JP2004059856A - 水性顔料分散液及び水性顔料分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分散剤の存在下に微細な有機顔料を水性媒体中へ分散させた水性分散液において、有機顔料を微粉砕後に酸性水溶液にて処理することにより、有機顔料の製造工程に伴って顔料表面に吸着した、分散を不安定化する各種成分の除去を行う。特に顔料中のマグネシウムの除去により水性顔料分散液の分散安定性への大きな効果が見出された。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機顔料の水性分散液およびそれを用いたインクジェット用記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水を主成分とする液体媒体中に色材を溶解あるいは分散したインクジェット用記録液が利用されている。これらの記録液において、色材が染料である場合、印刷後の耐水、耐光性に難があり屋外用途等には適用が困難であった。一方、色材を耐光性に優れる顔料とする記録液は、カーボンブラックを利用した黒色記録液では広く利用されている。
【0003】
しかし、有機顔料、特に有彩色の有機顔料を分散した水性の記録液をインクジェット記録用に使用するためには、染料系の記録液と異なり、解決すべき数々の問題点がある。
【0004】
水性媒体に不溶の有機顔料を分散した水性のインクジェット用記録液に対しては、まずインクジェットの吐出に不利となる析出や沈殿等の異物が記録液中に存在しないレベルとなるまで、微細に顔料を分散し、安定化することが求められる。そして染料系の記録液と同様に、長期にわたる記録液の物性変動がないという保存安定性が達成されなければならない。このように微細なノズルからの安定した吐出を得るため、顔料を用いる場合は、従来より各種の分散剤、分散方法が検討されている。特に高分子化合物を分散剤として用いる技術は、顔料の分散安定化に効果が高い。
【0005】
しかしながら、微細化された有機顔料の分散不安定要因は多岐にわたるため、必ずしも全てが明らかにならない場合が少なくない。さらに微細顔料の不安定性を打ち消すための分散剤組成は必ずしも明確ではなく、現状では顔料種や分散方法、添加剤との組み合わせでその都度試行錯誤による検討がなされている。
【0006】
さらに加えて、インクジェット用記録液に用いる顔料分散液では、顔料が通常の塗料等との比較で、著しく微細化されており、着色力、彩度等が出にくい傾向が強い。このため微細化された顔料による記録液は、染料を用いた場合と比べ、着色力が劣る。したがって印字濃度を維持するためにはインクジェット用記録液に含有される顔料濃度を高める必要があり、そのために一層分散が不安定となる等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、微細な有機顔料を用いた水性分散液において、分散安定性に優れた、高耐水性、高耐光性のインクジェット用記録液を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、分散剤の存在下に有機顔料を水性媒体中へ分散させた水性分散液において、有機顔料を微粉砕後酸性水溶液にて処理することにより、顕著な安定性のある水性顔料分散液が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は少なくとも分散剤と、有機顔料とを含有する水性顔料分散液において、前記有機顔料が微粉砕後に酸性水溶液にて処理されたものであることを特徴とする水性顔料分散液を提供する。
【0010】
さらにまた本発明は、酸性水溶液によって処理した有機顔料からなる水性顔料分散液を用いることにより作製される、分散安定性の高いインクジェット用記録液を提供する。
【0011】
このような水性顔料分散液またはインクジェット用記録液は、有機顔料が微粉砕後に酸性水溶液中で処理されているため、顔料製造工程等に起因する顔料中の不純物が低減されており、水性顔料分散液の保存安定性を向上させる。
【0012】
さらにまた本発明は分散剤の存在下に、有機顔料を水性媒体中へ分散させる水性顔料分散液の製造方法において、前記有機顔料を予め微粉砕し、酸性水溶液で処理することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法を提供する。
【0013】
