JP2004058913A - 車両用シート構造 - Google Patents
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Abstract
【目的】構成の複雑化等を伴うことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする。
【構成】サブマリン規制部材12の水平バー24が、その支持アーム22の回動支点28の後方側を円弧移動可能に配置され、水平バーと係止片34との間に架設、張設された引張コイルばね36のデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されている。そして、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばね36の付勢力に抗する方向の力として水平バー24に入力し、これによる支持アーム22の回動のもとで、水平バーが引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持するものとしている。
【選択図】 図1
【構成】サブマリン規制部材12の水平バー24が、その支持アーム22の回動支点28の後方側を円弧移動可能に配置され、水平バーと係止片34との間に架設、張設された引張コイルばね36のデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されている。そして、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばね36の付勢力に抗する方向の力として水平バー24に入力し、これによる支持アーム22の回動のもとで、水平バーが引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持するものとしている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、急減速時、あるいは急停車時等に生じる着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする車両用シート構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の急減速、あるいは急停車時、着座者はその慣性力のもとで前方に移動しようとする。このような、人体の前方移動は、着座者の上体を適宜拘束するシートベルトによって通常は阻止されるが、尻部がシートクッションに沈み込みながら前方に移動する尻滑り現象、いわゆるサブマリン現象に対しては、このシートベルトが有効的に機能しない虞れのあることも指摘されている。
【0003】
そこで、このようなサブマリン現象、つまり着座者尻部のサブマリン移動を阻止する構成として、たとえば、特開平05−238297号公報、特開2001−146127号公報、および特開平07−81466号公報等が開示、提供されている。
【0004】
特開平05−238297号公報に開示された構成においては、シートクッションが、着座位置、つまりは尻部の位置の変位量を検出する検出手段を持っている。そして、この検出手段を上方位置に付勢支持するばね部材(圧縮コイルスプリング)の付勢力に抗してこの検出手段が下方に押し込まれたとき、その押し込み量に応じた量だけ、着座者尻部のサブマリン移動を規制する規制部材を上方に移動させるものとしている。
【0005】
また、特開2001−146127号公報に開示された構成においては、着座者尻部のサブマリン移動を規制する規制部材が、その上下移動のみを可能にシートクッションに配されるとともに、付勢手段が、この規制部材を上方に付勢可能に配されている。
【0006】
さらに、特開平07−81466号公報に開示された構成においては、着座者尻部のサブマリン移動を規制する規制部材が、駆動部材となるエアバッグの膨張によって上方に移動可能に、シートクッション内に配設されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前出の特開平05−238297号公報に開示された構成においては、規制部材が検出手段に連動して上下移動されるため、検出手段を押し込む力が弱まると、規制部材も自ずと下方に移動されることになる。つまり、着座者尻部のサブマリン移動のもとで規制部材が瞬間的に上がっても、その上昇位置の継続は着座者から付与される荷重の大小に依存されることになるため、着座者からの荷重伝達状況によっては、この規制部材によるサブマリン移動規制が十分でなくなる虞れがある。
【0008】
また、前出の特開2001−146127号公報に開示の構成では、規制部材が着座者からの荷重の作用のもとで下方に押し込まれるものであるため、この押し込む力が激減しないと、その上昇は期待できない。つまり、着座者からの荷重が規制部材に付与された状態で着座者尻部のサブマリン移動が発生すると、着座者尻部は、この規制部材を押し込んだままその前方に移動することも考えられるため、この公知の構成においては、作動の確実性が低下する虞れが否定できない。
【0009】
なお、規制部材を上方に押し上げる付勢力を増大化することも考えられる。しかし、このような付勢力の増大化は、この付勢力に抗した規制部材の下降を困難にする虞れを持っているため、着座者の快適性の低下を招くことも否定できない。
【0010】
ここで、これら上記の公知の構成に対し、前出の特開平07−81466号公報に開示された構成では、規制部材となる板材が、衝撃等の検出に伴ったエアバッグの膨張によって後傾し、それに伴ったシートクッション前部の持ち上げ、保持により、着座者尻部のサブマリン移動を阻止しようとするものであるため、その作動の確実性、および機能性は十分に高く得られるものとなっている。
【0011】
しかし、急減速、あるいは急停車等を検出するセンサや、エアバッグを膨張させるためのインフレータ等の駆動手段が必要であるため、その構成の複雑化に伴ったコストの増加が避けられず、またこれら構成部材に起因するシートの重量増加も避けられない。
【0012】
