JP3834283B2 - 複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材料、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合材料とは、複数素材を巨視的に混合した組成集合体であり、各素材の持つ機械特性を相補的に利用して、単独素材では実現できなかった特性発現を可能にしたものである。基本的には、材料と材料を組み合わせる技術手法であり、マトリックスと強化材(分散材)、使用目的、又はコスト等により、種々の組み合わせが存在する。
【0003】
その中でも金属基複合材料、或いは金属間化合物基複合材料とは、Al、Ti、Ni、Nb等の金属、又はTiAl、Ti3Al、Al3Ti、NiAl、Ni3Al、Ni2Al3、Al3Ni、Nb3Al、Nb2Al、Al3Nb等の金属間化合物をマトリックスとし、セラミックス等の無機材料を強化材として複合材料化されたものである。従って、金属基複合材料、或いは金属間化合物基複合材料は、軽量かつ高強度を有するといった特性を生かし、宇宙・航空分野を始めとして多方面での利用が図られている。
【0004】
また、一般的に、金属間化合物基複合材料は金属基複合材料に比して破壊靭性が低いという欠点はあるが、反面マトリックスの機械的・物理的特性に起因して、耐熱特性、耐摩耗特性に優れており、また低熱膨張、高剛性であるという特徴をも有している。
【0005】
金属間化合物基複合材料の製造方法としては、予め金属間化合物粉末をメカニカルアロイング(MA)等にて製造し、強化材となる繊維及び/又は粒子等とともに、高温・高圧条件下においてホットプレス(HP)若しくは熱間等方圧成形(HIP)する方法が挙げられる。
【0006】
金属間化合物基複合材料を製造する従来の製造方法における問題点として、緻密な金属間化合物基複合材料の製造を行うためには、主として粉末冶金的なHP法及びHIP法等の製造方法によって高温・高圧を負荷し、金属間化合物を焼結することで複合材料の緻密化を行う必要性があることを挙げることができる。このため、前処理工程の必要性があるだけでなく、製造装置の性能や規模に制約があり、大型、或いは複雑形状の複合材料の製造が極めて困難であるとともに、最終製品の形状を考慮したニアネットシェイプ化を行うことができず、その後の工程において機械加工処理が必要となるといった問題点をも有している。
【0007】
また、前処理工程として、予めMA等による金属間化合物粉末の合成が必要であり、製造工程の多段階・煩雑化といった問題点を有している。従って、上述のように、従来の金属間化合物基複合材料の製造においては多段階に渡る工程が必要であるとともに、高温・高圧条件下において行う製造方法であるために極めて高コストな製造方法である。
【0008】
また、金属基複合材料の製造方法としても、固相法であるHP法やHIP法等のような、シート状又は箔状の金属と、繊維状又は粒子状のセラミックスとを高圧にて拡散接合する手法や、金属粉末を利用する、前述の粉末冶金的な手法が一般に知られている。更に、液相法としては、濡れ性が良好ではないセラミックスと溶融金属との組み合わせを考慮し、高圧を付与する等、機械的なエネルギーを利用して強制的に複合材料化させる加圧含浸法や溶湯鍛造法等が知られているが、固相法、液相法、ともに高温・高圧を必要とするプロセスである。また、複合材料化された製品は、どれも平板や円板等の簡易的な形状であり、最終製品にまで仕上げるためには塑性加工処理や機械加工処理が必要となるが、セラミックス相を含んでいるため、加工コストが高く、極めて高コストな製造方法である。
【0009】
このような問題を解消するための関連技術、特に複合材料の低コスト化を目的として、従来の高圧法による合成プロセスではなく圧力を必要としない金属基複合材料の製造方法が開示されている。具体的には、液相法である溶融金属を無加圧含浸させる手法として、微細片の形態をなす強化材と、酸素及び窒素のゲッター効果を有するチタン(Ti)等の微細片からなる成形体を形成し、これをアルミニウム(Al)等の溶湯中に浸漬することで、アルミニウム(Al)等の金属をマトリックスとする金属基複合材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、前記製造方法によれば、製造過程で混合粉に圧力をかけて成形体をつくり、この成形体をアルミニウム(Al)等の溶湯中に浸漬して保持する必要があるため、成形体にハンドリング可能となるほどの強度を付与する必要がある。従って、成形体を作製する際の成形圧力を高圧にする必要が生じ、得られる製品形状には一定の制約がある。また、得られる複合材料は金属間化合物をできる限り含有しない金属をマトリックスとする金属基複合材料に限定される。更に、チタン(Ti)−アルミニウム(Al)間での発熱反応に起因して成形体(試料)が膨張するため、成形体を溶湯中に浸漬すると強化材体積率が低下してしまい、強化材体積率がより高い複合材料を製造することが困難であり、より高強度であるといった、材料特性を制御した複合材料を製造することが困難であるという問題があった。
【0011】
また、他の手法として、窒素ガス中でマグネシウム(Mg)を揮発させ、気相反応によりMg32をセラミックス粒子表面にin−situ(その場)生成させることによりセラミックスと金属との濡れ性を向上させ、毛細管圧力によってセラミックス多孔体に溶融アルミニウム(Al)を非加圧浸透させる手法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、この手法によれば、気相反応によりセラミックス粒子表面にMg32をin−situ(その場)コーティングすることから含浸速度が非常に遅く、また非加圧浸透させる雰囲気調整に時間を要するといった問題がある。更には、予めセラミックス粒子を高温で仮焼すること等によってセラミックス多孔体を合成する必要があるため、複合材料の低コスト化が図れないといった問題がある。
【0012】
上述してきた種々の問題を解消するための関連技術として、所定の強化材に混合した金属粉末とアルミニウム(Al)溶湯による自己燃焼反応を生起させる金属間化合物基複合材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この製造方法によれば、図2に示すように、反応容器1内に充填された分散材と金属粉末からなる混合材料2の間隙3にアルミニウム(Al)4を溶融含浸させることにより、自己燃焼反応をin−situ(その場)で生起させるために、低温、かつ、無加圧条件下で高融点である金属間化合物基複合材料等の複合材料5を、非常に短時間で完結する含浸プロセスにより最終製品形状を模擬したニアネットシェイプ化を達成することができ、従来法と比較して格段にエネルギー量が少なく、製造コストが低減された複合材料の製造方法であるといえる。
【0013】
しかしながら、元素間の自己燃焼反応(代表的には燃焼合成反応(SHS反応))を利用した前記製造方法に類似する材料合成プロセスは、発生する非常に大きな反応熱を自由に制御できない点から、セラミックスや高融点化合物の粉末合成(例えば、アルミニウム(Al)や珪素(Si)を出発原料とした窒素ガス雰囲気中でのAlN及びSi34粉末の合成プロセス(直接窒化法)等)には利用されているのに対して、バルク体製造の場合においては発熱反応に伴う気孔生成に起因して、得られるバルク体に緻密性を付与することが非常に困難であることが知られており、前記製造方法においても高い緻密性を有する複合材料の合成が困難であった。そのため、前記製造方法により得られる金属間化合物基複合材料よりも、更に緻密な微構造を有するとともに、これに起因する優れた材料特性を備えた複合材料、及びその製造方法を創出することが産業界から要望されていた。
【0014】
【特許文献1】
特許第3107563号公報
【特許文献2】
特開平1−273659号公報
【特許文献3】
特開平2−240227号公報
【特許文献4】
特開2002−47519号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、緻密な微構造を有するとともに製造コストの低減がなされている複合材料、及び、製造工程が削減されているとともに、所望とする最終形状、特に大型・複雑形状とすることが可能であり、かつ、緻密な微構造を有する複合材料の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、反応容器の中に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と分散材とを含む混合材料を充填するとともに、前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させて、マトリックス中に分散材を分散させてなる複合材料であって、前記反応容器として、二以上の容器要素からなり、前記容器要素が合体することによって前記混合材料が充填される空間を形成するように構成された反応容器を用い、前記混合材料を一以上の前記容器要素の前記空間を形成する領域(空間形成領域)内に充填するとともに、一以上の前記容器要素を、前記空間形成領域内に充填された前記混合材料を所定の形状に固定した状態で合体させ、前記反応容器の上部に形成された一以上の孔を経由して前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させ、前記金属粉末と前記アルミニウム(Al)との自己燃焼反応によってアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記マトリックス中に前記分散材を分散させてなる、その開気孔率が1.0%未満であることを特徴とする複合材料が提供される。
【0017】
本発明においては、マトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、マトリックスの全体に対する割合が、60質量%以下であることが好ましく、金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末であることが好ましい。
【0018】
本発明においては、孔が、応力緩衝効果を有する環状部材により形成されてなることが好ましく、孔の内側の下部に混合材料が充填されたことが好ましい。
【0019】
本発明においては、溶融含浸されたアルミニウム(Al)の、孔の端部から反応容器内に充填された混合材料の最端部までの距離(Y)に対する、孔の内径(X)の比の値(X/Y)が、0.06〜0.5であることが好ましく、分散材の、複合材料全体に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましい。
【0020】
本発明においては、分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましく、無機材料が、Al23、AlN、SiC、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。本発明においては、その形状により下記の定義に従って規定される平均粒径10〜150μmの分散材の平均粒径に対する、金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%であることが好ましい。
(定義):前記分散材の形状が粒子状である場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、平均粒径10〜150μmの粒子のことをいい、
