JP2004059792A - 多価ヒドロキシ樹脂、エポキシ樹脂、それらの製造法、それらを用いたエポキシ樹脂組成物及び硬化物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、金属基材との接着性等にも優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂、その中間体、硬化剤及びそれらを用いたエポキシ樹脂組成物並びにその硬化物に関するものであり、プリント配線板、半導体封止等の電気電子分野の絶縁材料等に好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、特に先端材料分野の進歩にともない、より高性能なベース樹脂の開発が求められている。例えば、半導体封止の分野においては、近年の高密度実装化に対応したパッケージの薄形化、大面積化、更には表面実装方式の普及により、パッケージクラックの問題が深刻化しており、これらのベース樹脂としては、耐湿性、耐熱性、金属基材との接着性等の向上が強く求められている。更に最近では、環境負荷低減の観点から、ハロゲン系難燃剤排除の動きがあり、より難燃性に優れたベース樹脂が求められている。
【0003】
しかしながら、従来より知られているエポキシ樹脂には、これらの要求を満足するものは未だ知られていない。例えば、周知のビスフェノール型エポキシ樹脂は、常温で液状であり、作業性に優れていることや、硬化剤、添加剤等との混合が容易であることから広く使用されているが、耐熱性、耐湿性の点で問題がある。また、耐熱性を改良したものとして、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が知られているが、耐湿性や耐衝撃性に問題がある。また、特開昭63−238,122号には耐湿性、耐衝撃性の向上を目的に、フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化合物が提案されているが耐熱性や難燃性の点で十分でない。
【0004】
ハロゲン系難燃剤を用いることなく、難燃性を向上させるための方策として、特開平9−235449号、特開平10−182792号公報等に、リン酸エステル系の難燃剤を添加する方法が開示されている。しかし、リン酸エステル系の難燃剤を用いる方法では、耐湿性が十分ではない。また、高温、多湿な環境下ではリン酸エステルが加水分解を起こし、絶縁材料としての信頼性を低下させる問題があった。
【0005】
リン原子、ハロゲン原子を含むことなく、難燃性を向上させるものとして、特開平11−140166号公報には、ビフェニル構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を半導体封止材料に応用した例が提案されているが、難燃性の点で十分ではない。更に、依然、耐熱性の点で十分ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、難燃性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、金属基材との接着性等にも優れた性能を有し、積層、成形、注型、接着等の用途に有用なエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤として有用な多価ヒドロキシ樹脂、更にはそれらの製造法並びにそれらを用いたエポキシ樹脂組成物、更にはその硬化物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表される新規多価ヒドロキシ樹脂である。
【化4】
(但し、Aは炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。また、nは1〜15の数を示し、mは1〜3の整数を示す)
【0008】
また、本発明は、フェノール性化合物と下記一般式(2)、
【化5】
(但し、Xは水酸基、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示す)で表されるナフタレン系縮合剤を、前者1モルに対し後者0.05〜0.9モルの割合で反応させる上記一般式(1)の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法である。
【0009】
更に、本発明は、下記一般式(3)で表される新規エポキシ樹脂である。
【化6】
(但し、 Aは炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し、Gはグリシジル基を示す。また、nは1〜15の数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【0010】
更に、本発明は上記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂をエピクロルヒドリンと反応させることを特徴とする上記一般式(3)で表される新規エポキシ樹脂の製造法である。
【0011】
更にまた、本発明は、上記のエポキシ樹脂又は多価ヒドロキシ樹脂の少なくともいずれか一方を、エポキシ樹脂成分又は硬化剤成分の必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物であり、また、このエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の多価ヒドロキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される。ここで、Aはベンゼン環又はナフタレン環を示し、これらの環は炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいが、好ましくは無置換若しくはメチル基で置換されたベンゼン環又はナフタレン環である。mは1〜3の整数であるが、好ましくは1又は2の整数である。nは平均の繰り返し数を示し、1〜15であるが、好ましくは1.1〜5である。このような多価ヒドロキシ樹脂は、フェノール性化合物と一般式(2)で表される縮合剤を反応させることにより得られる。
