JP2004061818A - 電子写真方式用トナー、電子写真方式用現像剤、画像、シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる示温材料を含むトナー及び現像剤を用い、画像を電子写真方式により形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度の変化により着色、退色、変色などする画像、その様な画像を形成し得る電子写真方式用トナー及び現像剤、その様な画像が形成されたシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一つの原稿を多量に複製する方法としては、原稿を高速、多量および安価に複製できる印刷が一般的であった。しかしながら、近年、パーソナルユースを目的とする複製の需要が増加し、ある程度の部数の複製は、印刷機に代わりコピー機などの電子写真装置を用いて行われつつある。電子写真方式は、印刷機と異なり版などを必要としないため、少量および多品種の複製に好適であり、印刷と比べ要求即応(オンデマンド、On Demand)な方式であると考えられる。
【0003】
印刷機において、文字および図などの情報を伝達するための画像は、インキを紙などの支持体に定着して形成される。近年、印刷で形成される画像は多種に渡り、画像に要求される品位も高度化の一途を辿っている。この様な動向に応じて、各種の機能を有する高性能のインキが多数開発され、実用に供されている。
【0004】
一方、電子写真装置においては、文字および図などの情報を伝達するための画像は、現像剤が紙などの支持体に定着されて形成される。現像剤には、トナーとトナーに電荷を付与する別粒子(キャリア)とを含む二成分現像剤と、電荷制御能を有するトナー単独の一成分現像剤とに大別される。これらの現像剤において、トナーは帯電機能を有する着色粒子であり、結着樹脂、色材、電荷制御剤、離型剤、表面処理剤、磁性剤などを用いて作製される。これらのトナー成分の種類および配合量などは注意深く至適化され、帯電性、電気抵抗性、磁気性および流動性などの現像特性、定着性および着色性などの定着特性、保存性、取扱性などのトナーに要求される性能の良好なバランスが実現される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
各種の機能を有するインキの一つに、インキにより形成された画像が温度の変化により着色、退色または変色するもの、即ち示温インキ(サーモクロミックインキとも言う)がある。示温インキより形成される、温度の変化により着色、退色または変色する画像は、温度センサーとして使用できるだけではなく、例えば、真贋判定および偽造防止などの機能を有する。示温インキを使用したものとして、特開2000−62367号公報および特開2000−6565号公報には、サーモクロミックインキを印刷したカラーコピー防止印刷物が開示されている。特開2002−99879号公報には、サーモクロミックインキで印刷して作製するバーコード所持体が開示されている。
【0006】
しかしながら、以上の様な温度の変化により着色、退色または変色する画像は、オフセット印刷、活版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの印刷で形成されるため、大量生産には適するが、短い納期で少量多品種を生産するオンデマンド生産には不適当な場合があった。
【0007】
このため、少量多品種の証明書、整理券、金券、入場券や、温度の変化を避ける食品、化粧品、薬品などの物流管理、在庫管理などに用いられる温度センサー、さらには、個人あるいは小集団で使用され、情報の隠蔽が求められる書物類、具体的には小規模な教育機関などで使用する教材や個人的な書簡等などを上記の様なインキで作製すると、納期が長期となったり、費用が高くなる場合があった。
【0008】
この様な状況に鑑み、本発明においては、印刷に代わり電子写真方式を使用して、温度の変化により着色、退色または変色する画像をオンデマンド作製することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明によれば、温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像を電子写真方式で形成するために使用され、温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる示温材料を含むトナーが提供される。
【0010】
また、上記の様なトナーを含む電子写真方式用現像剤が提供される。
【0011】
また、温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像を電子写真方式で形成するために使用され、トナーと、温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる示温材料とを含む電子写真方式用現像剤が提供される。
【0012】
また、上記の様な現像剤で電子写真方式により形成された画像を有するシートが提供される。
【0013】
以上の様な現像剤を用いれば、温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像が支持体上に形成されたシートを、電子写真方式により簡単にオンデマンド形成できる。温度の変化により着色、退色または変色する画像は、温度センサーとして用いることができる。この画像は、他に、真贋判定および偽造防止などの機能を有する。また、温度の変化により変色する画像に重ねてこの画像の室温における色と同じ色の画像を形成する(温度の変化により変色する画像の上に形成する場合も、下に形成する場合も含む)ことにより、あるいは、温度の変化により着色または変色する画像の室温における色を無色透明または支持体と同じ色とすることにより、その画像に記された情報の隠蔽を図ることができる。
【0014】
なお、本発明において、示温材料とは、温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じるものを言うが、この変化は可逆変化であっても、不可逆変化であってもよい。また、温度に応じて三色以上の異なる色を呈する(色変化が2つ以上ある)材料も含まれる。
【0015】
また、本発明において、示温材料は、単一物質の構造変化により色変化が起こるものに限られず、2種以上の物質が相互作用して色変化が起こるものも含まれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
(示温材料)
示温材料としては、トナーの定着性および離型性などを損なうことなく、画像の十分な着色性、顕現性および変色性を実現するものであれば特に制限されず、温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる公知の材料を使用することができる。
【0018】
示温材料としては、例えば、サーモクロミック有機色素;液晶;電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物;電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物および温度制御剤を含む組成物;無機化合物を使用することができる。以下に示温材料それぞれについて説明する。
【0019】
