JP2004060119A - 弾性複合紡績糸及びその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性繊維を混用したバルキー性と伸縮性に優れた編物用途に適した弾性繊維の複合紡績糸に関するもので、綛状での染色時、リワインド工程、編立時の短繊維が脱落が少ない、製品として着用を繰り返しても型崩れの発生し難い弾性複合紡績糸を提供する。
【解決手段】加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部が短繊維からなる鞘部で被覆された弾性複合紡績糸であって、弾性繊維の間に短繊維が狭持されて統合一体化されていることを特徴とする弾性複合紡績糸。
【選択図】 なし
【解決手段】加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部が短繊維からなる鞘部で被覆された弾性複合紡績糸であって、弾性繊維の間に短繊維が狭持されて統合一体化されていることを特徴とする弾性複合紡績糸。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セーター・サポーター・手袋・靴下等のバルキー性と伸縮性に優れた編物用途に適した弾性繊維の複合紡績糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、バルキー性と伸縮性と形態安定性を目的に弾性繊維を他の繊維と混用編成させる方法が種々検討されている。たとえば、張力コントロール装置によって横編機の往復編成時の弾性繊維糸の給糸張力変動を調節し編地密度を均一にする方法が特開平9−176940号公報に提案されている。しかしこの方法は編地の端部に対して十分な効果が得られない。
また、弾性繊維を伸長状態で芯糸として鞘部にナイロン糸をカバリングした被覆弾性複合糸(通称:FTY)を交編した編地が提案されている。この方法は弾性複合糸を裏糸用として使用するために細い繊度の弾性複合糸が必要で製品コストが高く、在庫管理が煩雑となり使用範囲が限られる。
【0003】
さらに、精紡機で弾性繊維を伸長状態で供給し、短繊維と加撚して弾性複合糸(CSY)とする方法が提案されている。この弾性複合糸は弾性繊維の収縮により拘束力が低下し、短繊維が膨出してしまうため、染色工程やリワインド工程や編立工程などにおける外力で短繊維が脱落しやすく、また解撚トルクが原因でよれた編目となり表面品位が低下する問題を有している。特開平2−300340号公報では中空スピンドル精紡機でスライバーとフィラメントを平行に引き揃えて平行状態で紡出し、その周りに細いフィラメントを巻き付ける方法が提案されている。しかし、この糸は残留トルクを小さくできるが均一なバルキー性と伸縮性に優れる編地を得ることは出来ない。
これら従来の弾性繊維を混用した糸は一般に糸の状態で染色するが、染色工程やリワインド、編立加工で短繊維の脱落や風綿が発生する問題、および、製品の繰返し着用により短繊維の脱落を起こし易いという問題がある。これらの問題について検討されたものはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上述べたように、バルキー性と伸縮性に優れた編物を得ることができ、染色加工工程やリワインド工程や編立加工での短繊維の脱落や風綿の発生を抑制し、製品時の短繊維の脱落や毛羽立ちを抑制できる弾性複合紡績糸を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部が短繊維からなる鞘部で被覆された弾性複合紡績糸であって、弾性繊維の間に短繊維が狭持されて統合一体化されていることを特徴とする弾性複合紡績糸。
(2)一部の短繊維は、少なくとも2箇所で弾性繊維に狭持されており、該2箇所の狭持間で短繊維がアーチ状に膨出して鞘部を形成していることを特徴とする(1)の弾性複合紡績糸。
(3)芯部の弾性繊維がポリウレタン系弾性繊維であることを特徴とする(1)または(2)の弾性複合紡績糸。
