JP2004060029A - 被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】化学気相蒸着法によって被膜を被成した後に、さらに該被膜上への張力付与型コーティングの焼き付けや歪取焼鈍等の熱処理を行った場合にあっても、優れた被膜密着性が上記被膜において維持される、低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法について提案する。
【解決手段】表面にフォルステライト被膜のない、最終仕上焼鈍済の方向性電磁鋼板の表面に、化学気相蒸着処理によって連続的に被膜を形成するに際し、該化学気相蒸着処理における、鋼板温度を雰囲気温度よりも高温にする。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関して、特に鋼板の表面に極めて張力付与効果の大きな被膜を形成し、鉄損特性の向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の2つに大別され、無方向性電磁鋼板は主として回転機等の鉄心材料に、方向性電磁鋼板は主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、いずれもエネルギーロスを少なくするため、低鉄損の材料が求められている。
【0003】
方向性電磁鋼板の鉄損低減には、板厚を低減する、Si含有量を増す、或いは結晶方位の配向性を高める等の方法があるが、それに加えて鋼板に張力を付与することが有効である。鋼板への張力の付与方法としては、鋼板より熱膨張係数の小さい材質からなる被膜を設けることが一般的である。すなわち、最終的に結晶方位を揃える2次再結晶と鋼板の純化とを兼ねる最終仕上焼鈍工程にて、鋼板表面の酸化物と鋼板表面に塗布した焼純分離剤とが反応してフォルステライトを主成分とする被膜が形成されるが、この被膜は鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減に効果がある。さらに、張力効果を増すために、フォルステライト被膜の上に、上塗りの低熱膨張性のコーティングを施して製品とすることも、一般に行われている。
【0004】
ところが、近年、鋼板表面を磁気的に平滑化する手法が開発され、仕上焼純工程で意図的にフォルステライト被膜の形成を抑制したり、形成されたフォルステライト被膜を除去した後、その表面を平滑に仕上げることが、鉄損の減少に有効であることが明らかとなってきている。例えば、特公昭52−24499号公報には、仕上焼鈍後、酸洗により表面生成物を除去し、次いで化学研磨または電解研磨により鏡面状態に仕上げる方法が開示されている。また、特開平5−43943号公報には、フォルステライト被膜を除去後、1000〜1200℃のH中でサーマルエッチングする方法が開示されている。このような表面処理によって鉄損が減少するのは、磁化過程において、鋼板表面近傍の磁壁移動の妨げとなる、ピニングサイトが減少するためである。
【0005】
なお、ヒステリシス損失を減少させる磁気的に平滑な表面とは、一般にRa(算術平均粗さ)で表現される、いわゆる表面粗さのみで示されるものでなく、特公平4−72920号公報に記載された、表面生成物を除去した後にハロゲン化水溶液中で電解する、結晶方位強調処理にて得られるものも知られている。
【0006】
また、電磁鋼板の表面には、絶縁性の被膜が必要であるため、絶縁コーティングが施されるのが通例であり、現在、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に適用される、張力付加型の絶縁コーティングとしては、Alやアルカリ土類金属のリン酸塩とコロイダルシリカ、無水クロム酸またはクロム酸塩を主成分とした処理液を、鋼板に塗布して焼付けることによって、形成されているものが多い。張力付加型の絶縁コーティングは、鋼板より熱膨張係数の小さいコロイダルシリカに代表される無機質被膜を高温で形成することより、地鉄と絶縁コーティングとの熱膨張差を利用して、常温において張力を鋼板に付与している。この方法で形成される絶縁被膜は鋼板に対して張力を付与する効果が大きく、鉄損低減に有効である。例えば、特公昭53−28375号公報あるいは特公昭56−52117号公報などに、その形成法が示されている。
【0007】