【0013】
ここでフェノール性化合物とは、炭素数1〜6のアルキル基置換又は未置換の1価、2価又は3価のフェノール類又はヒドロキシナフタレン類であり、具体的にはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール類、イソプロピルフェノール類、ターシャリーブチルフェノール類、フェニルフェノール類、2,6−キシレノール、2,6−ジエチルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、フロログルシノール、1−ナフトール、2−ナフトール、1,5−ナフタレンジオール、1,6−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、1,3,6−トリヒドロキシナフタレン、1,3,7−トリヒドロキシナフタレン、2,3,6−トリヒドロキシナフタレン等が挙げられる。耐熱性、耐湿性及び難燃性の観点から、これらのフェノール性化合物のなかではヒドロキシナフタレン類が好ましい。なかでも耐湿性及び難燃性の観点からは、特に1−ナフトール又は2−ナフトールが好ましく、耐熱性の点ではナフタレンジオール類が好ましい。上記のフェノール類又はナフトール類は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
また、一般式(2)において、Xは水酸基、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。フェノール性化合物との反応性の観点からは、水酸基又はハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としては塩素原子が望ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基が好ましい。ナフタレン環に対する2つのCH2X基の置換位置は、同じベンゼン環上であっても、別々のベンゼン環上であっても良いが、好ましい置換位置は、1,4−位、1,5−位、1,6−位、2,6−位、2,7−位である。耐熱性、機械的強度及び靭性等の物性の観点からは、1,5−位及び2,6−位がより好ましく、難燃性の観点からは、特に1,5−位が好ましい。
【0015】
一般式(2)で表される縮合剤は、特に限定するものではないが、通常は、ナフタレンのクロロメチル化反応、又はジメチルナフタレン類のクロル化反応を経由して製造することができる。縮合剤中には、ナフタレン環に1つのCH2X基のみが置換したモノ置換ナフタレン類が含有されていてもよいが、モノ体の含有量は10wt%以下、好ましくは5wt%以下、更に好ましくは3wt%以下である。これよりモノ体の含有量が多いと樹脂を硬化させた場合の架橋密度が低下し、耐熱性の低下をもたらす場合がある。
【0016】
フェノール性化合物と縮合剤の反応においては、縮合剤に対して過剰量のフェノール性化合物が使用される。縮合剤の使用量は、フェノール性化合物1モルに対して0.05〜0.9モルの範囲であるが、好ましくは、0.1〜0.7モルの範囲である。これより多いと樹脂の軟化点が高くなり成形作業性に支障をきたす。また、これより少ないと反応終了後、過剰に用いたフェノール性化合物の除く量が多くなり、工業的に好ましくない。
【0017】
この反応は酸触媒の存在下に行うことがよく、この酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。このような酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいは、活性白土、シリカ−アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。また、一般式(2)で表される縮合剤としてビスクロロメチルナフタレンを用いる場合は、無触媒下で反応させることができる。
【0018】
通常、この反応は10〜250℃で1〜20時間行う。更に、反応溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を使用することができる。
【0019】
反応終了後、場合により、中和、水洗等の方法により、触媒を除去し、必要に応じて残存する溶媒及び未反応フェノール性化合物を減圧留去等の方法により系外に除き、多価ヒドロキシ樹脂とする。未反応フェノール性化合物は、通常、3%以下、好ましくは1%以下とする。これより多いと硬化物とした場合の耐熱性が低下する。但し、反応に2価以上のフェノール性化合物を用いる場合は、反応後、残存するフェノール性化合物を除かなくてもよい。
【0020】
本発明には、上記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂にナフチルメタン基が結合したものが含有されていても良い。例えば、フェノール性化合物と反応させる縮合剤中に、モノクロロメチルナフタレン、モノヒドロキシナフタレン又はモノアルコキシメチルナフタレンが含有されていた場合、一般式(1)の多価ヒドロキシ樹脂と、一般式(1)の多価ヒドロキシ樹脂の芳香族環にナフチルメタン基が1つ又はそれ以上付加した化合物との混合物となる。また例えば、フェノール性化合物として、2種類以上の混合物を反応に用いた場合、場合により、1分子中に2種類以上のフェノール性化合物を含有する多価ヒドロキシ樹脂が生成し、一般式(1)の新規多価ヒドロキシ樹脂との混合物となる。これらは混合物であっても、本発明の効果を発揮することに支障はなく、これらをエポキシ樹脂硬化剤として用いることができるし、また本発明のエポキシ樹脂の原料として使用することができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂をエピクロルヒドリンと反応させることにより得られる。この反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。
