JP2004059523A - ラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物および硬化体 - Google Patents

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Abstract

【課題】眼鏡レンズ等の光学材料として好適な、屈折率、アッベ数が高く、耐熱性、耐候性に優れ、研削加工等の加工時に発生する臭気も少ない作業性に優れた重合体を与える重合性化合物を得る。
【解決手段】
下記式
【化1】
Figure 2004059523

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、R及びRは炭素数1〜6のアルキレン基、X及びXは酸素原子又は硫黄原子、Yは(メタ)アクリロイル基、Yは(メタ)アクリロイル基以外の炭素数2〜7のアシル基を示し、cは0又は1、dは0〜4、e及びgは0又は1、m及びnは各々0〜2、oは2〜4、pは0〜2を示し、かつc+o+pは2〜4、e+mは1〜3、g+nは1〜3であり、さらにm、nが共に0のときは、X又はXで示される原子の少なくとも一つは必ず硫黄原子である。)
で示される化合物等の、アダマンタン骨格と少なくとも1つの硫黄原子を有する(メタ)アクリレート。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なラジカル重合性のアダマンタン化合物に関し、より詳しくは透明性樹脂、特に眼鏡用プラスチックレンズ等の光学材料の製造原料に適したラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物重合性単量体に関する。さらに詳しくは、高屈折率、高アッベ数であり、かつ耐熱性にも優れ、さらに成型加工時に悪臭の少ない透明性樹脂の製造に好適なラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、無機ガラスに代わる有機ガラスについては種々研究されているが、欠点も多く、まだ十分に満足しうるものは得られていない。例えば、メチルメタクリレートやジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)を主成分とする重合性単量体を重合した硬化体が光学材料やレンズとして使用されているが、その屈折率は約1.50と低い。
【0003】
近年、屈折率を高めるため、硫黄原子を分子構造中に導入することが種々検討されている。例えば、特開昭63−162671号公報や特開昭63−188660号公報には、スルフィド構造を有するチオ(メタ)アクリレート系重合性単量体が開示されている。また、特開平4−161411号公報にはジチアン環を有するチオ(メタ)アクリレート系重合性単量体を重合硬化させてなる重合体が開示されている。これらの重合性単量体を重合硬化させて得られた硬化体の屈折率は約1.58〜1.63と従来の硬化体に比べ改良されてはいるが、更なる向上が求められている。また、これらの硬化体の耐熱性は十分とはいい難く、また硫黄原子を含むため成形加工時の臭気も甚だしい。
【0004】
さらに、特開平2−258819号公報には、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルフィドのジチオメタクリレートが開示されている。この化合物を重合硬化した硬化体は屈折率が1.68とかなり高く、成形加工時の臭気も小さくなっているものの、アッベ数が非常に小さく、また極めて耐候性が悪いといった問題がある。
【0005】
また、特開平8−12669号公報にはジチアン環を有する芳香族ビニル化合物が開示されている。この化合物を重合硬化させてなる硬化体は、屈折率は1.66と高いもののアッベ数は31と低く、アッベ数の向上が望まれている。
【0006】
他方、アダマンタン誘導体は、非芳香族性でありかつ剛直であるという特異な構造を有するため、様々な分野で注目されている。硬化体への利用については、特開昭63−100537号公報にアダマンタンジカルボン酸ジアリルが、特開昭63−307844号公報にアダマンタンジ(メタ)アクリレート誘導体が開示されている。しかし、これらの材料は高耐熱性を示すものの、屈折率が1.53〜1.55程度と低く、またハロゲン原子を含むため耐候性等の点で必ずしも満足できるものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の光学材料用重合性単量体の問題点を解決し、硬化体の屈折率およびアッベ数が高く、耐熱性、耐候性に優れ、さらに成型加工時の臭気が少ない重合性単量体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った。その結果、アダマンタン骨格を有する特定の(メタ)アクリレート化合物を重合性単量体として用いることにより、前記の要求特性、即ち、高屈折率、高アッベ数、高耐候性及び加工時の低臭気性を満たす硬化体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち本発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化2】
Figure 2004059523
【0011】
{式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を、Zは、下記式(2)
−(X−(R−X−Y (2)
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基を示し、eは0又は1、fは0〜6の整数であり、fが2〜6の場合には(R−X)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、かつe+fは1以上である。)
で示される基を、Zは、下記式(3)
−(X−(R−X−Y (3)
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基以外の炭素数2〜7のアシル基を示し、gは0又は1、hは0〜6の整数であり、hが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、かつg+hは1以上である。)
で示される基を、Zは、下記式(4)
−(X−(R−X−H (4)
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を示し、iは0又は1、jは0〜6の整数であり、jが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、i+jは1以上であり、かつ末端は必ず水酸基である。)
で示される基を示し、aは1〜4の整数、bは0〜3の整数、cは0又は1であり(但し、a+b+cは1〜4である)、dは0〜4の整数を示し、R、Z及びZはいずれも、複数ある場合には各々が同一でも異なっていても良く、かつX〜Xで示される原子のうちの少なくとも1つは硫黄原子である。}
で示されるラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物である。
【0012】
他の発明は、上記ラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物を含むラジカル重合性組成物、および該重合性組成物をラジカル重合させてなる硬化体である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物(以下、本発明のアダマンタン化合物とも称す)は上記一般式(1)で表される。
【0014】
当該化合物は、アダマンタン骨格に下記式(2)
−(X−(R−X−Y   (2)
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基を示し、eは0又は1、fは0〜6の整数であり、fが2〜6の場合には(R−X)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、かつe+fは1以上である。)
で示される、(メタ)アクリロイル基を有す置換基Zを1〜4つ有する(aが1〜4である)。この置換基Zの有する(メタ)アクリロイル基Yはラジカル重合性の基であり、これにより当該化合物はラジカル重合性の化合物となる。
【0015】
