JP2004060020A - 電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレス成形等により金型と接触して摺動を受けた表面の塗装仕上がりを良好にすることができる電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板表面に形成された亜鉛めっき層と、該めっき層表面に形成された結晶サイズが3μm 以下のリン酸亜鉛被膜を有し、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有する亜鉛めっき鋼板。
【選択図】 なし
【解決手段】鋼板表面に形成された亜鉛めっき層と、該めっき層表面に形成された結晶サイズが3μm 以下のリン酸亜鉛被膜を有し、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有する亜鉛めっき鋼板。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板に関し、特に、プレス成形などにより摺動を受けた表面の塗装仕上がりを良好にすることができる電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
亜鉛めっきを施した表面処理鋼板は、優れた耐食性を有し、自動車車体や家電製品に用いられている。特に自動車用途の表面処理鋼板としては、電気めっき法によって鋼板(原板とも呼ばれる)に亜鉛めっき層を形成し、その後、リン酸塩処理を施して亜鉛めっき層表面にリン酸亜鉛被膜を形成した亜鉛めっき鋼板が適用されている。このようなリン酸塩処理を施した亜鉛めっき鋼板は、リン酸亜鉛被膜がプレス金型と亜鉛めっき被膜との直接接触を防ぎ、緩衝剤として働くこと、またリン酸亜鉛被膜がその結晶の隙間に油を保持できることなどにより、プレス成形性に優れていることが知られている。
【0003】
一方、自動車用途の表面処理鋼板は、普通、金型を用いてプレス成形され、所定の部品形状としてから下地塗装として電着塗装が施され、さらに、自動車車体外面側には外観意匠性のために中塗り塗装、上塗り塗装等のスプレー塗装による仕上げ塗装が施される。その際、電着塗装仕上がりが悪い場合、その影響が仕上げ塗装後にまで影響するため、電着塗装仕上がりをある一定レベル以上にすることが要求される。
【0004】
従来、リン酸塩処理を施した亜鉛めっき鋼板は、プレス成形性および電着塗装性を一定レベル以上にするため、リン酸亜鉛被膜量やリン酸亜鉛被膜中のNiおよびMn含有量の上下限値を規定するなどして製造していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リン酸亜鉛被膜量やリン酸亜鉛被膜中のNiおよびMn含有量を適正に管理していても、リン酸塩処理が施された亜鉛めっき鋼板をプレス成形した場合、摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりが悪いものがあり、このような部品は、スプレーによる仕上げ塗装を行う前に電着塗装面を研いで表面を平滑にする表面手入れを行わなければならず、問題となることがあった。
【0006】
これに対して例えば特開平9−263967号公報や特公平5−83628号公報には表面粗さ特性を規定した鋼板が開示されている。しかしながら、特開平9−263967号公報に開示されている表面処理鋼板は、表面粗さのWcaとPPIの積が40以下、またはWcaが0.5μm以下でPPIが80以下とした溶融亜鉛めっき鋼板であり、プレス成形などによる摺動を受けた場合、摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりが不十分であり、また、特公平5−83628号公報には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の鋼板の粗度を、Ra;1.0μm以下、PPI;250以上としているがこの場合、耐パウダリング性、耐フレーキング性に優れているが、プレス成形時に金型と接触して摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりに問題があった。
【0007】
また、特開平6−246306号公報および特開平6−269803号公報には塗装鮮映性とプレス成形性に優れた鋼板が開示されているものの、これらの鋼板は表面粗さRaを0.8μm以下と規定し、さらには表裏で異なる表面粗度特性を有するもので、このような鋼板をめっき原板とした表面処理鋼板を使用しても、プレス成形等により摺動を受けた表面の電着塗装面に肌不良が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、プレス成形等により金型と接触して摺動を受けた表面の塗装仕上がりを良好にすることができる電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プレス成形により金型と接触して摺動を受けた表面の電着塗装外観に影響を与える要因を究明し、被膜特性と表面粗さ特性を規定することにより、上記課題を解決した。