(4)収縮率の異なる少なくとも2種の短繊維が鞘部を形成していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの弾性複合紡績糸。
(5)弾性繊維に非弾性短繊維が加撚被覆された弾性複合糸を少なくとも2本引き揃え、弾性複合糸の撚り方向と逆の撚り方向に加撚することを特徴とする弾性複合紡績糸の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の弾性複合紡績糸は2本から数本の弾性繊維が撚合わさって芯部を形成し、短繊維からなる鞘部によって被覆されており、鞘部を形成する短繊維が少なくとも一箇所以上、好ましくは二箇所以上で、緊張状態の繊維長に対して撚り回数の頻度で弾性繊維の間に挟まれ保持された構造であることが特徴である。加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部は、短繊維が外力によって引っ張られた時でも強固に短繊維を把持するため抜けにくく、該紡績糸で編地を編成する場合にフライ等の浮遊繊維の発生を抑え、編地の抗ピリング性が良好となる。
また、短繊維は伸長された弾性繊維が収縮する時に把持部と把持部の間がアーチ状に膨出した嵩高部を形成する。特にアクリル繊維等の合成繊維の繊維収縮差の異なる繊維群を混紡したバルキー条件(たとえば、110℃、10分間のスチーム処理下での収縮率が2%から50%の範囲でランダム分散したもの)のスライバーを使用したものは短繊維が形成するアーチ形状がランダムな長さで膨出状態を形成するので外力に対する形態が安定しており好ましい。
【0007】
本発明の弾性複合紡績糸は、精紡機で伸長された弾性繊維糸と短繊維スライバーを引き揃えて紡出、加撚して得られる弾性複合糸を2本から数本引きそろえ、トルクが無くなるまで逆方向に加撚する双糸加工する製法によって好適に得ることができる。弾性複合糸1本では短繊維を狭持することが出来ず、本数を増加させるほど丸みのある均一な芯鞘断面構造を示すが、6本以上では繊度の細い弾性複合糸を必要とするために製造コストが高くなるので好ましくない。この製法で得られた本発明の弾性複合紡績糸は、芯部にある少なくとも二本の弾性繊維が、それぞれ自撚しながら逆方向に合撚された構造をしている。このような構造の弾性複合紡績糸は、緊張時又は弛緩時の解撚トルクがなく安定しているためより好ましい。
【0008】
本発明において使用可能な弾性繊維は伸長率が10%から700%、伸長回復率が80%から100%の良好な伸長回復性を示すものでありポリウレタン弾性繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、等合成繊維100%又はコンジュゲートが使用できる。好ましくは伸長率が400%以上のポリウレタン系弾性繊維が好ましい。ポリウレタン重合体を溶媒に溶融させてポリウレタン溶液とし、かかるポリウレタン溶液を溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法等により紡出したものが良く、後加工で利用し易くするために、粘着防止剤や平滑性促進剤などの添加物を含む鉱物系またはシリコン系、さらには、これらの混合物の油剤を、糸条の表面に適宜付着させた後、巻き取り機で巻き取ることによって得られるものが使用可能である。
【0009】
ポリウレタン重合体は2種類の型のセグメント;(a)長鎖のポリエーテル、ポリエステルセグメントであるソフトセグメントと、(b)イソシアネートとジアミンまたはジオール鎖身長剤との反応により誘導された比較的短鎖のセグメントであるハードセグメントとを含有する。このポリウレタン重合体は、ヒドロキシン末端ソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートでキャッピングすることによって得られるプレポリマ生成物を、ジアミンまたはジオールで鎖伸長させて製造することができる。