上記式(2)におけるRは炭素数1〜15の炭化水素基である。当該炭素数1〜15の炭化水素基としては公知のいかなる基でもよく、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,4−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,2−ブチレン基、へキシレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基;フェニレン基、メチルフェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基;シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数4〜12のシクロアルキレン基等を挙げることができる。
【0016】
これら炭化水素基の中でも、高いアッベ数を得ることができ、また本発明のアダマンタン化合物を合成する際の原料の入手も容易であることから炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。
【0017】
上記式(2)において、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を示し、eは0又は1、fは0〜6の整数であり、かつe+fは少なくとも1以上である。即ち、e又はfの少なくとも一方は0ではないから、Yとして示される(メタ)アクリロイル基は必ず酸素原子又は硫黄原子と結合しており、それにより(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルチオ基が形成される。従って、fが0の場合には、該(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルチオ基がアダマンタン骨格に直結した構造となる。
【0018】
他方、fが1〜6の整数の場合には、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルチオ基が、−(X−(R−X(f−1)−R−で示される基を介してアダマンタン骨格に結合する。なお、fが2〜6の場合には(R−X)で示される基は各々同一でも異なっていても良い。即ち、繰り返される(R−X)単位ごとに、R及びXは各々異なっていてもよい。合成の容易さを考慮すると、各々のRが異なっている場合でも、Xは同一であることが好ましい。
【0019】
当該Zにおいては、高い屈折率を得られる点で、X及びXが共に硫黄原子であることが好ましい。また、合成の容易さや、加工時の低臭気性を考慮すると、fは0〜4であることがより好ましく、さらに耐熱性をも考慮すると0〜2であることが特に好ましい。また、合成の容易さや安定性の点で、eは1であることが好ましい。
【0020】
また、前述したように当該Zはアダマンタン骨格に1〜4つ結合していてよいが、Zが2〜4存在する場合(aが2〜4の場合)にはそれらは各々同一でも異なっていても良い。即ち、各Zごとに、X,X及びRの種類や、e、fの値が異なっていても良い。合成の容易さを考慮すると、全てのZが同一であるか、Xだけが異なり、R、X、Y、e及びfは同じであることが好ましい。さらに得られる重合体の耐熱性を考慮すると、aは2〜4であることが好ましい。
【0021】
本発明のアダマンタン化合物は、上記Zで示される(メタ)アクリロイル基を有す基のほかに、Z、Z及びRで示される、(メタ)アクリロイル基を有さない基がアダマンタン骨格に結合していてもよい。
【0022】
は下記式(3)
−(X−(R−X−Y (3)
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基以外の炭素数2〜7のアシル基を示し、gは0又は1、hは0〜6の整数であり、hが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、かつg+hは1以上である。)
で示される基である。
【0023】
当該Zは、その末端が(メタ)アクリロイル基以外の炭素数2〜7のアシル基である。当該炭素数2〜7のアシル基は特に限定されず公知の如何なるものでも良く、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等の脂肪族系のアシル基、ベンゾイル基等の芳香族系のアシル基等が具体的に例示される。高いアッベ数を得るためには、脂肪族系のアシル基であることが好ましく、炭素数2〜4の脂肪族系のアシル基であることがより好ましい。
【0024】
は炭素数1〜15の炭化水素基であり、具体的には前記Rと同じものが例示され、その好ましい種類もRと同じである。
【0025】
またX、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子であり、gは0又は1、hは0〜6の整数であり、hが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、かつg+hは1以上である。また、ZもZと同様、複数存在する場合には各々同一でも異なっていてもよい。これらに関しての好ましい種類や数値範囲は、Zに関して述べたものと同様である(XとX、XとX、eとg、fとhが各々対応する)。
【0026】
当該Zは分子中に存在しなくてもよく、また存在する場合には最大で3つである。合成の容易さや得られる重合体の耐熱性、アッベ数等を考慮すると、Zが存在しない、即ち、bが0であることが好ましい。
【0027】
は下記式(4)
−(X−(R−X−H (4)
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を示し、iは0又は1、jは0〜6の整数であり、jが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、i+jは1以上であり、かつ末端は必ず水酸基である。)
で示される基である。該Zは分子中に存在しなくてもよく、存在する場合には1つだけである。
【0028】
上記式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基であり、具体的には前記Rと同一のものが例示され、その好ましい種類もRと同一である。
【0029】
またX、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子であり、iは0又は1、jは0〜6の整数であり、jが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、かつi+jは1以上である。
【0030】
なお、末端がメルカプト基の場合には、該メルカプト基が(メタ)アクリロイル基と反応してしまい保存安定性が極めて悪化する。従って、末端は水酸基でなくてはならない。即ち、jが0の場合には、Xが必ず酸素原子であり、またjが1〜6の場合には、Zは−(X−(R−X(j−1)−(R−O)−Hである。
【0031】
当該Zにおいては、合成の容易さの点から、jが0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0032】
これらZ、Z及びZは、分子中に合計で1〜4つ存在する。
【0033】
また、X〜Xはいずれも酸素原子又は硫黄原子(Zにおいて、末端がメルカプト基になる場合を除く)であるが、このX〜Xで示される原子のうちの少なくとも1つは硫黄原子である。即ち、本発明のアダマンタン化合物は少なくとも1つの硫黄原子をその分子中に有する。これにより光学材料として用いた際に高い屈折率を得ることができる。なおこの場合には、例えばXで示される原子が複数存在する際(fが2〜6のとき、aが2〜4のときなど)には、それら複数のXのうちの少なくとも1つが硫黄原子であれば構わない。より好ましくは、このX〜Xで示される原子のうちの少なくとも2つが硫黄原子である化合物である。
【0034】
上記一般式(1)においてRは、炭素数1〜6のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等を挙げることができる。dは0〜4の整数を示す。該dが2〜4であるときは、それらは各々同一でも異なっていても良い。
【0035】
本発明のアダマンタン化合物において、上記Z、Z、Z及びRは、アダマンタン骨格上のいずれの位置に結合(置換)していても良いが、合成の容易さの点から、Z、Z及びZはアダマンタン骨格の橋頭位に結合していることが好ましい。
【0036】
さらに合成の容易さや、得られる重合体の耐熱性、アッベ数等を考慮すると、前記一般式(1)で示される化合物の中でも、下記式(5)
【0037】
【化3】
Figure 2004059523