この発明は、構成の複雑化等を伴うことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とした、その機能性、実用性に優れた車両用シート構造の提供を目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に示すこの発明の車両用シート構造においては、サブマリン規制部材が、サブマリン規制部材が、一端部に回動支点を有する左右一対の支持アームと、シートクッションの左右幅方向に延びた水平バーとの組み合わせとしてなる正面略門型に形成されるとともに、その水平バーが、シートクッション基部材に対する支持アーム回動支点の枢支のもとで、この回動支点の後方側を、その後方下部と前方上部との間で円弧移動可能に配置、支持されている。また、一端をサブマリン規制部材の一部に係止した引張コイルばねの他端が、支持アームの回動支点の前方下部に係止点を持つ、シートクッション基部材の係止片に係止され、この引張コイルばねのデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されるとともに、その上下移動範囲の下限位置が、引張コイルばねのデッドポイントを下方に越えた保持位置として規定されて、この引張コイルばねの付勢力のもとで、水平バーがその保持位置に付勢、保持されている。
【0014】
そして、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばねの付勢力に抗する方向の力として水平バーに入力し、これによる支持アームの回動のもとで、水平バーが引張コイルばねのデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、水平バーの移動範囲の上限位置として規定された、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持するものとして、この発明の車両用シート構造は構成されている。
【0015】
また、請求項2に示すこの発明の車両用シート構造においては、サブマリン規制部材が、その中間位置に回動支点を有する左右一対の支持アームと、この支持アームの前端部間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる水平バーと、この支持アームの後端部間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる解除バーとの組み合わせとしてなる平面略矩形状に形成されるとともに、その水平バー、および解除バーが、シートクッション基部材に対する支持アーム回動支点の枢支のもとで、この回動支点を挟んだ前方側、および後方側を、略上下方向に相対移動可能に配置、支持されている。また、一端をサブマリン規制部材の一部に係止した引張コイルばねの他端を、支持アームの回動支点の後方下部に係止点を持つ、シートクッション基部材の係止片に係止し、この引張コイルばねのデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されるとともに、その上下移動範囲の下限位置が、引張コイルばねのデッドポイントを下方に越えた保持位置として規定されて、この引張コイルばねの付勢力のもとで、水平バーがその保持位置に付勢、保持されている。
【0016】
そして、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばねの付勢力に抗する方向の力として解除バーに入力し、これによる支持アームの回動のもとで、水平バーが引張コイルばねのデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、水平バーの移動範囲の上限位置として規定された、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持するものとして、この発明の車両用シート構造は構成されている。
【0017】
さらに、この発明の請求項3においては、引張コイルばねの一端を係止する位置として、サブマリン規制部材の水平バーの、左右ほぼ中央を具体化している。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1、図2に示すように、この発明に係る車両用シート構造10においては、着座者尻部のサブマリン移動を阻止可能とするサブマリン規制部材12が、シートクッション14の前部に内設されている。
【0020】
図1におけるシートクッション14の前部は、その左方部であり、図示のように、この左方(前方)半部内に、サブマリン規制部材12は内設されている。
【0021】
なお、図1、図2に示すように、この発明の実施の形態においては、シートクッション14が、鋼板の折曲成形等によりなるパンフレーム16の上部に、弾性体であるシートパッド18を配し、さらにこれをトリムカバー20で被装してなるものとして具体化されている。そして、そのパンフレーム16を、シートクッション基部材として、この実施の形態においては具体化する。
【0022】
ここで、図1、および図2を見るとわかるように、この実施の一形態においては、サブマリン規制部材12が、一端部に回動支点を有する左右一対の支持アーム22と、シートクッション14の左右幅方向に延びた水平バー24との組み合わせとしてなる正面略門型に形成されている。そして、シートクッション基部材、つまりパンフレーム16の左右側壁16aに対する、枢支ピン、たとえば固定ナット26に螺着される段付ボルト28での枢支により、この支持アーム22の一端部が回動支点として規定されるとともに、この回動支点を中心とした支持アームの回動のもとで、この回動支点の後方側をその後方下部と前方上部との間で円弧移動可能に、水平バー24が配置されている。
【0023】
なお、図1に加えて図3を見るとわかるように、水平バー24としては、断面略円形のロッドが例示でき、その移動範囲は、左右の支持アーム22との係合の可能な、たとえばパンフレームの左右側壁16aに突設された上昇ストッパ30、および下降ストッパ32により規定されている。そして、図3に示す、上昇ストッパ30により限定される上限位置が、着座者尻部のサブマリン移動を阻止する、そのサブマリン軌道上に整列する規制位置として、また、後述のように、図1に示す、下降ストッパ32により限定される下限位置が、通常時に保持される保持位置として、この発明においてはそれぞれ規定されている。
【0024】
ここで、この実施の一形態における水平バー24には、所定の係止片34と、この水平バーの左右ほぼ中央との間に架設、張設された引張コイルばね36からの付勢力が付与されている。この係止片34は、支持アーム22の回動支点28の前方位置でその回動支点より下方に係止点を持つものとして、シートクッション基部材、つまりパンフレーム16の底壁16bの部分的な切り起こしにより形成される。
【0025】
そして、引張コイルばね36のデッドポイントを支持アーム22の回動範囲内に含むものとして、水平バー24の上下移動範囲が上述の上昇ストッパ30、下降ストッパ32により規定されている。
【0026】
ここでいう、引張コイルばね36のデッドポイントとは、引張コイルばねの軸心と支持アームの回動支点28との整列位置を指し、図1に示すように、引張コイルばねの軸心がこのデッドポイントを下方に越えれば、水平バー24を下方に牽引する付勢力がこの水平バーに作用し、また、図3に示すように、引張コイルばねの軸心がこのデッドポイントを上方に越えれば、水平バーを上方に牽引する付勢力がこの水平バーに作用することになる。
