JP2004064857A - ブラシレスモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動方法として簡易で安価な矩形波駆動が行われ、かつ作動時に発生するリップルトルクが低減されたブラシレスモータを提供する。
【解決手段】電気角120度の通電区間と電気角60度の無通電区間による3相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられる3相の巻線34を備えたステータ30と、極性が交互に異なるマグネット26が周方向に略等間隔に配置されたロータ20と、を備えたブラシレスモータ1であって、
マグネット26の周方向中央部には、ステータ30にマグネット26の他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部である溝27が設けられた。
【選択図】 図2
【解決手段】電気角120度の通電区間と電気角60度の無通電区間による3相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられる3相の巻線34を備えたステータ30と、極性が交互に異なるマグネット26が周方向に略等間隔に配置されたロータ20と、を備えたブラシレスモータ1であって、
マグネット26の周方向中央部には、ステータ30にマグネット26の他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部である溝27が設けられた。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はブラシレスモータに係り、特に作動時に発生するリップルトルクを低減する構造を有するブラシレスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータ等の回転磁界型電動機では、ステータに形成された複数の鉄芯部に巻線が施されており、この巻線に順次電流が流されると回転磁界が発生し、ロータに配設されたマグネット又は巻線による磁界と回転磁界との相互作用によってロータが回転するように構成されている。
【0003】
一般に3相ブラシレスモータでは、ロータの検出位置に応じて、ステータの所定の巻線に順次通電されるように構成されている。巻線へは、例えば電気角120度の正逆矩形波電流が供給される。
【0004】
そして、ロータ回転中、各相巻線にはロータのマグネットにより、それぞれ電気角で120度づつ位相がずれた磁束が与えられる。この各相磁束の電磁的作用によって、ステータの各相巻線には誘起電圧が発生する。誘起電圧は、磁束の変化の大きさに比例して発生する。
【0005】
各相に発生するトルクは、誘起電圧と電流との積に比例するものとなり、ブラシレスモータに発生するトルクは、各相に発生するトルクの和で与えられる。このトルクには、リップルトルク(トルクむら)が含まれ、このリップルトルクは、ブラシレスモータ作動時の振動や騒音等の原因となっていた。
【0006】
上記問題を解決するために、ブラシレスモータの端子に印加する電圧を制御する技術が知られている。例えば、印加電圧を正弦波になるように駆動制御することにより、リップルトルクの発生が低く押えられ、動作効率も高くなるという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記技術の場合、ロータの回転位置を検出する高分解能の位置センサが必要となり、ブラシレスモータに用いられている通常のホール素子に代わって、例えば光学式のエンコーダを用いることが必要になる。
【0008】
そして、ブラシレスモータは、正弦波駆動するための電源駆動装置を備えるか、もしくはPWM制御される場合はマイコン等を備える必要があり、駆動回路が複雑になると共に、制御回路を含むブラシレスモータの製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、駆動方法として簡易で安価な矩形波駆動を採用し、作動時に発生するリップルトルクを低減することのできるブラシレスモータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、請求項1に記載のブラシレスモータによれば、(360/n)度の電気角の通電区間と(360/2n)度の電気角の無通電区間によるn相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられるn相(nは2以上の自然数)の巻線を備えたステータと、極性が交互に異なるマグネットが周方向に略等間隔に配置されたロータと、を備えたブラシレスモータであって、前記マグネットの周方向中央部には、前記ステータに前記マグネットの他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部が設けられたことにより解決される。
【0011】
通常の磁気補正部がないマグネットを備えたロータが回転すると、ステータの巻線に発生する誘起電力は略正弦波状になる。このとき巻線に矩形波電流が与えられれば、生起されるトルクは通電区間において頂上付近がなだらかに丸みを帯びた山型となるので、各相のトルクを合成した合成トルクはリップルトルクを含んだものとなる。
【0012】
本発明ではロータが備えるマグネットの周方向中央部に、他の部分と比べて磁束を小さくするための磁気補正部が形成されるので、巻線に発生する誘起電力は正弦波状のように立ち上がり及び立ち下がりにおいて急峻とならず緩やかになり、全体として三角波に近いものとすることができる。このとき巻線に矩形波電流が与えられれば、生起されるトルクは通電区間において直線的な傾斜をもつ山型となる。
【0013】
したがって、各相トルクは互いに前記直線的な傾斜部においてその変化を打ち消し合い、合成トルクはリップルトルクを含まない略一定値をとることが可能となる。これにより、作動中の振動や騒音を低減することのできるブラシレスモータを得ることができる。
【0014】
また、請求項2に記載のように、前記磁気補正部は、前記マグネットの軸方向に形成された切欠き部とすることができる。当該部分の磁束を小さくする手段として切欠き部を設けることにより、当該部分においてステータとのギャップが他の部分と比べて大きくなり、ステータに与える磁束が低減される。また、切欠き部とすることは比較的容易であるため、リップルトルクを低減するための対策としてはコストが掛からず好適である。
【0015】
また、請求項3に記載のように、前記磁気補正部の周方向幅は、電気角で略(360/2n)度分とすると良い。
