JP4016756B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関して、特に鋼板の表面に極めて張力付与効果の大きな被膜を形成し、鉄損特性の向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の2つに大別され、無方向性電磁鋼板は主として回転機等の鉄心材料に、方向性電磁鋼板は主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、いずれもエネルギーロスを少なくするため、低鉄損の材料が求められている。
【0003】
方向性電磁鋼板の鉄損低減には、板厚を低減する、Si含有量を増す、或いは結晶方位の配向性を高める等の方法があるが、それに加えて鋼板に張力を付与することが有効である。鋼板への張力の付与方法としては、鋼板より熱膨張係数の小さい材質からなる被膜を設けることが一般的である。すなわち、最終的に結晶方位を揃える2次再結晶と鋼板の純化とを兼ねる最終仕上焼鈍工程にて、鋼板表面の酸化物と鋼板表面に塗布した焼純分離剤とが反応してフォルステライトを主成分とする被膜が形成されるが、この被膜は鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減に効果がある。さらに、張力効果を増すために、フォルステライト被膜の上に、上塗りの低熱膨張性のコーティングを施して製品とすることも、一般に行われている。
【0004】
ところが、近年、鋼板表面を磁気的に平滑化する手法が開発され、仕上焼純工程で意図的にフォルステライト被膜の形成を抑制したり、形成されたフォルステライト被膜を除去した後、その表面を平滑に仕上げることが、鉄損の減少に有効であることが明らかとなってきている。例えば、特公昭52-24499号公報には、仕上焼鈍後、酸洗により表面生成物を除去し、次いで化学研磨または電解研磨により鏡面状態に仕上げる方法が開示されている。また、特開平5-43943号公報には、フォルステライト被膜を除去後、1000〜1200℃のH中でサーマルエッチングする方法が開示されている。このような表面処理によって鉄損が減少するのは、磁化過程において、鋼板表面近傍の磁壁移動の妨げとなる、ピニングサイトが減少するためである。
【0005】
なお、ヒステリシス損失を減少させる磁気的に平滑な表面とは、一般にRa(算術平均粗さ)で表現される、いわゆる表面粗さのみで示されるものでなく、特公平4-72920号公報に記載された、表面生成物を除去した後にハロゲン化水溶液中で電解する、結晶方位強調処理にて得られるものも知られている。
【0006】
また、電磁鋼板の表面には、絶縁性の被膜が必要であるため、絶縁コーティングが施されるのが通例であり、現在、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に適用される、張力付加型の絶縁コーティングとしては、Alやアルカリ土類金属のリン酸塩とコロイダルシリカ、無水クロム酸またはクロム酸塩を主成分とした処理液を、鋼板に塗布して焼付けることによって、形成されているものが多い。張力付加型の絶縁コーティングは、鋼板より熱膨張係数の小さいコロイダルシリカに代表される無機質被膜を高温で形成することより、地鉄と絶縁コーティングとの熱膨張差を利用して、常温において張力を鋼板に付与している。この方法で形成される絶縁被膜は鋼板に対して張力を付与する効果が大きく、鉄損低減に有効である。例えば、特公昭53-28375号公報あるいは特公昭56-52117号公報などに、その形成法が示されている。
【0007】
しかしながら、鋼板に対する張力付加の大きい被膜ほど、下地との密着力が強くなければ被膜が剥落してしまうため、上記張力付与型コーティングは、フォルステライト系の最終仕上焼鈍被膜が鋼板表面に存在する場合には問題ないが、鏡面化等の表面平滑化処理を行うような、最終仕上焼鈍後にフォルステライト被膜がない場合には、被膜を付着させることができなかった。このために、表面を磁気的に平滑化し鉄損を低減する技術と張力付与型コーティングによる鉄損低減技術とを両立させることは困難であった。
【0008】
従来、フォルステライト被膜のない表面、さらには調整された平滑な表面に張力付加型コーティングを被成する方法として、いくつかの方法が提案されている。例えば、特公昭52-24499号公報には金属めっき後に、そして特開平6-184762号公報にはSiO2薄膜を形成させた後に、それぞれ張力付加コーティング溶液を塗布して焼付ける方法が、示されている。また、特公昭56−4150号公報には、セラミックス薄膜を蒸着、スパッタリング、または溶射などによって形成させる方法が、そして特公昭63-54767号公報には窒化物や炭化物のセラミックス被膜をイオンプレーティングまたはイオンプランテーションによって形成する方法が、それぞれ示されている。さらに、特開平2-243770号公報には、いわゆるゾル−ゲル法によって、高張力付与型のセラミックス被膜を鋼板表面に直接形成する方法が開示されている。
