JP2004060670A - 車両用パワートレーンの制御装置 - Google Patents
車両用パワートレーンの制御装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004060670A JP2004060670A JP2002215526A JP2002215526A JP2004060670A JP 2004060670 A JP2004060670 A JP 2004060670A JP 2002215526 A JP2002215526 A JP 2002215526A JP 2002215526 A JP2002215526 A JP 2002215526A JP 2004060670 A JP2004060670 A JP 2004060670A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- transmission
- control device
- torque capacity
- engine
- request
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】燃費を向上し、かつ、こもり音の増加を抑制できる車両用パワートレーンの制御装置を提供する。
【解決手段】燃焼気筒数を変更可能なエンジンと、エンジンと車輪との間に配置された変速機とを有し、変速機を駆動ポジションまたは非駆動ポジションとに切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、燃焼筒数が所定数未満に設定されている場合に、駆動ポジションが選択されたことを判断するシフトポジション判断手段(ステップS1,S2)と、シフトポジション以外の条件に基づいて、車速制御要求を判断する車速制御要求判断手段(ステップS4)と、駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求がない場合の変速機のトルク容量を、車速制御要求がある場合の変速機のトルク容量よりも少なくする変速機制御手段(ステップS3,S5)とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】燃焼気筒数を変更可能なエンジンと、エンジンと車輪との間に配置された変速機とを有し、変速機を駆動ポジションまたは非駆動ポジションとに切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、燃焼筒数が所定数未満に設定されている場合に、駆動ポジションが選択されたことを判断するシフトポジション判断手段(ステップS1,S2)と、シフトポジション以外の条件に基づいて、車速制御要求を判断する車速制御要求判断手段(ステップS4)と、駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求がない場合の変速機のトルク容量を、車速制御要求がある場合の変速機のトルク容量よりも少なくする変速機制御手段(ステップS3,S5)とを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンおよびトルク容量制御装置を有する車両用パワートレーンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の駆動力源として用いられる内燃機関、例えば、エンジンは、燃焼室で燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを機械エネルギに変換して出力する動力装置である。このエンジンの燃費を向上する制御の一つとして、燃料を燃焼させる気筒数を変更する制御が知られており、このような制御を実行できるエンジンは、可変気筒エンジンと呼ばれている。このような可変気筒エンジンを有する車両用パワートレーンの一例が、特開平8−310276号公報に記載されている。
【0003】
この公報に記載されているパワートレーンは、エンジンの出力側に、トルクコンバータ、自動変速機などが設けられている。また、自動変速機のシフトポジションを切り換えるシフト装置が設けられている。そして、シフト装置により非走行ポジションが選択されている場合は、エンジンを部分気筒作動状態に制御することができる。これに対して、シフト装置により非走行ポジションが選択され、かつ、エンジンを部分気筒作動状態に制御している場合に、非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられた場合は、エンジンが部分気筒作動状態に維持される。このような制御をおこなうことにより、非走行レンジが選択されている場合には、エンジンの燃費を向上できる一方、非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられた場合は、シフトポジションの切り換えに伴い、変速機のトルク容量が変化することと、エンジンの気筒数が増加されてその出力変動が発生することとが重複することを回避でき、駆動力の変化によるショックを抑制できるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンを部分気筒作動状態に制御した場合は、全気筒作動状態に比べてエンジン出力の変動幅が大きいため、公報に記載されているように、非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられた場合にも、部分気筒作動状態が維持されていると、エンジン出力の変動が、エンジンと車輪との間に設けられている動力伝達装置に伝達された場合に、動力伝達装置が振動してこもり音が発生する可能性があった。
【0005】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、シフトポジションの切り換えがおこなわれた場合のこもり音の発生を抑制することができる車両用パワートレーンの制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、エンジンから車輪に至る動力伝達経路にトルク容量制御装置が設けられており、このトルク容量制御装置のトルク容量を低下させることにより、エンジンの出力変動によるこもり音を抑制できる車両用パワートレーンの制御装置において、前記こもり音の抑制要求の有無を判断する第1の制御要求判断手段と、前記こもり音の抑制要求以外の車速制御要求の有無を判断する第2の制御要求判断手段と、前記こもり音の抑制要求がある場合は、車速制御要求がない場合における前記トルク容量制御装置のトルク容量を、車速制御要求がある場合における前記トルク容量制御装置のトルク容量よりも少なく制御するトルク容量制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この請求項1の発明は、トルク容量制御装置と変速機とが別々に設けられているパワートレーン、または、変速機がトルク容量制御装置を兼ねているパワートレーンのいずれにも適用できる。
【0008】
請求項1の発明によれば、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させて、こもり音を抑制している場合は、車速制御要求の有無に基づいて、トルク容量制御装置のトルク容量が制御される。