前記分散材の形状が繊維又はウィスカーである場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、「長さ/径」の比が150未満であるとともに「径」が0.1〜30μm、又は、「長さ/径」の比が150以上であるとともに「径」が0.5〜500μmである繊維又はウィスカーのことをいう。
【0021】
また、本発明によれば反応容器の中に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と分散材とを含む混合材料を充填するとともに、前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させて、マトリックス中に分散材を分散させた複合材料を製造する方法であって、前記反応容器として、二以上の容器要素からなり、前記容器要素が合体することによって前記混合材料が充填される空間を形成するように構成された反応容器を用い、前記混合材料を一以上の前記容器要素の前記空間を形成する領域(空間形成領域)内に充填するとともに、一以上の前記容器要素を、前記空間形成領域内に充填された前記混合材料を所定の形状に固定した状態で合体させ、前記反応容器の上部に形成された一以上の孔を経由して前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させ、前記金属粉末と前記アルミニウム(Al)との自己燃焼反応によってアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記マトリックス中に前記分散材を分散させてなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0022】
本発明においては、金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末であることが好ましい。
【0023】
本発明においては、金属粉末がチタン(Ti)粉末である場合に、溶融含浸させるアルミニウム(Al)と、チタン(Ti)粉末の質量比(Al:Ti)が、1:0.17〜1:0.57であることが好ましく、また、金属粉末がニッケル(Ni)粉末である場合に、溶融含浸させるアルミニウム(Al)と、ニッケル(Ni)粉末の質量比(Al:Ni)が、1:0.20〜1:0.72であることが好ましく、同様に、金属粉末がニオブ(Nb)粉末である場合に、溶融含浸させるアルミニウム(Al)と、ニオブ(Nb)粉末の質量比(Al:Nb)が、1:0.27〜1:1.13であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、孔が、応力緩衝効果を有する環状部材により形成されてなることが好ましく、混合材料を、孔の内側の下部に充填することが好ましい。
【0025】
本発明においては、溶融含浸させるアルミニウム(Al)の、孔の端部から反応容器内に充填された混合材料の最端部までの距離(Y)に対する、孔の内径(X)の比の値(X/Y)が、0.06〜0.5であることが好ましく、分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、無機材料が、Al23、AlN、SiC、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、その形状により下記の定義に従って規定される平均粒径10〜150μmの分散材の平均粒径に対する、金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%であることが好ましい。本発明においては、反応容器が、少なくともその内壁がカーボン材により構成されてなるものであることが好ましい。
(定義):前記分散材の形状が粒子状である場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、平均粒径10〜150μmの粒子のことをいい、
前記分散材の形状が繊維又はウィスカーである場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、「長さ/径」の比が150未満であるとともに「径」が0.1〜30μm、又は、「長さ/径」の比が150以上であるとともに「径」が0.5〜500μmである繊維又はウィスカーのことをいう。
【0027】
本発明においては、反応容器が、その側部に、反応容器の上方から下方へと傾斜するスロープ状の湯道と、湯道に連通した一以上の第2の孔を更に有し、孔と第2の孔を各々独立に経由して、混合材料内部の空隙中にアルミニウム(Al)を溶融含浸させることが好ましい。
【0028】
本発明においては、金属粉末がチタン(Ti)粉末、分散材がAlN、Si、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスからなる粒子(セラミックス粒子)である場合に、セラミックス粒子の体積に対する、チタン(Ti)粉末の体積の比の値(Ti/セラミックス)と、反応容器の空間の容積に対する、空隙の割合(空隙率(%))とが、下記(1)〜(6)に示すいずれかの関係を満たすことが好ましい。
(1)0.1≦(Ti/セラミックス)<0.14、25≦空隙率(%)≦60
(2)0.14≦(Ti/セラミックス)<0.27、25≦空隙率(%)≦70
(3)0.27≦(Ti/セラミックス)<0.53、25≦空隙率(%)≦75
(4)0.53≦(Ti/セラミックス)<1、30≦空隙率(%)≦75
(5)1≦(Ti/セラミックス)<1.4、45≦空隙率(%)≦80
(6)1.4≦(Ti/セラミックス)≦2、50≦空隙率(%)≦80
【0029】
本発明においては、金属粉末がチタン(Ti)粉末、分散材がAl23粒子である場合に、Al23粒子の体積に対する、チタン(Ti)粉末の体積の比の値(Ti/Al23)と、反応容器の空間の容積に対する、空隙の割合(空隙率(%))とが、下記(7)〜(12)に示すいずれかの関係を満たすことが好ましい。
(7)0.1≦(Ti/Al23)<0.14、25≦空隙率(%)≦60
(8)0.14≦(Ti/Al23)<0.27、25≦空隙率(%)≦70
(9)0.27≦(Ti/Al23)<0.53、25≦空隙率(%)≦75
(10)0.53≦(Ti/Al23)<1、30≦空隙率(%)≦75
(11)1≦(Ti/Al23)<1.4、45≦空隙率(%)≦80
(12)1.4≦(Ti/Al23)≦2、50≦空隙率(%)≦80
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明の第一の側面は、反応容器の中に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と分散材とを含む混合材料を充填するとともに、混合材料内部の空隙中に自己燃焼反応により生じる反応熱を駆動力としてアルミニウム(Al)を自発的に溶融含浸させて、マトリックス中に分散材を分散させてなる複合材料であり、反応容器として、二以上の容器要素からなり、容器要素が合体することによって混合材料が充填される空間を形成するように構成された反応容器を用い、混合材料を一以上の容器要素の空間を形成する領域(空間形成領域)内に充填するとともに、一以上の容器要素を、空間形成領域内に充填された混合材料を所定の形状に固定した状態で合体させ、反応容器の上部に形成された一以上の孔を経由して混合材料内部の空隙中にアルミニウム(Al)を溶融含浸させ、金属粉末と前記アルミニウム(Al)との自己燃焼反応を生起させる、即ち、in−situ(その場)合成でアルミナイド金属間化合物を合成させることによって、マトリックス中に分散材を分散させてなる、その開気孔率が1.0%未満であることを特徴とするものである。以下、その詳細について説明する。
【0032】
図1は、本発明の複合材料の製造方法の一例を説明する模式図である。図1においては、適当なサイズ及び形状の容器要素1aの空間形成領域25内に、分散材及び金属粉末を混合してなる混合材料2が充填されており、その上面に溶融したアルミニウム(Al)が含浸される孔10(注湯口)を有する蓋容器要素1b(蓋部材)が載置されて混合材料2が所定の形状に固定され、空隙3、即ち、隣接する混合材料2どうしにより形成される空隙3に、孔10を通じてアルミニウム(Al)4が溶融含浸される状態が示されている。なお、符号1は反応容器、符号21は外挿体を示す。
【0033】
本実施形態では、アルミニウム(Al)4が溶融含浸されることにより、混合材料2を構成する金属粉末(図示せず)と溶融状態のアルミニウム(Al)4が接触して自己燃焼反応が生起され、アルミニウム(Al)4はアルミナイド金属間化合物に置換される。この結果、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス6に分散材7が分散してなる、本実施形態の複合材料5が得られる。
【0034】
また、本実施形態の複合材料は、アルミニウム(Al)と各種金属粉末との自己燃焼反応熱を利用してアルミナイド金属間化合物の生成が推進される。即ち、元素間での発熱反応を含浸駆動力として混合材料中に溶融アルミニウム(Al)が浸透し、かつ、その内部エネルギーを利用するため、低温条件下において製造される。従って、従来の製造方法である加圧含浸法、HP法、又はHIP法のような高圧が必要とされず、無加圧での浸透プロセスによって製造される。また、本実施形態の複合材料は、製造装置の性能上困難であった比較的大きな、或いは複雑な形状にも好適に対応することができ、アルミニウム(Al)含浸後の加工処理の手間を大幅に低減させた、製品のニアネットシェイプ化が可能となる。
【0035】
更に、図1に示すように、一以上の孔10を有する容器要素1bが混合材料2の上面に載置され、孔10を経由してアルミニウム(Al)4が含浸される。このとき、容器要素1aの空間形成領域内に充填された混合材料2は、容器要素1bにより所定形状となるように固定されており、アルミニウム(Al)4が含浸されても、混合粉体2の所定形状は維持される。更に、空隙3の細部にまでアルミニウム(Al)4が含浸され易く、例えば図2に示すように、容器要素1b(図1参照)を使用せずにアルミニウム(Al)4が含浸され、得られた複合材料5に比して開気孔率が低減されており、より緻密であるという特性を有している。また、アルミニウム(Al)4が含浸された後に反り等の不具合が発生し難く、所望とする形状が付与されている複合材料である。
【0036】
更に、アルミニウム(Al)の溶融含浸時に崩れない程度の強度を備えたプリフォームを製造するための仮焼や加圧成形等の煩雑な工程が不要あり、簡便な操作によって製造される複合材料である。
【0037】
なお、混合材料2を所定形状となるように固定するためには、図1に示すように、例えばネジ部8を容器要素1aに設ける等の手段を挙げることができ、このことにより、所望とする適度な圧力が混合材料2に対して付与されるように微調整することができる。但し、混合材料を固定するための手段は、図1に示した態様に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0038】
本発明においては、マトリックスに含まれる前記アルミニウム(Al)の、前記マトリックスの全体に対する割合が、60質量%以下であることが好ましく、2〜50質量%であることが更に好ましい。即ち、形成されるマトリックス中にアルミニウム(Al)が残存している場合には、本実施形態の複合材料は優れた破壊靭性を示すものであるとともに、アルミニウム(Al)の浸透パスが混合材料の空隙として存在していたために、アルミニウム(Al)が良好に浸透されてなるものである。なお、マトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、マトリックスの全体に対する割合が、60質量%を超えると、この複合材料の破壊靭性値は高くなる反面、ヤング率が低下して高剛性材料としての魅力が低下し、またアルミニウム(Al)の融点域において強度低下等の現象が起こり易くなるために好ましくない。更に、よりアルミニウム(Al)の比率を高めた場合においては、含浸駆動力となる金属粉末の量の低下によって浸透性の低下が生ずるため好ましくない。