本発明は、鋼板表面に形成された亜鉛めっき層と、該めっき層表面に形成された結晶サイズが3μm 以下のリン酸亜鉛被膜を有し、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有することを特徴とする電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、電着塗装外観に影響を与える要因がプレス成形などにより摺動を受ける前の表面処理鋼板の表面粗さ特性にあるとの知見に至った過程について以下詳細に述べる。
発明者らは、表1に示す表面粗さ特性が異なるリン酸塩処理を施した亜鉛めっき鋼板A、B(製品A、Bともいう)を用い、自動車車体用プレス機にてプレス成形し、電着塗装外観に影響を与える要因について種々の分析装置を駆使して調査した。調査は条件1;プレス成形せず、実施例に示す化成処理を施し、電着塗装した場合、条件2;プレス成形した後、同様に化成処理を施し、電着塗装した場合の2条件で行って比較した。図2に製品Aの、図3に製品Bのプレス成形により摺動を受けた表面状態を示した。図2、図3は、試料表面の電子顕微鏡写真を分かりやすく示したスケッチ図であり、図中、黒色部がプレス成形時、金型と接触し摺動により押し潰された部分である。
【0011】
【表1】
【0012】
製品Aの表面粗さは、Raが0.7μm、PPIが140であり、凹凸が少なく且つ山数も少ない。製品Aをプレス成形した場合、摺動を受けた表面は、図2に示す表面状態となり、このような表面状態では、電着塗装仕上がりが悪くなった。一方製品Bの表面粗さはRaが1.1μm、PPIが210であり、このような表面特性を有する製品Bの摺動を受けた表面は、図3に示す表面状態となり、電着塗装仕上がりが良好となった。
【0013】
この結果から、摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりは、金型と接触して摺動により突起が押し潰された部分の分布状態が、小さな面積のものが数多く存在していると良好であるのに対して、数は少いが面積の大きいものが存在していると劣ることがわかった。
また、このような金型により押し潰された部分を拡大観察あるいはX線マイクロアナライザーによる分析を行ったところ部分的にリン酸亜鉛被膜が減少あるいは無くなっていることがわかった。また、このような部分には自動車用化成処理を施しても化成処理被膜が形成されにくいことも判明した。
【0014】
これらのことから電着塗装時、リン酸亜鉛被膜が損傷を受けた部分に電流が集中して、リン酸亜鉛被膜が損傷を受けていない部分に比べて電着塗膜が厚くなっていることもわかった(図1参照)。図1は、プレス成形により摺動を受けた場合、電着塗装時にリン酸亜鉛被膜の損傷部5に応じて電着塗膜の厚い部分が生じ、電着塗膜の厚い部分が電着塗膜の薄い部分中に存在することを、プレス成形を行っていない場合と比較して示した断面模式図である。
【0015】
図1で、符号1は原板である鋼板であり、2は鋼板1表面に形成された亜鉛めっき層、3は亜鉛めっき層2の表面に形成されたリン酸亜鉛被膜である。4は電着塗膜であって、5はリン酸亜鉛被膜3の損傷部である。図1中、電着塗膜4の高さがその厚みに相当しており、プレス成形により摺動を受けた製品Aでは電着塗膜4の厚み差が大きく、リン酸亜鉛被膜3の損傷部5がつながって一箇所当たりの損傷部5の面積が広い。一方、プレス成形により摺動を受けた製品Bでは、前者より電着塗膜4の厚み差が小さく、面積の小さい損傷部5が分散している。なお、プレス成形せず、電着塗装した場合の表面粗さRaは、表1に示すように、製品Aの方が製品Bよりやや小さく、電着塗装外観もやや良好であった。プレス成形せず、電着塗装した場合、リン酸亜鉛被膜3がほとんど損傷していない(図1参照)ので、電着塗装外観は、製品の表面粗さやリン酸亜鉛の結晶サイズの分布、リン酸亜鉛被膜3の厚み分布などの影響を受けたものと考えられる。
【0016】
そこで、上述した結果から製品Aの場合より高Ra、かつ高PPIとすることにより、プレス成形時に金型と接触して押し潰される表面の突起が数多く分散するようにした。
次いで、本発明において亜鉛めっき鋼板の表面粗さ特性を、算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、最大高さRy が12μm 以下と限定する理由について説明する。
【0017】
プレス成形時に、表面の突起が金型で潰されても隣接する潰された部分とつながってしまわないようにするという意味で高Raとし、かつ高PPIとし、その場合、算術平均粗さRaが1.0μmを下回るか、もしくは1インチ当りの山数PPIが180を下回ると、表面の突起が金型で潰されたときに前者では潰された部分が隣接する山とつながってしまい、後者では山数が過小のため、リン酸亜鉛被膜にダメージを受けた部分の1箇所あたりの面積が大きくなり、どちらの場合でも電着塗装外観が悪化する。また1インチ当りの山数PPIが180を下回ると、必然的に山間隔が大きくなってしまうことも電着塗膜外観を悪化させる要因となる。このため、亜鉛めっき鋼板の表面粗さ特性を、算術平均粗さRaが1.0μm以上、1インチ当りの山数PPIが180以上とした。
【0018】
一方、算術平均粗さRaが1.6μmを超えるか、あるいは最大高さRy が12μm を超えるようになると、表面の凹凸が過大となって電着塗装外観が悪化する。このため、亜鉛めっき鋼板の表面粗さ特性を、算術平均粗さRaが1.6μm以下でかつ最大高さRy が12μm 以下と限定した。また、1インチ当りの山数PPIが250を超えるようになると金型と接触し摺動により潰された部分同士がつながりやすいため、PPIを250以下とすることが好ましい。