例えば、共重合ポリアルキレンエーテルジオール、主として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートからなる芳香族ジイソシアネート、および二官能性ジアミンから得られるポリウレタンからなり、ポリウレタンにおけるウレタン部分の数平均分子量が6000〜9500、ウレア部分の数平均分子量が650〜950であって、300%モジュラスが0.20g/デシテックス以下のポリウレタン弾性繊維が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明の短繊維はウール、綿、麻、アクリル繊維などの紡績可能な繊維であれば特に限定されるものでない。本弾性複合糸は特殊な短繊維を用いることがなくても、綿繊維等の天然繊維でも鞘部を形成すると共に弾性繊維により連続して狭持された部分でアーチ構造を形成するためにバルキー感のあるものが得られる。
使用する短繊維に、アクリル繊維で収縮率差のある繊維を混繊したバルキー原綿を使用すると、短繊維の一本一本の繊維長が異なるので、染色加工時の熱により形成されるアーチ構造が多層構造となるためバルキー性の堅牢性に優れ、また伸長された状況下でもバルキー性に優れるものが得られるので好ましい。また、弾性繊維使用の製品上の欠点である高目付化を抑えることが出来るので好ましい。
また、特に綿及び麻繊維は捲縮性、嵩高性に劣るため、単独で横編地としたとき繊維充填密度が高くなり重たいものしか得られないが、本発明の弾性複合紡績糸とすることで伸縮性とバルキー性と短繊維の脱落の少ない商品を容易に得ることができるため好ましい。
【0011】
本発明の弾性複合紡績糸の番手は商品の用途により適宜選択可能である。セーター、サポーター、手袋、靴下用途は5Nmから120Nmのものが使用可能である。
本発明の弾性複合紡績糸において、弾性繊維が1.5倍から4倍伸長した状態で短繊維と複合化されたものは、良好な伸縮性を得ることができるため好ましい。弾性繊維の混率は0.5%から90%が好ましく、より好ましくは2%から50%である。90%を超えると鞘部を形成する短繊維本数が少なくなり、単糸を紡出する際の斑が大きくなる。また紡績糸表面に弾性繊維が見え、外観に影響を与える。0.5%以下では伸縮性が低く、形態保持性が低下する傾向である。
本発明の製法において、弾性複合糸は2本から数本引き揃えて弾性複合糸の撚りの方向と逆方向に追撚する。弾性複合糸の撚り数は糸のメートル番手の平方根×撚係数で示すことができ、撚係数が50から90が好ましい。追撚数は引き揃え本数が2本の場合弾性複合糸撚りの40%から80%であることが好ましく、このバランスを外すとバルキー性が乱れ、良好な編地外観が得られないので好ましくない。
【0012】
本発明の弾性複合紡績糸は糸の状態で染色される用途においても、短繊維の脱落や風綿の発生が抑制されるため、好適に使用することができる。染色は、チーズ状に巻き上げた状態で行うこともできるが、糸の膨らみを十分に生かすため、リラックスさせた綛状で染色することが好ましい。また、染色工程前に弛緩状態で80℃から110℃のスチーム又は乾熱で処理されるとバルキー形態を均一に発現できるので、染色加工前に処理されることが好ましい。
本発明の弾性複合紡績糸は従来の方法による綛巻き工程やリワインド工程や編立工程で使用可能である。短繊維を繊維長方向に弾性繊維で把持しているので毛羽の発生や脱落を防止でき、風綿を減らし職場の環境を改善できる効果を合わせ持っている。
【0013】
以下、本発明を実施例などを用いて具体的に説明する。
【実施例1】
短繊維としてカシミロン(登録商標)トウを熱延伸後、ロール間隔127mmで牽切カットした収縮率32%のスライバーを重量比40%と前記スライバーをフリー張力で110℃で10分間のスチーム処理した収縮率2%のスライバー60%を混紡して0.4g/mの組糸を作成した。続いて精紡機で紡出する際にポリウレタン系弾性繊維22デシテックス(ロイカ(登録商標)、旭化成(株)製)を3倍伸長してフロントローラーから供給して弾性複合糸(コアヤーン)番手36Nm、撚数360t/mを作成した。続いてこの糸を2本引き揃え精紡工程と逆撚り方向200t/mの撚糸加工を行いノントルクの弾性複合紡績糸を得た。この時の芯部にある弾性繊維は自撚数が160t/mで、合撚数が200t/mであった。