なお、本発明においては、示温材料のうち、単一物質の構造変化により色変化が起こる有機化合物(液晶を除く)をサーモクロミック有機色素と言う。
【0020】
1.サーモクロミック有機色素
サーモクロミック有機色素としては、例えば、スピロピラン類;トリフェニルメタン類などが挙げられる。
【0021】
スピロピラン類としては、例えば、ジ−α,β−ナフトイソスピロピラン、ベンゾ−β−ナフトイソスピロピラン、3−アルキル−ジ−β−ナフトスピロピランが挙げられる。スピロピラン化合物の一例を以下に示す。
【0022】
【化1】
【0023】
トリフェニルメタン化合物としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0024】
【化2】
【0025】
また、下記のような原子団(−NR−CH2CH2−X:X=OHまたはNH2、R=水素または炭化水素基)を有する化合物も使用することができる。なお、下記式中、Rは水素または炭化水素基を示す。
【0026】
【化3】
【0027】
下記のようなサリチルアルデヒドとアニリン誘導体との縮合生成物も使用することができる。なお、下記式中、Arはアリール基を示す。
【0028】
【化4】
【0029】
下記のようなアミド結合を有する側鎖を持ったポリジアセチレンも使用することができる。このものは、117〜137℃程度においてほぼ可逆的に緑から黄色に変色する。このポリジアセチレンの重合度(下記式中のx)は、2〜1000が好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
他に、ビアントロン、ジキサンチレン、キサンチリジエンアンスロンなどを使用することもできる。
【0032】
2.液晶
液晶には、例えば、ネマティック液晶、コレステリック液晶、スメクティック液晶、ディスコティック液晶などがあり、中でも、温度に対する感応性が高い等の理由から、コレステリック液晶を使用することが好ましい。液晶は、変色の温度幅が比較的狭く、6〜10℃の幅で、更には0.5℃で変色させることも可能である。
【0033】
コレステリック液晶の多くはコレステリンの誘導体で非常に薄い螺旋構造を形成しており、この分子配列ではねじりの変形エネルギーが極めて小さいので、その螺旋のピッチは温度によって容易に変化する。この温度によるピッチの変化が吸収スペクトルの変化を生み、通常、自然光下で赤、橙、黄、緑、青、紫と変色する。変色温度は液晶の種類、混合比によって異なり、比較的自由に設計することができる。なお、この変化は可逆変化である。
【0034】
コレステリック液晶としては、コレステリルペラルゴネート、コレステリルプロピオネート、コレステリルオレイルカーボネート、安息香酸コレステリル、塩化コレステリル、オクタン酸コレステリル、ノナン酸コレステリルクロルギ酸コレステリル、炭酸オレイルコレステリル、酢酸コレステリル、エレオステアリン酸コレステリル及びこれらの誘導体;セルロース誘導体などを使用する。
【0035】
また、2−メチルブチル基、3−メチルブトキシ基、4−メチルヘキシル基などの光学活性構造が導入されたネマティック液晶(カイラルネマティック液晶)を使用することもできる。
【0036】
ネマティック液晶としては、例えば、以下の様な化合物を使用する。
【0037】
【化6】
【0038】
上の一般式(1a)〜(1c)で示される様なアゾメチル化合物(式中、R及びR’は独立に、水素、ハロゲン、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルケニル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルコキシル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリール基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアラルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリールオキシル基、カルボン酸エステル、シアノ基、ニトロ基を表す。)、
【0039】
【化7】
【0040】
上の一般式(2a)〜(2d)で示される様なエステル化合物(式中、R、R’及びR1〜R6は独立に、水素、ハロゲン、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルケニル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルコキシル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリール基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアラルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリールオキシル基、カルボン酸エステル、シアノ基、ニトロ基を表す。)、
【0041】
【化8】
【0042】
上の一般式(3a)及び(3b)で示される様なビフェニル化合物(式中、Rは、水素、ハロゲン、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルケニル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルコキシル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリール基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアラルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリールオキシル基、カルボン酸エステル、シアノ基、ニトロ基を表す。)、
【0043】
【化9】
【0044】
上の一般式(4)で示される様なスチルベン化合物(式中、R、R’、X及びYは独立に、水素、ハロゲン、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルケニル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルコキシル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリール基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアラルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリールオキシル基、カルボン酸エステル、シアノ基、ニトロ基を表す。)、
【0045】
【化10】
【0046】
上の一般式(5a)及び(5b)で示される様なアゾキシ化合物(式中、R及びR’は独立に、水素、ハロゲン、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルケニル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルコキシル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリール基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアラルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリールオキシル基、カルボン酸エステル、シアノ基、ニトロ基を表す。)、