【0009】
請求項2の発明は、燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更可能なエンジンと、このエンジンから車輪に至る動力伝達経路に配置された変速機とを有し、この変速機をトルク伝達可能にする駆動ポジションと、この変速機をトルク伝達不可能にする非駆動ポジションとを、選択的に切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、前記ポジション以外の条件に基づいて、車両の乗員の車速制御要求の有無を判断する車速制御要求判断手段と、前記駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求がない場合における前記変速機のトルク容量を、車速制御要求がある場合における前記変速機のトルク容量よりも少なくする変速機制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明によれば、燃料の燃焼をおこなう気筒数を所定数未満に制御し、かつ、駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求の有無に基づいて、変速機のトルク容量が制御される。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記変速機制御手段は、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の状態に基づいて、前記車速制御要求の有無を判断する機能を、更に備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の作用が生じる他に、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の操作状態に基づいて、シフトポジション以外の車速制御要求の有無が判断される。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を適用できる車両のパワートレーンおよびその制御系統を、図2に基づいて説明する。まず、パワートレーンについて説明する。車両には駆動力源としてエンジン1が搭載されており、エンジン1の動力が、変速機2およびデファレンシャル20を経由して車輪3に伝達されるように構成されている。エンジン1は、燃料を燃焼させて動力を出力する形式の動力装置であり、このエンジン1としては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、水素エンジンなどを用いることができる。
【0014】
以下、エンジン1としてガソリンエンジンを用いた場合について説明する。このエンジン1は複数の気筒4を有しており、各気筒4は、シリンダ、ピストン、燃焼室などの要素により構成されている。また各気筒4毎に、燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置5および点火装置6が設けられている。このため、複数の各気筒4について、燃料の供給量および供給時期、点火時期などを独立して個々に制御することができる。具体的には、このエンジン1は、複数の気筒4のうち、燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更(増減)することのできる、いわゆる可変気筒エンジンである。複数の気筒4のうち、燃料の供給および点火をおこなう気筒数を、所定数未満に設定することを、便宜上、減筒運転制御と呼ぶ。
【0015】
変速機2は、その変速比を段階的(不連続的)に制御することのできる有段式の変速機である。ここでは、変速機2として、例えば、複数の遊星歯車機構と、遊星歯車機構のトルク伝達経路を切り換える摩擦係合装置とを有する変速機を用いた場合について説明する。この変速機2においては、摩擦係合装置の係合・解放状態を変更することにより、変速比を変更することができる。変速機2として、例えば、前進5段および後進1段の変速比を設定可能な変速機を用いることができる。そして、変速機2を制御するシフトポジションとして、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを設定可能である。
【0016】
ここで、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが、前進用のシフトポジションである。前進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を前進させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。そして、Dポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第5速のいずれかを設定可能であり、4ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第4速のいずれかを設定可能である。
【0017】
また、3ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第3速のいずれかを設定可能であり、2ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速または第2速のいずれかを設定可能であり、Lポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速に固定される。なお、前進ポジジョンが選択された場合は、摩擦係合装置の1つであるクラッチ7が係合される。
【0018】
Rポジションは、後進用のシフトポジションである。後進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を後進(後退)させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。Rポジションが選択された場合は、摩擦係合装置の1つである7Aが係合されて、所定の変速比に固定される。上記のDポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジション、Rポジションが、駆動ポジションである。これらの駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量(係合圧)が高められて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達(動力伝達)が可能な状態となる。
【0019】
これに対して、NポジションおよびPポジションは、非駆動ポジションであり、この非駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量が低下されて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達が不可能な状態となる。このように、各シフトポジションでは、変速比の制御範囲が異なることから、「シフトポジション」を「シフトレンジ」と呼ぶこともできる。
【0020】
