマーのガラス転移温度が−20℃〜80℃であることを特徴とする上記(2)〜(6)に記載の光学補償シート。
(8)前記一般式(1)で表されるポリマーの平均重合度が2〜25であることを特徴とする上記(2)〜(7)に記載の光学補償シート。
(9)前記一般式(1)のXが、炭素数4以上の一価の有機基であることを特徴とする上記(2)〜(8)のいずれかに記載の光学補償シート。
(10)前記一般式(1)中、Xが炭素数4以上の一価の含フッ素アルキル基であることを特徴とする上記(2)〜(9)のいずれかに記載の光学補償シート。
(11)前記一般式(1)中、Xがアルキルチオ基であることを特徴とする上記(2)〜(10)のいずれかに記載の光学補償シート。
(12)前記一般式(1)中、Zが水素原子であることを特徴とする上記(2)〜(11)のいずれかに記載の光学補償シート。
(13) 前記光学異方性層が、ハイブリッド配向状態に固定されたディスコティック液晶性化合物を含有する上記(1)〜(12)のいずれかに記載の光学補償シート。
(14) 透明支持体上に、光学異方性層を有する光学補償シートの製造方法であって、平均重合度が30以下であり、且つ水素結合性を有する極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを用いて光学異方性層を形成する光学補償シートの製造方法。
(15) ディスコティック液晶性化合物を前記一般式(1)で表される化合物の存在下でハイブリッド配向させて光学異方性層を形成する工程を含む上記(14)に記載の光学補償シートの作製方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の光学補償シートは、透明支持体上に配向膜と光学異方性層とを有し、該光学異方性層が水素結合性を有する極性基(以下、「水素結合性極性基」という)を有するモノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマー(以下、「本発明のポリマー」という場合がある)を含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いる前記ポリマーの平均重合度は30以下であり、2〜30の任意の値を取り得る。好ましくは2〜25であり、特に好ましくは4〜20である。本発明のポリマーは一般の高分子化合物に比べて、この重合度が小さいことが特徴の一つであり、本明細書中では、これらを一般の高分子化合物と特に区別する目的で、「オリゴマー」または「テロマー」と表記することがある。
なお、本明細書において、「平均重合度」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により求めたポリマーの重量平均分子量(Mw)、該ポリマーの製造に用いたモノマーの分子量(Mi)、および各モノマーの質量百分率(xi)を用いて、下記の式より算出した値をいう。用いる溶媒としてテトラヒドロフランなどが挙げられる。
平均重合度(m)= Mw/Σ(Mi*xi/100)
【0017】
前記ポリマーが有する水素結合性極性基は、水素結合性を有する極性基であれば特に制限はなく、水酸基、カルボキシル基またはその塩、カルボン酸アミド、スルホ基、スルホ基の塩、スルホンアミド基、ホスホ基、ホスホ基の塩、ホスホンアミド、ウレイド基を例として挙げることができる。より好ましくは水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのは水酸基またはカルボキシル基である。
【0018】
前記ポリマー中に含有される水素結合性極性基の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、特に好ましくは0.1mmol/g〜8mmol/gである。
【0019】
前記ポリマーは単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、水素結合性極性基含有モノマーを2種以上含んでいてもよいし、水素結合性極性基含有モノマーとともに、水素結合性極性基を含有しないモノマーから誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0020】
本発明に使用可能な前記ポリマーは、上記の要件を満たすものであれば特に制限はない。好ましいポリマーは、下記式(1)で表され、且つその平均重合度が2〜30のポリマーである。
【0021】
一般式(1)
【化3】
【0022】
上記一般式(1)中、Aは下記一般式(2)で表される繰り返し単位を表し、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表すが、繰り返し単位A及びBは、それぞれが定義された範囲から選択された2種以上の繰り返し単位の混合体でもよい。Xは少なくとも1つの炭素原子を有する1価の基を表し、Zは1価の基を表す。aおよびbはそれぞれ共重合比を表す質量百分率であり、aは1〜100質量%、bは0〜99質量%の範囲を表し、a+b=100質量%である。
【0023】
一般式(2)
【化4】
【0024】
上記一般式(2)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子または−L−Qで表される基を表す。Qは水素結合性を有する極性基を表し、Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、またはそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5)−、アルキレン基、アリーレン基(R4は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R5はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。)。
【0025】
更に詳細に説明すると、前記一般式(1)中、Aは、上記一般式(2)で表される水素結合性極性基含有モノマー(以下「モノマーA」という場合がある)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位A」という場合がある)を表す。
一般式(2)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、または後述する−L−Qで表される基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子または−L−Qで表される基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。
なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
【0026】
Lは、単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、−PO(OR5)−、アルキレン基、アリーレン基またはこれらを組み合わせて形成される2価の連結基を表す。ここでR4は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R5はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。
Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、アルキレン基またはアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NR4−、アルキレン基またはアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。
Lが、アルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。
Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン、フェニレンエチレン、メチレンフェニレン基等が挙げられる。
Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては、先にR1〜R3における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
【0027】
以下にLの具体的構造を例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
Qは水素結合性を有する極性基であれば特に制限はない。好ましくは水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、カルボン酸のアミド(N無置換体またはN−モノ低級アルキル置換体、例えば−CONH2、−CONHCH3など)スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、スルホンアミド基(N無置換体またはN−モノ低級アルキル置換体、−SO2NH2、−SO2NHCH3など)、ホスホ基、ホスホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホンアミド(N無置換体またはN−モノ低級アルキル置換体、例えば−OP(=O)(NH2)2、−OP(=O)(NHCH3)2など)、ウレイド基(−NHCONH2)、N位が無置換またはモノ置換されたアミノ基(−NH2、−NHCH3)などである(ここで低級アルキル基はメチル基またはエチル基を表す)。
より好ましくは水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのは水酸基またはカルボキシル基である。
【0031】
ポリマー中に含まれる上記繰り返し単位Aは、1種単独でも構わないし、2種以上の繰り返し単位Aが同時に存在していてもよい。2種以上の繰り返し単位Aを有する場合は水酸基とカルボキシル基が同時に存在していることが特に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、Bは、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下「モノマーB」という場合がある)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位B」という場合がある)であり、下記に例示したモノマー群から独立かつ自由に組み合わせた共重合体として選択することが可能である。使用可能なモノマーには特に制限はなく、通常のラジカル重合反応が可能なものであれば、好適に用いることができる。
【0033】
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど。
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど。
【0034】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど)。
【0035】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど。
【0036】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど。
【0037】
(3e)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど。
【0038】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
(5)スチレンおよびその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど。
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど。
【0039】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど。
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
【0040】
上記モノマーBは、1種を単独で使用することもできるし2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0041】
前記一般式(1)中、Xは、ポリマー分子の一方の末端に結合した炭素数1以上、好ましくは炭素数4以上の1価の基を表し、この条件を満たすものであれば特に制限はない。代表的な構造として下記一般式(3)で表わすこともできる。
【0042】
【化7】
【0043】
式中、R6はアルキル基またはアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Yは2価の連結基を表す。
【0044】
更に詳細に説明すると、R6は、炭素数1〜30のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、イソノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベヘニル基、トリデカニル基など)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基など)を表し、これらは置換基を有していてもよい。該置換基としては、上記に示したアルキル基、アリール基の他に、アルコキシル基、アシル基、シアノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基などの一般的な置換基を挙げることができる。
【0045】
R6は炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルキル基(エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、パーフルオロオクチル基、2−パーフルオロオクチルエチル基、3−パーフルオロオクチルプロピル基、2−フェニルエチル基、2−(2−メトキシカルボニル)ブチル基など)、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基(フェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−ノニルフェニル基など)などが好ましい。特に好ましいのは、炭素数4〜16の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基であり、それらの中でもフッ素置換アルキル基が最も好ましい。
【0046】
Yは、2価の連結基であれば特に制限はない。前記一般式(1)の説明中、Lで例示した構造の連結基およびそれと同様の構造の連結基から自由に選択可能である。製造方法を考慮した場合、Yは構造中に硫黄原子を含むことが好ましく、Yが硫黄原子であるのが特に好ましい。従って、Xとしてはアルキルチオ基が好ましく、該アルキル基の好ましい炭素数や置換基は上記に示した通りである。