【0022】
例えば、上記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、50〜150℃、好ましくは、60〜120℃の範囲で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際、アルカリ金属水酸化物の使用量は、多価ヒドロキシ樹脂中の水酸基1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは0.9〜1.2モルの範囲である。また、エピクロルヒドリンは多価ヒドロキシ樹脂中の水酸基に対して過剰に用いられるが、通常、多価ヒドロキシ樹脂中の水酸基1モルに対して、1.5〜15モル、好ましくは2〜8モルの範囲である。また、反応の際、四級アンモニウム塩等を添加することができる。四級アンモニウム塩としては、たとえばテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等があり、その添加量としては、多価ヒドロキシ樹脂に対して、0.1〜2.0wt%の範囲が好ましい。これより少ないと四級アンモニウム塩添加の効果が小さく、これより多いと難加水分解性塩素の生成が多くなり、高純度化が困難になる。更には、ジメチルスルホキシド、ジグライム等の極性溶媒を用いても良く、その添加量は、多価ヒドロキシ樹脂に対して、10〜200wt%の範囲が好ましい。これより少ないと添加の効果が小さく、これより多いと容積効率が低下し経済上好ましくない。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解、濾過した後、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。このエポキシ樹脂は一般式(3)で表されるものを主成分とするが、一般式(1)の新規多価ヒドロキシ樹脂の芳香族環にナフチルメタン基が1つ又はそれ以上付加した化合物のグリシジルエーテル化物が含まれていてもよい。更に、本発明のエポキシ樹脂中のエポキシ基がエーテル結合としてオリゴマー化したものもが含まれていてもよい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤よりなり、エポキシ樹脂成分として一般式(3)で表されるエポキシ樹脂又は硬化剤成分として上記一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂の少なくともいずれか一方を必須成分として配合したものである。
【0024】
一般式(3)で表されるエポキシ樹脂を必須成分とする場合の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、ジシアンジアミド、多価フェノール類、酸無水物類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。具体的に例示すれば、多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類、更にはフェノール類、ナフトール類又は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物、等があり、酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。また、アミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類、あるいは一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂がある。本発明の樹脂組成物には、これら硬化剤の1種又は、2種以上を混合して用いることができるが、本発明に関わるエポキシ樹脂の配合量はエポキシ樹脂全体中、5〜100%の範囲である。
【0025】
一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂を硬化剤成分の必須成分とする場合のエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、又は、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物、あるいは上記一般式(1)で表される多官能エポキシ樹脂等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種又は、2種以上を混合して用いることができるが、本発明に関わる多価ヒドロキシ樹脂の配合量はエポキシ樹脂全体中、5〜100%の範囲である。
【0026】
また、一般式(3)で表されるエポキシ樹脂又は一般式(1)で表される多価ヒドロキシ樹脂又は両者を必須成分とする本発明のエポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマー又は高分子化合物を適宜配合してもよいし、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤、等の添加剤を配合してもよい。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ、等が挙げられ、顔料としては、有機系又は、無機系の体質顔料、鱗片状顔料等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系、等を挙げることができる。更に必要に応じて、従来より公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等がある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2〜5重量部の範囲である。また更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