さらに、変速機2の摩擦係合装置の係合・解放を制御するアクチュエータとしての油圧制御装置8が設けられている。また、前記エンジン1および油圧制御装置8を制御する電子制御装置9が設けられている。電子制御装置9は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAM,ROM)および入出力インタフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0021】
そして、電子制御装置9には、制動要求検知センサ10の信号、加速要求検知センサ11の信号、シフトポジションセンサ12の信号、車速センサ13の信号、エンジン回転数センサ14の信号、スロットル開度センサ15の信号などが入力される。電子制御装置9は、各種のセンサの信号および予め記憶されているデータに基づいて、エンジン1および変速機2を制御する信号を出力する。前記制動要求検知センサ10により、ブレーキ装置10Aの状態が検知される。ブレーキ装置10Aは、例えば、ブレーキペダル、マスターシリンダ、ホイールシリンダなどにより構成されている。また、加速要求検知センサ11により、エンジン出力制御装置11Aの状態が検知される。エンジン出力制御装置11Aは、例えば、アクセルペダル、スロットルバルブなどにより構成されている。これら、ブレーキペダルおよびアクセルペダルは、車両の乗員により操作される。
【0022】
図2に示す車両においては、基本的には、選択されるシフトポジションに基づいて、クラッチ7,7Aのトルク容量が制御されるが、シフトポジション以外の条件に基づいても、クラッチ7,7Aのトルク容量を制御することもできる。以下、クラッチ7,7Aのトルク容量の制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
【0023】
まず、シフトポジションとしてNポジションまたはPポジションが選択され、かつ、エンジン1が減筒運転中であるか否かが判断される(ステップS1)。ステップS1で肯定的に判断されるということは、摩擦係合装置7(7A)が解放されており、変速機2の入力部材と出力部材との間で動力伝達をおこなうことができない状態にある。すなわち、ニュートラル制御が実行されている。
【0024】
ステップS1についで、NレンジまたはPレンジから、駆動ポジションに切り換えられたか否かが判断される(ステップS2)。ステップS2で肯定的に判断されるということは、こもり音を抑制する要求があることを意味する。そこで、エンジン1の減筒運転制御および前記ニュートラル制御を継続する(ステップS3)。このステップS3についで、制動要求が解除されたこと、または加速要求が発生したこと、少なくとも一方が成立したか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4で肯定的に判断されるということは、車速制御要求があることを意味する。そこで、この場合は、摩擦係合装置7(7A)を係合させて(ステップS5)、リターンする。これに対して、ステップS4で否定的に判断された場合は、車速制御要求がないことになる。そこで、この場合はステップS3に戻る。また、ステップS1またはステップS2で否定的に判断された場合は、こもり音の抑制要求がないことになるため、そのままリターンする。
【0025】
このように、図1の制御例によれば、NポジションまたはPポジションが選択されている場合は、エンジン1が減筒運転されて燃費が向上する。また、NポジションまたはPポジションが選択され、かつ、エンジン1が減筒運転されている場合に、シフトポジションが駆動ポジションに切り換えられたとしても、エンジン1の減筒運転は継続される。このため、燃費を向上した状態が継続される。また、ステップS2で肯定的に判断された場合であっても、車両の乗員が加速意志を示さない限り、具体的には、ブレーキペダルが戻されたり、アクセルペダルが踏み込まれたりしない限り、ニュートラル制御が継続される。したがって、エンジン1の減筒運転制御により、そのトルク変動幅が大きくなっているが、そのトルク変動は、摩擦係合装置7(7A)と、車輪3との間の動力伝達経路(例えばドライブシャフト)には伝達されず、こもり音の増大を抑制できる。
【0026】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS1,S2が、この発明の第1の制御要求判断手段およびシフトポジション判断手段に相当し、ステップS4が、この発明の第2の制御要求判断手段および車速制御要求判断手段に相当し、ステップS3,S5が、この発明のトルク容量制御手段および変速機制御手段に相当する。また、図1のフローチャートで説明した事項と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの操作状態の少なくとも一方の状態が、この発明の車速制御要求に相当し、「Pポジション、Nポジション」が、この発明の「非駆動ポジション」に相当し、「Dポジション、4ポジション、3ポジション、Lポジション、Rポジション」が、この発明の駆動ポジションに相当する。
【0027】
さらに、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、変速機2およびクラッチ(摩擦係合装置)7,7Aが、この発明のトルク容量制御装置に相当する。すなわち、変速機2が、この発明の変速機およびトルク容量制御装置の機能を兼備している。なお、この発明において「燃料を燃焼させる気筒の数を所定数未満に設定する制御」には、「右バンクおよび左バンクを有するエンジンにおいて、片方のバンクのみで燃料を燃焼させる制御」も含まれる。
【0028】
また、上記実施例では、変速機2が有段変速機である場合について説明しているが、特許請求の範囲の請求項2に記載された発明を、無段変速機を備えた車両のパワートレーンに適用することもできる。無段変速機とは、入力部材と出力部材との間の変速比を、連続的もしくは無段階に制御することのできる変速機を意味している。この無段変速機としては、ベルト式無段変速機とトロイダル式無段変速機とが挙げられる。
【0029】
これらの無段変速機を簡単に説明する。まず、ベルト式無段変速機は、駆動側プーリおよび従動側プーリと、駆動側プーリの溝および従動側プーリの溝に巻き掛けられたベルトとを有する。駆動側プーリは入力部材に連結され、従動側プーリは出力部材に連結される。そして、駆動側プーリの溝幅を調整して、駆動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径と、従動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径とを制御することにより、ベルト式無段変速機の変速比が制御される。また、従動側プーリの溝幅を調整することにより、ベルトの張力が制御される。このベルトの張力の調整により、各プーリおよびベルトとの接触圧力、言い換えれば、駆動側プーリと従動側プーリとの間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、ベルト式無段変速機の「ベルト」には、チェーンも含まれる。
【0030】
