JP2004058415A - 平滑化処理方法及びそれにより得られる物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチックフィルム基材やその基材上に薄膜を形成した物品、及びガラス基板上に金属酸化物の薄膜を形成した物品において、それらの物品表面の凹凸を低減し、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成でき、また電気的導電性や発光特性を劣化させるような突起をなくし、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法を提供する。
【解決手段】チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理する方法で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つである。
【選択図】 図1
【解決手段】チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理する方法で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の包装材料や、電子デバイスの部材に有用であるプラスチックフィルムや、ガラス基板やガラス基板上に薄膜を形成した物品に関し、特にそれらの物品表面の凹凸が低減され、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成できる、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品等の包装材料には、特に柔軟性を有したプラスチックフィルム基材を使用した軟包装用材料には、内容物の品質を劣化させる要因である酸素・水蒸気の影響を防ぐために、ガスバリア膜(層)が形成されている。しかしながら、プラスチックフィルム表面の凹凸により、ガスバリア層は十分にその表面を被覆することができず、十分なガスバリア特性を得ることができなかった。
【0003】
液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルは、電子デバイス用基板として、従来はガラス基板を用いていた。昨今、軽量化・フレキシブル化・低コスト化によりプラスチック基板が検討されている。しかしながら、プラスチック基板はガラスに比較し、ガス透過率が大きい。したがって、プラスチック基板上に形成されている素子は酸素や水蒸気に触れ、劣化してしまうという問題が生じた。
これまで、ガスバリア層をプラスチック表面に形成することで、対策をおこなったが十分とはいえない。たとえば有機ELで問題となっているダークスポットは、プラスチック基板の凹凸に起因する突起により酸素・水蒸気ガスが透過し、その部分がショートし、発生する。
【0004】
さて、各種の金属や金属ガラスやセラミックスからなる金型表面を研磨したり、半導体、その他電子デバイスの基板表面の平坦化や、表面の不純物を除去して清浄化する技術として、特開平8−120470、特開平8−293483等に記載しているガスクラスターイオンビーム法(GCIB法)による固体表面の研磨方法がある。
上記のGCIB法は、金属、セラミックスの金型表面の加工や、ガラス基板やSi基板の基板自体と、その基板上に設けた金属薄膜の表面を平坦化させる方法であり、未だ有機材料のプラスチックフィルムやシリカ(SiO2)等の金属酸化物の薄膜に対し、精密加工する技術として確立されたものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、プラスチックフィルム基材やプラスチックフィルム基材上に薄膜を形成した物品、及びガラス基板上に金属酸化物の薄膜を形成した物品において、それらの物品表面の凹凸を低減し、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成でき、また発光特性を劣化させるような突起をなくし、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1として、本発明の平滑化処理方法は、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする。上記は被加工物の表面が上記方法で平滑化処理される。
【0007】
請求項2として、請求項1に記載する被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層に、平滑化処理を行なうことを特徴とする。これにより、基材、ガスバリア層、透明導電層の中のいずれか一つ以上に上記方法の平滑化処理がなされる。つまり、基材のみ、ガスバリア層のみ、透明導電層のみ、基材とガスバリア層の両方、基材と透明導電層の両方、ガスバリア層と透明導電層の両方、または基材とガスバリア層と透明導電層の全てに、平滑化処理がなされる。尚、平滑化処理が一つの物品の複層に行なわれれば、より均一な表面を有した物品が得られる。
【0008】
請求項3として、本発明の物品は、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなって、被加工物に該ガスクラスターイオンが照射されて、被加工物の少なくとも片面が平滑化処理される物品で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0009】
請求項4として、請求項3に記載する被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層が、平滑化処理されたことを特徴とする。これにより、基材、ガスバリア層、透明導電層の中のいずれか一つ以上に上記記載の平滑化処理がなされる。つまり、基材のみ、ガスバリア層のみ、透明導電層のみ、基材とガスバリア層の両方、基材と透明導電層の両方、ガスバリア層と透明導電層の両方、または基材とガスバリア層と透明導電層の全てに、平滑化処理がなされる。尚、平滑化処理が一つの物品の複層に行なわれれば、より均一な表面を有した物品が得られる。
【0010】
請求項5として、請求項3または4に記載する物品の平滑化処理された面は、最大高低差(P−V)が、500〜1nmであることを特徴とする。
また、請求項6として、請求項3または4に記載するガスバリア層が、透明無機酸化物であることを特徴とする。