【0039】
本発明において用いられる金属粉末は、溶融状態のアルミニウム(Al)(アルミニウム(Al)溶湯)と接触させることにより自己燃焼反応が生起され、アルミナイド金属間化合物が形成されるものである。具体的には、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末が用いられ、これらの金属粉末は反応性が良好であるとともに、アルミナイド金属間化合物が形成され易いために好ましい。これら金属粉末が用いられた場合の反応の代表例を下記式(1)〜(3)に示す。下記式(1)〜(3)において示す通り、これらの反応は発熱反応(自己燃焼反応)であり、この反応熱が利用されることにより、本発明の複合材料が得られる。
【0040】
【数1】
3Al+Ti→Al3Ti : ΔH298=−146kJ/mol …(1)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0041】
【数2】
3Al+Ni→Al3Ni : ΔH298=−150kJ/mol …(2)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0042】
【数3】
3Al+Nb→Al3Nb : ΔH298=−160kJ/mol …(3)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0043】
図3は、本発明の複合材料の製造方法の別の例を説明する模式図である。本実施形態においては、反応容器1(容器要素1b)に複数の孔10が形成されていることが好ましく、より多量の混合材料が用いられる場合、即ち、複合材料がより大型である場合に好適である。即ち、アルミニウム(Al)の供給が、複数の孔を通じて効率的に行われてなるものであり、大型であっても緻密な微構造を有するものである。
【0044】
また、図4に示すように、孔10が、応力緩衝効果を有する環状部材15により形成されていることが、複合材料がより大型である場合に好ましい。ここでいう「応力緩衝効果」とは、アルミニウム(Al)を溶融含浸した後、降温する際に生ずる、熱収縮により発生する応力を緩衝する効果をいう。即ち、孔10付近に残留したアルミニウム(Al)が収縮抵抗となって孔10と複合材料との組み合わせ部(接続部)において応力が集中し、得られる複合材料に破損等の不具合を発生させる場合も想定されるが、孔10が応力緩衝効果を有する環状部材15により形成されていることにより、前記不具合の発生が回避され得る。なお、このような応力緩衝効果を備えた環状部材15を構成する材料の具体的な例としては、ポーラスカーボンや、断熱材として使用されるセラミックスファイバー等を挙げることができる。また、孔の最下部、即ち、孔が複合材料と接する部分にC取りやR付けをすることにより、収縮時の応力を緩和することも可能である。
【0045】
本発明においては、成形体に接触する孔の内側の下部に混合材料が追加充填されていることが好ましい。孔の直下に相当する部分では、含浸する溶融アルミニウム(Al)の供給部となることから、得られる複合材料の組織がアルミニウム(Al)過剰となり不均質となる場合がある。従って、孔の内側の下部に混合材料が充填された本発明の複合材料は、アルミニウム(Al)を溶融含浸後、孔の内側に相当する箇所のみが容易に除去され得るものであり、含浸前に孔の直下に設置されていた成形体部分、即ち、含浸により複合材料となった部分を加工除去する必要がなくなるため、製造時の歩留まり向上及び製造コストの低減がなされたものである。なお、本発明における「孔の内側の下部」とは、孔の高さの1/4〜1/3までの位置をいう。
【0046】
本発明においては、溶融含浸されたアルミニウム(Al)の最大浸透距離(Y)に対する、孔の内径(X)の比の値(X/Y)が、0.06〜0.5であることが好ましく、0.08〜0.4であることが更に好ましく、0.1〜0.35であることが特に好ましい。X/Yが0.06未満である場合には、孔が小さ過ぎるためにアルミニウム(Al)の供給が充分になされず浸透性が向上し難くなるために好ましくない。一方、X/Yが0.5超である場合も同様に、アルミニウム(Al)の浸透性向上効果が発揮され難くなるために好ましくない。
【0047】
なお、本発明にいうアルミニウム(Al)の「最大浸透距離」とは、図1に示すところの孔10の端部から反応容器1内に充填された混合材料2の最端部までの距離をいうものとする。また、本発明においては、孔の形状に関しては特に限定されることはなく、円形、楕円形、多角形、又は不定形等をはじめとするいずれの形状であってもよい。なお、孔の内径は、孔の形状が円形である場合はその内径、楕円形である場合はその長径と短径の平均値、多角形又は不定形である場合はそれらの最大開口径と最小開口径との平均値をいうものとする。
【0048】
本発明においては、分散材の、複合材料全体に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることが更に好ましい。分散材の体積比率が10体積%に満たない場合には、複合材料として充分な強度を発揮し得ず、また、70体積%を超える場合には、アルミニウム(Al)溶湯の浸透に不具合が生ずることが想定され、アルミナイド金属間化合物の生成が困難となり、不均質な組織が形成されるために好ましくない。なお、本発明において溶融含浸されるアルミニウム(Al)は純アルミニウム(Al)に限らず、各種アルミニウム(Al)合金を利用してもこれまで述べてきた効果が発揮されることはいうまでもない。
【0049】
本発明においては、分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましく、このような形状の無機材料が用いられているため、本発明の複合材料は最終製品としての使用用途に沿った物理的特徴等を有するものである。
【0050】
また、本発明においては、前述の無機材料が、Al23、AlN、SiC、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。複合材料は、これを構成するマトリックスに含まれる金属間化合物と分散材との組み合わせにより種々の特性を示すものであり、用途に応じた特性を示す複合材料となる組み合わせが適宜選択される。表1に、各種の無機材料からなる分散材の種類と、金属間化合物と組み合わせた場合における複合材料の特徴の一例を示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003834283
【0052】
本発明においては、分散材の平均粒径に対する、金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%であることが好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。金属粉末の平均粒径が分散材の平均粒径の5%未満である場合には、金属粉末自体の入手が困難及び粉塵爆発の危険性が伴なってくる点から取り扱いが不便となり、80%超である場合には自己燃焼反応の活性度が充分に高められず、得られる複合材料が緻密化され難くなるために好ましくない。具体的には、分散材の平均粒径が50μmである場合には、金属粉末の平均粒径は2〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。
【0053】
次に、本発明の第二の側面について説明する。本発明の第二の側面は、反応容器の中に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と分散材とを含む混合材料を充填するとともに、混合材料内部の空隙中にアルミニウム(Al)を溶融含浸させて、マトリックス中に分散材を分散させた複合材料を製造する方法であり、反応容器として、二以上の容器要素からなり、容器要素が合体することによって混合材料が充填される空間を形成するように構成された反応容器を用い、混合材料を一以上の容器要素の空間を形成する領域(空間形成領域)内に充填するとともに、一以上の容器要素を、空間形成領域内に充填された混合材料を所定の形状に固定した状態で合体させ、反応容器の上部に形成された一以上の孔を経由して混合材料内部の空隙中にアルミニウム(Al)を溶融含浸させ、金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によってアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、マトリックス中に分散材を分散させてなる複合材料を得ることを特徴とするものである。以下、その詳細について説明する。
【0054】
本発明の複合材料の製造方法では、図1に示すように、適当なサイズ及び形状の容器要素1aの空間形成領域25内に、分散材及び金属粉末を混合して得た混合材料2を充填し、その上面に溶融したアルミニウム(Al)を含浸させる孔10を有する容器要素1b(蓋部材)を載置して混合材料2を所定の形状に固定し、空隙3、即ち、隣接する混合材料2どうしにより形成される空隙3に、孔10を経由してアルミニウム(Al)4を溶融含浸させる。本実施形態では、アルミニウム(Al)4を溶融含浸させることにより、混合材料2を構成する金属粉末(図示せず)と溶融状態のアルミニウム(Al)4を接触させて自己燃焼反応を生起させ、アルミニウム(Al)4をアルミナイド金属間化合物に置換させる。この結果、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス6に分散材7が分散してなる複合材料5を製造することができる。
【0055】
また、本実施形態では、アルミニウム(Al)と各種金属粉末との自己燃焼反応熱を利用してアルミナイド金属間化合物の生成を推進させるために、低温条件下において複合材料を製造することができる。更に、従来の製造方法である、HP法又はHIP法のような高圧を必要としないために、無加圧浸透によって複合材料を製造することができる。このことにより、製造装置の性能上困難であった比較的大きな、或いは複雑な形状を有する複合材料の製造が可能となる。
【0056】
更に、図1に示すように、本実施形態では一以上の孔10を有する容器要素1bを混合粉体2の上面に載置し、孔10を経由してアルミニウム(Al)4を含浸させる。このとき、容器要素1aの空間形成領域25内に充填された混合材料2は、容器要素1bにより所定形状となるように固定されているために、アルミニウム(Al)4が含浸されても、混合粉体2の所定の形状を維持することができる。更に、空隙3の細部にまでアルミニウム(Al)4を含浸させることができ、例えば図2に示すように、容器要素1b(図1参照)を使用せずにアルミニウム(Al)4を含浸して得た複合材料5に比して開気孔率を低減することができ、高密度であるとともにより緻密な複合材料を製造することができる。また、アルミニウム(Al)を含浸した後にも変形等の不具合が発生し難く、得られる複合材料に所望とする形状を付与することができる。
【0057】
