JP2004332056A - 複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を提供する。
【解決手段】アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料5である。第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス36中に第一の分散材37が分散してなる第一の複合組織12(第一組織13)と、第一の複合組織12と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織15、金属組織16、及びセラミックス組織17からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織14)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなるものである。
【選択図】 図1
【解決手段】アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料5である。第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス36中に第一の分散材37が分散してなる第一の複合組織12(第一組織13)と、第一の複合組織12と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織15、金属組織16、及びセラミックス組織17からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織14)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなるものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料、及びその製造方法に関し、更に詳しくは、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有する複合材料、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】複合材料とは、複数素材を巨視的に混合した組成集合体であり、各素材の持つ機械特性を相補的に利用して、単独素材では実現できなかった特性発現を可能にしたものである。基本的には、材料と材料を組み合わせる技術手法であり、マトリックスと強化材(分散材)、使用目的、又はコスト等により、種々の組み合わせが存在する。
【0003】その中でも金属基複合材料(MMCs:Metal−Matrix−Composites)は、セラミックスを強化材として金属材料(Al、Ti、Cu、Si等)を複合化することによる、セラミックスと金属と両方の特性を兼ね備えた材料である。そのため、例えば近年、環境問題に関連した自動車関連分野や、各種装置部材(半導体、ディスプレイ、精密機械等)の軽量化・高速化・高効率化が求められている製造装置関連分野や、半導体素子の冷却(放熱)を行う電子部品関連分野等において、金属基複合材料に対して非常に注目されているものである。また、金属間化合物基複合材料(IMCs:Intermetallic−Matrix−Composites)は、セラミックスを強化材として金属間化合物(Ti−Al系、Ni−Al系等)を複合化することにより、特に金属材料では実現が困難な温度域での耐熱材料として発電・宇宙・航空分野等において注目されている材料である。これらのことから、両複合材料共に、セラミックス材料や金属材料では素材として適用が難しい分野において、分散相とマトリックス相の種類・相比等を変化させることにより所望とする材料特性をオーダーメイド可能な材料として多方面での展開が期待されている。
【0004】金属間化合物基複合材料の製造方法としては、予め金属間化合物粉末をメカニカルアロイング(MA)等にて製造し、強化材となる繊維及び/又は粒子等とともに、高温・高圧条件下においてホットプレス(HP)若しくは熱間等方圧成形(HIP)する方法が挙げられる。
【0005】金属間化合物基複合材料を製造する従来の製造方法における問題点として、緻密な金属間化合物基複合材料の製造を行うためには、主として粉末冶金的なHP法及びHIP法等の製造方法によって高温・高圧を負荷し、金属間化合物を焼結することで複合材料の緻密化を行う必要性があることを挙げることができる。このため、前処理工程の必要性があるだけでなく、製造装置の性能や規模に制約があり、大型、或いは複雑形状の複合材料の製造が極めて困難であるとともに、最終製品の形状を考慮したニアネットシェイプ化を行うことができず、その後の工程において機械加工処理が必要となるといった問題点をも有している。
【0006】また、前処理工程として、予めMA等による金属間化合物粉末の合成が必要であり、製造工程の多段階・煩雑化といった問題点を有している。従って、上述のように、従来の金属間化合物基複合材料の製造においては多段階に渡る工程が必要であるとともに、高温・高圧条件下において行う製造方法であるために極めて高コスト・高エネルギーな製造方法である。
【0007】また、金属基複合材料の製造方法としても、固相法であるHP法やHIP法等のような、シート状又は箔状の金属と、繊維状又は粒子状のセラミックスとを高圧にて拡散接合する手法や、金属粉末を利用する、前述の粉末冶金的な手法が一般に知られている。更に、液相法としては、濡れ性が良好ではないセラミックスと溶融金属との組み合わせを考慮し、高圧を付与する等、機械的なエネルギーを利用して強制的に複合材料化させる加圧含浸法や溶湯鍛造法等が知られているが、固相法、液相法、ともに高温・高圧を必要とするプロセスである。また、複合材料化された製品は、どれも平板や円板等の簡易的な形状であり、最終製品にまで仕上げるためには塑性加工処理や機械加工処理が必要となるが、セラミックス相を含んでいるため、加工コストが高く、極めて高コストな製造方法である。
【0008】このような問題を解消するための関連技術、特に複合材料の低コスト化を目的として、従来の高圧法による合成プロセスではなく圧力を必要としない金属基複合材料の製造方法が開示されている。具体的には、溶融金属を無加圧含浸させる液相法として、窒素ガス雰囲気中でマグネシウム(Mg)を揮発させ、気相反応によりMg3N2をセラミックス粒子表面にin−situ(その場)生成させることによりセラミックスと金属との濡れ性を向上させ、毛細管圧力によってセラミックス多孔体に溶融アルミニウム(Al)を無加圧浸透させる手法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、この手法によれば、気相反応によりセラミックス粒子表面にMg3N2をin−situ(その場)コーティングすることから含浸速度が非常に遅く、また無加圧浸透させる雰囲気調整に時間を要することから、製品製造を行う上で非常に長時間を要するといった問題がある。さらには、予めセラミックス粒子を高温で仮焼すること等によってセラミックス多孔体を合成する必要があるため、複合材料の低コスト化が図れないといった問題がある。
【0009】また、他の手法として微細片の形態をなす強化材(分散材)と、酸素及び窒素のゲッター効果を有するチタン(Ti)等の微細片からなる成形体を形成し、これをアルミニウム(Al)等の溶湯中に浸漬することで、アルミニウム(Al)等の金属をマトリックスとする金属基複合材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】しかしながら、前記製造方法によれば、得られる複合材料は金属間化合物をできる限り含有しない金属をマトリックスとする金属基複合材料に限定される。更に、チタン(Ti)−アルミニウム(Al)間での発熱反応に起因して成形体(試料)が膨張するため、成形体を溶湯中に浸漬すると強化材体積率が低下してしまい、強化材体積率がより高い複合材料を製造することが困難であり、より高強度であるといった、材料特性を制御した複合材料を製造することが困難であるという問題があった。
【0011】上述してきた種々の問題を解消するための関連技術として、所定の強化材に混合した金属粉末とアルミニウム(Al)溶湯による自己燃焼反応を生起させる金属間化合物基複合材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この製造方法によれば、図2に示すように、容器1内に充填された分散材と金属粉末からなる混合材料2の間隙3にアルミニウム(Al)を含む金属(Al含有金属4)を溶融含浸させることにより、自己燃焼反応をin−situ(その場)で生起させて、マトリックス6中に分散材7が分散した複合材料5を製造するために、低温、かつ、無加圧条件下で高融点である金属間化合物基複合材料等の複合材料5を、非常に短時間で完結する含浸プロセスにより最終製品形状を模擬したニアネットシェイプ化を達成することができ、従来法と比較して格段にエネルギー量が少なく、製造コストが低減された複合材料の製造方法であるといえる。
【0012】しかしながら、元素間の自己燃焼反応(代表的には燃焼合成反応(SHS反応))を利用した前記製造方法に類似する材料合成プロセスは、発生する非常に大きな反応熱を自由に制御できない点から、セラミックスや高融点化合物の粉末合成(例えば、アルミニウム(Al)や珪素(Si)を出発原料とした窒素ガス雰囲気中でのAlN及びSi3N4粉末の合成プロセス(直接窒化法)等)には利用されているのに対して、バルク体製造の場合においては発熱反応に伴う気孔生成に起因して、得られるバルク体に緻密性を付与することが非常に困難であることが知られており、前記製造方法においても高い緻密性を有する複合材料の合成が困難であり、その気孔に起因した機械的特性(例えば、曲げ強度やヤング率等)の低下が問題となっていた。そのため、前記製造方法により得られる複合材料よりも、気孔が少ない更に緻密な微構造を有する複合材料を製造する方法を創出することが産業界から要望されていた。
【0013】また、特に金属基複合材料の製造方法である加圧含浸法や溶湯鍛造法等も近年頻繁に検討され、部材の大型化が進行しているが、基本的に濡れ性の乏しいセラミックス多孔質体に溶融金属を強制的に機械的エネルギーを負荷して複合材料化するために、押湯圧として数十MPa〜百MPaの圧力が必要となり、設備的な限界がある。このため、部材の大型化(加圧面の大面積化)に伴い加圧圧力が増加し、加圧装置や高耐圧性金型等の設備コスト面においても問題がある。
【0014】また、特許文献4に記載の複合材料の製造方法によっては、その最終形状(製品形状)が大型・複雑である複合材料を得るには困難な場合もある。更には、得られる複合材料は、分散材からなるセラミックス相と金属間化合物相とを含んでなるものであるため、一般的な金属材料と比較して高強度である反面、破壊靭性値が低く、また、難加工性であるといった問題があった。また、特許文献4に記載の複合材料の製造方法は、低コスト化を実現する無加圧含浸プロセスであるという特徴を有するものの、無加圧含浸可能な含浸距離にはある程度の限界値が存在し、そのため部材の肉厚化、複雑形状化、大型化には更なる技術的改良が求められていた。
【0015】
【特許文献1】
特開平1−273659号公報
【特許文献2】
特開平2−240227号公報
【特許文献3】
特許第3107563号公報
【特許文献4】
特開2002−47519号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料、及びその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料であって、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記第一の複合組織と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなることを特徴とする複合材料が提供される。
【0018】本発明においては、第二組織が、第二の複合組織からなる場合に、第一のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第一のマトリックスの全体に対する含有割合と、第二のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第二のマトリックスの全体に対する含有割合とが、異なった値であることが好ましい。
【0019】本発明においては、第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましく、第二組織が、第二の複合組織からなる場合に、第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。また、無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】本発明においては、第一の分散材の、前記第一の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、第二組織が、第二の複合組織からなる場合に、第二の分散材の、第二の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましい。
【0021】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)により構成された部材を配設した状態で、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を、前記容器内に充填された前記混合材料に対応する部分に前記孔が配されるように載置し、前記孔を経由して、アルミニウム(Al)を含む金属を前記混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて、前記金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に前記第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記第二組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0022】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる成形体を配設し、アルミニウム(Al)を含む金属を前記成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、前記金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に前記第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0023】本発明においては、金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末であることが好ましい。
【0024】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる複合組織(第一組織)により構成された部材を配設した状態で、前記容器内にアルミニウム(Al)を含む金属を注湯することにより、前記第一組織と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0025】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)により構成された部材と、アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯とを配設した状態で、前記アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯に圧力を負荷して、前記容器内に前記アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯を充填させることにより、前記第一組織と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0026】本発明においては、容器内に、第二の複合組織からなる組織により構成された部材を配設する場合に、第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。