【0038】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、R及びRは各々炭素数1〜6のアルキレン基を、X及びXは各々酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基を、Yは(メタ)アクリロイル基以外の炭素数2〜7のアシル基を示し、cは0又は1、dは0〜4の整数、e及びgは各々0又は1、m及びnは各々0〜2の整数、oは2〜4の整数、pは0〜2の整数を示し、かつc+o+pは2〜4、e+mは1〜3、g+nは1〜3であり、さらにm、nが共に0のときは、X又はXで示される原子の少なくとも一つは必ず硫黄原子である。)
で示される化合物が好ましい。
【0039】
上記式中、R、X、X、Y、Y、c、d、e及びgは前記一般式(1)の化合物に関して説明したものと同じである。また、R及びRとして示される炭素数1〜6のアルキレン基については、Rとして説明したなかの炭素数1〜6のアルキレン基と同じものが例示される。
【0040】
{(X−(R−S)−Y}で示される基は化合物中に2〜4つ存在し(oが2〜4)、これらは各々同一でも異なっていても良いが、合成の容易さを考慮すると、全てが同一であるか、R、Y、e及びmが同一であり、Xだけが異なる(但しeが1の場合のみ)基であることが好ましい。なおmは0〜2の整数であり、mが2である場合には、1つの{(X−(R−S)−Y}中に存在する2つのRは各々同一でも異なっていても良い。
【0041】
上記式(5)においては、{(X−(R−S)−Y}で示される基は存在しないか、1又は2つ存在していてもよい。この基も、2つ存在する場合には各々同一でも異なっていても良いが、合成の容易さを考慮すると、この2つが同一であるか、R、Y、g及びnが同一であり、Xだけが異なる(但しgが1の場合のみ)基であることが好ましい。
【0042】
さらに、上記{(X−(R−S)−Y}で示される基と{(X−(R−S)−Y}で示される基との有す(R−S)及び(R−S)で示される部分が同一の基であることが、合成が容易な点で特に好ましい。さらに高い屈折率を得られる点で、X及びXがすべて硫黄原子であることがより好ましい。
【0043】
合成の容易さ、得られる重合体の屈折率、アッベ数、耐熱性を考慮すると、最も好ましい化合物は、前記式(5)において、Xが硫黄原子であり、c及びpが0の化合物である。
【0044】
本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物は、例えば次のような手段によってその構造を同定、確認することができる。
(ア)元素分析により、炭素、水素、硫黄の各重量%を測定することにより、化合物の組成式を決定することができる。
(イ)質量スペクトル(MASS,EI法)により、化合物の分子量を知ることができる。
(ウ)プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定することにより、化合物中に存在する水素原子の結合様式を知ることができる。
(エ)赤外線吸収スペクトル(IR)を測定することにより、1600〜1650cm−1付近に末端の不飽和炭化水素基に基づく吸収、1700〜1750cm−1付近にカルボニル基に基づく強い吸収を観察することができる。
【0045】
本発明の重合性アダマンタン化合物の製造方法は特に限定されないが、一般的には次に述べる方法で製造することができる。即ち、前記一般式(1)において、Z中のY(及び存在するならばZ中のY)に代えて水素原子が結合している化合物、即ち、水酸基あるいはメルカプト基を有するアダマンタン化合物を原料化合物とし、これを(メタ)アクリル酸ハライド{及び必要に応じて(メタ)アクリル酸ハライド以外の炭素数2〜7のアシルハライド(以下これを単に炭素数2〜7のアシルハライドと称す。また(メタ)アクリル酸ハライドと併せて単に酸ハライドと称す場合がある。)}と塩基性化合物の存在下で反応させる等の公知のアシル化(エステル化)方法により製造できる。この際、原料の水酸基、及びメルカプト基に対する酸ハライドの当量数を調整することにより、種々の目的化合物を合成することができる。例えば、メルカプト基のみを有する原料化合物において、該メルカプト基1つに対して1当量以上の酸ハライドを用いることにより、用いた酸ハライドの量に応じてアシル化された目的化合物を得ることができる。また、水酸基とメルカプト基の両方を有する化合物においては、まずメルカプト基が置換されるため、酸ハライドの当量数によって、水酸基及びメルカプト基の両方が置換された目的化合物、あるいは水酸基を残した目的化合物を得ることができる。
【0046】
これら水酸基あるいはメルカプト基を有するアダマンタン化合物と酸ハライドとの反応の際の反応条件は、公知の条件を必要に応じて適宜選択すればよい。また、酸ハライドに代えて、酸無水物によるアシル化や酸エステルを用いたエステル交換反応等の公知のエステル合成方法を採用することも可能である。
【0047】
酸ハライドを用いる場合には、反応の進行に伴いハロゲン化水素が生成するので、これを捕捉する塩基性化合物の存在下で行うのが一般的である。該塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコール類のアルカリ金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機塩基を挙げることができる。塩基性化合物の使用量は公知の範囲でよく、一般的には、酸ハライドに対して1.0〜50当量程度である。
【0048】
また反応に際しては一般的には溶媒を用いることが好ましい。該溶媒として好適に使用されるものを例示すれば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は必要に応じ適宜選択すれば良い。また溶媒の使用量も特に制限されるものではなく、一般的には原料化合物の濃度が0.1〜50重量%程度となるようにすればよい。
【0049】
また、反応温度は原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には−20〜100℃であり、好ましくは−10〜60℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から24時間の範囲である。また、反応中は攪拌を行うことが好ましい。
【0050】
さらに反応生成物の重合を防止するため、重合禁止剤を添加して反応を行うことが望ましい。該重合禁止剤としては公知の化合物が何ら制限無く用いられるが、具体的には、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−t−ブチルカテコール等のフェノール系重合禁止剤;フェノチアジン、塩化銅(II)、塩化鉄(III)等を挙げることができる。これらの中でも重合禁止能力、生成物の着色、および反応後に反応生成物から除去することを勘案すると、p−メトキシフェノール、p−t−ブチルカテコールが好ましい。また、該重合禁止剤の使用量は禁止剤の種類、反応温度にもよるが、一般的には原料であるアダマンタン化合物100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0051】
この様な製造方法で製造された本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物は、必要に応じて単離された後、使用に供される。このときの単離方法としては公知の方法が何ら制限無く用いられる。例えば、反応収率が高いため特に精製操作や脱色操作等を行わなくても良いときは、生成したハロゲン化水素と塩基性化合物との塩を濾過や水洗等の方法で除去した後、溶媒を留去するだけでも構わない。また、反応収率が低い場合や、着色が問題となる場合には、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製操作、および活性炭処理、シリカ処理等の吸着剤処理、或いは水、塩酸水や水酸化ナトリウム水溶液での洗浄等の公知の脱色操作から適宜選択した操作を行えば良い。
【0052】
なお、上記反応において原料化合物となるアダマンタン化合物は、種々の方法で製造することができる。代表的な製造方法を例示すると、酸性条件下に、水酸基を有するアダマンタン化合物を、チオ尿素をはじめとするチア化剤と反応させてメルカプト基を有するアダマンタン化合物とする方法、あるいは該水酸基やメルカプト基を有するアダマンタン化合物を、各種ジオール化合物やジチオール化合物と反応させる方法が挙げられる。
【0053】
