JP2004066464A - 表面の含浸塗装方法とその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】木質材、無機質材、窯業材のような本質的に多孔質材ではあっても、水性塗料や水性接着剤などを塗布含浸することが全くできなかった各種材料表面に、水溶性の有機/無機物を含浸させて材料表層を改質することが可能な表層の含浸塗装方法の提供。
【解決手段】コロイダルシリカを木材表面に塗布して、高温蒸気、特に水滴化しないように温度エネルギーを与え続けながら蒸気を該塗布面に接触させると、塗布したコロイダルシリカが表層内に含浸し、当該処理後に表面が濡れたり、塗膜が形成されるなどの該当表面の意匠や形態を全く変化させることなく、さらには塗布した溶液の全てを含浸させることが可能であり、木材表層部がシリカを含むことで同部が硬質化し、傷つき難くなり、強化可能であるとともに、表面に塗膜や接着剤層を形成して多機能な積層材となすことが可能である。
【選択図】 図3
【解決手段】コロイダルシリカを木材表面に塗布して、高温蒸気、特に水滴化しないように温度エネルギーを与え続けながら蒸気を該塗布面に接触させると、塗布したコロイダルシリカが表層内に含浸し、当該処理後に表面が濡れたり、塗膜が形成されるなどの該当表面の意匠や形態を全く変化させることなく、さらには塗布した溶液の全てを含浸させることが可能であり、木材表層部がシリカを含むことで同部が硬質化し、傷つき難くなり、強化可能であるとともに、表面に塗膜や接着剤層を形成して多機能な積層材となすことが可能である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、杉板や杉合板の表層部を、従来の一般的な塗装による塗膜や樹脂フィルムなどの樹脂成分層を設けることなく、簡単に高硬度、高強度化、耐水性化することができる改質方法であって、水蒸気を用いて有機/無機物の溶液を含浸させることにより、木質材、無機質材、窯業材のような多孔質材の表面及び表面から所要深さまでの表層部の改質を行うことが可能で、同様方法で表面に塗膜を形成することも可能な技術である。
また、この発明は、木質単板、突き板や樹脂フィルム等を木質板や無機質板に積層した積層板、あるいは転写による転写樹脂層、樹脂フィルムや紙などの意匠性化粧材を有し、その表面に溝等の意匠性凹凸形状を設けた床材、壁材、家具材料等に用いられる基板材料の製造方法に上記の改質及び塗装方法を適用するもので、ロール又はプレス形成にて溝等の意匠性凹凸形状を化粧材を破断することなく確実に設けることが可能で、成形後に当該材料が吸湿したり、水分塗布しても前記溝などの意匠性凹凸形状がスプリングバックで元に戻ることがなく、成形後の経時変化がなく安定した塑性変形を木質部に付与できる基板材料とその製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
木材、特に樅、とど松、から松、杉、ひば、さわらなどの針葉樹材は、軽く柔らかいことから軟材(soft wood)と呼ばれ、所要断面形状を有するコア材の場合は種々建築用資材として広範囲に利用される。
しかし、軟材のスライスされた単板や合板の用途では、板表面が柔らかくかつ傷つきやすいために、例えば構造用合板としては使用できるが、接触などが避けられない床材や壁材等の場合は利用が制限されるなど、その用途が極めて限定されている。
【0003】
また、現在は、無垢材や合板の形態にかかわらず、床や壁、ドア材料に従来のオーク柄からブナ、サクラ、メープル等の散孔材柄へ嗜好が移行している。
無垢材や種々合板などの使用形態のいずれの場合においても、軟材を表層に用いると、硬材に比較して当然のことながら、捺傷性が劣る、押し傷性が劣る、床暖房仕様に適用する際に適した材料が少ないかあるいは偏るなどのいわゆる材料ふれがあり、また大陽光等の紫外線による変色が発生する、使用する接着剤や表装剤などにVOC問題があるなど、種々の解決すべき問題が多々ある。
【0004】
一方、建築用材料として各種合板、MDF、PB、集成材、無機質板等の各種基板の他、これら基板に樹脂フィルム、化粧紙や突き板等の意匠性化粧材を貼りつけた化粧材基板がよく知られている。
かかる基板材料は、通常は平面的でデザイン性に乏しい。そこで平面的意匠をより立体的に見せるため、平板に意匠性面材を貼りつけた後、刃物で研削したり、プレスにて溝加工を施すことが行われている。
【0005】
例えば、平金型やロール金型で断面形状がV型の溝を形成したり、該V型の溝を設けた後にさらにその肩部を押し広げたり、また刃物でU型、V型の溝を形成してその肩部を円弧状に変形させたり、さらには、溝断面形状を階段状にした階段状溝など、各種の溝付け、意匠性の凹凸形状などが形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の床や壁、ドア材料など木材には、意匠として材料自体に溝や穴加工、研削加工、プレス加工などが施されるが、木材の含有水分の安定化とともにその加工形状性の維持には種々の工夫が必要とされている。従って、加工を施した木質材料の場合も、その表面が高硬度、耐水性などを有していることが求められるが、木質材料に最適の水性塗料や水性接着剤などは、これを表層内に含浸させることはできなかった。
【0007】
また、前記刃物による溝加工は、溝部の意匠性が材料の除去にて溝部の意匠性が大きく変化する問題がある。また、特にプレスによる溝加工は、貼着した意匠性面材が破断したり、プレスによる塑性変形部分が経時的に元に戻ってしまうという問題がある。
【0008】
木質系材料に施された塑性変形が容易に元に戻る理由は、材料自体の含水率の変化が入熱や雰囲気湿度の変動で容易にもたらされることにあり、例えば材料自体の吸湿作用によるもの、加工部に水分の付着あるいはさらに熱が加わると直ちに元に戻り始めることは、よく知られている。
【0009】
この対策のために、成形後に180℃程度、あるいはそれ以上の高温で型押しプレスによる永久歪みが付与されているが、この処理で意匠性面材が損傷する場合があり、表面の化粧材等が限定されてしまう。しかし、この処理後でも、例えば70℃の温水に2分間浸漬すると、例外なしにほとんど元の形状に戻ることが知られている。
【0010】
この発明は、木質材、無機質材、窯業材のような本質的に多孔質材ではあっても、水性塗料や水性接着剤などを塗布含浸することが全くできなかった各種材料表面に、水溶性の有機/無機物を含浸させて材料表層を改質することが可能な表層の改質方法とその装置並びに得られた改質処理物の提供を目的としている。
【0011】
また、この発明は、組成変形可能な材料を表層に有する基板材料のかかる問題を解消し、溝等の意匠性凹凸形状を紙やフィルムなどの化粧材を破断することなく確実に設けることが可能で、成形後に当該材料が吸湿したり、水分塗布しても前記溝などの意匠性凹凸形状がスプリングバックで元に戻ることがなく、成形後の経時変化がなく安定した塑性変形を木質部に付与できる基板材料とその製造方法並びに成形用金型の提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、軟材の表面を改質、特に塗装のような塗膜などを設けることなく、また木材自体の表面意匠や美観を損傷、変化させることなく、当該表面を硬質化、耐炎性化あるいは耐水性化する方法について種々検討した結果、まずコロイダルシリカなどの無機物溶液を用いて含浸させることに着目し、特に水分を除くシリカだけを木材の表層に含浸させる方法について、鋭意検討したところ、コロイダルシリカを木材表面に塗布して、高温蒸気、特に水滴化しないように温度エネルギーを与え続けながら蒸気を該塗布面に接触させると、木材表面に塗布したコロイダルシリカが泡を吹きながら表層内に含浸することを知見し、また、当該処理後に表面が濡れたり、塗膜が形成されるなどの該当表面の意匠や形態を全く変化させることなく、さらには塗布した溶液の全てを含浸させることが可能であり、木材表層部がシリカを含むことで同部が硬質化し、傷つき難くなることを知見した。
【0013】
また、発明者は、木質材料に含浸することがなかった水性塗料や水性接着剤などに対しても、同様に高温蒸気をその蒸気温度が低下して水滴化することがないように、例えば高温に保持した加熱プレートを塗布面に近接して高温蒸気を接触させると、これも水性塗料が泡を吹きながら含浸して、また木材の厚み端面の導管から蒸気が出てくるようになり、塗布した水性塗料は表面に塗膜を形成することなく、木材の表層内に水性塗料成分が含浸して当該表面を硬質化、耐炎性化あるいは耐水性化できることを知見した。
【0014】
また、発明者は、コロイダルシリカ液と水溶性塗料又は水溶性接着剤を混合した有機/無機物の溶液の場合も、前記木質材はもちろん、各種の建築材料として市販されている無機質材や窯業材に対しても同様に高温蒸気の接触のもとに、各材料の表層に含浸させることが可能であり、被処理材質に応じて適宜有機/無機物の溶液を選定することで、木質材、無機質材、窯業材の各表面が本来有していない機能を付与できることを知見した。
【0015】
また、発明者は、木質材などの被処理材の表面に細溝を設けたり、針孔などを適宜間隔で設けることで、上述のこの発明による蒸気含浸を実施した際の含浸処理速度や効率あるいは含浸深さを適宜制御でき、被処理材質や付与したい機能などに応じた種々の改質処理を各種材料に適用可能であることを知見した。
【0016】
また、発明者は、この発明における有機/無機物の溶液中の水分や接触する水蒸気によって、木質材などの被処理材の含水量が変化するか否かを検討したところ、この高温水蒸気は塗料成分やシリカなどにエネルギーを与えるとともに当該溶液中や被処理材中の水分と一部入れ換わったりすると思われるが、高温水蒸気がエネルギー付与の機能を果たすように加熱板を用いるなど高温エネルギーを補給するように操作することから、上述のこの発明による蒸気含浸の実施中には若干含水量が増加するが、処理後には自然と飛散して処理前と同様になることを確認した。
【0017】
また、発明者は、被処理材の表面が例えば積層材に貼着した突き板、MDFなどに貼着した化粧紙や転写シートなどであっても、この発明の蒸気含浸が同様に適用でき、突き板はもちろんのこと、化粧紙や転写シートとMDFの表層の両方に水溶性塗料などの有機/無機物の溶液成分を含浸させることが可能で、例えば、表面が高硬度の突き板、化粧紙や転写シートを有する積層材を製造できることを知見した。
【0018】
さらに、発明者は、この発明による蒸気含浸は、前記の化粧紙や転写シートを有するMDF材、積層材のごとく、表面に意匠性の溝部や模様を型押しを施す構成の場合であっても、適用可能であり、特に従来は型押し成形後に材料の含水量の変動が生じた場合には、全体の反りや溝部や模様等がスプリングバックでその形状性が崩れることがあったが、この発明による蒸気含浸を適用すると、化粧紙や転写シートごと水溶性塗料成分が含浸して改質されているから、表面側からも内部側からも塑性変形させた表層部へは水分の移動がなく、スプリングバック等が防止されてい成形形状は極めて安定しており、高機能、高意匠性の建築材料を簡単に製造できることを知見した。
【0019】
また、発明者は、この発明による蒸気含浸により、有機/無機物の溶液として流動パラフィンを木質材料の全体、すなわち厚み及び平面方向のいずれにも均一に含浸させることが可能で、従来は表層の極浅いところに含浸させる場合でも塗布含浸、塗布吸引、加圧浸漬のいずれもが長時間を要するだけでなく不均一であり、また表層より深い部位には含浸させることができない問題を解消できることを知見した。
【0020】
さらに、発明者は、この発明による蒸気含浸により、有機/無機物の溶液として紫外線又は電子線にて重合可能な水溶性塗料又は水溶性接着剤を用いて、木質材、無機質材、窯業材のいずれの材料にも含浸させることができ、含浸させた後に紫外線又は電子線の照射で樹脂成分が完全重合するため、処理した表層に極めて高硬度、高耐食性などの高機能を付与できることを知見した。
【0021】
以上の発明者の知見から明らかなように、高温水蒸気と加熱プレートを使用する水蒸気含浸法は、水溶性塗料などの有機/無機物の溶液成分を基板表層に含浸する度合いを制御できることから、高温水蒸気と加熱プレートの温度制御を適宜行うことで表面に塗装膜を形成できることは当然であり、従来密着性が十分でないとされている水溶性塗料の塗装膜を、先に含浸させた同塗料とともに一体化させて固化可能であり、極めて密着性にすぐれた水溶性塗料膜を形成できる。
【0022】
また、発明者は、水溶性接着剤を用い、含浸による表層の改質とともに改質に使用した当該接着剤にアンカー効果を持たせて表面に均一に定着させ、例えば金属やセラミックスの蒸着層を設けた転写フィルムを基材に貼り合わせ、転写層を基材表面に強固に密着させることが可能であることを知見した。従って、木質材や無機質板材の表層を強化した上、金属やセラミックス材の蒸着層をあたかも直接スパッタリングしたように強固に緻密に密着させることが可能なり、木質材や無機質板材に新規機能を付与した新たな用途に利用可能な材料を提供できる。
【0023】
上述した蒸気含浸法と塗装方法を完成した発明者は、さらに、基板材料の表層自体あるいは表面に設けられた意匠性面材を破断しないため、さらには成形された溝など凹凸形状がスプリングバックを起こさないようにするためのロール又はプレス金型形状について、種々検討した結果、前記溝形状を形成するための金型突起は、その縦断面形状が従来の所謂V字型又は略V字型のように直線部で構成された形状ではなく、金型先端を含めて全て適宜半径の円弧面で形成される必要があることを知見した。
【0024】
また、発明者は、金型突起の縦断面形状についてさらに検討した結果、金型先端を含めて全て適宜半径の円弧面で形成された形状、または、U型のごとく先端部のみ、板材に対して略平行な部分の溝幅方向の長さは最大1mm程度、金型先端の略平坦部は0.3〜1mmで、その他は全て適宜半径の円弧で形成された形状、あるいは、溝を形成するための突起高さが2〜2.5mmを越える場合、先端部に直線部分を有するが、その他は全て適宜半径の円弧で形成された形状が必要があることを知見した。
【0025】
また、発明者は、前記金型の使用とともに、塑性変形部分のスプリングバックに対して、溝形状のプレス成形後の塑性変形を水分などで元に戻さないように、当該表層部分に改質処理を施すことに着目し、鋭意検討した結果、発明者が先に知見した蒸気含浸法にて、コロイダルシリカやSiO2微粒子を含む有機/無機物の溶液、例えば水溶性塗料成分を基板表層に含浸させることにより、目的が達成できることを知見した。
【0026】
すなわち、発明者は、前記の化粧紙や印刷シートを有するMDF材、積層材のごとく、表面に意匠性の溝部や模様を型押しを施す構成の場合、特に従来は型押し成形後に材料の含水量の変動が生じた場合には、全体の反りや溝部や模様等がスプリングバックでその形状性が崩れることがあったが、この発明による蒸気含浸法を適用すると、化粧紙や樹脂シートごと水溶性塗料成分が含浸して改質されているから、表面側からも内部側からも塑性変形させた表層部へは水分の移動がなく、スプリングバック等が防止されて成形形状は極めて安定しており、高機能、高意匠性の建築材料を簡単に製造できることを知見した。
【0027】
【発明の実施の形態】
表層の改質、含浸方法
以下に、この発明を知見して完成するに至った実験や実施例を詳述する。先に発明者は、ある種の有機溶剤中に粒径がnmクラスのシリカを凝集させることなく均一分散させた有機/無機塗料を作製して、当該塗料を杉材の薄板に塗布すると、驚くほど材料の表層内に含浸することを知見していた。
これは、nmクラスのシリカを均一分散させることが可能な有機溶剤には特定の条件があり、シリカの大きさと関連して所定の分子量を有することが必要であり、かつ当該条件範囲が極めて狭いものであった。また、nmクラスのシリカを均一分散させた有機/無機塗料は、塗布後に示す相手材への浸透力には、まるで活性化しているかのごとくであり、さらに当該塗料は一定期間後にそのエネルギーが失われてシリカの二次凝集が始まり先の浸透力が減衰することもあった。
【0028】
一方、環境問題を考慮すると、木材などの表面処理には水性塗料等の使用が好ましく、種々のものが開発されているが、脂の少ない材料であっても水性塗料の付着力は比較的弱く、当然脂の多い材料では水性塗料はその塗膜が剥離しやすいものであり、塗布できても全く含浸することがないことは塗料や木工の当業者の常識でもあった。