【0009】
これらの方法は、平滑化された表面を有する鋼板に張力を付与する方法として開発されたものではあるが、いくつかの問題点を有し、実用化されるに至っていない。
すなわち、金属薄めっきを下地とし、その上にコーティング処理する方法では、均一なめっき面の平滑さ故に、被膜の密着性が十分でなく、SiO2薄膜を形成させる方法は張力付与効果に劣るなど、鉄損の改善効果は十分ではなかった。また、窒化物や炭化物等、あるいはその組合せからなるセラミックス被膜はいずれもその熱膨張係数が地鉄と比較してかなり低いため、熱膨張係数差による張力効果は大きいが、それゆえ曲げ加工時の地鉄と被膜との密着性に問題があった。
【0010】
さらに蒸着、スパッタリング、溶射、イオンプレーティング、イオンプランテーションによるセラミックス被膜の形成は高コストである上、大面積を大量処理する際の均一性確保が困難であったり、ゾル−ゲル法では従来と同様の塗布、焼付けによる被膜形成が可能であるものの、0.5μm以上の厚さの健全な被膜の形成がきわめて困難なため、大きな張力付与効果をもたらすには至らず、所期する鉄損改善効果が得られなかった。
【0011】
特開昭63-57781号公報には、珪酸塩系被膜を設けた後、クロム酸やリン酸を主体とする絶縁被膜を形成する手法が開示されている。密着性は改善されるが、珪酸塩被膜、クロム酸−リン酸被膜ともに鋼板に対する張力付与効果がなく、被膜張力による鉄損値低減の効果は全く得られない。
【0012】
一方、特開昭61-201732号公報に開示されている化学気相蒸着法は、制約の多い真空槽を必要とすることなく、大面積に均一なセラミックス膜を形成することが可能な有力な手法である。すなわち、高温反応ゆえにセラミックスと鋼板との密着性も良好であり、上記スパッタリング、溶射、イオンプレーティング、イオンプランテーションなどの物理蒸着と比較して、被生成物の鋼板表面への衝突が弱いためか、平滑化された表面で達成されている極めて低いヒステリシス損失を損なうことなく、セラミックス膜を被成することが可能である。特に、ヤング率が高く、熱膨張係数の小さな窒化物や炭化物を、鋼板表面に被成するのに適している。
【0013】
ここで、化学蒸着法は、熱活性律速である化学反応を促進するため、高温にしたり、プラズマを併用したり、レーザー、光等で反応ガスを励起させることが行われる。熱化学気相蒸着法では、基板(鋼板)のみを加熱する、いわゆる冷壁型反応槽と、反応槽全体を加熱して鋼板を加熱する、いわゆる外熱型反応槽とが使用される。冷壁型は基板が小さい場合には有利であるが、基板全体を均一の温度に加熱することが難しく、温度に敏感な熱化学気相反応法では部位によって被膜厚みに差が現れるという問題が生じる。一方、外熱型の場合、基板温度の均一性にはすぐれるが、反応槽の壁にも被生成物が同時に析出してしまうという問題は避けられなかった。
【0014】
特開昭62−227075号公報には、SiCl4ガスを含む反応ガスを珪素鋼表面にノズルで吹付け、表面でのFe3Si形成速度を高める手法が開示されており、ノズルの使用で飛躍的に形成速度が向上すること、鋼板に対して直角に吹付けるよりも斜角で吹付ける方が有利であることが示されている。そして、「鉄と鋼」(1994)p.777には、スリットノズルを使用して斜角吹付を行うと、Fe3Si形成反応の副生成物として生成されるFeClの除去が促進されることが記載されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
かように、スリットノズルを使用して斜めの吹付けを行うことによって、被膜の形成速度が向上し、かつ副生成物の影響を排除することが可能になる。しかしながら、FeSiの形成反応は、鋼板中のFeをSiで置換させる置換反応であるため、単に斜めに吹付けることで反応率が向上し形成速度が高まるのであるが、例えばTiとNとによりTiNを合成させ鋼板表面に析出させるような合成反応が必要である、化学気相蒸着法においては、単に斜めに吹付けるだけでは必ずしも析出率は改善されず、被膜形成速度としては不十分なものであった。
【0016】