【0019】
また、リン酸亜鉛被膜の特性としては、結晶サイズを3μm 以下とし、緻密な被膜とする。これにより、被膜抵抗の面内でのばらつきを小さくして、電着塗膜の厚みを均一にすることができる。この理由は、リン酸亜鉛被膜の結晶サイズを3μm 以下とすると、被膜の電気抵抗を大きくすることができ、結晶サイズが3μm を超える場合より被膜抵抗の面内でのばらつきを小さくできるからである。なお、リン酸亜鉛被膜の結晶サイズは、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍でリン酸亜鉛被膜表面を写真撮影し、写真中任意の位置、方向に50μm 相当長の直線を引き、その直線と交差するリン酸亜鉛結晶の個数を求め、50μm をこの個数で除して得られる値を結晶サイズとする。
【0020】
本発明に用いる原板は、冷延鋼板あるいは熱延鋼板であり、本発明の亜鉛めっき鋼板は、上記鋼板表面にめっき層を公知の電気めっき法で形成することができる。鋼板表面に形成する亜鉛めっき被膜量は片面当たり20〜100 g/m2 とすることが好ましい。この理由は、亜鉛めっき被膜量が20g/m2 未満になると、耐食性が不十分となり、一方亜鉛めっき被膜量が100 g/m2 を超えた場合、耐食性向上効果が飽和し、余分な亜鉛を付着させることは不経済であるばかりでなく、プレス成形性や溶接性を悪化させる原因ともなるからである。亜鉛めっき被膜は、Sn、Ni、Fe、Al等の不可避的不純物を含有するのが一般的であり、この被膜中の上記不可避的不純物の含有は本発明で得ようとする特性には影響しない。
【0021】
上記亜鉛めっき層の表面に形成するリン酸亜鉛被膜は、プレス成形時に使用するプレス油を保持する効果があり、プレス成形性を高める。亜鉛めっき層表面に形成するリン酸亜鉛被膜量は、1.0〜3.0g/m2とするのが好ましい。リン酸亜鉛被膜量が1.0g/m2未満の場合、プレス条件によってはプレス油油保持能力が充分で無く、金型とめっき層とが直接接触を起こす場合があり、一方、リン酸亜鉛被膜量が3.0g/m2を超えた場合、プレス条件によっては金型に対する摺動抵抗が大きくなり、プレス成形性が劣化する場合があるからである。また、リン酸亜鉛被膜中には、プレス成形性、塗料密着性、耐食性等の向上を目的としてNi、Mn、Mg等の元素を含有しても良い。リン酸亜鉛被膜を形成するには、自動車塗装ラインで使用される一般的な化成処理液を用いても良いが、さらにこれに硝酸Ni、硝酸Mn、硝酸Mgなどを適宜添加したリン酸塩処理液を用いるのが望ましい。電着塗膜密着性、プレス成形性、電着塗装外観の点からは被膜中のNi含有量が0.5〜1.4質量%、Mn含有量3〜8質量%の範囲内となるようにリン酸塩処理液を調整することが望ましい。亜鉛めっき鋼板製造ラインのリン酸亜鉛処理液の組成を表2に示した。
【0022】
【表2】
【0023】
以上説明した被膜特性と表面粗さ特性をもつ亜鉛めっき鋼板を電気めっき法で製造する場合には、亜鉛めっき層は鋼板表面の凹凸にほぼ沿うようにして形成されるので、原板であるめっき前の鋼板の粗度を制御するのが普通である。鋼板の粗度は、めっきを行う前の調質圧延の際に調質圧延ロールの粗度を調整することにより所定の粗度パターンとすることが可能である。調質圧延ロールの粗度は、ショットブラスト加工法、放電加工法、レーザー加工法その他の表面加工法でダル加工を施すことで形成することができる。なお、調質圧延ロールの粗度パターンが100%そのまま転写されないことはよく知られているから、上述した亜鉛めっき鋼板の製造方法を考慮し、算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有する亜鉛めっき鋼板が得られるように調質圧延ロールの表面粗さを決定する。またリン酸塩処理は、亜鉛めっき後に行う。
【0024】
【実施例】
次に、この発明の実施例について説明する。
〔実施例1〕
焼鈍したSPCE冷延鋼板(板厚0.75mm)を用い、調質圧延(表面粗度調整)→電気亜鉛めっき→リン酸塩処理工程を経て表3に示す供試材を得た。その際、調質圧延ロールの表面粗度を変化させ、調質圧延時の鋼板伸び率を0.7〜0.8%とし、片面当たりの亜鉛めっき被膜量の目標値を60g/m 2、リン酸塩処でのリン酸亜鉛被膜量の目標を1.5 〜1.6 g/m2とした。この場合、リン酸亜鉛の結晶サイズは3μm 以下であった。
【0025】
得られた各供試材を用い、摺動試験機で平面摺動→摺動試験片を脱脂→化成処理→電着塗装の工程を経て、金型と接触して摺動を受けた面の電着塗装仕上がりを評価した。電着塗装仕上がりランクは、電着塗装外観比較試料と対比して、1.0 〜4.0 まで0.5 ピッチで7段階に平滑感を目視評価し、3.0 以上を合格レベル( ○)、3.0 未満を不合格(×)として判定した。塗装仕上がりランク3.0 未満では、仕上げ塗装前に電着塗装面を研いて平滑にしなければならないレベルである。また、得られた供試材の表面粗さは、先端径が5μmの触針式粗度計(東京精密( 株) 製)を用いて走査速度:0.3mm/sで測定した。表面粗さの測定条件は、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaはカットオフ0.8mm 、評価長さ8mmとし、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy は、基準長さ0.8mm 、評価長さ8mmとして測定した値である。また、PPIは山高さが50マイクロインチを超える山数とした。