【0029】
発明者は、シリカの浸透力を発揮させることが可能な先の有機/無機塗料の無公害化や、水溶性化を研究するうちに、コロイダルシリカを杉の薄板に含浸させられないかと着目し、種々検討した。その結果、先の有機/無機塗料では、超微粒子のシリカが本来有しているエネルギーを有効利用できるように特定分子量の樹脂中に均一分させていたが、一般にコロイダルシリカでは二次凝集しようとするシリカをpH調整や特定イオンの介在させる溶液条件でかろうじてこれを分散させている状態であって、シリカが本来有しているエネルギーを有効利用できる条件下にはなく、コロイダルシリカを杉の薄板に塗布しても全く含浸しないものであると想定した。
【0030】
そこで発明者は、コロイダル中でかろうじて分散しているシリカを活性させる方法を種々検討した結果、水蒸気を用いてエネルギーを与える、すなわちコロイダルシリカを木材表面に塗布した後、高温水蒸気を接触させると、シリカが活性化して木材表面に含浸することを知見した。
【0031】
知見時の実験を説明すると、まず被処理木材(杉板)と塗布するコロイダルシリカ(固形分30%、シリカ粒径10nm)の重量(m2当たり130g)を測定し、木材表面にコロイダルシリカを塗布した後、高温水蒸気(145℃、市販の工業用水蒸気発生装置)を塗布表面の水分がなくなるまで接触させ、再度被処理木材の重量を測定した。また、この時に要した処理時間だけ、前記と同様の被処理木材に高温水蒸気を接触させて、その時の含水量の増加を測定したところ、約2%の増加を確認したが、その後放置して再度重量を測定したところ、前記2%分の低下を確認した。
【0032】
コロイダルシリカを塗布した後に、さらに当該表面が乾くまで水蒸気を接触させた後、被処理木材の重量を測定したところ、コロイダルシリカの固形分及び前記自重の2%分の重量増加を確認した。その後の放置後の重量測定では固形分(m2当たり約40g)相当のみの重量増加を確認した。
かかる蒸気含浸後の被処理木材(杉板)は、処理前は爪を立てると傷が付くものが、処理後は容易には傷が付かず、爪先に痛みを感じるほどの力でもほとんど傷が付かないことから、この蒸気含浸ににてシリカ含浸がなされて杉材表層の改質がなされたことを確認した。
【0033】
その後、杉板に換えて、市販のから松、杉、ひばなど各種の軟材、桧などの硬材の単板やこれらを表面に貼着した合板に対して、前記と同様条件の蒸気含浸にてコロイダルシリカを塗布、含浸させてみたところ、いずれも同様に木材表面の硬度向上の改質効果を得た。
【0034】
上述の高温水蒸気による木材表面へのコロイダルシリカの塗布、含浸は、いずれの木材材料においても、かなりの長時間を要するか、あるいは板表面を乾燥させるために大量の蒸気を要することを知見した。
【0035】
そこで、含浸を効率よくする実施方法を目的に検討し、コロイダルシリカの水分とシリカにさらに大量にかつ連続的にエネルギーを与えることに着目してさらに種々検討したところ、市販スチームアイロンのように高温水蒸気と共に加熱板を併用して、コロイダルシリカの塗布面に作用させる水蒸気を加熱板との間で加熱対流させると、エネルギーを失って水滴化する水蒸気がなくなるようにエネルギーが注入されるため、先の実験と同量の塗布量の場合、コロイダルシリカが泡立ちながら含浸して、直ちに単板の端面より水蒸気が出て来るのを確認できるほど含浸力が向上し、前述のごとく重量測定からシリカの全量が含浸することを確認した。
【0036】
また、工業用スチームの噴射のみ、市販の高温スチームアイロン、5〜10mm厚みの鉄板に電気ヒーターを設けた加熱板と工業用スチームの噴射を併用するなどの装置の違い、あるいは用いたアイロンや加熱板の処理表面への近接離反(20cm〜3cm)等、処理表面への水蒸気と加熱源からの熱量が種々の量となるように多くの組合せを試してみたところ、水蒸気温度が高いほど、加熱源からの受熱熱量が多いほど、すなわち単位時間内に受ける水蒸気と加熱板からのエネルギーの総量が多いほど、さらにコロイダルシリカと接触している水蒸気が水滴化せずに加熱板(200℃程度)との間で熱対流を繰り返す条件を最適化するほど、処理表面状態の条件の差異にかかわらず含浸の速度が向上して、数秒、数分程度で急速に含浸し、乾燥することを知見した。
【0037】
次に、処理対象をこれまでの木材に換えて、市販されているいずれも表面処理なしの種々の火山灰製焼結板、セラミックス板、窯業板、さらには樹脂製板、船舶に塗布されて劣化していたゲルコート膜に対しても、上述と同様条件のコロイダルシリカの蒸気含浸を行ったところ、木材材料の場合と同様の含浸工程、作用が得られ、表面硬度の向上効果が得られることを確認できた。
【0038】
さらには、有機/無機物の溶液として、前記のコロイダルシリカの粒子径を7nm〜50nmで種々変化させた場合、また市販の水溶性アクリル塗料(アクリル−ウレタン系樹脂分50%)のみの場合、また水溶性アクリル塗料とコロイダルシリカの混合溶液をそれぞれ作製して、前記同様条件で、いわゆる日曜大工用品点(DIY)で入手できる種々の普通合板、構造用合板、すなわち広葉樹合板(シナ、カバ、セン、ブナ、ナラ、メランティ、アピトン、カポール)、針葉樹合板(カラマツ、エゾマツ、スギ、アカマツ、カラマツ、米マツ、米ツガ、スプールス、ラジアタパイン)、また杉突き板、杉単板、杉合板、松突き板、松単板、さらにDIYで入手できるコピー用紙、和紙、火山灰製焼結板、セラミックス板、窯業板、樹脂製板、樹脂膜上、ゲルコート膜上に塗布し、蒸気含浸した。
【0039】
各種有機/無機物溶液の塗布方法には、溶液と被処理対象物との組合せに応じて、はけ塗り、スプレー塗装、ロール塗装を適宜選定して、塗布量が同様になるように実施した。
【0040】
蒸気含浸方法は、以下の5種を実施した。
1) 水蒸気発生器 (100℃+α)、
2) 工業用水蒸気発生器 (145℃)、
3)市販スチームアイロン使用 (アイロン温度130℃、距離5cm、水蒸気温度100℃+α)、
4)加熱板と水蒸気発生器 (加熱板温度150℃、距離5cm、水蒸気温度100℃+α)、
5)加熱板と工業用水蒸気発生器 (加熱板温度200℃、距離5cm、水蒸気温度145℃)
6)加熱板と工業用水蒸気発生器 (加熱板温度230℃、距離5cm、水蒸気温度200℃)。
【0041】
この発明の蒸気含浸により、前記溶液と対象物のいずれの組合せであっても含浸が可能であることを確認した。しかし、作用効果は、蒸気含浸方法により差異があり、いずれの対象物に対しても、上記手段1)〜6)の順に含浸効果が向上し、特に手段4)〜6)は順に飛躍的に向上する。
例えば、従来、水溶性アクリル塗料は、杉や松などの板表面には塗布できても表層内に含浸させることができないこと、また無機質材、窯業板などその他多孔質材料に含浸しないことが、当業者間では常識であったが、これを含浸させることができた。
【0042】
上記手段1)及び2)は水溶性アクリル塗料の含浸には有効であったが、シリカ入りの水溶性アクリルを含浸させること困難であって、加熱源としてのアイロンや加熱板が必要であることを確認した。すなわち、シリカを含浸させて表層内の物性を改質するには、ある程度高温にしてやる必要があり、200℃程度のいわゆる高温乾き蒸気を使用するとよい。
【0043】
この発明において、蒸気は、被処理溶液内の有機無機物にエネルギーを与えた後、直ちに当該表面又は表層部内より飛散する必要があり、有機無機物にエネルギーを付与後に表面又は表層部内より蒸発散逸できるだけのエネルギーを有しているか、あるいは直ちに供給されるような、例えば塗布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、その対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して加熱板と処理表面間に熱対流が可能な雰囲気になっているとよい。
【0044】
従って、処理する塗布面が広い場合は、布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、当該加熱板自体又は複数配置する加熱板同士間の間隙から塗布面との対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して蒸気を加熱対流させるとよい。
【0045】
また、含浸工程または乾燥、固化、安定化のための加熱工程において、超音波振動手段を用いて蒸気及び有機/無機物を活性化させること、さらに塗布工程前又は該工程後あるいは該工程前後において、被処理物を加温することにより、含浸をより効率よく実施することができる。
【0046】
この発明において、含浸後の乾燥、固化、安定化のための加熱には、高温蒸気を接触させ続ける方法の他、上述の加熱板を用いたり、木工用などで公知の熱プレス装置で加熱と加圧を同時に行ったり、高周波加熱させるなどの方法を採用することができる。
【0047】
この発明において、有機/無機物の溶液としては、公知のコロイダルシリカ、水溶性塗料、水溶性接着剤などのいずれの溶液も採用でき、またシリカ、アルミナ、マグネシアなどのセラミックスや、塗料用に用いられる各種の顔料などの粒子が数nmから数μmの無機微粒子を含有する水溶性塗料、水溶性接着剤など、さらにはコロイダルシリカを混合した水溶性塗料、水溶性接着剤などを採用できる。なお、顔料の粒径はあまり大きいと含浸せず、好ましくは粒径が1μm以下のnmクラスのものである。また、有機溶剤を用いた塗料、セラミックスや顔料などを含有する有機溶剤を用いた塗料であっても、蒸気含浸の作用効果は同様であるが、環境のためには揮発させるものが少ない水溶性が好ましい。
【0048】
コロイダルシリカは、一般的なアルカリ性のものから中性のもの、シリカ粒子が数nmから数十μmのものいずれも採用することが可能である。木質材への含浸には中性で粒径が小さすぎないものが好ましく、最初比較的大きな粒から順次小さくする等の方法も採用できる。
【0049】
また、この発明において、有機/無機物の溶液として流動パラフィンを採用するのは、これがコロイダルシリカのごとくnmクラスの樹脂粒が流動性を有して液体としての挙動を示すためであり、また木質材や無機質材に含浸した後はnmクラスのシリカと同様に材料の硬度を向上させるなどの作用効果が得られること、特に木質材料が使用される温度範囲内では揮発しないために前記効果が消失しないことによる。
【0050】
なお、流動パラフィンは、一般にパラフィン内にワックス分を有しないものを指すが、蒸気含浸させるためにはその沸点が蒸気温度よりできるだけ高い沸点を有する性状のものを使用する必要がある。
【0051】
特に、この発明による改質方法は、有機/無機物の溶液の塗布面に蒸気を接触させて、有機/無機物の溶液を少なくとも被処理物表層内に含浸させる工程と、さらにこの処理面あるいはさらに被処理物全体を加熱する工程を特徴とするが、実施例に示すごとく、流動パラフィンを紙材や紙のような薄板材に蒸気含浸後、熱プレスを施すと、紙材は完全に樹脂化し、薄板材もほぼ樹脂板化する。
【0052】
さらにこの発明において、有機/無機物の溶液として、電子線によりラジカル重合して樹脂固化するオリゴマー、モノマーの水溶性塗料を採用することができる。この水溶性塗料を木質材、無機質材、窯業材などに含浸させた後、電子線を照射することで材料内で樹脂成分を完全に固化して材料と一体化できるため、軟質材から極めて強固な材料を作製できる。これは、後述する塗装工程と併用することも可能である。
【0053】
塗装、塗布方法
この発明において、被処理物の温度は、ある程度高温に保持しておくことで含浸が実施できることを明らかにしたが、逆に被処理物の温度が加熱板で必要以上に昇温しないように適当な冷却を行うことで、上述の含浸工程と同要工程で水溶性塗料の塗装を行うことが可能で、得られる塗膜は緻密で均一厚みとなる利点がある。
【0054】
すなわち、水溶性塗料を塗布した被塗装体と、その塗装予定表面近傍に配置した加熱板との間に、水蒸気雰囲気を形成してその水蒸気温度を高温にするか、被塗装体温度を高温にすることで該塗料が被塗装体の表層内に含浸するが、ここで被塗装体温度、塗料温度、水蒸気温度のいずれか1つの温度あるいは2つ以上の温度を制御して水溶性塗料の塗布面表層への含浸量を制御することが可能であり、特に被塗装体を所要温度に制御することで、水溶性塗料を塗膜として表面に固化させることが可能である。
【0055】
ここで、塗装予定表面近傍に配置した加熱板と当該表面との間に水蒸気雰囲気を形成すると、塗布した水溶性塗料の水分を水蒸気で気化除去することが可能である。一般に、水溶性塗料はその水分が除去されると直ちに固化し塗膜を形成するよう構成されているが、常温乾燥はもちろん熱風乾燥でも容易には水分除去できず、また均一に水分除去できないことはよく知られているところであり、この発明ではまさに加熱板と塗装予定表面間にある高温の水蒸気雰囲気が極めて効率よく水溶性塗料の水分を除去することができ、短時間でかつ均一に水分除去できるため、すぐれた性状の塗膜が得られる。
【0056】
また、この発明では、水蒸気を用いた含浸と塗装を各々別個に行うことはもちろん、含浸工程後に被処理体を一旦冷却してから含浸工程と同じ蒸気発生装置と加熱板を用いて塗装工程を実施することが可能で、さらに被処理体を冷却する手段を併用することで含浸工程後に塗装工程を連続的に行うことも可能である。この場合、固化させる水溶性塗料は、新たに塗布したものはもちろん、先の含浸工程で被処理体の表面に残留した水溶性塗料であっても均質な塗膜を形成できる。前記冷却手段は、例えば木工用パネルを載置するベッドに水冷装置を付設するなど、公知のいずれの加工、製造装置にも容易に適用可能である。
【0057】
塗装に際して、被塗装体の温度制御は、少なくとも含浸時の被塗装体の加熱温度は45℃以上、塗料の固化時の被塗装体の温度は40℃以下とすることが好ましく、さらには該加熱温度は50℃以上であり、塗料の固化時の被塗装体の温度は30℃以下とすることが望ましい。
【0058】
この発明において、水蒸気温度は、含浸方法も塗装方法も同様に高い方が好ましく、120℃以上、さらには140℃以上が好ましい。また、水蒸気圧は、被処理表面や該表面と加熱板間の雰囲気に高圧で噴射させる必要はないが、加熱板と塗装予定表面間に解放する直前の水蒸気圧力は高い方が好ましく、2MPa以上、さらには4MPa以上であることが望ましい。
【0059】
この発明において、加熱板温度は、含浸方法も塗装方法も同様に高い方が好ましく、200℃以上、さらには300℃以上が好ましい。また、加熱板と含浸又は塗装予定表面との距離は、5mm〜20mm程度に保持されることが好ましい。
【0060】
この発明において、含浸方法又は塗装方法に用いる水溶性塗料は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂のいずれかを主成分とする水溶性塗料又は水分散性塗料であることが好ましい。特に、水溶性塗料は、樹脂分と無機微粒子を水溶媒中に分散させた構成が好ましく、さらに固形成分が少ないほど好ましく、その樹脂分が20wt%以下、無機微粒子分が5%以下であること、また樹脂分が15%〜18%、無機微粒子分が2%〜5%であること、さらには樹脂分が10%以下、無機微粒子分が3%以下であることが好ましい。なお、上記の水溶性塗料成分はそのまま接着剤と利用されているものもあり、この発明の塗装方法で当該接着剤を塗布して、さらに他の材料を貼りつけたり、所謂転写を行うことが可能であることは言うまでもないことである。
【0061】
また、上記の無機微粒子は前述した種々のセラミック粒子が採用可能であるが、特に平均粒径が50nm以下のSiO2が好ましく、含浸と塗装が行われる場合は、含浸工程時の水溶性塗料の無機微粒子が、平均粒径が20nm以下、塗装工程時の水溶性塗料の無機微粒子が、平均粒径が20nmを超え50nm以下であることが好ましい。
【0062】
この発明による表層の改質方法(含浸方法)及び塗装方法を実施するための含浸又は塗装装置の構成としては、
1)被処理体の温度を所要温度にするための加熱又は冷却手段を有した被塗装体の載置又は保持装置、
2)被処理体の所要表面に水溶性塗料(有機/無機物の溶液)を塗布する塗布装置、
3)含浸、塗装予定表面近傍に加熱板を近接配置して加熱板を所要温度に保持する加熱板装置、