【0014】
続いてこの糸を綛状で110℃で10分間のスチーム処理と回転バック染色機で通常アクリル染色処方加工と柔軟剤処理を行った。
得られた弾性複合紡績糸は、初荷重0.5cNで測長後200cNまで伸長した時の伸度が180%、回復率100%のトルクの無い、伸縮性に優れたバルキー糸であった。この糸の短繊維を把持する力を求めるためにアーチ状に突出した短繊維を把持して引き抜こうとしたが拘束力が強く切断した。
この糸をワインダーでリワインドする時および7ゲージ横編機で編成する時の風綿発生は弾性繊維のないバルキー糸に比べ非常に少なかった。スラックスとセーターを作成後、着用したところ動き易く、脱いだ後の型崩れは殆どなかった。
【0015】
【実施例2】
精紡機で紡出する際に短繊維として綿を使用し、ポリウレタン系弾性繊維154デシテックス(ロイカ(登録商標)、旭化成(株)製)を2.0倍伸長してフロントローラーから供給して弾性複合糸(コアヤーン)番手36Nm、撚数360t/mを作成した。続いてこの糸を2本引き揃え精紡工程と逆撚り方向200t/mの撚糸加工を行いノントルクの双弾性複合紡績糸を得た。続いてこの糸を綛状にしてフリー張力で110℃で10分間のスチーム処理してバルキー発現処理と回転バック染色機で染色処方加工と柔軟剤処理を行った。
得られた弾性複合紡績糸はトルクの無い、伸縮性に優れたバルキー糸であった。この糸を初荷重0.5cNで測長後200cNまで伸長した時の伸度は150%、回復率は100%であった。短繊維の拘束力は引き抜くとき切断する程度強いものであった。リワインド工程および7ゲージ横編機でサポーターを編成する時の風綿発生は非常に少なかった。サポーターを作成後、着用したところ動き易く、肘部や膝部の型崩れは殆どなかった。
【0016】
【比較例1】
実施例1の弾性複合糸を作成するとき、ポリウレタン系弾性糸を使用しないこと以外は全て同じ方法で複合紡績糸を作成した。得られた糸は初荷重0.5cNで測長後200cNまで伸長した時の伸度は10%、回復率は50%のトルクの無い、バルキー糸であった。この糸の短繊維の拘束力は最高2gであった。又、ワインダーでリワインドする時および7ゲージ横編機で編成する時の風綿発生が多く、室内への飛散が確認され、風綿の編み込み欠点が増加した。
【0017】
【比較例2】
中空スピンドルを有する精紡機でカシミロン(登録商標)スライバーとポリウレタン系弾性繊維22デシテックス(ロイカ(登録商標)、旭化成(株)製)を3倍伸長してフロントローラーから供給して番手36Nmをスライバーとフィラメントを平行に引き揃えて平行状態で紡出し、ボビンに巻き上げたナイロン繊維22デシテックス(レオナ(登録商標)、旭化成(株)製)フィラメントを撚数360t/mでカバリング糸(通称トライスピンヤーン)を作成した。実施例1と同様の加工、評価を行った結果、表面品位が凹凸でバルキー感の劣るものであった。短繊維の拘束力は4gであった。リワインド工程や編立て時の風綿発生は比較例1と大差なかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明による弾性複合紡績糸は、糸染色時や、リワインド、編立て工程、さらに編製品の繰返し着用において、短繊維の脱落や風綿の発生が抑制される特徴を有し、バルキー性、伸縮性、形態安定性に優れた織物用途に適している。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セーター・サポーター・手袋・靴下等のバルキー性と伸縮性に優れた編物用途に適した弾性繊維の複合紡績糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、バルキー性と伸縮性と形態安定性を目的に弾性繊維を他の繊維と混用編成させる方法が種々検討されている。たとえば、張力コントロール装置によって横編機の往復編成時の弾性繊維糸の給糸張力変動を調節し編地密度を均一にする方法が特開平9−176940号公報に提案されている。しかしこの方法は編地の端部に対して十分な効果が得られない。