一方、トロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクおよび出力ディスクと、各ディスクに対して接触するパワーローラとを有する変速機である。入力ディスクは入力部材に連結され、出力ディスクは出力部材に連結される。各ディスクとパワーローラとの接触面には潤滑油が存在する。そして、パワーローラを、各ディスクの軸線に直交する平面内で直線状に移動させて、パワーローラと各ディスクとの接触半径を調整することにより、入力部材と出力部材との間の変速比が制御される。また、各ディスクとパワーローラとの接触面圧を調整することにより、入力部材と出力部材との間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、いずれの無段変速機においても、そのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御されるように構成されている。
【0031】
さらに、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、変速機とトルク容量制御装置とが別々に設けられているパワートレーンを有する車両に対しても適用できる。このような車両としては、例えば、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、発進クラッチが設けられている車両が挙げられる。発進クラッチのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御される。この「発進クラッチ」が、この発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0032】
ところで、前述の無段変速機を有する車両においては、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、前後進切り換え機構が配置される。この前後進切り換え機構は、回転部材の回転方向を正方向と逆方向とに選択的に切り換える機構であり、前後進切り換え機構は、例えば、遊星歯車機構および摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ)により構成される。摩擦係合装置のトルク容量は、アクチュエータ、例えば油圧制御装置により制御される。このように、エンジンと車輪との間の動力伝達経路に、無段変速機および前後進切り換え機構を配置した車両に対しても、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を適用できる。この場合は、「前後進切り換え機構の一部を構成する摩擦係合装置」が、この発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0033】
さらにまた、特許請求の範囲に記載されている発明の他の把握態様を記載する。すなわち、第1の制御要求判断手段を、第1の制御要求判断器、または、第1の制御要求判断用コントローラと読み替え、第2の制御要求判断手段を、第2の制御要求判断器、または、第2の制御要求判断用コントローラと読み替え、トルク容量制御手段を、トルク容量制御器、または、トルク容量制御用コントローラと読み替え、車速制御要求判断手段を、車速制御要求判断器、または、車速制御要求判断用コントローラと読み替え、シフトポジション判断手段を、シフトポジション判断器、または、シフトポジション判断用コントローラと読み替え、変速機制御手段を、変速機制御器、または、変速機制御用コントローラと読み替えることもできる。これらの把握態様においては、図2に示す電子制御装置9が、各器またはコントローラに相当する。
【0034】
さらに、第1の制御要求判断手段を、第1の制御要求判断ステップと読み替え、第2の制御要求判断手段を、第2の制御要求判断ステップと読み替え、トルク容量制御手段をトルク容量制御ステップと読み替え、車速制御要求判断手段を、車速制御要求判断ステップと読み替え、シフトポジション判断手段を、シフトポジションステップと読み替え、変速機制御手段を、変速機制御テップと読み替え、車両用パワートレーンの制御装置を、車両用パワートレーンの制御方法と読み替えることもできる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、こもり音の抑制要求がある場合は、車速制御要求の有無に基づいて、トルク容量制御装置のトルク容量を制御することができる。したがって、車速制御要求がない場合において、動力伝達方向で、エンジンの出力変動がトルク容量制御装置よりも下流に伝達されることを抑制でき、こもり音の増大を抑制できる。
【0036】
請求項2の発明によれば、燃料の燃焼気筒数を最大気筒数未満に設定し、かつ、駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求の有無に基づいて、変速機のトルク容量を制御することができる。したがって、エンジンの燃費が向上するとともに、車速制御要求がない場合において、エンジン出力の変動が、動力伝達方向で変速機よりも下流に伝達されることを抑制でき、こもり音の増大を抑制できる。
【0037】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の状態に基づいて、車速制御要求の有無を判断できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1の制御例を実行できる車両の概念図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…変速機、 3…車輪、 4…気筒、 7,7A…摩擦係合装置(クラッチ)、 10A…ブレーキ装置、 11A…エンジン出力制御装置。
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンおよびトルク容量制御装置を有する車両用パワートレーンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の駆動力源として用いられる内燃機関、例えば、エンジンは、燃焼室で燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを機械エネルギに変換して出力する動力装置である。このエンジンの燃費を向上する制御の一つとして、燃料を燃焼させる気筒数を変更する制御が知られており、このような制御を実行できるエンジンは、可変気筒エンジンと呼ばれている。このような可変気筒エンジンを有する車両用パワートレーンの一例が、特開平8−310276号公報に記載されている。
【0003】
この公報に記載されているパワートレーンは、エンジンの出力側に、トルクコンバータ、自動変速機などが設けられている。また、自動変速機のシフトポジションを切り換えるシフト装置が設けられている。そして、シフト装置により非走行ポジションが選択されている場合は、エンジンを部分気筒作動状態に制御することができる。これに対して、シフト装置により非走行ポジションが選択され、かつ、エンジンを部分気筒作動状態に制御している場合に、非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられた場合は、エンジンが部分気筒作動状態に維持される。このような制御をおこなうことにより、非走行レンジが選択されている場合には、エンジンの燃費を向上できる一方、非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられた場合は、シフトポジションの切り換えに伴い、変速機のトルク容量が変化することと、エンジンの気筒数が増加されてその出力変動が発生することとが重複することを回避でき、駆動力の変化によるショックを抑制できるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンを部分気筒作動状態に制御した場合は、全気筒作動状態に比べてエンジン出力の変動幅が大きいため、公報に記載されているように、非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられた場合にも、部分気筒作動状態が維持されていると、エンジン出力の変動が、エンジンと車輪との間に設けられている動力伝達装置に伝達された場合に、動力伝達装置が振動してこもり音が発生する可能性があった。