4)含浸、塗装予定表面と加熱板との隙間に高温高圧に保持した水蒸気を解放して同隙間内に水蒸気雰囲気を形成する水蒸気発生装置、
のそれぞれを備えることが好ましい。かかる装置は、後述する基板材料の製造方法で明らかにする各工程の好ましい条件を具備するとよい。
【0063】
基板材料とその製造方法
前述した水蒸気含浸による改質方法を工業的に適用する方法を以下に説明する。
この発明において、前述の蒸気含浸や塗装の処理対象の基板材料は、特に限定されるものでないが、以下の説明では、前述した発明の効果が顕著に得られる木質材又は無機質材の単板、木質材又は無機質材を含む積層板、あるいは化粧材を表面に有する前記単板又は前記積層板のいずれかをいう。すなわち、軟材や硬材とよばれる針葉樹材、広葉樹材等の木材の単板、これらの合板を初め集成材、木片や木粉を樹脂で固めたMDF、PB、炭酸カルシウム板等の無機質板の他、これらの積層材、これらと金属との積層材、さらには突き板、紙や樹脂フィルムなどの化粧材を表面に有する前記単板又は前記積層板等、公知のいずれの基板も採用できる。
【0064】
基板材料の表層に有機/無機物の溶液を含浸させる含浸工程は、被処理物表面に有機/無機物の溶液を塗布する工程、塗布面に蒸気を接触させて少なくとも溶液中の有機/無機物を被処理物の少なくとも表層内に含浸させる工程、あるいはさらに処理表面又は被処理物全体を加熱する工程を含むものである。
【0065】
かかる蒸気含浸法は、要するに、基板材料に与える水蒸気温度が高いほど、加熱源からの受熱熱量が多いほど、すなわち単位時間内に受ける水蒸気と加熱板からのエネルギーの総量が多いほど、さらにコロイダルシリカと接触している水蒸気が水滴化せずに加熱板(200℃程度)との間で熱対流を繰り返す条件を最適化するほど、処理表面状態の条件の差異にかかわらず含浸の速度が向上して、数秒、数分程度で急速に含浸し、乾燥する。
【0066】
蒸気は、被処理溶液内の有機無機物にエネルギーを与えた後、直ちに当該表面又は表層部内より飛散する必要があり、有機無機物にエネルギーを付与後に表面又は表層部内より蒸発散逸できるだけのエネルギーを有しているか、あるいは直ちに供給されるような、例えば塗布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、その対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して加熱板と処理表面間に熱対流が可能な雰囲気になっているとよい。
【0067】
従って、処理する塗布面が広い場合は、塗布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、当該加熱板自体又は複数配置する加熱板同士間の間隙から塗布面との対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して蒸気を加熱対流させるとよい。
【0068】
また、含浸工程または乾燥、固化、安定化のための加熱工程において、超音波振動手段を用いて蒸気及び有機/無機物を活性化させること、さらに塗布工程前又は該工程後あるいは該工程前後において、被処理物を加温することにより、含浸をより効率よく実施することができる。
【0069】
含浸後の乾燥、固化、安定化のための加熱には、高温蒸気を接触させ続ける方法の他、上述の加熱板を用いたり、木工用などで公知の熱プレス装置で加熱と加圧を同時に行ったり、高周波加熱させるなどの方法を採用することができる。
この発明は、基板材料の製造、特に基板材料の表層に凹凸形状を形成するロール成形又はプレス成形による成形工程の前工程かあるいは後工程に、かかる蒸気含浸法を施して、成形予定の材料表面を改質するかあるいは成形された材料表面を改質することにより、押圧塑性変形で形成された溝や紋様などの各種の凹凸形状が、材料自体の吸湿、水分や熱との接触があっても、いわゆるスプリングバックにて元形状に戻らないようにすることを特徴とするものである。
【0070】
この発明において、有機/無機物の溶液としては、公知のコロイダルシリカ、水溶性塗料、水溶性接着剤などのいずれの溶液も採用でき、またシリカ、アルミナ、マグネシアなどのセラミックスや、塗料用に用いられる各種の顔料などの粒子が数nmから数μmの無機微粒子を含有する水溶性塗料、水溶性接着剤など、さらにはコロイダルシリカを混合した水溶性塗料、水溶性接着剤などを採用できる。なお、顔料の粒径はあまり大きいと含浸せず、好ましくは粒径が1μm以下のnmクラスのものである。また、有機溶剤を用いた塗料、セラミックスや顔料などを含有する有機溶剤を用いた塗料であっても、蒸気含浸の作用効果は同様であるが、環境のためには揮発させるものが少ない水溶性が好ましい。
【0071】
蒸気含浸法を施して、基板材料の成形予定表面又は成形された材料表面を改質する、すなわちコロイダルシリカや水溶性塗料を含浸させることにより、含浸した表層部は材料の硬度や強度が向上するとともに、水分の移動が防止されるためスプリングバックが発生しなくなる。
【0072】
この蒸気含浸法は、含浸させる溶液がコロイダルシリカや水溶性塗料等いずれであっても、表面に溶液や塗料成分等は全く残留しないため、基板材料に塗装が必要な場合は、かかる含浸工程後に後続の工程等に応じて適時、前述した水蒸気による塗装方法、あるいは公知の塗装工程を適宜施すことになる。
【0073】
この発明において、基板材料の表層に凹凸形状を形成する成形工程と成形用金型には、公知の木工用のロール成形法又はプレス成形法のものが全て採用可能であり、成形する凹凸形状に応じて適宜選定するとよい。
【0074】
特に溝形状を施す場合や薄い化粧材料を貼着した基板材料の場合は、この発明による新規な突起形状を有する金型を使用するとよい。すなわち、この発明によるロール成形法又はプレス成形法の金型は、突起の長手方向に直行する垂直面での断面形状が複数の円弧で構成された円弧状で直線を含まないR突起を有していることを特徴とする。
【0075】
ロール成形法にて溝形状を成形するためのロール金型1について詳述すると、突起2の長手方向(ロールの周方向)に直行する垂直面での断面形状は、図1Aに示すごとく、突起2先端を中心に対称形で突出2先端は半径R1の円弧でその両側はそれぞれ半径R2の円弧で形成されている。寸法例を示せば、例えば図示の突起高さhが1.7mmの場合、突起全幅Wは8mm、半径R2は5mm、半径R1は0.3mmであり、またいわゆる突起の開き角度は130°程度で、断面形状に直線を含まないR突起を構成している。
【0076】
かかる断面形状に直線を含まないR突起を有するロール金型を用いて成形すると、薄い化粧紙を貼着した基板材料において、薄く弱い化粧紙を破断することなく所要深さのR溝形状を成形できる。また、従来のいわゆるV字型又は略V字型のように断面形状が直線部で構成されたV突起で形成された溝は、水分や熱で簡単にスプリングバックが発生するが、R突起の場合は、かかるスプリングバックが発生し難くなる効果を有する。従って、R突起による成形は、前述の蒸気含浸による改質効果との相乗効果によってかかるスプリングバックを防止できる。
【0077】
突起高さが2mmを越えるような比較的溝深さが深い場合の金型の突起は、図1Bに示すように前記の半径R1を有する突起先端部のみU型の略直線部分を有するが、他は図示と同様に単数又は複数の円弧の組合せからなるR突起形状とすることが、化粧材の破断やスプリングバックの防止の観点から好ましい。なお、この発明による金型を用いた成形法は、金型圧力は従来よりも高い圧力で行うことが、作用効果をより顕在化させるために好ましい。
【0078】
また、含浸工程後に成形工程を実施するか、あるいは成形工程後に含浸工程を経た基板材料の表面に、加熱板を近接して材料を加温したり、木工用などで公知の熱プレス装置で加熱と加圧を同時に行ったり、高周波加熱させるなどの加熱乾燥方法を採用することにより、前述したスプリングバックの防止効果をより安定化させることができる。
【0079】
さらに、この発明において、有機/無機物の溶液に紫外線又は電子線にて重合可能な水溶性の塗料や接着剤用いて、これを含浸させる含浸工程の前か後にロール成形又はプレス成形により成形工程を施し、さらに塗装などを施し、そして最後に当該処理面に紫外線又は電子線を照射して表層部及び含浸させた有機/無機物を重合・固化させる工程を採用することができる。この一連の工程により、含浸に伴う材料表層部の改質効果が著しく向上するとともに、得られた改質効果の安定化がより一層向上する。
【0080】
【実施例】
実施例1
基材側から、堅木、通常ラワン、堅木、和紙、0.2mm厚みの桜突き板となるように積層した新規な構成を有する木質床材を作製した。堅木、通常ラワン、堅木の順に積層構成をした安価な3×6尺、堅木貼りラワン合板を基材に採用した。
製造工程は、
ラワン合板の上面研磨による厚み規制(公差±0.2mm以下)工程、
グルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程、
和紙のセット工程、
グルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程、
桜突き板のセット工程、
蒸気含浸工程A、
桜突き板熱圧プレス(110℃×1分間)工程、である。
【0081】
蒸気含浸工程Aは、コロイダルシリカ(固形分30%、シリカ粒径30nm)を130g/m2の割合で桜突き板表面にロールコーターで塗布した後、熱圧プレス工程で使用する加熱板(180℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行った。
【0082】
上記構成の木質床材は、極めて薄い0.2mm厚みの桜突き板が、和紙で裏打ちされかつ突き板にnmクラスのシリカを含浸させたことから熱や傷などによる突き板の割れがなくなり、基材側からの水分移動が少なくなる。
また、コロイダルシリカの塗布量を増やしかつ加熱板温度を220℃に上げることで、シリカは和紙まで到達しており、基材側から突き板への水分移動がさらに少なくなった。
【0083】
換言すれば木質床材において、オーク柄からブナ、サクラ、メープル等の散孔材柄への移行の要求に対して、これらの散孔材のつき板による問題、すなわち、捺傷性が劣る、押し傷性が劣る、床暖房仕様への対応時に材料振れがある、大陽光等による変色がある、VOC問題がある。しかし、この発明による蒸気含浸を、表装材の桜突き板あるいはさらに和紙に施すことで、上述のいずれの問題をも解消できた。
【0084】
蒸気含浸工程Aにおいて、コロイダルシリカに換えて水溶性アクリル塗料(NSC社製、KD−20、固形分30%)を用いて、100g/m2の割合で桜突き板表面にロールコーターで塗布した後、先と同条件で蒸気含浸したところ、表面には樹脂層は全く見られず、重量測定で全量含浸したことを確認した。
【0085】
なお、前記水溶性アクリル塗料は、一般に塗布含浸がほぼ不能か極めて困難であるとされる中、樹脂類の平均分子量が比較的よく揃って小さく、又顔料もnmクラスであることから、前記の合板の表層によく密着できるものであったが、それでも50g/m2の割合で塗布して乾燥固化させた後、塗膜を可能な限り剥離して、剥離した塗膜重量を測定すると少なくとも45〜48gは測定できた。従って、前記水溶性アクリル塗料は、塗布含浸が極めて困難であることが明らかである。
【0086】
実施例2
実施例1と同じ構成の木質床材を、和紙のセット工程後に蒸気含浸工程Aを施す以外は実施例1と同じ工程で作製したところ、さらに合板全体の強度の向上と和紙により基材側から突き板への水分移動をほぼ防止できた。
【0087】
また、和紙のセット工程後に別の蒸気含浸工程Bと和紙熱圧プレス(110℃×1分間)工程を施した。すなわち、蒸気含浸工程Aのコロイダルシリカに換えて流動パラフィン(沸点230℃)を塗布して熱圧プレスで使用する加熱板(180℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行い、その後熱圧プレス(110℃×1分間)したところ、和紙は樹脂シート化された。もちろん、桜突き板との接着性は実施例1の場合と全く変化がなかった。
【0088】
実施例3
実施例1と同じ構成の木質床材を、
ラワン合板の上面研磨による厚み規制(公差±0.2mm以下)工程、
ロールコーターによる水溶性アクリル塗料の塗布工程、
和紙のセット工程、
蒸気含浸工程C、
和紙熱圧プレス(110℃×1分間)工程、
グルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程、
桜突き板のセット工程、
蒸気含浸工程A、
桜突き板熱圧プレス(110℃×1分間)工程、の各工程で作製した。
【0089】
蒸気含浸工程Cは、蒸気含浸工程Aのコロイダルシリカに換えて前の塗布工程で使用した水溶性アクリル塗料にコロイダルシリカを混合した混合溶液を使用してロールコーターで和紙に塗布した後、熱圧プレスで使用する加熱板(220℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行った。
【0090】
この工程により、和紙をアクリル樹脂シートのように改質して桜突き板の裏打ち機能と基材側からの水分遮断の機能を付与できた。さらには、水溶性アクリル塗料の顔料(酸化チタン白)にて紙に若干の色基調を与えることができたため、基材の堅木の色調や柄が突き板の色調と柄に影響を与えないようにすることが可能になった。すなわち、和紙で樹脂製の転写シートと同様の機能を簡単に付与できた。
【0091】
なお、前記のロールコーターによる水溶性アクリル塗料の塗布工程、和紙のセット工程および蒸気含浸工程Cにおける和紙への塗布は、和紙の両面に同じ水溶性アクリル塗料を塗布した後にラワン合板上にセットすることで、工程を簡略化できた。
【0092】
実施例4
実施例1〜実施例3において、桜突き板のセット工程、熱圧プレス後の下塗り塗装工程でこの発明の蒸気含浸工程を実施することができる。すなわち塗装工程は、
素材ブレヒート40℃、
スポンジロールで水性着色、
ジェットヒーター乾燥(板温50℃保持)、
蒸気含浸工程D、
塗料硬化乾燥工程、からなる。
【0093】
すなわち、蒸気含浸工程Dは、EB硬化型水溶性アクリル塗料にコロイダルシリカを混合した混合溶液を使用してロールコーター(ヒーター付)で桜突き板表面に塗布した後、熱圧プレスで使用する加熱板(220℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行った。その後、電子線照射乾燥炉でコロイダルシリカを混合した水溶性塗料をEB硬化させる。
【0094】
これによって、着色工程とシリカ及びEB硬化型アクリル樹脂の含浸固化を一連の工程で完了でき、合板の表面に設けた桜突き板を高硬度、高靭性化することが可能となった。
【0095】
実施例5
突き板を樹脂材にインサート成形する新規な成形工程で、成形後の突き板にこの発明の蒸気含浸を実施する例を説明する。まず、突き板構成貼りは、2種の厚み0.5mm突き板みを木目方向を考慮して積層し、さらに厚み.2mm高級木突き板を積層し、かつ熱可塑性接着剤を各突き板間に塗布して接着するか、あるいは熱可塑性フィルムを各突き板間に置き、プレス接着する。
【0096】
また、上記の突き板構成貼り時にポリ乳酸フィルム、酢酸セルロースフィルム等の生分解性フィルムを使用して突き板の生分解性の保持することができる。さらにこのフィルム樹脂内に5μm以下の微粒子無機物を混練してシートとなし、突き板の補強を行なうことができる。
【0097】
次に、金型プレスにより、前記の積層突き板を射出成形金型に挿入配置可能なように所望の形状に変形させる。この際、蒸気加熱して含水率を10%以下に保持して、例えば総厚みが1.2mmから0.3mm程度となるように圧縮成形する。
成形後の突き板を所定の射出成形用金型にインサート配置し、樹脂の射出成形を行い突き板との一体化を図る。ここで、射出成形用樹脂を従来のABS樹脂やアクリル樹脂に換えて、例えば同一種の杉から抽出した単純種のリグニン抽出樹脂粉と市販の天然セルロースなどの植物繊維質粉(混合比率3:7)との混練物樹脂とすることで、全ての材料の熱膨張係数をほぼ揃えることができ、突き板との剥離の問題を解消できる。なお、前記混練物樹脂は一度かぎりの熱硬化性樹脂となる。
【0098】