【0026】
それらの結果を表3に示した。
【0027】
【表3】
【0028】
塗装外観比較試料;各供試材を自動車車体製造工程に準じて、通常のアルカリ脱脂、次いで表面調整を行ったのち、りん酸塩処理液SD2500(日本ペイント(株)社製)に2分間浸漬した。その後、日本ペイント(株)社製のPN120電着塗料(浴温:28〜30℃)を用いて電着電圧170V、180 秒間通電して電着塗装を施し、165 ℃で20分間焼き付けし電着塗膜(膜厚:17μm )を形成して比較試料とした。
摺動試験機による平面摺動試験;各供試材から採取した長さ300mm、幅50mmの試験片について、その表面を溶剤脱脂後、防錆油(出光興産製Z5)を 1.5g/m2 で塗布した後、平面摺動試験機を用い、ダイ形状(長平面):10L×50W mm、押し付け荷重:7800MPa、引抜き速度:1000 mm/分、摺動長さ:100 mm、試験温度:室温の条件で摺動し、その後、上記した塗装外観比較試料と同じ条件で化成処理と電着塗装を行った。
【0029】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の範囲内の供試材は、ダイ金型と接触し摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりが合格レベルとなっており、本発明の範囲を外れた場合に比べて電着塗装後外観に優れていることがわかる。
〔実施例2〕
実施例と同様な工程でリン酸塩処理の前処理で用いる表面調整液中のチタンコロイドの含有量を変更しリン酸亜鉛の結晶サイズを表4に示す3水準とした供試材を得た。チタンコロイドはリン酸亜鉛結晶生成の際の核となる作用を有し、その含有量が多いとリン酸亜鉛結晶のサイズを小さくできる。得られた供試材について、実施例1と同様にして電着塗装仕上がりを評価し、その結果を表4に示した。
【0030】
【表4】
【0031】
なお、片面当たりの亜鉛めっき被膜量は60g/m 2、リン酸亜鉛被膜量は1.5 〜1.6 g/m2であり、また表面粗さ特性はRa=1.0 〜1.4 μm 、PPI =190 〜210 、Ry=8.0 〜10.0μm であった。
表4に示す結果から亜鉛めっき鋼板のリン酸亜鉛の結晶サイズを3μm 以下とし、かつ本発明の範囲内の表面粗さ特性とすることにより、ダイ金型と接触し摺動を受けた表面の電着塗装後外観をより良好にできることがわかる。
〔実施例3〕
焼鈍した極低炭素鋼冷延鋼板(板厚0.75mm)→調質圧延(表面粗度調整)→電気亜鉛めっき→リン酸塩処理工程を経て表5に示す製品を製造し、その後、自動車工場において自動車部品にプレス成形し、脱脂→化成処理→電着塗装の工程を経、電着塗装仕上がりを評価した。その結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
電着塗装仕上がりランクは、1.0 〜4.0 まで0.5 ピッチで7段階に平滑感を目視評価し、3.0 以上を合格レベル(○)、3.0 未満を不合格(×)として判定した。塗装仕上がりランク3.0 未満では、仕上げ塗装前に電着塗装面を研いて平滑にしなければならないレベルである。なお、発明例の場合、調質圧延の際、ダル加工して表面粗さRaを2.4 μm としたワークロールを用い、伸び率1.0 %とし、リン酸塩処理前の表面調整処理に用いる表面調整剤に5N−10 ;(日本ペイント(株)社製)を使用した。一方、従来例の場合には、ダル加工して表面粗さRaを1.6 μm としたワークロールを用い、伸び率1.0 %とし、リン酸塩処理前の表面調整処理に用いる表面調整剤には、前記5N−10 よりもチタンコロイドの含有量が少ないものを使用した。両者共に片面当たりの亜鉛めっき被膜量目標値を60g/m 2、リン酸亜鉛被膜量目標値を1.5 〜1.6 g/m2とした。
【0034】
表5に示す結果から、発明例の場合、自動車部品にプレス成形し、その後電着塗装した金型と接触して摺動を受けた表面の電着塗装外観が従来例より優れていることがわかる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、プレス成形などにより摺動を受けた表面の電着塗装外観をより優れたものにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、電着塗装した表面の電着塗膜の状態を説明する断面模式図である。
【図2】図2は、プレス成形により摺動を受けた製品表面のスケッチ図である。
【図3】図3は、プレス成形により摺動を受けた他の製品表面のスケッチ図である。
【符号の説明】
1 鋼板(冷延鋼板)
2 亜鉛めっき被膜
3 リン酸亜鉛被膜
4 電着塗膜
5 リン酸亜鉛被膜の損傷部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板に関し、特に、プレス成形などにより摺動を受けた表面の塗装仕上がりを良好にすることができる電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