そこで、この発明は、化学気相蒸着法によって被膜を形成するに当たり、被膜形成に必要な反応ガスをスリットノズルから供給する際の上記問題を有利に解消して、超低鉄損の方向性電磁鋼板を製造する方途について提案することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、熱壁型の化学気相蒸着法で問題となる反応槽壁への副生成物の生成を抑制するべく検討を重ねたところ、反応ガスの供給にスリットノズルを使用し、かつその噴出条件を最適化することによって、鋼板表面上への成膜を優先的に進められることを新規に知見し、この発明を完成するに到った。
【0018】
すなわち、この発明は、表面にフォルステライト被膜のない、最終仕上焼鈍済の方向性電磁鋼板の表面に、スリットノズルを介して反応ガスを供給して、反応槽内の温度が 900 ℃以上である外熱型の化学気相蒸着処理によりTiNもしくはTiC被膜を形成するに際し、該スリットノズルから鋼板の表面に向かう、反応ガスの線速度vを1cm/s以上、かつスリットノズルの開口と鋼板表面との距離dおよび反応ガスの鋼板表面に対する吹き付け角度θについて、v・sinθ/d≧0.5(s−1)を満足することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を導くに到った実験結果について詳細に説明する。
C:0.06mass%およびSi:3mass%を含み、さらにAlN、CuSeおよびSbをインヒビターとして含有する、最終板厚0.23mmに圧延された冷延鋼板を、脱炭、一次再結晶焼鈍した後、MgOを主体とし塩化アンチモンを添加した焼純分離剤を塗布し、二次再結晶過程と純化過程を含む最終仕上焼鈍を施し、フォルステライト被膜のない鏡面の方向性電磁鋼板を得た。
【0020】
その後、化学気相蒸着処理の反応槽内を950℃に加熱し、該槽内に100mm幅の鋼板を導入し、図1に示すように、この幅と同一のスリット幅をもつ反応ガスの噴出ノズル1を鋼板2の表面に正対させ、TiC14ガス、H2ガスおよびN2ガスの混合ガスを吹き付けることによって化学気相蒸着を行い、0.8μm厚のTiN被膜を形成した。
【0021】
反応ガスを吹き付けた鋼板表面2aに生成したTiN量と、この表面と反対の裏面2bおよび反応槽の内壁に生成したTiN量とを計測し、その結果を、鋼板表面2aへの形成割合が全体の60%以上を○、同25%以上50%未満を△、同25%未満を×として、図2に示す。
【0022】
ここで、スリットノズル1から鋼板2の表面2aに向かう、反応ガスの線速度をv(cm/s)、スリットノズル1の開口と鋼板表面2aとの距離をd(cm)および反応ガスの鋼板表面2aに対する吹き付け角度をθ(°)とすると、スリットノズル1の開口から鋼板表面2aまでの距離はd/sinθで表せる。そして、図2に示すように、線速度vを距離d/sinθで除した値が0.5(s−1)以上である場合に、鋼板表面への成膜割合が50%以上となることがわかった。
【0023】
さて、熱化学気相蒸着法の場合、温度が高いために原料ガスの反応率自身はほぼ100%であり、化学反応で合成されたTiNなどの蒸着物がどこに析出するかが問題となる。従って、目的とする鋼板表面へ蒸着物が析出することが肝要であり、これは線速度vを距離d/sinθで除した値、すなわちv・sinθ/dを0.5(s−1)以上とすることによって実現できる。
【0024】
さらに、吹付け速さである反応ガスの線速度vは、1cm/s以上とする必要がある。なぜなら、反応ガスの線速度vが1cm/s未満であると、距離dを短くしても鋼板表面へ優先して成膜することが難しくなるからである。一方、反応ガスの線速度vを高めれば、距離dを大きくすることは可能であるが、実際には噴出した反応ガスが広がることを考慮して、距離dは50cm以下とすることが望ましい。
【0025】
以上の実験結果から、v・sinθ/d≧0.5(s−1)を満足する条件に従って有利な成膜が実現できること、従って、スリットノズルからの吹付けを斜角方向とした、前述の特開昭62−227076号公報の技術と異なり、例えば鋼板に対して直角方向に反応ガスを吹き付ける場合が最も吹付け速度(線速度v)を小さくすることができて有利であることがわかった。さらに、反応ガスの線速度vと、ノズル開口および鋼板間の距離dも重要であることがわかった。
【0026】
ここで、化学気相蒸着法としては、TiC14等の金属塩化物ガスと、もう一方の原料ガスとして、窒化物ならばN2, NH3, (CH3)3N, (CH3)2NHガスなど、炭化物ならばCH4, CO, C2H4, C3H6, C3H8, C2H6, i-C5H12など、硼化物ならばBC13、B2H6などを混合した雰囲気中にて、鋼板を加熱することにより、セラミックスの被膜を得る。もちろん、これらを混合して炭窒化物としても何ら問題はない。