前記の積層突き板の表面に塗装を施す前、あるいは塗装工程の際にこの発明の蒸気含浸を実施して成形後の突き板にスプリングバックが起きないように固化する。すなわち、実施例1の蒸気含浸工程A,B,Cや、実施例4の蒸気含浸工程Dと同じ着色工程、シリカ及びEB硬化型アクリル樹脂の含浸固化、のいずれをも実施することができる。
【0099】
なお、多数層の高級塗装を行ったり、さらに転写シートで柄付け等を行う場合は、実施例1の蒸気含浸工程Aと同様工程でシリカを含浸させたり、蒸気含浸工程Bの流動パラフィンの含浸で樹脂化を行った後、塗装や転写工程を実施することができる。
【0100】
実施例6
実施例2において、合板2に積層する和紙と表面の桜突き板3に蒸気含浸工程Aでコロイダルシリカを蒸気含浸させて完成した突き板合板を用いて、図1に示す断面形状の金型1により、80kg〜130kg/cm2の圧力でプレスR溝加工して、いわゆるR溝を設けた。溝金型は、中央の突起部高さが2mmで、突起幅は0.3〜1.0mmの種々のものを試した結果、いずれも突き板側の溝深さが1.5〜1.7mmとなった。
【0101】
また、コロイダルシリカ又は水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させて完成した2種の突き板合板を用いて、図1に示す断面形状を有するプレス金型により、80kg〜130kg/cm2の圧力でプレスR溝加工して平行なR溝を多数設けた。金型の突起寸法は、突起高さhが1.7mm、突起全幅Wは8mm、半径R2は5mm、半径R1は0.3mmであった。
【0102】
従来工程による含浸工程が全くない桜突き板の場合は、プレスV溝加工を40〜50kg/cm2の圧力で行っても、突き板が直ちに割れてしまい湿潤テストを施すとスプリングバック現象で溝が戻りほとんど平坦に見える程度になっていた。また、この発明の金型を用いてプレスR溝加工を40〜50kg/cm2の圧力で行うと、表面が直ちに割れることが少ないものであったが、突き板に割れを生じる場合があるかあるいは割れずに溝形成ができた場合も、全て湿潤テストを施すとスプリングバック現象で溝が戻り一見筋に見える程度になっていた。
【0103】
また、従来工程による桜突き板にプレスV溝加工を施したものに、通常の床材や壁材用の塗装工程、例えばロールコウター、スプレー、擦りこみ等の公知の各種塗装を施して十分乾燥させ後、V溝に水を塗布して温水が入った熱いやかんを載置したところ、いずれの塗装の場合もV溝にスプリングバック現象が発生して、意匠上溝に見えなくなった。
【0104】
この発明による桜突き板の場合は、プレスR溝加工後に床材用として一般的なロールコーターによる塗装を行い、乾燥後同様の試験を行ったところ、スプリングバックは見られなかった。
【0105】
なお、上記の金型は、図示のごとく中央の突起部からの立ち上がり部が所要の単一半径又は複合半径のR形状となっているため、従来工程の未処理桜突き板であっても、表面が直ちに割れることが少ないものであったが、スプリングバック従来現象は同様に顕著であった。
【0106】
この発明の蒸気含浸対象がコロイダルシリカ又は流動パラフィンのいずれであっても、いずれの金型であっても形成されたR溝部の突き板に割れやひびの発生がなく、湿潤テストでもスプリングバック現象が皆無となった。
【0107】
実施例7
市販のMDF板材を用いて、表面に流動パラフィンを蒸気含浸させ、木工用化粧紙(23g/m2)と0.2mm厚みの桜突き板をそれぞれ貼着し、さらに水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させるとともに実施例6と同様条件で図1のロール金型によるロールR溝加工を行った。
【0108】
蒸気含浸工程を詳述すると、MDF板材表面に蒸気含浸工程Bにより流動パラフィンを蒸気含浸させた後、化粧紙又は桜突き板をグルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程で貼着し、貼着した化粧紙又は桜突き板表面に実施例1の蒸気含浸工程Aで水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させた。
【0109】
MDF板材表面に化粧紙、桜突き板を貼着し、実施例6のプレスR溝加工を行った結果、R溝部の化粧紙の破れや桜突き板の割れは皆無であり、湿潤テストでもスプリングバック現象が皆無となった。
【0110】
実施例8
実施例7と同様工程でMDF板材に化粧紙又は桜突き板を貼着した基板材料に、突起高さが2.1mmのロール金型によるロールR溝加工を行った。金型の突起は図1の半径R1を有する突起先端部近傍をU型に延出させて、他は図1と同様の円弧として、前記延出部は複数の円弧の組合せからなるR突起形状を有する。
ロールR溝加工を行った後に、化粧紙又は桜突き板表面に実施例1と同様の蒸気含浸工程Aにて水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させた。前工程でのR溝部の化粧紙の破れや桜突き板の割れは皆無であった。また、湿潤テストでも溝形状のスプリングバック現象が皆無となった。
【0111】
実施例9
実施例6の場合は、和紙層が合板からの水分の移動を防止しているため、また塑性変形を受けた表層部がいずれも改質されているため、R溝部のスプリングバック現象はもちろん合板の反り自体も防止されている。しかし、実施例7のMDF板の場合は、表層部がいずれも改質されているが、MDF板の裏面側からの水分の移動は防止できないため、MDF板自体に反りが発生する場合があった。
【0112】
そこで、図2に示すごとく、実施例7のMDF板材5に深さ0.5〜3mmで幅が極狭い寸法の縦溝6または針穴を5〜10mm間隔で全面、あるいは所要位置又は所要パターンで設けてから、蒸気含浸工程Bにより流動パラフィンを蒸気含浸させ、熱圧プレスした。この際、流動パラフィンの塗布量を150〜300g/m2と種々実施したが、いずれの場合も全て含浸することを重量測定で確認した。
【0113】
流動パラフィンを蒸気含浸させた後は実施例7の工程で、化粧紙、桜突き板を貼着し、貼着した化粧紙又は桜突き板表面に蒸気含浸工程A、B、Cでコロイダルシリカ、水溶性アクリル塗料、流動パラフィンをそれぞれ蒸気含浸させた。その後、実施例6のプレスR溝加工を行った。
【0114】
上述のごとく、MDF板材全体に流動パラフィンを蒸気含浸させた後、化粧紙又は桜突き板表面に種々の溶液を蒸気含浸させた積層型MDF板は、いずれの処理を施したものも、表層のR溝部の化粧紙の破れや桜突き板の割れは皆無であり、湿潤テストでもスプリングバック現象が皆無であった。
【0115】
さらに、この積層型MDF板を40℃の湯水槽に浸漬して5時間放置する試験を行った結果、剥離、部分崩壊、反り、曲がり等の問題は全く発生しなかった。
【0116】
実施例10
この発明による床板加工製造ラインを用いてこの発明による樹脂含浸、樹脂含浸・塗装、塗装の各試験を行った。詳述すると前記製造ラインは、図3、図4に示すごとく基材を搬送するコンベアライン10を有し、初段には基材加熱装置11、次段に水溶性塗料又は接着剤の塗布用のロールコウター12、蒸気含浸、塗装を行うための蒸気含浸装置13、基材に熱圧を加えるための熱ロール(アイロンプレス)14、終段には基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15が配置されている。
【0117】
図示の3つ蒸気含浸装置13は、コンベア10上の基材に所定間隔で対向する1枚の加熱板16を有し、加熱板16には各々6つの蒸気導入部17を設けた構成からなり、各加熱板16には蒸気導入部17上面を含め複数のヒーターが載置され、各蒸気導入部17の基材との対向面(下面)には図示のごとく所定間隔で蒸気ノズル孔18が多数配置してあり、蒸気導入部17内部に図示しない水蒸気発生装置から導入した高圧高温水蒸気が蒸気ノズル孔18より基材上面との隙間空間に解放される構成となっている。
【0118】
基材表面の改質を目的として水溶性塗料の樹脂含浸を行うには、例えば基材加熱装置11で基材を50℃以上に昇温し、ロールコウター12で基材の所要表層部の空隙率を考慮して含浸可能量以下の水溶性塗料を塗布し、蒸気含浸装置13で蒸気含浸を施し、熱ロール14で基材に熱圧を加え、基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15で乾燥させる。
【0119】
基材表面の改質を目的として水溶性塗料の樹脂含浸を行いかつ表面に塗膜を形成するには、例えば基材加熱装置11で基材を50℃以上に昇温し、ロールコウター12で基材の所要表層部の空隙率を考慮して含浸可能量以上の水溶性塗料を塗布し、蒸気含浸装置13で蒸気含浸を施し、熱ロール14を使用することなく、基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15で乾燥させる。
【0120】
基材表面に塗膜を形成するには、基材加熱装置11を使用することなく基材を40℃以上に保持し、ロールコウター12で所要量の水溶性塗料を塗布し、蒸気含浸装置13で蒸気含浸を施し、熱ロール14を使用することなく、必要に応じて基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15で乾燥させる。
上記の3方法を実施する際、基材の温度が一定の場合は、蒸気含浸装置13でのヒーター温度や蒸気温度を適宜選定することで、樹脂の基材表面への含浸度合いが異なり、これを制御できた。
【0121】
また一方、蒸気含浸装置13での加熱板16温度や隙間距離、並びに水蒸気温度が所要範囲であると、基材の温度を0℃〜60℃の種々温度に選定することで、基本的に含浸量を制御できることを確認した。すなわち、温度が高いほど含浸量が大きく上昇し、基材の温度が40℃以下になると含浸量が著しく減少し始め、25℃以下ではほぼ塗布のみとなり、20℃〜0℃では含浸させることができなかった。
【0122】
上述の構成の床板加工製造ラインにおいて、蒸気含浸装置13と熱ロール14との間に転写ロールを配置し転写加工構成に変更した製造ラインとなした。このラインで含浸させる対象を塗料と同様成分である例えばメラミン樹脂系の水溶性接着剤として基材表面に該接着剤が残存するように選定することで、含浸による表層の改質とともに改質に使用した当該接着剤がアンカー効果を持って表面に均一に定着させることが可能となった。従って、表層改質した基材に対して、種々の紋様の樹脂層あるいは金属やセラミックスの蒸着層を設けた転写フィルムを容易に貼り合わせることができ、その後転写フィルムを除去して転写層を基材表面に強固に密着させることが可能であった。
【0123】
【発明の効果】
この発明は、例えば軟材の杉板や杉合板の表層部を、従来の一般的な塗装による塗膜や樹脂フィルムなどの樹脂成分層を設けることなく、簡単に高硬度、高強度化することができ、この改質した単板や合板は塗膜なしの無垢のままでも高い耐候性と耐水性を有し、紫外線や水分の影響などを気にすることなく、種々の用途に利用可能となった。さらに、用途やデザインなどの要請から必要に応じて公知の種々塗装、転写フィルムなどを施すことが可能であり、表面が柔らかく傷つきやすいために極めて限定されていた杉板や杉合板の用途、適用範囲が著しく拡大することができる。
【0124】
この発明によると、実施例に明らかなように各種合板へのシリカ、樹脂の含浸により、種々の用途に適した強化合板を作製できる。また、この発明の蒸気含浸方法によって、ブロックタイプのアクリル水溶性樹脂を合板表面に含浸させ、表面の硬度、耐水性、耐熱性の向上と樹脂の木質繊維内部への含浸によるアンカー効果を生み、後工程等での塗装や接着剤などの密着強度が飛躍的に向上する効果が得られる。
【0125】
従来、水性塗料は無機質材料の表面には塗布できても含浸させることが極めて困難で、無機質材料の用途に応じて要求される硬度や耐食性、耐水性等の機能向上並びに品質保証には、有機溶剤を用いた塗料を使用するしかなかったが、この発明により、無機質材料板への水性塗料の含浸が可能になった。
【0126】
この発明によると、電子線にて重合可能な塗料等を用いるE.B.技術との併用により、各種多孔質材料への表面処理が可能になる。すなわち、ラジカル重合可能な水溶性塗料を用い、これにコロイダルシリカを混合して粘度調整し、この発明の蒸気含浸法によって含浸させ、各材料表面の硬度、耐水性、耐熱性の向上を達成できる。
【0127】
さらにこの発明による蒸気含浸は、木質材料、紙材などに流動パラフィンを材料表面などの部分的あるいは材料全体に任意の箇所にかつ極めて均一に含浸させることが可能であり、流動パラフィンを含浸した木質材料、紙材は、その強度、硬度、耐水性、耐傷性などが著しく向上し、特に薄い突き板や紙は外観や意匠は変化することなく、それが樹脂化するほどに改質することが可能である。
【0128】
この発明による基板材料の製造方法は、溝等の意匠性凹凸形状を紙やフィルムなどの化粧材を破断することなく確実に設けることが可能で、成形後に当該材料が吸湿したり、水分塗布しても前記溝などの意匠性凹凸形状がスプリングバックで元に戻ることがなく、成形後の経時変化がなく安定した塑性変形を木質部に付与できる。
【0129】
また、この発明の蒸気含浸方法によって、ブロックタイプのアクリル水溶性樹脂を合板表面に含浸させると、表面の硬度、耐水性、耐熱性の向上効果とともに、樹脂の木質繊維内部への含浸によるアンカー効果を生み、後工程等での塗装や接着剤などの密着強度が飛躍的に向上する効果が得られる。
【0130】
また、実施例で明らかにしたように、実機の床板加工及び転写製造ラインで、水溶性接着剤を用い、含浸による表層の改質とともに改質に使用した当該接着剤にアンカー効果を持たせて表面に均一に定着させ、基材に例えば金属やセラミックスの蒸着層を設けた転写フィルムを貼り合わせて転写層を基材表面に強固に密着させることが可能であることから、木質材や無機質板材の表層を強化した上、金属やセラミックス材の蒸着層をあたかも直接スパッタリングしたように強固に緻密に密着させることが可能である。従って、木質材や無機質板材に新規機能を付与した新たな用途に利用可能な材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による金型の突起断面形状を示す縦断説明図である。
【図2】MDF板材表面に設けた溝形状の説明図である。
【図3】この発明による含浸・塗装装置の配置構成を示す上面説明図である。
【図4】この発明による蒸気含浸装置の説明図である。
【図5】Aはこの発明による蒸気含浸装置に用いた加熱板の一部側面説明図であり、Bは蒸気ノズル部の説明図である。
【符号の説明】
1 金型
2 合板
3 突き板
5 MDF板材
10 コンベア
11 基材加熱装置
12 ロールコウター
13 蒸気含浸装置
14 熱ロール
15 高周波乾燥装置
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、杉板や杉合板の表層部を、従来の一般的な塗装による塗膜や樹脂フィルムなどの樹脂成分層を設けることなく、簡単に高硬度、高強度化、耐水性化することができる改質方法であって、水蒸気を用いて有機/無機物の溶液を含浸させることにより、木質材、無機質材、窯業材のような多孔質材の表面及び表面から所要深さまでの表層部の改質を行うことが可能で、同様方法で表面に塗膜を形成することも可能な技術である。
また、この発明は、木質単板、突き板や樹脂フィルム等を木質板や無機質板に積層した積層板、あるいは転写による転写樹脂層、樹脂フィルムや紙などの意匠性化粧材を有し、その表面に溝等の意匠性凹凸形状を設けた床材、壁材、家具材料等に用いられる基板材料の製造方法に上記の改質及び塗装方法を適用するもので、ロール又はプレス形成にて溝等の意匠性凹凸形状を化粧材を破断することなく確実に設けることが可能で、成形後に当該材料が吸湿したり、水分塗布しても前記溝などの意匠性凹凸形状がスプリングバックで元に戻ることがなく、成形後の経時変化がなく安定した塑性変形を木質部に付与できる基板材料とその製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
木材、特に樅、とど松、から松、杉、ひば、さわらなどの針葉樹材は、軽く柔らかいことから軟材(soft wood)と呼ばれ、所要断面形状を有するコア材の場合は種々建築用資材として広範囲に利用される。