なお、混合材料2を所定形状となるように固定するためには、図1に示すように、例えばネジ部8を容器要素1aに設ける等の手段を挙げることができ、このことにより、所望とする適度な圧力を混合材料2に対して付与するように微調整することができる。但し、混合材料を固定するための手段は、図1に示した態様に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0058】
本発明において用いる金属粉末は、溶融状態のアルミニウム(Al)(アルミニウム(Al)溶湯)と接触することにより自己燃焼反応を生起し、アルミナイド金属間化合物を形成するものである。具体的にはチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末を用いることができる。これらの金属粉末は反応性が良好であるとともに、安定なアルミナイド金属間化合物を形成し、かつ、入手や取り扱いも容易であるために好ましい。これら金属粉末を用いた場合の反応の代表例を下記式(4)〜(6)に示す。下記式(4)〜(6)において示す通り、これらの反応は発熱反応(自己燃焼反応)であり、本発明においてはこの反応熱を利用する。
【0059】
【数4】
3Al+Ti→Al3Ti : ΔH298=−146kJ/mol …(4)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0060】
【数5】
3Al+Ni→Al3Ni : ΔH298=−150kJ/mol …(5)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0061】
【数6】
3Al+Nb→Al3Nb : ΔH298=−160kJ/mol …(6)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0062】
また、特許第2609376号公報、及び、特開平9−227969号公報に示される他のin−situ複合材料の製造方法においては、分散材とマトリックスとを、ともにin−situ合成するのに対して、本発明ではin−situ合成するのはマトリックスのみである。従って、分散材の種類については自由に選択可能であり、所望の物理的特性を有する複合材料を製造することができる。更に、分散材の種類、及び体積比率を任意に選択・設定することにより、反応熱を制御することも可能となる。
【0063】
本発明においては、金属粉末がチタン(Ti)粉末である場合に、溶融含浸させるアルミニウム(Al)と、チタン(Ti)粉末の質量比(Al:Ti)が、1:0.17〜1:0.57であることが好ましい。このことにより、マトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、マトリックスの全体に対する割合を60質量%以下、即ち、高破壊靭性であるとともに緻密な微構造を有する複合材料を得ることができる。
【0064】
また、金属粉末がニッケル(Ni)粉末である場合に、溶融含浸させるアルミニウム(Al)と、ニッケル(Ni)粉末の質量比(Al:Ni)が、1:0.20〜1:0.72であることが好ましい。このことにより、マトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、マトリックスの全体に対する割合を60質量%以下、即ち、高破壊靭性であるとともに緻密な微構造を有する複合材料を得ることができる。
【0065】
更に、金属粉末がニオブ(Nb)粉末である場合に、溶融含浸させるアルミニウム(Al)と、ニッケル(Ni)粉末の質量比(Al:Ni)が、1:0.27〜1:1.13であることが好ましい。このことにより、マトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、マトリックスの全体に対する割合を60質量%以下、即ち、高破壊靭性であるとともに緻密な微構造を有する複合材料を得ることができる。
【0066】
本発明においては、反応容器に複数の孔が形成されていることが好ましく、孔の数が1の場合に比して多量の混合材料を用いることが可能となる。即ち、アルミニウム(Al)溶湯の浸透性が良好となるために、大型であっても緻密な微構造を有する複合材料を製造することができる。
【0067】
本発明においては、特に大型部材を製造する場合に、孔が応力緩衝効果を有する環状部材により形成されてなることが好ましい。ここでいう「応力緩衝効果」とは、既に述べた通りである。即ち、孔付近に残留したアルミニウム(Al)が複合材料の収縮抵抗となり、孔と複合材料との組み合わせ部(接続部)において応力が集中し、得られる複合材料に破損等の不具合が発生する場合も想定されるが、孔が応力緩衝効果を備えた環状部材により形成されていることにより、前記不具合の発生が回避され得る。なお、このような応力緩衝効果を備えた環状部材を構成する材料の具体的な例としては、ポーラスカーボンや、断熱材として使用されるセラミックスファイバー等を挙げることができる。
【0068】
また、本発明においては、孔の内側の下部に混合材料を充填することが好ましい。孔の直下に相当する部分では、得られる複合材料の組織がアルミニウム(Al)過剰となり不均質となる場合がある。従って、孔の内側の下部に混合材料を充填した場合には、アルミニウム(Al)を溶融含浸後、孔の内側に相当する箇所のみを容易に除去することができ、全体的に均質な組織を有する複合材料を製造することができる。
【0069】
本発明においては、溶融含浸させるアルミニウム(Al)の最大浸透距離(Y)に対する、孔の内径(X)の比の値(X/Y)が、0.06〜0.5であることが好ましく、0.08〜0.4であることが更に好ましく、0.1〜0.35であることが特に好ましい。X/Yを0.06未満とした場合には、孔が小さ過ぎるためにアルミニウム(Al)の浸透性が向上し難くなるために好ましくない。一方、X/Yを0.5超とした場合も同様に、アルミニウム(Al)の浸透性向上効果が発揮され難くなるために好ましくない。
【0070】
次に、製造方法の一例を挙げて本発明の詳細を説明する。所定形状の分散材、所定の平均粒径を有する金属粉末、例えば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)等、及び、反応容器内の混合材料の空隙に含浸させる金属としてアルミニウム(Al)を用意する。このとき、分散材の平均粒径に対する、金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%であることが好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。金属粉末の平均粒径が分散材の平均粒径の5%に未満である場合には、金属粉末自体の入手が困難及び粉塵爆発の危険性が伴なってくる点から取り扱いが不便となり、80%超である場合には、自己燃焼反応の活性度が充分に高められず、複合材料の緻密化をなし得ることができないためである。具体的には、平均粒径50μmの分散材に対しては平均粒径2〜40μmの金属粉末を用いることが好ましく、5〜30μmの金属粉末を用いることが更に好ましい。
【0071】
本発明においては、分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。これらの形状を有する無機材料を用いることにより、最終製品としての使用用途に沿った強度や特徴を有する複合材料を製造することができる。
【0072】
なお、本発明において「平均粒径10〜150μmの分散材」というときは、分散材の形状が粒子状の場合にあっては、「平均粒径10〜150μmの粒子」のことをいい、また粒子状ではなく、繊維、ウィスカー等の場合にあっては、「長さ/径、の比が150未満の場合で、径が0.1〜30μmの繊維、ウィスカー等」、又は「長さ/径、の比が150以上の場合で、径が0.5〜500μmの繊維及びウィスカー等」のことをいう。
【0073】
また、本発明においては、前述の無機材料が、Al23、AlN、SiC、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。複合材料は、これを構成するマトリックスに含まれる金属間化合物と分散材との組み合わせにより種々の特性を示すものであり、用途に応じた特性を示す複合材料となる組み合わせを適宜選択すればよい。
【0074】
なお、得られる複合材料のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)とアルミナイド金属間化合物との質量比を調整するには、反応容器内に充填する混合材料の金属粉末:分散材の比(体積比)を変化させ、更に充填後の混合材料の厚みを測定することによって混合材料の空隙率を測定し、その空隙中にアルミニウム(Al)が完全に浸透するものとして、アルミニウム(Al)の必要量を算出する。これにより、金属粉末:分散材の体積比、及び混合材料の空隙率によって分散材の粒子体積率及びマトリックスの組成(質量比)を算出することができる。
【0075】
また、アルミニウム(Al)を含浸する前において目標とするマトリックスの組成は、含浸した後の実際のマトリックス組成とは完全には一致せず、若干変動する場合がある。次に、含浸した後の実際のマトリックス組成の算出方法について説明する。マトリックスに含まれるアルミニウム(Al):アルミナイド金属間化合物の質量比は、特許文献4において記載された手法である、XRD分析にて予め所定の質量比に調整したアルミニウム(Al)及びアルミナイド金属間化合物の混合粉体を用いて検量線を作成しておき、これを元にしてマトリックス組成を変化させた試料をXRD分析し、得られた測定結果のX線強度より算出することが可能である。
【0076】
分散材と金属粉末を混合して得た混合材料を、反応容器を構成する容器要素の空間形成領域内に充填するとともに、混合材料が所定の形状及び空隙率となるように適当な圧力にて成形を行う。なお、予め適当な圧力を付与することにより混合材料の成形を行っておき、これを反応容器中に充填してもよい。また、空隙率に関しては、成形する圧力を変化させることで任意に制御することができる。次いで、一以上の孔を有する容器要素を介して、前記成形体を容器要素どうしにて固定した状態で組み合わせることにより合体させ、その後に容器要素を介してアルミニウム(Al)を配置する。このとき既述の如く、混合材料を孔の内側の下部に充填してもよい。なお、配置するアルミニウム(Al)は純アルミニウム(Al)に限らず、約90%以上の純度であれば差し支えなく使用することができ、また、各種アルミニウム(Al)合金を使用してもよい。続いて適度な減圧条件、例えば真空条件下で、アルミニウム(Al)が溶解する温度(約660℃)より数十℃高い温度、具体的には約700℃まで加熱し、孔を経由して混合材料の空隙に溶融状態のアルミニウム(Al)を含浸させる。金属粉末と接触したアルミニウム(Al)は自己燃焼反応を生起するとともに毛細管浸透が誘起され、目的とする複合材料のマトリックスが瞬時に形成される。
【0077】
マトリックスの形成自体は非常に短時間で完了するため、加熱に要する時間は数分程度で充分である。更に、自己燃焼反応が終了した後に、得られた複合材料のマトリックスの均質化及び安定化を図るために、適宜等温保持や加熱保持を行ってもよい。このときの保持温度は、材料系によって若干左右されるが、自己燃焼反応が生じた温度と同一な温度から約400〜500℃程度高い温度で実施することが好ましく、また保持時間は約1時間から必要に応じて数時間実施すればよい。
【0078】