【0027】本発明においては、第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。
【0028】本発明においては、無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施形態に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0030】本発明の複合材料は、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含むものであり、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、第一の複合組織と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなることを特徴とするものである。
【0031】また、本発明の複合材料の製造方法の一実施形態は、容器内に、第二組織により構成された部材を配設した状態で、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を、容器内に充填された混合材料に対応する部分に孔が配されるように載置し、孔を経由して、アルミニウム(Al)を含む金属を混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて、金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前述の複合材料を得ることを特徴とする。以下、詳細について説明する。
【0032】図1は、本発明の複合材料の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。本発明の実施形態である複合材料5を製造するに際しては、先ず適当なサイズ及び形状の容器1内に、第二組織により構成された部材30を配置する。この第二組織は、▲1▼第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、▲2▼金属組織、及び▲3▼セラミックス組織、からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織である。次に、容器1内に配置された第二組織により構成された部材30(第二の複合組織により構成された部材31、金属組織により構成された部材32、セラミックス組織により構成された部材33)の周囲に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材を混合してなる混合材料2を充填する。なお、第二の複合組織により構成された部材31を用いる場合において、この第二の複合組織の構成要素である第二の分散材と、前述の第一の分散材とは、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0033】次いで、所定の孔10(含浸口)を有する蓋体11を、その孔10が容器1内に充填された混合材料2に対応する部分に配される状態で載置して、混合材料2を所定の形状に固定する。このとき、孔10の個数に特に制限はなく、複合材料5の形状・サイズ等に応じて複数形成されていることが好ましい。その後、容器1内に充填された混合材料2の空隙3に、孔10を経由してAl含有金属4を溶融含浸させる。なお、図1中、符号9は蓋部材、符号21は外挿体を示すものであり、以降、同一の符号は同一の部分を示すものとする。
【0034】空隙3中に溶融含浸されたAl含有金属4は、混合材料2を構成する金属粉末(図示せず)と接触して自己燃焼反応を生起し、Al含有金属4は第一のアルミナイド金属間化合物に置換される。この結果、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス36に第一の分散材37が分散してなる第一の複合組織12(第一組織13)が形成される。予め容器1内に配置されていた第二組織により構成された部材30は、新たに形成された第一組織13内に鋳ぐるまれた状態でそのまま残るため、第一組織13と第二組織14(第二の複合組織15、金属組織16、セラミックス組織17)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、本発明の実施形態である複合材料5を製造することができる。
【0035】また、本実施形態においては図1に示すように、一以上の孔10を有する蓋体11を混合材料2の上面に載置するため、容器1内に充填された混合材料2は所定形状となるように固定されており、Al含有金属4が含浸されても混合材料2の所定形状は維持される。更に、混合材料2をこのように固定することにより、空隙3の細部にまでAl含有金属4が含浸され易くなるため、より緻密で開気孔率が低減された第一組織13とすることができ、得られる複合材料5に反り等の不具合が発生し難い。なお、混合材料2を所定形状となるように固定するためには、例えばネジ部8を容器1に設ける等の手段を挙げることができ、このことにより、所望とする適度な圧力が混合材料2に対して付与されるように微調整することができる。但し、混合材料2を固定するための手段は、図1に示した態様に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0036】本実施形態の複合材料5を構成する第二組織14が金属組織16である場合には、本実施形態の複合材料5は、金属組織16の部分においてこの金属組織16を構成する金属の有する物理的特性に基づいて種々の特性を示す。即ち、金属組織16を構成する金属として、所望とする強度や破壊靭性値等の物性値、又は加工容易性等の特性を備えた金属を適宜選択して採用することにより、この金属組織16が組み込まれた部分においては高破壊靭性、加工容易性等の金属材料特有の物理的特性を示すとともに、第一の複合組織12の部分においては一般的な金属材料と比較して高強度であるという物理的特性を示す複合材料5とすることができる。
【0037】なお、金属組織16を構成する金属として、アルミニウム(Al)と脆性的な金属間化合物を形成し易い金属を使用すると、第一組織13と第二組織14との界面部分において強度低下に伴う加工不具合や変形等が発生する恐れがある。従って、本実施形態においては、金属組織16を構成する金属が、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、Cr、Mo、W、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの金属のうち、特にCu、及びFe系の金属は、金属間化合物の形成速度が早い点から界面反応層の成長速度に留意することが必要である。また、混合材料2を構成する金属粉末と同種の金属を用いることも、界面反応層が、得られる複合材料5のマトリックス6を構成する金属間化合物と同種となるために好ましい。具体的には、混合材料2を構成する金属粉末としてTi粉末を用いる場合には、金属組織16を構成する金属としてTi系合金が好適に用いられる。
【0038】また、本実施形態の複合材料5を構成する第二組織14がセラミックス組織17である場合には、本実施形態の複合材料5は、セラミックス組織17の部分においてこのセラミックス組織17を構成するセラミックスの有する物理的特性に基づいて種々の特性を示す。即ち、セラミックス組織17を構成するセラミックスとして、所望とする軽量、高強度、高剛性、耐熱性等のセラミックス材料特有の物理的特性を示すとともに、第一の複合組織12の部分においては一般的なセラミックス材料と比較して高強度であるという物理的特性を示す複合材料5とすることができる。セラミックス組織を構成するセラミックスとしては、形成される第一組織との熱膨張係数(9〜13ppm/K程度(例えば、分散材がアルミナ(Al2O3)である場合))のミスマッチを回避すべく、比較的その値が近い(8〜13ppm/K程度)ものが好ましい。具体的にはジルコニア、チタニア、フェライト、スピネル、マグネシア、若しくはアルミナ、又はこれらの複数を組み合わせて用いることが好ましい。これは、セラミックス組織を形成するセラミックスと第一組織(複合組織)との熱膨張係数の差が大きい場合に、残留応力がセラミックス組織側に発生しクラックが発生する問題が生じ易いからである。なお、本実施形態の複合材料5を構成する第二組織14が第二の複合組織15である場合における、本実施形態の複合材料5の特性については後述する。
【0039】本実施形態の複合材料5の第二組織14を構成する組織は、上記各組織(第二の複合組織15、金属組織16、セラミックス組織17)の単独でもよく、これらの複数を組み合わせたものでもよい。即ち、本実施形態の複合材料5は、用途に応じた種々の機械的特性を有する部分が、所望とする箇所に組み込まれてなるものである。
【0040】次に、本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態の複合材料の製造方法は、容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる成形体を配設し、Al含有金属を成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、第一組織と、Al含有金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする。以下、その詳細について説明する。
【0041】図8に示すように、本実施形態では、先ず所望とする製品形状に対応する形状の容器1内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる、所定形状を有する成形体61を配設する。成形体61は、容器1内に混合材料を入れた後に、適当な圧力を負荷して作製することができ、また、予めプレス機等を用いて混合材料2に圧力を負荷して作製しておき、これを配設してもよい。なお、容器1の少なくともその内壁に、離型材(BNコート等)が塗布されているか、又は容器1の内壁がカーボン材(カーボンシート、若しくはカーボン板60)により構成されていることが、得られる複合材料を離型し易い点において好ましい。このことについては後述する。
【0042】次いで、容器1内に配設された成形体61の空隙にAl含有金属4を溶融含浸させるが、このとき、本実施形態では加圧条件下に溶融含浸させる。成形体61には所定の金属粉末が含まれているため、この金属粉末と、含浸されたAl含有金属4とが接触することにより自己燃焼反応が生起される。Al含有金属4は第一のアルミナイド金属間化合物に置換され、この結果、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織13)と、Al含有金属からなる組織(金属組織16)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料5を製造することができる。
【0043】本実施形態においては、前述の自己燃焼反応がAl含有金属4の含浸駆動力となるため、前述の加圧条件は、従来の加圧含浸法等を実施するに際して必要とされていた高圧を負荷する必要はない。従って、特殊な加圧装置や高耐圧性金型等の設備が必要とされることはないため、本実施形態の複合材料の製造方法は、より大型・複雑形状を有する複合材料であっても簡便に製造することができるとともに、設備コスト面においても優れている。
【0044】Al含有金属を加圧含浸させるに際して負荷する含浸圧力は、前述の如く、加圧含浸法等を実施するに際して必要とされていた程の高圧である必要はない。具体的には、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることが更に好ましく、3MPa以下であることが特に好ましい。なお、含浸圧力の負荷は適当な圧力負荷手段、例えば、ピストン部55を用いて実施すればよいが、本発明においてはこのような圧力負荷手段に限定されるものではない。また、本発明において、Al含有金属を加圧含浸させるに際して負荷する含浸圧力の下限値については特に限定されないが、概ね0.05MPa以上であればよい。
【0045】本発明において用いることのできる金属粉末は、溶融状態のアルミニウム(Al)(アルミニウム(Al)溶湯)と接触することにより自己燃焼反応を生起し、アルミナイド金属間化合物を形成するものである。具体的にはチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末を用いることができる。これらの金属粉末は反応性が良好であるとともに、安定なアルミナイド金属間化合物を形成するために好ましい。これら金属粉末を用いた場合の反応の代表例を下記式(1)〜(3)に示す。下記式(1)〜(3)において示す通り、これらの反応は発熱反応(自己燃焼反応)であり、本発明においてはこの反応熱を利用する。
【0046】
【数1】
3Al+Ti→Al3Ti : ΔH298=−146kJ/mol …(1)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0047】
【数2】
3Al+Ni→Al3Ni : ΔH298=−150kJ/mol …(2)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0048】
【数3】
3Al+Nb→Al3Nb : ΔH298=−160kJ/mol …(3)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0049】本発明において、容器内に配置される第二組織により構成された部材として、第二の複合組織により構成された部材を用いる場合に、この第二の複合組織により構成された部材は、例えばこれまで述べてきた第一の複合組織の形成方法に準ずる方法により製造することができる。即ち、適当なサイズ及び形状の容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る所定の金属粉末と第二の分散材とを混合してなる混合材料を充填し、充填された混合材料の空隙にAl含有金属を溶融含浸させることにより、Al含有金属と接触した金属粉末が自己燃焼反応を生起し、Al含有金属が第二のアルミナイド金属間化合物に置換されて、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックスに第二の分散材が分散してなる第二の複合組織により構成された部材を得ることができる。なお、第二の発明において好適に用いることのできる、第二の複合組織により構成された部材は、このような方法により得られたものに限定されるものではない。
【0050】本発明においては、Al含有金属を加圧下に含浸する条件以外の含浸条件下において、第一の分散材の平均粒径に対する、金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%であることが好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。金属粉末の平均粒径が第一の分散材の平均粒径の5%未満である場合には、金属粉末自体の入手が困難及び粉塵爆発の危険性が伴なってくる点から取り扱いが不便となり、80%超である場合には、自己燃焼反応の活性度が十分に高められず、複合材料の緻密化をなし得ないためである。具体的には、平均粒径50μmの第一の分散材に対しては平均粒径2〜40μmの金属粉末を用いることが好ましく、5〜30μmの金属粉末を用いることが更に好ましい。
【0051】本発明においては、第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。これらの形状を有する無機材料を用いることにより、最終製品としての使用用途に沿った強度や特徴を有する複合材料を製造することができる。