【0047】
【化11】
【0048】
上の一般式(6)で示される様なアゾ化合物(式中、R及びR’は独立に、水素、ハロゲン、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルケニル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアルコキシル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリール基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアラルキル基、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていても良いアリールオキシル基、カルボン酸エステル、シアノ基、ニトロ基を表す。)等を使用する。
【0049】
スメクティック液晶としては、カプリル酸、カプリル酸誘導体、カプリル酸塩カプリル酸誘導体塩などを使用する。
【0050】
ディスコティック液晶としては、ベンゼンヘキサアルカノエート及びベンゼンヘキサアルカノエート誘導体、トリフェニレン及びトリフェニレン誘導体、ルフィガロール及びルフィガロール誘導体、トルクセン及びトルクセン誘導体などを使用する。
【0051】
また、以上の様な低分子液晶に加え、高分子液晶も使用できる。高分子液晶としては、以上の様な低分子液晶構造が主鎖に存在している主鎖型、以上の様な低分子液晶構造が側鎖として主鎖に結合している側鎖型の何れでも使用できる。側鎖型高分子液晶の主鎖としては、ポリシロキサンおよびシリコーン樹脂、ポリ(メタ)アクリレートおよびアクリル樹脂などを挙げることができる。
【0052】
3.電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物
この組成物は2つの成分で構成されており、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物(顕色剤)とが加熱により溶融して接触し、反応(電子の授受)して発色する。通常、生成した着色物は不可逆な物質である。
【0053】
電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、ジアリルフタリド類;ポリアリールカルビノール類;ロイコオーラミン類;アミルオーラミン類;アリールオーラミン類;ローダミンBラクタム類;インドリン類;スピロピラン類;フルオラン類;ラクトン類が挙げられる。電子供与性呈色性有機化合物の具体例を以下に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
電子供与性呈色性有機化合物は2種以上を併用することもできる。電子供与性呈色性有機化合物を混合することによりその混色も得られ、比較的自由に色種を選択することができる。
【0058】
電子受容性化合物は、使用する電子供与性呈色性有機化合物に応じて適宜選択される。電子受容性化合物としては、例えば、フェノール類;カルボン酸類;スルホン酸類;酸性リン酸エステル及びこれらの金属塩が挙げられる。電子受容性化合物の具体例を以下に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
この組成物に占める、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物の割合は適宜決めることができる。通常、電子供与性呈色性有機化合物100質量部に対して、電子受容性化合物は、1質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、一方、1000質量部以下が好ましく、800質量部以下がより好ましい。
【0063】
4.電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物および温度制御剤を含む組成物
この組成物は3つの成分で構成されており、電子供与性呈色性有機化合物は色を決定する役割、電子受容性化合物は濃度を決定する役割、温度制御剤は変色温度を決定する役割をしている。この組成物が熱変色を示す原理は明らかではないが、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物とが反応(電子の授受)して発色するが、これに特定の温度制御剤を加えると、この化合物が電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物との発色反応をインターセプトして分子レベルで隔離し、発色を防げて無色になると推定される。温度制御剤の阻害機能はある特定の温度で起こり、しかも通常は可逆的である。
【0064】
電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、ジアリルフタリド類;ポリアリールカルビノール類;ロイコオーラミン類;アミルオーラミン類;アリールオーラミン類;ローダミンBラクタム類;インドリン類;スピロピラン類;フルオラン類;ラクトン類が挙げられる。具体的には、3,6−ジメトキシフルオラン(黄)、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン(橙)、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン(朱)、3−ジエチルアミノベンツフルオラン(桃)、ローダミンBラクタム(赤)、クリスタルバイオレットラクトン(青)、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン(緑)、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(黒)が挙げられる。また、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物において用いられる電子供与性呈色性有機化合物も使用することができる。
【0065】
電子供与性呈色性有機化合物は2種以上を併用することもできる。電子供与性呈色性有機化合物を混合することによりその混色も得られ、比較的自由に色種を選択することができる。
【0066】
電子受容性化合物は、使用する電子供与性呈色性有機化合物に応じて適宜選択される。電子受容性化合物としては、例えば、フェノール類;カルボン酸類;スルホン酸類;酸性リン酸エステル及びこれらの金属塩が挙げられる。具体的には、o−フェニルフェノール、ビスフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、没食子酸プロピルエステル、没食子酸ドデシルエステルが挙げられる。また、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物において用いられる電子受容性化合物も使用することができる。
【0067】