しかしながら、鋼板に対する張力付加の大きい被膜ほど、下地との密着力が強くなければ被膜が剥落してしまうため、上記張力付与型コーティングは、フォルステライト系の最終仕上焼鈍被膜が鋼板表面に存在する場合には問題ないが、鏡面化等の表面平滑化処理を行うような、最終仕上焼鈍後にフォルステライト被膜がない場合には、被膜を付着させることができなかった。このために、表面を磁気的に平滑化し鉄損を低減する技術と張力付与型コーティングによる鉄損低減技術とを両立させることは困難であった。
【0008】
従来、フォルステライト被膜のない表面、さらには調整された平滑な表面に張力付加型コーティングを被成する方法として、いくつかの方法が提案されている。例えば、特公昭52−24499号公報には金属めっき後に、そして特開平6−184762号公報にはSiO薄膜を形成させた後に、それぞれ張力付加コーティング溶液を塗布して焼付ける方法が、示されている。また、特公昭56−4150号公報には、セラミックス薄膜を蒸着、スパッタリング、または溶射などによって形成させる方法が、そして特公昭63−54767号公報には窒化物や炭化物のセラミックス被膜をイオンプレーティングまたはイオンプランテーションによって形成する方法が、それぞれ示されている。さらに、特開平2−243770号公報には、いわゆるゾル−ゲル法によって、高張力付与型のセラミックス被膜を鋼板表面に直接形成する方法が開示されている。
【0009】
これらの方法は、平滑化された表面を有する鋼板に張力を付与する方法として開発されたものではあるが、いくつかの問題点を有し、実用化されるに至っていない。
すなわち、金属薄めっきを下地とし、その上にコーティング処理する方法では、均一なめっき面の平滑さ故に、被膜の密着性が十分でなく、SiO薄膜を形成させる方法は張力付与効果に劣るなど、鉄損の改善効果は十分ではなかった。また、窒化物や炭化物等、あるいはその組合せからなるセラミックス被膜はいずれもその熱膨張係数が地鉄と比較してかなり低いため、熱膨張係数差による張力効果は大さいが、それゆえ曲げ加工時の地鉄と被膜との密着性に問題があった。
【0010】
さらに蒸着、スパッタリング、溶射、イオンプレーティング、イオンプランテーションによるセラミックス被膜の形成は高コストである上、大面積を大量処理する際の均一性確保が困難であったり、ゾル−ゲル法では従来と同様の塗布、焼付けによる被膜形成が可能であるものの、0.5μm以上の厚さの健全な被膜の形成がきわめて困難なため、大きな張力付与効果をもたらすには至らず、所期する鉄損善効果が得られなかった。
【0011】
特開昭63−57781号公報には、珪酸塩系被膜を設けた後、クロム酸やリン酸を主体とする絶縁被膜を形成する手法が開示されている。密着性は改善されるが、珪酸塩被膜、クロム酸−リン酸被膜ともに鋼板に対する張力付与効果がなく、被膜張力による鉄損値低減の効果は全く得られない。
【0012】
一方、特開昭61−201732号公報に開示されている化学気相蒸着法は、制約の多い真空槽を必要とすることなく、大面積に均一なセラミックス膜を形成することが可能な有力な手法である。すなわち、高温反応ゆえにセラミックスと鋼板との密着性も良好であり、上記スパッタリング、溶射、イオンプレーティング、イオンプランテーションなどの物理蒸着と比較して、被生成物の鋼板表面への衝突が弱いためか、平滑化された表面で達成されている極めて低いヒステリシス損失を損なうことなく、セラミックス膜を被成することが可能である。特に、ヤング率が高く、熱膨張係数の小さな窒化物や炭化物を、鋼板表面に被成するのに適している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,セラミックス膜被成後、さらに張力付与型の絶縁コーティングを施したり、剪断歪みを除去する目的で歪取焼鈍を実施した場合に、被膜剥離が生じ、鉄損値が劣化することがあった。これは、化学気相蒸着法に限らず前述の物理蒸着法にも当てはまる問題である。特に、工程簡略化のために、鋼板表面を無処理、または軽酸洗処理のみとし、実質的に地鉄層を除去しない処理プロセスにおいて、この傾向は顕著である。
【0014】
そこで、この発明は、化学気相蒸着法によって被膜を被成した後に、さらに該被膜上への張力付与型コーティングの焼き付けや歪取焼鈍等の熱処理を行った場合にあっても、優れた被膜密着性が上記被膜において維持される、低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法について提案することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、化学気相蒸着法によって被成した被膜の密着性を向上する手段について鋭意究明したところ、上記張力付与型コーティングの焼き付けや歪取焼鈍等の熱処理に対して、被膜中の窒化物や炭化物等の熱的安定性を高めること、そのためには化学気相蒸着処理中に鋼板表面を熱活性化することが有効であることを見出し、この発明を完成するに到った。
