JP2004059066A - 容器およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の容器は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように熱成形してなり、内面側へのスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計溶出量が1.5×10−7g/cm2以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりポリスチレン系樹脂発泡シートは、熱成形されてトレイ、弁当箱、カップ麺容器等の各種容器として広く使用されている。ポリスチレン系樹脂発泡シート中には、スチレンモノマーや、スチレンダイマー、スチレントリマー等のオリゴマーが含有されており、これらが容器内に微量に溶出する虞れがある。
【0003】
1998年に環境庁が作成したSPEED’98で、環境ホルモンとして疑われる種々の化合物をリストアップした結果、スチレンダイマーやトリマーを含む発泡ポリスチレン容器の安全性が疑問視されたことがあった。しかしながらスチレンダイマー、トリマー等のオリゴマーの安全性は報文(信原陽一他、食品衛生学会誌、vol.40、No.1、1999、2月)等によっても証明され、環境省は2000年10月31日に、スチレンダイマー、トリマーを環境ホルモンリストから除外することを決定した。
【0004】
上記のようにスチレンオリゴマーの環境ホルモンとしての疑いは晴れ、発泡ポリスチレン容器の安全性も証明されたわけではあるが、スチレンオリゴマーはポリスチレン合成の際に生じる所謂不純物であり、このような不純物の容器内への溶出量を低減させることが望まれている。
【0005】
一方、従来、カップ麺容器等、特に焼きそば容器において、箸やフォークによって内容物をかき混ぜた際に、容器内面を削り取ったり、ひどい場合には穴があく等の虞れがあり、そのようなことを防ぐために容器内面に耐衝撃性ポリスチレンフィルムを積層することにより容器内面側の突き刺し強度を高くすることが行われている。
しかしながら、容器内面に耐衝撃性ポリスチレンフィルムを積層したものは、容器内面側の突き刺し強度を高めることはできるものの容器内面の耐衝撃性ポリスチレンフィルムからの不純物の溶出量を安定して低減させることが困難であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、特定のゴム含有ポリスチレン系樹脂層を設けた多層シートをゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように特定の温度条件にて熱成形してなる容器がスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量が非常に少ないことを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように熱成形してなり、容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計溶出量が1.5×10−7g/cm2以下であることを特徴とする容器、
(2)ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が、耐衝撃性ポリスチレン、または耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなることを特徴とする上記(1)に記載の容器、
(3)ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が、耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなるものであって、該耐衝撃性ポリスチレンのゲル含有率が15〜30重量%、ゴム含有率が3〜10重量%であることを特徴とする上記(2)に記載の容器、
(4)ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成している樹脂のスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量が2500ppm以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の容器、
(5)ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるようにして、容器内面側を成形するための金型プラグ温度を、85〜110℃に設定して熱成形することを特徴とする容器の製造方法、
を要旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の容器は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように熱成形して得られる。本発明の容器を成形するために用いる多層シートのポリスチレン系樹脂発泡シートとしては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体等、通常のポリスチレン系樹脂発泡シートに用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0009】
上記ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に積層されるゴム含有ポリスチレン系樹脂は、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であることが必要である。尚、ゲル含有率においては、好ましくは11〜17重量%であり、ゴム含有率においては、好ましくは3〜5重量%である。また、ゲル含有率/ゴム含有率の値においては、好ましくは2.5〜6であり、更に好ましく3〜5であり、その上限は概ね10である。