亜鉛めっきを施した表面処理鋼板は、優れた耐食性を有し、自動車車体や家電製品に用いられている。特に自動車用途の表面処理鋼板としては、電気めっき法によって鋼板(原板とも呼ばれる)に亜鉛めっき層を形成し、その後、リン酸塩処理を施して亜鉛めっき層表面にリン酸亜鉛被膜を形成した亜鉛めっき鋼板が適用されている。このようなリン酸塩処理を施した亜鉛めっき鋼板は、リン酸亜鉛被膜がプレス金型と亜鉛めっき被膜との直接接触を防ぎ、緩衝剤として働くこと、またリン酸亜鉛被膜がその結晶の隙間に油を保持できることなどにより、プレス成形性に優れていることが知られている。
【0003】
一方、自動車用途の表面処理鋼板は、普通、金型を用いてプレス成形され、所定の部品形状としてから下地塗装として電着塗装が施され、さらに、自動車車体外面側には外観意匠性のために中塗り塗装、上塗り塗装等のスプレー塗装による仕上げ塗装が施される。その際、電着塗装仕上がりが悪い場合、その影響が仕上げ塗装後にまで影響するため、電着塗装仕上がりをある一定レベル以上にすることが要求される。
【0004】
従来、リン酸塩処理を施した亜鉛めっき鋼板は、プレス成形性および電着塗装性を一定レベル以上にするため、リン酸亜鉛被膜量やリン酸亜鉛被膜中のNiおよびMn含有量の上下限値を規定するなどして製造していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リン酸亜鉛被膜量やリン酸亜鉛被膜中のNiおよびMn含有量を適正に管理していても、リン酸塩処理が施された亜鉛めっき鋼板をプレス成形した場合、摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりが悪いものがあり、このような部品は、スプレーによる仕上げ塗装を行う前に電着塗装面を研いで表面を平滑にする表面手入れを行わなければならず、問題となることがあった。
【0006】
これに対して例えば特開平9−263967号公報や特公平5−83628号公報には表面粗さ特性を規定した鋼板が開示されている。しかしながら、特開平9−263967号公報に開示されている表面処理鋼板は、表面粗さのWcaとPPIの積が40以下、またはWcaが0.5μm以下でPPIが80以下とした溶融亜鉛めっき鋼板であり、プレス成形などによる摺動を受けた場合、摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりが不十分であり、また、特公平5−83628号公報には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の鋼板の粗度を、Ra;1.0μm以下、PPI;250以上としているがこの場合、耐パウダリング性、耐フレーキング性に優れているが、プレス成形時に金型と接触して摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりに問題があった。
【0007】
また、特開平6−246306号公報および特開平6−269803号公報には塗装鮮映性とプレス成形性に優れた鋼板が開示されているものの、これらの鋼板は表面粗さRaを0.8μm以下と規定し、さらには表裏で異なる表面粗度特性を有するもので、このような鋼板をめっき原板とした表面処理鋼板を使用しても、プレス成形等により摺動を受けた表面の電着塗装面に肌不良が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、プレス成形等により金型と接触して摺動を受けた表面の塗装仕上がりを良好にすることができる電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プレス成形により金型と接触して摺動を受けた表面の電着塗装外観に影響を与える要因を究明し、被膜特性と表面粗さ特性を規定することにより、上記課題を解決した。
本発明は、鋼板表面に形成された亜鉛めっき層と、該めっき層表面に形成された結晶サイズが3μm 以下のリン酸亜鉛被膜を有し、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有することを特徴とする電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、電着塗装外観に影響を与える要因がプレス成形などにより摺動を受ける前の表面処理鋼板の表面粗さ特性にあるとの知見に至った過程について以下詳細に述べる。
発明者らは、表1に示す表面粗さ特性が異なるリン酸塩処理を施した亜鉛めっき鋼板A、B(製品A、Bともいう)を用い、自動車車体用プレス機にてプレス成形し、電着塗装外観に影響を与える要因について種々の分析装置を駆使して調査した。調査は条件1;プレス成形せず、実施例に示す化成処理を施し、電着塗装した場合、条件2;プレス成形した後、同様に化成処理を施し、電着塗装した場合の2条件で行って比較した。図2に製品Aの、図3に製品Bのプレス成形により摺動を受けた表面状態を示した。図2、図3は、試料表面の電子顕微鏡写真を分かりやすく示したスケッチ図であり、図中、黒色部がプレス成形時、金型と接触し摺動により押し潰された部分である。
【0011】
【表1】
【0012】