【0016】
また、請求項4に記載のブラシレスモータのように、120度の電気角の通電区間と60度の電気角の無通電区間による3相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられる3相の巻線を備えたステータと、極性が交互に異なるマグネットが周方向に略等間隔に配置されたロータと、を備えたブラシレスモータであって、前記マグネットの周方向中央部には、前記ステータに前記マグネットの他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部が設けられたものとすることが可能である。
【0017】
また、請求項5に記載のように、請求項4に記載のブラシレスモータにおいて前記磁気補正部を前記マグネットの軸方向に形成された切欠き部とすることが可能である。また、請求項6に記載のように、前記磁気補正部の周方向幅は、電気角で略60度分とすればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、ブラシレスモータ1を例にとって図面を参照して説明する。また、以下に説明する配置、形状等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0019】
図1は実施例のブラシレスモータの断面図、図2は図1のステータ及びロータの断面図、図3は本発明のブラシレスモータの動作変化をあらわす説明図である。図4は第1実施例の動作変化をあらわす説明図、図5は第1実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【0020】
図6は第2実施例のステータ及びロータの断面図、図7は第2実施例の動作変化をあらわす説明図、図8は第2実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図、図9は第3実施例のステータ及びロータの断面図、図10は第3実施例の動作変化をあらわす説明図、図11は第3実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【0021】
図1に基づき、本発明の実施例に係るインナーロータ型のブラシレスモータ1の構成を説明する。ブラシレスモータ1は、回転軸22が挿着されたロータ20と、ロータ20を回転可能に支承する軸受41、42と、巻線34を有するステータ30と、これらを収納するヨークハウジング40とを備える。
【0022】
図2にロータ20及びステータ30の断面図を示す。なお、図2では理解の容易のため巻線34は省略されている。ロータ20は、回転軸22が挿着されたシャフト24の外周面にマグネット26が配置された構成となっている。マグネット26は僅かに湾曲した板状に形成され、板厚方向に磁束が向くように磁化されている。なお、磁束の向きが異なる2種類のマグネット26が用いられている。
【0023】
そして、シャフト21の外周面には隣り合うマグネット26の極性は交互となるように配置されている。なお、飛散防止のためマグネット26を覆うように円筒状のロータカバーを挿着してもよい。
【0024】
本例のロータ20は磁極が8極であり、マグネット26はロータ20の外周面に、ロータ20の回転角で45度づつずれた位置に配設されている。また、シャフト24に配設されたマグネット26の外側面中央部には、磁気補正部としての溝27が形成されている。この溝27はマグネット26の軸方向に、マグネット26の軸方向長さ分だけ形成され、その周方向幅はロータ20の回転角15度程度、その断面は略半円状である。
【0025】
なお、溝27の軸方向長さは、マグネット26の軸方向長さと同一でなく適宜に短くしてもよい。また、マグネット26の軸方向で分断されていても良い。
【0026】
ステータ30は、鉄芯部31にそれぞれ各相の巻線34が巻回されて構成されており、ヨークハウジング40の内側面に当接するように挿着されている。また、巻線34の端末は、Y結線となるように電気的に接合されている。
【0027】
前記鉄芯部31は、複数の薄板状のステータコア32がカシメられて積層され、一体に形成されたものである。ステータコア32は、外環部32aと、径方向外側に延出する複数のティース部32cを備えた内環部32bとから構成されている。そして、ステータ30は、外環部32a及び内環部32bをそれぞれ積層し、ティース部32cに巻線34を巻回した後、積層された外環部32a及び内環部32bを一体に挿着することにより形成される。
【0028】
また、鉄芯部31の内環部32bには、隣り合うティース部32c間に2箇所づつ、ステータ溝33が形成されている。このステータ溝33により、スロット数が増加されたのと同様の効果が得られる。したがって、トルクリップルの変動を高調波成分に分解する効果が得られ、全体としてトルクリップルの変動幅を低減することが可能となっている。
【0029】
なお、ステータ30は、巻線34が巻回されたコイルボビンを複数挿着することにより構成されるようにしても良い。
【0030】
また、図示しないが、ブラシレスモータ1には、ホール素子、整流素子、位置検出用磁石等から構成される周知の位置検出器と制御回路が備えられており、これらによってロータ20の回転中の位置検出が行われる。この位置検出によって得られる信号と速度設定値を基に、制御回路から巻線34に電流が与えられることにより、ステータ30に回転磁界が発生しロータ20は安定して回転することができる。
【0031】
次に、本実施例のブラシレスモータ1に適用されているリップルトルクの低減の原理について説明する。ここでは、説明の便宜上、1相分の誘起電力、電流等の変化について示す。先ずロータ20が回転すると、マグネット26による磁束変化によって巻線34には誘起電力が発生する。本発明では、この誘起電力の変化が図3(A)に示すように電気角に対して三角波状になるように、ロータ20に配置されたマグネット26の形状を構成している。なお、他相には120度位相がずれて誘起電力が発生する。
【0032】
各相巻線34に印加される電流は、同図(B)に示すように電気角120度の矩形波電流である。すなわち、電気角120度の通電区間では一定値の電流が通電され、これに続き電気角60度の無通電区間では通電されず、電気角120度の逆位相通電区間では逆方向の一定電流が通電され、さらに電気角60度の無通電区間では通電されない。以上を1サイクルとし、各相間のサイクルは120度位相がずれたものとなっている。
【0033】
