JP2004060056A5 - - Google Patents
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【発明の名称】Mg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】強化材集合体と、Mg又はMg合金を充填した容器としてルツボとをチャンバー内に収容し、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスで前記チャンバー内をガス置換した後、前記ルツボ内のMg又はMg合金を溶解して溶湯とし、その後に前記強化材集合体を下降させ、前記容器ルツボ内の溶湯に接触させることにより、前記溶湯を前記強化材集合体内に浸透させることを特徴とするMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【請求項2】前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、不活性ガスであることを特徴とする請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【請求項3】前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、N2ガス、CO2ガス、Arガスのいずれか一つ又はそれらの混合ガスを主成分とし、その合計量が前記強化材集合体内の気体総量の98容量%以上であり、その他の不純物ガスのうち、SF6ガス及びSO2ガスの濃度が強化材集合体内の気体総量に対して、各々0.1容量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【請求項4】前記強化材集合体を操作棒に固定し、該操作棒を下降させることにより、前記強化材集合体を下降させ、前記強化材集合体の少なくとも一部を前記溶湯に接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Mg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、溶湯攪拌法、粉末冶金法及び溶湯鍛造法(スクイズキャスト法)等の複合化技術がMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法として広く知られている。この中でも、比較的量産性に優れるため、溶湯鍛造法が軽合金をマトリックスとした複合材料の製造方法として主流となっている。しかし、該溶湯鍛造法は、溶湯を高い圧力で加圧する必要があるため、設備が大規模かつ高価になり、これによって複合材料の製造コストも高くなり、複合材料の実用化に対する大きな障害となっている。
【0003】
図3は、従来の溶湯鍛造法によるMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法を示す断面図である。この溶湯鍛造法のように溶湯を取扱う場合は、通常、SF6ガスを用いた溶湯の防燃措置がとられている。図を用いて製造方法を説明すると、まず、強化材集合体101が載置されている金型102内に、Mg又はMg合金溶湯103を注湯する。次いで、プランジャー104にて溶湯103を加圧し、複合化を行う。溶湯103の酸化や燃焼を防ぐため、金型102内には保護性ガス(例えば、CO2+0.5容量%SF6混合ガス)105が予め導入されている。
【0004】
ここで、複合化時の強化材とMg又はMg合金溶湯との界面に着目してみると、従来法では、強化材は最初に溶湯表面の安定(不活性)な保護膜と接触することがわかる。この保護膜はMg(マグネシウム)、O(酸素)、F(弗素)、S(硫黄)からなる複合化合物の薄膜と考えられているが、強化材と該保護膜の濡れ性が悪いため、複合化に際し上述のように溶湯への加圧が必要となる。また、溶湯への加圧により保護膜が一旦破壊されても強化材集合体内が保護性ガスである場合、溶湯表面には新たな保護膜が瞬時に形成される。このため継続的な溶湯への加圧が必要となる。
【0005】
上記問題を解決するためには、強化材とマトリックス金属の溶湯との濡れ性を改善する必要があり、このことによって溶湯への加圧力の低減又は加圧の省略が可能となる。このため、強化材とマトリックス金属の溶湯との濡れ性を改善する多くの努力がこれまでに払われてきたが、量産性、低コスト及び複合材料の健全性を同時に満足する方法はこれまでに確立されていない。
例えば、特公平7−100834号、第2576186号、第2576188号、特開平1−279721号に開示されているように、強化材に金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物を均一に混合した成型体を形成し、その成型体の少なくとも一部をMg又はMg合金溶湯に接触させることによって、加圧なしに溶湯を成型体に浸透させる方法が知られている。この方法によれば、溶湯の加圧設備が不要となり、ある種の条件下では鋳造用の金型が不要となり、鋳造歩留りが向上する等の製造上のメリットをもたらす。このため、量産性、低コストという観点では進歩がみられる。
【0006】