さらに本発明は少なくとも有機顔料と、スチレン−アクリル酸系の高分子化合物と塩基性化合物からなる水性顔料分散液であって、分散液中のマグネシウム含有量が有機顔料に対して20ppm以下である水性顔料分散液の製造方法を提供する。
【0014】
顔料中の20ppmより多くのマグネシウム含有は、水性顔料分散液を作製したときにその保存安定性を阻害する要因になりやすい。このため酸性水溶液による処理によってマグネシウム含有量を20ppm以下とすることにより保存安定性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では有機顔料としてはアゾ顔料を用いたときに、水性顔料分散液にもたらされる保存安定化の効果が大きく好ましいが、なかでもC.I.ピグメントイエロー128を用いたときに、水性顔料分散液の顕著な保存安定化効果と、良好な発色性が得られて好ましい。
【0016】
本発明で使用する分散剤として、スチレン−アクリル酸系の高分子化合物を中和してなる分散剤を用いると、分散が良好であり、保存安定性と発色性、さらには印刷画像の耐久性をいずれも満たすインクジェット用記録液を作製することができる。
以下、本発明の水性顔料分散液及びそれを用いたインクジェット用記録液について詳細に説明する。
【0017】
本発明の水性顔料分散液において、有機顔料とは、カーボンブラック等の無機顔料とは異なり、基本的に有機合成の手法により製造された粗原料に各種の顔料化処理を施したものである。
【0018】
利用可能な有機顔料としては、特に規定はされないが、具体的にはアゾ顔料、多感縮合系顔料等が挙げられ、モノアゾ系、ジスアゾ系等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等が好ましい。これらは赤色、黄色、青色、紫色、緑色等の有彩色顔料として利用可能であり、一般にはカラーインデックスに色、化学構造等を規定して挙げられるものである。特にアゾ顔料は、黄色、赤色等の有機顔料として好適である。
【0019】
黄色顔料は分子量の小さなモノアゾ顔料が多く、吸収波長が高エネルギーの紫外線領域に近いこともあり、耐光性を得にくいとされている。化合物骨格への置換基導入や縮合による分子量増大等により耐光性向上策が有効とされる。利用可能な黄色アゾ顔料の例としては、アセト酢酸アリールアミド系不溶性モノアゾ顔料C.I.ピグメントイエロー74、ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、縮合アゾ顔料C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー128等が利用可能である。
【0020】
これらアゾ顔料は本発明の酸性水溶液による処理の効果大きい。特に、大きな効果が認められるアゾ顔料としてC.I.ピグメントイエロー128があげられる。該顔料はさらに、耐光性と色調のバランスにも優れており好適なインクジェット用記録液用の黄色顔料として使用することができる。なお、顔料の種類の選択においては、色調等の要請もあり、必ずしもここに挙げた例に限定されるものではない。
【0021】
上記の顔料を用いて長期保存時に沈殿、析出等がない安定な顔料分散を得るために、本発明の水性顔料分散液は微細化された有機顔料を用いる。有機顔料の微細化とは、有機合成上の手法によって得られた粗顔料の粒径を小さく揃えるか、あるいは機械的な力により粉砕したものである。なお、顔料化の工程で必要に応じて、表面処理や、添加物を加えることもできる。
【0022】
顔料の粒径は分布を有しており、限定的な規定は困難ではあるが、本発明で使用する微細化された有機顔料としては、一次粒径の細かな有機顔料が好適である。好ましくは、過度な粉砕処理を分散工程に強いることない程度にまで微細化がなされ、レーザー散乱式測定法等による体積平均粒径が200μm以下であるものが用いられる。
【0023】
本発明における酸性水溶液による処理とは、微粉砕された有機顔料を湿式にて酸性の水溶液と接触処理を行うものである。このような処理を行うことにより、分散安定性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、微細化された有機顔料表面に吸着している分散安定性に悪影響を与える各種成分を効率的に除去ができると思われる。特に本発明の方法によれば、有機顔料中のマグネシウムを効率的に除去することができる。本発明の方法を用いて有機顔料に対し20ppm以下にまでマグネシウム含有量を低減させることにより、分散安定性の向上に極めて効果のあることがわかった。