しかし、軟材のスライスされた単板や合板の用途では、板表面が柔らかくかつ傷つきやすいために、例えば構造用合板としては使用できるが、接触などが避けられない床材や壁材等の場合は利用が制限されるなど、その用途が極めて限定されている。
【0003】
また、現在は、無垢材や合板の形態にかかわらず、床や壁、ドア材料に従来のオーク柄からブナ、サクラ、メープル等の散孔材柄へ嗜好が移行している。
無垢材や種々合板などの使用形態のいずれの場合においても、軟材を表層に用いると、硬材に比較して当然のことながら、捺傷性が劣る、押し傷性が劣る、床暖房仕様に適用する際に適した材料が少ないかあるいは偏るなどのいわゆる材料ふれがあり、また大陽光等の紫外線による変色が発生する、使用する接着剤や表装剤などにVOC問題があるなど、種々の解決すべき問題が多々ある。
【0004】
一方、建築用材料として各種合板、MDF、PB、集成材、無機質板等の各種基板の他、これら基板に樹脂フィルム、化粧紙や突き板等の意匠性化粧材を貼りつけた化粧材基板がよく知られている。
かかる基板材料は、通常は平面的でデザイン性に乏しい。そこで平面的意匠をより立体的に見せるため、平板に意匠性面材を貼りつけた後、刃物で研削したり、プレスにて溝加工を施すことが行われている。
【0005】
例えば、平金型やロール金型で断面形状がV型の溝を形成したり、該V型の溝を設けた後にさらにその肩部を押し広げたり、また刃物でU型、V型の溝を形成してその肩部を円弧状に変形させたり、さらには、溝断面形状を階段状にした階段状溝など、各種の溝付け、意匠性の凹凸形状などが形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の床や壁、ドア材料など木材には、意匠として材料自体に溝や穴加工、研削加工、プレス加工などが施されるが、木材の含有水分の安定化とともにその加工形状性の維持には種々の工夫が必要とされている。従って、加工を施した木質材料の場合も、その表面が高硬度、耐水性などを有していることが求められるが、木質材料に最適の水性塗料や水性接着剤などは、これを表層内に含浸させることはできなかった。
【0007】
また、前記刃物による溝加工は、溝部の意匠性が材料の除去にて溝部の意匠性が大きく変化する問題がある。また、特にプレスによる溝加工は、貼着した意匠性面材が破断したり、プレスによる塑性変形部分が経時的に元に戻ってしまうという問題がある。
【0008】
木質系材料に施された塑性変形が容易に元に戻る理由は、材料自体の含水率の変化が入熱や雰囲気湿度の変動で容易にもたらされることにあり、例えば材料自体の吸湿作用によるもの、加工部に水分の付着あるいはさらに熱が加わると直ちに元に戻り始めることは、よく知られている。
【0009】
この対策のために、成形後に180℃程度、あるいはそれ以上の高温で型押しプレスによる永久歪みが付与されているが、この処理で意匠性面材が損傷する場合があり、表面の化粧材等が限定されてしまう。しかし、この処理後でも、例えば70℃の温水に2分間浸漬すると、例外なしにほとんど元の形状に戻ることが知られている。
【0010】
この発明は、木質材、無機質材、窯業材のような本質的に多孔質材ではあっても、水性塗料や水性接着剤などを塗布含浸することが全くできなかった各種材料表面に、水溶性の有機/無機物を含浸させて材料表層を改質することが可能な表層の改質方法とその装置並びに得られた改質処理物の提供を目的としている。
【0011】
また、この発明は、組成変形可能な材料を表層に有する基板材料のかかる問題を解消し、溝等の意匠性凹凸形状を紙やフィルムなどの化粧材を破断することなく確実に設けることが可能で、成形後に当該材料が吸湿したり、水分塗布しても前記溝などの意匠性凹凸形状がスプリングバックで元に戻ることがなく、成形後の経時変化がなく安定した塑性変形を木質部に付与できる基板材料とその製造方法並びに成形用金型の提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、軟材の表面を改質、特に塗装のような塗膜などを設けることなく、また木材自体の表面意匠や美観を損傷、変化させることなく、当該表面を硬質化、耐炎性化あるいは耐水性化する方法について種々検討した結果、まずコロイダルシリカなどの無機物溶液を用いて含浸させることに着目し、特に水分を除くシリカだけを木材の表層に含浸させる方法について、鋭意検討したところ、コロイダルシリカを木材表面に塗布して、高温蒸気、特に水滴化しないように温度エネルギーを与え続けながら蒸気を該塗布面に接触させると、木材表面に塗布したコロイダルシリカが泡を吹きながら表層内に含浸することを知見し、また、当該処理後に表面が濡れたり、塗膜が形成されるなどの該当表面の意匠や形態を全く変化させることなく、さらには塗布した溶液の全てを含浸させることが可能であり、木材表層部がシリカを含むことで同部が硬質化し、傷つき難くなることを知見した。
【0013】
また、発明者は、木質材料に含浸することがなかった水性塗料や水性接着剤などに対しても、同様に高温蒸気をその蒸気温度が低下して水滴化することがないように、例えば高温に保持した加熱プレートを塗布面に近接して高温蒸気を接触させると、これも水性塗料が泡を吹きながら含浸して、また木材の厚み端面の導管から蒸気が出てくるようになり、塗布した水性塗料は表面に塗膜を形成することなく、木材の表層内に水性塗料成分が含浸して当該表面を硬質化、耐炎性化あるいは耐水性化できることを知見した。
【0014】
また、発明者は、コロイダルシリカ液と水溶性塗料又は水溶性接着剤を混合した有機/無機物の溶液の場合も、前記木質材はもちろん、各種の建築材料として市販されている無機質材や窯業材に対しても同様に高温蒸気の接触のもとに、各材料の表層に含浸させることが可能であり、被処理材質に応じて適宜有機/無機物の溶液を選定することで、木質材、無機質材、窯業材の各表面が本来有していない機能を付与できることを知見した。
【0015】
また、発明者は、木質材などの被処理材の表面に細溝を設けたり、針孔などを適宜間隔で設けることで、上述のこの発明による蒸気含浸を実施した際の含浸処理速度や効率あるいは含浸深さを適宜制御でき、被処理材質や付与したい機能などに応じた種々の改質処理を各種材料に適用可能であることを知見した。
【0016】
また、発明者は、この発明における有機/無機物の溶液中の水分や接触する水蒸気によって、木質材などの被処理材の含水量が変化するか否かを検討したところ、この高温水蒸気は塗料成分やシリカなどにエネルギーを与えるとともに当該溶液中や被処理材中の水分と一部入れ換わったりすると思われるが、高温水蒸気がエネルギー付与の機能を果たすように加熱板を用いるなど高温エネルギーを補給するように操作することから、上述のこの発明による蒸気含浸の実施中には若干含水量が増加するが、処理後には自然と飛散して処理前と同様になることを確認した。
【0017】
また、発明者は、被処理材の表面が例えば積層材に貼着した突き板、MDFなどに貼着した化粧紙や転写シートなどであっても、この発明の蒸気含浸が同様に適用でき、突き板はもちろんのこと、化粧紙や転写シートとMDFの表層の両方に水溶性塗料などの有機/無機物の溶液成分を含浸させることが可能で、例えば、表面が高硬度の突き板、化粧紙や転写シートを有する積層材を製造できることを知見した。
【0018】
さらに、発明者は、この発明による蒸気含浸は、前記の化粧紙や転写シートを有するMDF材、積層材のごとく、表面に意匠性の溝部や模様を型押しを施す構成の場合であっても、適用可能であり、特に従来は型押し成形後に材料の含水量の変動が生じた場合には、全体の反りや溝部や模様等がスプリングバックでその形状性が崩れることがあったが、この発明による蒸気含浸を適用すると、化粧紙や転写シートごと水溶性塗料成分が含浸して改質されているから、表面側からも内部側からも塑性変形させた表層部へは水分の移動がなく、スプリングバック等が防止されてい成形形状は極めて安定しており、高機能、高意匠性の建築材料を簡単に製造できることを知見した。
【0019】
また、発明者は、この発明による蒸気含浸により、有機/無機物の溶液として流動パラフィンを木質材料の全体、すなわち厚み及び平面方向のいずれにも均一に含浸させることが可能で、従来は表層の極浅いところに含浸させる場合でも塗布含浸、塗布吸引、加圧浸漬のいずれもが長時間を要するだけでなく不均一であり、また表層より深い部位には含浸させることができない問題を解消できることを知見した。
【0020】
さらに、発明者は、この発明による蒸気含浸により、有機/無機物の溶液として紫外線又は電子線にて重合可能な水溶性塗料又は水溶性接着剤を用いて、木質材、無機質材、窯業材のいずれの材料にも含浸させることができ、含浸させた後に紫外線又は電子線の照射で樹脂成分が完全重合するため、処理した表層に極めて高硬度、高耐食性などの高機能を付与できることを知見した。
【0021】
以上の発明者の知見から明らかなように、高温水蒸気と加熱プレートを使用する水蒸気含浸法は、水溶性塗料などの有機/無機物の溶液成分を基板表層に含浸する度合いを制御できることから、高温水蒸気と加熱プレートの温度制御を適宜行うことで表面に塗装膜を形成できることは当然であり、従来密着性が十分でないとされている水溶性塗料の塗装膜を、先に含浸させた同塗料とともに一体化させて固化可能であり、極めて密着性にすぐれた水溶性塗料膜を形成できる。
【0022】
また、発明者は、水溶性接着剤を用い、含浸による表層の改質とともに改質に使用した当該接着剤にアンカー効果を持たせて表面に均一に定着させ、例えば金属やセラミックスの蒸着層を設けた転写フィルムを基材に貼り合わせ、転写層を基材表面に強固に密着させることが可能であることを知見した。従って、木質材や無機質板材の表層を強化した上、金属やセラミックス材の蒸着層をあたかも直接スパッタリングしたように強固に緻密に密着させることが可能なり、木質材や無機質板材に新規機能を付与した新たな用途に利用可能な材料を提供できる。
【0023】
上述した蒸気含浸法と塗装方法を完成した発明者は、さらに、基板材料の表層自体あるいは表面に設けられた意匠性面材を破断しないため、さらには成形された溝など凹凸形状がスプリングバックを起こさないようにするためのロール又はプレス金型形状について、種々検討した結果、前記溝形状を形成するための金型突起は、その縦断面形状が従来の所謂V字型又は略V字型のように直線部で構成された形状ではなく、金型先端を含めて全て適宜半径の円弧面で形成される必要があることを知見した。
【0024】
また、発明者は、金型突起の縦断面形状についてさらに検討した結果、金型先端を含めて全て適宜半径の円弧面で形成された形状、または、U型のごとく先端部のみ、板材に対して略平行な部分の溝幅方向の長さは最大1mm程度、金型先端の略平坦部は0.3〜1mmで、その他は全て適宜半径の円弧で形成された形状、あるいは、溝を形成するための突起高さが2〜2.5mmを越える場合、先端部に直線部分を有するが、その他は全て適宜半径の円弧で形成された形状が必要があることを知見した。
【0025】
また、発明者は、前記金型の使用とともに、塑性変形部分のスプリングバックに対して、溝形状のプレス成形後の塑性変形を水分などで元に戻さないように、当該表層部分に改質処理を施すことに着目し、鋭意検討した結果、発明者が先に知見した蒸気含浸法にて、コロイダルシリカやSiO2微粒子を含む有機/無機物の溶液、例えば水溶性塗料成分を基板表層に含浸させることにより、目的が達成できることを知見した。
【0026】
すなわち、発明者は、前記の化粧紙や印刷シートを有するMDF材、積層材のごとく、表面に意匠性の溝部や模様を型押しを施す構成の場合、特に従来は型押し成形後に材料の含水量の変動が生じた場合には、全体の反りや溝部や模様等がスプリングバックでその形状性が崩れることがあったが、この発明による蒸気含浸法を適用すると、化粧紙や樹脂シートごと水溶性塗料成分が含浸して改質されているから、表面側からも内部側からも塑性変形させた表層部へは水分の移動がなく、スプリングバック等が防止されて成形形状は極めて安定しており、高機能、高意匠性の建築材料を簡単に製造できることを知見した。
【0027】
【発明の実施の形態】
表層の改質、含浸方法
以下に、この発明を知見して完成するに至った実験や実施例を詳述する。先に発明者は、ある種の有機溶剤中に粒径がnmクラスのシリカを凝集させることなく均一分散させた有機/無機塗料を作製して、当該塗料を杉材の薄板に塗布すると、驚くほど材料の表層内に含浸することを知見していた。
これは、nmクラスのシリカを均一分散させることが可能な有機溶剤には特定の条件があり、シリカの大きさと関連して所定の分子量を有することが必要であり、かつ当該条件範囲が極めて狭いものであった。また、nmクラスのシリカを均一分散させた有機/無機塗料は、塗布後に示す相手材への浸透力には、まるで活性化しているかのごとくであり、さらに当該塗料は一定期間後にそのエネルギーが失われてシリカの二次凝集が始まり先の浸透力が減衰することもあった。
【0028】
一方、環境問題を考慮すると、木材などの表面処理には水性塗料等の使用が好ましく、種々のものが開発されているが、脂の少ない材料であっても水性塗料の付着力は比較的弱く、当然脂の多い材料では水性塗料はその塗膜が剥離しやすいものであり、塗布できても全く含浸することがないことは塗料や木工の当業者の常識でもあった。
【0029】
発明者は、シリカの浸透力を発揮させることが可能な先の有機/無機塗料の無公害化や、水溶性化を研究するうちに、コロイダルシリカを杉の薄板に含浸させられないかと着目し、種々検討した。その結果、先の有機/無機塗料では、超微粒子のシリカが本来有しているエネルギーを有効利用できるように特定分子量の樹脂中に均一分させていたが、一般にコロイダルシリカでは二次凝集しようとするシリカをpH調整や特定イオンの介在させる溶液条件でかろうじてこれを分散させている状態であって、シリカが本来有しているエネルギーを有効利用できる条件下にはなく、コロイダルシリカを杉の薄板に塗布しても全く含浸しないものであると想定した。
【0030】
そこで発明者は、コロイダル中でかろうじて分散しているシリカを活性させる方法を種々検討した結果、水蒸気を用いてエネルギーを与える、すなわちコロイダルシリカを木材表面に塗布した後、高温水蒸気を接触させると、シリカが活性化して木材表面に含浸することを知見した。
【0031】
知見時の実験を説明すると、まず被処理木材(杉板)と塗布するコロイダルシリカ(固形分30%、シリカ粒径10nm)の重量(m2当たり130g)を測定し、木材表面にコロイダルシリカを塗布した後、高温水蒸気(145℃、市販の工業用水蒸気発生装置)を塗布表面の水分がなくなるまで接触させ、再度被処理木材の重量を測定した。また、この時に要した処理時間だけ、前記と同様の被処理木材に高温水蒸気を接触させて、その時の含水量の増加を測定したところ、約2%の増加を確認したが、その後放置して再度重量を測定したところ、前記2%分の低下を確認した。
【0032】
コロイダルシリカを塗布した後に、さらに当該表面が乾くまで水蒸気を接触させた後、被処理木材の重量を測定したところ、コロイダルシリカの固形分及び前記自重の2%分の重量増加を確認した。その後の放置後の重量測定では固形分(m2当たり約40g)相当のみの重量増加を確認した。
かかる蒸気含浸後の被処理木材(杉板)は、処理前は爪を立てると傷が付くものが、処理後は容易には傷が付かず、爪先に痛みを感じるほどの力でもほとんど傷が付かないことから、この蒸気含浸ににてシリカ含浸がなされて杉材表層の改質がなされたことを確認した。
【0033】
その後、杉板に換えて、市販のから松、杉、ひばなど各種の軟材、桧などの硬材の単板やこれらを表面に貼着した合板に対して、前記と同様条件の蒸気含浸にてコロイダルシリカを塗布、含浸させてみたところ、いずれも同様に木材表面の硬度向上の改質効果を得た。
【0034】
上述の高温水蒸気による木材表面へのコロイダルシリカの塗布、含浸は、いずれの木材材料においても、かなりの長時間を要するか、あるいは板表面を乾燥させるために大量の蒸気を要することを知見した。
【0035】
そこで、含浸を効率よくする実施方法を目的に検討し、コロイダルシリカの水分とシリカにさらに大量にかつ連続的にエネルギーを与えることに着目してさらに種々検討したところ、市販スチームアイロンのように高温水蒸気と共に加熱板を併用して、コロイダルシリカの塗布面に作用させる水蒸気を加熱板との間で加熱対流させると、エネルギーを失って水滴化する水蒸気がなくなるようにエネルギーが注入されるため、先の実験と同量の塗布量の場合、コロイダルシリカが泡立ちながら含浸して、直ちに単板の端面より水蒸気が出て来るのを確認できるほど含浸力が向上し、前述のごとく重量測定からシリカの全量が含浸することを確認した。