しかし、金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物自体又はそれらの物質とマトリックス金属溶湯との反応生成物は、多くの場合、複合材料中の不純物となり複合材料の特性を低下させる。このため、複合材料の健全性という観点では不十分であり、さらに、金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物自体のコストが上積みされる問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、マトリックス金属の溶湯を加圧せず、かつ、金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物を用いずに、不純物のない健全なMg基複合材料及びMg合金基複合材料を効率よく、安価に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、Mg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法であって、強化材集合体と、Mg又はMg合金を充填した容器としてルツボとをチャンバー内に収容し、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスで前記チャンバー内をガス置換した後、前記ルツボ内のMg又はMg合金を溶解して溶湯とし、その後に前記強化材集合体を下降させ、前記容器ルツボ内の溶湯に接触させることにより、前記溶湯を前記強化材集合体内に浸透させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法において、前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、不活性ガスであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法において、前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、N2ガス、CO2ガス、Arガスのいずれか一つ又はそれらの混合ガスを主成分とし、その合計量が前記強化材集合体内の気体総量の98容量%以上であり、その他の不純物ガスのうち、SF6ガス及びSO2ガスの濃度が強化材集合体内の気体総量に対して、各々0.1容量%未満であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法において、前記強化材集合体を操作棒に固定し、該操作棒を下降させることにより、前記強化材集合体を下降させ、前記強化材集合体の少なくとも一部を前記溶湯に接触させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、強化材集合体内のガスをMg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスとし、この強化材集合体の少なくとも一部をMg又はMg合金溶湯に接触させ、該溶湯を強化材集合体内に浸透させることによって、従来のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法における上記課題を解決できることを見出した。この製造方法によれば、金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物を用いずに、かつ、Mg又はMg合金溶湯を実質的に加圧することなく、Mg基複合材料又はMg合金基複合材料を製造することができる。
【0013】
本発明における強化材とは、粒子、ウィスカー、短繊維若しくは長繊維のうちのいずれか一つ、又は、それらの混合物とする。該強化材の材質としては、ホウ酸アルミニウム(9Al2O3・2B2O3)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、炭素(C)又はチタン酸カリウム(K2O・6TiO2)等を用いることができる。なお、ウィスカー、短繊維及び長繊維とは次のものをいう。
【0014】
(1) ウィスカー
単結晶で、直径の平均値がφ0.1〜1μmの範囲のいずれかであり、長さの平均値が10〜100μmの範囲のいずれかであり、アスペクト比の平均値が5〜1000の範囲のいずれかのものをいう。
(2) 短繊維
多結晶で、直径の平均値がφ1〜10μmの範囲のいずれかであり、長さの平均値が100〜1000μmの範囲のいずれかであり、アスペクト比の平均値が5〜1000の範囲のいずれかのものをいう。
(3) 長繊維
単結晶又は多結晶で、直径の平均値がφ1〜100μmの範囲のいずれかであり、長さの平均値が1000μm以上の範囲のいずれかであり、アスペクト比の平均値が1000以上の範囲のいずれかのものをいう。
【0015】