温度制御剤としては、例えば、アルコール類;チオール類;カルボン酸エステル類;リン酸エステル類;スルホン酸エステル類;ケトン類;エーテル類;チオエーテル類;スルフィド類;酸アミド類が挙げられる。具体的には、プロピルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デジルアルコール、n−ラウリルアルコール、n−ミリスチルアルコール、n−セチルアルコール、n−ステアリルアルコール、アセトアセチルアニリド、ジフェニルフタレート、ジベンジルベンゼン、ドデシルベンゼン−アセトフェノン、ドデシルベンゼン−エチルアルコール、ベンジルベンゼンが挙げられる。
【0068】
この組成物に占める、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物および温度制御剤の割合は適宜決めることができる。通常、電子供与性呈色性有機化合物100質量部に対して、電子受容性化合物は、1質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、一方、1000質量部以下が好ましく、800質量部以下がより好ましい。また、電子供与性呈色性有機化合物100質量部に対して、温度制御剤は、100質量部以上が好ましく、500質量部以上がより好ましく、一方、4000質量部以下が好ましく、3000質量部以下がより好ましい。
【0069】
5.無機化合物
無機化合物には、温度変化が不可逆であるもの(不可逆性示温材料)と、温度変化が可逆であるもの(可逆性示温材料)とがある。
【0070】
不可逆性示温材料としては、例えば、コバルト、ニッケル、鉄、銅、クロム、マンガン、鉛、ビスマス、マグネシウムなどの化合物(特に金属塩、金属錯体)が挙げられる。代表的な無機の不可逆性示温材料を以下に示す。なお、表中、Pyrとは、C5H5Nを示す。
【0071】
【表7】
【0072】
無機の不可逆性示温材料は、熱分解によって化合物の組成そのものが変化することに起因して変色するものである。その変色温度が加熱条件(加熱時間、加熱速度など)の影響を受けて変動するものもある。
【0073】
不可逆性示温材料に属し、温度と時間の相乗作用で変色する熱積算性示温材料としては、例えば、イオウ、硫化亜鉛、硫化アンチモン、硫化カルシウム、チオカルボアニリド等のイオウ化合物と、酸化鉛、塩基性炭酸塩、水酸化銅、塩基性炭酸銅、塩基性炭酸コバルト、塩基性炭酸ニッケル等の水不溶性または水難溶性の多価金属化合物との混合物が挙げられる。このものは、水蒸気の存在下で一定時間加熱すると、多価金属の硫化物を生成して変色する。
【0074】
可逆性示温材料としては、例えば、Ag2HgI4(変色温度:50℃)、Cu2HgI4(変色温度:70℃)、Ag2HgI4−Cu2HgI4固溶体(変色温度は成分比に応じて約35〜70℃の範囲で変動)等のヨウ化水銀錯塩;Hg、Ag、Cu、Pb等の重金属のヨウ化物が挙げられる。
【0075】
上記の無機の可逆性示温材料は、化合物の結晶形の転移による物理的変化に基づいて変色するものである。その変色温度は温度上昇時と下降時とで若干異なることもある。なお、その変色温度が加熱条件(加熱時間、加熱速度など)の影響を受けて変動することはあまりない。
【0076】
また、準可逆性示温材料としては、例えば、CoCl2・C6H12N4・10H2O、CoBr2・C6H12N4・10H2O、CoI2・C6H12N4・10H2O、CoSO4・C6H12N4・10H2O等のコバルトのヘキサメチレンテトラミン塩、NiCl2・2C6H12N4・10H2O等のニッケルのヘキサメチレンテトラミン塩が挙げられる。これらは、加熱によって結晶水を放出して変色するが、多湿雰囲気で再び結晶水を取り込んで復色する。
【0077】
なお、必要に応じて、示温材料を二種以上併用することもできる。
【0078】
また、上記のような示温材料を透明なカプセル壁を有するマイクロカプセルに封じ込めたものを使用することもできる。
【0079】
以上の様な示温材料のトナー全体に占める割合は、画像の十分な着色性、顕現性および変色性を実現するために、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、一方、トナーの定着性および離型性などを損なわない観点から、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。なお、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物、あるいは、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物および温度制御剤を含む組成物を示温材料として用いる場合も、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0080】
一成分現像剤を作製する場合、示温材料は、普通、トナーに配合するが、示温材料を含有しないトナーと示温材料とを混合して現像剤を調製することもでき、示温材料を含有するトナーに更に示温材料を混合して現像剤を調製することもできる。
【0081】
また、二成分現像剤を作製する場合、示温材料は、普通、トナーに配合するが、キャリアに示温材料を配合することもでき、示温材料を含有しないトナーと示温材料を含有しないキャリアと示温材料とを混合して現像剤を調製することもでき、トナー及びキャリアの少なくとも一方に示温材料を配合し更に示温材料を混合して現像剤を調製することもできる。
【0082】
以上の様な場合、示温材料の現像剤全体に占める割合は、画像の十分な着色性、顕現性および変色性を実現するために、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、一方、トナーの定着性および離型性などを損なわない観点から、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。なお、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物、あるいは、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物および温度制御剤を含む組成物を示温材料として用いる場合も、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0083】
例えば、室温程度の通常の環境下、具体的には25℃における色が白色の示温材料を使用して作製された白色トナーで形成される画像は、白色である。従って、支持体(画像を形成するシート)として白色のものを使用すれば、容易には目視できない白色画像を形成でき、画像を潜在化できる。そして、所定の温度にすることにより、この潜在画像が変色(着色)して顕在化される。よって、この様なトナーを使用すれば、潜在画像により秘密情報および秘匿情報を形成でき、必要な時に潜在画像を顕在化して情報を読取ることができる。
【0084】
上では白色の場合を例として説明したが、トナーの色(示温材料の25℃における色)と支持体の色とが一致している場合は、白色に限らず潜在画像を形成できるため、秘密情報および秘匿情報などを有する画像を形成でき、必要に応じて顕在化して情報を読取ることができる。
【0085】
また、トナーの色(示温材料の25℃における色)と同じ色の画像を重ねて形成することによっても画像を潜在化でき、秘密情報および秘匿情報などを有する画像を形成できる。そして、所定の温度にすることにより、この潜在画像が着色して顕在化されるため、必要に応じて潜在画像を顕在化して情報を読取ることができる。なお、ここで「重ねて形成する」とは、「示温材料を含む現像剤で電子写真方式により形成された画像上に形成する」場合だけではなく、「示温材料を含む現像剤で電子写真方式により形成された画像の下に形成する」場合も含む。