また、本発明においては、図11に示すように、反応容器1が、少なくともその内壁が、カーボン材22により構成されてなるものであることが好ましい。内壁がこのように構成された反応容器1を用いると、アルミニウム(Al)を溶融含浸して冷却した後、得られた複合材料を反応容器1から容易に取り出すことができる。即ち、複合材料の、反応容器1からの離型性が極めて良好となるために、反応容器1の耐久性も向上し、複合材料の製造コストを低減することができる。なお、図11においては反応容器1の内壁のみをカーボン材22により構成した状態を示しているが、反応容器1の全体がカーボン材により構成されていてもよく、少なくともアルミニウム(Al)や、製造される複合材料が接触する箇所がカーボン材により構成されていることが好ましい。また、更なる離型性の向上を図るため、溶融アルミニウム(Al)が接触する部位に、BNスプレー等によるコーティングを行うこと、カーボンシート等を配置することも好ましい。なお、符号24は、固定用ボルトを示す。
【0079】
本発明においては、図13に示すように、反応容器1が、その側部に、反応容器1の上方から下方へと傾斜するスロープ状の湯道23と、この湯道23に連通した一以上の第2の孔20を更に有するものであり、上部の孔10と側部の第2の孔20を各々独立に経由して、混合材料2の内部の空隙にアルミニウム(Al)4を溶融含浸させることが好ましい。即ち、第2の注湯口20を適宜増加・形成した反応容器1を用意し、各々の孔10、第2の孔20からアルミニウム(Al)4を溶融含浸させることによって、肉厚(図13の左右方向に長い場合)であっても、その全体に渡って緻密な微構造を有する複合材料を製造することができる。
【0080】
また、本発明においては、金属粉末がチタン(Ti)粉末、分散材がAlN、Si、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスからなる粒子(セラミックス粒子)である場合に、セラミックス粒子の体積に対する、チタン(Ti)粉末の体積の比の値(Ti/セラミックス(以下、単に「(Ti/セラミックス)値」と記す))と、容器内の容積に対する、空隙の割合(空隙率(%))とが、下記(1)〜(6)に示すいずれかの関係を満たすことが好ましい。
(1)0.1≦(Ti/セラミックス)<0.14、25≦空隙率(%)≦60
(2)0.14≦(Ti/セラミックス)<0.27、25≦空隙率(%)≦70
(3)0.27≦(Ti/セラミックス)<0.53、25≦空隙率(%)≦75
(4)0.53≦(Ti/セラミックス)<1、30≦空隙率(%)≦75
(5)1≦(Ti/セラミックス)<1.4、45≦空隙率(%)≦80
(6)1.4≦(Ti/セラミックス)≦2、50≦空隙率(%)≦80
【0081】
即ち、混合材料の(Ti/セラミックス)値と、空隙率とを、上述したいずれかの関係となるように組み合わせることにより、この混合材料の間隙にアルミニウム(Al)を溶融含浸させるに際してその浸透性が極めて良好となり、HP法又はHIP法のように高加圧条件下でなくとも、より緻密で開気孔率が低減された複合材料を製造することができる。なお、アルミニウム(Al)の浸透性を更に向上させ、より緻密で開気孔率が低減された複合材料を製造する観点からは、(Ti/セラミックス)値と、空隙率(%)とが、下記(7)〜(14)に示すいずれかの関係を満たすことが更に好ましい。
【0082】
(7)0.1≦(Ti/セラミックス)<0.14、30≦空隙率(%)≦45
(8)0.14≦(Ti/セラミックス)<0.18、25≦空隙率(%)≦55
(9)0.18≦(Ti/セラミックス)<0.27、25≦空隙率(%)≦60
(10)0.27≦(Ti/セラミックス)<0.4、35≦空隙率(%)≦65
(11)0.4≦(Ti/セラミックス)<0.53、35≦空隙率(%)≦70
(12)0.53≦(Ti/セラミックス)<0.77、40≦空隙率(%)≦70
(13)0.77≦(Ti/セラミックス)<1、45≦空隙率(%)≦75
(14)1≦(Ti/セラミックス)<2、50≦空隙率(%)≦80
【0083】
また、本発明においては、金属粉末がチタン(Ti)粉末、分散材がAl23粒子である場合に、Al23粒子の体積に対する、チタン(Ti)粉末の体積の比の値(Ti/Al23(以下、単に「(Ti/Al23)値」と記す))と、金型容器内の容積に対する、空隙の割合(空隙率(%))とが、下記(15)〜(20)に示すいずれかの関係を満たすことが好ましい。
(15)0.1≦(Ti/Al23)<0.14、25≦空隙率(%)≦60
(16)0.14≦(Ti/Al23)<0.27、25≦空隙率(%)≦70
(17)0.27≦(Ti/Al23)<0.53、25≦空隙率(%)≦75
(18)0.53≦(Ti/Al23)<1、30≦空隙率(%)≦75
(19)1≦(Ti/Al23)<1.4、45≦空隙率(%)≦80
(20)1.4≦(Ti/Al23)≦2、50≦空隙率(%)≦80
【0084】
即ち、混合材料の(Ti/Al23)値と、空隙率とを、上述したいずれかの関係となるように組み合わせることにより、この混合材料の間隙にアルミニウム(Al)を溶融含浸させるに際してその浸透性が極めて良好となり、HP法又はHIP法のように高加圧条件下でなくとも、より緻密で開気孔率が低減された複合材料を製造することができる。なお、アルミニウム(Al)の浸透性を更に向上させ、より緻密で開気孔率が低減された複合材料を製造する観点からは、(Ti/Al23)値と、空隙率(%)とが、下記(21)〜(29)に示すいずれかの関係を満たすことが更に好ましく、下記(30)〜(37)に示すいずれかの関係を満たすことが特に好ましい。
【0085】
(21)0.1≦(Ti/Al23)<0.14、30≦空隙率(%)≦45
(22)0.14≦(Ti/Al23)<0.18、30≦空隙率(%)≦55
(23)0.18≦(Ti/Al23)<0.27、30≦空隙率(%)≦60
(24)0.27≦(Ti/Al23)<0.4、35≦空隙率(%)≦65
(25)0.4≦(Ti/Al23)<0.53、35≦空隙率(%)≦70
(26)0.53≦(Ti/Al23)<0.77、40≦空隙率(%)≦70
(27)0.77≦(Ti/Al23)<1、45≦空隙率(%)≦75
(28)1≦(Ti/Al23)<1.4、50≦空隙率(%)≦75
(29)1.4≦(Ti/Al23)≦2、55≦空隙率(%)≦80
【0086】
(30)0.14≦(Ti/Al23)<0.18、35≦空隙率(%)≦45
(31)0.18≦(Ti/Al23)<0.27、35≦空隙率(%)≦55
(32)0.27≦(Ti/Al23)<0.4、40≦空隙率(%)≦60
(33)0.4≦(Ti/Al23)<0.53、40≦空隙率(%)≦65
(34)0.53≦(Ti/Al23)<0.77、45≦空隙率(%)≦65
(35)0.77≦(Ti/Al23)<1、50≦空隙率(%)≦70
(36)1≦(Ti/Al23)<1.4、55≦空隙率(%)≦75
(37)1.4≦(Ti/Al23)≦2、60≦空隙率(%)≦75
【0087】
上述してきた、本発明の複合材料の製造方法によれば、その特徴を生かして大型、或いは複雑形状であるとともに、緻密な微構造を有し、かつ、当該緻密化された微構造に起因した優れた材料特性を具備する複合材料を極めて簡便に製造することができる。また、最終製品の形状を考慮したニアネットシェイプ化を行うことができるために、その後の工程において機械加工処理が不必要である。更に、前処理工程であるアルミナイド金属間化合物の調製も不必要となるために、製造コストの削減を容易に達成することができる。
【0088】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施結果を説明する。
(各種物性値の測定方法、各種評価方法)
[開気孔率]:
測定対象から所定形状の試料を切り出し、アルキメデス法によって測定した。
【0089】
[4点曲げ強度]:
測定対象から所定形状の試料を切り出し、JIS R 1601に従って、4点曲げ試験を実施することにより測定した。
【0090】
[ヤング率]:
得られた複合材料から所定形状の試料を切り出し、JIS R 1601に従って、4点曲げ試験を実施することによりヤング率を測定した。
【0091】
[破壊靭性値]:
得られた複合材料から切り込み(ノッチ)を導入した所定の形状の試料を作製して4点曲げ試験強度を測定し、シェブロンノッチ法に従い破壊靭性値の算出した。
【0092】
[浸透率]:
下記式(7)に従って算出した。
【0093】
【数7】
浸透率(%)=100×浸透距離/最大浸透距離 …(7)
(但し、「浸透距離」とは、実際にアルミニウム(Al)が浸透した距離(孔の内径を除く)であって、未浸透領域において観察される気孔の多い部分を除外した距離をいい、「最大浸透距離」とは、孔の端部から反応容器中に充填された混合材料の最端部までの距離をいう)
【0094】
[空隙率]:
含浸前の空隙率については、調合量及び成形後における試料厚みを測定し、下記式(8)に従って算出した。また、含浸後の空隙率については、調合量及び含浸後における試料厚みを測定し、下記式(8)に従って算出した。
【0095】
【数8】
Figure 0003834283
(但し、Vporeは空隙体積、VDは分散材の体積、VMetal powderは金属粉末の体積を示す)
【0096】
[浸透性の評価]:
浸透率が100%である場合を「◎」、浸透率が85%以上である場合を「○」、浸透率が60%以上である場合を「△」、浸透率が60%未満の場合を「×」として評価した。
【0097】
[緻密性の評価]:
開気孔率が0.1%以下である場合を「◎」、開気孔率が0.5%以下である場合を「○」、開気孔率が1.0%未満である場合を「△」、開気孔率が1.0%以上である場合を「×」として評価した。
【0098】
(実施例1)
平均粒径が約47μmであるAl23粒子、平均粒径が約10μmであるチタン(Ti)粉末及び溶融含浸させるアルミニウム(Al)(市販の純Al(A1050、純度>99.5%))を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl23粒子を、(Ti/Al23)体積比の値が0.53となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内径50mmφのカーボン製の容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、空隙率約49%の成形体とした。次に、内径10mmφの孔(注湯口)を有するカーボン製蓋部材を成形体の上面に載置し、このカーボン製蓋部材を、その外側に配置するカーボン製容器で固定し、その後、孔に溶融したアルミニウム(Al)が流れ込むようにアルミニウム(Al)(固体)を配置した。0.013Pa以下の真空雰囲気下にて700℃まで加熱して溶融したアルミニウム(Al)を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例1)。得られた複合材料を切断・研磨した後、光学顕微鏡にて断面観察を行ったところ、アルミニウム(Al)が容器と蓋部材に囲まれた空間に沿った形状で端部まで良好に含浸されていた。開気孔率(%)及び4点曲げ強度の測定結果を表2に示す。
【0099】
(比較例1)
蓋部材を用いずに、成形体の上面の全面よりアルミニウム(Al)を溶融含浸させること以外は実施例1と同様の操作により、複合材料を製造した(比較例1)。開気孔率(%)、密度、及び4点曲げ強度の測定結果を表2に示す。
【0100】
(比較例2)
ホットプレス(HP)法を用いて、溶融アルミニウム(Al)の加圧含浸により複合材料の製造を行った。即ち、蓋部材を用いないこと、及びアルミニウム(Al)の加圧含浸に際して約30MPaの圧力を負荷すること以外は実施例1と同様の操作により、複合材料を製造した(比較例2)。開気孔率(%)、密度、及び4点曲げ強度の測定結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