これまで述べてきたように、保護性ガス下において、Mg又はMg合金溶湯の表面(保護性ガスと溶湯との界面)は安定(不活性)な保護膜であるが、その内部は不安定(活性)なMg又はMg合金溶湯である。本発明者らは、系統的研究の結果から、無機系の強化材とMg又はMg合金溶湯表面の安定(不活性)な保護膜とは濡れ性が悪いが、無機系の強化材と不安定(活性)なMg又はMg合金溶湯とは非常に濡れ性が良好であることを見い出した。すなわち、強化材集合体内のガスを、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスとし、この強化材集合体の少なくとも一部を活性なMg又はMg合金溶湯に接触させることで、溶湯を実質的に加圧することなく、しかも金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物のいずれも用いることなく溶湯を強化材集合体内に浸透させるMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法を見い出した。
【0016】
本発明に係るMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法によれば、強化材と溶湯は一旦濡れた後、多孔質体である強化材集合体の毛細管力、溶湯の静水圧及び溶湯と強化材集合体内のガスとの反応に起因する強化材集合体内の減圧効果(特願平8−304286号)により、溶湯が強化材集合体全体に過不足なく浸透して完全な複合化が達成される。
また、本発明に係るMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法によれば、金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物に起因する不純物を含まず、特定元素の最終浸透部への偏析もないため、均質で高強度なMg基複合材料又はMg合金基複合材料が得られる。
【0017】
次いで、本発明に係る複合材料の製造装置の実施の形態を図1に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形例が可能である。この図は、製造装置の一例である真空溶解炉の断面図を示すものである。まず、室温の状態でチャンバー1内を真空ポンプ2で真空にし、真空バルブ3を閉じ、ガス導入バルブ4を開いて所定のガスでチャンバー1内をガス置換する。ここで、所定のガスとは、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスである。このガスは、不活性ガスであることが好ましい。また、このガスは、N2ガス、CO2ガス、Arガスのいずれか一つ又はそれらの混合ガスを主成分とし、その合計量が前記強化材集合体内の気体総量の98容量%以上であり、その他の不純物ガスのうち、SF6ガス及びSO2ガスの濃度が強化材集合体内の気体総量に対して、各々0.1容量%未満であるガスであっても良い。
【0018】
チャンバー1内が所定のガスで所定の圧力となったところで、ガス検知バルブ5を開き、所定ガスをチャンバー1内に導入しながら、電気抵抗ヒーター6にてマトリッ
クス7を装填したルツボ8を加熱し、マトリックス7を溶解して溶湯にするとともに、該溶湯を所定の温度に加熱保持する。強化材集合体9を初期の段階から操作棒10の先端に固定しているため、該強化材集合体9はチャンバー1内の置換ガスと同一のガスで置換されると共に、溶湯とほぼ同じ温度に予熱される。上記溶湯が所定の温度になったところで操作棒10を降下させ、強化材集合体9を溶湯に接触させる。
接触の方法としては、図2に示すように2つのパターンがある。すなわち、パターンAでは、図中(a)に示すように強化材集合体9の全部を溶湯中に浸漬させ、パターンBでは、(b)に示すように強化材集合体9の半分を溶湯中に浸漬させる。
一定時間、強化材集合体9を溶湯に浸漬させたのち、再び操作棒10を上昇させて強化材集合体9を溶湯から引き上げる。その後、電気抵抗ヒーター6を切ってチャンバー1内を冷却し、溶湯を凝固させる。チャンバー1内の温度が所定の温度となったところで、チャンバー1を開放し、強化材集合体9を取り出し、該強化材集合体9を切断して断面観察をすることで溶湯の浸透の有無を確認する。図1中、11はるつぼ台であり、チャンバー1を開放するまでは所定のガスをチャンバー1内に導入し続ける。
【0019】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1−1〜1−15]
材料及び製造条件
マトリックスとして、Mg合金の一種でASTM規格:AZ91E(JISMC2B)合金、Mg−6重量%Zn合金、及びMg−6重量%Zn−0.3重量%Ca合金を用いた。
マトリックスの溶湯温度は、610℃、660℃、680℃において実験を行った。
強化材集合体内のガス及び溶解雰囲気ガスは、後述する種々の置換ガスを用いた。
強化材集合体と溶湯の接触方法は、上述したパターンAとBの2種類にて実験した。
強化材には、ホウ酸アルミニウム(9Al2O3・2B2O3)ウィスカー(商標名:アルボレックスM20、四国化成工業株式会社製)、炭素繊維及び炭化ケイ素粒子を用いた。ホウ酸アルミニウムウィスカーの場合は、これを乾式プレス機で15mm×15mm×30mmの直方体に成型し、電気抵抗炉にて1350℃で3Hr焼成することにより、ホウ酸アルミニウムウィスカー同士を自己焼結させて強化材集合体とした。よって、該強化材集合体は、強化材であるホウ酸アルミニウム以外は何れの金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物も含んでいない。この強化材集合体中のホウ酸アルミニウムウィスカーの体積率は、20%であった。