【0052】また、本発明においては、第二組織が第二の複合組織からなる場合における第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。これらの形状を有する無機材料を用いることにより、最終製品としての使用用途に沿った強度や特徴を有する複合材料を製造することができる。
【0053】なお、本発明において「平均粒径10〜150μmの第一の分散材」というときは、第一の分散材の形状が粒子状の場合にあっては、「平均粒径10〜150μmの粒子」のことをいい、また粒子状ではなく、繊維、ウィスカー等の場合にあっては、「長さ/径、の比が150未満の場合で、径が0.1〜30μmの繊維、ウィスカー等」、又は「長さ/径、の比が150以上の場合で、径が0.5〜500μmの繊維、ウィスカー等」のことをいう。
【0054】また、本発明においては、第一の分散材、及び第二組織が第二の複合組織からなる場合における、第二の分散材を構成する無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。複合材料は、これを構成するマトリックスに含まれるアルミナイド金属間化合物と分散材との組み合わせにより種々の特性を示すものであり、用途に応じた特性を示す複合材料となる組み合わせを適宜選択すればよい。
【0055】本発明においては、第一の分散材の、第一の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることが更に好ましい。第一の分散材の体積比率が10体積%に満たない場合には、得られる複合材料が複合材料としての十分な強度を発揮し得ず、また、70体積%を超える場合には、Al含有金属の浸透に不具合が生ずることが想定され、アルミナイド金属間化合物の生成が困難となり、不均質な組織が形成されるために好ましくない。
【0056】また、本発明においては、第二組織が第二の複合組織からなる場合には、第一の複合組織と同様、第二の分散材の第二の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることが更に好ましい。第二の分散材の体積比率が10体積%に満たない場合には、得られる複合材料が複合材料としての十分な強度を発揮し得ず、また、70体積%を超える場合には、Al含有金属の浸透に不具合が生ずることが想定され、アルミナイド金属間化合物の生成が困難となり、不均質な組織が形成されるために好ましくない。
【0057】本発明の複合材料の製造方法の一実施形態においては、図1に示すように、第一の分散材と金属粉末を混合して得た混合材料2を容器1内に配置された第二組織により構成された部材30の周囲に充填するが、その際に、混合材料2が所定の形状及び空隙率となるように適当な圧力にて成形を行ってもよい。また、予め適当な圧力を付与することにより混合材料2の成形を行っておき、これを充填してもよい。また、混合材料2の空隙率に関しては、成形する圧力を変化させることで任意に制御することができる。更に、特に大型部材や複雑形状部材を製造する場合においては、容器中の混合材料に振動を印加して沈降成形を行うことにより、プレス機等の加圧装置を用いずに成形することも可能である。
【0058】第一のマトリックスの形成自体は非常に短時間で完了するため、加熱に要する時間は数分程度で十分である。更に、自己燃焼反応が終了した後に、得られた複合材料の第一のマトリックスの均質化及び安定化を図るために、適宜等温保持や加熱保持を行ってもよい。このときの保持温度は、材料系によって若干左右されるが、自己燃焼反応が生じた温度と同一の温度から約400〜500℃程度高い温度で実施することが好ましく、また保持時間は約1時間から必要に応じて数時間実施してもよい。
【0059】また、本発明においては、容器が、少なくともその内壁がカーボン材により構成されてなるものであることが好ましい。内壁がこのように構成された容器を用いると、Al含有金属を溶融含浸して冷却した後、得られた複合材料を容器から容易に取り出すことができる。即ち、複合材料の、容器からの離型性が極めて良好となるために、容器の耐久性も向上し、複合材料の製造コストを低減することができる。なお、更なる離型性の向上を図るため、Al含有金属と接触する部位(面)に、BNスプレー等によるコーティングを行うこと、カーボンシート等を配置すること等も好ましい。
【0060】また、本発明の複合材料の製造方法においては、図3に示すように容器1内に第二組織により構成された部材30を配設し、その上に所望とする形状の孔10を有する蓋体11を載置するとともに、孔10の内側に混合材料2を充填し、この状態でAl含有金属4を混合材料2内部の空隙中に溶融含浸させることにより、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(第二の複合組織15)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、従来製造することが困難であったより複雑な形状を有する複合材料5を製造することができる。なお、本発明にいう「容器内」とは図3に示すように、載置される蓋体11に形成された孔10(含浸口)の内側まで含む意味である。従って、孔10の形状を所望とする複雑形状に対応する形状とすることにより、種々の複雑形状を有する複合材料5を製造することができる。
【0061】また、本発明の複合材料の製造方法においては、図4に示すように反応容器1内において、第二組織により構成された部材30を混合材料2中に埋設した状態とし、この状態でAl含有金属4を混合材料2内部の空隙中に溶融含浸させることにより、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(第二の複合組織15)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、従来製造することが困難であったより大型形状の複合材料5を製造することができる。ここで、本発明においては、第二組織により構成された部材30が第二の複合組織により構成された部材である場合において、第一組織13を構成する第一のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第一のマトリックスの全体に対する含有割合(R1(体積%))と、第二組織14を構成する第二のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第二のマトリックスの全体に対する含有割合(R2(体積%))とが、同一の値でも異なった値でもよい。即ち、R1の値とR2の値とが同一である場合(R1=R2)には、この複合材料は全域において均一な物理的特性を有するものであり、各部位によって同一の物理的特性が要求される特殊部品等を構成する複合材料として好適である。一方、R1の値とR2の値とが同一でない場合(R1≠R2)には、この複合材料はこれらの値の異なる各部において剛性、強度、耐磨耗性等の物理的特性が異なるものであり、用途に応じた機能が要求される特殊部品等を構成する複合材料として好適である。
【0062】次に、本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態の複合材料の製造方法は、容器内に、第一組織により構成された部材を配設した状態で、容器内にAl含有金属を注湯することにより、第一組織と、アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする。以下、その詳細について説明する。
【0063】図5に示すように、本実施形態では、先ず所望とする製品形状に対応する形状の内部空間52を有する容器1内に、第一の複合組織により構成された部材51を載置する。次に、この内部空間52に連通する孔10からAl含有金属の溶湯を流し込んだ後、冷却することにより、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(金属組織16)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、本実施形態の複合材料5を得ることができる。なお、図5に示すように不要な部分(切除部53)を金属組織とすることもできるため、形状加工性に優れた複合材料5を製造することができる。
【0064】次に、本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態の複合材料の製造方法は、容器内に、第一組織により構成された部材と、Al含有金属の溶湯とを配設した状態で、Al含有金属の溶湯に圧力を負荷して、容器内にAl含有金属の溶湯を充填させることにより、第一組織と、アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする。以下、その詳細について説明する。
【0065】図6に示すように、本実施形態では、いわゆるダイキャスト法を利用した方法により、特に複雑かつ微細な形状部分(微細形状部57)を有する複合材料5を製造することができる。具体的には、その内部空間(キャビティ)52に複雑・微細な形状の末端部56を有する容器(金型58)を使用し、その中に第一の複合組織により構成された部材51を載置する。次に、内部空間(キャビティ)52のうちの溶湯溜め空間54に配置した溶融状態のAl含有金属4をピストンにより加圧し、末端部56にまでAl含有金属4の溶湯を充填させた後に冷却し、脱型すれば、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(金属組織16)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなり、かつ、複雑かつ微細な形状部分(微細形状部57)を有する複合材料5を得ることができる。
【0066】なお、図5及び図6に示す本発明の複合材料の製造方法の実施形態において用いるAl含有金属は、流動性に優れたAl−Si系合金が好ましく、より具体的には、Al−Si−Mg系合金(AC4C)、Al−Si−Cu−Ni−Mg系合金(AC8A)等が更に好ましい。特に、得られる複合材料の金属組織部分における機械的特性を考慮する場合にはAC8Aが好ましい。このような構成を有する複合材料5は、金属組織16を構成するAl含有金属の特性が反映されて靭性値が高く優れた衝撃吸収能を示すものであるとともに、第一組織13を構成する第一の複合組織12の特性が反映されて軽量・高剛性であるといった特性を有する。また、図5及び図6に示す実施形態の複合材料5はその特性を生かして、特に複雑形状で部分的に過酷な耐磨耗性が要求される部材(例えば、自動車関連部材)として好適である。その他、本発明の複合材料は、容器の内部空間の形状、第一組織からなる部材の形状、載置する位置・数等を設定することにより、精密機械、製造装置(半導体、ディスプレイ等)等の部材を構成する材料として好適である。
【0067】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施結果を説明する。
(鋳ぐるみ用複合部材の製造)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び含浸させるアルミニウム溶湯の原料となるアルミニウム材料として市販のアルミニウム合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内壁に高密度カーボンを設置したSUS316製金型容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、空隙率約48%の成形体とした。次に、含浸孔を有するカーボンからなる蓋体を成形体の上面に載置して、外周部の容器にて圧粉体を固定させた構造とし、これらの含浸孔に溶融したアルミニウム(Al)を含む金属が流れ込むようにアルミニウム(Al)を含む金属を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したアルミニウム(Al)を含む金属を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して、鋳ぐるみ用複合部材(第一組織により構成された部材、又は第二組織により構成された部材)を製造した。
【0068】
(実施例1)
鋳ぐるみ用複合部材(第一組織により構成された部材)を所定の形状に加工後、図5に示す容器1(鋳型(砂型))の内部空間(キャビティ)52に載置した。その後、150〜200℃にて鋳型を予熱し、約750℃にて溶解させたアルミニウム(Al)合金(AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系))を溶湯用セラミックスフィルターを介して孔10から流し込み、その後徐冷することにより複合材料(実施例1)を製造した。
【0069】
(実施例2)
所定の形状に加工した鋳ぐるみ用複合部材(第一組織により構成された部材)と、所定形状のアルミニウム(Al)合金(AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系))を、カーボン製の型内に載置した。その後、0.13Pa以下の真空雰囲気下、750℃にまで型を加熱してアルミニウム(Al)合金を溶融状態とし、約10分間保持後に徐冷することにより複合材料(実施例2)を製造した。
【0070】実施例1,2の複合材料を任意に切断し、各切断面における、アルミニウム(Al)合金と第一組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、良好に複合材料化されていることが判明した。また、界面のいずれの部分においても顕著な巣及び気孔等は確認されなかった。なお、実施例1,2の複合材料について、以下に示す方法により磨耗試験を実施した。
【0071】
[磨耗試験]:
得られた複合材料の第一組織の部分から所定形状・寸法の試験片を切り出し、φ200mmのディスク(外周面にラバーを接着)と試験片の間に磨耗粒子である珪砂(粒径1.0〜0.4mm)を落下させ、回転するディスクに試験片を荷重49Nで押しつける形にて常温で10分間の磨耗試験を実施した。なお、比較材にはアルミニウム(Al)合金(AC8A)、鋳鉄(FC−250)を用いた。試験の前後で試験片を洗浄・乾燥するとともにその質量を測定し、試験前後の質量差から磨耗質量、磨耗体積(=磨耗質量/材料密度)を求めた。更にアブレッシブ磨耗量を下記式(4)から求めた。
【0072】
【数4】
アブレッシブ磨耗量(mm3/kg)=磨耗体積/磨耗粒子の総質量…(4)
【0073】磨耗試験の結果、アブレッシブ磨耗量は、実施例1,2の複合材料:25mm3/kg、アルミニウム(Al)合金(AC8A):109mm3/kg、鋳鉄(FC−250):112mm3/kgであり、比較材に比して実施例1,2の複合材料の磨耗量が大幅に少ないことが判明した。このため、実施例1及び2においてAl合金(AC8A)と本複合材料を組み合わせた複合部材とすることによって、軽量性を有しながら部分的に耐磨耗性が向上した複合部材の製造が可能であった。
【0074】
(実施例3)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図1に示すような、容器1内の所定の位置に、金属組織により構成された部材32である鋳鉄(FC−250)を載置し、その外周部に前述の混合材料を流し込み、加振することによりタップ密度を上昇させ、所定の空隙率(約48%)とした。次に、孔10(含浸孔)を有するカーボンからなる蓋体11を、容器1内に充填された混合材料2に対応する部分に孔10が配されるように載置して、容器1で混合材料2を固定した状態とし、孔10に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにAl含有金属4を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したAl含有金属4を無加圧含浸させ、金属組織により構成された部材32との過剰な界面反応を抑制するため約10分保持後に徐冷することにより複合材料(実施例3)を製造した。