また、弾性繊維を伸長状態で芯糸として鞘部にナイロン糸をカバリングした被覆弾性複合糸(通称:FTY)を交編した編地が提案されている。この方法は弾性複合糸を裏糸用として使用するために細い繊度の弾性複合糸が必要で製品コストが高く、在庫管理が煩雑となり使用範囲が限られる。
【0003】
さらに、精紡機で弾性繊維を伸長状態で供給し、短繊維と加撚して弾性複合糸(CSY)とする方法が提案されている。この弾性複合糸は弾性繊維の収縮により拘束力が低下し、短繊維が膨出してしまうため、染色工程やリワインド工程や編立工程などにおける外力で短繊維が脱落しやすく、また解撚トルクが原因でよれた編目となり表面品位が低下する問題を有している。特開平2−300340号公報では中空スピンドル精紡機でスライバーとフィラメントを平行に引き揃えて平行状態で紡出し、その周りに細いフィラメントを巻き付ける方法が提案されている。しかし、この糸は残留トルクを小さくできるが均一なバルキー性と伸縮性に優れる編地を得ることは出来ない。
これら従来の弾性繊維を混用した糸は一般に糸の状態で染色するが、染色工程やリワインド、編立加工で短繊維の脱落や風綿が発生する問題、および、製品の繰返し着用により短繊維の脱落を起こし易いという問題がある。これらの問題について検討されたものはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上述べたように、バルキー性と伸縮性に優れた編物を得ることができ、染色加工工程やリワインド工程や編立加工での短繊維の脱落や風綿の発生を抑制し、製品時の短繊維の脱落や毛羽立ちを抑制できる弾性複合紡績糸を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部が短繊維からなる鞘部で被覆された弾性複合紡績糸であって、弾性繊維の間に短繊維が狭持されて統合一体化されていることを特徴とする弾性複合紡績糸。
(2)一部の短繊維は、少なくとも2箇所で弾性繊維に狭持されており、該2箇所の狭持間で短繊維がアーチ状に膨出して鞘部を形成していることを特徴とする(1)の弾性複合紡績糸。
(3)芯部の弾性繊維がポリウレタン系弾性繊維であることを特徴とする(1)または(2)の弾性複合紡績糸。
(4)収縮率の異なる少なくとも2種の短繊維が鞘部を形成していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの弾性複合紡績糸。
(5)弾性繊維に非弾性短繊維が加撚被覆された弾性複合糸を少なくとも2本引き揃え、弾性複合糸の撚り方向と逆の撚り方向に加撚することを特徴とする弾性複合紡績糸の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の弾性複合紡績糸は2本から数本の弾性繊維が撚合わさって芯部を形成し、短繊維からなる鞘部によって被覆されており、鞘部を形成する短繊維が少なくとも一箇所以上、好ましくは二箇所以上で、緊張状態の繊維長に対して撚り回数の頻度で弾性繊維の間に挟まれ保持された構造であることが特徴である。加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部は、短繊維が外力によって引っ張られた時でも強固に短繊維を把持するため抜けにくく、該紡績糸で編地を編成する場合にフライ等の浮遊繊維の発生を抑え、編地の抗ピリング性が良好となる。
また、短繊維は伸長された弾性繊維が収縮する時に把持部と把持部の間がアーチ状に膨出した嵩高部を形成する。特にアクリル繊維等の合成繊維の繊維収縮差の異なる繊維群を混紡したバルキー条件(たとえば、110℃、10分間のスチーム処理下での収縮率が2%から50%の範囲でランダム分散したもの)のスライバーを使用したものは短繊維が形成するアーチ形状がランダムな長さで膨出状態を形成するので外力に対する形態が安定しており好ましい。
【0007】