Figure 0003834283
【0102】
表2に示す結果から、成形体を蓋部材により固定したこと(実施例1)により、成形体内部の空隙に溶融アルミニウム(Al)が無加圧含浸され、自発的に緻密化が促進されることが判明した。更には、実施例1のように、反応熱を利用したアルミニウム(Al)の自発的な浸透現象が生起されることにより、比較例2に示されるHP法による強制的な緻密化を行った場合と同等の開気孔率とすることができた。このため、実施例1の複合材料は、比較例1の複合材料に比して密度が高く、開気孔率を比較しても緻密性が向上していた。また、4点曲げ強度については、比較例1、2の複合材料が約200MPaであったのに対し、実施例1の複合材料は400MPa以上と高強度であった。これは、複合材料内部の閉気孔が減少したこと、及び分散材とマトリックスとの界面強度が増加したことに起因するものと考えられる。従って、本発明によれば、構成元素間で生じる自発的な内部エネルギーを利用することでより緻密化された複合材料を製造することが可能であり、複合材料製造に際してのエネルギーコストの低減等に寄与すると考えられる。
【0103】
(実施例2〜29、比較例3〜7)
表3に示す平均粒径のAl23粒子、及びチタン(Ti)粉末と、溶融含浸させるアルミニウム(Al)(市販の純Al(A1050、純度>99.5%))を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl23粒子を、(Ti/Al23)体積比の値が表3に示す値となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内径50mmφのカーボン製の容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、表3に示す空隙率の成形体とした。次に、内径10mmφの孔を有するカーボン製蓋部材を成形体の上面に載置し、このカーボン製蓋部材を、その外側に配置するカーボン製容器で固定し、その後、孔に溶融したアルミニウム(Al)が流れ込むようにアルミニウム(Al)(固体)を配置した。0.013Pa以下の真空雰囲気下にて700℃まで加熱して溶融したアルミニウム(Al)を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例2〜29、比較例3〜7)。浸透性及び緻密性の評価結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
Figure 0003834283
【0105】
表3に示す結果から、(Ti/Al23)体積比の値が大きくても、空隙率がある程度小さい場合には、アルミニウム(Al)の浸透性が低下することが判明した。また、(Ti/Al23)体積比の値が小さい場合には、含浸駆動力となるチタン(Ti)粉末の量が少な過ぎるため、得られる複合材料の開気孔率が増大することが判明した。従って、緻密な微構造を有する複合材料を、(Ti/Al23)体積比の値と空隙率との関係を規定することにより、好適に製造可能であることが判明した。
【0106】
(実施例30〜35)
Al23粒子の平均粒径が約47μmであること、チタン(Ti)粉末の平均粒径が約10μmであること、及び混合材料の(Ti/Al23)体積比の値と空隙率を表4に示す値とすること以外は、実施例2〜29と同様の操作により複合材料を製造した(実施例30〜35)。マトリックス組成の分析結果、並びに浸透率、、開気孔率、4点曲げ強度、ヤング率、及び破壊靭性値の測定結果を表4に示す。また、図5〜8に、実施例30の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×100、×500)、実施例34の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×100、×500)を示す。なお、表4における「空隙率」のうち、「含浸前」とは、成形後の成形体厚みより計算される空隙率を意味し、「含浸後」とは、含浸後に得られた複合材料の厚みより計算される実空隙率を意味する。
【0107】
(比較例8、9)
分散材となる平均粒径47μmのAl23粒子を一軸プレス機にて約80MPaの圧力で加圧成形して成形体を作製した。この成形体を大気中で760℃に予熱し、500℃に予熱した金型内に設置した。その後、850℃で溶解した市販の純アルミニウム(Al)(A1050)を金型内に入れ、50MPaの圧力にて加圧含浸させることにより複合材料を製造した(比較例8)。また、比較例9として、Al合金(A5052(Al−2.5%Mg(質量%)))を用意した。得られた複合材料の物理的特性の測定結果を表4に示す。
【0108】
(比較例10、11)
分散材となる平均粒径47μmのAl23粒子と、平均粒径45μmのチタン(Ti)粉末を、(Ti/Al23)体積比の値が1.0となるように配合した後、一軸プレス機にて約100MPaの圧力で加圧成形して、直径34mmφ×6mm、空隙率約30%の成形体を作製した。この成形体を、0.013Pa以下の真空雰囲気下にて、850℃まで加熱して溶融したアルミニウム(Al)合金(A5052)中に浸漬させ、成形体中に溶融アルミニウム(Al)合金を無加圧含浸させることによって複合材料を製造した(比較例10)。また、Al23粒子に代えて、平均粒径約50μmのSiC粒子を分散材とし、(Ti/SiC)体積比の値が1.0となるように配合し、直径34mmφ×7.5mmの空隙率約30%の成形体を作製して用いたこと以外は、前記比較例10の場合と同様の操作により、複合材料を作製した(比較例11)。得られた複合材料の物理的特性の測定結果を表4に示す。なお、図9、10に、比較例10の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×100、×500)を示す。
【0109】
【表4】
Figure 0003834283
【0110】
表4に示す結果から、所定の範囲内で(Ti/Al23)体積比の値を変化させた場合(実施例30〜35)に、浸透率100%の複合材料を製造することができた。しかしながら、(Ti/Al23)体積比の値を0.10と低くした場合には、含浸駆動力となるTi粉末量が減少することから開気孔率の増加が確認された。また、図5〜8に示すように、(Ti/Al23)体積比の値を変化させることで、複合材料のAl23粒子体積率、マトリックス組成(アルミナイド金属間化合物とAl相)を制御可能であることが判明した。これに対し、比較例8の複合材料は、Al23粒子体積率を制御することでのみ、複合材料の特性を制御するものであった。このため、実施例の手法は、比較例8の手法と比較した場合、各相の量比を制御することにより、多様な材料特性制御が可能であった。
【0111】
特に、アルミナイド金属間化合物は、アルミニウム(Al)に比して剛性が高い反面、破壊靭性値が低いものであるが、本発明では、表4に示すように、(Ti/Al23)体積比の値を小さくすることにより、クラック進展時の破壊抵抗として作用し得るアルミニウム(Al)の含有量をマトリックス中に増加させ、破壊靭性値が大幅に向上した複合材料を製造することができた。また、ヤング率に関しても、Al23粒子に加えてマトリックス内にアルミナイド金属間化合物が含まれていることから、比較例8のマトリックスがアルミニウム(Al)のみからなる加圧含浸法により作製した金属基複合材料や、比較例9のアルミニウム(Al)合金と比較して高く、約200GPa前後の値を示すものであった。
【0112】
比較例10、11の複合材料は、分散材とチタン(Ti)粉末とからなる成形体を、溶融したアルミニウム(Al)合金に浸漬してなるものであり、図9に示すような無加圧含浸は可能ではあった。しかし、比較例10の、(Ti/セラミックス)体積比の値が1.0である複合材料の微構造組織(図9)は、よりチタン(Ti)量を低減させている実施例30、34の(Ti/セラミックス)体積比の値が0.53、0.14である複合材料の微構造組織(図5、7)と比較してみても、Al23粒子体積率は低減し、かつ、マトリックス中に含有されるアルミニウム(Al)量が過剰となり、含浸後の粒子体積率とマトリックス組成は、当初目的とした値にはならなかった(表4)。これは、含浸時の発熱に起因して、成形体が押し広げられるように膨張することにより、過剰に溶融アルミニウム(Al)が供給され、空隙率が大きく変化したためであると考えられる。従って、比較例10、11の複合材料は無加圧含浸で製造されたものではあるが、粒子体積率及びマトリックス組成の制御に困難性を伴ったものである。これに対して、実施例30〜35の複合材料は、含浸時に成形体が固定されており、かつ、(Ti/Al23)体積比の値と空隙率とが好適な関係に規定されていたため、所望とする材料組成及び緻密な微構造を有する複合材料である。
【0113】
(実施例36〜62)
表5に示す分散材(セラミックス粒子)と、チタン(Ti)粉末を、(Ti/セラミックス)体積比の値が表5に示す値となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内径50mmφのカーボン製の容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、表5に示す空隙率の成形体とした。次に、内径10mmφの孔を有するカーボン製蓋部材を成形体の上面に載置し、このカーボン製蓋部材を、その外側に配置するカーボン製容器で固定し、その後、孔に溶融したアルミニウム(Al)(A1050)又はアルミニウム(Al)合金(A5052)が流れ込むようにアルミニウム(Al)又はアルミニウム(Al)合金(いずれも固体)を配置した。0.013Pa以下又は13Pa以下の真空雰囲気下にて700℃まで加熱して溶融したアルミニウム(Al)(A1050)又はアルミニウム(Al)合金(A5052)を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例36〜62)。浸透性及び緻密性の評価結果を表5に示す。
【0114】
【表5】
Figure 0003834283
【0115】
表5に示す結果から明らかなように、分散材として、炭化物であるSiC、窒化物であるAlN及びSi34を使用した場合も、複合材料を製造することが可能であった。また、含浸雰囲気を、粗引き状態となるRP(ロータリーポンプ)で排気したレベルの低真空(13Pa以下)とした場合においても良好に含浸した。また、アルミニウム(Al)合金を使用した場合には、(Ti/セラミックス)体積比の値が低く、かつ、アルミニウム(Al)及びチタン(Ti)の酸化が懸念される低真空(13Pa以下)においても、緻密な微構造を有する複合材料を製造することができた。これは、アルミニウム(Al)合金に含まれるマグネシウム(Mg)が、アルミニウム(Al)表面に生じる酸化膜を還元する効果を示したためであると考えられる。
【0116】
(実施例63〜69)
平均粒径が約47μmのAl23粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び溶融含浸させるアルミニウム(Al)(A1050)を使用し、(Ti/Al23)体積比の値、及び混合材料(成形体)の空隙率を表6に示す値として、実施例2〜29と同様の操作により、複合材料を製造した(実施例63〜69)。なお、溶融含浸させるアルミニウム(Al)の最大浸透距離を100mm、孔の内径を20mmとした。浸透率の測定結果を表6に示す。
【0117】
【表6】
Figure 0003834283
【0118】