【0027】
つまり、この構成によれば、単一の引張コイルばね36からの付勢力のもとで、保持位置ヘの水平バー24の保持、および規制位置への水平バーの保持のいずれもが行われる。
【0028】
なお、図1を見るとわかるように、サブマリン規制部材12、および引張コイルばね36を収容可能とする凹部38が、シートパッド18の対応個所に形成されている。このように、これらをシートパッドの凹部38内に収容すれば、シートパッド18に妨げられることのない各部材の作動が容易に確保可能となる。
【0029】
図1を見るとわかるように、通常時、サブマリン規制部材12は、引張コイルばね36による下方付勢のもとで、下降ストッパ32への支持アーム22の係合により規定された水平バー24の下限位置、つまりは保持位置に固定的に保持されている。
【0030】
このような、保持位置への水平バー24の保持状態においては、着座者の通常の着座状態であれば、この水平バーに接触する位置まで着座者の尻部、あるいは大腿部が沈み込むこともないため、シートクッション14におけるクッション性は十分に確保でき、その快適性は損なわれない。
【0031】
このような通常時に、車両の急減速、急停車等によって着座者尻部のサブマリン移動が生じ、そのサブマリン移動によるサブマリン荷重が、引張コイルばねの付勢力に抗する力として水平バー24に入力すると、この水平バーは、着座者尻部から作用するこのサブマリン荷重のもとで、支持アームの回動支点28を中心としてその前方、および上方に押し上げられる。そして、このサブマリン荷重のもとで、支持アーム22が引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越えて回動すると、この引張コイルばねの付勢力は、水平バー24を上方に付勢する力として水平バー、および支持アームに作用するため、この付勢力による上昇ストッパ30ヘの支持アーム22の圧接により、この水平バーは規制位置となる、サブマリン軌道上の上部位置に継続保持されることになる(図3参照)。
【0032】
水平バー24が、図3に示す規制位置に付勢、保持されると、サブマリン移動を開始した着座者の尻部は、この水平バーによって移動規制される。つまり、着座者尻部のサブマリン移動は、規制位置の水平バー24によって確実に阻止可能となる。
【0033】
上記のように、この発明の車両用シート構造10においては、移動範囲の下限位置として規定された保持位置に、サブマリン規制部材の水平バー24を保持し、着座者尻部のサブマリン移動の発生によって、この水平バーを上方の規制位置に付勢、保持するため、通常時、この水平バーから着座者に違和感等を与えることはなく、よってそのクッション性、つまり着座感は十分に高く確保される。
【0034】
そして、水平バー24が、その前方側にある回動支点28を中心とした支持アーム22の前方起立回動のもとで、規制位置まで上昇されるとともに、上昇ストッパ30に対する支持アームの回動規制のもとで、それ以降の支持アームの回動、つまり水平バーの上昇が規制されるため、この水平バーによれば、着座者尻部のサブマリン移動を高い剛性のもとで確実に阻止することが可能となる。従って、この発明によれば、着座者尻部に対するサブマリン阻止の確実性が向上される。
【0035】
さらに、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重を、水平バー24が瞬間的にでも受ければ、引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越える水平バーの上昇によって水平バーが規制位置に付勢、保持され、また、一旦水平バーが規制位置まで上昇すれば、この水平バーはその位置に継続して保持されるため、その作動の確実性、および機能性が確実に向上される。
【0036】
また、インフレータ等の駆動手段を用いる必要がないため、その重量化が確実に防止できる。そして、正面略門型のサブマリン規制部材12に引張コイルばね36の付勢力を付与可能とするとともに、サブマリン規制部材の水平バー24の上下移動範囲を、引張コイルばねのデッドポイントを支持アーム22の回動範囲内に含むものとして規定すれば足りるため、構成の複雑化等を招くことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする車両用シート構造10が提供できる。
【0037】
なお、構成が簡単であり、またその機能性、および作動性能にも優れていることから、この発明の車両用シート構造10は、実用性の点においても優れているということができる。
【0038】
ここで、この発明の実施の形態においては、サブマリン規制部材12を、断面略円形のロッドからなる水平バー24と、その左右の支持アーム22との組み合わせとして具体化されているが、正面略門型であれば足りるため、これに限定されず、たとえば、断面四角形等の角棒状部材を、サブマリン規制部材の水平バーとして利用してもよく、また、この水平バーと支持アームとは別体であることも必要ではないため、折曲成形等によりなる一体部材として、このサブマリン規制部材を形成してもよい。
【0039】
なお、水平バー24には、引張コイルばね36の付勢力が付与されているにすぎないため、水平バーの上昇後であっても、引張コイルばねの付勢力に抗して水平バーを下方に押し込めば、水平バーをその保持位置に回動させてその保持を得ることは可能である。つまり、この構成によれば、その繰り返しの使用が容易に可能となる。
【0040】
また、この実施の形態においては、引張コイルばね36の一端を水平バー24の左右ほぼ中央に係止しているが、この引張コイルばねからの付勢力をサブマリン規制部材12に付与可能とするとともに、この引張コイルばねのデッドポイントを、支持アーム22の回動範囲内に規定できれば足りるため、これに限定されず、たとえば、支持アームの外側面に設けた係止片(図示しない)等に、引張コイルばねの一端を係止する構成としてもよい。
【0041】
しかしながら、引張コイルばね36の一端を水平バー24の左右ほぼ中央に係止すれば、単一の引張コイルばねであってもその付勢力は左右の支持アーム22に均等に作用するため、簡単な構成にも拘らず、その動作の確実性は向上される。
【0042】
ところで、上述した実施の形態においては、回動支点28の後方側での略上下移動を可能に水平アーム24が配されているが、これとは逆に、回動支点の前方側を略上下移動可能に、水平アームを配してもよい。
【0043】