【0016】
すなわち、この発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)表面にフォルステライト被膜のない、最終仕上焼鈍済の方向性電磁鋼板の表面に、化学気相蒸着処理によって連続的に被膜を形成するに際し、該化学気相蒸着処理における、鋼板温度を雰囲気温度よりも高温にすることを特徴とする被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
(2)雰囲気ガスは、化学気相蒸着処理における雰囲気温度よりも低温で鋼板近傍に導入することを特徴とする上記(1)に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
【0018】
(3)鋼板を直接加熱して高温にすることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
【0019】
(4)鋼板の加熱は、通電加熱、誘導加熱または赤外線加熱にて行うことを特徴とする上記(3)に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
【0020】
(5)鋼板を化学気相蒸着処理における雰囲気温度よりも高い温度に予備加熱してから、化学気相蒸着処理に供することを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を導くに到った実験結果について詳細に説明する。
C:0.06mass%、Si:3.5mass%、Al:0.022mass%、N:81massppm、Sb:0.02mass%、Mn:0.04mass%、Se:0.02mass%およびBi:0.03mass%を含有する、最終板厚0.23mmに圧延された冷延鋼板を、脱炭、一次再結晶焼鈍した後、MgOを主体とし塩化アンチモンを添加した焼純分離剤を塗布し、二次再結晶過程と純化過程を含む最終仕上焼鈍を施し、フォルステライト被膜のない鏡面の方向性電磁鋼板を得た。
【0022】
その後、1040℃でTiClガス、HガスおよびNガスを主体とする雰囲気中で化学気相蒸着処理を行い、1.0μmのTiN膜を、鋼板表面に形成した。次いで、リン酸塩とコロイダルシリカとを主成分とする絶縁コーティング液を塗布し、850℃で焼成した。
【0023】
この際、雰囲気温度、雰囲気ガス温度および鋼板温度を全て1040℃で同一とした場合には、TiC1ガス:2〜15vol%、Hガス:30〜98 vol%およびNガス:0〜68 vol%の範囲で種々のガス組成に変化させても、いずれも絶縁コーティング液を塗布して焼成したのちに、地鉄−TiN界面で剥離が生じた。
【0024】
一方、温度:850℃の雰囲気ガスを低熱伝導率のセラミックス導管により鋼板に直接吹き付けた場合、鋼板を通電加熱(鋼板温度:1100℃)した場合、誘導加熱(鋼板温度:1140℃)した場合、赤外加熱(鋼板温度:1050℃)した場合および鋼板を事前に1120℃に加熱した後1040℃に保持した反応炉に導入した場合(この場合には鋼板温度は徐々に1040℃まで低下する)には、いずれも、リン酸塩とコロイデルシリカを主成分とする絶縁コーティング液を塗布し、850℃で焼成し、大気雰囲気中で歪取り焼鈍した後も、TiN膜は強固な密着性を有していた。
【0025】
上記の結果が得られた要因としては、以下のように考えられる。すなわち、雰囲気ガス温度よりも鋼板温度が高い場合には、TiN等のセラミックスが付着する鋼板表面において蒸着反応が活性化され、強固な被膜密着が得られたものと考えられる。ここでは、鋼板の絶対温度が高いことよりも、雰囲気との温度差が大きいことが重要であり、このことは新規知見である。おそらく、ガス分子が安定状態で鋼板上まで飛来し、急速に活性化されることが、この技術のポイントであると考えられる。さらに、セラミックスの第1層が形成された後も、気相中でセラミックスが析出する反応に優先して鋼板表面での成膜がなされるために、均質な膜質が得られ、密着性に寄与するものと考えられる。
【0026】
ここで、化学気相蒸着法としては、TiC1等の金属塩化物ガスと、もう一方の原料ガスとして、窒化物ならばN, NH, (CHN, (CHNHガスなど、炭化物ならばCH, CO, C, C, C, C, i−C12などを混合した雰囲気中にて、鋼板を加熱することにより、セラミックスの被膜を得る。もちろん、両者を混合して炭窒化物としても何ら問題はないし、酸化物や硼化物等も公知の方法で実施可能である。その他、バランスガスとしてArガスなどが使用される。