【0005】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、シフトポジションの切り換えがおこなわれた場合のこもり音の発生を抑制することができる車両用パワートレーンの制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、エンジンから車輪に至る動力伝達経路にトルク容量制御装置が設けられており、このトルク容量制御装置のトルク容量を低下させることにより、エンジンの出力変動によるこもり音を抑制できる車両用パワートレーンの制御装置において、前記こもり音の抑制要求の有無を判断する第1の制御要求判断手段と、前記こもり音の抑制要求以外の車速制御要求の有無を判断する第2の制御要求判断手段と、前記こもり音の抑制要求がある場合は、車速制御要求がない場合における前記トルク容量制御装置のトルク容量を、車速制御要求がある場合における前記トルク容量制御装置のトルク容量よりも少なく制御するトルク容量制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この請求項1の発明は、トルク容量制御装置と変速機とが別々に設けられているパワートレーン、または、変速機がトルク容量制御装置を兼ねているパワートレーンのいずれにも適用できる。
【0008】
請求項1の発明によれば、トルク容量制御装置のトルク容量を低下させて、こもり音を抑制している場合は、車速制御要求の有無に基づいて、トルク容量制御装置のトルク容量が制御される。
【0009】
請求項2の発明は、燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更可能なエンジンと、このエンジンから車輪に至る動力伝達経路に配置された変速機とを有し、この変速機をトルク伝達可能にする駆動ポジションと、この変速機をトルク伝達不可能にする非駆動ポジションとを、選択的に切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、前記ポジション以外の条件に基づいて、車両の乗員の車速制御要求の有無を判断する車速制御要求判断手段と、前記駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求がない場合における前記変速機のトルク容量を、車速制御要求がある場合における前記変速機のトルク容量よりも少なくする変速機制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明によれば、燃料の燃焼をおこなう気筒数を所定数未満に制御し、かつ、駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求の有無に基づいて、変速機のトルク容量が制御される。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記変速機制御手段は、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の状態に基づいて、前記車速制御要求の有無を判断する機能を、更に備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の作用が生じる他に、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の操作状態に基づいて、シフトポジション以外の車速制御要求の有無が判断される。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を適用できる車両のパワートレーンおよびその制御系統を、図2に基づいて説明する。まず、パワートレーンについて説明する。車両には駆動力源としてエンジン1が搭載されており、エンジン1の動力が、変速機2およびデファレンシャル20を経由して車輪3に伝達されるように構成されている。エンジン1は、燃料を燃焼させて動力を出力する形式の動力装置であり、このエンジン1としては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、水素エンジンなどを用いることができる。
【0014】
以下、エンジン1としてガソリンエンジンを用いた場合について説明する。このエンジン1は複数の気筒4を有しており、各気筒4は、シリンダ、ピストン、燃焼室などの要素により構成されている。また各気筒4毎に、燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置5および点火装置6が設けられている。このため、複数の各気筒4について、燃料の供給量および供給時期、点火時期などを独立して個々に制御することができる。具体的には、このエンジン1は、複数の気筒4のうち、燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更(増減)することのできる、いわゆる可変気筒エンジンである。複数の気筒4のうち、燃料の供給および点火をおこなう気筒数を、所定数未満に設定することを、便宜上、減筒運転制御と呼ぶ。
【0015】
変速機2は、その変速比を段階的(不連続的)に制御することのできる有段式の変速機である。ここでは、変速機2として、例えば、複数の遊星歯車機構と、遊星歯車機構のトルク伝達経路を切り換える摩擦係合装置とを有する変速機を用いた場合について説明する。この変速機2においては、摩擦係合装置の係合・解放状態を変更することにより、変速比を変更することができる。変速機2として、例えば、前進5段および後進1段の変速比を設定可能な変速機を用いることができる。そして、変速機2を制御するシフトポジションとして、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを設定可能である。
【0016】
ここで、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが、前進用のシフトポジションである。前進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を前進させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。そして、Dポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第5速のいずれかを設定可能であり、4ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第4速のいずれかを設定可能である。