図4、および図5を見るとわかるように、この発明の実施の別形態に係る車両用シート構造110においては、サブマリン規制部材112が、その中間位置に回動支点を有する左右一対の支持アーム122と、この支持アームの前端部122a間に架設固定された、シートクッション14の左右幅方向に延びる水平バー124と、この支持アームの後端部122b間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる解除バー40との組み合わせとしてなる平面略矩形状に形成されている。そして、固定ナット26に対する段付ボルト28の螺着のもとで、支持アーム122の回動支点がパンフレームの左右側壁16aに枢着され、この段付ボルトを中心とした支持アームの回動のもとで、このサブマリン規制部材の水平バー124が段付ボルトの前方側を、また、その解除バー40が段付ボルトの後方側を、略上下方向での相対移動を可能にそれぞれ配置されている。
【0044】
この実施の別形態においては、水平バー124が回動支点(段付ボルト)28の前方側に位置するため、一端を水平バーに係止した引張コイルばね36の他端を、支持アームの回動支点28の後方下部に係止点を持つ、パンフレームの係止片34に係止することで、所要のその付勢力を水平バー、および支持アーム122、つまりはサブマリン規制部材112に付与するものとして構成されている。
【0045】
なお、前記実施の形態と共通する部材に関しては、前記実施の形態での説明における参照符号と同一の参照符号を付すことで、ここでの説明を省略する。
【0046】
図4を見るとわかるように、この実施の形態においても、通常時、サブマリン規制部材112は、引張コイルばね36による下方付勢のもとで、下降ストッパ32への支持アーム122の係合により規定された水平バー124の保持位置に固定的に保持されている。
【0047】
そして、車両の急減速、急停車等に起因する着座者尻部からのサブマリン荷重が、引張コイルばねの付勢力に抗する力として解除バー40に入力すると、この解除バーは、着座者尻部からのサブマリン荷重のもとで、たとえば押し下げられ、これにより、支持アーム122が引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越えて回動すると、この引張コイルばねの付勢力は、水平バー124を上方に付勢する力として作用するため、この付勢力による上昇ストッパ30ヘの支持アームの圧接により、この水平バーは規制位置に保持される(図6参照)。
【0048】
このように、この実施の別形態においても、解除バー40へのサブマリン荷重の入力もとで、サブマリン規制部材の水平バー124を規制位置まで移動させることができるため、前記実施の形態と同様の効果は確実に得られる。そして、この実施の別形態においては、解除バー40を、着座者尻部からのサブマリン荷重を検出しやすい位置に設定できるため、その作動の確実性が一層向上される。
【0049】
上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0050】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係る車両用シート構造によれば、下方の保持位置に保持されたサブマリン規制部材の水平バーが、着座者尻部のサブマリン移動のもとでその上方の規制位置に付勢、保持されるため、サブマリン規制部材を、通常時の着座感を損なうことなくシートクッションに内設することが可能となる。そして、サブマリン荷重の入力のもとで、水平バーはその規制位置に付勢、保持されるため、着座者尻部に対するサブマリン阻止の確実性が向上されるとともに、その規制位置での継続保持により、その作動の確実性、および機能性が確実に向上される。
【0051】
また、インフレータ等の駆動手段を用いる必要がないため、その重量化が確実に防止できる。そして、サブマリン規制部材の水平バーを、引張コイルばねの付勢力のもとで上下各方向に付勢、保持可能とすれば足りるため、構成の複雑化等を招くことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする車両用シート構造が提供できる。
【0052】
そして、支持アームの回動支点の後方側を水平バーが略上下移動する構成では、水平バー自体が着座者尻部からのサブマリン荷重を受けるため、その構成の簡素化、つまりは部品点数の削減が確実にはかられる。
【0053】
さらに、水平バーを、その前方側にある回動支点を中心とした支持アームの回動のもとで、その規制位置に移動させる構成であるため、着座者尻部のサブマリン移動を高い剛性のもとで確実に阻止することが可能となる。従って、この発明によれば、着座者尻部に対するサブマリン阻止の確実性が向上される。
【0054】
そして、水平バーを回動支点の前方側に位置させ、この回動支点の後方側に配した解除バーによって、着座者尻部からのサブマリン荷重を受ける構成とすれば、解除バーを、着座者尻部からのサブマリン荷重を検出しやすい位置に設定できるため、その作動の確実性が一層向上される。
【0055】
また、引張コイルばねの一端を水平バーの左右ほぼ中央に係止すれば、単一の引張コイルばねであってもその付勢力は左右の支持アームに均等に作用するため、簡単な構成にも拘らず、その動作の確実性は向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常時における、この発明の実施の一形態に係る車両用シート構造の概略側面図である。
【図2】図1に示す車両用シート構造の、一部破断の概略分解斜視図である。
【図3】図1、図2に示す車両用シート構造における、その作動時での概略側面図である。
【図4】通常時における、この発明の実施の別形態に係る車両用シート構造の概略側面図である。
【図5】図4に示す車両用シート構造の、一部破断の概略分解斜視図である。
【図6】図4、図5に示す車両用シート構造における、その作動時での概略側面図である。
【符号の説明】
10,110 車両用シート構造
12,112 サブマリン規制部材
22,122 支持アーム
24,124 水平バー
36 引張コイルばね
40 解除バー
【発明の属する技術分野】
この発明は、急減速時、あるいは急停車時等に生じる着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする車両用シート構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の急減速、あるいは急停車時、着座者はその慣性力のもとで前方に移動しようとする。このような、人体の前方移動は、着座者の上体を適宜拘束するシートベルトによって通常は阻止されるが、尻部がシートクッションに沈み込みながら前方に移動する尻滑り現象、いわゆるサブマリン現象に対しては、このシートベルトが有効的に機能しない虞れのあることも指摘されている。