本発明の弾性複合紡績糸は、精紡機で伸長された弾性繊維糸と短繊維スライバーを引き揃えて紡出、加撚して得られる弾性複合糸を2本から数本引きそろえ、トルクが無くなるまで逆方向に加撚する双糸加工する製法によって好適に得ることができる。弾性複合糸1本では短繊維を狭持することが出来ず、本数を増加させるほど丸みのある均一な芯鞘断面構造を示すが、6本以上では繊度の細い弾性複合糸を必要とするために製造コストが高くなるので好ましくない。この製法で得られた本発明の弾性複合紡績糸は、芯部にある少なくとも二本の弾性繊維が、それぞれ自撚しながら逆方向に合撚された構造をしている。このような構造の弾性複合紡績糸は、緊張時又は弛緩時の解撚トルクがなく安定しているためより好ましい。
【0008】
本発明において使用可能な弾性繊維は伸長率が10%から700%、伸長回復率が80%から100%の良好な伸長回復性を示すものでありポリウレタン弾性繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、等合成繊維100%又はコンジュゲートが使用できる。好ましくは伸長率が400%以上のポリウレタン系弾性繊維が好ましい。ポリウレタン重合体を溶媒に溶融させてポリウレタン溶液とし、かかるポリウレタン溶液を溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法等により紡出したものが良く、後加工で利用し易くするために、粘着防止剤や平滑性促進剤などの添加物を含む鉱物系またはシリコン系、さらには、これらの混合物の油剤を、糸条の表面に適宜付着させた後、巻き取り機で巻き取ることによって得られるものが使用可能である。
【0009】
ポリウレタン重合体は2種類の型のセグメント;(a)長鎖のポリエーテル、ポリエステルセグメントであるソフトセグメントと、(b)イソシアネートとジアミンまたはジオール鎖身長剤との反応により誘導された比較的短鎖のセグメントであるハードセグメントとを含有する。このポリウレタン重合体は、ヒドロキシン末端ソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートでキャッピングすることによって得られるプレポリマ生成物を、ジアミンまたはジオールで鎖伸長させて製造することができる。例えば、共重合ポリアルキレンエーテルジオール、主として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートからなる芳香族ジイソシアネート、および二官能性ジアミンから得られるポリウレタンからなり、ポリウレタンにおけるウレタン部分の数平均分子量が6000〜9500、ウレア部分の数平均分子量が650〜950であって、300%モジュラスが0.20g/デシテックス以下のポリウレタン弾性繊維が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明の短繊維はウール、綿、麻、アクリル繊維などの紡績可能な繊維であれば特に限定されるものでない。本弾性複合糸は特殊な短繊維を用いることがなくても、綿繊維等の天然繊維でも鞘部を形成すると共に弾性繊維により連続して狭持された部分でアーチ構造を形成するためにバルキー感のあるものが得られる。
使用する短繊維に、アクリル繊維で収縮率差のある繊維を混繊したバルキー原綿を使用すると、短繊維の一本一本の繊維長が異なるので、染色加工時の熱により形成されるアーチ構造が多層構造となるためバルキー性の堅牢性に優れ、また伸長された状況下でもバルキー性に優れるものが得られるので好ましい。また、弾性繊維使用の製品上の欠点である高目付化を抑えることが出来るので好ましい。
また、特に綿及び麻繊維は捲縮性、嵩高性に劣るため、単独で横編地としたとき繊維充填密度が高くなり重たいものしか得られないが、本発明の弾性複合紡績糸とすることで伸縮性とバルキー性と短繊維の脱落の少ない商品を容易に得ることができるため好ましい。
【0011】
本発明の弾性複合紡績糸の番手は商品の用途により適宜選択可能である。セーター、サポーター、手袋、靴下用途は5Nmから120Nmのものが使用可能である。