【0036】
また、工業用スチームの噴射のみ、市販の高温スチームアイロン、5〜10mm厚みの鉄板に電気ヒーターを設けた加熱板と工業用スチームの噴射を併用するなどの装置の違い、あるいは用いたアイロンや加熱板の処理表面への近接離反(20cm〜3cm)等、処理表面への水蒸気と加熱源からの熱量が種々の量となるように多くの組合せを試してみたところ、水蒸気温度が高いほど、加熱源からの受熱熱量が多いほど、すなわち単位時間内に受ける水蒸気と加熱板からのエネルギーの総量が多いほど、さらにコロイダルシリカと接触している水蒸気が水滴化せずに加熱板(200℃程度)との間で熱対流を繰り返す条件を最適化するほど、処理表面状態の条件の差異にかかわらず含浸の速度が向上して、数秒、数分程度で急速に含浸し、乾燥することを知見した。
【0037】
次に、処理対象をこれまでの木材に換えて、市販されているいずれも表面処理なしの種々の火山灰製焼結板、セラミックス板、窯業板、さらには樹脂製板、船舶に塗布されて劣化していたゲルコート膜に対しても、上述と同様条件のコロイダルシリカの蒸気含浸を行ったところ、木材材料の場合と同様の含浸工程、作用が得られ、表面硬度の向上効果が得られることを確認できた。
【0038】
さらには、有機/無機物の溶液として、前記のコロイダルシリカの粒子径を7nm〜50nmで種々変化させた場合、また市販の水溶性アクリル塗料(アクリル−ウレタン系樹脂分50%)のみの場合、また水溶性アクリル塗料とコロイダルシリカの混合溶液をそれぞれ作製して、前記同様条件で、いわゆる日曜大工用品点(DIY)で入手できる種々の普通合板、構造用合板、すなわち広葉樹合板(シナ、カバ、セン、ブナ、ナラ、メランティ、アピトン、カポール)、針葉樹合板(カラマツ、エゾマツ、スギ、アカマツ、カラマツ、米マツ、米ツガ、スプールス、ラジアタパイン)、また杉突き板、杉単板、杉合板、松突き板、松単板、さらにDIYで入手できるコピー用紙、和紙、火山灰製焼結板、セラミックス板、窯業板、樹脂製板、樹脂膜上、ゲルコート膜上に塗布し、蒸気含浸した。
【0039】
各種有機/無機物溶液の塗布方法には、溶液と被処理対象物との組合せに応じて、はけ塗り、スプレー塗装、ロール塗装を適宜選定して、塗布量が同様になるように実施した。
【0040】
蒸気含浸方法は、以下の5種を実施した。
1) 水蒸気発生器 (100℃+α)、
2) 工業用水蒸気発生器 (145℃)、
3)市販スチームアイロン使用 (アイロン温度130℃、距離5cm、水蒸気温度100℃+α)、
4)加熱板と水蒸気発生器 (加熱板温度150℃、距離5cm、水蒸気温度100℃+α)、
5)加熱板と工業用水蒸気発生器 (加熱板温度200℃、距離5cm、水蒸気温度145℃)
6)加熱板と工業用水蒸気発生器 (加熱板温度230℃、距離5cm、水蒸気温度200℃)。
【0041】
この発明の蒸気含浸により、前記溶液と対象物のいずれの組合せであっても含浸が可能であることを確認した。しかし、作用効果は、蒸気含浸方法により差異があり、いずれの対象物に対しても、上記手段1)〜6)の順に含浸効果が向上し、特に手段4)〜6)は順に飛躍的に向上する。
例えば、従来、水溶性アクリル塗料は、杉や松などの板表面には塗布できても表層内に含浸させることができないこと、また無機質材、窯業板などその他多孔質材料に含浸しないことが、当業者間では常識であったが、これを含浸させることができた。
【0042】
上記手段1)及び2)は水溶性アクリル塗料の含浸には有効であったが、シリカ入りの水溶性アクリルを含浸させること困難であって、加熱源としてのアイロンや加熱板が必要であることを確認した。すなわち、シリカを含浸させて表層内の物性を改質するには、ある程度高温にしてやる必要があり、200℃程度のいわゆる高温乾き蒸気を使用するとよい。
【0043】
この発明において、蒸気は、被処理溶液内の有機無機物にエネルギーを与えた後、直ちに当該表面又は表層部内より飛散する必要があり、有機無機物にエネルギーを付与後に表面又は表層部内より蒸発散逸できるだけのエネルギーを有しているか、あるいは直ちに供給されるような、例えば塗布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、その対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して加熱板と処理表面間に熱対流が可能な雰囲気になっているとよい。
【0044】
従って、処理する塗布面が広い場合は、布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、当該加熱板自体又は複数配置する加熱板同士間の間隙から塗布面との対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して蒸気を加熱対流させるとよい。
【0045】
また、含浸工程または乾燥、固化、安定化のための加熱工程において、超音波振動手段を用いて蒸気及び有機/無機物を活性化させること、さらに塗布工程前又は該工程後あるいは該工程前後において、被処理物を加温することにより、含浸をより効率よく実施することができる。
【0046】
この発明において、含浸後の乾燥、固化、安定化のための加熱には、高温蒸気を接触させ続ける方法の他、上述の加熱板を用いたり、木工用などで公知の熱プレス装置で加熱と加圧を同時に行ったり、高周波加熱させるなどの方法を採用することができる。
【0047】
この発明において、有機/無機物の溶液としては、公知のコロイダルシリカ、水溶性塗料、水溶性接着剤などのいずれの溶液も採用でき、またシリカ、アルミナ、マグネシアなどのセラミックスや、塗料用に用いられる各種の顔料などの粒子が数nmから数μmの無機微粒子を含有する水溶性塗料、水溶性接着剤など、さらにはコロイダルシリカを混合した水溶性塗料、水溶性接着剤などを採用できる。なお、顔料の粒径はあまり大きいと含浸せず、好ましくは粒径が1μm以下のnmクラスのものである。また、有機溶剤を用いた塗料、セラミックスや顔料などを含有する有機溶剤を用いた塗料であっても、蒸気含浸の作用効果は同様であるが、環境のためには揮発させるものが少ない水溶性が好ましい。
【0048】
コロイダルシリカは、一般的なアルカリ性のものから中性のもの、シリカ粒子が数nmから数十μmのものいずれも採用することが可能である。木質材への含浸には中性で粒径が小さすぎないものが好ましく、最初比較的大きな粒から順次小さくする等の方法も採用できる。
【0049】
また、この発明において、有機/無機物の溶液として流動パラフィンを採用するのは、これがコロイダルシリカのごとくnmクラスの樹脂粒が流動性を有して液体としての挙動を示すためであり、また木質材や無機質材に含浸した後はnmクラスのシリカと同様に材料の硬度を向上させるなどの作用効果が得られること、特に木質材料が使用される温度範囲内では揮発しないために前記効果が消失しないことによる。
【0050】
なお、流動パラフィンは、一般にパラフィン内にワックス分を有しないものを指すが、蒸気含浸させるためにはその沸点が蒸気温度よりできるだけ高い沸点を有する性状のものを使用する必要がある。
【0051】
特に、この発明による改質方法は、有機/無機物の溶液の塗布面に蒸気を接触させて、有機/無機物の溶液を少なくとも被処理物表層内に含浸させる工程と、さらにこの処理面あるいはさらに被処理物全体を加熱する工程を特徴とするが、実施例に示すごとく、流動パラフィンを紙材や紙のような薄板材に蒸気含浸後、熱プレスを施すと、紙材は完全に樹脂化し、薄板材もほぼ樹脂板化する。
【0052】
さらにこの発明において、有機/無機物の溶液として、電子線によりラジカル重合して樹脂固化するオリゴマー、モノマーの水溶性塗料を採用することができる。この水溶性塗料を木質材、無機質材、窯業材などに含浸させた後、電子線を照射することで材料内で樹脂成分を完全に固化して材料と一体化できるため、軟質材から極めて強固な材料を作製できる。これは、後述する塗装工程と併用することも可能である。
【0053】
塗装、塗布方法
この発明において、被処理物の温度は、ある程度高温に保持しておくことで含浸が実施できることを明らかにしたが、逆に被処理物の温度が加熱板で必要以上に昇温しないように適当な冷却を行うことで、上述の含浸工程と同要工程で水溶性塗料の塗装を行うことが可能で、得られる塗膜は緻密で均一厚みとなる利点がある。
【0054】
すなわち、水溶性塗料を塗布した被塗装体と、その塗装予定表面近傍に配置した加熱板との間に、水蒸気雰囲気を形成してその水蒸気温度を高温にするか、被塗装体温度を高温にすることで該塗料が被塗装体の表層内に含浸するが、ここで被塗装体温度、塗料温度、水蒸気温度のいずれか1つの温度あるいは2つ以上の温度を制御して水溶性塗料の塗布面表層への含浸量を制御することが可能であり、特に被塗装体を所要温度に制御することで、水溶性塗料を塗膜として表面に固化させることが可能である。
【0055】
ここで、塗装予定表面近傍に配置した加熱板と当該表面との間に水蒸気雰囲気を形成すると、塗布した水溶性塗料の水分を水蒸気で気化除去することが可能である。一般に、水溶性塗料はその水分が除去されると直ちに固化し塗膜を形成するよう構成されているが、常温乾燥はもちろん熱風乾燥でも容易には水分除去できず、また均一に水分除去できないことはよく知られているところであり、この発明ではまさに加熱板と塗装予定表面間にある高温の水蒸気雰囲気が極めて効率よく水溶性塗料の水分を除去することができ、短時間でかつ均一に水分除去できるため、すぐれた性状の塗膜が得られる。
【0056】
また、この発明では、水蒸気を用いた含浸と塗装を各々別個に行うことはもちろん、含浸工程後に被処理体を一旦冷却してから含浸工程と同じ蒸気発生装置と加熱板を用いて塗装工程を実施することが可能で、さらに被処理体を冷却する手段を併用することで含浸工程後に塗装工程を連続的に行うことも可能である。この場合、固化させる水溶性塗料は、新たに塗布したものはもちろん、先の含浸工程で被処理体の表面に残留した水溶性塗料であっても均質な塗膜を形成できる。前記冷却手段は、例えば木工用パネルを載置するベッドに水冷装置を付設するなど、公知のいずれの加工、製造装置にも容易に適用可能である。
【0057】
塗装に際して、被塗装体の温度制御は、少なくとも含浸時の被塗装体の加熱温度は45℃以上、塗料の固化時の被塗装体の温度は40℃以下とすることが好ましく、さらには該加熱温度は50℃以上であり、塗料の固化時の被塗装体の温度は30℃以下とすることが望ましい。
【0058】
この発明において、水蒸気温度は、含浸方法も塗装方法も同様に高い方が好ましく、120℃以上、さらには140℃以上が好ましい。また、水蒸気圧は、被処理表面や該表面と加熱板間の雰囲気に高圧で噴射させる必要はないが、加熱板と塗装予定表面間に解放する直前の水蒸気圧力は高い方が好ましく、2MPa以上、さらには4MPa以上であることが望ましい。
【0059】
この発明において、加熱板温度は、含浸方法も塗装方法も同様に高い方が好ましく、200℃以上、さらには300℃以上が好ましい。また、加熱板と含浸又は塗装予定表面との距離は、5mm〜20mm程度に保持されることが好ましい。
【0060】
この発明において、含浸方法又は塗装方法に用いる水溶性塗料は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂のいずれかを主成分とする水溶性塗料又は水分散性塗料であることが好ましい。特に、水溶性塗料は、樹脂分と無機微粒子を水溶媒中に分散させた構成が好ましく、さらに固形成分が少ないほど好ましく、その樹脂分が20wt%以下、無機微粒子分が5%以下であること、また樹脂分が15%〜18%、無機微粒子分が2%〜5%であること、さらには樹脂分が10%以下、無機微粒子分が3%以下であることが好ましい。なお、上記の水溶性塗料成分はそのまま接着剤と利用されているものもあり、この発明の塗装方法で当該接着剤を塗布して、さらに他の材料を貼りつけたり、所謂転写を行うことが可能であることは言うまでもないことである。
【0061】
また、上記の無機微粒子は前述した種々のセラミック粒子が採用可能であるが、特に平均粒径が50nm以下のSiO2が好ましく、含浸と塗装が行われる場合は、含浸工程時の水溶性塗料の無機微粒子が、平均粒径が20nm以下、塗装工程時の水溶性塗料の無機微粒子が、平均粒径が20nmを超え50nm以下であることが好ましい。
【0062】
この発明による表層の改質方法(含浸方法)及び塗装方法を実施するための含浸又は塗装装置の構成としては、
1)被処理体の温度を所要温度にするための加熱又は冷却手段を有した被塗装体の載置又は保持装置、
2)被処理体の所要表面に水溶性塗料(有機/無機物の溶液)を塗布する塗布装置、
3)含浸、塗装予定表面近傍に加熱板を近接配置して加熱板を所要温度に保持する加熱板装置、
4)含浸、塗装予定表面と加熱板との隙間に高温高圧に保持した水蒸気を解放して同隙間内に水蒸気雰囲気を形成する水蒸気発生装置、
のそれぞれを備えることが好ましい。かかる装置は、後述する基板材料の製造方法で明らかにする各工程の好ましい条件を具備するとよい。
【0063】
基板材料とその製造方法
前述した水蒸気含浸による改質方法を工業的に適用する方法を以下に説明する。
この発明において、前述の蒸気含浸や塗装の処理対象の基板材料は、特に限定されるものでないが、以下の説明では、前述した発明の効果が顕著に得られる木質材又は無機質材の単板、木質材又は無機質材を含む積層板、あるいは化粧材を表面に有する前記単板又は前記積層板のいずれかをいう。すなわち、軟材や硬材とよばれる針葉樹材、広葉樹材等の木材の単板、これらの合板を初め集成材、木片や木粉を樹脂で固めたMDF、PB、炭酸カルシウム板等の無機質板の他、これらの積層材、これらと金属との積層材、さらには突き板、紙や樹脂フィルムなどの化粧材を表面に有する前記単板又は前記積層板等、公知のいずれの基板も採用できる。
【0064】
基板材料の表層に有機/無機物の溶液を含浸させる含浸工程は、被処理物表面に有機/無機物の溶液を塗布する工程、塗布面に蒸気を接触させて少なくとも溶液中の有機/無機物を被処理物の少なくとも表層内に含浸させる工程、あるいはさらに処理表面又は被処理物全体を加熱する工程を含むものである。
【0065】
かかる蒸気含浸法は、要するに、基板材料に与える水蒸気温度が高いほど、加熱源からの受熱熱量が多いほど、すなわち単位時間内に受ける水蒸気と加熱板からのエネルギーの総量が多いほど、さらにコロイダルシリカと接触している水蒸気が水滴化せずに加熱板(200℃程度)との間で熱対流を繰り返す条件を最適化するほど、処理表面状態の条件の差異にかかわらず含浸の速度が向上して、数秒、数分程度で急速に含浸し、乾燥する。
【0066】
蒸気は、被処理溶液内の有機無機物にエネルギーを与えた後、直ちに当該表面又は表層部内より飛散する必要があり、有機無機物にエネルギーを付与後に表面又は表層部内より蒸発散逸できるだけのエネルギーを有しているか、あるいは直ちに供給されるような、例えば塗布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、その対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して加熱板と処理表面間に熱対流が可能な雰囲気になっているとよい。
【0067】
従って、処理する塗布面が広い場合は、塗布面に加熱板を対向配置してこれを加熱しながら、当該加熱板自体又は複数配置する加熱板同士間の間隙から塗布面との対向面隙間に連続的又は間欠的に蒸気を導入して蒸気を加熱対流させるとよい。
【0068】
また、含浸工程または乾燥、固化、安定化のための加熱工程において、超音波振動手段を用いて蒸気及び有機/無機物を活性化させること、さらに塗布工程前又は該工程後あるいは該工程前後において、被処理物を加温することにより、含浸をより効率よく実施することができる。
【0069】
含浸後の乾燥、固化、安定化のための加熱には、高温蒸気を接触させ続ける方法の他、上述の加熱板を用いたり、木工用などで公知の熱プレス装置で加熱と加圧を同時に行ったり、高周波加熱させるなどの方法を採用することができる。