【0027】
また、金属源として、有機金属ガスを用いる、いわゆるMO−CVD法やプラズマやレーザー、光誘起などを併用し、より低温化を指向したCVD手法も近年盛んになりつつあるが、この発明の場合、後続の熱処理温度にもよるが、試料あるいは化学蒸着槽全体を加熱する熱CVD法がより適していると思われる。ただし、蒸着速度向上等を目的として、上記手法を併用するのは、この発明の範囲内であれば、何ら差し支えない。
【0028】
かくして得られる被膜物質としては、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Co,Ni,Al,BおよびSiなどの窒化物、炭化物、炭窒化物、または酸化物等であり、その2種以上を積層しても構わない。
【0029】
被膜の厚みについては、0.01μm以上5μm以下の範囲が適合し、0.01μmに満たない場合は、十分な張力付与効果や被膜密着性が得られず、5μmを越えると膜自身の密着性や電磁鋼板の占有率において不利となる。
【0030】
この発明に従って化学蒸着処理を適用する仕上焼鈍後の鋼板表面としては、単にフォルステライト被膜の形成を抑制した、もしくはフォルステライト被膜を除去しただけの地鉄面でも有効ではあるが、さらに表面に平滑化処理を施した方が、鉄損値の低下により効果的である。例えば、酸洗、サーマルエッチングや化学研磨等により表面粗さを極力小さくし、鏡面状態に仕上げた表面やハロゲン化物水溶液中での電解による結晶方位強調処理で得られるグレイニング様面等が挙げられる。
なお、フォルステライト被膜がない状態とは、フォルステライトが離散的な島状になる等、部分的に存在し、実質的に被膜を形成していない場合も含まれる。
【0031】
また、打ち抜き性等の加工性を重視して最終仕上焼鈍に使用する焼純分離剤の主成分を替えたり、添加物を加えることにより、最終仕上焼鈍被膜の形成を抑止した、方向性電磁鋼板も好適である。
【0032】
さらに、化学気相蒸着した窒化物、炭化物、炭窒化物または酸化物等の被膜上に被成する絶縁被膜としては、方向性電磁鋼板に使用される無機質コートが利用可能である。特に、張力付与効果を有するコーティングは、超低鉄損化を達成するために表面を平滑化した方向性電磁鋼板と組合せると、極めて有効である。張力付与型コーティングとしては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが推奨され、従来、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられている、リン酸塩−コロイダルシリカークロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から、適している。また、絶縁被膜の厚みとしては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から、0.3μm以上10μm以下の範囲が好ましい。
【0033】
また、張力コーティングとしては、上記以外にも、特開平6−65754号公報、特開平6−65755号公報および特開平6−299366号公報などで提案されている、ホウ酸−アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
【0034】
以下、この発明の電磁鋼板について、まず成分組成から順に説明する。
この発明で使用される鋼板の成分としては、Siを1.5〜7.0mass%含有することが望ましい。すなわち、Siは製品の電気抵抗を高め鉄損を低減するのに有効な成分であるが、Siは7.0mass%を超えると硬度が高くなり、製造や加工が困難になりがちである。一方、1.5%未満であると、最終仕上焼鈍中に変態を生じて安定した2次再結晶組織が得られない。
【0035】
また、インヒビター元素として、Alを初期鋼中に0.006mass%以上含有することにより、結晶配向性をより一層向上することができる。上限は0.06mass%程度であり、これを越えると再び結晶配向の劣化が生じる。
【0036】
Nも同様の効果があり、上限はふくれ欠陥の発生から100ppm程度とすることが好ましい。一方、下限は特に規定しないが、20ppm以下に工業的に低下させるのは経済的に困難である。
【0037】