製品Aの表面粗さは、Raが0.7μm、PPIが140であり、凹凸が少なく且つ山数も少ない。製品Aをプレス成形した場合、摺動を受けた表面は、図2に示す表面状態となり、このような表面状態では、電着塗装仕上がりが悪くなった。一方製品Bの表面粗さはRaが1.1μm、PPIが210であり、このような表面特性を有する製品Bの摺動を受けた表面は、図3に示す表面状態となり、電着塗装仕上がりが良好となった。
【0013】
この結果から、摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりは、金型と接触して摺動により突起が押し潰された部分の分布状態が、小さな面積のものが数多く存在していると良好であるのに対して、数は少いが面積の大きいものが存在していると劣ることがわかった。
また、このような金型により押し潰された部分を拡大観察あるいはX線マイクロアナライザーによる分析を行ったところ部分的にリン酸亜鉛被膜が減少あるいは無くなっていることがわかった。また、このような部分には自動車用化成処理を施しても化成処理被膜が形成されにくいことも判明した。
【0014】
これらのことから電着塗装時、リン酸亜鉛被膜が損傷を受けた部分に電流が集中して、リン酸亜鉛被膜が損傷を受けていない部分に比べて電着塗膜が厚くなっていることもわかった(図1参照)。図1は、プレス成形により摺動を受けた場合、電着塗装時にリン酸亜鉛被膜の損傷部5に応じて電着塗膜の厚い部分が生じ、電着塗膜の厚い部分が電着塗膜の薄い部分中に存在することを、プレス成形を行っていない場合と比較して示した断面模式図である。
【0015】
図1で、符号1は原板である鋼板であり、2は鋼板1表面に形成された亜鉛めっき層、3は亜鉛めっき層2の表面に形成されたリン酸亜鉛被膜である。4は電着塗膜であって、5はリン酸亜鉛被膜3の損傷部である。図1中、電着塗膜4の高さがその厚みに相当しており、プレス成形により摺動を受けた製品Aでは電着塗膜4の厚み差が大きく、リン酸亜鉛被膜3の損傷部5がつながって一箇所当たりの損傷部5の面積が広い。一方、プレス成形により摺動を受けた製品Bでは、前者より電着塗膜4の厚み差が小さく、面積の小さい損傷部5が分散している。なお、プレス成形せず、電着塗装した場合の表面粗さRaは、表1に示すように、製品Aの方が製品Bよりやや小さく、電着塗装外観もやや良好であった。プレス成形せず、電着塗装した場合、リン酸亜鉛被膜3がほとんど損傷していない(図1参照)ので、電着塗装外観は、製品の表面粗さやリン酸亜鉛の結晶サイズの分布、リン酸亜鉛被膜3の厚み分布などの影響を受けたものと考えられる。
【0016】
そこで、上述した結果から製品Aの場合より高Ra、かつ高PPIとすることにより、プレス成形時に金型と接触して押し潰される表面の突起が数多く分散するようにした。
次いで、本発明において亜鉛めっき鋼板の表面粗さ特性を、算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、最大高さRy が12μm 以下と限定する理由について説明する。
【0017】
プレス成形時に、表面の突起が金型で潰されても隣接する潰された部分とつながってしまわないようにするという意味で高Raとし、かつ高PPIとし、その場合、算術平均粗さRaが1.0μmを下回るか、もしくは1インチ当りの山数PPIが180を下回ると、表面の突起が金型で潰されたときに前者では潰された部分が隣接する山とつながってしまい、後者では山数が過小のため、リン酸亜鉛被膜にダメージを受けた部分の1箇所あたりの面積が大きくなり、どちらの場合でも電着塗装外観が悪化する。また1インチ当りの山数PPIが180を下回ると、必然的に山間隔が大きくなってしまうことも電着塗膜外観を悪化させる要因となる。このため、亜鉛めっき鋼板の表面粗さ特性を、算術平均粗さRaが1.0μm以上、1インチ当りの山数PPIが180以上とした。
【0018】
一方、算術平均粗さRaが1.6μmを超えるか、あるいは最大高さRy が12μm を超えるようになると、表面の凹凸が過大となって電着塗装外観が悪化する。このため、亜鉛めっき鋼板の表面粗さ特性を、算術平均粗さRaが1.6μm以下でかつ最大高さRy が12μm 以下と限定した。また、1インチ当りの山数PPIが250を超えるようになると金型と接触し摺動により潰された部分同士がつながりやすいため、PPIを250以下とすることが好ましい。
【0019】
また、リン酸亜鉛被膜の特性としては、結晶サイズを3μm 以下とし、緻密な被膜とする。これにより、被膜抵抗の面内でのばらつきを小さくして、電着塗膜の厚みを均一にすることができる。この理由は、リン酸亜鉛被膜の結晶サイズを3μm 以下とすると、被膜の電気抵抗を大きくすることができ、結晶サイズが3μm を超える場合より被膜抵抗の面内でのばらつきを小さくできるからである。なお、リン酸亜鉛被膜の結晶サイズは、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍でリン酸亜鉛被膜表面を写真撮影し、写真中任意の位置、方向に50μm 相当長の直線を引き、その直線と交差するリン酸亜鉛結晶の個数を求め、50μm をこの個数で除して得られる値を結晶サイズとする。
【0020】