【0024】
水性顔料分散液を作製する工程中における酸性処理法としては、顔料分散液の酸処理法として、アニオン性基を有する高分子分散剤溶液を顔料とともに、pHを酸性化することで、該分散剤を顔料表面に析出・被覆させる顔料処理法が知られている。しかし本発明はこれらの方法とは異なり、アニオン性基含有高分子分散剤が共存しない状態で、有機顔料の酸性水溶液処理を行い、高い分散安定化効果を得ている。これは高分子分散剤の共存下では、有機顔料表面の酸性水溶液による接触が不十分となるからであり、有機顔料表面の分散安定性に影響を与える各種成分が一時的に高分子分散剤中に取り込まれることが無く、その結果顔料分散液あるいは記録液とした後に流出して不安定化を起こすことがないためと推定している。
【0025】
本発明の有機顔料を処理する酸性水溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸の水溶液、酢酸、プロピオン酸等の有機酸の水溶液、メタンスルホン酸等のスルホン酸類水溶液が挙げられるが、処理の容易さ、価格等から無機酸類が好ましく、特に作業性の面から塩酸の利用が好ましい。酸性水溶液の酸濃度は、特に規定するものではないが、塩酸等の無機酸類を用いる場合は、pHが3以下、好ましくは1以下の酸性水溶液を用いると効果が高い。
酸性水溶液には、酸性化合物の他に、他の成分を共存させることができる。これらの成分としては、有機顔料表面の濡れ性を制御するために、有機溶剤や界面活性剤の利用が好ましく、特に酸性化合物との相互影響を及ぼさない、水溶性アルコール類、水溶性エーテル類の添加が好ましい。これら水溶性アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール類、水溶性エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が好ましい。これら水溶性有機溶剤の添加量は、0〜50%程度用いれば有機顔料の酸性処理の作業性が高くなり好適である。
【0026】
有機顔料と酸性水溶液との処理において、酸性水溶液の使用量は、有機顔料が十分に均一処理可能な状態となれば特に制限はないが、常温での作業性から、顔料濃度5〜30%とすることが好ましい。
【0027】
酸性水溶液による処理法としては、有機顔料と酸性水溶液とが湿式で接触する方法であれば特に制限されるものではないが、酸性水溶液中で有機顔料を混合撹拌する方法、有機顔料を充填したカラムやロート上で酸性水溶液と連続、間欠に接触させる方法等がある。特に、酸性水溶液中で有機顔料を混合撹拌する方法は、作業性、再現性の面からも好ましい。
酸性水溶液による温度、処理時間には特に制限はないが、温度0〜100℃、時間5分〜5時間程度の中で適宜選択できる。併用する水溶性溶剤の蒸気圧の影響も考慮し、温度0〜40℃、時間20分〜2時間の処理が好適である。
【0028】
酸性水溶液による処理を経た後、有機顔料は顔料分散液に供する為の後処理を行うことができる。後処理法としては、濾過、水洗等による酸性水溶液の除去、加熱乾燥、減圧乾燥等の慣用の方法がとられる。特に酸性水溶液の除去は好ましく、水洗、濾過、乾燥の工程を組み合わせることで顔料分散液に好適に供することができる。
【0029】
本発明の水性顔料分散液に用いる分散剤としては、各種の界面活性剤、高分子分散剤の利用が可能である。界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のものが利用可能であるが、特に、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤が好適であり、具体的にはエチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加により親水性を有するアルキル、アラルキル基を有する活性剤が好ましい。さらに、高分子分散剤は、本発明の用途であるインクジェット用記録液のような高度の分散安定性を得るためには、好ましい物である。高分子の分散剤としては、各種のモノマー類等の低分子化合物を重合、縮合したものが利用可能であり、これらの併用も可能である。
【0030】