【0086】
また、25℃における色が無色透明な示温材料および無色透明な結着樹脂を使用すれば、無色透明トナーを作製できる。無色透明トナーを用いて作製された画像は、無色透明である。従って、無色透明トナーを使用すれば、支持体の色に関係なく目視困難な透明画像を形成でき、潜在画像を形成できるため、秘密情報および秘匿情報などを有する画像を形成できる。そして、所定の温度にすることにより、この潜在画像が着色して顕在化されるため、必要に応じて潜在画像を顕在化して情報を読取ることができる。
【0087】
(結着樹脂)
結着樹脂はトナーの構成要素を十分結着し、トナーの良好な定着性および帯電性などを実現するものであれば特に制限されないが、ビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ビニルトルエン重合体、マレイン酸重合体、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ワックス類;これらの樹脂の単量体成分の共重合体などを使用し、必要に応じて複数の樹脂を併用することもできる。
【0088】
また、温度の変化による色の変化(着色、退色、変色など)を明瞭にするためには、透明な結着樹脂が好ましく、透明樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂などが好ましく、アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレー卜樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂などを使用する。
【0089】
例えば、スチレン系樹脂およびスチレン系樹脂の単量体成分の共重合体の具体例として、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びスチレン誘導体のホモポリマー;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体などを使用する。
【0090】
更に、架橋構造を有する樹脂を結着樹脂として使用することもできる。結着樹脂の架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物を使用し、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタジオールジメタクリレート等の二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物などを使用し、必要に応じて複数を併用することもできる。
【0091】
一方、所望の色の画像を得ることができれば、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂などの半透明樹脂や、着色樹脂を使用することができる。
【0092】
以上の様な結着樹脂の中でも、加熱定着用には、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの樹脂の単量体成分の共重合体が好ましく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0093】
加圧定着用には、ワックス類、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アミド系樹脂およびこれらの樹脂の単量体成分の共重合体が好ましく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0094】
また、湿式トナーの場合は、アクリル系樹脂、ビニルトルエン重合体、マレイン酸重合体およびこれらの樹脂の単量体成分の共重合体が好ましく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0095】
なお、結着樹脂のトナー全体に占める割合は、普通、50〜95質量%とする。
【0096】
(色材)
本発明においては、色材として上記の示温材料を用いるが、所望の色の画像を得るために、トナーにその他の色材を含有させてもよい。
【0097】
色材としては、トナーの特性を低下させることなく十分に着色できるものであれば特に制限されないが、チャネルカーボン、ファーネスカーボン等のカーボンブラック;ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料;ファーストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料;銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料;フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料;分散染料、油溶性染料などを用い、必要に応じて複数の色材を併用することもできる。
【0098】
また、磁性トナーの場合は、磁性粉として、マグネタイト、フェライト、コバルト、鉄、ニッケル等の金属単体またはその合金を用いることもできる。
【0099】
更に、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、ホワイトカーボン、シリカ、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、カオリンクレー等の粘土鉱物、タルク、マイカ、ネフェリンサイアナイト等の体質顔料も使用できる。
【0100】
黒色トナーの場合、黒色色材として、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー色材、マゼンタ色材およびシアン色材を混合して黒色に調色された色材などを用いる。
【0101】
カラー画像の場合、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー等を作製する。
【0102】
イエロー色材としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などを使用し、具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168及び180等を使用し、C.I.ソルベントイエロー93,162,163等の染料を併用しても良い。
【0103】
マゼンタ色材としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などを使用し、具体的には、C.Iピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221及び254等を使用する。
【0104】
シアン色材としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などを使用し、具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62及び66等を使用する。
【0105】