ゴム含有ポリスチレン系樹脂のゲル含有率が10重量%未満であるとゴム含有量を多くしないと容器の内面側の突き刺し強度が不十分なものとなり、ゲル含有率が20重量%を超える場合はスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量が多い容器となる。またゴム含有率が2重量%未満であると得られる容器の内面側の突き刺し強度が不十分なものとなり、6重量%を超えるとゲル含有率が低い場合はスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量が多い容器となる。またゲル含有率、ゴム含有率が上記した値であってもゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5未満であるとスチレンスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量が多い容器となる。
【0010】
上記ゴム含有ポリスチレン系樹脂層としては、耐衝撃性ポリスチレンや、耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなるものが好ましく挙げられる。ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が、耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなるものの場合、該耐衝撃性ポリスチレンとしてはゲル含有率15〜30重量%、ゴム含有率3〜10重量%のものが好ましい。尚、耐衝撃性ポリスチレンのゲル含有率及びゴム含有率を調整する方法としては、ゴム含有率については、重合時のゴム分の添加量に依存する割合が高く、該添加量にて調整することができる。一方、ゲル含有率については重合時の攪拌条件に依存する割合が高く、攪拌回転数を増大させるほどにゲル分は低下するため該回転数にて調整することができる。その他、重合温度を高くすることによりゲル含有率とゴム含有率との比(ゲル含有率/ゴム含有率)が大きくなるため、重合温度によりゲル含有率とゴム含有率との比を調整することができる。
【0011】
本発明において用いるゴム含有ポリスチレン系樹脂層は、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計の含有量が2500ppm以下の樹脂からなることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましい。ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成する耐衝撃性ポリスチレンとしては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム状重合体の存在下でスチレン系モノマーをラジカル重合して得ることができるが、特にスチレンダイマー、スチレントリマーの含有量の少ない耐衝撃性ポリスチレンは、特に製造方法は限定されるものではないが、懸濁重合法、特開2001−316403号公報に記載のアニオン重合法により得ることができる。よって、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層のスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計の含有量を2500ppm以下に調整する手段としては、スチレンダイマー、スチレントリマーの含有量の少ない耐衝撃性ポリスチレンにて該樹脂層を形成する方法、又は該耐衝撃性ポリスチレンとスチレンダイマー、スチレントリマーの含有量の少ないポリスチレン系樹脂との混合物にて該樹脂層を形成する方法などが挙げられる。
尚、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層に含まれる耐衝撃性ポリスチレンとしてはスチレン−ブタジエングラフト共重合体が好ましい。
またゴム含有ポリスチレン系樹脂層が耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなるものの場合、該ポリスチレン系樹脂としては、上記耐衝撃性ポリスチレン以外のものであって、ポリスチレン系樹脂発泡シートを構成するものと同様のポリスチレン系樹脂が挙げられる。ポリスチレン系樹脂は塊状重合、懸濁重合、溶液重合等によって得ることができるが、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層に用いるポリスチレン系樹脂としては、スチレンダイマー及びスチレントリマーの含有量の少ないものが好ましく、スチレンダイマー及びスチレントリマーの含有量の少ないポリスチレン系樹脂は、懸濁重合、溶液重合により得ることができ、具体的にスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計の含有量が2000ppm以下のものからなることが好ましく、1500ppm以下の樹脂からなることがより好ましい。
【0012】
更に樹脂層を形成するための、共押出し、インフレーション成形、または熱ラミネートなどの加工時に、スチレンダイマー及びスチレントリマーが生成するのを抑制するためにビタミンE、カテキン等の酸化防止剤及び/又は熱安定剤を、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂や耐衝撃性ポリスチレンの重合中に含浸させる方法や、ポリスチレン系樹脂や耐衝撃性ポリスチレンに混合して押出し等の加工を行う方法を採用することが好ましい。また、押出工程においては押出機内での樹脂の溶融混練時に、不必要な剪断力が樹脂に働かないようなスクリューを備えた押出機を選択すること、ベント押出機を使用しスチレン低分子量成分をベント口より排出させて押出す方法等を採用することも、スチレンダイマー及びスチレントリマーの含有量の少ないものを得るために好適な方法である。
【0013】