水酸基を有するアダマンタン化合物をチア化剤と反応させてメルカプト基を有するアダマンタン化合物とする際の条件は特に制限されず公知の方法を採用すればよい。一般的には以下の方法を採用することにより可能である。
【0054】
即ち、1−アダマンタノール等の水酸基がアダマンタン骨格に直結したアルコール、あるいは1−(ヒドロキシメチル)アダマンタン等の、水酸基が炭素数1〜15の炭化水素基を介してアダマンタン骨格に結合している化合物等を原料とし、メルカプト基に変換させようとする水酸基1つあたり1当量以上、好ましくは1.0〜50当量のチア化剤を反応させればよい。
【0055】
このとき原料である水酸基がアダマンタン骨格に直結したアルコールとしては、1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,5,7−アダマンタンテトラオール、3−メチル−1−アダマンタノール、5,7−ジメチル−1,3−アダマンタンジオール等を用いることが可能であり、水酸基が炭化水素基を介してアダマンタン骨格に結合しているアルコールとしては、1−(ヒドロキシメチル)アダマンタン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)アダマンタン等を使用することができる。またチア化剤としては、チオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルフォスフィンスルフィド、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン等を用いればよい。
【0056】
この反応は、中間体であるカルボカチオンの発生を促進するために、酸性化合物の存在下行うのが一般的である。該酸性化合物としては硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等を挙げることができる。酸性化合物の使用量は公知の範囲でよく、一般的にはメルカプト基に変換させようとする水酸基1つあたり1当量以上、好ましくは1.0〜50当量である。
【0057】
また均一系で反応させるために、溶媒を用いることが好ましい。該溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は反応に用いるアルコール化合物や酸性化合物の種類によって適宜選択してゆけばよい。一般的な溶媒の使用量は、原料となるアダマンタン化合物の濃度が1.0〜50重量%となる程度の量である。
【0058】
このときの反応温度は、用いる原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には20〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から24時間の範囲である。また、オートクレーブ等の加圧反応装置を用いることにより、反応を溶媒の沸点以上の温度で行うことも可能である。また使用原料によっては反応中に生じる水を除くことによって反応が促進されることがあり、その際にはディーンスターク等の水分留去装置により共沸脱水することが出来る。
【0059】
この反応により、中間体としてチア化剤との間に塩が形成される場合は、続いて塩基性化合物の存在下、反応混合物を加熱攪拌することにより、この塩を分解し、目的とするメルカプト基を有するアダマンタン化合物とする。ここで用いる塩基性化合物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコール類のアルカリ金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機塩基を挙げることができる。該塩基性化合物は、単体で又は水等の溶媒に溶解して添加することが出来る。この反応における温度は原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には20〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から24時間の範囲である。
【0060】
また、反応に用いるチア化剤や触媒となる酸性化合物の量、反応時間、反応温度を制御することにより、水酸基の一部のみをメルカプト基に変換し、メルカプト基/水酸基を両方含む化合物を得ることも可能である。
【0061】
反応終了後、生成物の溶液から溶媒を除去し、必要に応じて公知の方法で精製すればよい。
【0062】
また、(R−X等に相当する部分を有する原料化合物が入手の困難な化合物である場合には、例えば、水酸基を有するアダマンタン化合物や、上記方法で得られるメルカプト基を有するアダマンタン化合物と、対応する構造(例えば、HX−R−XH、HX−R−X−R−XH等)のジオール化合物又はジチオール化合物などとを、酸性条件下で反応させることにより得ることが出来る。
【0063】
当該ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が例示され、ジメルカプト化合物としてはエタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、プロパンジチオール等が例示される。また、必要に応じて、ジオール化合物とジチオール化合物の双方を併用することもできる。これらジオール化合物、ジチオール化合物の使用量は、一般的には導入しようとする(R−X等に相当する部分1つに対し1.0〜50当量である。
【0064】
また、酸性化合物としては、水酸基を有するアダマンタン化合物とチア化剤の反応に際して用いたものと同様のものが使用できる。酸性化合物の使用量は公知の範囲でよく、一般的には水酸基またはメルカプト基1つあたり1当量以上、好ましくは1.0〜50当量である。
【0065】
この場合の原料として用いる水酸基又はメルカプト基を有するアダマンタン化合物や、ジオール化合物、ジチオール化合物は、得ようとするアダマンタン化合物の構造に応じ、原料の入手し易さ等を考慮して適宜選択すればよい。
【0066】
また、ジオール化合物やジチオール化合物の使用量、触媒となる酸性化合物の使用量、反応時間、反応温度等を制御することにより、導入する(R−X基(等)の数を制御することができる。
【0067】
上記方法においては、反応終了後、用いた酸を中和し(中性にする)、例えば減圧蒸留を行うことにより目的物を得ることができる。
【0068】
このようにして得られた硫黄原子を含有するアダマンタン化合物は、前述の方法で(メタ)アクリル酸ハライド(及び、必要に応じて炭素数2〜7のアシルハライド)と反応させることにより本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物とすることができる。
【0069】
本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物は重合体単量体として重合硬化させることにより、高屈折率、高アッベ数であり、かつ耐熱性に優れ、成形加工時に臭気が少ない硬化体を与える。
【0070】
本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物は、単独重合したときに得られる上記のような特性を生かして光学材料、とりわけレンズ材料の原料として好適に使用できる。本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物をこの様な用途に使用する場合には、屈折率、アッベ数、耐熱性等の他の物性も考慮して、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物と共重合可能な他の不飽和単量体(以下、コモノマーともいう)とを併用して共重合体とすることもできる。
【0071】
該コモノマーは、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物と共重合可能な重合性単量体であれば特に限定されず、目的とする用途に応じて必要な物性を与えるものを適宜選択して使用すれば良い。光学材料として使用する場合に好適なコモノマーを具体的に例示すれば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;メチルチオ(メタ)アクリレート、フェニルチオ(メタ)アクリレート、ベンジルチオ(メタ)アクリレート、エタンジチオールジチオ(メタ)アクリレート、ベンゼンジチオールジチオ(メタ)アクリレート、キシリレンジチオールジチオ(メタ)アクリレート等のチオ(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシコハク酸ジアリル、ジアリルマレート、アリルシンナメート、アリルイソシアヌレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリレート基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのコモノマーは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0072】