【0020】
製造装置及び製造方法
また、製造装置としては、上述した図1の真空溶解炉を用いた。まず、室温の状態でチャンバー1内を真空ポンプ2で真空にし、真空バルブ3を閉じ、ガス導入バルブ4を開いて所定のガスでチャンバー1内をガス置換した。チャンバー1内が所定のガスで1気圧となったところで、ガス検知バルブ5を開き、所定ガスを毎分3リットルの流量でチャンバー1内に導入しながら、電気抵抗ヒーター6にてMg又はMg合金7を装填した鋼製ルツボ8を加熱し、Mg又はMg合金7を溶解して溶湯にするとともに、該溶湯を所定の温度に加熱保持した。強化材集合体9を初期の段階から操作棒10の先端に固定したため、該強化材集合体9はチャンバー1内の置換ガスと同一のガスで置換されると共に、溶湯とほぼ同じ温度に予熱された。上記溶湯が所定の温度になったところで操作棒10を降下させ、強化材集合体9を溶湯に接触させた。
一定時間、強化材集合体9を溶湯に浸漬させたのち、再び操作棒10を上昇させて強化材集合体9を溶湯から引き上げた。その後、電気抵抗ヒーター6を切ってチャンバー1内を冷却し、溶湯を凝固させた。チャンバー1内の温度が200℃となったところで、チャンバー1を開放し、強化材集合体9を取り出し、該強化材集合体9を切断して断面観察をすることで溶湯の浸透の有無を確認した。また、チャンバー1を開放するまでは所定のガスをチャンバー1内に導入し続けた。
【0021】
次いで、実施例1−1から1−15について詳細に説明する。
実施例1−1
まず、マトリックスとして、上述したASTM規格:AZ91E(JIS MC2B)合金を用い、図1のチャンバー1内を純Arガスで置換し、AZ91E合金を660℃で溶解保持し、ホウ酸アルミニウムウィスカーの強化材集合体9をパターンAの形で全体を溶湯中に浸漬させた。チャンバー1に設けられた観察窓からルツボ8内を観察すると、溶湯表面に多数の気泡が出てくるのが確認できた。この強化材集合体9を切断したところ、全体にAZ91E合金が浸透しており、完全なMg合金基複合材料となっていることが確認できた。
【0022】
実施例1−2
マトリックス、溶湯温度、置換ガス及び強化材集合体9ともに実施例1−1と同様とし、強化材集合体9をパターンBの形で半分だけ溶湯中に浸漬させた。観察窓より観察すると溶湯は、毛細管現象によりプリフォーム上端まで浸透してくるのが確認できた。切断したところ、完全なMg合金基複合材料となっていることが確認できた。
実施例1−3
マトリックス、置換ガス、接触方法及び強化材集合体9とも実施例1−1と同様とし、強化材集合体9をパターンAの形で610℃の溶湯中に全部浸漬させた。強化材集合体を切断したところ、完全なMg基複合材料となっていることが確認できた。
実施例1−4
マトリックス、溶湯温度、接触方法及び強化材集合体とも実施例1−1と同様とし、置換ガスをN2ガスとした。660℃の溶湯内に強化材集合体9の全部をパターンAの形で浸漬させた。溶湯表面で気泡は認められなかったが、強化材集合体を切断検査したところ、完全なMg合金基複合材料となっていることが確認できた。
【0023】
実施例1−5
マトリックス、溶湯温度、接触方法及び強化材集合体を実施例1−1と同様とし、置換ガスをCO2+0.3%SF6とした。660℃の溶湯内に、パターンAの形で強化材集合体9の全部を浸漬させたが、溶湯表面で気泡は認められなかった。強化材集合体9を切断検査したところ、Mg溶湯は全く浸透していなかった。
実施例1−6〜1−15
以下、実施例1−6から1−15までの製造条件とその結果を表1に示す。この表において、上向きの矢印は、同上という意味である。また、マトリックスの%は重量%であり、置換ガスの%は容量%である。具体的には、マトリックス、溶湯温度、置換ガス、接触方法及び強化材を種々に変更して、強化材集合体に溶湯が浸透した状態を検査した。これらの結果から、実質的に溶湯を加圧しなくても強化材集合体9に浸透するためには、強化材集合体9内のガス成分だけが影響していることがわかる。つまり、0.1容量%以上のSF6ガスと酸素原子を分子構造内にもつ気体を同時に含む気体、又は0.1%以上のSO2ガスを含んだ気体で置換した場合は、強化材集合体9に溶湯が全く浸透しなかった。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によれば、少ない設備投資で済み、しかも工程が簡便であることから、従来法よりも安価にMg基複合材料又はMg合金基複合材料が製造できる。また、添加物が無いため、複合材料内に不純物がなく、材料特性が優れたMg基複合材料又はMg合金基複合材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1−1から1−15に用いた製造装置全体を示す断面図である。
【図2】本図のうち、(a)は強化材集合体を溶湯に全部浸漬する状態を示す断面図、(b)は強化材集合体を半分浸漬する状態を示す断面図である。
【図3】従来の溶湯鍛造法によるMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 真空ポンプ
3 真空バルブ
4 ガス導入バルブ