本発明に用いる原板は、冷延鋼板あるいは熱延鋼板であり、本発明の亜鉛めっき鋼板は、上記鋼板表面にめっき層を公知の電気めっき法で形成することができる。鋼板表面に形成する亜鉛めっき被膜量は片面当たり20〜100 g/m2 とすることが好ましい。この理由は、亜鉛めっき被膜量が20g/m2 未満になると、耐食性が不十分となり、一方亜鉛めっき被膜量が100 g/m2 を超えた場合、耐食性向上効果が飽和し、余分な亜鉛を付着させることは不経済であるばかりでなく、プレス成形性や溶接性を悪化させる原因ともなるからである。亜鉛めっき被膜は、Sn、Ni、Fe、Al等の不可避的不純物を含有するのが一般的であり、この被膜中の上記不可避的不純物の含有は本発明で得ようとする特性には影響しない。
【0021】
上記亜鉛めっき層の表面に形成するリン酸亜鉛被膜は、プレス成形時に使用するプレス油を保持する効果があり、プレス成形性を高める。亜鉛めっき層表面に形成するリン酸亜鉛被膜量は、1.0〜3.0g/m2とするのが好ましい。リン酸亜鉛被膜量が1.0g/m2未満の場合、プレス条件によってはプレス油油保持能力が充分で無く、金型とめっき層とが直接接触を起こす場合があり、一方、リン酸亜鉛被膜量が3.0g/m2を超えた場合、プレス条件によっては金型に対する摺動抵抗が大きくなり、プレス成形性が劣化する場合があるからである。また、リン酸亜鉛被膜中には、プレス成形性、塗料密着性、耐食性等の向上を目的としてNi、Mn、Mg等の元素を含有しても良い。リン酸亜鉛被膜を形成するには、自動車塗装ラインで使用される一般的な化成処理液を用いても良いが、さらにこれに硝酸Ni、硝酸Mn、硝酸Mgなどを適宜添加したリン酸塩処理液を用いるのが望ましい。電着塗膜密着性、プレス成形性、電着塗装外観の点からは被膜中のNi含有量が0.5〜1.4質量%、Mn含有量3〜8質量%の範囲内となるようにリン酸塩処理液を調整することが望ましい。亜鉛めっき鋼板製造ラインのリン酸亜鉛処理液の組成を表2に示した。
【0022】
【表2】
【0023】
以上説明した被膜特性と表面粗さ特性をもつ亜鉛めっき鋼板を電気めっき法で製造する場合には、亜鉛めっき層は鋼板表面の凹凸にほぼ沿うようにして形成されるので、原板であるめっき前の鋼板の粗度を制御するのが普通である。鋼板の粗度は、めっきを行う前の調質圧延の際に調質圧延ロールの粗度を調整することにより所定の粗度パターンとすることが可能である。調質圧延ロールの粗度は、ショットブラスト加工法、放電加工法、レーザー加工法その他の表面加工法でダル加工を施すことで形成することができる。なお、調質圧延ロールの粗度パターンが100%そのまま転写されないことはよく知られているから、上述した亜鉛めっき鋼板の製造方法を考慮し、算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有する亜鉛めっき鋼板が得られるように調質圧延ロールの表面粗さを決定する。またリン酸塩処理は、亜鉛めっき後に行う。
【0024】
【実施例】
次に、この発明の実施例について説明する。
〔実施例1〕
焼鈍したSPCE冷延鋼板(板厚0.75mm)を用い、調質圧延(表面粗度調整)→電気亜鉛めっき→リン酸塩処理工程を経て表3に示す供試材を得た。その際、調質圧延ロールの表面粗度を変化させ、調質圧延時の鋼板伸び率を0.7〜0.8%とし、片面当たりの亜鉛めっき被膜量の目標値を60g/m 2、リン酸塩処でのリン酸亜鉛被膜量の目標を1.5 〜1.6 g/m2とした。この場合、リン酸亜鉛の結晶サイズは3μm 以下であった。
【0025】
得られた各供試材を用い、摺動試験機で平面摺動→摺動試験片を脱脂→化成処理→電着塗装の工程を経て、金型と接触して摺動を受けた面の電着塗装仕上がりを評価した。電着塗装仕上がりランクは、電着塗装外観比較試料と対比して、1.0 〜4.0 まで0.5 ピッチで7段階に平滑感を目視評価し、3.0 以上を合格レベル( ○)、3.0 未満を不合格(×)として判定した。塗装仕上がりランク3.0 未満では、仕上げ塗装前に電着塗装面を研いて平滑にしなければならないレベルである。また、得られた供試材の表面粗さは、先端径が5μmの触針式粗度計(東京精密( 株) 製)を用いて走査速度:0.3mm/sで測定した。表面粗さの測定条件は、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaはカットオフ0.8mm 、評価長さ8mmとし、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy は、基準長さ0.8mm 、評価長さ8mmとして測定した値である。また、PPIは山高さが50マイクロインチを超える山数とした。
【0026】
それらの結果を表3に示した。
【0027】
【表3】
【0028】
塗装外観比較試料;各供試材を自動車車体製造工程に準じて、通常のアルカリ脱脂、次いで表面調整を行ったのち、りん酸塩処理液SD2500(日本ペイント(株)社製)に2分間浸漬した。その後、日本ペイント(株)社製のPN120電着塗料(浴温:28〜30℃)を用いて電着電圧170V、180 秒間通電して電着塗装を施し、165 ℃で20分間焼き付けし電着塗膜(膜厚:17μm )を形成して比較試料とした。
摺動試験機による平面摺動試験;各供試材から採取した長さ300mm、幅50mmの試験片について、その表面を溶剤脱脂後、防錆油(出光興産製Z5)を 1.5g/m2 で塗布した後、平面摺動試験機を用い、ダイ形状(長平面):10L×50W mm、押し付け荷重:7800MPa、引抜き速度:1000 mm/分、摺動長さ:100 mm、試験温度:室温の条件で摺動し、その後、上記した塗装外観比較試料と同じ条件で化成処理と電着塗装を行った。