上記誘起電力と矩形波電流によって、各相には同図(C)に示すトルクが発生する。そして、ブラシレスモータ1全体としては、同図(D)の実線で示す3相を合成したトルクが発生する。以上のようにして発生した3相合成トルクは、リップルトルクを含むことなく電気角によらず一定の値をとるものとなる。すなわち、各相トルクが合成されることにより、各相トルクの直線的な変化が打ち消されるものである。
【0034】
すなわち、本発明では、比較的制御が容易な矩形波電流駆動を採用しつつ、各相に誘起される誘起電力の変化を三角波状にすることにより、リップルトルクの低減を図るものである。
【0035】
図2に示すロータ20及びステータ30は、本発明の第1実施例である。上述のように、ロータ20が回転したときに、巻線34に発生する誘起電力の変化を三角波状にするために、ロータ20に配置されているマグネット26の外周面側に磁気補正部としての溝27が形成されている。
【0036】
上述したように本例のロータ20は磁極が8極であり、マグネット26はロータ20の外周面に、ロータ20の回転角で45度づつずれた位置に配設されている。そして、断面略半円状の溝27はロータ20の回転角15度程度の周方向幅となるように形成されている。すなわち、溝27の周方向幅は、電気角で60度分の幅を有するように形成されている。
【0037】
図4に電気角0〜180度における各相誘起電力(同図(A))、各相トルク(同図(B))及び3相合成トルク(同図(C))の変化を示す。以下に示す変化図では、説明の便宜のため半周期分のみが示され、各相誘起電力及び各相トルクの変化については絶対値で表示されている。溝27を上記のようにすることにより、巻線34に発生する誘起電力の変化は、図4(A)に示すように、三角波に近いものとなる。そして、各相トルク及び3相合成トルクの変化は同図(B)及び同図(C)に示すものとなる。なお、図4及び以下に示す変化図は、計算機によるシミュレーションの結果を示したものである。
【0038】
このように、磁気補正部としての溝27を形成することにより、マグネット26の中心部分(溝部)は、それ以外の部分と比べてステータ30とのギャップが大きくなり、相対的に磁束が小さくなる。これにより、発生する誘起電力の立ち上がり及び立下がりにおいて、その変化が緩やかになり、全体として誘起電力の変化が三角波に近いものとなる。
【0039】
磁気補正部としての溝27が形成されていないマグネットを備えている従来のロータ(以下「従来のロータ」という)が回転すると、巻線に発生する誘起電圧の変化は正弦波に近いものとなる。したがって、本例と同様な矩形波電流が印加されても発生する合成トルクは、各相トルクの電気角による変化を打ち消し合うことができず、リップルトルクが発生することになる。
【0040】
図5に本例のロータ20と従来のロータによる誘起電力の変化図(同図(A))、各相トルク及び3相合成トルクの変化図(同図(B)及び同図(C))を示す。なお、実線は本例、鎖線は従来を示す。また、両者の比較の容易のため誘起電力のピーク値を合致させている。
【0041】
同図(A)から、従来のロータによる誘起電力の変化は正弦波状であるが、本例ではマグネット26に溝27を設けたことにより、誘起電力は三角波に近い変化となっていることが分かる。そして、これにより発生する各相トルクの変化(同図(B))も、立ち上がり及び立下がりが直線的になっていることが分かる。
【0042】
そして、3相合成トルク(同図(C))は、従来のロータにより発生するものと比べ、本例のロータ20によるものでは大幅なリップルトルクの低減がなされていることが分かる。すなわち、各相トルクの立ち上がり及び立下りが直線的になったことにより、3相トルクが合成されると、互いにその変化を打ち消し合い、合成値は一定値に近くなっていることが分かる。
【0043】
次に、図5に本発明の第2実施例を示す。第2実施例に係るロータ20及びステータ30は、第1実施例のものとは、マグネット26の形状を除いて同一である。第1実施例に係るマグネット26の外側面には、磁気補正部として断面略半円状の溝27が形成されていたが、第2実施例に係るマグネット26の外側面中央部には、磁気補正部として断面V字型の溝27が形成されている。
【0044】
上記V字型の溝27の周方向幅は、第1実施例と同様にロータ20の回転角で15度程度(電気角で60度程度)に構成されている。
【0045】
このようなマグネット26を備えたロータ20により、各相には図7(A)に示すような誘起電力が発生する。第2実施例においても第1実施例と同様に、誘起電力の変化は、正弦波よりも三角波に近いものとなる。
【0046】
そして、各相に発生するトルク及び3相合成トルクの変化は、同図(B)及び同図(C)に示すようになる。これらから分かるように、各相のトルクの変化は立ち上がり及び立下りにおいて直線的になり、3相合成トルクの変化は電気角によらず略一定値をとるものとなる。
【0047】
また、第2実施例のロータ20と従来のロータによる誘起電力の変化(図8(A))を比べると、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において、直線的な変化に近くなっていることが分かる。
【0048】
なお、電気角0〜30度及び150〜180度においては、従来のロータによる変化よりも発生する誘起電力の値が大きくなり、外側に膨らんだ状態となっている。しかし、これらの区間は無通電区間であるのでトルクの発生には関わりがなく、したがってリップルトルクには影響を与えない。
【0049】
また、各相トルクの変化(同図(B))では、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において、トルクが直線的に変化していることが分かる。また、3相合成トルクの変化(同図(C))では、従来のものと比べて、リップルトルク分が低減されていることが分かる。
【0050】
次に、図9に本発明の第3実施例を示す。第3実施例に係るロータ20及びステータ30は、第1実施例のものとは、マグネット26の形状を除いて同一である。第3実施例に係るマグネット26の外側面には、磁気補正部としての平面部26aが形成されている。上記平面部26aの周方向幅は、第1実施例と同様にロータ20の回転角で15度程度(電気角で60度程度)に構成されている。
【0051】
このようなマグネット26を備えたロータ20により、各相には図10(A)に示すような誘起電力が発生する。第3実施例においても第1実施例と同様に、誘起電力の変化は、正弦波よりも三角波に近いものとなる。
【0052】
そして、各相に発生するトルク及び3相合成トルクの変化は、同図(B)及び同図(C)に示すようになる。これらから分かるように、各相のトルクの変化は立ち上がり及び立下りにおいて直線的になり、3相合成トルクの変化は電気角によらず略一定値をとるものとなる。