また、1次再結晶焼鈍後に増窒素処理を行うことも可能である。この増窒化処理を行わない場合には、初期鋼中にSe+Sで0.01mass%以上0.06mass%以下を含有することが好適であり、加えてMn化合物として析出させるために0.02〜0.2mass%程度のMnを含有させることが好ましい。それぞれ、少なすぎると2次再結晶を生じるための析出物が過小となり、また多すぎると熱延前の固溶が困難となる。一方、増窒化処理を行う場合でも、Mnは鋼の延性改善などの目的で適宜の添加が可能である。
【0038】
さらに、鋼中には、上記の元素の他に、公知の方向性電磁鋼板の製造に適するインヒビター成分として、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInなどが知られていて、これらの元素を単独、または複合で含有させることができる。また、インヒビターを使用しない方法による方向性電磁鋼板に対しても、この発明の適用が可能である。
【0039】
一方、C,S,Nなどの不純物はいずれも、磁気特性上有害な作用があり、特に鉄損を劣化させるため、それぞれC:0.003mass%以下、S:0.002mass%以下およびN:0.002mass%以下とすることが好ましい。
【0040】
次に、この発明の電磁鋼板の製造方法について、詳しく説明する。
上記した所定成分に調整された鋼スラブは、通常スラブ加熱に供された後、熱間圧延により熱延コイルとされるが、この鋼スラブの加熱温度については1300℃以上の高温度とする場合と、1250℃以下の低温度とする場合のいずれでも良い。また、近年、スラブ加熱を行わず連続鋳造後、直接熱間圧延を行う方法が開発されているが、この方法で熱間圧延される場合にも適用できる。
【0041】
熱間圧延後の鋼板は必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回の冷間圧廷もしくは中間焼鈍を挟む複数回の圧延によって最終冷間圧延板とされる。これらの圧延については、動的時効を狙ったいわゆる温間圧延や、静的時効を狙ったパス間時効を施したものであっても良い。
【0042】
最終冷間圧延後の鋼板は、脱炭焼鈍を兼ねる1次再結晶焼鈍に供され、最終仕上焼純により2次再結晶処理をされ、方向性電磁鋼板を得る。通常、1次再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼純の際にフォルステライト被膜を形成させるが、このフォルステライト被膜を酸洗や研磨等により除去するか、もしくは焼鈍分離剤の組成を調整して、鋼板表面上のフォルステライト被膜の生成を抑制し、実質的に金属外観を有する状態とする。
【0043】
そして、この鋼板表面に前述した化学気相蒸着処理を行うが、その際の鋼板温度を雰囲気温度よりも高温とすることが肝要である。鋼板温度を雰囲気温度よりも高温とすることにより、化学気相蒸着処理にて被膜が強固に形成され、鋼板に曲げを施した際にも従来のものより剥離しにくい密着性の良い被膜が得られる。なお、鋼板温度は、雰囲気温度より10〜300℃高くすることが、被膜を強固にする上で好ましい。なぜなら、10℃未満では、活性化による鋼板上での密着促進効果が得られず、一方300℃をこえると、温度差を維持することが困難となり、化学気相蒸着処理槽の構造が複雑になるためである。
【0044】
ここで、鋼板温度を雰囲気温度より高温にするためには、雰囲気ガスを雰囲気温度つまり化学気相蒸着処理槽内の温度よりも低温の状態で鋼板表面近傍に導入する方法、または鋼板を直接加熱して雰囲気温度より高温とする方法、が挙げられる。後者は、通電加熱、誘導加熱および赤外線加熱の単独もしくは複合により直接加熱することが好ましい。
【0045】
また、鋼板を雰囲気温度よりも高い温度に予備加熱してから、鋼板を化学気相蒸着処理槽内に搬送することによっても、鋼板温度を雰囲気温度よりも高温にすることができる。この予備加熱を、前記した雰囲気ガスの低温導入や鋼板の直接加熱と組み合わせることは、鋼板が炉内に搬送された直後から処理槽を出るまでの間、鋼板温度を常に雰囲気温度より高温とすることができるため、好ましい。
【0046】
このようにして得られた鋼板に、更なる鉄損低減を目的として、レーザーあるいはプラズマ炎等を照射して磁区の細分化を行うことは、絶縁コーティングの密着性にはなんら問題ない。また、この発明の方向性電磁鋼板の製造工程の任意の段階において、磁区細分化のために、鋼板表面にエッチングや歯形ロールで一定間隔の溝を形成することも、一層の鉄損低減をはかる手段として有効である。
【0047】
【実施例】
実施例1