【0027】
また、金属源として、有機金属ガスを用いる、いわゆるMO−CVD法やプラズマやレーザー、光誘起などを併用し、より低温化を指向したCVD手法も近年盛んになりつつあるが、この発明の場合、後続の熱処理温度にもよるが、試料あるいは化学蒸着槽全体を加熱する熱CVD法がより適していると思われる。ただし、蒸着速度向上等を目的として、上記手法を併用するのは、この発明の範囲内であれば、何ら差し支えない。
【0028】
かくして得られる被膜物質としては、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Co,Ni,Al,BおよびSiなどの窒化物、炭化物または炭窒化物等であり、その2種以上を積層しても構わない。
【0029】
被膜の厚みについては、0.01μm以上5μm以下の範囲が適合し、0.01μmに満たない場合は、十分な張力付与効果や被膜密着性が得られず、5μmを越えると膜自身の密着性や電磁鋼板の占有率において不利となる。
【0030】
この発明に従って化学蒸着処理を適用する仕上焼鈍後の鋼板表面としては、単にフォルステライト被膜の形成を抑制した、もしくはフォルステライト被膜を除去しただけの地鉄面でも有効ではあるが、さらに表面に平滑化処理を施した方が、鉄損値の低下により効果的である。例えば、サーマルエッチングや化学研磨等により表面粗さを極力小さくし、鏡面状態に仕上げた表面やハロゲン化物水溶液中での電解による結晶方位強調処理で得られるグレイニング様面等が挙げられる。
なお、「フォルステライト被膜がない状態」とは、フォルステライトが離散的な島状になる等、部分的に存在し、実質的に被膜を形成していない場合も含まれる。
【0031】
また、打ち抜き性等の加工性を重視して最終仕上焼鈍に使用する焼純分離剤の主成分を替えたり、添加物を加えることにより、最終仕上焼鈍被膜の形成を抑止した、方向性電磁鋼板も好適である。
【0032】
さらに、化学気相蒸着した被膜上に被成する絶縁被膜としては、方向性電磁鋼板に使用される無機質コートが利用可能である。特に、張力付与効果を有するコーティングは、超低鉄損化を達成するために表面を平滑化した方向性電磁鋼板と組合せると、極めて有効である。張力付与型コーティングとしては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが推奨され、従来、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられている、リン酸塩−コロイダルシリカークロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から、適している。また、絶縁被膜の厚みとしては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から、0.3μm以上10μm以下の範囲が好ましい。
【0033】
また、張力コーティングとしては、上記以外にも、特開平6-65754号公報、特開平6-65755号公報および特開平6-299366号公報などで提案されている、ホウ酸−アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
【0034】
以下、この発明の電磁鋼板について、まず成分組成から順に説明する。
この発明で使用される鋼板の成分としては、Siを1.5〜7.0mass%含有することが望ましい。すなわち、Siは製品の電気抵抗を高め鉄損を低減するのに有効な成分であるが、Siは7.0mass%を超えると硬度が高くなり、製造や加工が困難になりがちである。一方、1.5%未満であると、最終仕上げ焼鈍中に変態を生じて安定した2次再結晶組織が得られない。
【0035】
また、インヒビター元素として、Alを初期鋼中に0.006mass%以上含有することにより、結晶配向性をより一層向上することができる。上限は0.06mass%程度であり、これを越えると再び結晶配向の劣化が生じる。
【0036】
Nも同様の効果があり、上限はふくれ欠陥の発生から100ppm程度とすることが好ましい。一方、下限は特に規定しないが、20ppm以下に工業的に低下させるのは経済的に困難である。
【0037】
さらに、鋼中には、上記の元素の他に、公知の方向性電磁鋼板の製造に適するインヒビター成分として、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInなどが知られていて、これらの元素を単独、または複合で含有させることができる。また、インヒビターを使用しない方法による方向性電磁鋼板に対しても、この発明の適用が可能である。