また、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成する樹脂のゲル含有率、ゴム含有率及びゲル含有率/ゴム含有率を前記した範囲にする方法としては、(a)前述の方法にてゲル含有率及びゴム含有率を調整した耐衝撃性ポリスチレンを単独で使用するか、(b)ポリスチレン系樹脂と、前記したゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成する樹脂のゲル含有率及びゴム含有率の範囲よりもゲル含有率及びゴム含有率が高めの耐衝撃性ポリスチレンとを混合することにより調整できる。尚、上記方法の内、(b)の方法がより正確に目的のゲル含有率及びゴム含有率に調整し易いことから好ましく、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成する樹脂のゲル含有率、ゴム含有率は、耐衝撃性ポリスチレンのポリスチレン系樹脂による希釈率による理論値とよく適合する。つまり、耐衝撃性ポリスチレンを同重量のポリスチレン系樹脂にて希釈すると当初あった耐衝撃性ポリスチレンのゲル含有率及びゴム含有率は夫々1/2の値となる。
【0014】
本明細書において、上記ゲル含有率は、次のようにして測定した値をいう。
まず、試料約1.5gを精秤し、100mLの共栓付き三角フラスコに入れ、メチルエチルケトン(MEK)30mLを加えて一昼夜放置し、試料がMEKに溶解しているのを確認した後、10分間振とうする。これを精秤した遠心管に入れ、4000回転/分で40分間遠心分離する。デカンテーションにより遠心分離した上澄み液を捨て、遠心管内壁を少量のMEKで洗浄する。遠心管をドラフト内で1日予備乾燥した後、70℃の真空乾燥機で15時間以上乾燥する。乾燥後、デシケーター内で常温まで冷却した後、遠心管を精秤し、下記の式によりゲル含有率を求める。尚、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層のゲル含有率を測定する場合は、試料としてゴム含有ポリスチレン系樹脂層を切り出して使用し、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成する耐衝撃性ポリスチレンのゲル含有率を測定する場合は、試料として耐衝撃性ポリスチレンのペレットを使用する。
【0015】
【数1】
ゲル含有率(重量%)=(b−a)/S×100
ただし、S:試料の重量、a:遠心管の重量、b:乾燥ゲルと遠心管の合計重量。
【0016】
また本明細書において、ゴム含有率は、次のようにして測定した値をいう。
まず500mLの三角フラスコに試料0.2〜0.4gを秤量し、クロロホルム50mLを加えて溶解する。次いで一塩化ヨウ素四塩化炭素溶液25mLを添加して1時間暗所にて放置する。放置後、2.5重量%ヨウ化カリウム溶液75mLを加え、更にチオ硫酸ナトリウム20重量%エタノール溶液によりフラスコ内容物の色が薄くなるまで滴定する。その後、1重量%デンプン指示薬約0.5mLを加え、エタノールでフラスコ内壁を洗浄し、再度無色になるまでチオ硫酸ナトリウム20重量%エタノール溶液で滴定し、次式よりゴム含有量を算出する。尚、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層のゴム含有率を測定する場合は、試料としてゴム含有ポリスチレン系樹脂層を切り出して使用し、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成する耐衝撃性ポリスチレンのゴム含有率を測定する場合は、試料として耐衝撃性ポリスチレンのペレットを使用する。
【0017】
【数2】
ゴム含有率(重量%)=
{(c−d)×0.1×f×27/1000}/W×100
ただし、
c:ブランクの滴定に要した1/10規定のチオ硫酸ナトリウム20重量%アルコール溶液量(mL)
d:試料の滴定に要した1/10規定のチオ硫酸ナトリウム20重量%アルコール溶液量(mL)
f:1/10規定のチオ硫酸ナトリウム20重量%アルコール溶液のファクターW:試料重量(g)
【0018】
本発明において、樹脂中のスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計の含有量は、以下のようにして測定した値をいう。
【0019】
A.試料の調整及び測定法
1.測定用の試料約0.2gを正確に秤量し、ビーカー中の約10mlのテトラヒドロフランに溶解させる。
2.測定用の試料がテトラヒドロフランに完全に溶解したことを確認した後、その約10mlの試料テトラヒドロフラン溶液の全量を、約250mlのn−ペンタン中に滴下して樹脂を析出させる。更に、ビーカー中に約10mlのテトラヒドロフランを入れ、ビーカー中を洗浄し、洗浄に使用した約10mlのテトラヒドロフランの全量を更に、前記n−ペンタン中に滴下する操作を2回行う。
3.n−ペンタン中に析出した樹脂を、No.5Bの定量ろ紙を使用して、なすフラスコにろ別する。尚、ろ過の際は吸引ろ過を行なわず自然ろ過とする。
4.ろ液の入った、なすフラスコをロータリーエバポレーターに接続し、40℃の水浴下でn−ヘプタンを蒸発させ、ろ液を約5〜10mlに濃縮する。濃縮されたろ液をビーカーにとり、更になすフラスコ中に約20mlのn−ヘプタンを入れ、なすフラスコ中を洗浄する。洗浄に使用したn−ヘプタンをビーカーにとったろ液に加える。
5.ろ液に約10mlのアセトニトリルを加え、コンプレッサーエアーをろ液に吹きかけながら約1時間かけてろ液を約6〜9mlに濃縮する。
6.約6〜9mlに濃縮されたろ液をアセトニトリルで全量が10mlとなるように希釈した後、孔径0.5μmのテフロン製フィルターでろ過したものを測定用試料とする。
7.測定用試料を高速液体クロマトグラフに注入して測定を行う。
【0020】
B.測定装置(高速液体クロマトグラフ)
液送ポンプLC−6A(2台)、自動試料注入装置SIL−6A、紫外分光光度計検出器SPD−6A、カラムオーブンCTO−6A、システムコントローラSCL−6A、データ処理装置C−R3A、全て(株)島津製作所製
測定条件カラム:ULTRON VX−ODS(充填材ODSシリカ、粒径5μm、カラム内径4.6mm、カラム長さ250mm)、信和化工(株)製
カラム温度:50℃
移動相:アセトニトリル:水(体積比6:4)を初期濃度とし、測定試料注入直後から13分間のリニアグラジエントによりアセトニトリルのみとした後、更に22分間溶出
流速:1.5ml/min.