白色トナーの場合、白色色材として、酸化チタン、チタン白、酸化亜鉛、亜鉛白、硫化亜鉛、リトポン、鉛白、アンチモン白、ジルコニア、酸化ジルコニア等を使用する。
【0106】
なお、以上の様な色材は、単独で又は複数を混合して、固体および液体の状態で用いることができ、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性なども考慮して選択される。
【0107】
なお、色材のトナー全体に占める割合は、普通、1〜20質量%とする。
【0108】
(電荷制御剤)
電荷制御剤としては、トナーの特性を低下させることなく十分に電荷を制御できるものであれば特に制限されないが、負極性電荷制御剤および正極性電荷制御剤を用いる。
【0109】
負極性電荷制御剤の具体例としては、有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸およびそれらの金属塩、それらの無水物、それらのエステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、及びノンメタルカルボン酸系化合物などが有るが、Cr錯塩染料などの電子受容性染料、電子受容性有機錯体、銅フタロシアニンのスルホニルアミン、塩素化パラフィン等が好ましい。
【0110】
また、正極性電荷制御剤の具体例としては、ニグロシン、脂肪酸金属塩による変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジンアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩および4級アンモニウム塩又はオニウム塩のレーキ顔料、トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、例えば、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物)、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類などが有るが、電子供与性のニグロシン染料、第四級アンモニウム塩などが好ましい。
【0111】
なお、電荷制御剤のトナー全体に占める割合は、普通、0.01〜10質量%とする。
【0112】
(離型剤)
定着時のオフセットを低減し、通紙性などを改良するために、離型剤を配合することもできる。この様な離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、流動パラフィン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等を使用する。これらの離型剤は溶融粘度が低いため、定着時に離型剤として機能する。
【0113】
なお、離型剤のトナー全体に占める割合は、普通、0.1〜20質量%とする。
【0114】
(表面処理剤)
表面処理剤としてワックス類をトナー中に配合することにより、トナーの流動性を向上できる。また、トナーの表面に表面処理剤として微粉体を付着させることにより、トナーの流動性を向上できる。この様な微粉体として疎水性シリカ等を使用するが、疎水性シリカをトナーの表面に付着すると、流動性が向上するのみならず、トナーのクリーニング性および帯電性も向上できる。また、疎水性シリカ以外に、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、脂肪酸金属塩、ポリ弗化ビニリデン、ポリスチレン等の微粉末も使用できる。
【0115】
なお、表面処理剤の使用量は、トナー100質量部に対して、普通、0.1〜20質量%とする。
【0116】
(磁性剤)
更に、トナーに磁性剤を含有させて、磁性トナーを作製することもできる。この場合、磁性剤は色材の役割を兼ねることもできる。この様な磁性剤としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等の金属;これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属;これらの金属の合金およびその混合物が挙げられる。
【0117】
なお、磁性剤のトナー全体に占める割合は、普通、1〜20質量%とする。
【0118】
(その他の添加剤)
トナーには、以上に説明した成分以外に、フッ素樹脂、ステアリン酸亜鉛などの滑剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤などの添加剤を必要に応じて使用できる。
【0119】
(現像剤)
現像剤の種類には、乾式二成分系、乾式一成分系、湿式系などが有り、以上で説明した成分を有するトナーを用いて、それぞれの現像剤を作製できる。
【0120】
乾式二成分系で使用するトナーは、結着樹脂、色材、電荷制御剤、離型剤、表面処理剤などを用いて作製され、体積平均粒子径が1〜20μmとなる様に調整する。なお、トナーの体積平均粒子径は、例えばCoulter Electronics社(英国)製コールターマルチサイダーを用いて測定できる。この様なトナーをキャリアと混合して乾式二成分現像剤を作製する。乾式二成分系で使用するキャリアは、芯材をコート剤で被覆することで作製され、体積平均粒子径が10〜200μmとなる様に調整する。
【0121】
キャリアの芯材としては、表面酸化の鉄粉、表面未酸化の鉄粉、ニッケル粉、銅粉、亜鉛粉、コバルト粉、マンガン粉、クロム粉、希土類粉などの金属粉;これらの金属の酸化物粉;これらの金属の合金粉;これらの合金の酸化物粉;フェライト粉;マグネタイト粉などを使用する。
【0122】
キャリアのコート剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;フェノール樹脂;ジ−ターシャリーブチルサリチル酸の金属錯体;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド;ポリビニルブチラール;ニグロシン;アミノアクリレート樹脂;塩基性染料およびそのレーキ;シリカ微粒子;アルミナ微粒子などを単独または複数で用いる。これらのコート剤を溶剤中に溶解または懸濁し、これをキャリア表面に塗工したり;コート剤を単に粉体で混合する等の方法でキャリアが作製される。
【0123】
なお、トナーとキャリアとの混合比は、現像剤全体に対して、トナーが1〜15質量%となるようにする。
【0124】
乾式一成分系で使用するトナーは、結着樹脂、色材、電荷制御剤、離型剤、表面処理剤などに加え、例えば磁性トナーの場合、磁性剤などを用いて作製され、体積平均粒子径が1〜20μmとなる様に調整し、キャリアと混合することなく乾式一成分現像剤を作製する。
【0125】
湿式系で使用するトナーは、結着樹脂、色材、電荷制御剤などを用いて作製され、体積平均粒子径が0.1〜3μmとなる様に調整する。この様なトナーをキャリアと混合して湿式現像剤を作製する。湿式系で使用するキャリアとしては、体積固有抵抗が1012〜1015Ωcm、誘電率が2〜3の絶縁性液体などを使用する。
【0126】
(トナー及び現像剤の製造方法)
乾式トナーは製造方法により、粉砕トナーと重合トナーとに大別される。
【0127】
粉砕トナーの製造方法としては、例えば、結着樹脂、色材、電荷制御剤、離型剤、磁性剤などの必要なトナー成分を、ヘンシェルミキサー及びボールミル等の混合機で十分に混合する。
【0128】