共重合する場合の共重合組成も目的に応じて適宜決定すれば良いが、全重合性単量体の総重量を基準として、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物が10〜98重量%、特に20〜95重量%(残部がコモノマー量となる。)の範囲で使用するのが好ましい。
【0073】
本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物、或いはこれとコモノマーの混合物を重合硬化させて硬化体を得る重合方法は特に制限されず、公知の重合方法を採用することができる。また、重合に際しては、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、フォトクロミック化合物等の各種安定剤、添加剤を必要に応じて混合して使用することができる。
【0074】
重合開始手段は、種々の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の使用、又は紫外線、α線、β線、γ線等の照射或いは両者の併用によって行うことができる。
【0075】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものが使用できるが、代表的なものを例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0076】
該ラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、前記本発明の重合性組成物の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、全重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。
【0077】
重合方法も特に制限されないが、レンズ等の光学材料としての用途を考える場合には、注型重合を行うのが好適である。以下、代表的な注型重合方法について更に詳しく説明する。
【0078】
該方法では、エラストマーガスケット又はスペーサーで保持されているモールド間に、ラジカル重合開始剤を添加した本発明の重合性組成物を注入し、空気炉中で加熱して重合硬化させた後、取り出すことによって行われる。
【0079】
重合条件のうち、特に温度は得られる硬化体の性状に影響を与える。この温度条件は、開始剤の種類と量や単量体の種類に影響を受けるので、一概には限定できないが、一般的に比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていき、重合終了時に高温下に硬化させるいわゆるテーパ型の2段重合を行うのが好適である。
【0080】
重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、予めこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適であるが、一般に2〜40時間で重合が完了するように条件を選ぶのが好ましい。
【0081】
また紫外線を用いた公知の光重合によっても同様に注型重合が実施できる。この際には、光重合開始剤としてベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、全単量体100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲で用いるのが一般的である。
【0082】
上記のような方法で得られた本発明の硬化体は、その用途に応じて以下のような処理を施すこともできる。即ち、分散染料等の染料を用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、チタン等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤によるハードコーティング処理や、SiO、TiO、ZrO等の金属酸化物からなる薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工および2次処理を施すことも可能である。
【0083】
【実施例】以下、本発明を説明するために、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例1
1,3−ビス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)アダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタンの合成
1,3−アダマンタンジオール25.2g(0.15mol)と1,2−エタンジチオール282.6g(3.0mol)にp−トルエンスルホン酸一水和物5.7g(0.03mol)を加えた後、140℃にて12時間加熱攪拌を行った。室温にまで冷却後、析出したp−トルエンスルホン酸を濾別した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液200ml、水200mlで洗浄し、1,2−エタンジチオールを減圧留去後、減圧蒸留(沸点280℃/0.5mmHg)して、無色透明油状物16.4gを得た。
【0085】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表4に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3−アダマンタンジオールからの収率は34%であった。
【0086】
b)1,3−ビス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)アダマンタンの合成上記の方法に従って得た1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン32.1g(0.10mol)に、ピリジン19.0g(0.24mol)、p−メトキシフェノール64mg、クロロホルム300mlを加え、0℃に冷却した。これにメタクリル酸クロライド25.1g(0.24mol)を徐々に滴下し、0℃で3時間、20℃で一夜攪拌した。反応後、ピリジンの塩化水素塩を濾別し、反応液を1規定塩酸、5%水酸化ナトリウム水溶液、20%塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄した後、溶媒を留去した。残さをシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色透明油状物20.5gを得た。
【0087】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表4に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(2−メタクロイルチオエチルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタンからの収率は45%であった。
【0088】
実施例2
1,3,5−トリス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)アダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3,5−トリス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタンの合成
1,3,5−アダマンタントリオール27.6g(0.15mol)、1,2−エタンジチオール282.6g(3.0mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物5.7g(0.03mol)を用い、実施例1のa)と同様に反応を行い、無色透明油状物18.6gを得た。