検出波長:225nm注入量:5〜100μlの範囲で適宜調節
検量線:スチレン二量体及びスチレン三量体の標準試料(関東化学(株)製)を使用し、絶対検量線法により定量する。
【0021】
本発明の容器は、容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計溶出量が1.5×10−7g/cm2以下であるが1.3×10−7g/cm2以下であることがより好ましい。
本明細書において、容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量は、以下の通り測定する。
【0022】
容器にヘプタン800mLを入れ、25℃に保持して60分間放置し、ヘプタン中に溶出したスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量(g)を、GC/MS−SIMにより以下の条件で測定した。
測定条件:
GC/MS:島津製作所製 GCMS−QP5050A
カラム:J&W Scientific社製DB−5MS 0.25mm(内径)、30m(長さ)
膜厚0.25ミクロン
温度:150℃で1分保持、続いて5℃/分にて300℃まで昇温、その後300℃にて10分保持
キャリアガス:He
キャリアガス圧力:91.5kPa
検出器電圧:2kV
イオン化モード:EI
上記GC/MS測定により得られたスチレンダイマー及びスチレントリマーのヘプタン800mLに対する合計溶出量(g)を、容器内にヘプタン800mL満たした際の該ヘプタンと接する容器内面の表面積(cm2)にて割り算することにより容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量を算出した。
【0023】
以下、本発明の容器の製造方法について記載する。
本発明の容器は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、上記ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を有する積層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように熱成形して得られる。上記したポリスチレン系樹脂発泡シートは、押出機中にて、ポリスチレン系樹脂とブタン等の有機物理発泡剤や二酸化炭素等の無機物理発泡剤から選択される発泡剤とタルク等の気泡調整剤と共に混練することにより得られた発泡性溶融樹脂を押出機先端に取り付けたダイから押出す従来公知の発泡法(所謂、押出発泡法。)にて得られる。
【0024】
上記ポリスチレン系樹脂発泡シートの密度は、0.05〜0.7g/cm3が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.5g/cm3である。密度が0.05g/cm3未満の場合、発泡シートを成形して得た容器の強度が不足することがあるばかりでなく、加熱成形するときに伸びが不足して容器に穴が開く場合がある。一方、密度が0.7g/cm3を超えると軽量性、経済性が問題となるとともに、該発泡シートを熱成形して得られる容器の特徴である断熱性が不十分なことがある。また、該発泡シートの厚みは、好ましくは0.7〜7mm、更に好ましくは0.7〜3mmである。厚みが0.7mm未満では強度や断熱性の点で実用に耐え得ない虞れがある。厚みが7mmを超えると、加熱成形の際に発泡体の内部と外部との間の加熱ムラが起こりやすく、精密な温度制御が必要となる。
また、該発泡シートの平均気泡径が0.02〜0.45mmであることが好ましく、更に好ましくは0.03〜0.3mmである。外観、印刷適性が良好なものとするうえでは上記平均気泡径は細かいものが好ましいが、あまり細かすぎると発泡シートの成形性、剛性の面において不十分なものとなってしまう。一方、平均気泡径が大きすぎると外観、印刷適性において良好なものが得られなくなる。更に、該発泡シートの連続気泡率が40%以下であることが好ましく、更に好ましくは25%以下、特に好ましくは10%以下である。連続気泡率が高いものは熱成形等の際に発泡シートの二次発泡性が低下するため、発泡シートの金型再現性の悪化(金型形状通りの成型体が得られ難くなる。)、成形体の肉厚不足の発生等、熱成形性の低下が見られる。また、得られる成形体の強度も同じ密度では弱くなる。尚、本発明において発泡体の連続気泡率はASTM D2856−70[1976再認定](手順C)によって求められる値である。
【0025】
また、上記発泡シートの少なくとも片面に前記ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層接着されている多層発泡シートの代表的な製造方法としては、▲1▼前記した押出発泡法により発泡シートを製造し、その後、この発泡シートに対して、製造ライン上または別ラインで、インフレーション成形法等により製造されたゴム含有ポリスチレン系樹脂フィルムを熱ロール等を通して積層接着する方法(所謂、熱ラミネート法)、▲2▼前記発泡シートを形成する発泡性溶融樹脂とゴム含有ポリスチレン系樹脂とを共押出して積層接着して該多層発泡シートを得る方法(所謂、共押出法)、▲3▼押出発泡法により発泡シートを製造し、その後、この発泡シートに対して、製造ライン上または別ラインで、別の押出機より押出されたゴム含有ポリスチレン系樹脂を積層接着する方法(所謂、押出ラミネート法)等がある。
【0026】
尚、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層の厚みは0.01〜0.5mmが好ましく、特に0.02〜0.2mmが好ましい。0.01mm未満では熱成形する際に伸ばされて更に薄くなるために破れやピンホールが生じやすい。厚みが0.5mmを超える場合は発泡シートとの接着が難しくなり、コスト高となってしまう。ゴム含有ポリスチレン系樹脂層中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、無機充填剤等を添加することができる。