【0038】
一方、C,S,Nなどの不純物はいずれも、磁気特性上有害な作用があり、特に鉄損を劣化させるため、それぞれC:0.003mass%以下、S:0.002mass%以下およびN:0.002mass%以下とすることが好ましい。
【0039】
次に、この発明の電磁鋼板の製造方法について、詳しく説明する。
上記した所定成分に調整された鋼スラブは、通常スラブ加熱に供された後、熱間圧延により熱延コイルとされるが、この鋼スラブの加熱温度については1300℃以上の高温度とする場合と、1250℃以下の低温度とする場合のいずれでも良い。また、近年、スラブ加熱を行わず連続鋳造後、直接熱間圧延を行う方法が開発されているが、この方法で熱間圧延される場合にも適用できる。
【0040】
熱間圧延後の鋼板は必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回の冷間圧廷もしくは中間焼鈍を挟む複数回の圧延によって最終冷間圧延板とされる。これらの圧延については、動的時効を狙ったいわゆる温間圧延や、静的時効を狙ったパス間時効を施したものであっても良い。
【0041】
最終冷間圧延後の鋼板は、脱炭焼鈍を兼ねる1次再結晶焼鈍に供され、最終仕上焼純により2次再結晶処理をされ、方向性電磁鋼板を得る。通常、1次再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼純の際にフォルステライト被膜を形成させるが、このフォルステライト被膜を酸洗や研磨等により除去するか、もしくは焼鈍分離剤の組成を調整して、鋼板表面上のフォルステライト被膜の生成を抑制し、実質的に金属外観を有する状態とする。
【0042】
そして、この鋼板表面に前述した化学気相蒸着処理を行うが、スリットノズルを介して反応ガスを供給する際、該スリットノズルから鋼板の表面に向かう、反応ガスの線速度vを1cm/s以上、かつスリットノズルの開口と鋼板表面との距離dおよび反応ガスの鋼板表面に対する吹き付け角度θについて、v・sinθ/d≧0.5(s−1)を満足することが肝要である。
【0043】
すなわち、反応ガスの線速度vが1cm/s未満であると、反応ガスが反応槽全体に拡散してしまい、鋼板表面への優先成膜が難しくなる。なお、上限は特に設けないが、線速度が5m/sより大きくなると、鋼板が振動するなどの問題が生じるため、線速度は5m/s以下とすることが好ましい。
【0044】
また、反応ガスの線速度vがdに対して小さかったり、鋼板との吹付け角度が小さすぎてv・sinθ/dが0.5(s−1)未満となる場合、鋼板表面への優先的な成膜が困難になる。なお、上限は特に設けないが、噴出するガスの拡がりを考慮すると、距離dは50cm以下が望ましく、vは上述のように、5m/s以下が望ましいため、v・sinθ/dは10以下とすることが好ましい。
【0045】
このようにして得られた鋼板に、更なる鉄損低減を目的として、レーザーあるいはプラズマ炎等を照射して磁区の細分化を行うことは、絶縁コーティングの密着性にはなんら問題ない。また、この発明の方向性電磁鋼板の製造工程の任意の段階において、磁区細分化のために、鋼板表面にエッチングや歯形ロールで一定間隔の溝を形成することも、一層の鉄損低減をはかる手段として有効である。
【0046】
【実施例】
実施例1
C:0.05mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.06mass%、S:0.03mass%、Se:0.001mass%、Al:0.02mass%、N:0.0080mass%およびSn:0.3mass%を含有する、最終板厚0.23mmに圧延された冷延コイルに、磁区細分化のために5mm間隔で、圧延方向に延びる複数の溝をエッチングにて形成してから、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、MgOを主成分とする焼純分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を施した。得られた鋼板に対し、フッ酸とクロム酸の混酸による処理で表面のフォルステライト被膜を除去し、鏡面状態に仕上げた。次いで、TiC14、H2およびCH4の混合に成る反応ガスを、スリットノズルを使用して鋼板表面に吹付け、1000℃で片面にTiC被膜を0.5μm厚で形成した。その際、スリットノズル開口と試料との距離d、そして吹付けた反応ガスの線速度vを任意に変化させた。なお、吹付け角度θは10°から90°の範囲とした。