【0047】
前記一般式(1)中、Zは、1価の基であれば特に制限はない。好ましくは、水素原子または前記Xで表される基であり、特に好ましいのは水素原子の場合である。
【0048】
前記一般式(1)中、aおよびbはそれぞれ共重合比を表す質量百分率である。aは1〜100質量%、bは0〜99質量%の数値であるが、好ましくはaが5〜100質量%、bが0〜95質量%であり、より好ましくはaが10〜100質量%、bが0〜90質量%で、特に好ましくはaが80〜100質量%、bが0〜20質量%以上の場合である。
上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が繰り返し単位Aの含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、本発明のポリマー中に含有される水素結合性極性基の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、特に好ましくは0.1mmol/g〜8mmol/gである。
【0049】
前記一般式(1)で表されるポリマーの平均重合度は2〜30であり、好ましくは2〜25、特に好ましくは4〜20である。
また、前記一般式(1)で表されるポリマーのガラス転移温度は、−20℃〜80℃であるのが好ましい。
【0050】
本発明に使用可能な前記ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、またはアニオン重合等の重合方法により製造することができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。
【0051】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0053】
溶液重合では、有機溶媒を使用し、溶媒中で重合を進行させる。これらの有機溶媒は本発明の目的および効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から、上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0054】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0055】
本発明のポリマーを好ましい平均重合度で得るためには、重合反応時の条件制御が極めて有効であり、重合濃度の希薄化、重合開始剤の多量使用、重合温度の高温化などの具体的な手法で、望む平均重合度30以下のポリマーを得ることができる。
また、本発明のポリマーを合成する際には、連鎖移動剤により分子量を制御したラジカル重合法が特に有効であり、連鎖移動剤を用いることは、所望の官能基を、得られるポリマーの末端に的確に導入可能となる点でも、極めて好ましい。
【0056】
用いることのできる、連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタン等)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され、精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度であり、好ましくは0.05モル%〜30モル%、特に好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御すべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーとは別に添加することも可能である。
【0057】
以下に本発明で好ましく用いることのできる前記一般式(1)で表されるポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。ここで式中の数値はそれぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、mは重合度である。
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
本発明の光学補償シートは、例えば、液晶性化合物、本発明のポリマーおよびその他必要に応じて添加する各種化合物を含有する液晶組成物を配向膜上に塗布し、液晶性分子をハイブリッド配向させて光学異方性層を形成することによって作製することができる。本発明では、本発明のポリマーの存在下で前記液晶性化合物をハイブリッド配向させることにより、シュリーレン欠陥等の光学欠陥のない光学異方性層を迅速に作製することができる。
以下に本発明の光学補償シートの光学異方性層に用いられる前記ポリマー以外の材料について詳細に説明する。
【0063】
本発明において、光学異方性層に用いる液晶性化合物は、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物のいずれでもよく、また、高分子液晶および低分子液晶のいずれでもよい。さらに光学異方性層中で、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。本発明に用いる液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物が特に好ましい。
【0064】
好ましい棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体の液晶性化合物も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。棒状液晶性化合物についてはWO01/88574A1号50頁7行〜57頁末行に記載されている。
【0065】
本発明に好ましく用いられるディスコティック液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体;C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体;B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体;およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクル;などを挙げることができる。さらに、ディスコティック液晶性化合物としては、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造のものも含まれる。
【0066】
また、光学異方性層が最終的に形成された際に、液晶性化合物はもはや液晶性化合物である必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化して、液晶性を失ってもよい。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平827284号公報に記載があり、本発明にも適用することができる。
【0067】
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定する方法の一例として、ディスコティック液晶性化合物として、ディスコティックコアに置換基として重合性基が結合した液晶性化合物を用い、ハイブリッド配向させた後、前記液晶性化合物を重合させて固定する方法がある。但し、ディスコティックコアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる傾向がある。そこで、ディスコティックコアと重合性基との間に、連結基を導入することが好ましい。重合性基を有する好ましいディスコティック液晶性化合物としては、下記式(Ia)で表わされる化合物が挙げられる。
【0068】
一般式(Ia)
D(−L−P)n
式中、Dはディスコティックコアを表し、Lは二価の連結基を表し、Pは重合性基を表し、nは2〜12のいずれかの整数を表す。前記ディスコティック液晶性化合物の具体例としては、WO01/88574A1号公報の58頁6行〜65頁8行に記載されている。
【0069】
本発明では、二種類以上のディスコティック液晶性分子を併用して用いてもよい。また、例えば、上記の重合性ディスコティック液晶性分子と非重合性ディスコティック液晶性分子とを併用することも可能である。非重合性ディスコティック液晶性分子は、前述した重合性ディスコティック液晶性分子の重合性基(Q)を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性分子は、下記式(Ib)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0070】
一般式(Ib)
D(−L−R)n
式中、Dは円盤状コアを、Lは二価の連結基を、Rは水素原子またはアルキル基を表し、nは4〜12の整数である。
【0071】
本発明の光学異方性層には、前記液晶性化合物や本発明のポリマーの他に、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤の例としては、ハジキ防止剤、配向膜のプレチルト角を制御するための添加剤、重合開始剤、配向温度を低下させる添加剤(可塑剤)、重合性モノマー等である。
【0072】
本発明のポリマーおよび液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)とともに使用され、塗布時のハジキを防止するのに寄与する材料(ハジキ防止剤)としては、通常、ポリマーが用いられる。使用可能なポリマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。液晶性化合物、特にディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、ハジキ防止の目的で使用されるポリマーの添加量は、液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)に対して、一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0073】
前記光学異方性層には、配向膜のプレチルト角を制御する添加剤として、分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物を添加することができる。
極性基としては、R−OH、R−COOH、R−O−R、R−NH2、R−NH−R、R−SH、R−S−R、R−CO−R、R−COO−R、R−CONH−R、R−CONHCO−R、R−SO3H、R−SO3−R、R−SO2NH−R、R−SO2NHSO2−R、R−C=N−R、HO−P(−R)2、(HO−)2P−R、P(−R)3、HO−PO(−R)2、(HO−)2PO−R、PO(−R)3、R−NO2、R−CN、等が例として挙げられる。また、有機塩(例えば、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩)でもかまわない。
極性基で好ましい基は、R−OH、R−COOH、R−O−R、R−NH2、R−SO3H、HO−PO(−R)2、(HO−)2PO−R、PO(−R)3もしくは有機塩である。
【0074】
上記各Rは非極性基を表し、該非極性基としては、アルキル基〔好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基〕、アルケニル基[好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基]、アルキニル基[好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基]、アリール基[好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基]、シリル基[好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基]が例として挙げられる。
この非極性基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が例として挙げられる。
【0075】
上記添加剤を添加することで、配向膜のプレチルト角を変えることができるが、その時の変化量はラビング密度に関係がある。ラビング密度が高い配向膜とラビング密度の低い配向膜を比較すれば、ラビング密度の低い配向膜の方が、同じ添加量であっても、プレチルト角は変わりやすい。従って、添加剤の好ましい添加量は、配向膜のラビング密度および所望のプレチルト角の大きさ等によって変わるが、液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物)に対して、0.0001質量%〜30質量%が好ましく、0.001質量%〜20質量%がより好ましく、0.005質量%〜10質量%が最も好ましい。
【0076】
以下に、配向膜のプレチルト角を制御するのに寄与する添加剤の具体例を挙げるが、本発明に用いられる添加剤は以下の具体例に限定されるものではない。
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
【化14】
【0080】
前記光学異方性層において、液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)はモノドメイン配向しているのが好ましく、モノドメイン配向状態に固定されていることがより好ましい。さらに、重合反応により固定されているのが特に好ましい。
重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ〜50J/cm2であることが好ましく、100mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0081】
液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)とともに使用する重合性モノマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0082】
光学異方性層の形成に用いられる液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0083】
光学異方性層は、上記溶媒を用いて液晶組成物の塗布液を調製し、配向膜上に塗布し、液晶性分子(好ましくはディスコティック液晶性分子)を配向処理することで形成することができる。塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0084】
液晶組成物から形成される光学的異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0085】