また上記多層発泡シートにおいて、その他の無発泡熱可塑性樹脂層を、発泡シートとゴム含有ポリスチレン系樹脂層との間や、発泡シートのゴム含有ポリスチレン系樹脂層積層面と反対側の面(容器熱成形時に容器外面となる面)に有する構造のものであっても構わない。無発泡熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナレフタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0027】
本発明の容器は、前述した多層発泡シートをゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるようにして熱成形してなる容器である。該多層発泡シートの熱成形方法としては、必要に応じて発泡剤のガス置換のための養生を行った後に、該多層発泡シートを加熱軟化させ、金型を使用した真空成形法及び/又は圧空成形法、更にはそれらを応用したマッチドモールド成形法、プラグアシスト成形法等の成形法が挙げられ、主にトレイ、カップ、丼、弁当箱等の食品容器に好ましく成形される。尚、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が片面側のみに設けられている多層発泡体の場合、容器の内面側にゴム含有ポリスチレン系樹脂層が位置するように多層発泡シートを熱成形する。
更に、本発明の容器は、上記特定のゴム含有ポリスチレン系樹脂層を有する多層発泡シートを加熱軟化せしめ、容器内面側を成形するための金型プラグ温度を、85〜110℃、好ましくは87〜105℃、更に好ましくは90〜100℃に設定して熱成形することにより得ることができる。即ち、たとえ容器が熱成形できる多層発泡シートの熱成形温度範囲内であっても、容器内面側を成形するための該プラグ温度が上記範囲を満足しない場合には、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計溶出量が1.5×10−7g/cm2以下のものとはならない。プラグ温度を上記範囲内に設定して熱成形することにより、いかなる理由にてスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計溶出量が低減するかは定かではないが、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が特定のゲル分率を有することで熱成形時のゴムとポリスチレン系樹脂との界面に発生するクレーズの拡大を防いでいること、熱成形時に容器内面側に位置するゴム含有ポリスチレン系樹脂層の表面において、該樹脂層を構成している樹脂のポリスチレン系樹脂成分にて全面が覆われる、若しくは前記クレーズ部分が覆われる現象が起きていると考えられること、これらのことが関係してこのようなことが起きていると想定される。
【0028】
本発明の容器は特定のゴム含有ポリスチレン系樹脂層が容器内面側に位置する多層発泡シート製の容器であり、不純物の溶出量が極めて少なく、容器内面の突き刺し強度においても優れ、丼、カップ、トレイ、弁当容器等に使用されるものであり、特にカップ麺の焼きそば容器として好適なものである。
【0029】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0030】
実施例1〜5、比較例1〜7
ポリスチレン樹脂(電気化学工業(株)製のポリスチレン樹脂、商品名『GX−0196』)を95.5重量部、気泡調整剤としてタルクを1重量部の割合で60mm径の押出機に投入して加熱した後、イソブタン65重量%とノルマルブタン35重量%からなる混合ブタン発泡剤3.5重量部を押出機内の溶融ポリスチレン樹脂に圧入して約200℃で溶融混練した。次いで上記押出機と接続された90mm径の押出機内に、上記溶融混練物を押出して該押出機内で冷却して約157℃の発泡性溶融樹脂を得た。押出機内の発泡性溶融樹脂を該押出機先端に取り付けられた環状ダイスから約157℃で押出して筒状に発泡させると共にその直径を拡大させつつ表面を冷却し、更に筒状発泡体の内側をマンドレルに接するようにして移送しながら更に冷却させ、マンドレル下流側に固定された1つのカッターナイフにより押出方向に沿って筒状発泡体を切開いた。次いでその切断部から押し広げることによりシート状にして連続的にロール状に巻取った。尚、得られた発泡シートは、幅が1040mm、厚みが1.6mm、密度が0.15g/cm3、平均気泡径は0.15mmであった。
【0031】
尚、発泡シートの密度は、縦2cm×横2cm×発泡体厚み(cm)の試験片を切り出し、試験片の重量(g)を測定し、該重量を縦2cm×横2cm×発泡体厚み(cm)より求められる試験片体積(cm3)で割ることにより求めた。また、発泡シートの厚みは、厚み方向垂直断面の任意の20カ所の厚みを測定し、それらの値の算術平均値を採用した。
また、発泡シートの平均気泡径は、発泡シートの全厚み(mm)に亘って発泡体厚み方向に直線を引き、該直線の長さ(mm)を直線上の気泡数にて割ることにより求めた。
【0032】
上記、厚さ1.6mm、密度0.15g/cm3のポリスチレン発泡シートの片面に、表1、2に示すゴム含有ポリスチレン系樹脂層を形成するためのフィルムをTダイより押出して上記発泡シートに積層接着し、125μmのゴム含有ポリスチレン系樹脂層を形成して積層シートとした。