表6に示す結果から明らかなように、特に(Ti/Al23)体積比の値が小さい場合には、浸透率が向上することが判明した。また、(Ti/Al23)体積比の値が大きい場合には空隙率を増加させることが、(Ti/Al23)体積比の値が小さい場合には空隙率を低下させることが、浸透率の向上させるために効果的であることが判明した。
【0119】
(実施例70〜73、比較例12、13)
平均粒径が約47μmのAl23粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び溶融含浸させるアルミニウム(Al)(A1050)を使用し、(Ti/Al23)体積比の値を0.27、混合材料(成形体)の空隙率を48%として、実施例2〜29と同様の操作により、複合材料を製造した(実施例70〜73)。なお、溶融含浸させるアルミニウム(Al)の最大浸透距離は100mmに固定した。浸透性の評価結果を表7に示す。なお、表7における「浸透性評価」は、得られた複合材料を切断し、その断面を研磨した後、光学顕微鏡及びSEM観察を行い、混合材料中において浸透が一律に進行しているか否かを観察して評価した結果である。
【0120】
【表7】
Figure 0003834283
【0121】
表7に示す結果から明らかなように、X/Yを0.08〜0.4とした場合には、未含浸部が発生することはなかったが、X/Yを0.08未満とした場合には、未含浸部が発生した。また、X/Yを0.4超とした場合には、得られた複合材料の緻密性が低下することが判明した。
【0122】
(実施例74)
平均粒径が約47μmのAl23粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び溶融含浸させるアルミニウム(Al)合金(A5052)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl23粒子を、(Ti/Al23)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内径100mmφのカーボン製の容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、厚み30mm、空隙率48.1%の成形体とした。次に、7個の孔(20mmφ)を有する高密度カーボンからなる蓋部材を成形体の上面に載置し、これらの孔に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにアルミニウム(Al)合金を配置した。0.013Pa以下の真空雰囲気下にて800℃まで加熱して溶融したアルミニウム(Al)合金を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例74)。
【0123】
得られた複合材料を切断し、その断面を研磨した後、光学顕微鏡及びSEM観察を行い確認を行ったところ、気孔が確認されず、また混合材料中における浸透性も非常に良好であった。このため、一つの孔だけでなく複数の孔を通じてアルミニウム(Al)の含浸を行った場合においても良好な複合材料が得られることが確認された。
【0124】
(実施例75)
成形体に接触する孔の内側下部に混合材料を追加充填すること以外は、実施例1と同様の操作により複合材料を製造した(実施例75)。この結果、孔の直下に相当する箇所にアルミニウム(Al)が過剰に含浸された不均一組織が形成されることなく、より組織的に均質である複合材料を製造することができた。
【0125】
(実施例76〜79)
平均粒径が約47μmのAl23粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び溶融含浸させるアルミニウム(Al)合金(A5052)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl23粒子を、(Ti/Al23)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、図11に示すような、その内部寸法が、長さ100mm×幅100mmの、その内壁に高密度カーボンからなるカーボン材22が設置された、SUS316製の金型容器30に混合材料を充填した。その後、前記形状に沿う形で圧縮成形を行い、厚み30mm、空隙率48.1%の成形体とした。次に、7個の孔(20mmφ)及び4個の孔(10mmφ)を有する高密度カーボンからなる蓋部材を成形体の上面に載置し、これらの孔に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにアルミニウム(Al)合金を配置した。0.013Pa以下の真空雰囲気下にて800℃まで加熱して溶融したアルミニウム(Al)合金を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例76)。また、(Ti/Al23)体積比の値を0.18、0.40、又は0.53とすること以外は、実施例76と同様の操作により複合材料を製造した(実施例77〜79)。この結果、製造された複合材料は、SUS316製の金型容器30を分解した後、カーボン材22から容易に外れ、反応容器からの離型性に極めて優れていることが判明した。
【0126】
(実施例80)
図12に示すような、長さ100mm×幅100mm、底部の形状が凹凸形状である、その内壁に高密度カーボンからなるカーボン材22が設置された金型容器30を使用すること以外は、実施例78と同様の操作により複合材料を製造した(実施例80)。この結果、反応容器からの離型性に優れた、複雑形状を有する複合材料を製造することができた。
【0127】
(実施例81)
平均粒径が約47μmのAl23粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び溶融含浸させるアルミニウム(Al)合金(A5052)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl23粒子を、(Ti/Al23)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内径300mmφの、内壁に高密度カーボンを設置したSUS316製金型容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、厚み30mm、空隙率48.1%の成形体とした。次に、61個の孔(20mmφ)及び12個の孔(15mmφ)を有する高密度カーボンからなる蓋部材を成形体の上面に載置して、外周部の容器にて圧粉体を固定させた構造とし、これらの孔に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにアルミニウム(Al)合金を配置した。1.3Pa以下の真空雰囲気下、600℃、1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したアルミニウム(Al)合金を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して、大型の複合材料を製造した(実施例81)。
【0128】
得られた300mmφ×30mmの複合材料を任意に切断し、各切断面を観察したところ、概ね良好に複合材料化されており、切断されたいずれの部分においても顕著な気孔は確認されなかった。従って、本発明によれば、高圧を要する従来の製造プロセスでは困難であった大型の複合材料が、無加圧含浸で製造可能であることを確認することができた。
【0129】
(実施例82)
図4に示すような、低応力で破壊し易い材料であるポーラスカーボンからなる環状部材15によって形成された孔10を有する、カーボンからなる蓋部材(容器要素1b)を用いること以外は、実施例81と同様の操作により、複合材料を製造した(実施例82)。
【0130】
この結果、アルミニウム(Al)溶融含浸後の徐冷時に、孔の内側に残留して収縮抵抗となったアルミニウム(Al)が、複合材料の熱収縮によって環状部材15を破壊したため、得られた複合材料の孔の直下に相当する箇所にクラックが生じるような不具合が発生することがなかった。
【0131】
(実施例83)
図13に示すような、その内部寸法が、長さ100mm×幅100mm×深さ60mmであり、その上部に複数の孔10と、その側部に反応容器1の上方から下方へと傾斜するスロープ状の湯道23及び湯道23に連通した複数個の第2の孔20を有する反応容器1を使用すること以外は、実施例76と同様の操作により複合材料を製造した(実施例83)。この結果、肉厚でありながらも、その端部まで緻密な微構造を有する複合材料を製造することができた。
【0132】
(実施例84)
図14に示すような、屈曲した複雑な内部形状を有する反応容器1を使用すること以外は、実施例76と同様の操作により複合材料を製造した(実施例84)。この結果、複雑形状を有する複合材料5を製造することができた。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の複合材料は、所定の金属粉末と分散材とを含む混合材料を、所定の反応容器の中に充填し、これを固定した状態で所定の孔を経由して混合材料内部の空隙にアルミニウム(Al)を溶融含浸させ、マトリックス中に分散材を分散させてなるものであるため、簡便に緻密な微構造が形成されてなるものであるとともに、製造コストの低減がなされているものである。
【0134】
また、本発明の複合材料の製造方法によれば、所定の金属粉末と分散材とを含む混合材料を、所定の反応容器の中に充填し、これを固定した状態で所定の孔を経由して混合材料内部の空隙にアルミニウム(Al)を溶融含浸させ、マトリックス中に分散材を分散させてなる複合材料を製造するため、製造工程が削減されているとともに、所望とする最終形状、特に大型・複雑形状とすることが可能であり、かつ、緻密な微構造を有する複合材料を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複合材料の製造方法の一例を説明する模式図である。
【図2】 従来の複合材料の製造方法の一例を説明する模式図である。
【図3】 本発明の複合材料の製造方法の別の例を説明する模式図である。
【図4】 本発明の複合材料の製造方法の、更に別の例を説明する模式図である。
【図5】 実施例30の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×100)である。
【図6】 実施例30の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×500)である。
【図7】 実施例34の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×100)である。
【図8】 実施例34の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×500)である。
【図9】 比較例10の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×100)である。
【図10】 比較例10の複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×500)である。
【図11】 本発明の複合材料の製造方法の、更に別の例を説明する模式図である。
【図12】 本発明の複合材料の製造方法の、更に別の例を説明する模式図である。
【図13】 本発明の複合材料の製造方法の、更に別の例を説明する模式図である。
【図14】 本発明の複合材料の製造方法の、更に別の例を説明する模式図である。
【符号の説明】