【0053】
また、第3実施例のロータ20と従来のロータによる誘起電力の変化(図11(A))を比べると、第2実施例と同様な傾向として、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において直線的な変化に近くなっているが、無通電区間である電気角0〜30度及び150〜180度においては、外側に膨らんだ状態となっている。
【0054】
また、各相トルクの変化(同図(B))では、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において、トルクが直線的に変化していることが分かる。その結果、3相合成トルクの変化(同図(C))では、従来のものと比べて、リップルトルク分が低減されていることが分かる。
【0055】
ここで、第2実施例のV字型溝27の深さを「0」とし、平面としたものが第3実施例に相当する。V字断面の深さを適宜に設定することは可能であり、個々のロータ及びステータに応じたリップルトルクの低減を図ることができる。
【0056】
上記のように、本実施の形態によれば、以下の効果を有する。
(1)ロータ20に配設されるマグネット26の外側面中央部に断面略半円状又は断面V字型の溝27が形成されたので、溝27部分がステータ30側へ与える磁束が溝27以外の部分よりも相対的に小さくなり、その結果、ロータ20の回転によりステータ30側に発生する誘起電力の変化が正弦波状から三角波状に補正される。
【0057】
そして、ステータ30の各相の巻線34には矩形波電流が順次に通電されており、各相トルクの変化も直線的であるので、ブラシレスモータ1に発生する各相トルクを合成した合成トルクの値を略一定値とすることができる。
【0058】
したがって、合成トルクのリップルトルク分が効果的に低減され、ブラシレスモータ1の作動時に発生する騒音や振動を低減することができる。
【0059】
(2)また、マグネット26の外側面中央部に平面部26aを設けることによっても、同様の原理によってブラシレスモータ1の作動時に発生する騒音や振動を低減することができる。
【0060】
なお、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施例では、マグネット26の外側面に断面略半円形状又は断面V字型の溝、或いは平面部を形成して誘起電圧の変化が三角波状となるようにしているが、これらに限らず、マグネット26の外側面に断面矩形、断面W字型、断面U字型、断面が階段状、波型、複数の山型等の溝を形成してもよい。
【0061】
○また、上記実施例では、各磁極のマグネット26は単体であるが、これに限らず、マグネット26が複数に分離したものであっても良い。この場合、複数のマグネット26は、各磁極において周方向に対象であって磁極の中央部の磁束が小さくなるよう適宜にシャフト24の外側面に配置することができる。
【0062】
○また、上記実施例では、各磁極の中央部の磁束を小さくするために、溝27や平面部26aを設けているが、これに限らず、各磁極のマグネット26の中央部の着磁力を小さくすることにより、同様の効果を得ることが可能である。このため、一体もののマグネット26の中央部分だけ弱く着磁しても良いし、中央部に着磁力の弱いマグネットを配し両側から別の着磁力の強いマグネットで挟む構成としても良い。
【0063】
○また、上記実施例では、溝27や平面部26aの周方向幅を電気角60度分の幅に設定して説明したが、これに限らず、誘起電力の変化が三角波状になるのであれば、幅を狭く若しくは広く設定しても良い。
【0064】
○また、上記実施例では、巻線34を3相とし、電気角120度の矩形波状の周期的な正逆電流が与えられる構成を示したが、これに限らず、巻線34をn相(nは2以上の自然数)とし、電気角(360/n)度の矩形波状の周期的な正逆電流が与えられる構成としてもよい。この場合、溝27の周方向幅は、電気角で(360/2n)度程度とするとよい。
【0065】
○また、上記実施例では、円柱状のシャフト24の外周面に湾曲した板状のマグネット26が配設された構成となっているが、これに限らず、多角柱状のシャフト24の外周面に平板状のマグネット26又はシャフト24との接触面が平面で相対する面が曲面であるマグネット26が配設された構成とし、当該マグネット26に磁気補正部である切欠き溝を設ける構成としてもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明のブラシレスモータによれば、ロータ外周に配置された各マグネットの中央部に磁気補正部が設けられ、これにより各相に発生する誘導起電力の変化が三角波状に変化するように補正された。そして、駆動方法として簡易で安価な矩形波電流駆動を用いることにより、各相に発生するトルクの変化が直線的になり、各相トルクを合成した合成トルクは、回転位置によらず略一定値をとることができる。
【0067】
これにより、ブラシレスモータに発生するリップルトルクを大幅に低減することが可能となり、振動や騒音が少ないブラシレスモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のブラシレスモータの断面図である。
【図2】図1のステータ及びロータの断面図である。
【図3】本発明のブラシレスモータの動作変化をあらわす説明図である。
【図4】第1実施例の動作変化をあらわす説明図である。
【図5】第1実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【図6】第2実施例のステータ及びロータの断面図である。
【図7】第2実施例の動作変化をあらわす説明図である。
【図8】第2実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【図9】第3実施例のステータ及びロータの断面図である。
【図10】第3実施例の動作変化をあらわす説明図である。
【図11】第3実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【符号の説明】
1 ブラシレスモータ、20 ロータ、21 シャフト、22 回転軸、24 シャフト、26 マグネット、26a 平面部、27 溝、30 ステータ、31 鉄芯部、32 ステータコア、32a 外環部、32b 内環部、32c ティース部、33 ステータ溝、34 巻線、40 ヨークハウジング、41,42 軸受
【発明の属する技術分野】