この積層シートをシート温度120℃に加熱して軟化させた後、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層側が内面側となるようにして、容器内面側に接し該内面側を成形するためのプラグ温度を表1に示す温度に調節した金型を取り付けた単発成形機を使用してマッチモールド真空成形法にて成形し、口部150mm×150mm、底部130mm×130mm、深さ65mm、内容積1100cm3の四角錐台形形状の収納部を有する容器を得た。
得られた容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量を測定した。また容器内面の突き刺し強度の測定を行った。それらの結果を表3に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1、2中のゴム成分の種類(※1)及びポリスチレンの種類(※2)は、以下のものを意味する。
※1;
R1:ゲル含有率22重量%、ゴム含有率5重量%、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量1100ppmの耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン株式会社製、商品名『E560N』)
R2:ゲル含有率23重量%、ゴム含有率7.7重量%、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量3500ppmの耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン株式会社製、商品名『H780』)
R3:ゲル含有率0重量%、ゴム含有率60重量%、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量0ppmのスチレン−ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製、商品名『タフプレン125』)
R4:ゲル含有率100重量%、ゴム含有率70重量%、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量0ppmのスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(旭化成株式会社製、商品名『タフテックH1041』)
※2;
GP1:スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有率900ppmのポリスチレン(東洋スチレン株式会社製、商品名『HRM56』)
【0036】
【表3】
【0037】
※3:容器を固定し、容器内面の中央部に直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を、毎分50±0.5mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定して下記基準で評価した。
〇:最大荷重1000gf以上で、かつ針貫通時に積層フィルムに割れが生じない。
×:最大荷重1000gf未満、または針貫通時に積層フィルムに割れが生じる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の容器は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように熱成形して形成されていることにより、容器内面側の突き刺し強度が高く、焼きそば容器等として用いた場合、箸によって内容物をかき混ぜた際にゴム含有ポリスチレン系樹脂層に穴があく等の虞れがない。また本発明の容器は容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの溶出量が非常に少ない効果を有する。
Claims (5)
- ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるように熱成形してなり、容器内面からのスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計溶出量が1.5×10−7g/cm2以下であることを特徴とする容器。
- ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が、耐衝撃性ポリスチレン、または耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の容器。
- ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が、耐衝撃性ポリスチレンとポリスチレン系樹脂との混合物からなるものであって、該耐衝撃性ポリスチレンのゲル含有率が15〜30重量%、ゴム含有率が3〜10重量%であることを特徴とする請求項2に記載の容器。
- ゴム含有ポリスチレン系樹脂層を構成している樹脂のスチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量が2500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
- ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ゲル含有率10〜20重量%、ゴム含有率2〜6重量%で、かつゲル含有率/ゴム含有率の値が2.5以上であるゴム含有ポリスチレン系樹脂層が積層された多層シートを、ゴム含有ポリスチレン系樹脂層が内面側となるようにして、容器内面側を成形するための金型プラグ温度を、85〜110℃に設定して熱成形することを特徴とする容器の製造方法。
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