請求項7として、請求項3または4に記載する透明導電層が、透明無機酸化物であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の平滑化処理方法を説明する概略図である。ソースチャンバー排気ポンプ13とメインチャンバー排気ポンプ14とによって作動排気されるソースチャンバー61とメインチャンバー62の2つの真空室を有している。ガスボンベより供給されたソースガス5を、超音速でノズル7より噴出させることによって、断熱膨張によりガスクラスターを形成する。生成したクラスターはスキマー8を通過させ、ビーム形状を整えてイオン化部10に供給される。このイオン化部10では、フィラメント9による電子衝突により、ガスクラスターがイオン化される。この際に、加速部11において、電界によりクラスターは加速される。ガスクラスターイオンは、減速電界部12での減速電界によりクラスターの大きさが選別され、さらに加速部15において加速されて、高電圧を印加した被加工物4へ照射される。被加工物4ヘ照射されたガスクラスターイオンは被加工物4との衝突で壊れ、その際クラスター構成原子または分子および被加工物構成原子または分子と多体衝突が生じ、被加工物4表面に対して水平方向への運動が顕著になり、その結果、被加工物4表面に対して横方向の切削が可能となる。さらに被加工物4表面を横方向に粒子が運動することにより、表面の凸部17が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨が得られることになる。
【0012】
尚、図1で示した被加工物4は、プラスチックフィルム基材であり、柔軟性を有しており、供給ロール18から巻上ロール19へ巻き取られる連続状の形態をとっている。その供給ロール18と巻上ロール19との間に、円柱状のドラム形状の定盤16が配置され、その定盤16の外周面にプラスチックフィルム基材の被加工物4を密着させて配置している。そのドラム形状の定盤16の上で、被加工物4の表面にガスクラスターイオンを照射して、平滑化処理を行ない、被加工物4が供給ロール18から巻上ロール19へ巻き取る動作により、矢印のように搬送して、平滑化処理が連続的に行なわれる。
【0013】
図2は、本発明の平滑化処理方法を説明する他の概略図である。ソースチャンバー排気ポンプ13とメインチャンバー排気ポンプ14とによって作動排気されるソースチャンバー61とメインチャンバー62の2つの真空室を有している。ガスボンベより供給されたソースガス5を、超音速でノズル7より噴出させることによって、断熱膨張によりガスクラスターを形成する。生成したクラスターはスキマー8を通過させ、ビーム形状を整えてイオン化部10に供給される。このイオン化部10では、フィラメント9による電子衝突により、ガスクラスターがイオン化される。この際に、加速部11において、電界によりクラスターは加速される。ガスクラスターイオンは、減速電界部12での減速電界によりクラスターの大きさが選別され、さらに加速部15において加速されて、高電圧を印加した被加工物4へ照射される。被加工物4ヘ照射されたガスクラスターイオンは被加工物4との衝突で壊れ、その際クラスター構成原子または分子および被加工物構成原子または分子と多体衝突が生じ、被加工物4表面に対して水平方向への運動が顕著になり、その結果、被加工物4表面に対して横方向の切削が可能となる。さらに被加工物4表面を横方向に粒子が運動することにより、表面の凸部17が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨が得られる。
【0014】
尚、図2で示した被加工物4は、枚葉のシート基材であり、表面が平面である定盤16の上に被加工物4が密着して配置され、その定盤16の上で、被加工物4の表面にガスクラスターイオンを照射して、平滑化処理を行なう。そして、被加工物4が、矢印の方向に搬送されることで、平滑化処理が連続的に行なわれる。
【0015】
図3は、本発明の物品の一つの実施形態である概略断面図である。基材1の一方の面20にガスバリア層2が積層されたものである。その基材1の一方の面16は、予め本発明のガスクラスターイオンを照射して平滑化処理する方法で、平滑化されている。但し、この構成で、基材1とガスバリア層2の両方とも、本発明の平滑化処理を行なうことも可能であり、また基材1を平滑化処理せず、ガスバリア層のみ上記平滑化処理を行なうことも可能である。
図4は、本発明の物品の他の実施形態である概略断面図であり、基材1の一方の面20にガスバリア層2、透明導電層3が積層されたものである。その基材1の一方の面20は、予め本発明のガスクラスターイオンを照射して平滑化処理する方法で、平滑化されている。但し、この構成で、基材1とガスバリア層2の2層、基材1と透明導電層3の2層、また基材1を平滑化処理せず、ガスバリア層2と透明導電層3の2層に対し、上記平滑化処理を行なうことも可能であり、またガスバリア層のみ、透明導電層3のみに上記平滑化処理を行なうことも可能である。さらに、基材1、ガスバリア層2、透明導電層3の3層全てに対し、上記平滑化処理を行なうことも可能である。
【0016】
(平滑化処理方法)
本発明の平滑化処理方法は、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つである。ガスクラスターイオン照射による方法により、被加工物の表面を精密に切削加工して、平坦化、平滑化の処理を行なう。
【0017】
本発明の平滑化処理方法で用いる超精密切削加工装置(プラズマCVM加工装置)は、例えば、図1を参照して説明すると、ソースチャンバー排気ポンプ13とメインチャンバー排気ポンプ14とによって作動排気されるソースチャンバー61とメインチャンバー62の2つの真空室を有している。
ガスボンベより供給されたソースガス5を、超音速でノズル7より噴出させることによって、断熱膨張によりガスクラスターを形成する。生成したクラスターはスキマー8を通過させ、ビーム形状を整えてイオン化部10に供給される。このイオン化部10では、フィラメント9による電子衝突によりイオン化される。この際に、加速部11において、電界によりクラスターは加速される。ガスクラスターイオンは、減速電界部12での減速電界によりクラスターの大きさが選別され、さらに加速部15において加速されて高電圧を印加した被加工物4へ照射される。被加工物4ヘ照射されたガスクラスターイオンは被加工物4との衝突で壊れ、その際クラスター構成原子または分子および被加工物構成原子または分子と多体衝突が生じ、被加工物表面に対して水平方向への運動が顕著になり、その結果、被加工物表面に対して横方向の切削が可能となる。さらに被加工物表面を横方向に粒子が運動することにより、表面の凸部17が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨が得られることになる。
【0018】