本発明はブラシレスモータに係り、特に作動時に発生するリップルトルクを低減する構造を有するブラシレスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータ等の回転磁界型電動機では、ステータに形成された複数の鉄芯部に巻線が施されており、この巻線に順次電流が流されると回転磁界が発生し、ロータに配設されたマグネット又は巻線による磁界と回転磁界との相互作用によってロータが回転するように構成されている。
【0003】
一般に3相ブラシレスモータでは、ロータの検出位置に応じて、ステータの所定の巻線に順次通電されるように構成されている。巻線へは、例えば電気角120度の正逆矩形波電流が供給される。
【0004】
そして、ロータ回転中、各相巻線にはロータのマグネットにより、それぞれ電気角で120度づつ位相がずれた磁束が与えられる。この各相磁束の電磁的作用によって、ステータの各相巻線には誘起電圧が発生する。誘起電圧は、磁束の変化の大きさに比例して発生する。
【0005】
各相に発生するトルクは、誘起電圧と電流との積に比例するものとなり、ブラシレスモータに発生するトルクは、各相に発生するトルクの和で与えられる。このトルクには、リップルトルク(トルクむら)が含まれ、このリップルトルクは、ブラシレスモータ作動時の振動や騒音等の原因となっていた。
【0006】
上記問題を解決するために、ブラシレスモータの端子に印加する電圧を制御する技術が知られている。例えば、印加電圧を正弦波になるように駆動制御することにより、リップルトルクの発生が低く押えられ、動作効率も高くなるという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記技術の場合、ロータの回転位置を検出する高分解能の位置センサが必要となり、ブラシレスモータに用いられている通常のホール素子に代わって、例えば光学式のエンコーダを用いることが必要になる。
【0008】
そして、ブラシレスモータは、正弦波駆動するための電源駆動装置を備えるか、もしくはPWM制御される場合はマイコン等を備える必要があり、駆動回路が複雑になると共に、制御回路を含むブラシレスモータの製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、駆動方法として簡易で安価な矩形波駆動を採用し、作動時に発生するリップルトルクを低減することのできるブラシレスモータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、請求項1に記載のブラシレスモータによれば、(360/n)度の電気角の通電区間と(360/2n)度の電気角の無通電区間によるn相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられるn相(nは2以上の自然数)の巻線を備えたステータと、極性が交互に異なるマグネットが周方向に略等間隔に配置されたロータと、を備えたブラシレスモータであって、前記マグネットの周方向中央部には、前記ステータに前記マグネットの他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部が設けられたことにより解決される。
【0011】
通常の磁気補正部がないマグネットを備えたロータが回転すると、ステータの巻線に発生する誘起電力は略正弦波状になる。このとき巻線に矩形波電流が与えられれば、生起されるトルクは通電区間において頂上付近がなだらかに丸みを帯びた山型となるので、各相のトルクを合成した合成トルクはリップルトルクを含んだものとなる。
【0012】
本発明ではロータが備えるマグネットの周方向中央部に、他の部分と比べて磁束を小さくするための磁気補正部が形成されるので、巻線に発生する誘起電力は正弦波状のように立ち上がり及び立ち下がりにおいて急峻とならず緩やかになり、全体として三角波に近いものとすることができる。このとき巻線に矩形波電流が与えられれば、生起されるトルクは通電区間において直線的な傾斜をもつ山型となる。
【0013】
したがって、各相トルクは互いに前記直線的な傾斜部においてその変化を打ち消し合い、合成トルクはリップルトルクを含まない略一定値をとることが可能となる。これにより、作動中の振動や騒音を低減することのできるブラシレスモータを得ることができる。
【0014】
また、請求項2に記載のように、前記磁気補正部は、前記マグネットの軸方向に形成された切欠き部とすることができる。当該部分の磁束を小さくする手段として切欠き部を設けることにより、当該部分においてステータとのギャップが他の部分と比べて大きくなり、ステータに与える磁束が低減される。また、切欠き部とすることは比較的容易であるため、リップルトルクを低減するための対策としてはコストが掛からず好適である。
【0015】
また、請求項3に記載のように、前記磁気補正部の周方向幅は、電気角で略(360/2n)度分とすると良い。
【0016】
また、請求項4に記載のブラシレスモータのように、120度の電気角の通電区間と60度の電気角の無通電区間による3相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられる3相の巻線を備えたステータと、極性が交互に異なるマグネットが周方向に略等間隔に配置されたロータと、を備えたブラシレスモータであって、前記マグネットの周方向中央部には、前記ステータに前記マグネットの他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部が設けられたものとすることが可能である。
【0017】
また、請求項5に記載のように、請求項4に記載のブラシレスモータにおいて前記磁気補正部を前記マグネットの軸方向に形成された切欠き部とすることが可能である。また、請求項6に記載のように、前記磁気補正部の周方向幅は、電気角で略60度分とすればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、ブラシレスモータ1を例にとって図面を参照して説明する。また、以下に説明する配置、形状等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0019】
図1は実施例のブラシレスモータの断面図、図2は図1のステータ及びロータの断面図、図3は本発明のブラシレスモータの動作変化をあらわす説明図である。図4は第1実施例の動作変化をあらわす説明図、図5は第1実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【0020】