この発明は、基板材料の製造、特に基板材料の表層に凹凸形状を形成するロール成形又はプレス成形による成形工程の前工程かあるいは後工程に、かかる蒸気含浸法を施して、成形予定の材料表面を改質するかあるいは成形された材料表面を改質することにより、押圧塑性変形で形成された溝や紋様などの各種の凹凸形状が、材料自体の吸湿、水分や熱との接触があっても、いわゆるスプリングバックにて元形状に戻らないようにすることを特徴とするものである。
【0070】
この発明において、有機/無機物の溶液としては、公知のコロイダルシリカ、水溶性塗料、水溶性接着剤などのいずれの溶液も採用でき、またシリカ、アルミナ、マグネシアなどのセラミックスや、塗料用に用いられる各種の顔料などの粒子が数nmから数μmの無機微粒子を含有する水溶性塗料、水溶性接着剤など、さらにはコロイダルシリカを混合した水溶性塗料、水溶性接着剤などを採用できる。なお、顔料の粒径はあまり大きいと含浸せず、好ましくは粒径が1μm以下のnmクラスのものである。また、有機溶剤を用いた塗料、セラミックスや顔料などを含有する有機溶剤を用いた塗料であっても、蒸気含浸の作用効果は同様であるが、環境のためには揮発させるものが少ない水溶性が好ましい。
【0071】
蒸気含浸法を施して、基板材料の成形予定表面又は成形された材料表面を改質する、すなわちコロイダルシリカや水溶性塗料を含浸させることにより、含浸した表層部は材料の硬度や強度が向上するとともに、水分の移動が防止されるためスプリングバックが発生しなくなる。
【0072】
この蒸気含浸法は、含浸させる溶液がコロイダルシリカや水溶性塗料等いずれであっても、表面に溶液や塗料成分等は全く残留しないため、基板材料に塗装が必要な場合は、かかる含浸工程後に後続の工程等に応じて適時、前述した水蒸気による塗装方法、あるいは公知の塗装工程を適宜施すことになる。
【0073】
この発明において、基板材料の表層に凹凸形状を形成する成形工程と成形用金型には、公知の木工用のロール成形法又はプレス成形法のものが全て採用可能であり、成形する凹凸形状に応じて適宜選定するとよい。
【0074】
特に溝形状を施す場合や薄い化粧材料を貼着した基板材料の場合は、この発明による新規な突起形状を有する金型を使用するとよい。すなわち、この発明によるロール成形法又はプレス成形法の金型は、突起の長手方向に直行する垂直面での断面形状が複数の円弧で構成された円弧状で直線を含まないR突起を有していることを特徴とする。
【0075】
ロール成形法にて溝形状を成形するためのロール金型1について詳述すると、突起2の長手方向(ロールの周方向)に直行する垂直面での断面形状は、図1Aに示すごとく、突起2先端を中心に対称形で突出2先端は半径R1の円弧でその両側はそれぞれ半径R2の円弧で形成されている。寸法例を示せば、例えば図示の突起高さhが1.7mmの場合、突起全幅Wは8mm、半径R2は5mm、半径R1は0.3mmであり、またいわゆる突起の開き角度は130°程度で、断面形状に直線を含まないR突起を構成している。
【0076】
かかる断面形状に直線を含まないR突起を有するロール金型を用いて成形すると、薄い化粧紙を貼着した基板材料において、薄く弱い化粧紙を破断することなく所要深さのR溝形状を成形できる。また、従来のいわゆるV字型又は略V字型のように断面形状が直線部で構成されたV突起で形成された溝は、水分や熱で簡単にスプリングバックが発生するが、R突起の場合は、かかるスプリングバックが発生し難くなる効果を有する。従って、R突起による成形は、前述の蒸気含浸による改質効果との相乗効果によってかかるスプリングバックを防止できる。
【0077】
突起高さが2mmを越えるような比較的溝深さが深い場合の金型の突起は、図1Bに示すように前記の半径R1を有する突起先端部のみU型の略直線部分を有するが、他は図示と同様に単数又は複数の円弧の組合せからなるR突起形状とすることが、化粧材の破断やスプリングバックの防止の観点から好ましい。なお、この発明による金型を用いた成形法は、金型圧力は従来よりも高い圧力で行うことが、作用効果をより顕在化させるために好ましい。
【0078】
また、含浸工程後に成形工程を実施するか、あるいは成形工程後に含浸工程を経た基板材料の表面に、加熱板を近接して材料を加温したり、木工用などで公知の熱プレス装置で加熱と加圧を同時に行ったり、高周波加熱させるなどの加熱乾燥方法を採用することにより、前述したスプリングバックの防止効果をより安定化させることができる。
【0079】
さらに、この発明において、有機/無機物の溶液に紫外線又は電子線にて重合可能な水溶性の塗料や接着剤用いて、これを含浸させる含浸工程の前か後にロール成形又はプレス成形により成形工程を施し、さらに塗装などを施し、そして最後に当該処理面に紫外線又は電子線を照射して表層部及び含浸させた有機/無機物を重合・固化させる工程を採用することができる。この一連の工程により、含浸に伴う材料表層部の改質効果が著しく向上するとともに、得られた改質効果の安定化がより一層向上する。
【0080】
【実施例】
実施例1
基材側から、堅木、通常ラワン、堅木、和紙、0.2mm厚みの桜突き板となるように積層した新規な構成を有する木質床材を作製した。堅木、通常ラワン、堅木の順に積層構成をした安価な3×6尺、堅木貼りラワン合板を基材に採用した。
製造工程は、
ラワン合板の上面研磨による厚み規制(公差±0.2mm以下)工程、
グルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程、
和紙のセット工程、
グルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程、
桜突き板のセット工程、
蒸気含浸工程A、
桜突き板熱圧プレス(110℃×1分間)工程、である。
【0081】
蒸気含浸工程Aは、コロイダルシリカ(固形分30%、シリカ粒径30nm)を130g/m2の割合で桜突き板表面にロールコーターで塗布した後、熱圧プレス工程で使用する加熱板(180℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行った。
【0082】
上記構成の木質床材は、極めて薄い0.2mm厚みの桜突き板が、和紙で裏打ちされかつ突き板にnmクラスのシリカを含浸させたことから熱や傷などによる突き板の割れがなくなり、基材側からの水分移動が少なくなる。
また、コロイダルシリカの塗布量を増やしかつ加熱板温度を220℃に上げることで、シリカは和紙まで到達しており、基材側から突き板への水分移動がさらに少なくなった。
【0083】
換言すれば木質床材において、オーク柄からブナ、サクラ、メープル等の散孔材柄への移行の要求に対して、これらの散孔材のつき板による問題、すなわち、捺傷性が劣る、押し傷性が劣る、床暖房仕様への対応時に材料振れがある、大陽光等による変色がある、VOC問題がある。しかし、この発明による蒸気含浸を、表装材の桜突き板あるいはさらに和紙に施すことで、上述のいずれの問題をも解消できた。
【0084】
蒸気含浸工程Aにおいて、コロイダルシリカに換えて水溶性アクリル塗料(NSC社製、KD−20、固形分30%)を用いて、100g/m2の割合で桜突き板表面にロールコーターで塗布した後、先と同条件で蒸気含浸したところ、表面には樹脂層は全く見られず、重量測定で全量含浸したことを確認した。
【0085】
なお、前記水溶性アクリル塗料は、一般に塗布含浸がほぼ不能か極めて困難であるとされる中、樹脂類の平均分子量が比較的よく揃って小さく、又顔料もnmクラスであることから、前記の合板の表層によく密着できるものであったが、それでも50g/m2の割合で塗布して乾燥固化させた後、塗膜を可能な限り剥離して、剥離した塗膜重量を測定すると少なくとも45〜48gは測定できた。従って、前記水溶性アクリル塗料は、塗布含浸が極めて困難であることが明らかである。
【0086】
実施例2
実施例1と同じ構成の木質床材を、和紙のセット工程後に蒸気含浸工程Aを施す以外は実施例1と同じ工程で作製したところ、さらに合板全体の強度の向上と和紙により基材側から突き板への水分移動をほぼ防止できた。
【0087】
また、和紙のセット工程後に別の蒸気含浸工程Bと和紙熱圧プレス(110℃×1分間)工程を施した。すなわち、蒸気含浸工程Aのコロイダルシリカに換えて流動パラフィン(沸点230℃)を塗布して熱圧プレスで使用する加熱板(180℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行い、その後熱圧プレス(110℃×1分間)したところ、和紙は樹脂シート化された。もちろん、桜突き板との接着性は実施例1の場合と全く変化がなかった。
【0088】
実施例3
実施例1と同じ構成の木質床材を、
ラワン合板の上面研磨による厚み規制(公差±0.2mm以下)工程、
ロールコーターによる水溶性アクリル塗料の塗布工程、
和紙のセット工程、
蒸気含浸工程C、
和紙熱圧プレス(110℃×1分間)工程、
グルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程、
桜突き板のセット工程、
蒸気含浸工程A、
桜突き板熱圧プレス(110℃×1分間)工程、の各工程で作製した。
【0089】
蒸気含浸工程Cは、蒸気含浸工程Aのコロイダルシリカに換えて前の塗布工程で使用した水溶性アクリル塗料にコロイダルシリカを混合した混合溶液を使用してロールコーターで和紙に塗布した後、熱圧プレスで使用する加熱板(220℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行った。
【0090】
この工程により、和紙をアクリル樹脂シートのように改質して桜突き板の裏打ち機能と基材側からの水分遮断の機能を付与できた。さらには、水溶性アクリル塗料の顔料(酸化チタン白)にて紙に若干の色基調を与えることができたため、基材の堅木の色調や柄が突き板の色調と柄に影響を与えないようにすることが可能になった。すなわち、和紙で樹脂製の転写シートと同様の機能を簡単に付与できた。
【0091】
なお、前記のロールコーターによる水溶性アクリル塗料の塗布工程、和紙のセット工程および蒸気含浸工程Cにおける和紙への塗布は、和紙の両面に同じ水溶性アクリル塗料を塗布した後にラワン合板上にセットすることで、工程を簡略化できた。
【0092】
実施例4
実施例1〜実施例3において、桜突き板のセット工程、熱圧プレス後の下塗り塗装工程でこの発明の蒸気含浸工程を実施することができる。すなわち塗装工程は、
素材ブレヒート40℃、
スポンジロールで水性着色、
ジェットヒーター乾燥(板温50℃保持)、
蒸気含浸工程D、
塗料硬化乾燥工程、からなる。
【0093】
すなわち、蒸気含浸工程Dは、EB硬化型水溶性アクリル塗料にコロイダルシリカを混合した混合溶液を使用してロールコーター(ヒーター付)で桜突き板表面に塗布した後、熱圧プレスで使用する加熱板(220℃)を塗布面から50mmの位置に配置して、高温水蒸気(145℃)を前記隙間に噴射する方法で行った。その後、電子線照射乾燥炉でコロイダルシリカを混合した水溶性塗料をEB硬化させる。
【0094】
これによって、着色工程とシリカ及びEB硬化型アクリル樹脂の含浸固化を一連の工程で完了でき、合板の表面に設けた桜突き板を高硬度、高靭性化することが可能となった。
【0095】
実施例5
突き板を樹脂材にインサート成形する新規な成形工程で、成形後の突き板にこの発明の蒸気含浸を実施する例を説明する。まず、突き板構成貼りは、2種の厚み0.5mm突き板みを木目方向を考慮して積層し、さらに厚み.2mm高級木突き板を積層し、かつ熱可塑性接着剤を各突き板間に塗布して接着するか、あるいは熱可塑性フィルムを各突き板間に置き、プレス接着する。
【0096】
また、上記の突き板構成貼り時にポリ乳酸フィルム、酢酸セルロースフィルム等の生分解性フィルムを使用して突き板の生分解性の保持することができる。さらにこのフィルム樹脂内に5μm以下の微粒子無機物を混練してシートとなし、突き板の補強を行なうことができる。
【0097】
次に、金型プレスにより、前記の積層突き板を射出成形金型に挿入配置可能なように所望の形状に変形させる。この際、蒸気加熱して含水率を10%以下に保持して、例えば総厚みが1.2mmから0.3mm程度となるように圧縮成形する。
成形後の突き板を所定の射出成形用金型にインサート配置し、樹脂の射出成形を行い突き板との一体化を図る。ここで、射出成形用樹脂を従来のABS樹脂やアクリル樹脂に換えて、例えば同一種の杉から抽出した単純種のリグニン抽出樹脂粉と市販の天然セルロースなどの植物繊維質粉(混合比率3:7)との混練物樹脂とすることで、全ての材料の熱膨張係数をほぼ揃えることができ、突き板との剥離の問題を解消できる。なお、前記混練物樹脂は一度かぎりの熱硬化性樹脂となる。
【0098】
前記の積層突き板の表面に塗装を施す前、あるいは塗装工程の際にこの発明の蒸気含浸を実施して成形後の突き板にスプリングバックが起きないように固化する。すなわち、実施例1の蒸気含浸工程A,B,Cや、実施例4の蒸気含浸工程Dと同じ着色工程、シリカ及びEB硬化型アクリル樹脂の含浸固化、のいずれをも実施することができる。
【0099】
なお、多数層の高級塗装を行ったり、さらに転写シートで柄付け等を行う場合は、実施例1の蒸気含浸工程Aと同様工程でシリカを含浸させたり、蒸気含浸工程Bの流動パラフィンの含浸で樹脂化を行った後、塗装や転写工程を実施することができる。
【0100】
実施例6
実施例2において、合板2に積層する和紙と表面の桜突き板3に蒸気含浸工程Aでコロイダルシリカを蒸気含浸させて完成した突き板合板を用いて、図1に示す断面形状の金型1により、80kg〜130kg/cm2の圧力でプレスR溝加工して、いわゆるR溝を設けた。溝金型は、中央の突起部高さが2mmで、突起幅は0.3〜1.0mmの種々のものを試した結果、いずれも突き板側の溝深さが1.5〜1.7mmとなった。
【0101】
また、コロイダルシリカ又は水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させて完成した2種の突き板合板を用いて、図1に示す断面形状を有するプレス金型により、80kg〜130kg/cm2の圧力でプレスR溝加工して平行なR溝を多数設けた。金型の突起寸法は、突起高さhが1.7mm、突起全幅Wは8mm、半径R2は5mm、半径R1は0.3mmであった。
【0102】
従来工程による含浸工程が全くない桜突き板の場合は、プレスV溝加工を40〜50kg/cm2の圧力で行っても、突き板が直ちに割れてしまい湿潤テストを施すとスプリングバック現象で溝が戻りほとんど平坦に見える程度になっていた。また、この発明の金型を用いてプレスR溝加工を40〜50kg/cm2の圧力で行うと、表面が直ちに割れることが少ないものであったが、突き板に割れを生じる場合があるかあるいは割れずに溝形成ができた場合も、全て湿潤テストを施すとスプリングバック現象で溝が戻り一見筋に見える程度になっていた。
【0103】
また、従来工程による桜突き板にプレスV溝加工を施したものに、通常の床材や壁材用の塗装工程、例えばロールコウター、スプレー、擦りこみ等の公知の各種塗装を施して十分乾燥させ後、V溝に水を塗布して温水が入った熱いやかんを載置したところ、いずれの塗装の場合もV溝にスプリングバック現象が発生して、意匠上溝に見えなくなった。
【0104】
この発明による桜突き板の場合は、プレスR溝加工後に床材用として一般的なロールコーターによる塗装を行い、乾燥後同様の試験を行ったところ、スプリングバックは見られなかった。
【0105】
なお、上記の金型は、図示のごとく中央の突起部からの立ち上がり部が所要の単一半径又は複合半径のR形状となっているため、従来工程の未処理桜突き板であっても、表面が直ちに割れることが少ないものであったが、スプリングバック従来現象は同様に顕著であった。
【0106】
この発明の蒸気含浸対象がコロイダルシリカ又は流動パラフィンのいずれであっても、いずれの金型であっても形成されたR溝部の突き板に割れやひびの発生がなく、湿潤テストでもスプリングバック現象が皆無となった。
【0107】
実施例7
市販のMDF板材を用いて、表面に流動パラフィンを蒸気含浸させ、木工用化粧紙(23g/m2)と0.2mm厚みの桜突き板をそれぞれ貼着し、さらに水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させるとともに実施例6と同様条件で図1のロール金型によるロールR溝加工を行った。