【0003】
そこで、このようなサブマリン現象、つまり着座者尻部のサブマリン移動を阻止する構成として、たとえば、特開平05−238297号公報、特開2001−146127号公報、および特開平07−81466号公報等が開示、提供されている。
【0004】
特開平05−238297号公報に開示された構成においては、シートクッションが、着座位置、つまりは尻部の位置の変位量を検出する検出手段を持っている。そして、この検出手段を上方位置に付勢支持するばね部材(圧縮コイルスプリング)の付勢力に抗してこの検出手段が下方に押し込まれたとき、その押し込み量に応じた量だけ、着座者尻部のサブマリン移動を規制する規制部材を上方に移動させるものとしている。
【0005】
また、特開2001−146127号公報に開示された構成においては、着座者尻部のサブマリン移動を規制する規制部材が、その上下移動のみを可能にシートクッションに配されるとともに、付勢手段が、この規制部材を上方に付勢可能に配されている。
【0006】
さらに、特開平07−81466号公報に開示された構成においては、着座者尻部のサブマリン移動を規制する規制部材が、駆動部材となるエアバッグの膨張によって上方に移動可能に、シートクッション内に配設されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前出の特開平05−238297号公報に開示された構成においては、規制部材が検出手段に連動して上下移動されるため、検出手段を押し込む力が弱まると、規制部材も自ずと下方に移動されることになる。つまり、着座者尻部のサブマリン移動のもとで規制部材が瞬間的に上がっても、その上昇位置の継続は着座者から付与される荷重の大小に依存されることになるため、着座者からの荷重伝達状況によっては、この規制部材によるサブマリン移動規制が十分でなくなる虞れがある。
【0008】
また、前出の特開2001−146127号公報に開示の構成では、規制部材が着座者からの荷重の作用のもとで下方に押し込まれるものであるため、この押し込む力が激減しないと、その上昇は期待できない。つまり、着座者からの荷重が規制部材に付与された状態で着座者尻部のサブマリン移動が発生すると、着座者尻部は、この規制部材を押し込んだままその前方に移動することも考えられるため、この公知の構成においては、作動の確実性が低下する虞れが否定できない。
【0009】
なお、規制部材を上方に押し上げる付勢力を増大化することも考えられる。しかし、このような付勢力の増大化は、この付勢力に抗した規制部材の下降を困難にする虞れを持っているため、着座者の快適性の低下を招くことも否定できない。
【0010】
ここで、これら上記の公知の構成に対し、前出の特開平07−81466号公報に開示された構成では、規制部材となる板材が、衝撃等の検出に伴ったエアバッグの膨張によって後傾し、それに伴ったシートクッション前部の持ち上げ、保持により、着座者尻部のサブマリン移動を阻止しようとするものであるため、その作動の確実性、および機能性は十分に高く得られるものとなっている。
【0011】
しかし、急減速、あるいは急停車等を検出するセンサや、エアバッグを膨張させるためのインフレータ等の駆動手段が必要であるため、その構成の複雑化に伴ったコストの増加が避けられず、またこれら構成部材に起因するシートの重量増加も避けられない。
【0012】
この発明は、構成の複雑化等を伴うことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とした、その機能性、実用性に優れた車両用シート構造の提供を目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に示すこの発明の車両用シート構造においては、サブマリン規制部材が、サブマリン規制部材が、一端部に回動支点を有する左右一対の支持アームと、シートクッションの左右幅方向に延びた水平バーとの組み合わせとしてなる正面略門型に形成されるとともに、その水平バーが、シートクッション基部材に対する支持アーム回動支点の枢支のもとで、この回動支点の後方側を、その後方下部と前方上部との間で円弧移動可能に配置、支持されている。また、一端をサブマリン規制部材の一部に係止した引張コイルばねの他端が、支持アームの回動支点の前方下部に係止点を持つ、シートクッション基部材の係止片に係止され、この引張コイルばねのデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されるとともに、その上下移動範囲の下限位置が、引張コイルばねのデッドポイントを下方に越えた保持位置として規定されて、この引張コイルばねの付勢力のもとで、水平バーがその保持位置に付勢、保持されている。
【0014】
そして、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばねの付勢力に抗する方向の力として水平バーに入力し、これによる支持アームの回動のもとで、水平バーが引張コイルばねのデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、水平バーの移動範囲の上限位置として規定された、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持するものとして、この発明の車両用シート構造は構成されている。
【0015】
また、請求項2に示すこの発明の車両用シート構造においては、サブマリン規制部材が、その中間位置に回動支点を有する左右一対の支持アームと、この支持アームの前端部間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる水平バーと、この支持アームの後端部間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる解除バーとの組み合わせとしてなる平面略矩形状に形成されるとともに、その水平バー、および解除バーが、シートクッション基部材に対する支持アーム回動支点の枢支のもとで、この回動支点を挟んだ前方側、および後方側を、略上下方向に相対移動可能に配置、支持されている。また、一端をサブマリン規制部材の一部に係止した引張コイルばねの他端を、支持アームの回動支点の後方下部に係止点を持つ、シートクッション基部材の係止片に係止し、この引張コイルばねのデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されるとともに、その上下移動範囲の下限位置が、引張コイルばねのデッドポイントを下方に越えた保持位置として規定されて、この引張コイルばねの付勢力のもとで、水平バーがその保持位置に付勢、保持されている。
【0016】