図6は第2実施例のステータ及びロータの断面図、図7は第2実施例の動作変化をあらわす説明図、図8は第2実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図、図9は第3実施例のステータ及びロータの断面図、図10は第3実施例の動作変化をあらわす説明図、図11は第3実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【0021】
図1に基づき、本発明の実施例に係るインナーロータ型のブラシレスモータ1の構成を説明する。ブラシレスモータ1は、回転軸22が挿着されたロータ20と、ロータ20を回転可能に支承する軸受41、42と、巻線34を有するステータ30と、これらを収納するヨークハウジング40とを備える。
【0022】
図2にロータ20及びステータ30の断面図を示す。なお、図2では理解の容易のため巻線34は省略されている。ロータ20は、回転軸22が挿着されたシャフト24の外周面にマグネット26が配置された構成となっている。マグネット26は僅かに湾曲した板状に形成され、板厚方向に磁束が向くように磁化されている。なお、磁束の向きが異なる2種類のマグネット26が用いられている。
【0023】
そして、シャフト21の外周面には隣り合うマグネット26の極性は交互となるように配置されている。なお、飛散防止のためマグネット26を覆うように円筒状のロータカバーを挿着してもよい。
【0024】
本例のロータ20は磁極が8極であり、マグネット26はロータ20の外周面に、ロータ20の回転角で45度づつずれた位置に配設されている。また、シャフト24に配設されたマグネット26の外側面中央部には、磁気補正部としての溝27が形成されている。この溝27はマグネット26の軸方向に、マグネット26の軸方向長さ分だけ形成され、その周方向幅はロータ20の回転角15度程度、その断面は略半円状である。
【0025】
なお、溝27の軸方向長さは、マグネット26の軸方向長さと同一でなく適宜に短くしてもよい。また、マグネット26の軸方向で分断されていても良い。
【0026】
ステータ30は、鉄芯部31にそれぞれ各相の巻線34が巻回されて構成されており、ヨークハウジング40の内側面に当接するように挿着されている。また、巻線34の端末は、Y結線となるように電気的に接合されている。
【0027】
前記鉄芯部31は、複数の薄板状のステータコア32がカシメられて積層され、一体に形成されたものである。ステータコア32は、外環部32aと、径方向外側に延出する複数のティース部32cを備えた内環部32bとから構成されている。そして、ステータ30は、外環部32a及び内環部32bをそれぞれ積層し、ティース部32cに巻線34を巻回した後、積層された外環部32a及び内環部32bを一体に挿着することにより形成される。
【0028】
また、鉄芯部31の内環部32bには、隣り合うティース部32c間に2箇所づつ、ステータ溝33が形成されている。このステータ溝33により、スロット数が増加されたのと同様の効果が得られる。したがって、トルクリップルの変動を高調波成分に分解する効果が得られ、全体としてトルクリップルの変動幅を低減することが可能となっている。
【0029】
なお、ステータ30は、巻線34が巻回されたコイルボビンを複数挿着することにより構成されるようにしても良い。
【0030】
また、図示しないが、ブラシレスモータ1には、ホール素子、整流素子、位置検出用磁石等から構成される周知の位置検出器と制御回路が備えられており、これらによってロータ20の回転中の位置検出が行われる。この位置検出によって得られる信号と速度設定値を基に、制御回路から巻線34に電流が与えられることにより、ステータ30に回転磁界が発生しロータ20は安定して回転することができる。
【0031】
次に、本実施例のブラシレスモータ1に適用されているリップルトルクの低減の原理について説明する。ここでは、説明の便宜上、1相分の誘起電力、電流等の変化について示す。先ずロータ20が回転すると、マグネット26による磁束変化によって巻線34には誘起電力が発生する。本発明では、この誘起電力の変化が図3(A)に示すように電気角に対して三角波状になるように、ロータ20に配置されたマグネット26の形状を構成している。なお、他相には120度位相がずれて誘起電力が発生する。
【0032】
各相巻線34に印加される電流は、同図(B)に示すように電気角120度の矩形波電流である。すなわち、電気角120度の通電区間では一定値の電流が通電され、これに続き電気角60度の無通電区間では通電されず、電気角120度の逆位相通電区間では逆方向の一定電流が通電され、さらに電気角60度の無通電区間では通電されない。以上を1サイクルとし、各相間のサイクルは120度位相がずれたものとなっている。
【0033】
上記誘起電力と矩形波電流によって、各相には同図(C)に示すトルクが発生する。そして、ブラシレスモータ1全体としては、同図(D)の実線で示す3相を合成したトルクが発生する。以上のようにして発生した3相合成トルクは、リップルトルクを含むことなく電気角によらず一定の値をとるものとなる。すなわち、各相トルクが合成されることにより、各相トルクの直線的な変化が打ち消されるものである。
【0034】
すなわち、本発明では、比較的制御が容易な矩形波電流駆動を採用しつつ、各相に誘起される誘起電力の変化を三角波状にすることにより、リップルトルクの低減を図るものである。
【0035】
図2に示すロータ20及びステータ30は、本発明の第1実施例である。上述のように、ロータ20が回転したときに、巻線34に発生する誘起電力の変化を三角波状にするために、ロータ20に配置されているマグネット26の外周面側に磁気補正部としての溝27が形成されている。
【0036】
上述したように本例のロータ20は磁極が8極であり、マグネット26はロータ20の外周面に、ロータ20の回転角で45度づつずれた位置に配設されている。そして、断面略半円状の溝27はロータ20の回転角15度程度の周方向幅となるように形成されている。すなわち、溝27の周方向幅は、電気角で60度分の幅を有するように形成されている。
【0037】
図4に電気角0〜180度における各相誘起電力(同図(A))、各相トルク(同図(B))及び3相合成トルク(同図(C))の変化を示す。以下に示す変化図では、説明の便宜のため半周期分のみが示され、各相誘起電力及び各相トルクの変化については絶対値で表示されている。溝27を上記のようにすることにより、巻線34に発生する誘起電力の変化は、図4(A)に示すように、三角波に近いものとなる。そして、各相トルク及び3相合成トルクの変化は同図(B)及び同図(C)に示すものとなる。なお、図4及び以下に示す変化図は、計算機によるシミュレーションの結果を示したものである。