【0027】
本発明の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮成形、トランスファー成形等の方法により、成形加工し得ることができる。生成する際の温度は、通常、120〜220℃の範囲である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明する。
実施例1(多価ヒドロキシ樹脂の製造)
1Lの4口セパラブルフラスコに、1,6−ナフタレンジオール192g、ジクロロメチルナフタレン(1,5−ジクロロメチル体95.6%、その他のジクロロメチル体3.0%、モノクロロメチル体1.4%)81g及びトルエン550gを量り採り、窒素気流下、攪拌しながら徐々に昇温溶解させ、約116℃で還流させながらそのまま2時間反応させた。その後、トルエンを留去しながら180℃まで昇温し、そのまま1時間反応させた。反応後、減圧留去により溶媒を除去した後、褐色の樹脂236gを得た(多価ヒドロキシ樹脂A)。得られた多価ヒドロキシ樹脂Aの水酸基当量は114g/eq.であり、軟化点は102℃、150℃での溶融粘度は2.08Pa・sであった。GPCチャートを図1、赤外吸収スペクトルを図2に示す。ここで溶融粘度は、BROOKFIELD社製CAP2000Hを用い、GPC測定は、装置:HLC−802A(東ソー(株)製)及びカラム:TSK−GEL2000H×3本及びTSK−GEL4000H× 1本(何れも東ソー(株)製)を用い、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/分、温度:38℃、検出器:RIの条件で行った。
【0029】
実施例2(多価ヒドロキシ樹脂の製造)
1Lの4口セパラブルフラスコに、1−ナフトール288g、1,5−ジクロロメチルナフタレン(1,5−ジクロロメチル体95.6%、その他のジクロロメチル体3.0%、モノクロロメチル体1.4%)135g及びトルエン840gを量り採り、窒素気流下、攪拌しながら徐々に昇温溶解させ、約116℃でそのまま還流させながら2時間反応させた。その後、トルエンを留去しながら180℃まで昇温し、そのまま1時間反応させた。反応後、200℃で減圧留去により未反応1−ナフトール及び溶媒を除去した後、褐色の樹脂224gを得た(多価ヒドロキシ樹脂B)。得られた多価ヒドロキシ樹脂Bの水酸基当量は230g/eq.であり、軟化点は137℃、180℃での溶融粘度は1.69Pa・sであった。GPCチャートを図3に示す。
【0030】
実施例3(多価ヒドロキシ樹脂の製造)
1Lの4口セパラブルフラスコに、フェノール188g、1,5−ジクロロメチルナフタレン(1,5−ジクロロメチル体95.6%、その他のジクロロメチル体3.0%、モノクロロメチル体1.4%)112.5g及びトルエン800gを量り採り、窒素気流下、攪拌しながら徐々に昇温溶解させ、約116℃でそのまま還流させながら2時間反応させた。その後、トルエンを留去しながら180℃まで昇温し、そのまま1時間反応させた。反応後、200℃で減圧留去により未反応フェノール及び溶媒を除去した後、褐色の樹脂142gを得た(多価ヒドロキシ樹脂C)。得られた多価ヒドロキシ樹脂Cの水酸基当量は191g/eq.であり、150℃での1.1Pa・sであった。
【0031】
実施例4(エポキシ樹脂の製造)
実施例1で得た多価ヒドロキシ樹脂A100gをエピクロルヒドリン812.1g及びジグライム162.4gに溶解し、減圧下(約100mmHg)、60℃にて48%水酸化ナトリウム水溶液71gを4時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、更に1時間反応を継続した。その後、エピクロルヒドリン及びジグライムを減圧留去し、メチルイソブチルケトン348.1gに溶解した後、濾過により生成した塩を除いた。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液21gを加え、80℃で2時間反応させた。反応後、濾過、水洗を行った後、溶媒であるメチルイソブチルケトンを減圧留去し、褐色のエポキシ樹脂131.3gを得た(エポキシ樹脂A)。得られたエポキシ樹脂Aのエポキシ当量は175.3g/eq.であり、軟化点は62℃、加水分解性塩素は600ppm、150℃での溶融粘度は0.12Pa・s、であった。GPCチャートを図3、赤外吸収スペクトルを図4に示す。なお、ここで加水分解性塩素は、樹脂試料0.5gを1,4−ジオキサン30mlに溶解させたものを1N−KOH/メタノール溶液5mlで30分間煮沸還流したものを、硝酸銀溶液で電位差滴定を行うことにより求めた。
【0032】
実施例5(エポキシ樹脂の製造)
実施例2で得た多価ヒドロキシ樹脂B100gをエピクロルヒドリン402.9g及びジグライム80.6gに溶解し、48%水酸化ナトリウム水溶液35.2gを用いて実施例4と同様に反応を行い、褐色のエポキシ樹脂116gを得た(エポキシ樹脂B)。得られたエポキシ樹脂Bのエポキシ当量は315g/eq.であり、加水分解性塩素は500ppm、150℃での溶融粘度は11.5Pa・sであった。GPCチャートを図5に示す。
【0033】
実施例6(エポキシ樹脂の製造)