【0017】
また、3ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第3速のいずれかを設定可能であり、2ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速または第2速のいずれかを設定可能であり、Lポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速に固定される。なお、前進ポジジョンが選択された場合は、摩擦係合装置の1つであるクラッチ7が係合される。
【0018】
Rポジションは、後進用のシフトポジションである。後進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を後進(後退)させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。Rポジションが選択された場合は、摩擦係合装置の1つである7Aが係合されて、所定の変速比に固定される。上記のDポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジション、Rポジションが、駆動ポジションである。これらの駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量(係合圧)が高められて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達(動力伝達)が可能な状態となる。
【0019】
これに対して、NポジションおよびPポジションは、非駆動ポジションであり、この非駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量が低下されて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達が不可能な状態となる。このように、各シフトポジションでは、変速比の制御範囲が異なることから、「シフトポジション」を「シフトレンジ」と呼ぶこともできる。
【0020】
さらに、変速機2の摩擦係合装置の係合・解放を制御するアクチュエータとしての油圧制御装置8が設けられている。また、前記エンジン1および油圧制御装置8を制御する電子制御装置9が設けられている。電子制御装置9は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAM,ROM)および入出力インタフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0021】
そして、電子制御装置9には、制動要求検知センサ10の信号、加速要求検知センサ11の信号、シフトポジションセンサ12の信号、車速センサ13の信号、エンジン回転数センサ14の信号、スロットル開度センサ15の信号などが入力される。電子制御装置9は、各種のセンサの信号および予め記憶されているデータに基づいて、エンジン1および変速機2を制御する信号を出力する。前記制動要求検知センサ10により、ブレーキ装置10Aの状態が検知される。ブレーキ装置10Aは、例えば、ブレーキペダル、マスターシリンダ、ホイールシリンダなどにより構成されている。また、加速要求検知センサ11により、エンジン出力制御装置11Aの状態が検知される。エンジン出力制御装置11Aは、例えば、アクセルペダル、スロットルバルブなどにより構成されている。これら、ブレーキペダルおよびアクセルペダルは、車両の乗員により操作される。
【0022】
図2に示す車両においては、基本的には、選択されるシフトポジションに基づいて、クラッチ7,7Aのトルク容量が制御されるが、シフトポジション以外の条件に基づいても、クラッチ7,7Aのトルク容量を制御することもできる。以下、クラッチ7,7Aのトルク容量の制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
【0023】
まず、シフトポジションとしてNポジションまたはPポジションが選択され、かつ、エンジン1が減筒運転中であるか否かが判断される(ステップS1)。ステップS1で肯定的に判断されるということは、摩擦係合装置7(7A)が解放されており、変速機2の入力部材と出力部材との間で動力伝達をおこなうことができない状態にある。すなわち、ニュートラル制御が実行されている。
【0024】
ステップS1についで、NレンジまたはPレンジから、駆動ポジションに切り換えられたか否かが判断される(ステップS2)。ステップS2で肯定的に判断されるということは、こもり音を抑制する要求があることを意味する。そこで、エンジン1の減筒運転制御および前記ニュートラル制御を継続する(ステップS3)。このステップS3についで、制動要求が解除されたこと、または加速要求が発生したこと、少なくとも一方が成立したか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4で肯定的に判断されるということは、車速制御要求があることを意味する。そこで、この場合は、摩擦係合装置7(7A)を係合させて(ステップS5)、リターンする。これに対して、ステップS4で否定的に判断された場合は、車速制御要求がないことになる。そこで、この場合はステップS3に戻る。また、ステップS1またはステップS2で否定的に判断された場合は、こもり音の抑制要求がないことになるため、そのままリターンする。
【0025】
このように、図1の制御例によれば、NポジションまたはPポジションが選択されている場合は、エンジン1が減筒運転されて燃費が向上する。また、NポジションまたはPポジションが選択され、かつ、エンジン1が減筒運転されている場合に、シフトポジションが駆動ポジションに切り換えられたとしても、エンジン1の減筒運転は継続される。このため、燃費を向上した状態が継続される。また、ステップS2で肯定的に判断された場合であっても、車両の乗員が加速意志を示さない限り、具体的には、ブレーキペダルが戻されたり、アクセルペダルが踏み込まれたりしない限り、ニュートラル制御が継続される。したがって、エンジン1の減筒運転制御により、そのトルク変動幅が大きくなっているが、そのトルク変動は、摩擦係合装置7(7A)と、車輪3との間の動力伝達経路(例えばドライブシャフト)には伝達されず、こもり音の増大を抑制できる。
【0026】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS1,S2が、この発明の第1の制御要求判断手段およびシフトポジション判断手段に相当し、ステップS4が、この発明の第2の制御要求判断手段および車速制御要求判断手段に相当し、ステップS3,S5が、この発明のトルク容量制御手段および変速機制御手段に相当する。また、図1のフローチャートで説明した事項と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの操作状態の少なくとも一方の状態が、この発明の車速制御要求に相当し、「Pポジション、Nポジション」が、この発明の「非駆動ポジション」に相当し、「Dポジション、4ポジション、3ポジション、Lポジション、Rポジション」が、この発明の駆動ポジションに相当する。