5 ガス検知バルブ
6 電気抵抗ヒーター
7 Mg又はMg合金
8 鋼製ルツボ
9 強化材集合体
10 操作棒
11 ルツボ台
【特許請求の範囲】
【請求項1】強化材集合体と、Mg又はMg合金を充填した容器としてルツボとをチャンバー内に収容し、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスで前記チャンバー内をガス置換した後、前記ルツボ内のMg又はMg合金を溶解して溶湯とし、その後に前記強化材集合体を下降させ、前記容器ルツボ内の溶湯に接触させることにより、前記溶湯を前記強化材集合体内に浸透させることを特徴とするMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【請求項2】前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、不活性ガスであることを特徴とする請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【請求項3】前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、N2ガス、CO2ガス、Arガスのいずれか一つ又はそれらの混合ガスを主成分とし、その合計量が前記強化材集合体内の気体総量の98容量%以上であり、その他の不純物ガスのうち、SF6ガス及びSO2ガスの濃度が強化材集合体内の気体総量に対して、各々0.1容量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【請求項4】前記強化材集合体を操作棒に固定し、該操作棒を下降させることにより、前記強化材集合体を下降させ、前記強化材集合体の少なくとも一部を前記溶湯に接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Mg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、溶湯攪拌法、粉末冶金法及び溶湯鍛造法(スクイズキャスト法)等の複合化技術がMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法として広く知られている。この中でも、比較的量産性に優れるため、溶湯鍛造法が軽合金をマトリックスとした複合材料の製造方法として主流となっている。しかし、該溶湯鍛造法は、溶湯を高い圧力で加圧する必要があるため、設備が大規模かつ高価になり、これによって複合材料の製造コストも高くなり、複合材料の実用化に対する大きな障害となっている。
【0003】
図3は、従来の溶湯鍛造法によるMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法を示す断面図である。この溶湯鍛造法のように溶湯を取扱う場合は、通常、SF6ガスを用いた溶湯の防燃措置がとられている。図を用いて製造方法を説明すると、まず、強化材集合体101が載置されている金型102内に、Mg又はMg合金溶湯103を注湯する。次いで、プランジャー104にて溶湯103を加圧し、複合化を行う。溶湯103の酸化や燃焼を防ぐため、金型102内には保護性ガス(例えば、CO2+0.5容量%SF6混合ガス)105が予め導入されている。
【0004】
ここで、複合化時の強化材とMg又はMg合金溶湯との界面に着目してみると、従来法では、強化材は最初に溶湯表面の安定(不活性)な保護膜と接触することがわかる。この保護膜はMg(マグネシウム)、O(酸素)、F(弗素)、S(硫黄)からなる複合化合物の薄膜と考えられているが、強化材と該保護膜の濡れ性が悪いため、複合化に際し上述のように溶湯への加圧が必要となる。また、溶湯への加圧により保護膜が一旦破壊されても強化材集合体内が保護性ガスである場合、溶湯表面には新たな保護膜が瞬時に形成される。このため継続的な溶湯への加圧が必要となる。
【0005】
上記問題を解決するためには、強化材とマトリックス金属の溶湯との濡れ性を改善する必要があり、このことによって溶湯への加圧力の低減又は加圧の省略が可能となる。このため、強化材とマトリックス金属の溶湯との濡れ性を改善する多くの努力がこれまでに払われてきたが、量産性、低コスト及び複合材料の健全性を同時に満足する方法はこれまでに確立されていない。
例えば、特公平7−100834号、第2576186号、第2576188号、特開平1−279721号に開示されているように、強化材に金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物を均一に混合した成型体を形成し、その成型体の少なくとも一部をMg又はMg合金溶湯に接触させることによって、加圧なしに溶湯を成型体に浸透させる方法が知られている。この方法によれば、溶湯の加圧設備が不要となり、ある種の条件下では鋳造用の金型が不要となり、鋳造歩留りが向上する等の製造上のメリットをもたらす。このため、量産性、低コストという観点では進歩がみられる。
【0006】