本発明の弾性複合紡績糸において、弾性繊維が1.5倍から4倍伸長した状態で短繊維と複合化されたものは、良好な伸縮性を得ることができるため好ましい。弾性繊維の混率は0.5%から90%が好ましく、より好ましくは2%から50%である。90%を超えると鞘部を形成する短繊維本数が少なくなり、単糸を紡出する際の斑が大きくなる。また紡績糸表面に弾性繊維が見え、外観に影響を与える。0.5%以下では伸縮性が低く、形態保持性が低下する傾向である。
本発明の製法において、弾性複合糸は2本から数本引き揃えて弾性複合糸の撚りの方向と逆方向に追撚する。弾性複合糸の撚り数は糸のメートル番手の平方根×撚係数で示すことができ、撚係数が50から90が好ましい。追撚数は引き揃え本数が2本の場合弾性複合糸撚りの40%から80%であることが好ましく、このバランスを外すとバルキー性が乱れ、良好な編地外観が得られないので好ましくない。
【0012】
本発明の弾性複合紡績糸は糸の状態で染色される用途においても、短繊維の脱落や風綿の発生が抑制されるため、好適に使用することができる。染色は、チーズ状に巻き上げた状態で行うこともできるが、糸の膨らみを十分に生かすため、リラックスさせた綛状で染色することが好ましい。また、染色工程前に弛緩状態で80℃から110℃のスチーム又は乾熱で処理されるとバルキー形態を均一に発現できるので、染色加工前に処理されることが好ましい。
本発明の弾性複合紡績糸は従来の方法による綛巻き工程やリワインド工程や編立工程で使用可能である。短繊維を繊維長方向に弾性繊維で把持しているので毛羽の発生や脱落を防止でき、風綿を減らし職場の環境を改善できる効果を合わせ持っている。
【0013】
以下、本発明を実施例などを用いて具体的に説明する。
【実施例1】
短繊維としてカシミロン(登録商標)トウを熱延伸後、ロール間隔127mmで牽切カットした収縮率32%のスライバーを重量比40%と前記スライバーをフリー張力で110℃で10分間のスチーム処理した収縮率2%のスライバー60%を混紡して0.4g/mの組糸を作成した。続いて精紡機で紡出する際にポリウレタン系弾性繊維22デシテックス(ロイカ(登録商標)、旭化成(株)製)を3倍伸長してフロントローラーから供給して弾性複合糸(コアヤーン)番手36Nm、撚数360t/mを作成した。続いてこの糸を2本引き揃え精紡工程と逆撚り方向200t/mの撚糸加工を行いノントルクの弾性複合紡績糸を得た。この時の芯部にある弾性繊維は自撚数が160t/mで、合撚数が200t/mであった。
【0014】
続いてこの糸を綛状で110℃で10分間のスチーム処理と回転バック染色機で通常アクリル染色処方加工と柔軟剤処理を行った。
得られた弾性複合紡績糸は、初荷重0.5cNで測長後200cNまで伸長した時の伸度が180%、回復率100%のトルクの無い、伸縮性に優れたバルキー糸であった。この糸の短繊維を把持する力を求めるためにアーチ状に突出した短繊維を把持して引き抜こうとしたが拘束力が強く切断した。
この糸をワインダーでリワインドする時および7ゲージ横編機で編成する時の風綿発生は弾性繊維のないバルキー糸に比べ非常に少なかった。スラックスとセーターを作成後、着用したところ動き易く、脱いだ後の型崩れは殆どなかった。
【0015】
【実施例2】
精紡機で紡出する際に短繊維として綿を使用し、ポリウレタン系弾性繊維154デシテックス(ロイカ(登録商標)、旭化成(株)製)を2.0倍伸長してフロントローラーから供給して弾性複合糸(コアヤーン)番手36Nm、撚数360t/mを作成した。続いてこの糸を2本引き揃え精紡工程と逆撚り方向200t/mの撚糸加工を行いノントルクの双弾性複合紡績糸を得た。続いてこの糸を綛状にしてフリー張力で110℃で10分間のスチーム処理してバルキー発現処理と回転バック染色機で染色処方加工と柔軟剤処理を行った。
得られた弾性複合紡績糸はトルクの無い、伸縮性に優れたバルキー糸であった。この糸を初荷重0.5cNで測長後200cNまで伸長した時の伸度は150%、回復率は100%であった。短繊維の拘束力は引き抜くとき切断する程度強いものであった。リワインド工程および7ゲージ横編機でサポーターを編成する時の風綿発生は非常に少なかった。サポーターを作成後、着用したところ動き易く、肘部や膝部の型崩れは殆どなかった。