【0047】
この化学気相蒸着処理において、吹付け面のTiC生成量および石英製の反応槽へのTiC生成量を、それぞれ重量増加により測定し、その結果から鋼板表面へのTiCの析出割合を算出した。その結果を、反応ガスの吹付け条件と併せて、表1に示す。なお、TiC生成物の鋼板裏面側への回り込みも若干見られたが、これは測定対象から外した。
【0048】
表1から明らかなように、試料5および6は、この発明に適合する化学気相蒸着処理によってTiC被膜を形成したものであり、反応ガスの50%以上がTiCとして鋼板に被成された。これらに対して、試料1や2はスリットノズル開口と鋼板表面との距離に比して反応ガスの線速度が小さすぎたり、試料4のように吹付角度が小さすぎたり、試料3や7のように反応ガスの線速度自身が小さいため、鋼板表面へのTiCの析出割合が減少し、反応槽の内壁への析出が増大してしまった。
【0049】
【表1】
Figure 0004016756
【0050】
実施例2
C:0.030mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.2mass%、S:0.0004mass%、Se:0.0005mass%、Al:0.0025mass%およびN:0.0012mass%を含有する、最終板厚0.23mmに圧延された冷延板を、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍に供した後、酸洗によりSiO2被膜を除去後、焼純分離剤としてアルミナを用いることにより、フォルステライト被膜のない平滑な表面を有する最終仕上焼鈍板を得た。得られた鋼板に対し、TiC14,H2およびN2を混合した反応ガスを、900℃に加熱した反応槽内において、鋼板の表裏面に線対称となるように配置したスリットノズルから噴出し、鋼板片面当たりTiNを0.5μm厚で形成した。その際、スリットノズル開口と試料との距離d、そして吹付けた反応ガスの線速度vを任意に変化させた。なお、吹付け角度θは10°から90°の範囲とした。
【0051】
この化学気相蒸着処理において、鋼板両面のTiN生成量および石英製の反応槽へのTiN生成量を、それぞれ重量増加により測定し、その結果から鋼板表面へのTiNの析出割合を算出した。その結果を、反応ガスの吹付け条件と併せて、表2に示す。
【0052】
表2から明らかなように、試料5および6は、この発明に適合する化学気相蒸着処理によってTiN被膜を形成したものであり、反応ガスの50%以上がTiNとして鋼板に被成された。これらに対して、試料1〜3はスリットノズル開口と鋼板表面との距離に比して噴出ガスの線速度が小さすぎたり、試料4のように吹付角度が小さいため、鋼板表面への析出割合が減少し、反応管の内壁への析出が増大してしまった。試料1や7は、噴出ガスの線速度が小さく、鋼板表面への優先析出の効果は小さく、その析出割合から反応槽内壁全体にほぼ均一にTiNが析出していた。
【0053】
【表2】
Figure 0004016756
【0054】
【発明の効果】
この発明により、フォルステライト被膜のない平滑な方向性電磁鋼板の表面に、張力付与効果の大きな被膜を、化学蒸着処理にて効率よく被成することができるため、熱的安定性に優れる極めて鉄損値の低い方向性電磁鋼板の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スリットノズルの配置を示す図である。
【図2】 スリットノズルからの反応ガスの吹き付け条件の適正範囲を示す図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 鋼板
2a 鋼板表面
2b 鋼板裏面

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  1. 表面にフォルステライト被膜のない、最終仕上焼鈍済の方向性電磁鋼板の表面に、スリットノズルを介して反応ガスを供給して、反応槽内の温度が 900 ℃以上である外熱型の化学気相蒸着処理によりTiNもしくはTiC被膜を形成するに際し、該スリットノズルから鋼板の表面に向かう、反応ガスの線速度vを1cm/s以上、かつスリットノズルの開口と鋼板表面との距離dおよび反応ガスの鋼板表面に対する吹き付け角度θについて、v・sinθ/d≧0.5(s−1)を満足することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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