【0075】実施例3の複合材料を任意に切断し、各切断面における、鋳鉄(FC−250)と第一の複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、その界面において過剰な反応層の生成がなく、概ね良好に複合材料化されていることが判明した。また、実施例3の複合材料の鋳鉄(FC−250)部分に対して機械加工を行ったところ、例えば、ダイヤ系の工具でなければ加工が困難である第一の複合組織の部分と比較して、通常の金属材料と同様に加工が可能であることが判明した。また、加工時の発熱及び応力負荷によっても鋳鉄(FC−250)部分が剥離せず、良好な界面強度を有することが判明した。
【0076】
(実施例4)
金属組織により構成された部材を用いることに代えて、セラミックス組織により構成された部材であるイットリア部分安定化ジルコニア(Y2O3−PSZ)を用いること以外は、実施例3と同様の操作により複合材料(実施例4)を製造した。
【0077】実施例4の複合材料を任意に切断し、各切断面における、イットリア部分安定化ジルコニア(Y2O3−PSZ)と第一の複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、概ね良好に複合材料化されていることが判明した。
【0078】
(実施例5)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図3に示すような、容器1内の所定の位置に、第二組織により構成された部材30である鋳ぐるみ用複合材料((Ti/Al2O3)体積比の値が0.27)を載置し、その上面に、その形状が所定の形状である孔10(含浸孔)を有するカーボンからなる蓋体11を載置し、孔10内部に混合材料を流し込み、加振することによりタップ密度を上昇させ、所定の空隙率(約48%)とした。その後、孔10に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにAl含有金属4を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したAl含有金属4を無加圧含浸させ、約10分保持後に徐冷することにより同一組成の複合材料が組み合わされてなる複合材料(実施例5)を製造した。
【0079】実施例5の複合材料を任意に切断し、各切断面における、第一組織と第二組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織的に不均質な部分等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。
【0080】
(実施例6)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び含浸させるアルミニウム溶湯の原料となるアルミニウム材料として市販のアルミニウム合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.40となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内壁に高密度カーボンを設置したSUS316製金型容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、空隙率約49%の成形体とした。次に、含浸孔を有するカーボンからなる蓋体を成形体の上面に載置して、外周部の容器にて圧粉体を固定させた構造とし、これらの含浸孔に溶融したアルミニウム(Al)を含む金属が流れ込むようにアルミニウム(Al)を含む金属を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したアルミニウム(Al)を含む金属を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して、鋳ぐるみ用複合部材(第二組織により構成された部材)を製造した。
【0081】平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図4に示すような、容器1内の所定の位置に鋳ぐるみ用複合部材(第二組織により構成された部材30)((Ti/Al2O3)体積比の値が0.40)を載置し、その外周部に前述の混合材料((Ti/Al2O3)体積比の値が0.27)を流し込み、加振することによりタップ密度を上昇させ、所定の空隙率(約48%)とした。次に、孔10(含浸孔)を有するカーボンからなる蓋体11を混合材料2の上面に載置して、容器1で混合材料2を固定した状態とし、孔10に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにAl含有金属4を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したAl含有金属金属4を無加圧含浸させ、約10分保持後に徐冷することにより異種組成の複合材料が組み合わされてなる複合材料(実施例6)を製造した。
【0082】実施例6の複合材料を任意に切断し、各切断面における、第一組織と第二組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織的に不均質な部分等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。従って、部位によってその特性が変化した複合材料の製造が可能であることが判明した。
【0083】
(実施例7)
第二組織により構成された部材30である鋳ぐるみ用複合材料((Ti/Al2O3)体積比の値が0.27)を所定の形状に加工後、図6に示すダイキャスト用の金型58の内部空間(キャビティ)52に載置した。その後、300〜400℃にて金型58を予熱し、約750℃にて溶解させたアルミニウム(Al)合金(AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系))を約8MPaの圧力にて、金型58の内部空間(キャビティ)52中に注入することにより複合材料(実施例7)を製造した。
【0084】実施例7の複合材料を任意に切断し、各切断面における、第一組織と第二組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織的に不均質な部分等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。これは、ダイキャスト法を採用したことにより、溶湯注入時間が非常に短時間で完了したためであると考えられる。
【0085】
(実施例8)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.40となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図8に示すような、その内壁面にカーボン板60を設置した容器1に混合材料を入れ、所定の形状となるように圧縮成形を行って空隙率約49%の成形体61とした。次いで、大気中にて容器1を150〜200℃で予熱し、約800℃にて溶解させたAl含有金属4(市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg))を容器1内に注湯すると同時に約1MPaの圧力(含浸圧力)を負荷して溶融アルミニウム(Al)を成形体61の空隙に含浸させ、Al含有金属(金属組織16)と複合組織(第一組織13)とが組み合わされた複合材料5を製造した。
【0086】実施例8で製造した複合材料を任意に切断し、各切断面における、金属組織と複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、界面のいずれの箇所においても顕著な巣及び気孔等は確認されず、良好に複合材料化されていることが判明した。
【0087】
(実施例9)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。得られた混合材料をプレス機にて圧縮成形し、空隙率約40%の成形体とした。その後、図7に示すような金型58の内部空間(キャビティ)52に成形体61を載置し、大気中にて金型58を150〜200℃で予熱し、約800℃にて溶解させたAl含有金属4(市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg))を溶湯溜め空間54に注湯し、ピストン部55により約3MPaの圧力を負荷して、成形体61の空隙中にAl含有金属4を含浸するとともに金型1の末端部56までAl含有金属4を注入し、Al含有金属(金属組織16)と複合組織(第一組織13)とが組み合わされた複合材料5を製造した。
【0088】実施例9で製造した複合材料を任意に切断し、各切断面における、金属組織と複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、界面のいずれの箇所においても顕著な巣及び気孔等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。従って、より軽量であるとともに、必要箇所が複合材料化されてなる、高機能性(耐熱・高強度・耐磨耗等)を有する複雑形状の複合材料の製造が可能であることが明らかとなった。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の複合材料は、所定の複合組織(第一組織)と、所定の第二組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなるものであるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えたものである。
【0090】また、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に、所定の第二組織により構成された部材を配設した状態で混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を所定状態で載置し、孔を経由して、Al含有金属を混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて第一のアルミナイド金属間化合物を生成させるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【0091】また、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に混合材料からなる成形体を配設し、Al含有金属を成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、第一のアルミナイド金属間化合物を生成させるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【0092】更に、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に、所定の第一組織により構成された部材を配設した状態で、容器内にAl含有金属を注湯するため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【0093】また、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に、所定の第一組織により構成された部材と、Al含有金属の溶湯とを配設した状態で、Al含有金属の溶湯に圧力を負荷して、容器内にAl含有金属の溶湯を充填させるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合材料の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。
【図2】従来の複合材料の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。
【図3】本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態を説明する模式図である。
【図4】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図5】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図6】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図7】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図8】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【符号の説明】
1…容器、2…混合材料、3…空隙、4…Al含有金属、5…複合材料、6…マトリックス、7…分散材、8…ネジ部、9…蓋部材、10…孔、11…蓋体、12…第一の複合組織、13…第一組織、14…第二組織、15…第二の複合組織、16…金属組織、17…セラミックス組織、21…外挿体、30…第二組織により構成された部材、31…第二の複合組織により構成された部材、32…金属組織により構成された部材、33…セラミックス組織により構成された部材、36…第一のマトリックス、37…第一の分散材、51…第一の複合組織により構成された部材、52…内部空間(キャビティ)、53…切除部、54…溶湯溜め空間、55…ピストン部、56…末端部、57…微細形状部、58…金型、60…カーボン板、61…成形体。
【発明の属する技術分野】本発明は、マトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料、及びその製造方法に関し、更に詳しくは、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有する複合材料、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】複合材料とは、複数素材を巨視的に混合した組成集合体であり、各素材の持つ機械特性を相補的に利用して、単独素材では実現できなかった特性発現を可能にしたものである。基本的には、材料と材料を組み合わせる技術手法であり、マトリックスと強化材(分散材)、使用目的、又はコスト等により、種々の組み合わせが存在する。
【0003】その中でも金属基複合材料(MMCs:Metal−Matrix−Composites)は、セラミックスを強化材として金属材料(Al、Ti、Cu、Si等)を複合化することによる、セラミックスと金属と両方の特性を兼ね備えた材料である。そのため、例えば近年、環境問題に関連した自動車関連分野や、各種装置部材(半導体、ディスプレイ、精密機械等)の軽量化・高速化・高効率化が求められている製造装置関連分野や、半導体素子の冷却(放熱)を行う電子部品関連分野等において、金属基複合材料に対して非常に注目されているものである。また、金属間化合物基複合材料(IMCs:Intermetallic−Matrix−Composites)は、セラミックスを強化材として金属間化合物(Ti−Al系、Ni−Al系等)を複合化することにより、特に金属材料では実現が困難な温度域での耐熱材料として発電・宇宙・航空分野等において注目されている材料である。これらのことから、両複合材料共に、セラミックス材料や金属材料では素材として適用が難しい分野において、分散相とマトリックス相の種類・相比等を変化させることにより所望とする材料特性をオーダーメイド可能な材料として多方面での展開が期待されている。
【0004】金属間化合物基複合材料の製造方法としては、予め金属間化合物粉末をメカニカルアロイング(MA)等にて製造し、強化材となる繊維及び/又は粒子等とともに、高温・高圧条件下においてホットプレス(HP)若しくは熱間等方圧成形(HIP)する方法が挙げられる。
【0005】金属間化合物基複合材料を製造する従来の製造方法における問題点として、緻密な金属間化合物基複合材料の製造を行うためには、主として粉末冶金的なHP法及びHIP法等の製造方法によって高温・高圧を負荷し、金属間化合物を焼結することで複合材料の緻密化を行う必要性があることを挙げることができる。このため、前処理工程の必要性があるだけでなく、製造装置の性能や規模に制約があり、大型、或いは複雑形状の複合材料の製造が極めて困難であるとともに、最終製品の形状を考慮したニアネットシェイプ化を行うことができず、その後の工程において機械加工処理が必要となるといった問題点をも有している。