本発明の顔料分散液において、インクジェット用記録液のような高度の分散安定を必要とする場合、分散剤は特定の構造とすることが好ましい。特にモノマー成分としてスチレンを少なくとも全モノマー成分中の50%以上含むものが好ましく、さらにカルボキシル基含有モノマーとしてアクリル酸、メタアクリル酸等を含むものが好適である。これら複数のモノマー成分を含む高分子化合物としては、ランダム重合、グラフト重合、ブロック重合等による共重合物が好ましい。具体例をあげれば、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができる。
【0031】
特にアクリル酸のごとき分子中に酸性基を有する共重合体は、アルカリ性化合物による中和を経て、水中での安定分散が得られるとされている。また、これらの共重合物に関しても、ランダム重合、グラフト重合、ブロック重合等が検討されている。
【0032】
とくにアクリル酸、メタクリル酸のようなカルボキシル基含有モノマー成分は、重合した高分子中で塩基成分の添加による中和を受けると、安定な分散を得ることができ好適である。カルボキシル基含有モノマー成分量は、高分子化合物の酸価としてとらえることが可能であり、好ましくは酸価50〜280mgKOH/g、さらに好ましくは100〜200mgKOH/g程度の高分子化合物を分散剤として用いることが好ましい。これは、酸価を必要以上に高く設定すると顔料表面に優先的に吸着すると考えられる疎水性成分量が減少するため、安定な分散に不都合となる傾向にあるためであり、また酸価が低すぎる場合では、塩基成分による中和を受けて分散剤の電荷反発による分散安定性への寄与が減じ易いためと推定される。
【0033】
カルボキシル基含有モノマー成分からなる高分子化合物の塩基成分による中和については、用いる塩基成分として、アルカリ金属水酸化物、低分子有機アミン化合物等が用いられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルコールアミン類は、水性顔料分散液をインクジェット用記録液等へ適用した場合、分散の安定性やインクジェットプリンタのデキャップ特性、印刷物の耐水性等の面から好適である。
【0034】
塩基性成分による中和を行う場合は、高分子化合物の酸価に対して、50〜130%の塩基性成分を用いることが好ましく、さらに50〜100%の中和率は、顔料分散液およびこれを用いたインクジェット用記録液のpH管理の面からも好適である。
【0035】
本発明において中和率とは次の式において示される数値である。
(式1)
中和率(%)=((塩基性化合物の質量(g)×56×1000)/(樹脂酸価×塩基性化合物の当量×樹脂量(g)))×100
【0036】
本発明の水性顔料分散液は、上記の有機顔料と分散剤を、必要に応じて塩基性化合物を添加して水性媒体中へ分散することにより作製することができる。
【0037】
顔料を分散させる方法としては、公知公用の分散装置を用いることが出来る。例えば、超音波ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、ナノマイザー等が挙げられる。
【0038】
特に、実質的に固体混練となるロールミル、ニーダー、プラネタリーミキサー等は、顔料の分散とともに、高分子化合物によって顔料表面を被覆することが可能であり、安定な分散を得るために好適である。
【0039】
また、顔料を分散させる工程においては、必要に応じて水溶性有機溶剤を添加してもよい。このような水溶性有機溶剤の例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド類のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N−メチル−2ピロリドン、1,3ジメチル−2−イミダゾジノン等の含窒素複素環式ケトン類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1.2.6.ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコール(エチル)メチルエーテル、トリエチレングリコール(エチル)メチルエーテル類の多価アルコールの低級アルコールエーテル等が挙げられる。
【0040】
これら多くの水溶性有機溶剤の中でも、顔料を樹脂と均一に分散させるためには高沸点のものが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類が好適である。
【0041】
水溶性有機溶剤の添加量は樹脂によって異なるが顔料に対して10〜300質量%が好ましく、より好ましくは50〜200質量%の範囲である。