前記液晶組成物は配向膜上に塗布されるのが好ましい。液晶性分子(好ましくはディスコティック液晶性分子)は配向膜との界面では配向膜のプレチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のプレチルト角で配向することとなる。従って、塗布後、液晶性分子を均一配向(モノドメイン配向)させることで、空気界面から配向膜界面に向けて、つまり光学異方性層の深さ方向にディスコティック液晶性分子の傾斜角(ディスコティック液晶性分子の円盤面の法線と透明支持体の配向膜を設ける面の法線とがなす角)が連続的に変化するハイブリッド配向を実現することができる。液晶性化合物をハイブリッド配向させた光学異方性層を有する、本発明の光学補償シートを用いることにより、視野角を拡大させ、並びに視角変化に対するコントラスト低下、階調または黒白反転、および色相変化等を防止することができる。
【0086】
ディスコティック液晶性分子の場合、空気界面のプレチルト角は50°以上であり、光学補償シートとして好ましい性能を発揮できる状態のハイブリッド配向を実現するために、本発明では、配向膜のプレチルト角を3°〜30°とする。この配向膜のプレチルト角は前記した方法(配向膜のラビング密度、添加剤等)により制御することで、本発明の光学補償シートを適用する液晶表示装置の表示モードに応じて、好ましいハイブリッド配向状態を実現することができる。
【0087】
プレチルト角とは、ディスコティック液晶性分子の円盤面の法線と膜面の法線がなす角度を指し、本発明では、配向膜のプレチルト角は3°〜30°、空気界面側のプレチルト角は20〜80°である。
プレチルト角は小さすぎると、ディスコティック液晶性分子のモノドメイン配向に要する時間が長くなるため大きい方が好ましいが、プレチルト角が大きくなりすぎると、光学補償シートとして好ましい光学性能が得られなくなるため逆に好ましくない。したがって、モノドメイン化時間の短縮と光学補償シートとしての好ましい光学性能の両立の観点から、好ましい配向膜のプレチルト角は5°〜30°、更に好ましくは7°〜20°、特に好ましいのは9°〜20°である。また、好ましい空気界面側のプレチルト角は30〜75°、更に好ましくは35〜70°、特に好ましいのは40〜70°である。
配向膜側のプレチルト角は、後述する配向膜のラビング密度を変える方法、あるいは前述の配向膜プレチルト角制御剤の添加などにより、数度〜数十度の範囲で制御可能である。
【0088】
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
光学異方性層の液晶性分子に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点から、ポリマー層をラビング処理することによって形成された配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では上記した様に、液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0089】
配向膜に用いられるポリマーは、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明の光学補償フィルム用の配向膜ではポリビニルアルコール及びその誘導体が好ましく用いられる。特に好ましくは、疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向膜についてはWO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。
【0090】
配向膜のラビング密度を変える方法としては、液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は式(A)で定量化されている。
式(A) L=N×l×(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
【0091】
本発明の光学補償シートの一態様は、透明支持体上に前記光学異方性層を形成してなる態様である。前記透明支持体としては、主に光学的等方性のポリマーフィルムが用いられる。本発明では、支持体の光透過率が80%以上であることが好ましい。
材料については特に制限はない。ポリマーの具体例として、セルロースエステル類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフィルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。脂肪酸の炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであってもWO00/26705号明細書に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0092】
ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0093】
セルロースエステルでは、セルロースの2位、3位、6位の水酸基が全体の置換度の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースの6位水酸基の置換度が、2位、3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が30%以上40%以下でアシル基で置換されていることが好ましく、さらには31%以上、特に32%以上であることが好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基(例、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、ベンゾイル、アクリロイル)で置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求める事ができる。6位水酸基の置換度が高いセルロースエステルは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0094】
透明支持体として用いるセルロースエステルフィルムの厚み方向のレターデーション値は、厚み方向の複屈折率にフィルムの厚みを乗じた値である。具体的には、測定光の入射方向をフィルム膜面に対して鉛直方向として、遅相軸を基準とする面内レターデーションの測定結果と、入射方向をフィルム膜面に対する鉛直方向に対して傾斜させた測定結果から外挿して求める。測定は、エリプソメーター(例えば、M−150:日本分光(株)製)を用いて実施できる。厚み方向のレターデーション値(Rth)と面内レターデーション値(Re)とは、それぞれ下記式(1)および(2)に従って算出する。
式(1)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(2)
Re=(nx−ny)×d
式中、nxはフィルム平面内のx方向の屈折率であり、nyはフィルム平面内のy方向の屈折率であり、nzはフィルム面に垂直な方向の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚み(nm)である。
【0095】
本発明では、ポリマー基材のReレターデーション値を20〜70nmの範囲に、そして、Rthレターデーション値を70〜400nmの範囲に調節することが好ましい。液晶表示装置に二枚の光学的異方性層を使用する場合、基材のRthレターデーション値は70〜250nmの範囲にあることが好ましい。また、液晶表示装置に一枚の光学的異方性層を使用する場合、基材のRthレターデーション値は150〜400nmの範囲にあることが好ましい。
なお、基材フィルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00028〜0.020の範囲にあることが好ましい。また、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.001〜0.04の範囲にあることが好ましい。
【0096】
透明支持体として用いるポリマーフィルム、特にセルロースアセテートフィルムのレターデーションを調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0097】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0098】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤についてはWO01/88574A1、WO00/2619A1、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、特願2002−70009号明細書等に記載されている。
【0099】
セルロースアセテートフィルムは、調製されたセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0100】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて、ドープを2層以上流延することによりフィルム化することもできる。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
複数のセルロースアセテート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて、それらを積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによりフィルム化してもよい。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、高粘度および低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルムの流延方法を用いてもよい。
【0101】
セルロースアセテートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%の範囲にあることが好ましい。本発明のセルロースアセテートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0102】
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0103】
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0104】
セルロースアセテートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
【0105】
セルロースアセテートフィルムの表面処理は、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60〜75mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
アルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの濃度は、0.1〜3.0mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0106】
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアセテートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアセテートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
【0107】
セルロースアセテートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0108】
本発明の光学補償シートは、偏光膜と組合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型液晶表示装置に、偏光膜と組合わせて適用することにより、視野角の拡大に寄与する。
以下に、本発明の光学補償シートを利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0109】
本発明の光学補償シートと偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。本発明の光学補償シートを利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大し得る楕円偏光板を提供することができる。
前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0110】
偏光膜は前記光学補償シートの光学異方性層側に積層する。偏光膜の光学補償シートを積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0111】
本発明の光学補償シートを利用することにより、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号明細書および国際公開WO96/37804号公報に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0112】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用光学補償シートを作製することができる。本発明の光学補償シートは、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードなど、種々のモードで駆動される液晶セルと組合わせて液晶表示装置に適用できる。本発明の光学補償シートは、TN(Twisted Nematic)モードの液晶表示装置において特に効果がある。
【0113】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。ディスコティック液晶性分子は多様な配向形態を有するので、これを用いると液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。
【0114】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[合成例1 化合物例P−7の合成]