導入するソースガスとしては、不活性ガス、たとえばアルゴンや、窒素ガス、酸素ガス等の他、化合物の炭酸ガス等、必要に応じて1種または2種以上のガスを単独にあるいは混合して使用することができる。ソースガス圧力については、一般的にはこれを適宜に選択することができるが、この圧力を高くするとクラスターサイズが大きくなり、またクラスターの発生個数も大きくなるため研磨効果や効率を高めることができる。また、スキマーによりクラスターのビーム形状は例えば円形に整えることができる。さらに差動排気による加工室内を真空に保つためのコンダクタンスをもたせることもできる。
加速電圧は、これを高くすると、クラスターイオンの持つエネルギーが大きくなり、研磨効果を高めるが、適切な値を超えると研磨加工表面が粗くなる傾向になる。このため、被加工物との関係において適切に選択される。イオン化電圧が低い場合には、電子衝撃のための電子が十分に引き出されず、クラスターのイオン化が十分に起こらない。また、高すぎる場合にはイオン化が進みすぎ、クラスターがクーロン力で分割され、結果としてクラスター量が減少する。このため、イオン化電圧は、通常は、ガスの種類によっても異なるが、数10V〜数100V程度とするのが好ましい。
【0019】
クラスターサイズは減速電界により選別することが可能である。もちろん、サイズの異なるクラスターの他、クラスター状になってないモノマーイオンを単独に使用してもよいし、またクラスターとモノマーの混合照射を行ってもよい。これらの諸条件を適宜に選択して被加工物としての固体表面を超精密研磨する。
被加工物について、この発明の方法により平滑化処理された表面は、たとえば表面粗さは、原子レベルサイズにまで向上する。また、ガスクラスターイオンビームは、イオンの持つエネルギーが通常のイオンエッチングと異なってより低いため、被加工表面に損傷を与えることなく、所要の超精密研磨を可能とする。
なお、ガスクラスターイオンビームの被加工物表面への照射では、通常は、その表面に対して略垂直方向から照射するのが好ましい。また、被加工物表面とクラスターイオン照射部との距離や加工表面範囲についても適宜に選択することができる。
【0020】
本発明の平滑化処理方法は、基材として、基板や、枚葉状のシート品でも、図1に示すようなロール状に巻き上げられた長尺品でも、いずれでも使用できる。ロール状に巻き上げられた長尺品の方を用い、供給ロールから巻上ロールへ巻き取る方向へ、基材を搬送させ、ガスクラスターイオン照射による被加工物表面の切削加工を連続的に行なうことが、大量生産しやすく、効率的で、便利なため好ましい。
【0021】
(物品)
以下、本発明の物品を構成する各層の説明を行なう。
(基材)
本発明の物品における基材1は、ガスバリア層を保持することができるものであれば特に限定されるものではなく、いかなるものでも用いることができる。
具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、・ポリイミド(PI)樹脂、・ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、・ポリサルホン(PS)樹脂、・ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、・ポリカーボネート(PC)樹脂、・ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、・ポリアリレート(PAR)樹脂、・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、等からなるプラスチックのフィルムやシートの基材を用いることができる。
【0022】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物からなる樹脂組成物や、前記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物からなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材として用いることも可能である。
前記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0023】
上記のプラスチック基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明では基材として、ガラス基板単独や、ガラス基板上にシリカ(SiO2)等の金属酸化物の薄膜を形成したものも使用することができる。
【0024】
基材は、枚葉状のシート品でも、図1に示すようなロール状に巻き上げられた長尺品でも、いずれでも使用できる。但し、ロール状に巻き上げられた長尺品の方が、本発明の平滑化処理方法で連続的に処理して、大量生産しやすく、効率的で、便利である。
基材の厚さは、得られるガスバリア物品の用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。また、ガラス基板では数μm〜数cm単位の厚みのものまで使用することができる。
本発明の物品は、上記の平滑化処理方法により、少なくとも片面を平滑化処理し、その処理された面は、最大高低差(P−V、Peak−Valley)が、500〜1nmであることが望ましい。
【0025】
(ガスバリア層)
本発明の物品は基材上に、ガスバリア層を設ける。ガスバリア層2は、従来から用いられているガスバリア層が使用でき、特に無機酸化物から構成される透明性を有するものが好ましい。透明性を有する無機酸化物のガスバリア層としては、基本的に金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜であれば使用可能であり、例えば、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を使用することができる。而して、包装用材料等に適するものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を挙げることができる。而して、上記の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiOX、AiOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる。)で表される。
【0026】
また、上記Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、包装用材料としては、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0027】