【0006】また、前処理工程として、予めMA等による金属間化合物粉末の合成が必要であり、製造工程の多段階・煩雑化といった問題点を有している。従って、上述のように、従来の金属間化合物基複合材料の製造においては多段階に渡る工程が必要であるとともに、高温・高圧条件下において行う製造方法であるために極めて高コスト・高エネルギーな製造方法である。
【0007】また、金属基複合材料の製造方法としても、固相法であるHP法やHIP法等のような、シート状又は箔状の金属と、繊維状又は粒子状のセラミックスとを高圧にて拡散接合する手法や、金属粉末を利用する、前述の粉末冶金的な手法が一般に知られている。更に、液相法としては、濡れ性が良好ではないセラミックスと溶融金属との組み合わせを考慮し、高圧を付与する等、機械的なエネルギーを利用して強制的に複合材料化させる加圧含浸法や溶湯鍛造法等が知られているが、固相法、液相法、ともに高温・高圧を必要とするプロセスである。また、複合材料化された製品は、どれも平板や円板等の簡易的な形状であり、最終製品にまで仕上げるためには塑性加工処理や機械加工処理が必要となるが、セラミックス相を含んでいるため、加工コストが高く、極めて高コストな製造方法である。
【0008】このような問題を解消するための関連技術、特に複合材料の低コスト化を目的として、従来の高圧法による合成プロセスではなく圧力を必要としない金属基複合材料の製造方法が開示されている。具体的には、溶融金属を無加圧含浸させる液相法として、窒素ガス雰囲気中でマグネシウム(Mg)を揮発させ、気相反応によりMg3N2をセラミックス粒子表面にin−situ(その場)生成させることによりセラミックスと金属との濡れ性を向上させ、毛細管圧力によってセラミックス多孔体に溶融アルミニウム(Al)を無加圧浸透させる手法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、この手法によれば、気相反応によりセラミックス粒子表面にMg3N2をin−situ(その場)コーティングすることから含浸速度が非常に遅く、また無加圧浸透させる雰囲気調整に時間を要することから、製品製造を行う上で非常に長時間を要するといった問題がある。さらには、予めセラミックス粒子を高温で仮焼すること等によってセラミックス多孔体を合成する必要があるため、複合材料の低コスト化が図れないといった問題がある。
【0009】また、他の手法として微細片の形態をなす強化材(分散材)と、酸素及び窒素のゲッター効果を有するチタン(Ti)等の微細片からなる成形体を形成し、これをアルミニウム(Al)等の溶湯中に浸漬することで、アルミニウム(Al)等の金属をマトリックスとする金属基複合材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】しかしながら、前記製造方法によれば、得られる複合材料は金属間化合物をできる限り含有しない金属をマトリックスとする金属基複合材料に限定される。更に、チタン(Ti)−アルミニウム(Al)間での発熱反応に起因して成形体(試料)が膨張するため、成形体を溶湯中に浸漬すると強化材体積率が低下してしまい、強化材体積率がより高い複合材料を製造することが困難であり、より高強度であるといった、材料特性を制御した複合材料を製造することが困難であるという問題があった。
【0011】上述してきた種々の問題を解消するための関連技術として、所定の強化材に混合した金属粉末とアルミニウム(Al)溶湯による自己燃焼反応を生起させる金属間化合物基複合材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この製造方法によれば、図2に示すように、容器1内に充填された分散材と金属粉末からなる混合材料2の間隙3にアルミニウム(Al)を含む金属(Al含有金属4)を溶融含浸させることにより、自己燃焼反応をin−situ(その場)で生起させて、マトリックス6中に分散材7が分散した複合材料5を製造するために、低温、かつ、無加圧条件下で高融点である金属間化合物基複合材料等の複合材料5を、非常に短時間で完結する含浸プロセスにより最終製品形状を模擬したニアネットシェイプ化を達成することができ、従来法と比較して格段にエネルギー量が少なく、製造コストが低減された複合材料の製造方法であるといえる。
【0012】しかしながら、元素間の自己燃焼反応(代表的には燃焼合成反応(SHS反応))を利用した前記製造方法に類似する材料合成プロセスは、発生する非常に大きな反応熱を自由に制御できない点から、セラミックスや高融点化合物の粉末合成(例えば、アルミニウム(Al)や珪素(Si)を出発原料とした窒素ガス雰囲気中でのAlN及びSi3N4粉末の合成プロセス(直接窒化法)等)には利用されているのに対して、バルク体製造の場合においては発熱反応に伴う気孔生成に起因して、得られるバルク体に緻密性を付与することが非常に困難であることが知られており、前記製造方法においても高い緻密性を有する複合材料の合成が困難であり、その気孔に起因した機械的特性(例えば、曲げ強度やヤング率等)の低下が問題となっていた。そのため、前記製造方法により得られる複合材料よりも、気孔が少ない更に緻密な微構造を有する複合材料を製造する方法を創出することが産業界から要望されていた。
【0013】また、特に金属基複合材料の製造方法である加圧含浸法や溶湯鍛造法等も近年頻繁に検討され、部材の大型化が進行しているが、基本的に濡れ性の乏しいセラミックス多孔質体に溶融金属を強制的に機械的エネルギーを負荷して複合材料化するために、押湯圧として数十MPa〜百MPaの圧力が必要となり、設備的な限界がある。このため、部材の大型化(加圧面の大面積化)に伴い加圧圧力が増加し、加圧装置や高耐圧性金型等の設備コスト面においても問題がある。
【0014】また、特許文献4に記載の複合材料の製造方法によっては、その最終形状(製品形状)が大型・複雑である複合材料を得るには困難な場合もある。更には、得られる複合材料は、分散材からなるセラミックス相と金属間化合物相とを含んでなるものであるため、一般的な金属材料と比較して高強度である反面、破壊靭性値が低く、また、難加工性であるといった問題があった。また、特許文献4に記載の複合材料の製造方法は、低コスト化を実現する無加圧含浸プロセスであるという特徴を有するものの、無加圧含浸可能な含浸距離にはある程度の限界値が存在し、そのため部材の肉厚化、複雑形状化、大型化には更なる技術的改良が求められていた。
【0015】
【特許文献1】
特開平1−273659号公報
【特許文献2】
特開平2−240227号公報
【特許文献3】
特許第3107563号公報
【特許文献4】
特開2002−47519号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料、及びその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料であって、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記第一の複合組織と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなることを特徴とする複合材料が提供される。
【0018】本発明においては、第二組織が、第二の複合組織からなる場合に、第一のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第一のマトリックスの全体に対する含有割合と、第二のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第二のマトリックスの全体に対する含有割合とが、異なった値であることが好ましい。
【0019】本発明においては、第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましく、第二組織が、第二の複合組織からなる場合に、第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。また、無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】本発明においては、第一の分散材の、前記第一の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、第二組織が、第二の複合組織からなる場合に、第二の分散材の、第二の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましい。
【0021】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)により構成された部材を配設した状態で、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を、前記容器内に充填された前記混合材料に対応する部分に前記孔が配されるように載置し、前記孔を経由して、アルミニウム(Al)を含む金属を前記混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて、前記金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に前記第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記第二組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0022】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる成形体を配設し、アルミニウム(Al)を含む金属を前記成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、前記金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に前記第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0023】本発明においては、金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末であることが好ましい。
【0024】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる複合組織(第一組織)により構成された部材を配設した状態で、前記容器内にアルミニウム(Al)を含む金属を注湯することにより、前記第一組織と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0025】また、本発明によれば、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、容器内に、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)により構成された部材と、アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯とを配設した状態で、前記アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯に圧力を負荷して、前記容器内に前記アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯を充填させることにより、前記第一組織と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法が提供される。
【0026】本発明においては、容器内に、第二の複合組織からなる組織により構成された部材を配設する場合に、第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。
【0027】本発明においては、第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。
【0028】本発明においては、無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施形態に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0030】本発明の複合材料は、アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含むものであり、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、第一の複合組織と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなることを特徴とするものである。
【0031】また、本発明の複合材料の製造方法の一実施形態は、容器内に、第二組織により構成された部材を配設した状態で、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を、容器内に充填された混合材料に対応する部分に孔が配されるように載置し、孔を経由して、アルミニウム(Al)を含む金属を混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて、金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前述の複合材料を得ることを特徴とする。以下、詳細について説明する。
【0032】図1は、本発明の複合材料の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。本発明の実施形態である複合材料5を製造するに際しては、先ず適当なサイズ及び形状の容器1内に、第二組織により構成された部材30を配置する。この第二組織は、▲1▼第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、▲2▼金属組織、及び▲3▼セラミックス組織、からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織である。次に、容器1内に配置された第二組織により構成された部材30(第二の複合組織により構成された部材31、金属組織により構成された部材32、セラミックス組織により構成された部材33)の周囲に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材を混合してなる混合材料2を充填する。なお、第二の複合組織により構成された部材31を用いる場合において、この第二の複合組織の構成要素である第二の分散材と、前述の第一の分散材とは、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0033】次いで、所定の孔10(含浸口)を有する蓋体11を、その孔10が容器1内に充填された混合材料2に対応する部分に配される状態で載置して、混合材料2を所定の形状に固定する。このとき、孔10の個数に特に制限はなく、複合材料5の形状・サイズ等に応じて複数形成されていることが好ましい。その後、容器1内に充填された混合材料2の空隙3に、孔10を経由してAl含有金属4を溶融含浸させる。なお、図1中、符号9は蓋部材、符号21は外挿体を示すものであり、以降、同一の符号は同一の部分を示すものとする。
【0034】空隙3中に溶融含浸されたAl含有金属4は、混合材料2を構成する金属粉末(図示せず)と接触して自己燃焼反応を生起し、Al含有金属4は第一のアルミナイド金属間化合物に置換される。この結果、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス36に第一の分散材37が分散してなる第一の複合組織12(第一組織13)が形成される。予め容器1内に配置されていた第二組織により構成された部材30は、新たに形成された第一組織13内に鋳ぐるまれた状態でそのまま残るため、第一組織13と第二組織14(第二の複合組織15、金属組織16、セラミックス組織17)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、本発明の実施形態である複合材料5を製造することができる。