【0038】
このように、磁気補正部としての溝27を形成することにより、マグネット26の中心部分(溝部)は、それ以外の部分と比べてステータ30とのギャップが大きくなり、相対的に磁束が小さくなる。これにより、発生する誘起電力の立ち上がり及び立下がりにおいて、その変化が緩やかになり、全体として誘起電力の変化が三角波に近いものとなる。
【0039】
磁気補正部としての溝27が形成されていないマグネットを備えている従来のロータ(以下「従来のロータ」という)が回転すると、巻線に発生する誘起電圧の変化は正弦波に近いものとなる。したがって、本例と同様な矩形波電流が印加されても発生する合成トルクは、各相トルクの電気角による変化を打ち消し合うことができず、リップルトルクが発生することになる。
【0040】
図5に本例のロータ20と従来のロータによる誘起電力の変化図(同図(A))、各相トルク及び3相合成トルクの変化図(同図(B)及び同図(C))を示す。なお、実線は本例、鎖線は従来を示す。また、両者の比較の容易のため誘起電力のピーク値を合致させている。
【0041】
同図(A)から、従来のロータによる誘起電力の変化は正弦波状であるが、本例ではマグネット26に溝27を設けたことにより、誘起電力は三角波に近い変化となっていることが分かる。そして、これにより発生する各相トルクの変化(同図(B))も、立ち上がり及び立下がりが直線的になっていることが分かる。
【0042】
そして、3相合成トルク(同図(C))は、従来のロータにより発生するものと比べ、本例のロータ20によるものでは大幅なリップルトルクの低減がなされていることが分かる。すなわち、各相トルクの立ち上がり及び立下りが直線的になったことにより、3相トルクが合成されると、互いにその変化を打ち消し合い、合成値は一定値に近くなっていることが分かる。
【0043】
次に、図5に本発明の第2実施例を示す。第2実施例に係るロータ20及びステータ30は、第1実施例のものとは、マグネット26の形状を除いて同一である。第1実施例に係るマグネット26の外側面には、磁気補正部として断面略半円状の溝27が形成されていたが、第2実施例に係るマグネット26の外側面中央部には、磁気補正部として断面V字型の溝27が形成されている。
【0044】
上記V字型の溝27の周方向幅は、第1実施例と同様にロータ20の回転角で15度程度(電気角で60度程度)に構成されている。
【0045】
このようなマグネット26を備えたロータ20により、各相には図7(A)に示すような誘起電力が発生する。第2実施例においても第1実施例と同様に、誘起電力の変化は、正弦波よりも三角波に近いものとなる。
【0046】
そして、各相に発生するトルク及び3相合成トルクの変化は、同図(B)及び同図(C)に示すようになる。これらから分かるように、各相のトルクの変化は立ち上がり及び立下りにおいて直線的になり、3相合成トルクの変化は電気角によらず略一定値をとるものとなる。
【0047】
また、第2実施例のロータ20と従来のロータによる誘起電力の変化(図8(A))を比べると、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において、直線的な変化に近くなっていることが分かる。
【0048】
なお、電気角0〜30度及び150〜180度においては、従来のロータによる変化よりも発生する誘起電力の値が大きくなり、外側に膨らんだ状態となっている。しかし、これらの区間は無通電区間であるのでトルクの発生には関わりがなく、したがってリップルトルクには影響を与えない。
【0049】
また、各相トルクの変化(同図(B))では、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において、トルクが直線的に変化していることが分かる。また、3相合成トルクの変化(同図(C))では、従来のものと比べて、リップルトルク分が低減されていることが分かる。
【0050】
次に、図9に本発明の第3実施例を示す。第3実施例に係るロータ20及びステータ30は、第1実施例のものとは、マグネット26の形状を除いて同一である。第3実施例に係るマグネット26の外側面には、磁気補正部としての平面部26aが形成されている。上記平面部26aの周方向幅は、第1実施例と同様にロータ20の回転角で15度程度(電気角で60度程度)に構成されている。
【0051】
このようなマグネット26を備えたロータ20により、各相には図10(A)に示すような誘起電力が発生する。第3実施例においても第1実施例と同様に、誘起電力の変化は、正弦波よりも三角波に近いものとなる。
【0052】
そして、各相に発生するトルク及び3相合成トルクの変化は、同図(B)及び同図(C)に示すようになる。これらから分かるように、各相のトルクの変化は立ち上がり及び立下りにおいて直線的になり、3相合成トルクの変化は電気角によらず略一定値をとるものとなる。
【0053】
また、第3実施例のロータ20と従来のロータによる誘起電力の変化(図11(A))を比べると、第2実施例と同様な傾向として、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において直線的な変化に近くなっているが、無通電区間である電気角0〜30度及び150〜180度においては、外側に膨らんだ状態となっている。
【0054】
また、各相トルクの変化(同図(B))では、電気角30〜90度及び90〜150度のそれぞれの区間において、トルクが直線的に変化していることが分かる。その結果、3相合成トルクの変化(同図(C))では、従来のものと比べて、リップルトルク分が低減されていることが分かる。
【0055】
ここで、第2実施例のV字型溝27の深さを「0」とし、平面としたものが第3実施例に相当する。V字断面の深さを適宜に設定することは可能であり、個々のロータ及びステータに応じたリップルトルクの低減を図ることができる。
【0056】
上記のように、本実施の形態によれば、以下の効果を有する。
(1)ロータ20に配設されるマグネット26の外側面中央部に断面略半円状又は断面V字型の溝27が形成されたので、溝27部分がステータ30側へ与える磁束が溝27以外の部分よりも相対的に小さくなり、その結果、ロータ20の回転によりステータ30側に発生する誘起電力の変化が正弦波状から三角波状に補正される。
【0057】