【0089】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表4に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5−トリス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3,5−アダマンタントリオールからの収率は30%であった。
【0090】
b)1,3,5−トリス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)アダマンタンの合成
上記の方法に従って得た1,3,5−トリス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン41.3g(0.10mol)、ピリジン28.5g(0.36mol)、p−メトキシフェノール83mg、メタクリル酸クロライド37.6g(0.36mol)、を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物24.7gを得た。
【0091】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表4に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5−トリス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3,5−トリス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタンからの収率は40%であった。
【0092】
実施例3
1,3,5−トリス(メタクリロイルチオ)アダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3,5−トリメルカプトアダマンタンの合成
a−1) 5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオールの合成
1,3,5−アダマンタントリオール9.2g(0.05mol)とチオ尿素76.1g(1.0mol、アダマンタン化合物に対して20モル当量)に濃塩酸250g(アダマンタン化合物0.1molあたり500g)を加えた後、100℃にて10時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、50%水酸化ナトリウム水溶液を300g添加し、110℃で2時間加熱攪拌を行なった。室温まで放冷した後、析出した白色固体を4.7g単離した。
【0093】
得られた白色固体の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表5に示す。これらの分析結果より、単離化合物は5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオールであることを確認した。1,3,5−アダマンタントリオールからの収率は47%であった。
【0094】
a−2) 3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オールの合成
続いて、上記の方法に従って得た5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオール8.0g(0.04mol)を用いて上記と同様の反応を行い、白色固体を5.4g単離した。
【0095】
得られた白色固体の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表5に示す。これらの分析結果より、単離化合物は3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オールであることを確認した。5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオールからの収率は62%であった。
【0096】
a−3) 1,3,5−トリメルカプトアダマンタンの合成
続いて、上記の方法に従って得た3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オール10.8g(0.04mol)を用いて上記と同様の反応を行い、白色固体を5.5g単離した。
【0097】
得られた白色固体の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表5に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5−トリメルカプトアダマンタンであることを確認した。3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オールからの収率は47%であった。なお、1,3,5−アダマンタントリオールからの収率は14%であった。
【0098】
b)1,3,5−トリス(メタクリロイルチオ)アダマンタンの合成
上記の方法に従って得た1,3,5−トリメルカプトアダマンタン4.6g(0.02mol)、ピリジン5.7g(0.072mol)、p−メトキシフェノール9mg、メタクリル酸クロライド7.5g(0.072mol)を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物3.1gを得た。
【0099】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表5に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5−トリス(メタクリロイルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3,5−トリメルカプトアダマンタンからの収率は36%であった。
【0100】
実施例4
1,3,5,7−テトラキス(メタクリロイルチオ)アダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3,5,7−テトラメルカプトアダマンタンの合成
1,3,5,7−アダマンタンテトラオール10g(0.05mol)とチオ尿素380g(5.0mol)に濃塩酸410gを加えた後、加圧装置を用いて120℃にて60時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、50%水酸化ナトリウム水溶液を500g添加した後、110℃で2時間加熱攪拌を行なった。室温まで放冷した後、析出した白色固体を0.7g単離した。
【0101】
得られた白色固体の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表6に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5,7−テトラメルカプトアダマンタンであることを確認した。1,3,5,7−アダマンタンテトラオールからの収率は5%であった。
【0102】
b)1,3,5,7−テトラキス(メタクリロイルチオ)アダマンタンの合成上記の方法に従って得た1,3,5,7−テトラメルカプトアダマンタン2.6g(0.01mol)、ピリジン3.8g(0.048mol)、p−メトキシフェノール5mg、メタクリル酸クロライド5.0g(0.048mol)を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物1.2gを得た。
【0103】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表6に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5,7−テトラキス(メタクリロイルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3,5,7−テトラメルカプトアダマンタンからの収率は22%であった。
【0104】
実施例5
1,3−ビス(メタクリロイルチオメチル)アダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3−ビス(メルカプトメチル)アダマンタンの合成
1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン9.8g(0.05mol)とチオ尿素38.0g(0.5mol、アダマンタン化合物に対して10モル当量)に濃塩酸50g(アダマンタン化合物0.1molあたり100g)を加えた後、100℃にて10時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、50%水酸化ナトリウム水溶液を300g添加し、110℃で2時間加熱攪拌を行なった。室温まで放冷した後、析出した白色固体を7.5g単離した。