【0035】また、本実施形態においては図1に示すように、一以上の孔10を有する蓋体11を混合材料2の上面に載置するため、容器1内に充填された混合材料2は所定形状となるように固定されており、Al含有金属4が含浸されても混合材料2の所定形状は維持される。更に、混合材料2をこのように固定することにより、空隙3の細部にまでAl含有金属4が含浸され易くなるため、より緻密で開気孔率が低減された第一組織13とすることができ、得られる複合材料5に反り等の不具合が発生し難い。なお、混合材料2を所定形状となるように固定するためには、例えばネジ部8を容器1に設ける等の手段を挙げることができ、このことにより、所望とする適度な圧力が混合材料2に対して付与されるように微調整することができる。但し、混合材料2を固定するための手段は、図1に示した態様に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0036】本実施形態の複合材料5を構成する第二組織14が金属組織16である場合には、本実施形態の複合材料5は、金属組織16の部分においてこの金属組織16を構成する金属の有する物理的特性に基づいて種々の特性を示す。即ち、金属組織16を構成する金属として、所望とする強度や破壊靭性値等の物性値、又は加工容易性等の特性を備えた金属を適宜選択して採用することにより、この金属組織16が組み込まれた部分においては高破壊靭性、加工容易性等の金属材料特有の物理的特性を示すとともに、第一の複合組織12の部分においては一般的な金属材料と比較して高強度であるという物理的特性を示す複合材料5とすることができる。
【0037】なお、金属組織16を構成する金属として、アルミニウム(Al)と脆性的な金属間化合物を形成し易い金属を使用すると、第一組織13と第二組織14との界面部分において強度低下に伴う加工不具合や変形等が発生する恐れがある。従って、本実施形態においては、金属組織16を構成する金属が、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、Cr、Mo、W、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの金属のうち、特にCu、及びFe系の金属は、金属間化合物の形成速度が早い点から界面反応層の成長速度に留意することが必要である。また、混合材料2を構成する金属粉末と同種の金属を用いることも、界面反応層が、得られる複合材料5のマトリックス6を構成する金属間化合物と同種となるために好ましい。具体的には、混合材料2を構成する金属粉末としてTi粉末を用いる場合には、金属組織16を構成する金属としてTi系合金が好適に用いられる。
【0038】また、本実施形態の複合材料5を構成する第二組織14がセラミックス組織17である場合には、本実施形態の複合材料5は、セラミックス組織17の部分においてこのセラミックス組織17を構成するセラミックスの有する物理的特性に基づいて種々の特性を示す。即ち、セラミックス組織17を構成するセラミックスとして、所望とする軽量、高強度、高剛性、耐熱性等のセラミックス材料特有の物理的特性を示すとともに、第一の複合組織12の部分においては一般的なセラミックス材料と比較して高強度であるという物理的特性を示す複合材料5とすることができる。セラミックス組織を構成するセラミックスとしては、形成される第一組織との熱膨張係数(9〜13ppm/K程度(例えば、分散材がアルミナ(Al2O3)である場合))のミスマッチを回避すべく、比較的その値が近い(8〜13ppm/K程度)ものが好ましい。具体的にはジルコニア、チタニア、フェライト、スピネル、マグネシア、若しくはアルミナ、又はこれらの複数を組み合わせて用いることが好ましい。これは、セラミックス組織を形成するセラミックスと第一組織(複合組織)との熱膨張係数の差が大きい場合に、残留応力がセラミックス組織側に発生しクラックが発生する問題が生じ易いからである。なお、本実施形態の複合材料5を構成する第二組織14が第二の複合組織15である場合における、本実施形態の複合材料5の特性については後述する。
【0039】本実施形態の複合材料5の第二組織14を構成する組織は、上記各組織(第二の複合組織15、金属組織16、セラミックス組織17)の単独でもよく、これらの複数を組み合わせたものでもよい。即ち、本実施形態の複合材料5は、用途に応じた種々の機械的特性を有する部分が、所望とする箇所に組み込まれてなるものである。
【0040】次に、本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態の複合材料の製造方法は、容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる成形体を配設し、Al含有金属を成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、第一組織と、Al含有金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする。以下、その詳細について説明する。
【0041】図8に示すように、本実施形態では、先ず所望とする製品形状に対応する形状の容器1内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる、所定形状を有する成形体61を配設する。成形体61は、容器1内に混合材料を入れた後に、適当な圧力を負荷して作製することができ、また、予めプレス機等を用いて混合材料2に圧力を負荷して作製しておき、これを配設してもよい。なお、容器1の少なくともその内壁に、離型材(BNコート等)が塗布されているか、又は容器1の内壁がカーボン材(カーボンシート、若しくはカーボン板60)により構成されていることが、得られる複合材料を離型し易い点において好ましい。このことについては後述する。
【0042】次いで、容器1内に配設された成形体61の空隙にAl含有金属4を溶融含浸させるが、このとき、本実施形態では加圧条件下に溶融含浸させる。成形体61には所定の金属粉末が含まれているため、この金属粉末と、含浸されたAl含有金属4とが接触することにより自己燃焼反応が生起される。Al含有金属4は第一のアルミナイド金属間化合物に置換され、この結果、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織13)と、Al含有金属からなる組織(金属組織16)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料5を製造することができる。
【0043】本実施形態においては、前述の自己燃焼反応がAl含有金属4の含浸駆動力となるため、前述の加圧条件は、従来の加圧含浸法等を実施するに際して必要とされていた高圧を負荷する必要はない。従って、特殊な加圧装置や高耐圧性金型等の設備が必要とされることはないため、本実施形態の複合材料の製造方法は、より大型・複雑形状を有する複合材料であっても簡便に製造することができるとともに、設備コスト面においても優れている。
【0044】Al含有金属を加圧含浸させるに際して負荷する含浸圧力は、前述の如く、加圧含浸法等を実施するに際して必要とされていた程の高圧である必要はない。具体的には、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることが更に好ましく、3MPa以下であることが特に好ましい。なお、含浸圧力の負荷は適当な圧力負荷手段、例えば、ピストン部55を用いて実施すればよいが、本発明においてはこのような圧力負荷手段に限定されるものではない。また、本発明において、Al含有金属を加圧含浸させるに際して負荷する含浸圧力の下限値については特に限定されないが、概ね0.05MPa以上であればよい。
【0045】本発明において用いることのできる金属粉末は、溶融状態のアルミニウム(Al)(アルミニウム(Al)溶湯)と接触することにより自己燃焼反応を生起し、アルミナイド金属間化合物を形成するものである。具体的にはチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末を用いることができる。これらの金属粉末は反応性が良好であるとともに、安定なアルミナイド金属間化合物を形成するために好ましい。これら金属粉末を用いた場合の反応の代表例を下記式(1)〜(3)に示す。下記式(1)〜(3)において示す通り、これらの反応は発熱反応(自己燃焼反応)であり、本発明においてはこの反応熱を利用する。
【0046】
【数1】
3Al+Ti→Al3Ti : ΔH298=−146kJ/mol …(1)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0047】
【数2】
3Al+Ni→Al3Ni : ΔH298=−150kJ/mol …(2)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0048】
【数3】
3Al+Nb→Al3Nb : ΔH298=−160kJ/mol …(3)
ΔH:生成反応熱(Δ<0にて発熱反応)
【0049】本発明において、容器内に配置される第二組織により構成された部材として、第二の複合組織により構成された部材を用いる場合に、この第二の複合組織により構成された部材は、例えばこれまで述べてきた第一の複合組織の形成方法に準ずる方法により製造することができる。即ち、適当なサイズ及び形状の容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る所定の金属粉末と第二の分散材とを混合してなる混合材料を充填し、充填された混合材料の空隙にAl含有金属を溶融含浸させることにより、Al含有金属と接触した金属粉末が自己燃焼反応を生起し、Al含有金属が第二のアルミナイド金属間化合物に置換されて、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックスに第二の分散材が分散してなる第二の複合組織により構成された部材を得ることができる。なお、第二の発明において好適に用いることのできる、第二の複合組織により構成された部材は、このような方法により得られたものに限定されるものではない。
【0050】本発明においては、Al含有金属を加圧下に含浸する条件以外の含浸条件下において、第一の分散材の平均粒径に対する、金属粉末の平均粒径の比率(%)が、5〜80%であることが好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。金属粉末の平均粒径が第一の分散材の平均粒径の5%未満である場合には、金属粉末自体の入手が困難及び粉塵爆発の危険性が伴なってくる点から取り扱いが不便となり、80%超である場合には、自己燃焼反応の活性度が十分に高められず、複合材料の緻密化をなし得ないためである。具体的には、平均粒径50μmの第一の分散材に対しては平均粒径2〜40μmの金属粉末を用いることが好ましく、5〜30μmの金属粉末を用いることが更に好ましい。
【0051】本発明においては、第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。これらの形状を有する無機材料を用いることにより、最終製品としての使用用途に沿った強度や特徴を有する複合材料を製造することができる。
【0052】また、本発明においては、第二組織が第二の複合組織からなる場合における第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料であることが好ましい。これらの形状を有する無機材料を用いることにより、最終製品としての使用用途に沿った強度や特徴を有する複合材料を製造することができる。
【0053】なお、本発明において「平均粒径10〜150μmの第一の分散材」というときは、第一の分散材の形状が粒子状の場合にあっては、「平均粒径10〜150μmの粒子」のことをいい、また粒子状ではなく、繊維、ウィスカー等の場合にあっては、「長さ/径、の比が150未満の場合で、径が0.1〜30μmの繊維、ウィスカー等」、又は「長さ/径、の比が150以上の場合で、径が0.5〜500μmの繊維、ウィスカー等」のことをいう。
【0054】また、本発明においては、第一の分散材、及び第二組織が第二の複合組織からなる場合における、第二の分散材を構成する無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。複合材料は、これを構成するマトリックスに含まれるアルミナイド金属間化合物と分散材との組み合わせにより種々の特性を示すものであり、用途に応じた特性を示す複合材料となる組み合わせを適宜選択すればよい。
【0055】本発明においては、第一の分散材の、第一の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることが更に好ましい。第一の分散材の体積比率が10体積%に満たない場合には、得られる複合材料が複合材料としての十分な強度を発揮し得ず、また、70体積%を超える場合には、Al含有金属の浸透に不具合が生ずることが想定され、アルミナイド金属間化合物の生成が困難となり、不均質な組織が形成されるために好ましくない。
【0056】また、本発明においては、第二組織が第二の複合組織からなる場合には、第一の複合組織と同様、第二の分散材の第二の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることが更に好ましい。第二の分散材の体積比率が10体積%に満たない場合には、得られる複合材料が複合材料としての十分な強度を発揮し得ず、また、70体積%を超える場合には、Al含有金属の浸透に不具合が生ずることが想定され、アルミナイド金属間化合物の生成が困難となり、不均質な組織が形成されるために好ましくない。
【0057】本発明の複合材料の製造方法の一実施形態においては、図1に示すように、第一の分散材と金属粉末を混合して得た混合材料2を容器1内に配置された第二組織により構成された部材30の周囲に充填するが、その際に、混合材料2が所定の形状及び空隙率となるように適当な圧力にて成形を行ってもよい。また、予め適当な圧力を付与することにより混合材料2の成形を行っておき、これを充填してもよい。また、混合材料2の空隙率に関しては、成形する圧力を変化させることで任意に制御することができる。更に、特に大型部材や複雑形状部材を製造する場合においては、容器中の混合材料に振動を印加して沈降成形を行うことにより、プレス機等の加圧装置を用いずに成形することも可能である。
【0058】第一のマトリックスの形成自体は非常に短時間で完了するため、加熱に要する時間は数分程度で十分である。更に、自己燃焼反応が終了した後に、得られた複合材料の第一のマトリックスの均質化及び安定化を図るために、適宜等温保持や加熱保持を行ってもよい。このときの保持温度は、材料系によって若干左右されるが、自己燃焼反応が生じた温度と同一の温度から約400〜500℃程度高い温度で実施することが好ましく、また保持時間は約1時間から必要に応じて数時間実施してもよい。
【0059】また、本発明においては、容器が、少なくともその内壁がカーボン材により構成されてなるものであることが好ましい。内壁がこのように構成された容器を用いると、Al含有金属を溶融含浸して冷却した後、得られた複合材料を容器から容易に取り出すことができる。即ち、複合材料の、容器からの離型性が極めて良好となるために、容器の耐久性も向上し、複合材料の製造コストを低減することができる。なお、更なる離型性の向上を図るため、Al含有金属と接触する部位(面)に、BNスプレー等によるコーティングを行うこと、カーボンシート等を配置すること等も好ましい。