【0042】
このようにして製造された本発明の水性顔料分散液は、分散安定性に優れ、長期保存安定性に優れるものである。
【0043】
なお、本発明の水性顔料分散液を記録液として用いる場合、特にインクジェット用記録液として使用する場合は、上記の高沸点の水溶性有機溶剤は記録液の乾燥防止剤としても機能するものである。また、必要に応じて更に乾燥防止性や浸透性を有する有機溶剤を加えて均一に攪拌し、記録液の調整後に所望の粒径のフィルターで濾過すればよい。
【0044】
記録液の調整は、例えば、前記乾燥防止剤や浸透性を有する有機溶剤の添加、濃度調整・粘度調整の他、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を必要に応じて添加する。
【0045】
また記録液における浸透性は、記録媒体への記録液の侵透性や記録媒体上でのドット径の調整を行うために必要な特性である。浸透性を示す水溶性有機溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等がある。
【0046】
本発明の製造方法によって得られた水性顔料分散液を適宜調製することにより、オンデマンド方式、例えばピエゾ方式、サーマル方式等の公知慣用のインクジェット用記録液に好適に使用することができ、各方式のプリンターにおいて極めて安定した記録液吐出が可能となるのである。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、より詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
C.I.ピグメントイエロー128(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名クロモフタールイエロー8G−CF)50gをメタノール100gでスラリー状とした。次いで、試薬1級濃塩酸(関東化学社製)82mlと純水800gから塩酸水溶液を調製した。塩酸水溶液を撹拌しながら、黄色顔料スラリーを投入し、室温で1時間撹拌した後、濾紙を用いて懸濁液を吸引濾過し、黄色含水ケーキ159gを得た。これを純水1000g中で1時間撹拌、吸引濾過による洗浄工程を4回繰り返し、濾液のpHがほぼ中性となることを確認した。含水ケーキを80℃の温風乾燥機で乾燥し、48gの黄色顔料(I)を回収した。
【0049】
スチレン(77部)・アクリル酸(10部)・メタクリル酸(13部)、酸価=150mgKOH/g、重量平均分子量7200、からなる樹脂10部にMEK10部、水酸化ナトリウム1.07部、水60部を加え撹拌した後、MEKを減圧下(70゜C、150Pa)で蒸留して固形分20.0質量%を含む樹脂溶液(II)を得た。
【0050】
次に、酸性水溶液で処理した黄色顔料と樹脂溶液とを用い、
・黄色顔料(I):10部
・樹脂溶液(II):20部
・ジエチレングリコール:20部
・精製水:10部
・ジルコニアビーズ(1.25mm径):400部
の組成の仕込みを行った後、ペイントシェーカーを用いて4時間撹拌を行い水性顔料分散液(III)を得た。この水性顔料分散液の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、74nmであった。この水性顔料分散液(III)は60゜C、72時間の加速安定性試験後も粒径変化、沈降物は認められなかった。
【0051】
(比較例1)
実施例1の黄色顔料(I)10部に代えて、チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名クロモフタールイエロー8G−CFを10部用いた他は実施例1と同様にして水性顔料分散液(IV)を調製した。この水性顔料分散液の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、79nmであった。
【0052】
(記録液の調製)
実施例1及び比較例1で得られた水性顔料分散液(III)、(IV)各20部に、それぞれグリセリン10部、プロピルプロピレングリコール5部、精製水65部を加え混合した後、0.5μmメンブランフィルタでろ過し、インクジェット記録用の水性顔料記録液(V)、(VI)とした。これらの水性顔料記録液をポリエチレンキャップ付きガラス製密閉容器に入れ、60゜C、72時間で加速安定性試験を行ったところ、水性顔料記録液(V)では粒径変化、沈降物は認められなかったが、水性顔料記録液(VI)ではわずかな黄白色状の沈降物が認められた。