1a,1b…容器要素、1…反応容器、2…混合材料、3…空隙、4…アルミニウム(Al)、5…複合材料、6…マトリックス、7…分散材、8…ネジ部、10…孔、15…環状部材、20…第2の孔、21…外挿体、22…カーボン材、23…湯道、24…固定用ボルト、25…空間形成領域、30…金型容器。

Claims (23)

  1. 反応容器の中に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と分散材とを含む混合材料を充填するとともに、前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させて、マトリックス中に分散材を分散させてなる複合材料であって、
    前記反応容器として、二以上の容器要素からなり、前記容器要素が合体することによって前記混合材料が充填される空間を形成するように構成された反応容器を用い、前記混合材料を一以上の前記容器要素の前記空間を形成する領域内に充填するとともに、
    一以上の前記容器要素を、前記領域内に充填された前記混合材料を所定の形状に固定した状態で合体させ、前記反応容器の上部に形成された一以上の孔を経由して前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させ、前記金属粉末と前記アルミニウム(Al)との自己燃焼反応によってアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記マトリックス中に前記分散材を分散させてなる、その開気孔率が1.0%未満であることを特徴とする複合材料。
  2. 前記マトリックスに含まれる前記アルミニウム(Al)の、前記マトリックスの全体に対する割合が、60質量%以下である請求項1に記載の複合材料。
  3. 前記金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末である請求項1又は2に記載の複合材料。
  4. 前記孔の内側の下部に前記混合材料が充填された請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  5. 溶融含浸された前記アルミニウム(Al)の、前記孔の端部から前記反応容器内に充填された前記混合材料の最端部までの距離(Y)に対する、前記孔の内径(X)の比の値(X/Y)が、0.06〜0.5である請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  6. 前記分散材の、前記複合材料全体に占める比率が、10〜70体積%である請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  7. 前記分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料である請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  8. 前記無機材料が、Al23、AlN、SiC、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種である請求項に記載の複合材料。
  9. その形状により下記の定義に従って規定される平均粒径10〜150μmの前記分散材の、前記平均粒径に対する、前記金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%である請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
    (定義):前記分散材の形状が粒子状である場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、平均粒径10〜150μmの粒子のことをいい、
    前記分散材の形状が繊維又はウィスカーである場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、「長さ/径」の比が150未満であるとともに「径」が0.1〜30μm、又は、「長さ/径」の比が150以上であるとともに「径」が0.5〜500μmである繊維又はウィスカーのことをいう。
  10. 反応容器の中に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と分散材とを含む混合材料を充填するとともに、前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させて、マトリックス中に分散材を分散させた複合材料を製造する方法であって、
    前記反応容器として、二以上の容器要素からなり、前記容器要素が合体することによって前記混合材料が充填される空間を形成するように構成された反応容器を用い、前記混合材料を一以上の前記容器要素の前記空間を形成する領域内に充填するとともに、
    一以上の前記容器要素を、前記領域内に充填された前記混合材料を所定の形状に固定した状態で合体させ、前記反応容器の上部に形成された一以上の孔を経由して前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させ、前記金属粉末と前記アルミニウム(Al)との自己燃焼反応によってアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記マトリックス中に前記分散材を分散させてなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法。
  11. 前記金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末である請求項10に記載の複合材料の製造方法。
  12. 前記金属粉末がチタン(Ti)粉末である場合に、
    溶融含浸させる前記アルミニウム(Al)と前記チタン(Ti)粉末の質量比(Al:Ti)が、1:0.17〜1:0.57である請求項10又は11に記載の複合材料の製造方法。
  13. 前記金属粉末がニッケル(Ni)粉末である場合に、
    溶融含浸させる前記アルミニウム(Al)と、前記ニッケル(Ni)粉末の質量比(Al:Ni)が、1:0.20〜1:0.72である請求項10又は11に記載の複合材料の製造方法。
  14. 前記金属粉末がニオブ(Nb)粉末である場合に、
    溶融含浸させる前記アルミニウム(Al)と、前記ニオブ(Nb)粉末の質量比(Al:Nb)が、1:0.27〜1:1.13である請求項10又は11に記載の複合材料の製造方法。
  15. 前記混合材料を、前記孔の内側の下部に充填する請求項1014のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  16. 溶融含浸させる前記アルミニウム(Al)の、前記孔の端部から前記反応容器内に充填された前記混合材料の最端部までの距離(Y)に対する、前記孔の内径(X)の比の値(X/Y)が、0.06〜0.5である請求項1015のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  17. 前記分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料である請求項1016のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  18. 前記無機材料が、Al23、AlN、SiC、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種である請求項17に記載の複合材料の製造方法。
  19. その形状により下記の定義に従って規定される平均粒径10〜150μmの前記分散材の、前記平均粒径に対する、前記金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%である請求項1018のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
    (定義):前記分散材の形状が粒子状である場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、平均粒径10〜150μmの粒子のことをいい、
    前記分散材の形状が繊維又はウィスカーである場合における平均粒径10〜150μmの分散材とは、「長さ/径」の比が150未満であるとともに「径」が0.1〜30μm、又は、「長さ/径」の比が150以上であるとともに「径」が0.5〜500μmである繊維又はウィスカーのことをいう。
  20. 前記反応容器が、少なくともその内壁がカーボン材により構成されてなるものである請求項1019のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  21. 前記反応容器が、その側部に、前記反応容器の上方から下方へと傾斜するスロープ状の湯道と、前記湯道に連通した一以上の第2の孔を更に有し、前記孔と前記第2の孔を各々独立に経由して、前記混合材料内部の空隙中に前記アルミニウム(Al)を溶融含浸させる請求項1020のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  22. 前記金属粉末がチタン(Ti)粉末、前記分散材がAlN、Si、及びSi34からなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスからなる粒子である場合に、
    前記セラミックスからなる粒子の体積に対する、前記チタン(Ti)粉末の体積の比の値(Ti/セラミックス)と、前記反応容器の前記空間の容積に対する、前記空隙の割合(空隙率(%))とが、下記(1)〜(6)に示すいずれかの関係を満たす請求項1021のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
    (1)0.1≦(Ti/セラミックス)<0.14、25≦空隙率(%)≦60
    (2)0.14≦(Ti/セラミックス)<0.27、25≦空隙率(%)≦70
    (3)0.27≦(Ti/セラミックス)<0.53、25≦空隙率(%)≦75
    (4)0.53≦(Ti/セラミックス)<1、30≦空隙率(%)≦75
    (5)1≦(Ti/セラミックス)<1.4、45≦空隙率(%)≦80
    (6)1.4≦(Ti/セラミックス)≦2、50≦空隙率(%)≦80
  23. 前記金属粉末がチタン(Ti)粉末、前記分散材がAl23粒子である場合に、
    前記Al23粒子の体積に対する、前記チタン(Ti)粉末の体積の比の値(Ti/Al23)と、前記反応容器の前記空間の容積に対する、前記空隙の割合(空隙率(%))とが、下記(7)〜(12)に示すいずれかの関係を満たす請求項1021のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
    (7)0.1≦(Ti/Al23)<0.14、25≦空隙率(%)≦60
    (8)0.14≦(Ti/Al23)<0.27、25≦空隙率(%)≦70
    (9)0.27≦(Ti/Al23)<0.53、25≦空隙率(%)≦75
    (10)0.53≦(Ti/Al23)<1、30≦空隙率(%)≦75
    (11)1≦(Ti/Al23)<1.4、45≦空隙率(%)≦80
    (12)1.4≦(Ti/Al23)≦2、50≦空隙率(%)≦80
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