本発明において、上記のような無機酸化物のガスバリア層の膜厚としては、使用する金属、または金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜5000Å位、好ましくは、100〜2000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。また、本発明においては、無機酸化物のガスバリア層としては、無機酸化物の薄膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した積層体の状態でもよく、また、使用する金属、または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の膜を構成することもできる。
次に、本発明において、基材の上に、ガスバリア層を形成する方法について説明すると、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0028】
(透明導電層)
本発明の物品で形成する透明導電層3は、図4に示すように基材上に、ガスバリア層、透明導電層の順に形成したり、あるいは基材上に透明導電層、ガスバリア層の順に形成したりすることができる。
透明導電層を本発明の物品で設けた場合、例えば、電子デバイスの部材として、透明電極として利用することができ、またその透明性と導電性や熱線反射性・高屈折率性等の物性を利用した他の用途にも使用することができる。
【0029】
透明導電層は、透明性を有する無機酸化物から構成することができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛、酸化第2スズ等あるいは、酸化チタン等の高屈折率無機酸化物の間に金、銀、銅等の金属薄膜を挟みこんだことで一般的に知られている導電材料を用いて、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法、めっき法、印刷法等で形成することができる。但し、湿気排除等の点から、真空成膜法が好ましい。
透明導電層は、その膜厚は、200〜8000Å程度で形成することができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
基材として、東洋紡績製100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(グレ−ド:E−5101)を用いた。
上記基材自体を被加工物として、チャンバー内に配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の表面を平滑化処理する機械として、エピオン社製「ウリトラスムーザー」を使用して(図2を参照)、平坦化されたプラスチックフィルムを得た。
上記の平滑化処理の機械を使用する条件として、以下のようにした。
クラスターガス:CO2(30sccm)
加速電圧:10kV
イオン電流:200nA
照射時間:30分
【0031】
(実施例2)
実施例1で得られた平坦なプラスチックフィルム上に、SiOXのガスバリア性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。ガスバリア層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン30ccm
導入ガス:酸素10sccm
ガスバリア層の膜厚:100nm
【0032】
(実施例3)
実施例2で得られたガスバリア性フィルム上に、ITOの透明導電性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。透明導電層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン100ccm
導入ガス:酸素10sccm
透明導電層の膜厚:150nm
【0033】
(比較例1)
実施例1と同じ、基材として、東洋紡績製100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(グレ−ド:E−5101)を準備した。しかし、実施例1のような平坦化処理を行なわなかった。
【0034】
(比較例2)
比較例1で得られたプラスチックフィルム上に、SiOXのガスバリア性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。ガスバリア層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン30ccm
導入ガス:酸素10sccm
ガスバリア層の膜厚:100nm
【0035】
(比較例3)
比較例2で得られたガスバリア性フィルム上に、ITOの透明導電性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。透明導電層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン100ccm
導入ガス:酸素10sccm
透明導電層の膜厚:150nm
【0036】
上記の実施例及び比較例で得られた各物品に対し、最表面(実施例1は基材の平滑化処理面、実施例2はガスバリア層表面、実施例3は透明導電層表面、比較例1は平滑化処理されていない基材表面、比較例2はガスバリア層表面、比較例3は透明導電層表面)の最大高低差(P−V)、さらに得られた物品(基材上にバリア層や透明導電層を設けたもの)の酸素透過率、水蒸気透過率、シート抵抗値を以下の条件にて測定した。
【0037】
(測定条件)
1)P−V値:原子間力顕微鏡(セイコ−製ナノピクス)を用い、100μmのスキャニング範囲にて、最大高低差(P−V)を測定した。
2)酸素透過率:MOCON社製酸素透過率測定装置(オキシトラン2/20)を用い、23℃90%Rhの条件で測定した。
3)水蒸気透過率:MOCON社製水蒸気透過率測定装置(パ−マトラン3/31)を用い、40℃100%Rhの条件で測定した。
4)シート抵抗値:表面電気抵抗率測定装置(三菱油化製ロレスタAP)を用い4探針法で測定した。
【0038】
測定結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0039】
上記結果より、実施例1の基材表面は、本発明のガスクラスターイオン照射により、平滑化処理されているため、P−V値が1〜500nmの範囲内であった。しかし、比較例1の基材表面はガスクラスターイオン照射による平滑化処理されていないため、P−V値が1〜500nmの範囲外であった。
また、酸素透過率において、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3で比べ、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理しているか、処理していないかの違いで、その基材上に設けたガスバリア層を設けた場合、さらに透明導電層を設けた場合の両方で、平滑化処理している基材では、平滑化処理していない基材を用いた場合に対して、5/8〜1/5の酸素透過率となり、実施例のガスバリア性の高さが出ている。