しかし、金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物自体又はそれらの物質とマトリックス金属溶湯との反応生成物は、多くの場合、複合材料中の不純物となり複合材料の特性を低下させる。このため、複合材料の健全性という観点では不十分であり、さらに、金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物自体のコストが上積みされる問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、マトリックス金属の溶湯を加圧せず、かつ、金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物を用いずに、不純物のない健全なMg基複合材料及びMg合金基複合材料を効率よく、安価に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、Mg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法であって、強化材集合体と、Mg又はMg合金を充填した容器としてルツボとをチャンバー内に収容し、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスで前記チャンバー内をガス置換した後、前記ルツボ内のMg又はMg合金を溶解して溶湯とし、その後に前記強化材集合体を下降させ、前記容器ルツボ内の溶湯に接触させることにより、前記溶湯を前記強化材集合体内に浸透させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法において、前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、不活性ガスであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法において、前記Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスが、N2ガス、CO2ガス、Arガスのいずれか一つ又はそれらの混合ガスを主成分とし、その合計量が前記強化材集合体内の気体総量の98容量%以上であり、その他の不純物ガスのうち、SF6ガス及びSO2ガスの濃度が強化材集合体内の気体総量に対して、各々0.1容量%未満であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法において、前記強化材集合体を操作棒に固定し、該操作棒を下降させることにより、前記強化材集合体を下降させ、前記強化材集合体の少なくとも一部を前記溶湯に接触させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、強化材集合体内のガスをMg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスとし、この強化材集合体の少なくとも一部をMg又はMg合金溶湯に接触させ、該溶湯を強化材集合体内に浸透させることによって、従来のMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法における上記課題を解決できることを見出した。この製造方法によれば、金属酸化物、金属微細片又は金属フッ化物を用いずに、かつ、Mg又はMg合金溶湯を実質的に加圧することなく、Mg基複合材料又はMg合金基複合材料を製造することができる。
【0013】
本発明における強化材とは、粒子、ウィスカー、短繊維若しくは長繊維のうちのいずれか一つ、又は、それらの混合物とする。該強化材の材質としては、ホウ酸アルミニウム(9Al2O3・2B2O3)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、炭素(C)又はチタン酸カリウム(K2O・6TiO2)等を用いることができる。なお、ウィスカー、短繊維及び長繊維とは次のものをいう。
【0014】
(1) ウィスカー
単結晶で、直径の平均値がφ0.1〜1μmの範囲のいずれかであり、長さの平均値が10〜100μmの範囲のいずれかであり、アスペクト比の平均値が5〜1000の範囲のいずれかのものをいう。
(2) 短繊維
多結晶で、直径の平均値がφ1〜10μmの範囲のいずれかであり、長さの平均値が100〜1000μmの範囲のいずれかであり、アスペクト比の平均値が5〜1000の範囲のいずれかのものをいう。
(3) 長繊維
単結晶又は多結晶で、直径の平均値がφ1〜100μmの範囲のいずれかであり、長さの平均値が1000μm以上の範囲のいずれかであり、アスペクト比の平均値が1000以上の範囲のいずれかのものをいう。
【0015】
これまで述べてきたように、保護性ガス下において、Mg又はMg合金溶湯の表面(保護性ガスと溶湯との界面)は安定(不活性)な保護膜であるが、その内部は不安定(活性)なMg又はMg合金溶湯である。本発明者らは、系統的研究の結果から、無機系の強化材とMg又はMg合金溶湯表面の安定(不活性)な保護膜とは濡れ性が悪いが、無機系の強化材と不安定(活性)なMg又はMg合金溶湯とは非常に濡れ性が良好であることを見い出した。すなわち、強化材集合体内のガスを、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスとし、この強化材集合体の少なくとも一部を活性なMg又はMg合金溶湯に接触させることで、溶湯を実質的に加圧することなく、しかも金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物のいずれも用いることなく溶湯を強化材集合体内に浸透させるMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法を見い出した。