そして、ステータ30の各相の巻線34には矩形波電流が順次に通電されており、各相トルクの変化も直線的であるので、ブラシレスモータ1に発生する各相トルクを合成した合成トルクの値を略一定値とすることができる。
【0058】
したがって、合成トルクのリップルトルク分が効果的に低減され、ブラシレスモータ1の作動時に発生する騒音や振動を低減することができる。
【0059】
(2)また、マグネット26の外側面中央部に平面部26aを設けることによっても、同様の原理によってブラシレスモータ1の作動時に発生する騒音や振動を低減することができる。
【0060】
なお、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施例では、マグネット26の外側面に断面略半円形状又は断面V字型の溝、或いは平面部を形成して誘起電圧の変化が三角波状となるようにしているが、これらに限らず、マグネット26の外側面に断面矩形、断面W字型、断面U字型、断面が階段状、波型、複数の山型等の溝を形成してもよい。
【0061】
○また、上記実施例では、各磁極のマグネット26は単体であるが、これに限らず、マグネット26が複数に分離したものであっても良い。この場合、複数のマグネット26は、各磁極において周方向に対象であって磁極の中央部の磁束が小さくなるよう適宜にシャフト24の外側面に配置することができる。
【0062】
○また、上記実施例では、各磁極の中央部の磁束を小さくするために、溝27や平面部26aを設けているが、これに限らず、各磁極のマグネット26の中央部の着磁力を小さくすることにより、同様の効果を得ることが可能である。このため、一体もののマグネット26の中央部分だけ弱く着磁しても良いし、中央部に着磁力の弱いマグネットを配し両側から別の着磁力の強いマグネットで挟む構成としても良い。
【0063】
○また、上記実施例では、溝27や平面部26aの周方向幅を電気角60度分の幅に設定して説明したが、これに限らず、誘起電力の変化が三角波状になるのであれば、幅を狭く若しくは広く設定しても良い。
【0064】
○また、上記実施例では、巻線34を3相とし、電気角120度の矩形波状の周期的な正逆電流が与えられる構成を示したが、これに限らず、巻線34をn相(nは2以上の自然数)とし、電気角(360/n)度の矩形波状の周期的な正逆電流が与えられる構成としてもよい。この場合、溝27の周方向幅は、電気角で(360/2n)度程度とするとよい。
【0065】
○また、上記実施例では、円柱状のシャフト24の外周面に湾曲した板状のマグネット26が配設された構成となっているが、これに限らず、多角柱状のシャフト24の外周面に平板状のマグネット26又はシャフト24との接触面が平面で相対する面が曲面であるマグネット26が配設された構成とし、当該マグネット26に磁気補正部である切欠き溝を設ける構成としてもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明のブラシレスモータによれば、ロータ外周に配置された各マグネットの中央部に磁気補正部が設けられ、これにより各相に発生する誘導起電力の変化が三角波状に変化するように補正された。そして、駆動方法として簡易で安価な矩形波電流駆動を用いることにより、各相に発生するトルクの変化が直線的になり、各相トルクを合成した合成トルクは、回転位置によらず略一定値をとることができる。
【0067】
これにより、ブラシレスモータに発生するリップルトルクを大幅に低減することが可能となり、振動や騒音が少ないブラシレスモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のブラシレスモータの断面図である。
【図2】図1のステータ及びロータの断面図である。
【図3】本発明のブラシレスモータの動作変化をあらわす説明図である。
【図4】第1実施例の動作変化をあらわす説明図である。
【図5】第1実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【図6】第2実施例のステータ及びロータの断面図である。
【図7】第2実施例の動作変化をあらわす説明図である。
【図8】第2実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【図9】第3実施例のステータ及びロータの断面図である。
【図10】第3実施例の動作変化をあらわす説明図である。
【図11】第3実施例と従来との動作変化の比較をあらわす説明図である。
【符号の説明】
1 ブラシレスモータ、20 ロータ、21 シャフト、22 回転軸、24 シャフト、26 マグネット、26a 平面部、27 溝、30 ステータ、31 鉄芯部、32 ステータコア、32a 外環部、32b 内環部、32c ティース部、33 ステータ溝、34 巻線、40 ヨークハウジング、41,42 軸受
Claims (6)
- (360/n)度の電気角の通電区間と(360/2n)度の電気角の無通電区間によるn相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられるn相(nは2以上の自然数)の巻線を備えたステータと、極性が交互に異なるマグネットが周方向に略等間隔に配置されたロータと、を備えたブラシレスモータであって、
前記マグネットの周方向中央部には、前記ステータに前記マグネットの他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部が設けられたことを特徴とするブラシレスモータ。 - 前記磁気補正部は、前記マグネットの軸方向に形成された切欠き部であることを特徴とする請求項1記載のブラシレスモータ
- 前記磁気補正部は、(360/2n)度の電気角分の幅を含む所定の周方向幅を有することを特徴とする請求項1又は2記載のブラシレスモータ。
- 120度の電気角の通電区間と60度の電気角の無通電区間による3相矩形状電流が正逆方向に周期的に与えられる3相の巻線を備えたステータと、極性が交互に異なるマグネットが周方向に略等間隔に配置されたロータと、を備えたブラシレスモータであって、
前記マグネットの周方向中央部には、前記ステータに前記マグネットの他の部分よりも小さい磁束を与える磁気補正部が設けられたことを特徴とするブラシレスモータ。 - 前記磁気補正部は、前記マグネットの軸方向に形成された切欠き部であることを特徴とする請求項5記載のブラシレスモータ
- 前記磁気補正部は、60度の電気角分の幅を含む所定の周方向幅を有することを特徴とする請求項5又は6記載のブラシレスモータ。
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