そして、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばねの付勢力に抗する方向の力として解除バーに入力し、これによる支持アームの回動のもとで、水平バーが引張コイルばねのデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、水平バーの移動範囲の上限位置として規定された、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持するものとして、この発明の車両用シート構造は構成されている。
【0017】
さらに、この発明の請求項3においては、引張コイルばねの一端を係止する位置として、サブマリン規制部材の水平バーの、左右ほぼ中央を具体化している。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1、図2に示すように、この発明に係る車両用シート構造10においては、着座者尻部のサブマリン移動を阻止可能とするサブマリン規制部材12が、シートクッション14の前部に内設されている。
【0020】
図1におけるシートクッション14の前部は、その左方部であり、図示のように、この左方(前方)半部内に、サブマリン規制部材12は内設されている。
【0021】
なお、図1、図2に示すように、この発明の実施の形態においては、シートクッション14が、鋼板の折曲成形等によりなるパンフレーム16の上部に、弾性体であるシートパッド18を配し、さらにこれをトリムカバー20で被装してなるものとして具体化されている。そして、そのパンフレーム16を、シートクッション基部材として、この実施の形態においては具体化する。
【0022】
ここで、図1、および図2を見るとわかるように、この実施の一形態においては、サブマリン規制部材12が、一端部に回動支点を有する左右一対の支持アーム22と、シートクッション14の左右幅方向に延びた水平バー24との組み合わせとしてなる正面略門型に形成されている。そして、シートクッション基部材、つまりパンフレーム16の左右側壁16aに対する、枢支ピン、たとえば固定ナット26に螺着される段付ボルト28での枢支により、この支持アーム22の一端部が回動支点として規定されるとともに、この回動支点を中心とした支持アームの回動のもとで、この回動支点の後方側をその後方下部と前方上部との間で円弧移動可能に、水平バー24が配置されている。
【0023】
なお、図1に加えて図3を見るとわかるように、水平バー24としては、断面略円形のロッドが例示でき、その移動範囲は、左右の支持アーム22との係合の可能な、たとえばパンフレームの左右側壁16aに突設された上昇ストッパ30、および下降ストッパ32により規定されている。そして、図3に示す、上昇ストッパ30により限定される上限位置が、着座者尻部のサブマリン移動を阻止する、そのサブマリン軌道上に整列する規制位置として、また、後述のように、図1に示す、下降ストッパ32により限定される下限位置が、通常時に保持される保持位置として、この発明においてはそれぞれ規定されている。
【0024】
ここで、この実施の一形態における水平バー24には、所定の係止片34と、この水平バーの左右ほぼ中央との間に架設、張設された引張コイルばね36からの付勢力が付与されている。この係止片34は、支持アーム22の回動支点28の前方位置でその回動支点より下方に係止点を持つものとして、シートクッション基部材、つまりパンフレーム16の底壁16bの部分的な切り起こしにより形成される。
【0025】
そして、引張コイルばね36のデッドポイントを支持アーム22の回動範囲内に含むものとして、水平バー24の上下移動範囲が上述の上昇ストッパ30、下降ストッパ32により規定されている。
【0026】
ここでいう、引張コイルばね36のデッドポイントとは、引張コイルばねの軸心と支持アームの回動支点28との整列位置を指し、図1に示すように、引張コイルばねの軸心がこのデッドポイントを下方に越えれば、水平バー24を下方に牽引する付勢力がこの水平バーに作用し、また、図3に示すように、引張コイルばねの軸心がこのデッドポイントを上方に越えれば、水平バーを上方に牽引する付勢力がこの水平バーに作用することになる。
【0027】
つまり、この構成によれば、単一の引張コイルばね36からの付勢力のもとで、保持位置ヘの水平バー24の保持、および規制位置への水平バーの保持のいずれもが行われる。
【0028】
なお、図1を見るとわかるように、サブマリン規制部材12、および引張コイルばね36を収容可能とする凹部38が、シートパッド18の対応個所に形成されている。このように、これらをシートパッドの凹部38内に収容すれば、シートパッド18に妨げられることのない各部材の作動が容易に確保可能となる。
【0029】
図1を見るとわかるように、通常時、サブマリン規制部材12は、引張コイルばね36による下方付勢のもとで、下降ストッパ32への支持アーム22の係合により規定された水平バー24の下限位置、つまりは保持位置に固定的に保持されている。
【0030】
このような、保持位置への水平バー24の保持状態においては、着座者の通常の着座状態であれば、この水平バーに接触する位置まで着座者の尻部、あるいは大腿部が沈み込むこともないため、シートクッション14におけるクッション性は十分に確保でき、その快適性は損なわれない。
【0031】
このような通常時に、車両の急減速、急停車等によって着座者尻部のサブマリン移動が生じ、そのサブマリン移動によるサブマリン荷重が、引張コイルばねの付勢力に抗する力として水平バー24に入力すると、この水平バーは、着座者尻部から作用するこのサブマリン荷重のもとで、支持アームの回動支点28を中心としてその前方、および上方に押し上げられる。そして、このサブマリン荷重のもとで、支持アーム22が引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越えて回動すると、この引張コイルばねの付勢力は、水平バー24を上方に付勢する力として水平バー、および支持アームに作用するため、この付勢力による上昇ストッパ30ヘの支持アーム22の圧接により、この水平バーは規制位置となる、サブマリン軌道上の上部位置に継続保持されることになる(図3参照)。
【0032】
水平バー24が、図3に示す規制位置に付勢、保持されると、サブマリン移動を開始した着座者の尻部は、この水平バーによって移動規制される。つまり、着座者尻部のサブマリン移動は、規制位置の水平バー24によって確実に阻止可能となる。
【0033】
上記のように、この発明の車両用シート構造10においては、移動範囲の下限位置として規定された保持位置に、サブマリン規制部材の水平バー24を保持し、着座者尻部のサブマリン移動の発生によって、この水平バーを上方の規制位置に付勢、保持するため、通常時、この水平バーから着座者に違和感等を与えることはなく、よってそのクッション性、つまり着座感は十分に高く確保される。