【0105】
得られた白色固体の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表6に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(メルカプトメチル)アダマンタンであることを確認した。1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタンからの収率は66%であった。
【0106】
b)1,3−ビス(メタクリロイルチオメチル)アダマンタンの合成
1,3−ビス(メルカプトメチル)アダマンタン4.6g(0.02mol)、ピリジン3.8g(0.048mol)、p−メトキシフェノール9mg、メタクリル酸クロライド5.0g(0.048mol)を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物3.2gを得た。
【0107】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表6に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(メタクリロイルチオメチル)アダマンタンであることを確認した。1,3−ビス(メルカプトメチル)アダマンタンからの収率は44%であった。
【0108】
実施例6
1,3−ビス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタンの合成
5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジオール29.4g(0.15mol)を用い、実施例1のa)と同様に反応を行い、無色透明油状物19.4gを得た。
【0109】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表7に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタンであることを確認した。5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジオールからの収率は37%であった。
【0110】
b)1,3−ビス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタンの合成
上記方法に従って得た1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタン7.0g(0.02mol)、ピリジン3.8g(0.048mol)、p−メトキシフェノール14mg、メタクリル酸クロライド5.0g(0.048mol)を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物4.6gを得た。
【0111】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表7に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(2−メタクリロイルチオエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタンであることを確認した。1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−5,7−ジメチルアダマンタンからの収率は47%であった。
【0112】
実施例7
3,5−ビス(メタクリロイルチオ)アダマンタン−1−オールの合成
実施例3のa−1)の方法に従って得た3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オール4.3g(0.02mol)、ピリジン3.8g(0.048mol)、p−メトキシフェノール9mg、メタクリル酸クロライド5.0g(0.048mol)を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物2.2gを得た。
【0113】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表7に示す。これらの分析結果より、単離化合物は3,5−ジメタクリロイルチオアダマンタン−1−オールであることを確認した。3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オールからの収率は31%であった。
【0114】
実施例8
3,5−ビス(メタクリロイルチオ)−1−アセチルアダマンタンの合成
上記の方法に従って得た3,5−ビス(メタクリロイルチオ)アダマンタン−1−オール3.5g(0.01mol)に、p−メトキシフェノール7mg、トルエン100mlを加え、室温でアセチルクロライド1.0g(0.012mol)を徐々に滴下した後、100℃で2時間攪拌した。反応後、10%炭酸水素ナトリウム水溶液、20%塩化ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色透明油状物0.91gを得た。
【0115】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表7に示す。これらの分析結果より、単離化合物は3,5−ジメタクリロイルチオ−1−アセチルアダマンタンであることを確認した。3,5−ビス(メタクリロイルチオ)アダマンタン−1−オールからの収率は24%であった。
【0116】
実施例9
1,3,5−トリス(アクリロイルチオ)アダマンタンの合成
実施例3に記載の方法に従って得た1,3,5−トリメルカプトアダマンタン2.3g(0.01mol)、ピリジン2.8g(0.036mol)、p−メトキシフェノール5mg、アクリル酸クロライド3.3g(0.036mol)を用い、実施例1のb)と同様に反応を行い、無色透明油状物1.1gを得た。
【0117】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表8に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3,5−トリス(アクリロイルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3,5−トリメルカプトアダマンタンからの収率は28%であった。
【0118】
実施例10
1,3−ビス(2−アクリロイルオキシエチルチオ)アダマンタンの合成
a)原料化合物:1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)アダマンタンの合成
1,3−アダマンタンジオール25.2g(0.15mol)と2−メルカプトエタノール234g(3.0mol)を用い、実施例1のa)と同様に反応を行い、無色透明油状物3.9gを得た。
【0119】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表8に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3−アダマンタンジオールからの収率は9%であった。
【0120】
b)1,3−ビス(2−アクリロイルオキシエチルチオ)アダマンタンの合成上記方法に従って得た1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)アダマンタン2.9g(0.01mol)、p−メトキシフェノール6mg、トルエン100mlを加え、室温でメタクリル酸クロライド1.9g(0.024mol)を徐々に滴下した後、100℃で2時間攪拌した。反応後、10%炭酸水素ナトリウム水溶液、20%塩化ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、無色透明油状物2.0gを得た。
【0121】
得られた無色透明油状物の、元素分析、質量スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、赤外線吸収スペクトルを表8に示す。これらの分析結果より、単離化合物は1,3−ビス(2−アクリロイルオキシエチルチオ)アダマンタンであることを確認した。1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)アダマンタンからの収率は48%であった。
【0122】