【0027】
さらに、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、変速機2およびクラッチ(摩擦係合装置)7,7Aが、この発明のトルク容量制御装置に相当する。すなわち、変速機2が、この発明の変速機およびトルク容量制御装置の機能を兼備している。なお、この発明において「燃料を燃焼させる気筒の数を所定数未満に設定する制御」には、「右バンクおよび左バンクを有するエンジンにおいて、片方のバンクのみで燃料を燃焼させる制御」も含まれる。
【0028】
また、上記実施例では、変速機2が有段変速機である場合について説明しているが、特許請求の範囲の請求項2に記載された発明を、無段変速機を備えた車両のパワートレーンに適用することもできる。無段変速機とは、入力部材と出力部材との間の変速比を、連続的もしくは無段階に制御することのできる変速機を意味している。この無段変速機としては、ベルト式無段変速機とトロイダル式無段変速機とが挙げられる。
【0029】
これらの無段変速機を簡単に説明する。まず、ベルト式無段変速機は、駆動側プーリおよび従動側プーリと、駆動側プーリの溝および従動側プーリの溝に巻き掛けられたベルトとを有する。駆動側プーリは入力部材に連結され、従動側プーリは出力部材に連結される。そして、駆動側プーリの溝幅を調整して、駆動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径と、従動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径とを制御することにより、ベルト式無段変速機の変速比が制御される。また、従動側プーリの溝幅を調整することにより、ベルトの張力が制御される。このベルトの張力の調整により、各プーリおよびベルトとの接触圧力、言い換えれば、駆動側プーリと従動側プーリとの間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、ベルト式無段変速機の「ベルト」には、チェーンも含まれる。
【0030】
一方、トロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクおよび出力ディスクと、各ディスクに対して接触するパワーローラとを有する変速機である。入力ディスクは入力部材に連結され、出力ディスクは出力部材に連結される。各ディスクとパワーローラとの接触面には潤滑油が存在する。そして、パワーローラを、各ディスクの軸線に直交する平面内で直線状に移動させて、パワーローラと各ディスクとの接触半径を調整することにより、入力部材と出力部材との間の変速比が制御される。また、各ディスクとパワーローラとの接触面圧を調整することにより、入力部材と出力部材との間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、いずれの無段変速機においても、そのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御されるように構成されている。
【0031】
さらに、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、変速機とトルク容量制御装置とが別々に設けられているパワートレーンを有する車両に対しても適用できる。このような車両としては、例えば、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、発進クラッチが設けられている車両が挙げられる。発進クラッチのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御される。この「発進クラッチ」が、この発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0032】
ところで、前述の無段変速機を有する車両においては、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、前後進切り換え機構が配置される。この前後進切り換え機構は、回転部材の回転方向を正方向と逆方向とに選択的に切り換える機構であり、前後進切り換え機構は、例えば、遊星歯車機構および摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ)により構成される。摩擦係合装置のトルク容量は、アクチュエータ、例えば油圧制御装置により制御される。このように、エンジンと車輪との間の動力伝達経路に、無段変速機および前後進切り換え機構を配置した車両に対しても、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を適用できる。この場合は、「前後進切り換え機構の一部を構成する摩擦係合装置」が、この発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0033】
さらにまた、特許請求の範囲に記載されている発明の他の把握態様を記載する。すなわち、第1の制御要求判断手段を、第1の制御要求判断器、または、第1の制御要求判断用コントローラと読み替え、第2の制御要求判断手段を、第2の制御要求判断器、または、第2の制御要求判断用コントローラと読み替え、トルク容量制御手段を、トルク容量制御器、または、トルク容量制御用コントローラと読み替え、車速制御要求判断手段を、車速制御要求判断器、または、車速制御要求判断用コントローラと読み替え、シフトポジション判断手段を、シフトポジション判断器、または、シフトポジション判断用コントローラと読み替え、変速機制御手段を、変速機制御器、または、変速機制御用コントローラと読み替えることもできる。これらの把握態様においては、図2に示す電子制御装置9が、各器またはコントローラに相当する。
【0034】
さらに、第1の制御要求判断手段を、第1の制御要求判断ステップと読み替え、第2の制御要求判断手段を、第2の制御要求判断ステップと読み替え、トルク容量制御手段をトルク容量制御ステップと読み替え、車速制御要求判断手段を、車速制御要求判断ステップと読み替え、シフトポジション判断手段を、シフトポジションステップと読み替え、変速機制御手段を、変速機制御テップと読み替え、車両用パワートレーンの制御装置を、車両用パワートレーンの制御方法と読み替えることもできる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、こもり音の抑制要求がある場合は、車速制御要求の有無に基づいて、トルク容量制御装置のトルク容量を制御することができる。したがって、車速制御要求がない場合において、動力伝達方向で、エンジンの出力変動がトルク容量制御装置よりも下流に伝達されることを抑制でき、こもり音の増大を抑制できる。
【0036】
請求項2の発明によれば、燃料の燃焼気筒数を最大気筒数未満に設定し、かつ、駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求の有無に基づいて、変速機のトルク容量を制御することができる。したがって、エンジンの燃費が向上するとともに、車速制御要求がない場合において、エンジン出力の変動が、動力伝達方向で変速機よりも下流に伝達されることを抑制でき、こもり音の増大を抑制できる。