【0108】
蒸気含浸工程を詳述すると、MDF板材表面に蒸気含浸工程Bにより流動パラフィンを蒸気含浸させた後、化粧紙又は桜突き板をグルースプレッダーによる糊付(ユリア樹脂十酢酸ビニル)工程で貼着し、貼着した化粧紙又は桜突き板表面に実施例1の蒸気含浸工程Aで水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させた。
【0109】
MDF板材表面に化粧紙、桜突き板を貼着し、実施例6のプレスR溝加工を行った結果、R溝部の化粧紙の破れや桜突き板の割れは皆無であり、湿潤テストでもスプリングバック現象が皆無となった。
【0110】
実施例8
実施例7と同様工程でMDF板材に化粧紙又は桜突き板を貼着した基板材料に、突起高さが2.1mmのロール金型によるロールR溝加工を行った。金型の突起は図1の半径R1を有する突起先端部近傍をU型に延出させて、他は図1と同様の円弧として、前記延出部は複数の円弧の組合せからなるR突起形状を有する。
ロールR溝加工を行った後に、化粧紙又は桜突き板表面に実施例1と同様の蒸気含浸工程Aにて水溶性アクリル塗料を蒸気含浸させた。前工程でのR溝部の化粧紙の破れや桜突き板の割れは皆無であった。また、湿潤テストでも溝形状のスプリングバック現象が皆無となった。
【0111】
実施例9
実施例6の場合は、和紙層が合板からの水分の移動を防止しているため、また塑性変形を受けた表層部がいずれも改質されているため、R溝部のスプリングバック現象はもちろん合板の反り自体も防止されている。しかし、実施例7のMDF板の場合は、表層部がいずれも改質されているが、MDF板の裏面側からの水分の移動は防止できないため、MDF板自体に反りが発生する場合があった。
【0112】
そこで、図2に示すごとく、実施例7のMDF板材5に深さ0.5〜3mmで幅が極狭い寸法の縦溝6または針穴を5〜10mm間隔で全面、あるいは所要位置又は所要パターンで設けてから、蒸気含浸工程Bにより流動パラフィンを蒸気含浸させ、熱圧プレスした。この際、流動パラフィンの塗布量を150〜300g/m2と種々実施したが、いずれの場合も全て含浸することを重量測定で確認した。
【0113】
流動パラフィンを蒸気含浸させた後は実施例7の工程で、化粧紙、桜突き板を貼着し、貼着した化粧紙又は桜突き板表面に蒸気含浸工程A、B、Cでコロイダルシリカ、水溶性アクリル塗料、流動パラフィンをそれぞれ蒸気含浸させた。その後、実施例6のプレスR溝加工を行った。
【0114】
上述のごとく、MDF板材全体に流動パラフィンを蒸気含浸させた後、化粧紙又は桜突き板表面に種々の溶液を蒸気含浸させた積層型MDF板は、いずれの処理を施したものも、表層のR溝部の化粧紙の破れや桜突き板の割れは皆無であり、湿潤テストでもスプリングバック現象が皆無であった。
【0115】
さらに、この積層型MDF板を40℃の湯水槽に浸漬して5時間放置する試験を行った結果、剥離、部分崩壊、反り、曲がり等の問題は全く発生しなかった。
【0116】
実施例10
この発明による床板加工製造ラインを用いてこの発明による樹脂含浸、樹脂含浸・塗装、塗装の各試験を行った。詳述すると前記製造ラインは、図3、図4に示すごとく基材を搬送するコンベアライン10を有し、初段には基材加熱装置11、次段に水溶性塗料又は接着剤の塗布用のロールコウター12、蒸気含浸、塗装を行うための蒸気含浸装置13、基材に熱圧を加えるための熱ロール(アイロンプレス)14、終段には基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15が配置されている。
【0117】
図示の3つ蒸気含浸装置13は、コンベア10上の基材に所定間隔で対向する1枚の加熱板16を有し、加熱板16には各々6つの蒸気導入部17を設けた構成からなり、各加熱板16には蒸気導入部17上面を含め複数のヒーターが載置され、各蒸気導入部17の基材との対向面(下面)には図示のごとく所定間隔で蒸気ノズル孔18が多数配置してあり、蒸気導入部17内部に図示しない水蒸気発生装置から導入した高圧高温水蒸気が蒸気ノズル孔18より基材上面との隙間空間に解放される構成となっている。
【0118】
基材表面の改質を目的として水溶性塗料の樹脂含浸を行うには、例えば基材加熱装置11で基材を50℃以上に昇温し、ロールコウター12で基材の所要表層部の空隙率を考慮して含浸可能量以下の水溶性塗料を塗布し、蒸気含浸装置13で蒸気含浸を施し、熱ロール14で基材に熱圧を加え、基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15で乾燥させる。
【0119】
基材表面の改質を目的として水溶性塗料の樹脂含浸を行いかつ表面に塗膜を形成するには、例えば基材加熱装置11で基材を50℃以上に昇温し、ロールコウター12で基材の所要表層部の空隙率を考慮して含浸可能量以上の水溶性塗料を塗布し、蒸気含浸装置13で蒸気含浸を施し、熱ロール14を使用することなく、基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15で乾燥させる。
【0120】
基材表面に塗膜を形成するには、基材加熱装置11を使用することなく基材を40℃以上に保持し、ロールコウター12で所要量の水溶性塗料を塗布し、蒸気含浸装置13で蒸気含浸を施し、熱ロール14を使用することなく、必要に応じて基材の水分調整を行うための高周波乾燥装置15で乾燥させる。
上記の3方法を実施する際、基材の温度が一定の場合は、蒸気含浸装置13でのヒーター温度や蒸気温度を適宜選定することで、樹脂の基材表面への含浸度合いが異なり、これを制御できた。
【0121】
また一方、蒸気含浸装置13での加熱板16温度や隙間距離、並びに水蒸気温度が所要範囲であると、基材の温度を0℃〜60℃の種々温度に選定することで、基本的に含浸量を制御できることを確認した。すなわち、温度が高いほど含浸量が大きく上昇し、基材の温度が40℃以下になると含浸量が著しく減少し始め、25℃以下ではほぼ塗布のみとなり、20℃〜0℃では含浸させることができなかった。
【0122】
上述の構成の床板加工製造ラインにおいて、蒸気含浸装置13と熱ロール14との間に転写ロールを配置し転写加工構成に変更した製造ラインとなした。このラインで含浸させる対象を塗料と同様成分である例えばメラミン樹脂系の水溶性接着剤として基材表面に該接着剤が残存するように選定することで、含浸による表層の改質とともに改質に使用した当該接着剤がアンカー効果を持って表面に均一に定着させることが可能となった。従って、表層改質した基材に対して、種々の紋様の樹脂層あるいは金属やセラミックスの蒸着層を設けた転写フィルムを容易に貼り合わせることができ、その後転写フィルムを除去して転写層を基材表面に強固に密着させることが可能であった。
【0123】
【発明の効果】
この発明は、例えば軟材の杉板や杉合板の表層部を、従来の一般的な塗装による塗膜や樹脂フィルムなどの樹脂成分層を設けることなく、簡単に高硬度、高強度化することができ、この改質した単板や合板は塗膜なしの無垢のままでも高い耐候性と耐水性を有し、紫外線や水分の影響などを気にすることなく、種々の用途に利用可能となった。さらに、用途やデザインなどの要請から必要に応じて公知の種々塗装、転写フィルムなどを施すことが可能であり、表面が柔らかく傷つきやすいために極めて限定されていた杉板や杉合板の用途、適用範囲が著しく拡大することができる。
【0124】
この発明によると、実施例に明らかなように各種合板へのシリカ、樹脂の含浸により、種々の用途に適した強化合板を作製できる。また、この発明の蒸気含浸方法によって、ブロックタイプのアクリル水溶性樹脂を合板表面に含浸させ、表面の硬度、耐水性、耐熱性の向上と樹脂の木質繊維内部への含浸によるアンカー効果を生み、後工程等での塗装や接着剤などの密着強度が飛躍的に向上する効果が得られる。
【0125】
従来、水性塗料は無機質材料の表面には塗布できても含浸させることが極めて困難で、無機質材料の用途に応じて要求される硬度や耐食性、耐水性等の機能向上並びに品質保証には、有機溶剤を用いた塗料を使用するしかなかったが、この発明により、無機質材料板への水性塗料の含浸が可能になった。
【0126】
この発明によると、電子線にて重合可能な塗料等を用いるE.B.技術との併用により、各種多孔質材料への表面処理が可能になる。すなわち、ラジカル重合可能な水溶性塗料を用い、これにコロイダルシリカを混合して粘度調整し、この発明の蒸気含浸法によって含浸させ、各材料表面の硬度、耐水性、耐熱性の向上を達成できる。
【0127】
さらにこの発明による蒸気含浸は、木質材料、紙材などに流動パラフィンを材料表面などの部分的あるいは材料全体に任意の箇所にかつ極めて均一に含浸させることが可能であり、流動パラフィンを含浸した木質材料、紙材は、その強度、硬度、耐水性、耐傷性などが著しく向上し、特に薄い突き板や紙は外観や意匠は変化することなく、それが樹脂化するほどに改質することが可能である。
【0128】
この発明による基板材料の製造方法は、溝等の意匠性凹凸形状を紙やフィルムなどの化粧材を破断することなく確実に設けることが可能で、成形後に当該材料が吸湿したり、水分塗布しても前記溝などの意匠性凹凸形状がスプリングバックで元に戻ることがなく、成形後の経時変化がなく安定した塑性変形を木質部に付与できる。
【0129】
また、この発明の蒸気含浸方法によって、ブロックタイプのアクリル水溶性樹脂を合板表面に含浸させると、表面の硬度、耐水性、耐熱性の向上効果とともに、樹脂の木質繊維内部への含浸によるアンカー効果を生み、後工程等での塗装や接着剤などの密着強度が飛躍的に向上する効果が得られる。
【0130】
また、実施例で明らかにしたように、実機の床板加工及び転写製造ラインで、水溶性接着剤を用い、含浸による表層の改質とともに改質に使用した当該接着剤にアンカー効果を持たせて表面に均一に定着させ、基材に例えば金属やセラミックスの蒸着層を設けた転写フィルムを貼り合わせて転写層を基材表面に強固に密着させることが可能であることから、木質材や無機質板材の表層を強化した上、金属やセラミックス材の蒸着層をあたかも直接スパッタリングしたように強固に緻密に密着させることが可能である。従って、木質材や無機質板材に新規機能を付与した新たな用途に利用可能な材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による金型の突起断面形状を示す縦断説明図である。
【図2】MDF板材表面に設けた溝形状の説明図である。
【図3】この発明による含浸・塗装装置の配置構成を示す上面説明図である。
【図4】この発明による蒸気含浸装置の説明図である。
【図5】Aはこの発明による蒸気含浸装置に用いた加熱板の一部側面説明図であり、Bは蒸気ノズル部の説明図である。
【符号の説明】
1 金型
2 合板
3 突き板
5 MDF板材
10 コンベア
11 基材加熱装置
12 ロールコウター
13 蒸気含浸装置
14 熱ロール
15 高周波乾燥装置
Claims (21)
- 塗料又は接着剤を被塗装体に塗布する工程、塗布予定表面近傍に配置した加熱板と当該表面との間に水蒸気雰囲気を形成して塗布した塗料を固化又は接着剤を定着する工程を含む含浸塗装方法。
- 塗料又は接着剤を被塗装体に塗布する工程、被塗装体を所要温度に制御する工程、塗布予定表面近傍に配置した加熱板と当該表面との間に水蒸気雰囲気を形成し塗布した塗料を固化又は接着剤を定着する工程を含む含浸塗装方法。
- 塗料又は接着剤を被塗装体に塗布する工程、被塗装体を所要温度に制御する工程、塗装予定表面近傍に配置した加熱板と当該表面との間に水蒸気雰囲気を形成し加熱している被塗装体の塗装予定表面表層に塗布した塗料又は接着剤を含浸させる工程、前記加熱板と塗装予定表面との間に水蒸気雰囲気を形成して前記含浸工程後に冷却又は加熱していない被塗装体の塗装予定表面に残留又は塗布した該塗料を固化又は接着剤を定着する工程を含む含浸塗装方法。
- 塗料又は接着剤を被塗装体に塗布する工程、被塗装体を所要温度に制御する工程、塗装予定表面近傍に配置した加熱板と当該表面との間に水蒸気雰囲気を形成し加熱している被塗装体の塗装予定表面表層に塗布した塗料又は接着剤を含浸させる工程、前記加熱板と塗装予定表面との間に水蒸気雰囲気を形成して前記含浸工程後に冷却又は加熱していない被塗装体の塗装予定表面に残留又は塗布した該塗料を固化又は接着剤を定着する工程、塗膜又は接着剤層の上に転写層を転写する工程を含む含浸塗装方法。
- 含浸工程において、被塗装体温度、塗料温度、水蒸気温度のいずれか1つの温度あるいは2つ以上の温度を制御して塗料又は接着剤の塗布面表層への含浸量を制御する請求項2から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 被塗装体の温度制御において、含浸時の被塗装体の加熱温度は50℃以上であり、塗料の固化又は定着時の被塗装体の温度は40℃以下である請求項2から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 水蒸気温度が、120℃以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 水蒸気温度が、140℃以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 加熱板と塗装予定表面間に解放する前の水蒸気圧力が、2MPa以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 加熱板と塗装予定表面間に解放する前の水蒸気圧力が、4MPa以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 加熱板の温度が、200℃以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 加熱板の温度が、300℃以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 加熱板と塗装予定表面との距離が、5mm〜20mmである請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 塗料又は接着剤は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂のいずれかを主成分とする水溶性塗料又は水分散性塗料成分である請求項1から請求項4のいずれかに記載の含浸塗装方法。
- 塗料又は接着剤は、樹脂分と無機微粒子を水溶媒中に分散させてなる請求項14に記載の含浸塗装方法。
- 水溶性塗料は、樹脂分が20wt%以下、無機微粒子分が5%以下である請求項14に記載の含浸塗装方法。
- 水溶性塗料は、樹脂分が15%〜18%、無機微粒子分が2%〜5%である請求項14に記載の含浸塗装方法。
- 無機微粒子が、平均粒径が50nm以下のSiO2である請求項14に記載の塗装方法。
- 含浸工程時に塗布される塗料又は接着剤に含まれる無機微粒子が、平均粒径が20nm以下のSiO2であり、塗装工程時に塗布される塗料又は接着剤に含まれる無機微粒子が、平均粒径が20nmを超え50nm以下のSiO2である請求項2から請求項4のいずれかに記載の塗装方法。
- 被塗装体の温度を所要温度にするための加熱又は冷却手段を有した被塗装体の載置又は保持装置と、被塗装体の所要表面に塗料又は接着剤を塗布する塗布装置と、塗装予定表面近傍に加熱板を近接配置して加熱板を所要温度に保持する加熱板装置と、塗装予定表面と加熱板との隙間に高温高圧に保持した水蒸気を解放して同隙間内に水蒸気雰囲気を形成する水蒸気発生装置とを有する含浸塗装装置。
- 被塗装体の温度を所要温度にするための加熱又は冷却手段を有した被塗装体の載置又は保持装置と、被塗装体の所要表面に塗料又は接着剤を塗布する塗布装置と、塗装予定表面近傍に加熱板を近接配置して加熱板を所要温度に保持する加熱板装置と、塗装予定表面と加熱板との隙間に高温高圧に保持した水蒸気を解放して同隙間内に水蒸気雰囲気を形成する水蒸気発生装置と、転写フィルム上の転写層を転写する転写装置とを有する含浸塗装装置。
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