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた300mLのフラスコに、メチルエチルケトン120g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル25g(0.19モル)、メタクリル酸ン−ブチル75g(0.53モル)、n−ドデシルメルカプタン8.2g(36mmol)を入れ、窒素気流下、攪拌しながらフラスコ内温を80℃まで加熱した。次に、メチルエチルケトン20gに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を加え、そのまま12時間攪拌させた後室温まで冷却しメタクリル酸2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸n−ブチル共重合オリゴマー溶液247.3gを得た。得られた溶液の固形分含量は43.3質量%、平均重合度は18であった。
【0115】
[合成例2 化合物例P−15の合成]
攪拌装置、モノマー供給槽、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた1000mLの三口フラスコに、メチルエチルケトン38g、アクリル酸1.6g(22mmol)を入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら内温を75℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル4.4g、メタクリル酸ブチル103.8g(0.73モル)、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル47.9g(0.368モル)、アクリル酸6.4g(89mmol)、2−パーフルオロオクチルエチルメルカプタン30.2g(61mmol)をメチルエチルケトン82gに溶かした溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.8gをメチルエチルケトン8.3gに溶かした溶液を加えて4時間攪拌を続けて重合を完了させ、メチルエチルケトン107gを加えて希釈し、メタクリル酸ブチル−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル−アクリル酸共重オリゴマー(化合物例P−15)溶液426.2gを得た。該溶液の固形分濃度は44.2質量%、平均重合度は20であった。
【0116】
[実施例1]
(透明支持体の作製)
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して、セルロースアセテート溶液(ドープ)を調製した。
【0117】
セルロースアセテート溶液組成
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート 6.5質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 5.2質量部
下記のレターデーション上昇剤(1) 0.1質量部
下記のレターデーション上昇剤(2) 0.2質量部
メチレンクロライド 310.25質量部
メタノール 54.75質量部
1−ブタノール 10.95質量部
【0118】
レターデーション上昇剤(1)
【化15】
【0119】
レターデーション上昇剤(2)
【化16】
【0120】
得られたドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の領域で、幅方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、120℃を越える領域で機械方向の延伸率が実質0%、(剥ぎ取り時に機械方向に4%延伸することを考慮して)幅方向の延伸率と機械方向の延伸率との比が0.75となるように調整して、厚さ100μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。作製したフィルムのレターデーションを波長632.8nmで測定したところ、厚み方向のレターデーションが40nm、面内のレターデーションが4nmであった。作製したセルロースアセテートフィルムを透明支持体として用いた。
【0121】
(第1下塗り層の形成)
透明支持体の上に、下記の組成の塗布液を28mL/m2塗布し、乾燥して、第1下塗り層を形成した。
【0122】
第1下塗り層塗布液組成
ゼラチン 5.42質量部
ホルムアルデヒド 1.36質量部
サリチル酸 1.60質量部
アセトン 391質量部
メタノール 158質量部
メチレンクロライド 406質量部
水 12質量部
【0123】
(第2下塗り層の形成)
第1下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を7mL/m2塗布し、乾燥して、第2下塗り層を形成した。
【0124】
第2下塗り層塗布液組成
下記のアニオン性ポリマー 0.79質量部
クエン酸モノエチルエステル 10.1質量部
アセトン 200質量部
メタノール 877質量部
水 40.5質量部
【0125】
アニオン性ポリマー
【化17】
【0126】
(バック層の形成)
透明支持体の反対側の面に、下記の組成の塗布液を25mL/m2塗布し、乾燥して、バック層を形成した。
【0127】
バック層塗布液組成
酢化度55%のセルロースジアセテート 6.56質量部
シリカ系マット剤(平均粒子サイズ:1μm) 0.65質量部
アセトン 679質量部
メタノール 104質量部
【0128】
(配向膜の形成)
第2下塗り層の上に、長鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(クラエポバールMP−203:(株)クラレ)の水溶液を塗布し、60℃の温風で90秒間乾燥した後、ラビング処理を行い配向膜層を形成した。得られた配向膜層の膜厚は0.5μmであった。
配向膜のラビング方向は、透明支持体の流延方向と平行であった。
【0129】
(ラビング)
下記条件でラビングを実施し、以下で使用するラビング配向膜を作製した。
(ラビング条件)
ラビング回数 1回
ラビングローラーの接触長 0.3mm
ローラーの半径 60mm
ローラーの回転数 1000rpm
ステージ移動速度 7mm/s
この条件下で作製した配向膜のプレチルト角は2.5°であった。
【0130】
(光学異方性層の形成)
前記で作製したラビング配向膜上に、下記の組成を有する光学異方性層塗布液を、#4のワイヤーバーを用いて塗布した。形成した光学異方性層の厚さは1.74μmであった。
【0131】
光学異方性層塗布液
本発明のポリマー P−5 2.75質量部
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 100質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製 3.3質量部
ジエチルチオキサントン 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0132】
ディスコティック液晶性化合物(1)
【化18】
【0133】
[光学補償シートの評価]
(傾斜角の測定)
上記の光学異方性層を塗布したフィルムを、130℃の恒温槽中に入れ、約15秒間かけて110℃まで加熱し、そのまま120秒間保持した後、次いで約15秒間で80℃まで冷却した。同温度に保持したまま400mJの紫外線を照射して光学異方性層の配向状態を固定した。室温まで放冷して、光学補償シートを作製した。形成した光学異方性層の厚さは1.90μmであった。得られたシートの光学異方性層における配向膜近傍の液晶分子傾斜角、空気界面近傍の傾斜角、および平均傾斜角は、エリプソメーター(APE−100、島津製作所(株)製)を用いて、632.8nmの波長を使用して観察角度を変えてレタデーションを測定し、屈折率楕円体モデルと仮想して、Designing Concepts of the Discotic Negative Compensation Films SID98 DIGESTに記載されている手法で算出した。
(配向完了時間の測定)
上記の光学異方性層を塗布したフィルムを115℃に加熱し、偏光顕微鏡(OPTIPHOTO2、Nikon(株)製)観察下で温度を保持して配向熟成を進行させ、加熱開始から配向欠陥が消失してモノドメイン配向になるのに要した時間を測定した。結果を第1表に示す。
【0134】
[実施例2〜15、比較例1〜4]
本発明のポリマーP−5に代えて表1に記載の様に本発明のポリマーの種類と添加量を変えて用いた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムの実施例2〜実施例15を作製した。
また、本発明のポリマーP−5に代えて表1に記載の様に本発明のポリマー以外のポリマーを用いた以外は、実施例1と全く同様にして光学補償フィルムの比較例1〜比較例5を作製した。これらの光学補償フィルムの光学性能の評価結果も表1に併せて記載した。
【0135】
【表1】
【0136】
比較例に使用したポリマーの構造
K−1:セルロースブチレートアセテート(質量平均分子量 Mw=36000)
K−2:ポリブチルメタクリレート(質量平均分子量 Mw=34000)
K−3:2−ヒドロキシエチルメタクリレート25質量部とn−ブチルメタクリレート80質量部の共重合体(質量平均分子量 Mw=24000)
【0137】
上記第1表に示した結果から、光学異方性層の形成において、本発明のポリマーを含有する実施例1〜15の光学異方性層では、いずれの場合においても、配向の迅速性を損なうことなく高い界面配向角を有したハイブリッド配向を比較的低温状態から実現できていることが分かる。
一方で、本発明のポリマーを含有しない比較例1では配向速度こそ速いものの、空気界面の配向角は極端に低く、充分なハイブリッド配向にはならなかった。また、本発明外のポリマー(K−1〜K−3)を用いて作製した光学異方性層を有する比較例2〜5では、均一な面状を得られない(比較例4)か、または比較的大きな界面配向角を発現できてはいても、配向速度が著しく遅延化する結果となった(比較例2、3および5)。
これらの結果から、本発明のポリマーを用いた光学異方性層は、光学補償フィルムに必要な大きな界面配向角を形成し、かつ、液晶性分子の配向速度の遅延化を引き起こさないことがわかる。
【0138】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明のポリマーを光学異方性層に含有させることにより、液晶性分子の空気界面のプレチルト角を制御可能となり、液晶性分子の配向のモノドメイン化時間を短縮して、効率よく光学補償シートを作製することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な光学補償シートおよびその製造方法に関する。特に、ディスコティック液晶組成物からなる光学異方性層を有する光学補償シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学補償シートは画像着色解消や視野角拡大のために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来から光学補償シートとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶分子からなる光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。この光学異方性層は、通常、ディスコティック液晶分子を含む組成物を配向膜上に塗布し、配向温度よりも高い温度に加熱してディスコティック液晶分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。
【0003】
一般に、ディスコティック液晶分子は、大きな複屈折率を有するとともに、多様な配向形態がある。ディスコティック液晶分子を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。一方で、ディスコティック液晶分子では多様な配向形態が存在するため、所望の光学特性の発現には光学異方性層におけるディスコティック液晶分子の配向状態を厳密に制御する必要がある。
特に光学補償性能の発現には、ディスコティック液晶分子の傾斜角を支持体面からの距離に伴って変化するように配向させる、いわゆる「ハイブリッド配向」の状態を実現することが重要であり、光学補償シートの性能、すなわち、視野角拡大、視角変化によるコントラスト低下、階調反転、黒白反転、および色相変化等を決める最も重要な因子となる。
【0004】
このハイブリッド配向は、ディスコティック液晶分子の配向の方位角を規制する目的で支持体上に設けられる配向膜表面のプレチルト角と光学補償シートの最外面である空気側界面のプレチルト角との差を利用して実現されている。ディスコティック液晶分子を用いて光学補償シートを塗設・乾燥した後、ディスコティック液晶分子は、空気界面と配向膜界面の両方でそれぞれ安定なプレチルト角でモノドメイン配向する。その結果、膜の厚み方向に連続的に傾斜角が変化した配向状態が形成される。
ディスコティック液晶性分子は、空気界面では50°以上の高いプレチルト角を持つ性質がある。そのため、ハイブリッド配向を実現するには、配向膜界面のプレチルト角は、空気界面のプレチルト角よりも大幅に小さくしなくてはならない。特開平8−50206号公報に記載のポリビニルアルコールを用いた配向膜は、そのプレチルト角が0°に近いために目的のハイブリッド配向の実現に好適に用いられる。
【0005】
一方で所望の光学補償能を得るためには、空気界面側のプレチルト角を増大させる必要がある。通常の空気界面で得られるプレチルト角である50°を凌ぐ角度を得るために、特開平8−95030号公報にはセルロース部分エステル化物を添加する方法が記載されている。
【0006】
しかしながらこれらの方法では空気界面でディスコティック液晶分子を方位角方向で規制することができないため、方位角方向の異なる領域が生じ、その結果配向欠陥(シュリーレン欠陥)が生じ易すい状態を形成する。光学異方性層にシュリーレン欠陥が生じると、光散乱が起こり、光学特性を損なうという問題がある。
シュリーレン欠陥は、温度コントロールにより液晶状態を保持して充分な配向熟成時間を与えれば、ディスコティック液晶分子が欠陥を打ち消し合う様に配向の方位角方向を変動させて、時間とともに消失し、最終的にはモノドメイン化して無欠陥のハイブリッド配向が達成される。そのため、製造の効率化のために熟成時間を短縮すると、シュリーレン欠陥の発生が顕著になり易いという問題があり、モノドメイン化時間の短縮を実現させる技術の開発が必要であった。