【0016】
【比較例1】
実施例1の弾性複合糸を作成するとき、ポリウレタン系弾性糸を使用しないこと以外は全て同じ方法で複合紡績糸を作成した。得られた糸は初荷重0.5cNで測長後200cNまで伸長した時の伸度は10%、回復率は50%のトルクの無い、バルキー糸であった。この糸の短繊維の拘束力は最高2gであった。又、ワインダーでリワインドする時および7ゲージ横編機で編成する時の風綿発生が多く、室内への飛散が確認され、風綿の編み込み欠点が増加した。
【0017】
【比較例2】
中空スピンドルを有する精紡機でカシミロン(登録商標)スライバーとポリウレタン系弾性繊維22デシテックス(ロイカ(登録商標)、旭化成(株)製)を3倍伸長してフロントローラーから供給して番手36Nmをスライバーとフィラメントを平行に引き揃えて平行状態で紡出し、ボビンに巻き上げたナイロン繊維22デシテックス(レオナ(登録商標)、旭化成(株)製)フィラメントを撚数360t/mでカバリング糸(通称トライスピンヤーン)を作成した。実施例1と同様の加工、評価を行った結果、表面品位が凹凸でバルキー感の劣るものであった。短繊維の拘束力は4gであった。リワインド工程や編立て時の風綿発生は比較例1と大差なかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明による弾性複合紡績糸は、糸染色時や、リワインド、編立て工程、さらに編製品の繰返し着用において、短繊維の脱落や風綿の発生が抑制される特徴を有し、バルキー性、伸縮性、形態安定性に優れた織物用途に適している。
Claims (5)
- 加撚された2本以上の弾性繊維からなる芯部が短繊維からなる鞘部で被覆された弾性複合紡績糸であって、弾性繊維の間に短繊維が狭持されて統合一体化されていることを特徴とする弾性複合紡績糸。
- 一部の短繊維は、少なくとも2箇所で弾性繊維に狭持されており、該2箇所の狭持間で短繊維がアーチ状に膨出して鞘部を形成していることを特徴とする請求項1記載の弾性複合紡績糸。
- 芯部の弾性繊維がポリウレタン系弾性繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の弾性複合紡績糸。
- 収縮率の異なる少なくとも2種の短繊維が鞘部を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性複合紡績糸。
- 弾性繊維に非弾性短繊維が加撚被覆された弾性複合糸を少なくとも2本引き揃え、弾性複合糸の撚り方向と逆の撚り方向に加撚することを特徴とする弾性複合紡績糸の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008297646A (ja) * | 2007-05-29 | 2008-12-11 | Kurabo Ind Ltd | 芯鞘構造複合紡績糸及び布帛 |
JP2009293136A (ja) * | 2008-06-02 | 2009-12-17 | Toray Ind Inc | 長短複合紡績糸およびそれを用いてなる無縫製ニット製品 |
JP2015034354A (ja) * | 2013-08-07 | 2015-02-19 | 倉敷紡績株式会社 | 芯鞘構造複合紡績糸及びこれを用いた織編物並びにそれらの製造方法 |
KR20230110410A (ko) * | 2022-01-14 | 2023-07-24 | 영남대학교 산학협력단 | 카폭 및 면 혼방직물의 제조방법 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002222303A patent/JP2004060119A/ja active Pending
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