【0034】
そして、水平バー24が、その前方側にある回動支点28を中心とした支持アーム22の前方起立回動のもとで、規制位置まで上昇されるとともに、上昇ストッパ30に対する支持アームの回動規制のもとで、それ以降の支持アームの回動、つまり水平バーの上昇が規制されるため、この水平バーによれば、着座者尻部のサブマリン移動を高い剛性のもとで確実に阻止することが可能となる。従って、この発明によれば、着座者尻部に対するサブマリン阻止の確実性が向上される。
【0035】
さらに、着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重を、水平バー24が瞬間的にでも受ければ、引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越える水平バーの上昇によって水平バーが規制位置に付勢、保持され、また、一旦水平バーが規制位置まで上昇すれば、この水平バーはその位置に継続して保持されるため、その作動の確実性、および機能性が確実に向上される。
【0036】
また、インフレータ等の駆動手段を用いる必要がないため、その重量化が確実に防止できる。そして、正面略門型のサブマリン規制部材12に引張コイルばね36の付勢力を付与可能とするとともに、サブマリン規制部材の水平バー24の上下移動範囲を、引張コイルばねのデッドポイントを支持アーム22の回動範囲内に含むものとして規定すれば足りるため、構成の複雑化等を招くことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする車両用シート構造10が提供できる。
【0037】
なお、構成が簡単であり、またその機能性、および作動性能にも優れていることから、この発明の車両用シート構造10は、実用性の点においても優れているということができる。
【0038】
ここで、この発明の実施の形態においては、サブマリン規制部材12を、断面略円形のロッドからなる水平バー24と、その左右の支持アーム22との組み合わせとして具体化されているが、正面略門型であれば足りるため、これに限定されず、たとえば、断面四角形等の角棒状部材を、サブマリン規制部材の水平バーとして利用してもよく、また、この水平バーと支持アームとは別体であることも必要ではないため、折曲成形等によりなる一体部材として、このサブマリン規制部材を形成してもよい。
【0039】
なお、水平バー24には、引張コイルばね36の付勢力が付与されているにすぎないため、水平バーの上昇後であっても、引張コイルばねの付勢力に抗して水平バーを下方に押し込めば、水平バーをその保持位置に回動させてその保持を得ることは可能である。つまり、この構成によれば、その繰り返しの使用が容易に可能となる。
【0040】
また、この実施の形態においては、引張コイルばね36の一端を水平バー24の左右ほぼ中央に係止しているが、この引張コイルばねからの付勢力をサブマリン規制部材12に付与可能とするとともに、この引張コイルばねのデッドポイントを、支持アーム22の回動範囲内に規定できれば足りるため、これに限定されず、たとえば、支持アームの外側面に設けた係止片(図示しない)等に、引張コイルばねの一端を係止する構成としてもよい。
【0041】
しかしながら、引張コイルばね36の一端を水平バー24の左右ほぼ中央に係止すれば、単一の引張コイルばねであってもその付勢力は左右の支持アーム22に均等に作用するため、簡単な構成にも拘らず、その動作の確実性は向上される。
【0042】
ところで、上述した実施の形態においては、回動支点28の後方側での略上下移動を可能に水平アーム24が配されているが、これとは逆に、回動支点の前方側を略上下移動可能に、水平アームを配してもよい。
【0043】
図4、および図5を見るとわかるように、この発明の実施の別形態に係る車両用シート構造110においては、サブマリン規制部材112が、その中間位置に回動支点を有する左右一対の支持アーム122と、この支持アームの前端部122a間に架設固定された、シートクッション14の左右幅方向に延びる水平バー124と、この支持アームの後端部122b間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる解除バー40との組み合わせとしてなる平面略矩形状に形成されている。そして、固定ナット26に対する段付ボルト28の螺着のもとで、支持アーム122の回動支点がパンフレームの左右側壁16aに枢着され、この段付ボルトを中心とした支持アームの回動のもとで、このサブマリン規制部材の水平バー124が段付ボルトの前方側を、また、その解除バー40が段付ボルトの後方側を、略上下方向での相対移動を可能にそれぞれ配置されている。
【0044】
この実施の別形態においては、水平バー124が回動支点(段付ボルト)28の前方側に位置するため、一端を水平バーに係止した引張コイルばね36の他端を、支持アームの回動支点28の後方下部に係止点を持つ、パンフレームの係止片34に係止することで、所要のその付勢力を水平バー、および支持アーム122、つまりはサブマリン規制部材112に付与するものとして構成されている。
【0045】
なお、前記実施の形態と共通する部材に関しては、前記実施の形態での説明における参照符号と同一の参照符号を付すことで、ここでの説明を省略する。
【0046】
図4を見るとわかるように、この実施の形態においても、通常時、サブマリン規制部材112は、引張コイルばね36による下方付勢のもとで、下降ストッパ32への支持アーム122の係合により規定された水平バー124の保持位置に固定的に保持されている。
【0047】
そして、車両の急減速、急停車等に起因する着座者尻部からのサブマリン荷重が、引張コイルばねの付勢力に抗する力として解除バー40に入力すると、この解除バーは、着座者尻部からのサブマリン荷重のもとで、たとえば押し下げられ、これにより、支持アーム122が引張コイルばね36のデッドポイントを上方に越えて回動すると、この引張コイルばねの付勢力は、水平バー124を上方に付勢する力として作用するため、この付勢力による上昇ストッパ30ヘの支持アームの圧接により、この水平バーは規制位置に保持される(図6参照)。
【0048】
このように、この実施の別形態においても、解除バー40へのサブマリン荷重の入力もとで、サブマリン規制部材の水平バー124を規制位置まで移動させることができるため、前記実施の形態と同様の効果は確実に得られる。そして、この実施の別形態においては、解除バー40を、着座者尻部からのサブマリン荷重を検出しやすい位置に設定できるため、その作動の確実性が一層向上される。
【0049】