【0060】また、本発明の複合材料の製造方法においては、図3に示すように容器1内に第二組織により構成された部材30を配設し、その上に所望とする形状の孔10を有する蓋体11を載置するとともに、孔10の内側に混合材料2を充填し、この状態でAl含有金属4を混合材料2内部の空隙中に溶融含浸させることにより、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(第二の複合組織15)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、従来製造することが困難であったより複雑な形状を有する複合材料5を製造することができる。なお、本発明にいう「容器内」とは図3に示すように、載置される蓋体11に形成された孔10(含浸口)の内側まで含む意味である。従って、孔10の形状を所望とする複雑形状に対応する形状とすることにより、種々の複雑形状を有する複合材料5を製造することができる。
【0061】また、本発明の複合材料の製造方法においては、図4に示すように反応容器1内において、第二組織により構成された部材30を混合材料2中に埋設した状態とし、この状態でAl含有金属4を混合材料2内部の空隙中に溶融含浸させることにより、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(第二の複合組織15)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、従来製造することが困難であったより大型形状の複合材料5を製造することができる。ここで、本発明においては、第二組織により構成された部材30が第二の複合組織により構成された部材である場合において、第一組織13を構成する第一のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第一のマトリックスの全体に対する含有割合(R1(体積%))と、第二組織14を構成する第二のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、第二のマトリックスの全体に対する含有割合(R2(体積%))とが、同一の値でも異なった値でもよい。即ち、R1の値とR2の値とが同一である場合(R1=R2)には、この複合材料は全域において均一な物理的特性を有するものであり、各部位によって同一の物理的特性が要求される特殊部品等を構成する複合材料として好適である。一方、R1の値とR2の値とが同一でない場合(R1≠R2)には、この複合材料はこれらの値の異なる各部において剛性、強度、耐磨耗性等の物理的特性が異なるものであり、用途に応じた機能が要求される特殊部品等を構成する複合材料として好適である。
【0062】次に、本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態の複合材料の製造方法は、容器内に、第一組織により構成された部材を配設した状態で、容器内にAl含有金属を注湯することにより、第一組織と、アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする。以下、その詳細について説明する。
【0063】図5に示すように、本実施形態では、先ず所望とする製品形状に対応する形状の内部空間52を有する容器1内に、第一の複合組織により構成された部材51を載置する。次に、この内部空間52に連通する孔10からAl含有金属の溶湯を流し込んだ後、冷却することにより、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(金属組織16)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる、本実施形態の複合材料5を得ることができる。なお、図5に示すように不要な部分(切除部53)を金属組織とすることもできるため、形状加工性に優れた複合材料5を製造することができる。
【0064】次に、本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態の複合材料の製造方法は、容器内に、第一組織により構成された部材と、Al含有金属の溶湯とを配設した状態で、Al含有金属の溶湯に圧力を負荷して、容器内にAl含有金属の溶湯を充填させることにより、第一組織と、アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする。以下、その詳細について説明する。
【0065】図6に示すように、本実施形態では、いわゆるダイキャスト法を利用した方法により、特に複雑かつ微細な形状部分(微細形状部57)を有する複合材料5を製造することができる。具体的には、その内部空間(キャビティ)52に複雑・微細な形状の末端部56を有する容器(金型58)を使用し、その中に第一の複合組織により構成された部材51を載置する。次に、内部空間(キャビティ)52のうちの溶湯溜め空間54に配置した溶融状態のAl含有金属4をピストンにより加圧し、末端部56にまでAl含有金属4の溶湯を充填させた後に冷却し、脱型すれば、第一組織13(第一の複合組織12)と、第二組織14(金属組織16)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなり、かつ、複雑かつ微細な形状部分(微細形状部57)を有する複合材料5を得ることができる。
【0066】なお、図5及び図6に示す本発明の複合材料の製造方法の実施形態において用いるAl含有金属は、流動性に優れたAl−Si系合金が好ましく、より具体的には、Al−Si−Mg系合金(AC4C)、Al−Si−Cu−Ni−Mg系合金(AC8A)等が更に好ましい。特に、得られる複合材料の金属組織部分における機械的特性を考慮する場合にはAC8Aが好ましい。このような構成を有する複合材料5は、金属組織16を構成するAl含有金属の特性が反映されて靭性値が高く優れた衝撃吸収能を示すものであるとともに、第一組織13を構成する第一の複合組織12の特性が反映されて軽量・高剛性であるといった特性を有する。また、図5及び図6に示す実施形態の複合材料5はその特性を生かして、特に複雑形状で部分的に過酷な耐磨耗性が要求される部材(例えば、自動車関連部材)として好適である。その他、本発明の複合材料は、容器の内部空間の形状、第一組織からなる部材の形状、載置する位置・数等を設定することにより、精密機械、製造装置(半導体、ディスプレイ等)等の部材を構成する材料として好適である。
【0067】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施結果を説明する。
(鋳ぐるみ用複合部材の製造)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び含浸させるアルミニウム溶湯の原料となるアルミニウム材料として市販のアルミニウム合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内壁に高密度カーボンを設置したSUS316製金型容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、空隙率約48%の成形体とした。次に、含浸孔を有するカーボンからなる蓋体を成形体の上面に載置して、外周部の容器にて圧粉体を固定させた構造とし、これらの含浸孔に溶融したアルミニウム(Al)を含む金属が流れ込むようにアルミニウム(Al)を含む金属を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したアルミニウム(Al)を含む金属を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して、鋳ぐるみ用複合部材(第一組織により構成された部材、又は第二組織により構成された部材)を製造した。
【0068】
(実施例1)
鋳ぐるみ用複合部材(第一組織により構成された部材)を所定の形状に加工後、図5に示す容器1(鋳型(砂型))の内部空間(キャビティ)52に載置した。その後、150〜200℃にて鋳型を予熱し、約750℃にて溶解させたアルミニウム(Al)合金(AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系))を溶湯用セラミックスフィルターを介して孔10から流し込み、その後徐冷することにより複合材料(実施例1)を製造した。
【0069】
(実施例2)
所定の形状に加工した鋳ぐるみ用複合部材(第一組織により構成された部材)と、所定形状のアルミニウム(Al)合金(AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系))を、カーボン製の型内に載置した。その後、0.13Pa以下の真空雰囲気下、750℃にまで型を加熱してアルミニウム(Al)合金を溶融状態とし、約10分間保持後に徐冷することにより複合材料(実施例2)を製造した。
【0070】実施例1,2の複合材料を任意に切断し、各切断面における、アルミニウム(Al)合金と第一組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、良好に複合材料化されていることが判明した。また、界面のいずれの部分においても顕著な巣及び気孔等は確認されなかった。なお、実施例1,2の複合材料について、以下に示す方法により磨耗試験を実施した。
【0071】
[磨耗試験]:
得られた複合材料の第一組織の部分から所定形状・寸法の試験片を切り出し、φ200mmのディスク(外周面にラバーを接着)と試験片の間に磨耗粒子である珪砂(粒径1.0〜0.4mm)を落下させ、回転するディスクに試験片を荷重49Nで押しつける形にて常温で10分間の磨耗試験を実施した。なお、比較材にはアルミニウム(Al)合金(AC8A)、鋳鉄(FC−250)を用いた。試験の前後で試験片を洗浄・乾燥するとともにその質量を測定し、試験前後の質量差から磨耗質量、磨耗体積(=磨耗質量/材料密度)を求めた。更にアブレッシブ磨耗量を下記式(4)から求めた。
【0072】
【数4】
アブレッシブ磨耗量(mm3/kg)=磨耗体積/磨耗粒子の総質量…(4)
【0073】磨耗試験の結果、アブレッシブ磨耗量は、実施例1,2の複合材料:25mm3/kg、アルミニウム(Al)合金(AC8A):109mm3/kg、鋳鉄(FC−250):112mm3/kgであり、比較材に比して実施例1,2の複合材料の磨耗量が大幅に少ないことが判明した。このため、実施例1及び2においてAl合金(AC8A)と本複合材料を組み合わせた複合部材とすることによって、軽量性を有しながら部分的に耐磨耗性が向上した複合部材の製造が可能であった。
【0074】
(実施例3)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図1に示すような、容器1内の所定の位置に、金属組織により構成された部材32である鋳鉄(FC−250)を載置し、その外周部に前述の混合材料を流し込み、加振することによりタップ密度を上昇させ、所定の空隙率(約48%)とした。次に、孔10(含浸孔)を有するカーボンからなる蓋体11を、容器1内に充填された混合材料2に対応する部分に孔10が配されるように載置して、容器1で混合材料2を固定した状態とし、孔10に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにAl含有金属4を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したAl含有金属4を無加圧含浸させ、金属組織により構成された部材32との過剰な界面反応を抑制するため約10分保持後に徐冷することにより複合材料(実施例3)を製造した。
【0075】実施例3の複合材料を任意に切断し、各切断面における、鋳鉄(FC−250)と第一の複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、その界面において過剰な反応層の生成がなく、概ね良好に複合材料化されていることが判明した。また、実施例3の複合材料の鋳鉄(FC−250)部分に対して機械加工を行ったところ、例えば、ダイヤ系の工具でなければ加工が困難である第一の複合組織の部分と比較して、通常の金属材料と同様に加工が可能であることが判明した。また、加工時の発熱及び応力負荷によっても鋳鉄(FC−250)部分が剥離せず、良好な界面強度を有することが判明した。
【0076】
(実施例4)
金属組織により構成された部材を用いることに代えて、セラミックス組織により構成された部材であるイットリア部分安定化ジルコニア(Y2O3−PSZ)を用いること以外は、実施例3と同様の操作により複合材料(実施例4)を製造した。
【0077】実施例4の複合材料を任意に切断し、各切断面における、イットリア部分安定化ジルコニア(Y2O3−PSZ)と第一の複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、概ね良好に複合材料化されていることが判明した。
【0078】
(実施例5)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図3に示すような、容器1内の所定の位置に、第二組織により構成された部材30である鋳ぐるみ用複合材料((Ti/Al2O3)体積比の値が0.27)を載置し、その上面に、その形状が所定の形状である孔10(含浸孔)を有するカーボンからなる蓋体11を載置し、孔10内部に混合材料を流し込み、加振することによりタップ密度を上昇させ、所定の空隙率(約48%)とした。その後、孔10に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにAl含有金属4を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したAl含有金属4を無加圧含浸させ、約10分保持後に徐冷することにより同一組成の複合材料が組み合わされてなる複合材料(実施例5)を製造した。
【0079】実施例5の複合材料を任意に切断し、各切断面における、第一組織と第二組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織的に不均質な部分等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。
【0080】
(実施例6)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び含浸させるアルミニウム溶湯の原料となるアルミニウム材料として市販のアルミニウム合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.40となるように配合し、V型混合機により混合を行った。混合により得られた混合材料を、内壁に高密度カーボンを設置したSUS316製金型容器に充填し、その形状に沿う形で圧縮成形を行い、空隙率約49%の成形体とした。次に、含浸孔を有するカーボンからなる蓋体を成形体の上面に載置して、外周部の容器にて圧粉体を固定させた構造とし、これらの含浸孔に溶融したアルミニウム(Al)を含む金属が流れ込むようにアルミニウム(Al)を含む金属を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したアルミニウム(Al)を含む金属を無加圧含浸させ、約1時間保持後に徐冷して、鋳ぐるみ用複合部材(第二組織により構成された部材)を製造した。
【0081】平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末、及び市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg)を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図4に示すような、容器1内の所定の位置に鋳ぐるみ用複合部材(第二組織により構成された部材30)((Ti/Al2O3)体積比の値が0.40)を載置し、その外周部に前述の混合材料((Ti/Al2O3)体積比の値が0.27)を流し込み、加振することによりタップ密度を上昇させ、所定の空隙率(約48%)とした。次に、孔10(含浸孔)を有するカーボンからなる蓋体11を混合材料2の上面に載置して、容器1で混合材料2を固定した状態とし、孔10に溶融したアルミニウム(Al)合金が流れ込むようにAl含有金属4を配置した。0.13Pa以下の真空雰囲気下、600℃にて1時間の均熱化処理を行い、その後800℃にまで加熱して溶融したAl含有金属金属4を無加圧含浸させ、約10分保持後に徐冷することにより異種組成の複合材料が組み合わされてなる複合材料(実施例6)を製造した。