【0040】
また、水蒸気透過率において、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3で比べ、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理しているか、処理していないかの違いで、その基材上に設けたガスバリア層を設けた場合、さらに透明導電層を設けた場合の両方で、平滑化処理している基材では、平滑化処理していない基材を用いた場合に対して、1/5〜1/2の水蒸気透過率となり、実施例のガスバリア性の高さが出ている。
さらに、実施例3と比較例3の基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したもので、シート抵抗値を比べると、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理したものを使用した実施例3の物品は、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理していないものを使用した比較例3と比べ、抵抗値が2/3となって、低抵抗値の特性が得られている。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理する方法で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであり、被加工物表面の凹凸が低減され、表面平滑性が向上した物品が得られる。ガスクラスターイオンを用いるため、原子レベルでの精密研磨が可能で、イオンの持つエネルギーが通常のイオンエッチングと異なり低いため、低損傷での研磨が可能となる。
またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成でき、ガスバリア性が高く、さらに透明導電層を形成すれば、均一な透明導電層が得られ、低抵抗値が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平滑化処理方法を説明する概略図である。
【図2】本発明の平滑化処理方法を説明する他の概略図である。
【図3】本発明の物品の一つの実施形態である概略断面図である。
【図4】本発明の物品の他の実施形態である概略断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 ガスバリア層
3 透明導電層
4 被加工物
5 ガス
6 チャンバー
7 ノズル
8 スキマー
9 フィラメント
10 イオン化部
11 加速部
12 減速電界部
13 排気ポンプ(ソースチャンバー)
14 排気ポンプ(メインチャンバー)
15 加速部
16 定盤
17 凸部
18 供給ロール
19 巻上ロール
20 平滑化処理面
61 ソースチャンバー
62 メインチャンバー
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の包装材料や、電子デバイスの部材に有用であるプラスチックフィルムや、ガラス基板やガラス基板上に薄膜を形成した物品に関し、特にそれらの物品表面の凹凸が低減され、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成できる、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品等の包装材料には、特に柔軟性を有したプラスチックフィルム基材を使用した軟包装用材料には、内容物の品質を劣化させる要因である酸素・水蒸気の影響を防ぐために、ガスバリア膜(層)が形成されている。しかしながら、プラスチックフィルム表面の凹凸により、ガスバリア層は十分にその表面を被覆することができず、十分なガスバリア特性を得ることができなかった。
【0003】
液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルは、電子デバイス用基板として、従来はガラス基板を用いていた。昨今、軽量化・フレキシブル化・低コスト化によりプラスチック基板が検討されている。しかしながら、プラスチック基板はガラスに比較し、ガス透過率が大きい。したがって、プラスチック基板上に形成されている素子は酸素や水蒸気に触れ、劣化してしまうという問題が生じた。
これまで、ガスバリア層をプラスチック表面に形成することで、対策をおこなったが十分とはいえない。たとえば有機ELで問題となっているダークスポットは、プラスチック基板の凹凸に起因する突起により酸素・水蒸気ガスが透過し、その部分がショートし、発生する。
【0004】
さて、各種の金属や金属ガラスやセラミックスからなる金型表面を研磨したり、半導体、その他電子デバイスの基板表面の平坦化や、表面の不純物を除去して清浄化する技術として、特開平8−120470、特開平8−293483等に記載しているガスクラスターイオンビーム法(GCIB法)による固体表面の研磨方法がある。
上記のGCIB法は、金属、セラミックスの金型表面の加工や、ガラス基板やSi基板の基板自体と、その基板上に設けた金属薄膜の表面を平坦化させる方法であり、未だ有機材料のプラスチックフィルムやシリカ(SiO2)等の金属酸化物の薄膜に対し、精密加工する技術として確立されたものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、プラスチックフィルム基材やプラスチックフィルム基材上に薄膜を形成した物品、及びガラス基板上に金属酸化物の薄膜を形成した物品において、それらの物品表面の凹凸を低減し、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成でき、また発光特性を劣化させるような突起をなくし、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1として、本発明の平滑化処理方法は、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする。上記は被加工物の表面が上記方法で平滑化処理される。
【0007】
請求項2として、請求項1に記載する被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層に、平滑化処理を行なうことを特徴とする。これにより、基材、ガスバリア層、透明導電層の中のいずれか一つ以上に上記方法の平滑化処理がなされる。つまり、基材のみ、ガスバリア層のみ、透明導電層のみ、基材とガスバリア層の両方、基材と透明導電層の両方、ガスバリア層と透明導電層の両方、または基材とガスバリア層と透明導電層の全てに、平滑化処理がなされる。尚、平滑化処理が一つの物品の複層に行なわれれば、より均一な表面を有した物品が得られる。