特に所望の光学性能を得るために、前記セルロース部分エステル化物を添加して空気界面側のプレチルト角を大きくした場合には、欠陥消失速度が著しく遅延化して、製造の極端な非効率化を招いてしまう。そのため、表面配向欠陥の消失を阻害しない空気界面側のプレチルト角の制御技術の開発が強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シュリーレン欠陥などの光学欠陥のない液晶性分子がハイブリッド配向した光学異方性層を有する光学補償シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記光学補償シートを迅速に製造可能な製造方法を提供し、かつ、画像表示装置に適用した場合に、広い視野角拡大性能を有する新規な光学補償シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の発明によって解決される。
(1)透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償シートであり、該光学異方性層が水素結合性を有する極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする光学補償シート。
(2)前記光学異方性層が、下記式(1)で表され、且つ平均重合度が2〜30であるポリマーの少なくとも一種を含有することを特徴とする前記(1)に記載の光学補償シート。
【0009】
一般式(1)
【化1】
【0010】
上記一般式(1)中、Aは下記一般式(2)で表される繰り返し単位を表し、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表すが、繰り返し単位A及びBは、それぞれが定義された範囲から選択された2種以上の繰り返し単位の混合体でもよい。Xは少なくとも1つの炭素原子を有する1価の基を表し、Zは1価の基を表す。aおよびbはそれぞれ共重合比を表す質量百分率であり、aは1〜100質量%、bは0〜99質量%の範囲を表し、a+b=100質量%である。
【0011】
一般式(2)
【化2】
【0012】
上記一般式(2)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子または−L−Qで表される基を表す。Qは水素結合性を有する極性基を表し、Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、またはそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5)−、アルキレン基、アリーレン基(R4は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R5はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。)。
【0013】
(3)前記光学異方性層がハイブリッド配向したディスコティック液晶分子からなる光学異方性層であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の光学補償シート。
(4)前記一般式(2)中のQで表される水素結合性を有する極性基が、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、またはホスホリル基(−OPO3H)もしくはその塩のいずれかであることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の光学補償シート。
(5)前記一般式(1)で表されるポリマーが、前記一般式(2)で表される水素結合性を有する極性基として水酸基(−OH)およびカルボキシル基(−COOH)を同時に有することを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の光学補償シート。
(6)前記一般式(1)で表されるポリマーが0.2〜10mmol/gの極性基を含有していることを特徴とする上記(2)〜(5)に記載の光学補償シート。
【0014】
(7)前記一般式(1)で表されるポリマーのガラス転移温度が−20℃〜80℃であることを特徴とする上記(2)〜(6)に記載の光学補償シート。
(8)前記一般式(1)で表されるポリマーの平均重合度が2〜25であることを特徴とする上記(2)〜(7)に記載の光学補償シート。
(9)前記一般式(1)のXが、炭素数4以上の一価の有機基であることを特徴とする上記(2)〜(8)のいずれかに記載の光学補償シート。
(10)前記一般式(1)中、Xが炭素数4以上の一価の含フッ素アルキル基であることを特徴とする上記(2)〜(9)のいずれかに記載の光学補償シート。
(11)前記一般式(1)中、Xがアルキルチオ基であることを特徴とする上記(2)〜(10)のいずれかに記載の光学補償シート。
(12)前記一般式(1)中、Zが水素原子であることを特徴とする上記(2)〜(11)のいずれかに記載の光学補償シート。
(13) 前記光学異方性層が、ハイブリッド配向状態に固定されたディスコティック液晶性化合物を含有する上記(1)〜(12)のいずれかに記載の光学補償シート。
(14) 透明支持体上に、光学異方性層を有する光学補償シートの製造方法であって、平均重合度が30以下であり、且つ水素結合性を有する極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを用いて光学異方性層を形成する光学補償シートの製造方法。
(15) ディスコティック液晶性化合物を前記一般式(1)で表される化合物の存在下でハイブリッド配向させて光学異方性層を形成する工程を含む上記(14)に記載の光学補償シートの作製方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の光学補償シートは、透明支持体上に配向膜と光学異方性層とを有し、該光学異方性層が水素結合性を有する極性基(以下、「水素結合性極性基」という)を有するモノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマー(以下、「本発明のポリマー」という場合がある)を含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いる前記ポリマーの平均重合度は30以下であり、2〜30の任意の値を取り得る。好ましくは2〜25であり、特に好ましくは4〜20である。本発明のポリマーは一般の高分子化合物に比べて、この重合度が小さいことが特徴の一つであり、本明細書中では、これらを一般の高分子化合物と特に区別する目的で、「オリゴマー」または「テロマー」と表記することがある。
なお、本明細書において、「平均重合度」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により求めたポリマーの重量平均分子量(Mw)、該ポリマーの製造に用いたモノマーの分子量(Mi)、および各モノマーの質量百分率(xi)を用いて、下記の式より算出した値をいう。用いる溶媒としてテトラヒドロフランなどが挙げられる。
平均重合度(m)= Mw/Σ(Mi*xi/100)
【0017】
前記ポリマーが有する水素結合性極性基は、水素結合性を有する極性基であれば特に制限はなく、水酸基、カルボキシル基またはその塩、カルボン酸アミド、スルホ基、スルホ基の塩、スルホンアミド基、ホスホ基、ホスホ基の塩、ホスホンアミド、ウレイド基を例として挙げることができる。より好ましくは水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのは水酸基またはカルボキシル基である。
【0018】
前記ポリマー中に含有される水素結合性極性基の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、特に好ましくは0.1mmol/g〜8mmol/gである。
【0019】
前記ポリマーは単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、水素結合性極性基含有モノマーを2種以上含んでいてもよいし、水素結合性極性基含有モノマーとともに、水素結合性極性基を含有しないモノマーから誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0020】
本発明に使用可能な前記ポリマーは、上記の要件を満たすものであれば特に制限はない。好ましいポリマーは、下記式(1)で表され、且つその平均重合度が2〜30のポリマーである。
【0021】
一般式(1)
【化3】
【0022】
上記一般式(1)中、Aは下記一般式(2)で表される繰り返し単位を表し、BはA以外のエチレン性不飽和モノマーより誘導される繰り返し単位を表すが、繰り返し単位A及びBは、それぞれが定義された範囲から選択された2種以上の繰り返し単位の混合体でもよい。Xは少なくとも1つの炭素原子を有する1価の基を表し、Zは1価の基を表す。aおよびbはそれぞれ共重合比を表す質量百分率であり、aは1〜100質量%、bは0〜99質量%の範囲を表し、a+b=100質量%である。
【0023】
一般式(2)
【化4】
【0024】
上記一般式(2)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子または−L−Qで表される基を表す。Qは水素結合性を有する極性基を表し、Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、またはそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5)−、アルキレン基、アリーレン基(R4は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。R5はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。)。
【0025】
更に詳細に説明すると、前記一般式(1)中、Aは、上記一般式(2)で表される水素結合性極性基含有モノマー(以下「モノマーA」という場合がある)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位A」という場合がある)を表す。
一般式(2)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、または後述する−L−Qで表される基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子または−L−Qで表される基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。
なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
【0026】
Lは、単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、−PO(OR5)−、アルキレン基、アリーレン基またはこれらを組み合わせて形成される2価の連結基を表す。ここでR4は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R5はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。
Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、アルキレン基またはアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NR4−、アルキレン基またはアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。
Lが、アルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。
Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン、フェニレンエチレン、メチレンフェニレン基等が挙げられる。
Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては、先にR1〜R3における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
【0027】
以下にLの具体的構造を例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
Qは水素結合性を有する極性基であれば特に制限はない。好ましくは水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、カルボン酸のアミド(N無置換体またはN−モノ低級アルキル置換体、例えば−CONH2、−CONHCH3など)スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、スルホンアミド基(N無置換体またはN−モノ低級アルキル置換体、−SO2NH2、−SO2NHCH3など)、ホスホ基、ホスホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホンアミド(N無置換体またはN−モノ低級アルキル置換体、例えば−OP(=O)(NH2)2、−OP(=O)(NHCH3)2など)、ウレイド基(−NHCONH2)、N位が無置換またはモノ置換されたアミノ基(−NH2、−NHCH3)などである(ここで低級アルキル基はメチル基またはエチル基を表す)。
より好ましくは水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのは水酸基またはカルボキシル基である。
【0031】
ポリマー中に含まれる上記繰り返し単位Aは、1種単独でも構わないし、2種以上の繰り返し単位Aが同時に存在していてもよい。2種以上の繰り返し単位Aを有する場合は水酸基とカルボキシル基が同時に存在していることが特に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、Bは、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下「モノマーB」という場合がある)より誘導される繰り返し単位(以下「繰り返し単位B」という場合がある)であり、下記に例示したモノマー群から独立かつ自由に組み合わせた共重合体として選択することが可能である。使用可能なモノマーには特に制限はなく、通常のラジカル重合反応が可能なものであれば、好適に用いることができる。
【0033】
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど。
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど。
【0034】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど)。
【0035】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど。