上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0050】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係る車両用シート構造によれば、下方の保持位置に保持されたサブマリン規制部材の水平バーが、着座者尻部のサブマリン移動のもとでその上方の規制位置に付勢、保持されるため、サブマリン規制部材を、通常時の着座感を損なうことなくシートクッションに内設することが可能となる。そして、サブマリン荷重の入力のもとで、水平バーはその規制位置に付勢、保持されるため、着座者尻部に対するサブマリン阻止の確実性が向上されるとともに、その規制位置での継続保持により、その作動の確実性、および機能性が確実に向上される。
【0051】
また、インフレータ等の駆動手段を用いる必要がないため、その重量化が確実に防止できる。そして、サブマリン規制部材の水平バーを、引張コイルばねの付勢力のもとで上下各方向に付勢、保持可能とすれば足りるため、構成の複雑化等を招くことなく、着座者尻部のサブマリン移動を適切に阻止可能とする車両用シート構造が提供できる。
【0052】
そして、支持アームの回動支点の後方側を水平バーが略上下移動する構成では、水平バー自体が着座者尻部からのサブマリン荷重を受けるため、その構成の簡素化、つまりは部品点数の削減が確実にはかられる。
【0053】
さらに、水平バーを、その前方側にある回動支点を中心とした支持アームの回動のもとで、その規制位置に移動させる構成であるため、着座者尻部のサブマリン移動を高い剛性のもとで確実に阻止することが可能となる。従って、この発明によれば、着座者尻部に対するサブマリン阻止の確実性が向上される。
【0054】
そして、水平バーを回動支点の前方側に位置させ、この回動支点の後方側に配した解除バーによって、着座者尻部からのサブマリン荷重を受ける構成とすれば、解除バーを、着座者尻部からのサブマリン荷重を検出しやすい位置に設定できるため、その作動の確実性が一層向上される。
【0055】
また、引張コイルばねの一端を水平バーの左右ほぼ中央に係止すれば、単一の引張コイルばねであってもその付勢力は左右の支持アームに均等に作用するため、簡単な構成にも拘らず、その動作の確実性は向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常時における、この発明の実施の一形態に係る車両用シート構造の概略側面図である。
【図2】図1に示す車両用シート構造の、一部破断の概略分解斜視図である。
【図3】図1、図2に示す車両用シート構造における、その作動時での概略側面図である。
【図4】通常時における、この発明の実施の別形態に係る車両用シート構造の概略側面図である。
【図5】図4に示す車両用シート構造の、一部破断の概略分解斜視図である。
【図6】図4、図5に示す車両用シート構造における、その作動時での概略側面図である。
【符号の説明】
10,110 車両用シート構造
12,112 サブマリン規制部材
22,122 支持アーム
24,124 水平バー
36 引張コイルばね
40 解除バー
Claims (3)
- シートクッションの前部に、サブマリン規制部材を内設してなる車両用シート構造において、
サブマリン規制部材が、一端部に回動支点を有する左右一対の支持アームと;シートクッションの左右幅方向に延びた水平バーと;の組み合わせとしてなる正面略門型に形成されるとともに、その水平バーが、シートクッション基部材に対する支持アーム回動支点の枢支のもとで、この回動支点の後方側を、その後方下部と前方上部との間で円弧移動可能に配置、支持され、
一端をサブマリン規制部材の一部に係止した引張コイルばねの他端を、支持アームの回動支点の前方下部に係止点を持つ、シートクッション基部材の係止片に係止し、この引張コイルばねのデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されるとともに、その上下移動範囲の下限位置が、引張コイルばねのデッドポイントを下方に越えた保持位置として規定されて、この引張コイルばねの付勢力のもとで、水平バーがその保持位置に付勢、保持され、
着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばねの付勢力に抗する方向の力として水平バーに入力し、これによる支持アームの回動のもとで、水平バーが引張コイルばねのデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、水平バーの移動範囲の上限位置として規定された、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持することを特徴とした車両用シート構造。 - シートクッションの前部に、サブマリン規制部材を内設してなる車両用シート構造において、
サブマリン規制部材が、その中間位置に回動支点を有する左右一対の支持アームと;この支持アームの前端部間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる水平バーと;この支持アームの後端部間に架設固定された、シートクッションの左右幅方向に延びる解除バーと;の組み合わせとしてなる平面略矩形状に形成されるとともに、その水平バー、および解除バーが、シートクッション基部材に対する支持アーム回動支点の枢支のもとで、この回動支点を挟んだ前方側、および後方側を、略上下方向に相対移動可能に配置、支持され、
一端をサブマリン規制部材の一部に係止した引張コイルばねの他端を、支持アームの回動支点の後方下部に係止点を持つ、シートクッション基部材の係止片に係止し、この引張コイルばねのデッドポイントを支持アームの回動範囲内に含むものとして、水平バーの上下移動範囲が規定されるとともに、その上下移動範囲の下限位置が、引張コイルばねのデッドポイントを下方に越えた保持位置として規定されて、この引張コイルばねの付勢力のもとで、水平バーがその保持位置に付勢、保持され、
着座者尻部のサブマリン移動によるサブマリン荷重が、この引張コイルばねの付勢力に抗する方向の力として解除バーに入力し、これによる支持アームの回動のもとで、水平バーが引張コイルばねのデッドポイントを上方に越えて上昇したとき、この水平バーを、水平バーの移動範囲の上限位置として規定された、サブマリン軌道上の規制位置に、引張コイルばねの付勢力のもとで強制的に移動、保持することを特徴とした車両用シート構造。 - 引張コイルばねの一端が、サブマリン規制部材の水平バーの、左右ほぼ中央に係止された請求項1または2記載の車両用シート構造。
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