【0008】
請求項3として、本発明の物品は、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなって、被加工物に該ガスクラスターイオンが照射されて、被加工物の少なくとも片面が平滑化処理される物品で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする。
【0009】
請求項4として、請求項3に記載する被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層が、平滑化処理されたことを特徴とする。これにより、基材、ガスバリア層、透明導電層の中のいずれか一つ以上に上記記載の平滑化処理がなされる。つまり、基材のみ、ガスバリア層のみ、透明導電層のみ、基材とガスバリア層の両方、基材と透明導電層の両方、ガスバリア層と透明導電層の両方、または基材とガスバリア層と透明導電層の全てに、平滑化処理がなされる。尚、平滑化処理が一つの物品の複層に行なわれれば、より均一な表面を有した物品が得られる。
【0010】
請求項5として、請求項3または4に記載する物品の平滑化処理された面は、最大高低差(P−V)が、500〜1nmであることを特徴とする。
また、請求項6として、請求項3または4に記載するガスバリア層が、透明無機酸化物であることを特徴とする。
請求項7として、請求項3または4に記載する透明導電層が、透明無機酸化物であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の平滑化処理方法を説明する概略図である。ソースチャンバー排気ポンプ13とメインチャンバー排気ポンプ14とによって作動排気されるソースチャンバー61とメインチャンバー62の2つの真空室を有している。ガスボンベより供給されたソースガス5を、超音速でノズル7より噴出させることによって、断熱膨張によりガスクラスターを形成する。生成したクラスターはスキマー8を通過させ、ビーム形状を整えてイオン化部10に供給される。このイオン化部10では、フィラメント9による電子衝突により、ガスクラスターがイオン化される。この際に、加速部11において、電界によりクラスターは加速される。ガスクラスターイオンは、減速電界部12での減速電界によりクラスターの大きさが選別され、さらに加速部15において加速されて、高電圧を印加した被加工物4へ照射される。被加工物4ヘ照射されたガスクラスターイオンは被加工物4との衝突で壊れ、その際クラスター構成原子または分子および被加工物構成原子または分子と多体衝突が生じ、被加工物4表面に対して水平方向への運動が顕著になり、その結果、被加工物4表面に対して横方向の切削が可能となる。さらに被加工物4表面を横方向に粒子が運動することにより、表面の凸部17が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨が得られることになる。
【0012】
尚、図1で示した被加工物4は、プラスチックフィルム基材であり、柔軟性を有しており、供給ロール18から巻上ロール19へ巻き取られる連続状の形態をとっている。その供給ロール18と巻上ロール19との間に、円柱状のドラム形状の定盤16が配置され、その定盤16の外周面にプラスチックフィルム基材の被加工物4を密着させて配置している。そのドラム形状の定盤16の上で、被加工物4の表面にガスクラスターイオンを照射して、平滑化処理を行ない、被加工物4が供給ロール18から巻上ロール19へ巻き取る動作により、矢印のように搬送して、平滑化処理が連続的に行なわれる。
【0013】
図2は、本発明の平滑化処理方法を説明する他の概略図である。ソースチャンバー排気ポンプ13とメインチャンバー排気ポンプ14とによって作動排気されるソースチャンバー61とメインチャンバー62の2つの真空室を有している。ガスボンベより供給されたソースガス5を、超音速でノズル7より噴出させることによって、断熱膨張によりガスクラスターを形成する。生成したクラスターはスキマー8を通過させ、ビーム形状を整えてイオン化部10に供給される。このイオン化部10では、フィラメント9による電子衝突により、ガスクラスターがイオン化される。この際に、加速部11において、電界によりクラスターは加速される。ガスクラスターイオンは、減速電界部12での減速電界によりクラスターの大きさが選別され、さらに加速部15において加速されて、高電圧を印加した被加工物4へ照射される。被加工物4ヘ照射されたガスクラスターイオンは被加工物4との衝突で壊れ、その際クラスター構成原子または分子および被加工物構成原子または分子と多体衝突が生じ、被加工物4表面に対して水平方向への運動が顕著になり、その結果、被加工物4表面に対して横方向の切削が可能となる。さらに被加工物4表面を横方向に粒子が運動することにより、表面の凸部17が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨が得られる。
【0014】
尚、図2で示した被加工物4は、枚葉のシート基材であり、表面が平面である定盤16の上に被加工物4が密着して配置され、その定盤16の上で、被加工物4の表面にガスクラスターイオンを照射して、平滑化処理を行なう。そして、被加工物4が、矢印の方向に搬送されることで、平滑化処理が連続的に行なわれる。
【0015】
図3は、本発明の物品の一つの実施形態である概略断面図である。基材1の一方の面20にガスバリア層2が積層されたものである。その基材1の一方の面16は、予め本発明のガスクラスターイオンを照射して平滑化処理する方法で、平滑化されている。但し、この構成で、基材1とガスバリア層2の両方とも、本発明の平滑化処理を行なうことも可能であり、また基材1を平滑化処理せず、ガスバリア層のみ上記平滑化処理を行なうことも可能である。
図4は、本発明の物品の他の実施形態である概略断面図であり、基材1の一方の面20にガスバリア層2、透明導電層3が積層されたものである。その基材1の一方の面20は、予め本発明のガスクラスターイオンを照射して平滑化処理する方法で、平滑化されている。但し、この構成で、基材1とガスバリア層2の2層、基材1と透明導電層3の2層、また基材1を平滑化処理せず、ガスバリア層2と透明導電層3の2層に対し、上記平滑化処理を行なうことも可能であり、またガスバリア層のみ、透明導電層3のみに上記平滑化処理を行なうことも可能である。さらに、基材1、ガスバリア層2、透明導電層3の3層全てに対し、上記平滑化処理を行なうことも可能である。