【0036】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど。
【0037】
(3e)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど。
【0038】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
(5)スチレンおよびその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど。
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど。
【0039】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど。
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
【0040】
上記モノマーBは、1種を単独で使用することもできるし2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0041】
前記一般式(1)中、Xは、ポリマー分子の一方の末端に結合した炭素数1以上、好ましくは炭素数4以上の1価の基を表し、この条件を満たすものであれば特に制限はない。代表的な構造として下記一般式(3)で表わすこともできる。
【0042】
【化7】
【0043】
式中、R6はアルキル基またはアリール基を表し、これらは置換基を有していてもよい。Yは2価の連結基を表す。
【0044】
更に詳細に説明すると、R6は、炭素数1〜30のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、イソノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベヘニル基、トリデカニル基など)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基など)を表し、これらは置換基を有していてもよい。該置換基としては、上記に示したアルキル基、アリール基の他に、アルコキシル基、アシル基、シアノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基などの一般的な置換基を挙げることができる。
【0045】
R6は炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルキル基(エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、パーフルオロオクチル基、2−パーフルオロオクチルエチル基、3−パーフルオロオクチルプロピル基、2−フェニルエチル基、2−(2−メトキシカルボニル)ブチル基など)、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基(フェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−ノニルフェニル基など)などが好ましい。特に好ましいのは、炭素数4〜16の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基であり、それらの中でもフッ素置換アルキル基が最も好ましい。
【0046】
Yは、2価の連結基であれば特に制限はない。前記一般式(1)の説明中、Lで例示した構造の連結基およびそれと同様の構造の連結基から自由に選択可能である。製造方法を考慮した場合、Yは構造中に硫黄原子を含むことが好ましく、Yが硫黄原子であるのが特に好ましい。従って、Xとしてはアルキルチオ基が好ましく、該アルキル基の好ましい炭素数や置換基は上記に示した通りである。
【0047】
前記一般式(1)中、Zは、1価の基であれば特に制限はない。好ましくは、水素原子または前記Xで表される基であり、特に好ましいのは水素原子の場合である。
【0048】
前記一般式(1)中、aおよびbはそれぞれ共重合比を表す質量百分率である。aは1〜100質量%、bは0〜99質量%の数値であるが、好ましくはaが5〜100質量%、bが0〜95質量%であり、より好ましくはaが10〜100質量%、bが0〜90質量%で、特に好ましくはaが80〜100質量%、bが0〜20質量%以上の場合である。
上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が繰り返し単位Aの含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、本発明のポリマー中に含有される水素結合性極性基の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、特に好ましくは0.1mmol/g〜8mmol/gである。
【0049】
前記一般式(1)で表されるポリマーの平均重合度は2〜30であり、好ましくは2〜25、特に好ましくは4〜20である。
また、前記一般式(1)で表されるポリマーのガラス転移温度は、−20℃〜80℃であるのが好ましい。
【0050】
本発明に使用可能な前記ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、またはアニオン重合等の重合方法により製造することができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。
【0051】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0053】
溶液重合では、有機溶媒を使用し、溶媒中で重合を進行させる。これらの有機溶媒は本発明の目的および効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から、上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0054】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0055】
本発明のポリマーを好ましい平均重合度で得るためには、重合反応時の条件制御が極めて有効であり、重合濃度の希薄化、重合開始剤の多量使用、重合温度の高温化などの具体的な手法で、望む平均重合度30以下のポリマーを得ることができる。
また、本発明のポリマーを合成する際には、連鎖移動剤により分子量を制御したラジカル重合法が特に有効であり、連鎖移動剤を用いることは、所望の官能基を、得られるポリマーの末端に的確に導入可能となる点でも、極めて好ましい。
【0056】
用いることのできる、連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタン等)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され、精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度であり、好ましくは0.05モル%〜30モル%、特に好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御すべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーとは別に添加することも可能である。
【0057】
以下に本発明で好ましく用いることのできる前記一般式(1)で表されるポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。ここで式中の数値はそれぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、mは重合度である。
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
本発明の光学補償シートは、例えば、液晶性化合物、本発明のポリマーおよびその他必要に応じて添加する各種化合物を含有する液晶組成物を配向膜上に塗布し、液晶性分子をハイブリッド配向させて光学異方性層を形成することによって作製することができる。本発明では、本発明のポリマーの存在下で前記液晶性化合物をハイブリッド配向させることにより、シュリーレン欠陥等の光学欠陥のない光学異方性層を迅速に作製することができる。
以下に本発明の光学補償シートの光学異方性層に用いられる前記ポリマー以外の材料について詳細に説明する。
【0063】
本発明において、光学異方性層に用いる液晶性化合物は、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物のいずれでもよく、また、高分子液晶および低分子液晶のいずれでもよい。さらに光学異方性層中で、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。本発明に用いる液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物が特に好ましい。
【0064】
好ましい棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体の液晶性化合物も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。棒状液晶性化合物についてはWO01/88574A1号50頁7行〜57頁末行に記載されている。
【0065】
本発明に好ましく用いられるディスコティック液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体;C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体;B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体;およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクル;などを挙げることができる。さらに、ディスコティック液晶性化合物としては、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造のものも含まれる。
【0066】
また、光学異方性層が最終的に形成された際に、液晶性化合物はもはや液晶性化合物である必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化して、液晶性を失ってもよい。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平827284号公報に記載があり、本発明にも適用することができる。
【0067】
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定する方法の一例として、ディスコティック液晶性化合物として、ディスコティックコアに置換基として重合性基が結合した液晶性化合物を用い、ハイブリッド配向させた後、前記液晶性化合物を重合させて固定する方法がある。但し、ディスコティックコアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる傾向がある。そこで、ディスコティックコアと重合性基との間に、連結基を導入することが好ましい。重合性基を有する好ましいディスコティック液晶性化合物としては、下記式(Ia)で表わされる化合物が挙げられる。
【0068】
一般式(Ia)
D(−L−P)n
式中、Dはディスコティックコアを表し、Lは二価の連結基を表し、Pは重合性基を表し、nは2〜12のいずれかの整数を表す。前記ディスコティック液晶性化合物の具体例としては、WO01/88574A1号公報の58頁6行〜65頁8行に記載されている。
【0069】
本発明では、二種類以上のディスコティック液晶性分子を併用して用いてもよい。また、例えば、上記の重合性ディスコティック液晶性分子と非重合性ディスコティック液晶性分子とを併用することも可能である。非重合性ディスコティック液晶性分子は、前述した重合性ディスコティック液晶性分子の重合性基(Q)を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性分子は、下記式(Ib)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0070】
一般式(Ib)
D(−L−R)n
式中、Dは円盤状コアを、Lは二価の連結基を、Rは水素原子またはアルキル基を表し、nは4〜12の整数である。
【0071】
本発明の光学異方性層には、前記液晶性化合物や本発明のポリマーの他に、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤の例としては、ハジキ防止剤、配向膜のプレチルト角を制御するための添加剤、重合開始剤、配向温度を低下させる添加剤(可塑剤)、重合性モノマー等である。
【0072】
本発明のポリマーおよび液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)とともに使用され、塗布時のハジキを防止するのに寄与する材料(ハジキ防止剤)としては、通常、ポリマーが用いられる。使用可能なポリマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。液晶性化合物、特にディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、ハジキ防止の目的で使用されるポリマーの添加量は、液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)に対して、一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0073】
前記光学異方性層には、配向膜のプレチルト角を制御する添加剤として、分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物を添加することができる。
極性基としては、R−OH、R−COOH、R−O−R、R−NH2、R−NH−R、R−SH、R−S−R、R−CO−R、R−COO−R、R−CONH−R、R−CONHCO−R、R−SO3H、R−SO3−R、R−SO2NH−R、R−SO2NHSO2−R、R−C=N−R、HO−P(−R)2、(HO−)2P−R、P(−R)3、HO−PO(−R)2、(HO−)2PO−R、PO(−R)3、R−NO2、R−CN、等が例として挙げられる。また、有機塩(例えば、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩)でもかまわない。
極性基で好ましい基は、R−OH、R−COOH、R−O−R、R−NH2、R−SO3H、HO−PO(−R)2、(HO−)2PO−R、PO(−R)3もしくは有機塩である。