【0016】
本発明に係るMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法によれば、強化材と溶湯は一旦濡れた後、多孔質体である強化材集合体の毛細管力、溶湯の静水圧及び溶湯と強化材集合体内のガスとの反応に起因する強化材集合体内の減圧効果(特願平8−304286号)により、溶湯が強化材集合体全体に過不足なく浸透して完全な複合化が達成される。
また、本発明に係るMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造方法によれば、金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物に起因する不純物を含まず、特定元素の最終浸透部への偏析もないため、均質で高強度なMg基複合材料又はMg合金基複合材料が得られる。
【0017】
次いで、本発明に係る複合材料の製造装置の実施の形態を図1に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形例が可能である。この図は、製造装置の一例である真空溶解炉の断面図を示すものである。まず、室温の状態でチャンバー1内を真空ポンプ2で真空にし、真空バルブ3を閉じ、ガス導入バルブ4を開いて所定のガスでチャンバー1内をガス置換する。ここで、所定のガスとは、Mg又はMg合金溶湯に対して防燃効果を持ち、Mg又はMg合金溶湯表面に保護膜を形成しないガスである。このガスは、不活性ガスであることが好ましい。また、このガスは、N2ガス、CO2ガス、Arガスのいずれか一つ又はそれらの混合ガスを主成分とし、その合計量が前記強化材集合体内の気体総量の98容量%以上であり、その他の不純物ガスのうち、SF6ガス及びSO2ガスの濃度が強化材集合体内の気体総量に対して、各々0.1容量%未満であるガスであっても良い。
【0018】
チャンバー1内が所定のガスで所定の圧力となったところで、ガス検知バルブ5を開き、所定ガスをチャンバー1内に導入しながら、電気抵抗ヒーター6にてマトリッ
クス7を装填したルツボ8を加熱し、マトリックス7を溶解して溶湯にするとともに、該溶湯を所定の温度に加熱保持する。強化材集合体9を初期の段階から操作棒10の先端に固定しているため、該強化材集合体9はチャンバー1内の置換ガスと同一のガスで置換されると共に、溶湯とほぼ同じ温度に予熱される。上記溶湯が所定の温度になったところで操作棒10を降下させ、強化材集合体9を溶湯に接触させる。
接触の方法としては、図2に示すように2つのパターンがある。すなわち、パターンAでは、図中(a)に示すように強化材集合体9の全部を溶湯中に浸漬させ、パターンBでは、(b)に示すように強化材集合体9の半分を溶湯中に浸漬させる。
一定時間、強化材集合体9を溶湯に浸漬させたのち、再び操作棒10を上昇させて強化材集合体9を溶湯から引き上げる。その後、電気抵抗ヒーター6を切ってチャンバー1内を冷却し、溶湯を凝固させる。チャンバー1内の温度が所定の温度となったところで、チャンバー1を開放し、強化材集合体9を取り出し、該強化材集合体9を切断して断面観察をすることで溶湯の浸透の有無を確認する。図1中、11はるつぼ台であり、チャンバー1を開放するまでは所定のガスをチャンバー1内に導入し続ける。
【0019】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1−1〜1−15]
材料及び製造条件
マトリックスとして、Mg合金の一種でASTM規格:AZ91E(JISMC2B)合金、Mg−6重量%Zn合金、及びMg−6重量%Zn−0.3重量%Ca合金を用いた。
マトリックスの溶湯温度は、610℃、660℃、680℃において実験を行った。
強化材集合体内のガス及び溶解雰囲気ガスは、後述する種々の置換ガスを用いた。
強化材集合体と溶湯の接触方法は、上述したパターンAとBの2種類にて実験した。
強化材には、ホウ酸アルミニウム(9Al2O3・2B2O3)ウィスカー(商標名:アルボレックスM20、四国化成工業株式会社製)、炭素繊維及び炭化ケイ素粒子を用いた。ホウ酸アルミニウムウィスカーの場合は、これを乾式プレス機で15mm×15mm×30mmの直方体に成型し、電気抵抗炉にて1350℃で3Hr焼成することにより、ホウ酸アルミニウムウィスカー同士を自己焼結させて強化材集合体とした。よって、該強化材集合体は、強化材であるホウ酸アルミニウム以外は何れの金属酸化物、金属微細片、金属フッ化物も含んでいない。この強化材集合体中のホウ酸アルミニウムウィスカーの体積率は、20%であった。
【0020】
製造装置及び製造方法