次に、得られた混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練し、樹脂成分を相溶させ、トナー成分を均一に分散させる。その後、得られた混練物を冷却固化し、ハンマーミル及びジェットミル等で粉砕し、サイクロン及びミクロンセパレーター等で分級して造粒し、所望のトナーを得る。
【0129】
さらに必要に応じて表面処理剤などを、ヘンシェルミキサー等の混合機で混合することもできる。
【0130】
一方、重合トナーの製造方法としては、例えば、ディスク及び多流体ノズル等を用いて溶融混合物を空気中に霧化し球状トナー粒子を得る方法;懸濁重合法を用いて直接トナー粒子を生成する方法;単量体には可溶で得られる重合体が不要な水系有機溶剤を用い直接トナー粒子を生成する分散重合法、水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナー粒子を生成するソープフリー重合法などの乳化重合法;予め一次極性乳化重合粒子を調製後、反対電荷を有する極性粒子を加え会合させるヘテロ凝集法等を用いる。
【0131】
中でも、重合性モノマーと他のトナー成分とを含むモノマー組成物を直接重合してトナー粒子を生成する方法が好ましい。また、一旦得られた重合粒子に更に単量体を吸着させた後、重合開始剤を用い重合させるシード重合方法も好ましい。
【0132】
以上の様にして得られたトナーは、必要に応じてキャリアと混合される。混合は、Vブレンダーなどを用いて行われる。
【0133】
一方、湿式トナーの場合は、ボールミル及びアトライタ等の混合機にトナー成分とキャリア液体とを投入し、十分に分散させて、混合工程および造粒工程を同時に行う。
【0134】
(シート)
示温材料を含有する電子写真方式用の現像剤を使用すれば、シルクスクリーン印刷およびグラビア印刷などの印刷ではなく、オンデマンドトナープリンター等のオンデマンド電子写真方式により、温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像を形成できる。よって、温度センサーや、真贋判定および偽造防止などの機能を利用して少量多品種の証明書、整理券、金券および入場券などを、簡単に作製できる。入場券などの場合、通常、入場時に予め形成されているミシン目にそって切断されるが、温度の変化により着色、退色または変色する画像をこのミシン目(切断部分)を跨いで形成してあれば、切断後でもその真贋判定を容易に行うことができる。
【0135】
温度センサーとしては、温度の変化により速やかに着色、退色または変色し、元の温度に戻ると速やかに元の色に戻る材料を用いることにより、現時点での温度を検知する温度センサーを作製することができる。更には、温度変化による色変化が少なくともその条件において不可逆である、あるいは、可逆であっても戻りが十分に遅い示温材料を用いることにより、温度変化の有無を示すセンサー(温度変化を記録できる媒体)を作製することができる。この様なものを、例えば、荷物の搬送時に包装紙として用いると、あるいは、ラベルのような形で荷物に貼り付けると、何らかのトラブルがあって荷物が高温になったり低温になったりした場合、搬送後にそのことが一目で分かる。また、在庫管理においてもこのシートをセンサー(記録媒体)として用いると、品物が高温になったかどうか、低温になったかどうかを容易に知ることができる。
【0136】
また、上記の示温材料とは異なる第2の示温材料を含む第2の現像剤を用いて、第2の画像を、上記のシート上に更に形成することもできる。変色する温度範囲の異なる第2画像を形成することにより、より高性能の温度センサーとすることができる。また、第2画像を形成することにより、真贋判定および偽造防止などの機能を向上できる。
【0137】
また、上記の温度の変化により変色する画像上に重ねて、この画像の25℃における色と同じ色の画像を、通常の現像剤により、あるいは、印刷により形成することもできる。通常の現像剤により、あるいは、印刷により形成した、温度の変化により変色する画像の25℃における色と同じ色の画像上に重ねて、上記の温度の変化により変色する画像を形成することもできる。この様にすることで、上記の温度の変化により変色する画像に記された情報の隠蔽を図ることができ、必要に応じて所定の温度にしてこの潜在画像を顕在化して情報を読取ることができる。
【0138】
また、上記の温度の変化により着色または変色する画像の25℃における色を無色透明または支持体と同じ色とすることもできる。この様にすることで、上記の温度の変化により着色または変色する画像に記された情報の隠蔽を図ることができ、必要に応じて所定の温度にしてこの潜在画像を顕在化して情報を読取ることができる。
【0139】
なお、画像が形成される支持体としては公知のものいずれも用いることができ、通常の紙の他に、合成紙、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及び塩化ビニル等の合成フィルムを用いることができる。これらの合成フィルムを用いる場合には、支持体の表面にマット処理やコロナ処理などの表面処理を施してもよい。
【0140】
(用途分野)
以上に説明してきた本発明の現像剤を用いれば、温度センサー、証明書、整理券、金券および入場券、個人的な書簡等の情報の隠蔽が求められる書物類、冷蔵、冷凍条件での物流管理用帳票類/ラベル/パッケージなど、温度管理が必要な食品・薬品類のラベル、決まった温度条件下におく必要のある建物あるいは部屋内に置くポスター、書類などに付加しておくシート状インジケータ等を、オンデマンドに作製できる。また、当然、意匠性などの点から、この様な温度の変化により着色、退色または変色する画像を支持体上に形成してもよい。
【0141】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を使用する。
【0142】
(実施例1)電子写真方式用トナー1、電子写真方式用現像剤1
スチレン800質量部およびアクリロニトリル200質量部をトルエン10000質量部に溶解し、これにAIBN3質量部、更に、50質量%体積平均粒子径5μmのアゾジカルボンアミドを加えて分散させた後、重合反応させて、結着樹脂を得る。
【0143】
得られた結着樹脂110質量部に、ステアリン酸1質量部、ポリプロピレン2質量部および下記式(1)で示されるトリフェニルメタン化合物15質量部を混合し、これを時間処理量5kg/hrで2軸押出し溶融混練機(温度制御シリンダー数7、ベント数1)で第5シリンダーまで樹脂温度130℃で混練し、第6シリンダーにベントを設置して150℃で脱気し、第7シリンダーで180℃で発泡させて、スポンジ状の混練物を得る。
【0144】
【化12】
【0145】
この混練物をジェットミル(圧力:0.5MPa)で粉砕し、風力分級機で分級して体積平均粒子径7μmの電子写真方式用トナー1を得る。この電子写真方式用トナー1の98.6質量部に疎水性シリカ微粒子1.4質量部をヘンシルミキサーにて混合し、この混合物7質量部とキャリアであるフェノール樹脂が表面にコートされたマグネタイト粒子93質量部とを混合して、二成分系の電子写真方式用現像剤1を得る。
【0146】
一方、図1に示す様な入場券を、コピー機によりオンデマントで作製する。その際、入場券のミシン目を跨ぐ画像(図中のハッチで示した画像)を、電子写真方式用現像剤1を用いて形成する。この画像は温度を変えると変色するものであり、この画像を形成した入場券は真贋判定が容易で、偽造は困難である。また、入場券をミシン目にそって切断した後も、その半券から真贋判定が容易である。