実施例3で得た多価ヒドロキシ樹脂C100gをエピクロルヒドリン484。3g及びジグライム96.9gに溶解し、48%水酸化ナトリウム水溶液42.3gを用いて実施例3と同様に反応を行い、褐色のエポキシ樹脂123gを得た(エポキシ樹脂C)。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は271g/eq.であり、加水分解性塩素は800ppm、150℃での溶融粘度は0.6Pa・sであった。
【0034】
実施例7〜14及び比較例1〜5
実施例1〜6で合成した多価ヒドロキシ樹脂又はエポキシ樹脂、1,6−ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量175、軟化点74℃、150℃での溶融粘度0.35Pa・s;ESN−375、新日鐵化学製;エポキシ樹脂D)、2−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、軟化点84℃、150℃での溶融粘度0.38Pa・s;ESN−185、新日鐵化学製;エポキシ樹脂E)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量 197、軟化点54℃、150℃での溶融粘度90mPa・s;EOCN−1020、日本化薬製;エポキシ樹脂F)、3,3’,5,5’‐テトラメチル‐4,4’‐ジヒドロキシビフェニルのエポキシ化物(エポキシ当量195、加水分解性塩素450ppm、融点105℃、150℃での溶融粘度11mPa・s;YX−4000HK、ジャパンエポキシレジン製;エポキシ樹脂G)、フェノールノボラック(OH当量104、軟化点46℃、150℃での溶融粘度20mPa・s;フェノール樹脂D)及びフェノールアラルキル樹脂(OH当量162、軟化点50℃、150℃での溶融粘度30mPa・s;MEH−7800−4L、明和化成製;フェノール樹脂E)、1−ナフトールアラルキル樹脂(OH当量208、軟化点74℃、150℃での溶融粘度35mPa・s;SN−475、新日鐵化学製;フェノール樹脂F)を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、表1〜2に示す配合で樹脂組成物とした後、成形(150℃、3分)し、硬化試験片を得た。試験片は180℃にて12時間ポストキュアを行った後、種々の物性試験に供した。結果を表3〜4に示す。
【0035】
このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃で成形し、175℃で12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。ガラス転移点は、熱機械測定装置により、昇温速度7℃/分の条件で求めた。曲げ試験は、240℃での高温曲げ強度、曲げ弾性率を3点曲げ法により行った。接着強度は、42アロイ板2枚の間に25mm×12.5mm×0.5mmの成形物を圧縮成型機により175℃で成形し、175℃、12時間ポストキュアを行った後、引張剪断強度を求めることにより評価した。吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて、直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させた時のものであり、クラック発生率は、QFP−80pin(14mm×20mm×2.5mm、194アロイ)を成形し、ポストキュア後、85℃、85%RHの条件で所定の時間吸湿後、260℃の半田浴に10秒間浸漬させた後、パッケージの状態を観察し求めた。難燃性は、厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94V−0規格によって評価し、n=5の試験での合計燃焼時間で表した。結果をまとめて表3〜4に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂又は多価ヒドロキシ樹脂から得られるエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、耐湿性、耐熱性に優れ、かつ耐衝撃性等の機械的特性に優れた性能を有し、積層、成形、注型、接着等の用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒドロキシ化合物AのGPCチャート
【図2】ヒドロキシ化合物AのIRスペクトル
【図3】ヒドロキシ化合物BのGPCチャート
【図4】エポキシ樹脂AのGPCチャート
【図5】エポキシ樹脂AのIRスペクトル
【図6】エポキシ樹脂BのGPCチャート
Claims (8)
- 一般式(1)におけるAがナフタレン環である請求項1に記載の多価ヒドロキシ樹脂。
- ナフタレン系縮合剤中の、1,5−ジ置換体の含有率が60重量%以上である請求項3に記載の多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の多価ヒドロキシ樹脂とエピクロルヒドリンを反応させることを特徴とする請求項5に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
- エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、請求項1に記載の多価ヒドロキシ樹脂又は請求項5に記載のエポキシ樹脂の少なくともいずれか一方を必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物。
- 請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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