【0016】
(平滑化処理方法)
本発明の平滑化処理方法は、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つである。ガスクラスターイオン照射による方法により、被加工物の表面を精密に切削加工して、平坦化、平滑化の処理を行なう。
【0017】
本発明の平滑化処理方法で用いる超精密切削加工装置(プラズマCVM加工装置)は、例えば、図1を参照して説明すると、ソースチャンバー排気ポンプ13とメインチャンバー排気ポンプ14とによって作動排気されるソースチャンバー61とメインチャンバー62の2つの真空室を有している。
ガスボンベより供給されたソースガス5を、超音速でノズル7より噴出させることによって、断熱膨張によりガスクラスターを形成する。生成したクラスターはスキマー8を通過させ、ビーム形状を整えてイオン化部10に供給される。このイオン化部10では、フィラメント9による電子衝突によりイオン化される。この際に、加速部11において、電界によりクラスターは加速される。ガスクラスターイオンは、減速電界部12での減速電界によりクラスターの大きさが選別され、さらに加速部15において加速されて高電圧を印加した被加工物4へ照射される。被加工物4ヘ照射されたガスクラスターイオンは被加工物4との衝突で壊れ、その際クラスター構成原子または分子および被加工物構成原子または分子と多体衝突が生じ、被加工物表面に対して水平方向への運動が顕著になり、その結果、被加工物表面に対して横方向の切削が可能となる。さらに被加工物表面を横方向に粒子が運動することにより、表面の凸部17が主に削られ原子サイズでの平坦な超精密研磨が得られることになる。
【0018】
導入するソースガスとしては、不活性ガス、たとえばアルゴンや、窒素ガス、酸素ガス等の他、化合物の炭酸ガス等、必要に応じて1種または2種以上のガスを単独にあるいは混合して使用することができる。ソースガス圧力については、一般的にはこれを適宜に選択することができるが、この圧力を高くするとクラスターサイズが大きくなり、またクラスターの発生個数も大きくなるため研磨効果や効率を高めることができる。また、スキマーによりクラスターのビーム形状は例えば円形に整えることができる。さらに差動排気による加工室内を真空に保つためのコンダクタンスをもたせることもできる。
加速電圧は、これを高くすると、クラスターイオンの持つエネルギーが大きくなり、研磨効果を高めるが、適切な値を超えると研磨加工表面が粗くなる傾向になる。このため、被加工物との関係において適切に選択される。イオン化電圧が低い場合には、電子衝撃のための電子が十分に引き出されず、クラスターのイオン化が十分に起こらない。また、高すぎる場合にはイオン化が進みすぎ、クラスターがクーロン力で分割され、結果としてクラスター量が減少する。このため、イオン化電圧は、通常は、ガスの種類によっても異なるが、数10V〜数100V程度とするのが好ましい。
【0019】
クラスターサイズは減速電界により選別することが可能である。もちろん、サイズの異なるクラスターの他、クラスター状になってないモノマーイオンを単独に使用してもよいし、またクラスターとモノマーの混合照射を行ってもよい。これらの諸条件を適宜に選択して被加工物としての固体表面を超精密研磨する。
被加工物について、この発明の方法により平滑化処理された表面は、たとえば表面粗さは、原子レベルサイズにまで向上する。また、ガスクラスターイオンビームは、イオンの持つエネルギーが通常のイオンエッチングと異なってより低いため、被加工表面に損傷を与えることなく、所要の超精密研磨を可能とする。
なお、ガスクラスターイオンビームの被加工物表面への照射では、通常は、その表面に対して略垂直方向から照射するのが好ましい。また、被加工物表面とクラスターイオン照射部との距離や加工表面範囲についても適宜に選択することができる。
【0020】
本発明の平滑化処理方法は、基材として、基板や、枚葉状のシート品でも、図1に示すようなロール状に巻き上げられた長尺品でも、いずれでも使用できる。ロール状に巻き上げられた長尺品の方を用い、供給ロールから巻上ロールへ巻き取る方向へ、基材を搬送させ、ガスクラスターイオン照射による被加工物表面の切削加工を連続的に行なうことが、大量生産しやすく、効率的で、便利なため好ましい。
【0021】
(物品)
以下、本発明の物品を構成する各層の説明を行なう。
(基材)
本発明の物品における基材1は、ガスバリア層を保持することができるものであれば特に限定されるものではなく、いかなるものでも用いることができる。
具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、・ポリイミド(PI)樹脂、・ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、・ポリサルホン(PS)樹脂、・ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、・ポリカーボネート(PC)樹脂、・ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、・ポリアリレート(PAR)樹脂、・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、等からなるプラスチックのフィルムやシートの基材を用いることができる。
【0022】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物からなる樹脂組成物や、前記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物からなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材として用いることも可能である。
前記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0023】
上記のプラスチック基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明では基材として、ガラス基板単独や、ガラス基板上にシリカ(SiO2)等の金属酸化物の薄膜を形成したものも使用することができる。
【0024】
基材は、枚葉状のシート品でも、図1に示すようなロール状に巻き上げられた長尺品でも、いずれでも使用できる。但し、ロール状に巻き上げられた長尺品の方が、本発明の平滑化処理方法で連続的に処理して、大量生産しやすく、効率的で、便利である。
基材の厚さは、得られるガスバリア物品の用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。また、ガラス基板では数μm〜数cm単位の厚みのものまで使用することができる。