C:0.03mass%、Si:3.0mass%、Al:0.006mass%、N:30massppm、Sn:0.20mass%、Mn:0.03mass%およびS:0.02mass%を含有する、最終板厚0.23mmに圧延された冷延コイルに、磁区細分化のために5mm間隔で、圧延方向に延びる複数の溝をエッチングにて形成してから、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、MgOを主成分とし塩化鉛を含む焼純分離剤を塗布し、フォルステライト被膜のない平滑な表面を有する、最終仕上焼鈍済のコイルを作製した。得られた鋼板に対し、表1に示す組成のTiC1,HおよびCHの混合ガスからなる雰岡気中にて、TiCを片面当たり1μm厚で形成した。TiC1濃度はHガスをキャリアガスとしTiC1液中をバブリングさせることで調整した。その後、硼酸とベーマイトとを主成分とする絶縁コーティング液(酸化物換算モル比B/A1=0.5)をロールコーターにて塗布し、800℃で120秒間焼き付けた。さらに、張力付与のために、900℃で1時間の焼鈍を行った後、大気中での歪取り焼鈍を行った。
【0048】
表1に、雰囲気ガスの温度制御または鋼板加熱の条件を含む、TiC化学蒸着条件と、900℃1時間の張力向上焼鈍後の鉄損値W17 50と、歪取り焼鈍後の被膜密着性とをまとめて示す。なお、試料番号5の予備加熱では、化学蒸着処理槽に導人する際の鋼板の温度を示している。
【0049】
【表1】
Figure 2004060029
【0050】
実施例2
C:0.01mass%、Si:3.8mass%、Al:0.02mass%およびN:60massppmを含有する、最終板厚0.23mmに圧延された冷延板を、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍に供した後、酸洗によりSiO被膜を除去後、焼純分離剤としてアルミナを用いることにより、フォルステライト被膜のない平滑な表面を有する最終仕上焼鈍板を得た。得られた鋼板に対し、TiC1,HおよびNの混合ガスからなる雰囲気中にて、TiNを片面当たり0.7μm厚で形成した。TiC1は気化器で150℃に加熱することでガス化させ、HおよびNガスと表2に示す種々の混合比率でミキシングし、それぞれの分圧を調整した。
【0051】
その後、第一リン酸Mgに重クロム酸Kを15重量部加えた水溶液に、30mass%コロイダルシリカを30重量部混合したものを、ロールコーターで塗布し、800℃で1分間焼き付け、絶縁被膜を形成させた。さらに、歪取焼鈍として850℃で3時間の焼鈍を行った。
【0052】
表2に、TiN化学蒸着条件と、850℃3時間の歪取焼鈍後の鉄損値W17 50と、被膜密着性とをまとめて示した。なお,試料番号5の予備加熱では,炉に導入する際の鋼板の温度を示している。
【0053】
【表2】
Figure 2004060029
【0054】
【発明の効果】
この発明により、フォルステライト被膜のない平滑な方向性電磁鋼板の表面に、張力付与効果が大きく、かつ密着性に極めて優れる被膜を化学蒸着処理にて被成することができるため、熱的安定性に優れる極めて鉄損値の低い方向性電磁鋼板の製造が可能となる。

Claims (5)

  1. 表面にフォルステライト被膜のない、最終仕上焼鈍済の方向性電磁鋼板の表面に、化学気相蒸着処理によって連続的に被膜を形成するに際し、該化学気相蒸着処理における、鋼板温度を雰囲気温度よりも高温にすることを特徴とする被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 雰囲気ガスは、化学気相蒸着処理における雰囲気温度よりも低温で鋼板近傍に導入することを特徴とする請求項1に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 鋼板を直接加熱して高温にすることを特徴とする請求項1または2に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 鋼板の加熱は、通電加熱、誘導加熱または赤外線加熱にて行うことを特徴とする請求項3に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 鋼板を化学気相蒸着処理における雰囲気温度よりも高い温度に予備加熱してから、化学気相蒸着処理に供することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の被膜密着性に優れた超低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法。
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