【0074】
上記各Rは非極性基を表し、該非極性基としては、アルキル基〔好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基〕、アルケニル基[好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基]、アルキニル基[好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基]、アリール基[好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基]、シリル基[好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基]が例として挙げられる。
この非極性基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が例として挙げられる。
【0075】
上記添加剤を添加することで、配向膜のプレチルト角を変えることができるが、その時の変化量はラビング密度に関係がある。ラビング密度が高い配向膜とラビング密度の低い配向膜を比較すれば、ラビング密度の低い配向膜の方が、同じ添加量であっても、プレチルト角は変わりやすい。従って、添加剤の好ましい添加量は、配向膜のラビング密度および所望のプレチルト角の大きさ等によって変わるが、液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物)に対して、0.0001質量%〜30質量%が好ましく、0.001質量%〜20質量%がより好ましく、0.005質量%〜10質量%が最も好ましい。
【0076】
以下に、配向膜のプレチルト角を制御するのに寄与する添加剤の具体例を挙げるが、本発明に用いられる添加剤は以下の具体例に限定されるものではない。
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
【化14】
【0080】
前記光学異方性層において、液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)はモノドメイン配向しているのが好ましく、モノドメイン配向状態に固定されていることがより好ましい。さらに、重合反応により固定されているのが特に好ましい。
重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ〜50J/cm2であることが好ましく、100mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0081】
液晶性化合物(好ましくはディスコティック液晶性化合物)とともに使用する重合性モノマーとしては、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0082】
光学異方性層の形成に用いられる液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0083】
光学異方性層は、上記溶媒を用いて液晶組成物の塗布液を調製し、配向膜上に塗布し、液晶性分子(好ましくはディスコティック液晶性分子)を配向処理することで形成することができる。塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0084】
液晶組成物から形成される光学的異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0085】
前記液晶組成物は配向膜上に塗布されるのが好ましい。液晶性分子(好ましくはディスコティック液晶性分子)は配向膜との界面では配向膜のプレチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のプレチルト角で配向することとなる。従って、塗布後、液晶性分子を均一配向(モノドメイン配向)させることで、空気界面から配向膜界面に向けて、つまり光学異方性層の深さ方向にディスコティック液晶性分子の傾斜角(ディスコティック液晶性分子の円盤面の法線と透明支持体の配向膜を設ける面の法線とがなす角)が連続的に変化するハイブリッド配向を実現することができる。液晶性化合物をハイブリッド配向させた光学異方性層を有する、本発明の光学補償シートを用いることにより、視野角を拡大させ、並びに視角変化に対するコントラスト低下、階調または黒白反転、および色相変化等を防止することができる。
【0086】
ディスコティック液晶性分子の場合、空気界面のプレチルト角は50°以上であり、光学補償シートとして好ましい性能を発揮できる状態のハイブリッド配向を実現するために、本発明では、配向膜のプレチルト角を3°〜30°とする。この配向膜のプレチルト角は前記した方法(配向膜のラビング密度、添加剤等)により制御することで、本発明の光学補償シートを適用する液晶表示装置の表示モードに応じて、好ましいハイブリッド配向状態を実現することができる。
【0087】
プレチルト角とは、ディスコティック液晶性分子の円盤面の法線と膜面の法線がなす角度を指し、本発明では、配向膜のプレチルト角は3°〜30°、空気界面側のプレチルト角は20〜80°である。
プレチルト角は小さすぎると、ディスコティック液晶性分子のモノドメイン配向に要する時間が長くなるため大きい方が好ましいが、プレチルト角が大きくなりすぎると、光学補償シートとして好ましい光学性能が得られなくなるため逆に好ましくない。したがって、モノドメイン化時間の短縮と光学補償シートとしての好ましい光学性能の両立の観点から、好ましい配向膜のプレチルト角は5°〜30°、更に好ましくは7°〜20°、特に好ましいのは9°〜20°である。また、好ましい空気界面側のプレチルト角は30〜75°、更に好ましくは35〜70°、特に好ましいのは40〜70°である。
配向膜側のプレチルト角は、後述する配向膜のラビング密度を変える方法、あるいは前述の配向膜プレチルト角制御剤の添加などにより、数度〜数十度の範囲で制御可能である。
【0088】
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
光学異方性層の液晶性分子に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点から、ポリマー層をラビング処理することによって形成された配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では上記した様に、液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0089】
配向膜に用いられるポリマーは、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明の光学補償フィルム用の配向膜ではポリビニルアルコール及びその誘導体が好ましく用いられる。特に好ましくは、疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向膜についてはWO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。
【0090】
配向膜のラビング密度を変える方法としては、液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は式(A)で定量化されている。
式(A) L=N×l×(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
【0091】
本発明の光学補償シートの一態様は、透明支持体上に前記光学異方性層を形成してなる態様である。前記透明支持体としては、主に光学的等方性のポリマーフィルムが用いられる。本発明では、支持体の光透過率が80%以上であることが好ましい。
材料については特に制限はない。ポリマーの具体例として、セルロースエステル類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフィルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。脂肪酸の炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであってもWO00/26705号明細書に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0092】
ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0093】
セルロースエステルでは、セルロースの2位、3位、6位の水酸基が全体の置換度の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースの6位水酸基の置換度が、2位、3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が30%以上40%以下でアシル基で置換されていることが好ましく、さらには31%以上、特に32%以上であることが好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基(例、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、ベンゾイル、アクリロイル)で置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求める事ができる。6位水酸基の置換度が高いセルロースエステルは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0094】
透明支持体として用いるセルロースエステルフィルムの厚み方向のレターデーション値は、厚み方向の複屈折率にフィルムの厚みを乗じた値である。具体的には、測定光の入射方向をフィルム膜面に対して鉛直方向として、遅相軸を基準とする面内レターデーションの測定結果と、入射方向をフィルム膜面に対する鉛直方向に対して傾斜させた測定結果から外挿して求める。測定は、エリプソメーター(例えば、M−150:日本分光(株)製)を用いて実施できる。厚み方向のレターデーション値(Rth)と面内レターデーション値(Re)とは、それぞれ下記式(1)および(2)に従って算出する。
式(1)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(2)
Re=(nx−ny)×d
式中、nxはフィルム平面内のx方向の屈折率であり、nyはフィルム平面内のy方向の屈折率であり、nzはフィルム面に垂直な方向の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚み(nm)である。
【0095】
本発明では、ポリマー基材のReレターデーション値を20〜70nmの範囲に、そして、Rthレターデーション値を70〜400nmの範囲に調節することが好ましい。液晶表示装置に二枚の光学的異方性層を使用する場合、基材のRthレターデーション値は70〜250nmの範囲にあることが好ましい。また、液晶表示装置に一枚の光学的異方性層を使用する場合、基材のRthレターデーション値は150〜400nmの範囲にあることが好ましい。
なお、基材フィルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00028〜0.020の範囲にあることが好ましい。また、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.001〜0.04の範囲にあることが好ましい。
【0096】
透明支持体として用いるポリマーフィルム、特にセルロースアセテートフィルムのレターデーションを調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0097】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0098】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤についてはWO01/88574A1、WO00/2619A1、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、特願2002−70009号明細書等に記載されている。
【0099】
セルロースアセテートフィルムは、調製されたセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0100】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて、ドープを2層以上流延することによりフィルム化することもできる。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
複数のセルロースアセテート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて、それらを積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによりフィルム化してもよい。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、高粘度および低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルムの流延方法を用いてもよい。
【0101】
セルロースアセテートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%の範囲にあることが好ましい。本発明のセルロースアセテートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0102】
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0103】
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0104】
セルロースアセテートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
【0105】
セルロースアセテートフィルムの表面処理は、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60〜75mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
アルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの濃度は、0.1〜3.0mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0106】