【0037】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の状態に基づいて、車速制御要求の有無を判断できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1の制御例を実行できる車両の概念図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…変速機、 3…車輪、 4…気筒、 7,7A…摩擦係合装置(クラッチ)、 10A…ブレーキ装置、 11A…エンジン出力制御装置。
Claims (3)
- エンジンから車輪に至る動力伝達経路にトルク容量制御装置が設けられており、このトルク容量制御装置のトルク容量を低下させることにより、エンジンの出力変動によるこもり音を抑制できる車両用パワートレーンの制御装置において、
前記こもり音の抑制要求の有無を判断する第1の制御要求判断手段と、
前記こもり音の抑制要求以外の車速制御要求の有無を判断する第2の制御要求判断手段と、
前記こもり音の抑制要求がある場合は、車速制御要求がない場合における前記トルク容量制御装置のトルク容量を、車速制御要求がある場合における前記トルク容量制御装置のトルク容量よりも少なく制御するトルク容量制御手段と
を備えていることを特徴とする車両用パワートレーンの制御装置。 - 燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更可能なエンジンと、このエンジンから車輪に至る動力伝達経路に配置された変速機とを有し、この変速機をトルク伝達可能にする駆動ポジションと、この変速機をトルク伝達不可能にする非駆動ポジションとを、選択的に切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、
前記ポジション以外の条件に基づいて、車両の乗員の車速制御要求の有無を判断する車速制御要求判断手段と、
前記駆動ポジションが選択された場合は、車速制御要求がない場合における前記変速機のトルク容量を、車速制御要求がある場合における前記変速機のトルク容量よりも少なくする変速機制御手段と
を備えていることを特徴とする車両用パワートレーンの制御装置。 - 前記変速機制御手段は、ブレーキ装置またはエンジン出力制御装置の少なくとも一方の状態に基づいて、前記車速制御要求の有無を判断する機能を、更に備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両用パワートレーンの制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002215526A JP2004060670A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | 車両用パワートレーンの制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002215526A JP2004060670A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | 車両用パワートレーンの制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004060670A true JP2004060670A (ja) | 2004-02-26 |
Family
ID=31937534
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002215526A Pending JP2004060670A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | 車両用パワートレーンの制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004060670A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009191963A (ja) * | 2008-02-14 | 2009-08-27 | Toyota Motor Corp | 四輪駆動車両の制御装置 |
-
2002
- 2002-07-24 JP JP2002215526A patent/JP2004060670A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009191963A (ja) * | 2008-02-14 | 2009-08-27 | Toyota Motor Corp | 四輪駆動車両の制御装置 |
JP4577372B2 (ja) * | 2008-02-14 | 2010-11-10 | トヨタ自動車株式会社 | 四輪駆動車両の制御装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4332518B2 (ja) | 動力伝達装置の制御装置 | |
JP3817982B2 (ja) | ハイブリッド車 | |
JP5526005B2 (ja) | コーストストップ車両及びコーストストップ車両の制御方法 | |
JP5234171B2 (ja) | 駆動力制御装置 | |
US20020016660A1 (en) | Control apparatus and control method for a power train | |
JP2004051023A (ja) | 車両の制御装置 | |
US9765886B2 (en) | Control system and control method for vehicle | |
US8262539B2 (en) | Power transmitting apparatus | |
JP2000229526A (ja) | 動力源と無段変速機を備えた車両の制御装置 | |
JP2000346169A (ja) | 車両用無段変速機の制御装置 | |
JP3890811B2 (ja) | 無段変速機を備えた車両の制御装置 | |
JPH02150554A (ja) | 連続可変変速機のクリープ制御装置 | |
JP2009234292A (ja) | 車両用駆動装置の制御装置 | |
JP2009220755A (ja) | 車両用駆動装置の制御装置 | |
JP3663972B2 (ja) | 車両の走行制御装置 | |
JP2004060670A (ja) | 車両用パワートレーンの制御装置 | |
JP4180559B2 (ja) | 車両のエンジン自動停止装置 | |
JP2004176859A (ja) | 車両用パワートレーンの制御装置 | |
JP2018069960A (ja) | 電動車両の制御装置 | |
WO2015019789A1 (ja) | フライホイール回生システム及びその制御方法 | |
JP2008267467A (ja) | 無段変速機の制御装置 | |
JP7412861B2 (ja) | 制御装置 | |
JP2007298105A (ja) | クラッチ式変速機の制御装置 | |
JP4192539B2 (ja) | 自動変速機の変速制御方法 | |
JP4432436B2 (ja) | 無段変速機の変速制御装置 |