【0147】
(実施例2)電子写真方式用トナー2、電子写真方式用現像剤2
キャリアとして、マグタイト粒子の表面にフェノール樹脂がコートされ、フェノール樹脂層が上記式(1)で示されるトリフェニルメタン化合物を含有しているものを使用し、上記式(1)で示されるトリフェニルメタン化合物の現像剤に占める割合を10質量%とする以外は、電子写真方式用現像剤1の場合と同様に電子写真方式用現像剤2を調製する。
【0148】
一方、図1に示す様な入場券を、コピー機によりオンデマントで作製する。その際、入場券のミシン目を跨ぐ画像(図中のハッチで示した画像)を、電子写真方式用現像剤2を用いて形成する。この画像は温度を変えると変色するものであり、この画像を形成した入場券は真贋判定が容易で、偽造は困難である。また、入場券をミシン目にそって切断した後も、その半券から真贋判定が容易である。
【0149】
(実施例3)電子写真方式用トナー3、電子写真方式用現像剤3
上記式(1)で示されるトリフェニルメタン化合物に代えてCo(AsO4)2(C5H5N)2・10H2Oを使用した以外は、電子写真方式用トナー1及び電子写真方式用現像剤1の場合と同様にして、電子写真方式用トナー3及び電子写真方式用現像剤3を調製する。
【0150】
搬送時に荷物に貼り付けるラベルに、コピー機により、電子写真方式用現像剤3を用いて画像をオンデマントで形成する。この画像は高温になると変色するものであり、搬送時に荷物が高温になるとラベルの画像からそのことが分かる。
【0151】
【発明の効果】
温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる示温材料を含むトナー及び現像剤を用いれば、印刷に代わり電子写真方式を使用して、温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像をオンデマンド作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像が形成されたシートを説明するための模式図である。
Claims (11)
- 温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像を電子写真方式で形成するために使用され、
温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる示温材料を含むトナー。 - 前記示温材料は、サーモクロミック有機色素である請求項1記載の電子写真方式用トナー。
- 前記示温材料は、液晶である請求項1記載の電子写真方式用トナー。
- 前記示温材料は、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物を含む組成物であり、温度の変化により生じる着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化が不可逆のものである請求項1記載の電子写真方式用トナー。
- 前記示温材料は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物および温度制御剤を含む組成物であり、温度の変化により生じる着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化が可逆のものである請求項1記載の電子写真方式用トナー。
- 前記示温材料は、無機化合物である請求項1記載の電子写真方式用トナー。
- 前記示温材料のトナー全体に占める割合は、0.1〜40質量%である請求項1乃至6何れかに記載の電子写真方式用トナー。
- 透明な結着樹脂を含む請求項1乃至7何れかに記載の電子写真方式用トナー。
- 温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像を電子写真方式で形成するために使用され、
トナーと、温度の変化により着色、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる示温材料とを含む電子写真方式用現像剤。 - 請求項1乃至8何れかに記載の電子写真方式用トナーを含む現像剤または請求項9記載の現像剤で電子写真方式により形成され、
温度の変化により着色、顕在化、退色および変色の少なくとも何れかの変化を生じる画像。 - 支持体上に請求項10記載の画像が形成されたシート。
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JP2002219521A Pending JP2004061818A (ja) | 2002-07-29 | 2002-07-29 | 電子写真方式用トナー、電子写真方式用現像剤、画像、シート |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004061818A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7303846B2 (en) | 2004-09-02 | 2007-12-04 | Fuji Xerox Co., Ltd. | Electrophotographic toner, process for producing the same, and process for forming image |
JP2009109634A (ja) * | 2007-10-29 | 2009-05-21 | Ricoh Co Ltd | 画像形成装置及び画像形成方法 |
JP2010024322A (ja) * | 2008-07-17 | 2010-02-04 | Nichiyu Giken Kogyo Co Ltd | 可逆性の示温材およびそれを用いた温度管理用インジケータ |
JP2011113093A (ja) * | 2009-11-23 | 2011-06-09 | Toshiba Tec Corp | 電子写真用トナー |
JP2011138125A (ja) * | 2009-12-31 | 2011-07-14 | Qinghua Univ | 熱変色性素子及び熱変色性表示装置 |
US8221955B2 (en) * | 2006-07-25 | 2012-07-17 | Hewlett-Packard Development Company, L.P. | Methods of producing ink toners and ink compositions including ink toners |
US8685602B2 (en) | 2011-03-28 | 2014-04-01 | Fuji Xerox Co., Ltd. | Toner for electrophotography, developer for electrophotography, toner cartridge, image forming apparatus, and image forming method |
-
2002
- 2002-07-29 JP JP2002219521A patent/JP2004061818A/ja active Pending
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