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアセテートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアセテートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
【0107】
セルロースアセテートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0108】
本発明の光学補償シートは、偏光膜と組合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型液晶表示装置に、偏光膜と組合わせて適用することにより、視野角の拡大に寄与する。
以下に、本発明の光学補償シートを利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0109】
本発明の光学補償シートと偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。本発明の光学補償シートを利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大し得る楕円偏光板を提供することができる。
前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0110】
偏光膜は前記光学補償シートの光学異方性層側に積層する。偏光膜の光学補償シートを積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0111】
本発明の光学補償シートを利用することにより、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号明細書および国際公開WO96/37804号公報に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0112】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用光学補償シートを作製することができる。本発明の光学補償シートは、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードなど、種々のモードで駆動される液晶セルと組合わせて液晶表示装置に適用できる。本発明の光学補償シートは、TN(Twisted Nematic)モードの液晶表示装置において特に効果がある。
【0113】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。ディスコティック液晶性分子は多様な配向形態を有するので、これを用いると液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。
【0114】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[合成例1 化合物例P−7の合成]
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた300mLのフラスコに、メチルエチルケトン120g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル25g(0.19モル)、メタクリル酸ン−ブチル75g(0.53モル)、n−ドデシルメルカプタン8.2g(36mmol)を入れ、窒素気流下、攪拌しながらフラスコ内温を80℃まで加熱した。次に、メチルエチルケトン20gに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解した溶液を加え、そのまま12時間攪拌させた後室温まで冷却しメタクリル酸2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸n−ブチル共重合オリゴマー溶液247.3gを得た。得られた溶液の固形分含量は43.3質量%、平均重合度は18であった。
【0115】
[合成例2 化合物例P−15の合成]
攪拌装置、モノマー供給槽、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた1000mLの三口フラスコに、メチルエチルケトン38g、アクリル酸1.6g(22mmol)を入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら内温を75℃まで加熱した。次に、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル4.4g、メタクリル酸ブチル103.8g(0.73モル)、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル47.9g(0.368モル)、アクリル酸6.4g(89mmol)、2−パーフルオロオクチルエチルメルカプタン30.2g(61mmol)をメチルエチルケトン82gに溶かした溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.8gをメチルエチルケトン8.3gに溶かした溶液を加えて4時間攪拌を続けて重合を完了させ、メチルエチルケトン107gを加えて希釈し、メタクリル酸ブチル−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル−アクリル酸共重オリゴマー(化合物例P−15)溶液426.2gを得た。該溶液の固形分濃度は44.2質量%、平均重合度は20であった。
【0116】
[実施例1]
(透明支持体の作製)
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して、セルロースアセテート溶液(ドープ)を調製した。
【0117】
セルロースアセテート溶液組成
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート 6.5質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 5.2質量部
下記のレターデーション上昇剤(1) 0.1質量部
下記のレターデーション上昇剤(2) 0.2質量部
メチレンクロライド 310.25質量部
メタノール 54.75質量部
1−ブタノール 10.95質量部
【0118】
レターデーション上昇剤(1)
【化15】
【0119】
レターデーション上昇剤(2)
【化16】
【0120】
得られたドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の領域で、幅方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、120℃を越える領域で機械方向の延伸率が実質0%、(剥ぎ取り時に機械方向に4%延伸することを考慮して)幅方向の延伸率と機械方向の延伸率との比が0.75となるように調整して、厚さ100μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。作製したフィルムのレターデーションを波長632.8nmで測定したところ、厚み方向のレターデーションが40nm、面内のレターデーションが4nmであった。作製したセルロースアセテートフィルムを透明支持体として用いた。
【0121】
(第1下塗り層の形成)
透明支持体の上に、下記の組成の塗布液を28mL/m2塗布し、乾燥して、第1下塗り層を形成した。
【0122】
第1下塗り層塗布液組成
ゼラチン 5.42質量部
ホルムアルデヒド 1.36質量部
サリチル酸 1.60質量部
アセトン 391質量部
メタノール 158質量部
メチレンクロライド 406質量部
水 12質量部
【0123】
(第2下塗り層の形成)
第1下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を7mL/m2塗布し、乾燥して、第2下塗り層を形成した。
【0124】
第2下塗り層塗布液組成
下記のアニオン性ポリマー 0.79質量部
クエン酸モノエチルエステル 10.1質量部
アセトン 200質量部
メタノール 877質量部
水 40.5質量部
【0125】
アニオン性ポリマー
【化17】
【0126】
(バック層の形成)
透明支持体の反対側の面に、下記の組成の塗布液を25mL/m2塗布し、乾燥して、バック層を形成した。
【0127】
バック層塗布液組成
酢化度55%のセルロースジアセテート 6.56質量部
シリカ系マット剤(平均粒子サイズ:1μm) 0.65質量部
アセトン 679質量部
メタノール 104質量部
【0128】
(配向膜の形成)
第2下塗り層の上に、長鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(クラエポバールMP−203:(株)クラレ)の水溶液を塗布し、60℃の温風で90秒間乾燥した後、ラビング処理を行い配向膜層を形成した。得られた配向膜層の膜厚は0.5μmであった。
配向膜のラビング方向は、透明支持体の流延方向と平行であった。
【0129】
(ラビング)
下記条件でラビングを実施し、以下で使用するラビング配向膜を作製した。
(ラビング条件)
ラビング回数 1回
ラビングローラーの接触長 0.3mm
ローラーの半径 60mm
ローラーの回転数 1000rpm
ステージ移動速度 7mm/s
この条件下で作製した配向膜のプレチルト角は2.5°であった。
【0130】
(光学異方性層の形成)
前記で作製したラビング配向膜上に、下記の組成を有する光学異方性層塗布液を、#4のワイヤーバーを用いて塗布した。形成した光学異方性層の厚さは1.74μmであった。
【0131】
光学異方性層塗布液
本発明のポリマー P−5 2.75質量部
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 100質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製 3.3質量部
ジエチルチオキサントン 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0132】
ディスコティック液晶性化合物(1)
【化18】
【0133】
[光学補償シートの評価]
(傾斜角の測定)
上記の光学異方性層を塗布したフィルムを、130℃の恒温槽中に入れ、約15秒間かけて110℃まで加熱し、そのまま120秒間保持した後、次いで約15秒間で80℃まで冷却した。同温度に保持したまま400mJの紫外線を照射して光学異方性層の配向状態を固定した。室温まで放冷して、光学補償シートを作製した。形成した光学異方性層の厚さは1.90μmであった。得られたシートの光学異方性層における配向膜近傍の液晶分子傾斜角、空気界面近傍の傾斜角、および平均傾斜角は、エリプソメーター(APE−100、島津製作所(株)製)を用いて、632.8nmの波長を使用して観察角度を変えてレタデーションを測定し、屈折率楕円体モデルと仮想して、Designing Concepts of the Discotic Negative Compensation Films SID98 DIGESTに記載されている手法で算出した。
(配向完了時間の測定)
上記の光学異方性層を塗布したフィルムを115℃に加熱し、偏光顕微鏡(OPTIPHOTO2、Nikon(株)製)観察下で温度を保持して配向熟成を進行させ、加熱開始から配向欠陥が消失してモノドメイン配向になるのに要した時間を測定した。結果を第1表に示す。
【0134】
[実施例2〜15、比較例1〜4]
本発明のポリマーP−5に代えて表1に記載の様に本発明のポリマーの種類と添加量を変えて用いた以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムの実施例2〜実施例15を作製した。
また、本発明のポリマーP−5に代えて表1に記載の様に本発明のポリマー以外のポリマーを用いた以外は、実施例1と全く同様にして光学補償フィルムの比較例1〜比較例5を作製した。これらの光学補償フィルムの光学性能の評価結果も表1に併せて記載した。
【0135】
【表1】
【0136】
比較例に使用したポリマーの構造
K−1:セルロースブチレートアセテート(質量平均分子量 Mw=36000)
K−2:ポリブチルメタクリレート(質量平均分子量 Mw=34000)
K−3:2−ヒドロキシエチルメタクリレート25質量部とn−ブチルメタクリレート80質量部の共重合体(質量平均分子量 Mw=24000)
【0137】
上記第1表に示した結果から、光学異方性層の形成において、本発明のポリマーを含有する実施例1〜15の光学異方性層では、いずれの場合においても、配向の迅速性を損なうことなく高い界面配向角を有したハイブリッド配向を比較的低温状態から実現できていることが分かる。
一方で、本発明のポリマーを含有しない比較例1では配向速度こそ速いものの、空気界面の配向角は極端に低く、充分なハイブリッド配向にはならなかった。また、本発明外のポリマー(K−1〜K−3)を用いて作製した光学異方性層を有する比較例2〜5では、均一な面状を得られない(比較例4)か、または比較的大きな界面配向角を発現できてはいても、配向速度が著しく遅延化する結果となった(比較例2、3および5)。
これらの結果から、本発明のポリマーを用いた光学異方性層は、光学補償フィルムに必要な大きな界面配向角を形成し、かつ、液晶性分子の配向速度の遅延化を引き起こさないことがわかる。
【0138】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明のポリマーを光学異方性層に含有させることにより、液晶性分子の空気界面のプレチルト角を制御可能となり、液晶性分子の配向のモノドメイン化時間を短縮して、効率よく光学補償シートを作製することができる。
Claims (2)
- 透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償シートであって、該光学異方性層が水素結合性を有する極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを含有し、かつ該ポリマーの平均重合度が30以下であることを特徴とする光学補償シート。
- 透明支持体上に光学異方性層を有する光学補償シートの製造方法であって、平均重合度が30以下であり、且つ水素結合性を有する極性基含有モノマーより誘導された繰り返し単位を有するポリマーを用いて光学異方性層を形成する光学補償シートの製造方法。
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