また、製造装置としては、上述した図1の真空溶解炉を用いた。まず、室温の状態でチャンバー1内を真空ポンプ2で真空にし、真空バルブ3を閉じ、ガス導入バルブ4を開いて所定のガスでチャンバー1内をガス置換した。チャンバー1内が所定のガスで1気圧となったところで、ガス検知バルブ5を開き、所定ガスを毎分3リットルの流量でチャンバー1内に導入しながら、電気抵抗ヒーター6にてMg又はMg合金7を装填した鋼製ルツボ8を加熱し、Mg又はMg合金7を溶解して溶湯にするとともに、該溶湯を所定の温度に加熱保持した。強化材集合体9を初期の段階から操作棒10の先端に固定したため、該強化材集合体9はチャンバー1内の置換ガスと同一のガスで置換されると共に、溶湯とほぼ同じ温度に予熱された。上記溶湯が所定の温度になったところで操作棒10を降下させ、強化材集合体9を溶湯に接触させた。
一定時間、強化材集合体9を溶湯に浸漬させたのち、再び操作棒10を上昇させて強化材集合体9を溶湯から引き上げた。その後、電気抵抗ヒーター6を切ってチャンバー1内を冷却し、溶湯を凝固させた。チャンバー1内の温度が200℃となったところで、チャンバー1を開放し、強化材集合体9を取り出し、該強化材集合体9を切断して断面観察をすることで溶湯の浸透の有無を確認した。また、チャンバー1を開放するまでは所定のガスをチャンバー1内に導入し続けた。
【0021】
次いで、実施例1−1から1−15について詳細に説明する。
実施例1−1
まず、マトリックスとして、上述したASTM規格:AZ91E(JIS MC2B)合金を用い、図1のチャンバー1内を純Arガスで置換し、AZ91E合金を660℃で溶解保持し、ホウ酸アルミニウムウィスカーの強化材集合体9をパターンAの形で全体を溶湯中に浸漬させた。チャンバー1に設けられた観察窓からルツボ8内を観察すると、溶湯表面に多数の気泡が出てくるのが確認できた。この強化材集合体9を切断したところ、全体にAZ91E合金が浸透しており、完全なMg合金基複合材料となっていることが確認できた。
【0022】
実施例1−2
マトリックス、溶湯温度、置換ガス及び強化材集合体9ともに実施例1−1と同様とし、強化材集合体9をパターンBの形で半分だけ溶湯中に浸漬させた。観察窓より観察すると溶湯は、毛細管現象によりプリフォーム上端まで浸透してくるのが確認できた。切断したところ、完全なMg合金基複合材料となっていることが確認できた。
実施例1−3
マトリックス、置換ガス、接触方法及び強化材集合体9とも実施例1−1と同様とし、強化材集合体9をパターンAの形で610℃の溶湯中に全部浸漬させた。強化材集合体を切断したところ、完全なMg基複合材料となっていることが確認できた。
実施例1−4
マトリックス、溶湯温度、接触方法及び強化材集合体とも実施例1−1と同様とし、置換ガスをN2ガスとした。660℃の溶湯内に強化材集合体9の全部をパターンAの形で浸漬させた。溶湯表面で気泡は認められなかったが、強化材集合体を切断検査したところ、完全なMg合金基複合材料となっていることが確認できた。
【0023】
実施例1−5
マトリックス、溶湯温度、接触方法及び強化材集合体を実施例1−1と同様とし、置換ガスをCO2+0.3%SF6とした。660℃の溶湯内に、パターンAの形で強化材集合体9の全部を浸漬させたが、溶湯表面で気泡は認められなかった。強化材集合体9を切断検査したところ、Mg溶湯は全く浸透していなかった。
実施例1−6〜1−15
以下、実施例1−6から1−15までの製造条件とその結果を表1に示す。この表において、上向きの矢印は、同上という意味である。また、マトリックスの%は重量%であり、置換ガスの%は容量%である。具体的には、マトリックス、溶湯温度、置換ガス、接触方法及び強化材を種々に変更して、強化材集合体に溶湯が浸透した状態を検査した。これらの結果から、実質的に溶湯を加圧しなくても強化材集合体9に浸透するためには、強化材集合体9内のガス成分だけが影響していることがわかる。つまり、0.1容量%以上のSF6ガスと酸素原子を分子構造内にもつ気体を同時に含む気体、又は0.1%以上のSO2ガスを含んだ気体で置換した場合は、強化材集合体9に溶湯が全く浸透しなかった。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によれば、少ない設備投資で済み、しかも工程が簡便であることから、従来法よりも安価にMg基複合材料又はMg合金基複合材料が製造できる。また、添加物が無いため、複合材料内に不純物がなく、材料特性が優れたMg基複合材料又はMg合金基複合材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1−1から1−15に用いた製造装置全体を示す断面図である。
【図2】本図のうち、(a)は強化材集合体を溶湯に全部浸漬する状態を示す断面図、(b)は強化材集合体を半分浸漬する状態を示す断面図である。
【図3】従来の溶湯鍛造法によるMg基複合材料又はMg合金基複合材料の製造装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 真空ポンプ
3 真空バルブ
4 ガス導入バルブ
5 ガス検知バルブ
6 電気抵抗ヒーター
7 Mg又はMg合金
8 鋼製ルツボ
9 強化材集合体
10 操作棒
11 ルツボ台
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