【0082】実施例6の複合材料を任意に切断し、各切断面における、第一組織と第二組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織的に不均質な部分等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。従って、部位によってその特性が変化した複合材料の製造が可能であることが判明した。
【0083】
(実施例7)
第二組織により構成された部材30である鋳ぐるみ用複合材料((Ti/Al2O3)体積比の値が0.27)を所定の形状に加工後、図6に示すダイキャスト用の金型58の内部空間(キャビティ)52に載置した。その後、300〜400℃にて金型58を予熱し、約750℃にて溶解させたアルミニウム(Al)合金(AC8A(Al−Si−Cu−Ni−Mg系))を約8MPaの圧力にて、金型58の内部空間(キャビティ)52中に注入することにより複合材料(実施例7)を製造した。
【0084】実施例7の複合材料を任意に切断し、各切断面における、第一組織と第二組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、組織的に不均質な部分等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。これは、ダイキャスト法を採用したことにより、溶湯注入時間が非常に短時間で完了したためであると考えられる。
【0085】
(実施例8)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.40となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。その後、図8に示すような、その内壁面にカーボン板60を設置した容器1に混合材料を入れ、所定の形状となるように圧縮成形を行って空隙率約49%の成形体61とした。次いで、大気中にて容器1を150〜200℃で予熱し、約800℃にて溶解させたAl含有金属4(市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg))を容器1内に注湯すると同時に約1MPaの圧力(含浸圧力)を負荷して溶融アルミニウム(Al)を成形体61の空隙に含浸させ、Al含有金属(金属組織16)と複合組織(第一組織13)とが組み合わされた複合材料5を製造した。
【0086】実施例8で製造した複合材料を任意に切断し、各切断面における、金属組織と複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、界面のいずれの箇所においても顕著な巣及び気孔等は確認されず、良好に複合材料化されていることが判明した。
【0087】
(実施例9)
平均粒径が約47μmのAl2O3粒子、平均粒径が約10μmのチタン(Ti)粉末を用意した。次に、チタン(Ti)粉末とAl2O3粒子を、(Ti/Al2O3)体積比の値が0.27となるように配合し、V型混合機により混合して混合材料を得た。得られた混合材料をプレス機にて圧縮成形し、空隙率約40%の成形体とした。その後、図7に示すような金型58の内部空間(キャビティ)52に成形体61を載置し、大気中にて金型58を150〜200℃で予熱し、約800℃にて溶解させたAl含有金属4(市販のアルミニウム(Al)合金(A5052:Al−2.5Mg))を溶湯溜め空間54に注湯し、ピストン部55により約3MPaの圧力を負荷して、成形体61の空隙中にAl含有金属4を含浸するとともに金型1の末端部56までAl含有金属4を注入し、Al含有金属(金属組織16)と複合組織(第一組織13)とが組み合わされた複合材料5を製造した。
【0088】実施例9で製造した複合材料を任意に切断し、各切断面における、金属組織と複合組織との界面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察したところ、界面のいずれの箇所においても顕著な巣及び気孔等は観察されず、良好に複合材料化されていることが判明した。従って、より軽量であるとともに、必要箇所が複合材料化されてなる、高機能性(耐熱・高強度・耐磨耗等)を有する複雑形状の複合材料の製造が可能であることが明らかとなった。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の複合材料は、所定の複合組織(第一組織)と、所定の第二組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなるものであるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えたものである。
【0090】また、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に、所定の第二組織により構成された部材を配設した状態で混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を所定状態で載置し、孔を経由して、Al含有金属を混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて第一のアルミナイド金属間化合物を生成させるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【0091】また、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に混合材料からなる成形体を配設し、Al含有金属を成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、第一のアルミナイド金属間化合物を生成させるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【0092】更に、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に、所定の第一組織により構成された部材を配設した状態で、容器内にAl含有金属を注湯するため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【0093】また、本発明の複合材料の製造方法によれば、容器内に、所定の第一組織により構成された部材と、Al含有金属の溶湯とを配設した状態で、Al含有金属の溶湯に圧力を負荷して、容器内にAl含有金属の溶湯を充填させるため、大型・複雑形状でありながらも緻密な微構造を有し、高破壊靭性、加工容易性等の優れた物理的特性を備えた複合材料を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合材料の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。
【図2】従来の複合材料の製造方法の一実施形態を説明する模式図である。
【図3】本発明の複合材料の製造方法の他の実施形態を説明する模式図である。
【図4】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図5】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図6】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図7】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【図8】本発明の複合材料の製造方法の更に他の実施形態を説明する模式図である。
【符号の説明】
1…容器、2…混合材料、3…空隙、4…Al含有金属、5…複合材料、6…マトリックス、7…分散材、8…ネジ部、9…蓋部材、10…孔、11…蓋体、12…第一の複合組織、13…第一組織、14…第二組織、15…第二の複合組織、16…金属組織、17…セラミックス組織、21…外挿体、30…第二組織により構成された部材、31…第二の複合組織により構成された部材、32…金属組織により構成された部材、33…セラミックス組織により構成された部材、36…第一のマトリックス、37…第一の分散材、51…第一の複合組織により構成された部材、52…内部空間(キャビティ)、53…切除部、54…溶湯溜め空間、55…ピストン部、56…末端部、57…微細形状部、58…金型、60…カーボン板、61…成形体。
Claims (15)
- アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料であって、
第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記第一の複合組織と同質又は異質の、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなることを特徴とする複合材料。 - 前記第二組織が、前記第二の複合組織からなる場合に、
前記第一のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、前記第一のマトリックスの全体に対する含有割合と、前記第二のマトリックスに含まれるアルミニウム(Al)の、前記第二のマトリックスの全体に対する含有割合とが、異なった値である請求項1に記載の複合材料。 - 前記第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料である請求項1又は2に記載の複合材料。
- 前記第二組織が、前記第二の複合組織からなる場合に、
前記第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。 - 前記無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種である請求項3又は4に記載の複合材料。
- 前記第一の分散材の、前記第一の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合材料。
- 前記第二組織が、前記第二の複合組織からなる場合に、
前記第二の分散材の、前記第二の複合組織に占める比率(体積比率)が、10〜70体積%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合材料。 - アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、
容器内に、第二のアルミナイド金属間化合物を含む第二のマトリックス中に第二の分散材が分散してなる第二の複合組織、金属組織、及びセラミックス組織からなる群より選択される少なくとも一種からなる組織(第二組織)により構成された部材を配設した状態で、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料を充填するとともに、一以上の孔を有する蓋体を、前記容器内に充填された前記混合材料に対応する部分に前記孔が配されるように載置し、前記孔を経由して、アルミニウム(Al)を含む金属を前記混合材料内部の空隙中に溶融含浸させて、前記金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に前記第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記第二組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法。 - アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、
容器内に、アルミニウム(Al)と接触することにより自己燃焼反応を生起し得る金属粉末と第一の分散材とを含む混合材料からなる成形体を配設し、アルミニウム(Al)を含む金属を前記成形体内部の空隙中に加圧条件下に溶融含浸させて、前記金属粉末とアルミニウム(Al)との自己燃焼反応によって第一のアルミナイド金属間化合物を生成させることにより、前記第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に前記第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法。 - 前記金属粉末が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、及びニオブ(Nb)からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる粉末である請求項8又は9に記載の複合材料の製造方法。
- アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、
容器内に、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる複合組織(第一組織)により構成された部材を配設した状態で、前記容器内にアルミニウム(Al)を含む金属を注湯することにより、前記第一組織と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法。 - アルミナイド金属間化合物を含むマトリックス中に分散材が分散してなる複合組織を構成要素として含む複合材料を製造する方法であって、
容器内に、第一のアルミナイド金属間化合物を含む第一のマトリックス中に第一の分散材が分散してなる第一の複合組織(第一組織)により構成された部材と、アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯とを配設した状態で、前記アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯に圧力を負荷して、前記容器内に前記アルミニウム(Al)を含む金属の溶湯を充填させることにより、前記第一組織と、前記アルミニウム(Al)を含む金属からなる組織とが、それぞれの存在領域を互いに区画・保持した状態で混在してなる複合材料を得ることを特徴とする複合材料の製造方法。 - 前記容器内に、前記第二の複合組織からなる組織により構成された部材を配設する場合に、前記第二の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料である請求項8に記載の複合材料の製造方法。
- 前記第一の分散材が、繊維、粒子、及びウィスカーからなる群より選択される少なくとも一種の形状を有する無機材料である請求項8〜13のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記無機材料が、Al2O3、AlN、SiC、及びSi3N4からなる群より選択される少なくとも一種である請求項13又は14に記載の複合材料の製造方法。
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JP2003130676A JP2004332056A (ja) | 2003-05-08 | 2003-05-08 | 複合材料及びその製造方法 |
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CN106244955A (zh) * | 2016-08-29 | 2016-12-21 | 湖北玉立恒洋新材料科技有限公司 | 汽车制动盘贴片用氧化铝短纤维增强镍基复合材料及其制备方法 |
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- 2003-05-08 JP JP2003130676A patent/JP2004332056A/ja not_active Withdrawn
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