【0053】
また、ピエゾ方式インクジェットプリンタ(エプソン社製EM−900C)を用い、ゼロックス社製4024用紙への印刷試験では、水性顔料記録液(V)では製造直後および加速安定性試験後のいずれの記録液でも、ノズル目詰まりはなく安定しており、良好な画像が得られたが、加速安定性試験後の水性顔料記録液(VI)では、書き出しの始めの位置で吐出が不安定で均一性に劣る画像であった。
【0054】
また、記録液(V)、(VI)をポリエチレンキャップ付きガラス製密閉容器に入れ、−20℃4時間、70℃4時間の温度サイクルを4回繰り返した前後の物性を比較したところ、物性に大きな変化はないが、記録液(VI)の温度サイクル後には、容器底部に若干の沈殿状の物質が観測された。
【0055】
(耐光性)
ピエゾ方式インクジェットプリンタ(エプソン社製EM−900C)を用い、ゼロックス社製4024用紙へのベタ印刷画像を用いた、キセノンランプによる100時間の耐光性試験の前後について、日本電色(株)製測色色差系シグマ80にて色差ΔEを測定したところ、実施例1および比較例1の顔料分散液からなる記録液の印刷試験結果で差異はみとめれられなかった。
【0056】
(耐水性)
ピエゾ方式インクジェットプリンタ(エプソン社製EM−900C)を用い、ゼロックス社製4024用紙へのベタ印刷画像を印刷後1分以内に、室温の精製水に1時間静かに浸漬し、室温で24時間かけて乾燥後、マクベス社製濃度計RD−918で未浸漬部と浸漬部の印刷濃度を測定した。印刷の残存率を、
[浸漬後の印刷濃度]/[浸漬前の印刷濃度]×100
でもとめたところ、実施例1および比較例1の顔料分散液からなる記録液の印刷試験結果で差異は認められず、いずれも耐水性が高い物であった。以上評価結果を表1に示した。
【表1】
○:沈降、凝集なし、△:若干の沈降物観察
(分析例)
実施例1に用いたクロモフタールイエロー8G−CF、黄色顔料(I)およびチバスペシャリティケミカルズ社製、商品名クロモフタールイエロー8GN(C.I.ピグメントイエロー128)の含有金属測定結果を表2に示した。
【表2】
【0057】
クロモフタールイエロー8GNは、微細化処理を施していない、ピグメントイエロー128である。酸性水溶液処理を施した実施例1の黄色顔料(I)は、カルシウム、マグネシウム類が減少していることがわかる。
【0058】
上記のような、分散の安定性が発現する理由は必ずしも定かではないが、微細化した有機顔料の酸性水溶液処理により、顔料表面の吸着物および、カルシウム、マグネシウム等が除去されることにより、複合的な効果によるものと考えている。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明の水性顔料分散液及びそれを用いたインクジェット用記録液は、分散安定性に優れた、高耐水性、高耐光性に優れたものである。
Claims (8)
- 少なくとも有機顔料と、分散剤とを含有する水性顔料分散液においては、前記有機顔料が微粉砕後に酸性水溶液にて処理されたものであることを特徴とする水性顔料分散液。
- 有機顔料がアゾ顔料であることを特徴とする請求項1記載の水性顔料分散液。
- 分散剤が、スチレン−アクリル酸系の高分子化合物を塩基性化合物で中和してなることを特徴とする請求項1または2記載の水性顔料分散液。
- 有機顔料がC.I.ピグメントイエロー128、酸性水溶液が塩酸水溶液であることを特徴とする請求項2、又は3記載の水性顔料分散液。
- 分散剤の存在下に、有機顔料を水性媒体中へ分散させる水性顔料分散液の製造方法において、前記有機顔料を予め微粉砕し、酸性水溶液で処理することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
- 分散剤が、スチレン−アクリル酸系の高分子化合物を塩基性物質で中和してなり、有機顔料がC.I.ピグメントイエロー128である請求項5記載の水性顔料分散液の製造方法。
- 少なくとも有機顔料と、スチレン−アクリル酸系の高分子化合物と塩基性化合物からなる水性顔料分散液であって、分散液中のマグネシウム含有量が有機顔料に対して20ppm以下である水性顔料分散液の製造方法。
- 請求項1,2,3,4記載の水性顔料分散液を用いることを特徴とするインクジェット用記録液。
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