実施例1〜10で説明したラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物およびその原料化合物の構造を表1〜表3に示す。
【0123】
【表1】
Figure 2004059523
【0124】
【表2】
Figure 2004059523
【0125】
【表3】
Figure 2004059523
【0126】
【表4】
Figure 2004059523
【0127】
【表5】
Figure 2004059523
【0128】
【表6】
Figure 2004059523
【0129】
【表7】
Figure 2004059523
【0130】
【表8】
Figure 2004059523
【0131】
実施例11〜22
前記実施例1〜10で製造した本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物を用い、必要に応じて下記B成分、C成分として示すコモノマーを添加して表9〜表10に示す硬化性組成物を調製し、重合硬化させて硬化体を得た。
【0132】
重合は、次のようにして行った。即ち、上記硬化性組成物100重量部に対し、ラジカル重合開始剤として、t−ブチルパーオキシネオデカネート0.5重量部および1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート0.4重量部を添加して良く混合した。ラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物が固体の場合は液状になるまで加熱するか、或いは適当なコモノマーを添加して液状にした。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、33℃から90℃まで17時間かけて徐々に昇温し、90℃で5時間保持した。重合終了後、鋳型を空気炉から取り出し、放冷後、硬化体を鋳型のガラスから取り外した。なお、表9〜表10における各略号は次の化合物を意味する。
[A成分]各々対応する番号の実施例で製造した本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物。
[B成分]
GMA:グリシジルメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
[C成分]
MS:α−メチルスチレン
BzMA:ベンジルメタクリレート
【0133】
【表9】
Figure 2004059523
【0134】
【表10】
Figure 2004059523
【0135】
上記のようにして得られた各硬化体について、下記の試験方法によって諸物性を測定した。その結果について結果を併せて表9〜表10に示す。
【0136】
[屈折率およびアッベ数] アタゴ(株)製アッベ屈折率計を用いて、20℃における屈折率(n)およびアッベ数(ν)を測定した。接触液にはブロモナフタレン又はヨウ化メチレンを使用した。屈折率およびアッベ数は共に高い方が好ましい。
【0137】
[耐熱性] TMA(セイコーエプソン製)を用いて、試料片に5g加重し、5℃/分で加熱して、その熱変形開始温度を測定した。
【0138】
[耐候性] スガ試験機(株)製ロングライフキセノンフェードメーター中に試料を設置し、100時間キセノン光を露光した後、試験前の試料と色相を以下のような基準で比較評価した。
(○):色相の変化がほとんど見られなかったもの。
(×):色相が黄変したもの。
【0139】
[臭気] ダイヤモンドカッターでの切断時、もしくは玉擦り機での研磨時における臭気を以下のような基準で評価した。
(○):臭気がほとんどないもの。
(△):臭気はあるが、さほど気にならないもの。
(×):臭気がひどいもの。気分を害するもの。
【0140】
[外観] 目視により判定した。
【0141】
比較例1〜3
A成分として、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物に替えて下記の化合物
【0142】
【化4】
Figure 2004059523
【0143】
【化5】
Figure 2004059523
【0144】
【化6】
Figure 2004059523
【0145】
を用い、表10に示した硬化性組成物を調製し、実施例11と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体について実施例11と同様にして物性を測定した。その結果を併せて表10に示した。
【0146】
各実施例と比較例1とを比較すると、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物の重合体は耐熱性に優れ、臭気も小さいことが分かる。また、比較例2と比較すると、本発明の実施例はアッベ数が高く、耐熱性、耐候性にも優れることが分かる。さらに、比較例3と比較すると、本発明の実施例は高屈折率であり、耐候性にも優れることが分かる。以上の通り、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物を単量体とした硬化体は各種物性のバランスに優れており、眼鏡レンズをはじめとする光学材料として好適に使用できることが分かる。
【0147】
【発明の効果】
本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物は、高屈折率、高アッベ数であり、耐熱性に優れた硬化体を与える単量体として有用である。また、該重合性単量体から得られる硬化体は研磨成型時における悪臭が少ない。
【0148】
このため、本発明のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物を単独重合又はコモノマーと共重合して得られる硬化体は光学材料として有用であり、例えば眼鏡レンズ、光学機器レンズ等の光学レンズとして最適であり、またプリズム、光ディスク基板、光ファイバー等の用途に好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2004059523
    {式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を、Zは、下記式(2)
    −(X−(R−X−Y (2)
    (式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基を示し、eは0又は1、fは0〜6の整数であり、fが2〜6の場合には(R−X)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、かつe+fは1以上である。)
    で示される基を、Zは、下記式(3)
    −(X−(R−X−Y (3)
    (式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を、Yは(メタ)アクリロイル基以外の炭素数2〜7のアシル基を示し、gは0又は1、hは0〜6の整数であり、hが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、かつg+hは1以上である。)
    で示される基を、Zは、下記式(4)
    −(X−(R−X−H (4)
    (式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を、X、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を示し、iは0又は1、jは0〜6の整数であり、jが2〜6の場合には(R−X)で示される基は同一でも異なっていても良く、i+jは1以上であり、かつ末端は必ず水酸基である。)
    で示される基を示し、aは1〜4の整数、bは0〜3の整数、cは0又は1であり(但し、a+b+cは1〜4である)、dは0〜4の整数を示し、R、Z及びZはいずれも、複数ある場合には各々が同一でも異なっていても良く、かつX〜Xで示される原子のうちの少なくとも1つは硫黄原子である。}
    で示されるラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物。
  2. 請求項1記載のラジカル重合性含硫黄アダマンタン化合物を含むラジカル重合性組成物。
  3. 請求項2記載の重合性組成物をラジカル重合させて得られる硬化体。
  4. 請求項3記載の硬化体からなる光学材料。
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