【0029】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の範囲内の供試材は、ダイ金型と接触し摺動を受けた表面の電着塗装仕上がりが合格レベルとなっており、本発明の範囲を外れた場合に比べて電着塗装後外観に優れていることがわかる。
〔実施例2〕
実施例と同様な工程でリン酸塩処理の前処理で用いる表面調整液中のチタンコロイドの含有量を変更しリン酸亜鉛の結晶サイズを表4に示す3水準とした供試材を得た。チタンコロイドはリン酸亜鉛結晶生成の際の核となる作用を有し、その含有量が多いとリン酸亜鉛結晶のサイズを小さくできる。得られた供試材について、実施例1と同様にして電着塗装仕上がりを評価し、その結果を表4に示した。
【0030】
【表4】
【0031】
なお、片面当たりの亜鉛めっき被膜量は60g/m 2、リン酸亜鉛被膜量は1.5 〜1.6 g/m2であり、また表面粗さ特性はRa=1.0 〜1.4 μm 、PPI =190 〜210 、Ry=8.0 〜10.0μm であった。
表4に示す結果から亜鉛めっき鋼板のリン酸亜鉛の結晶サイズを3μm 以下とし、かつ本発明の範囲内の表面粗さ特性とすることにより、ダイ金型と接触し摺動を受けた表面の電着塗装後外観をより良好にできることがわかる。
〔実施例3〕
焼鈍した極低炭素鋼冷延鋼板(板厚0.75mm)→調質圧延(表面粗度調整)→電気亜鉛めっき→リン酸塩処理工程を経て表5に示す製品を製造し、その後、自動車工場において自動車部品にプレス成形し、脱脂→化成処理→電着塗装の工程を経、電着塗装仕上がりを評価した。その結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
電着塗装仕上がりランクは、1.0 〜4.0 まで0.5 ピッチで7段階に平滑感を目視評価し、3.0 以上を合格レベル(○)、3.0 未満を不合格(×)として判定した。塗装仕上がりランク3.0 未満では、仕上げ塗装前に電着塗装面を研いて平滑にしなければならないレベルである。なお、発明例の場合、調質圧延の際、ダル加工して表面粗さRaを2.4 μm としたワークロールを用い、伸び率1.0 %とし、リン酸塩処理前の表面調整処理に用いる表面調整剤に5N−10 ;(日本ペイント(株)社製)を使用した。一方、従来例の場合には、ダル加工して表面粗さRaを1.6 μm としたワークロールを用い、伸び率1.0 %とし、リン酸塩処理前の表面調整処理に用いる表面調整剤には、前記5N−10 よりもチタンコロイドの含有量が少ないものを使用した。両者共に片面当たりの亜鉛めっき被膜量目標値を60g/m 2、リン酸亜鉛被膜量目標値を1.5 〜1.6 g/m2とした。
【0034】
表5に示す結果から、発明例の場合、自動車部品にプレス成形し、その後電着塗装した金型と接触して摺動を受けた表面の電着塗装外観が従来例より優れていることがわかる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、プレス成形などにより摺動を受けた表面の電着塗装外観をより優れたものにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、電着塗装した表面の電着塗膜の状態を説明する断面模式図である。
【図2】図2は、プレス成形により摺動を受けた製品表面のスケッチ図である。
【図3】図3は、プレス成形により摺動を受けた他の製品表面のスケッチ図である。
【符号の説明】
1 鋼板(冷延鋼板)
2 亜鉛めっき被膜
3 リン酸亜鉛被膜
4 電着塗膜
5 リン酸亜鉛被膜の損傷部
Claims (1)
- 鋼板表面に形成された亜鉛めっき層と、該めっき層表面に形成された結晶サイズが3μm 以下のリン酸亜鉛被膜を有し、JIS B 0601−1994 で規定される算術平均粗さRaが1.0μm以上1.6μm以下、1インチ当りの山数PPIが180以上、JIS B 0601−1994 で規定される最大高さRy が12μm 以下である表面粗さ特性を有することを特徴とする電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002222422A JP2004060020A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | 電着塗装外観に優れた亜鉛めっき鋼板 |
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Publications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006278653A (ja) * | 2005-03-29 | 2006-10-12 | Jfe Steel Kk | 電磁波シールド部材用鋼板、電磁波シールド部材および電磁波シールド筐体 |
JP2012167297A (ja) * | 2011-02-09 | 2012-09-06 | Jfe Steel Corp | 電気亜鉛めっき鋼板 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002222422A patent/JP2004060020A/ja active Pending
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