本発明の物品は、上記の平滑化処理方法により、少なくとも片面を平滑化処理し、その処理された面は、最大高低差(P−V、Peak−Valley)が、500〜1nmであることが望ましい。
【0025】
(ガスバリア層)
本発明の物品は基材上に、ガスバリア層を設ける。ガスバリア層2は、従来から用いられているガスバリア層が使用でき、特に無機酸化物から構成される透明性を有するものが好ましい。透明性を有する無機酸化物のガスバリア層としては、基本的に金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜であれば使用可能であり、例えば、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を使用することができる。而して、包装用材料等に適するものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を挙げることができる。而して、上記の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiOX、AiOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる。)で表される。
【0026】
また、上記Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、包装用材料としては、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0027】
本発明において、上記のような無機酸化物のガスバリア層の膜厚としては、使用する金属、または金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜5000Å位、好ましくは、100〜2000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。また、本発明においては、無機酸化物のガスバリア層としては、無機酸化物の薄膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した積層体の状態でもよく、また、使用する金属、または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の膜を構成することもできる。
次に、本発明において、基材の上に、ガスバリア層を形成する方法について説明すると、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0028】
(透明導電層)
本発明の物品で形成する透明導電層3は、図4に示すように基材上に、ガスバリア層、透明導電層の順に形成したり、あるいは基材上に透明導電層、ガスバリア層の順に形成したりすることができる。
透明導電層を本発明の物品で設けた場合、例えば、電子デバイスの部材として、透明電極として利用することができ、またその透明性と導電性や熱線反射性・高屈折率性等の物性を利用した他の用途にも使用することができる。
【0029】
透明導電層は、透明性を有する無機酸化物から構成することができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛、酸化第2スズ等あるいは、酸化チタン等の高屈折率無機酸化物の間に金、銀、銅等の金属薄膜を挟みこんだことで一般的に知られている導電材料を用いて、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法、めっき法、印刷法等で形成することができる。但し、湿気排除等の点から、真空成膜法が好ましい。
透明導電層は、その膜厚は、200〜8000Å程度で形成することができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
基材として、東洋紡績製100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(グレ−ド:E−5101)を用いた。
上記基材自体を被加工物として、チャンバー内に配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の表面を平滑化処理する機械として、エピオン社製「ウリトラスムーザー」を使用して(図2を参照)、平坦化されたプラスチックフィルムを得た。
上記の平滑化処理の機械を使用する条件として、以下のようにした。
クラスターガス:CO2(30sccm)
加速電圧:10kV
イオン電流:200nA
照射時間:30分
【0031】
(実施例2)
実施例1で得られた平坦なプラスチックフィルム上に、SiOXのガスバリア性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。ガスバリア層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン30ccm
導入ガス:酸素10sccm
ガスバリア層の膜厚:100nm
【0032】
(実施例3)
実施例2で得られたガスバリア性フィルム上に、ITOの透明導電性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。透明導電層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン100ccm
導入ガス:酸素10sccm
透明導電層の膜厚:150nm
【0033】
(比較例1)
実施例1と同じ、基材として、東洋紡績製100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(グレ−ド:E−5101)を準備した。しかし、実施例1のような平坦化処理を行なわなかった。
【0034】
(比較例2)
比較例1で得られたプラスチックフィルム上に、SiOXのガスバリア性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。ガスバリア層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン30ccm
導入ガス:酸素10sccm
ガスバリア層の膜厚:100nm
【0035】
(比較例3)
比較例2で得られたガスバリア性フィルム上に、ITOの透明導電性薄膜を真空形成した。
真空薄膜形成機としてアネルバ製スパッタ成膜装置を使用した。透明導電層の形成条件は、以下のようにした。
成膜圧力:0.25Pa
成膜投入電力:2kW(0.5A、4kW)
プラズマガス:アルゴン100ccm
導入ガス:酸素10sccm
透明導電層の膜厚:150nm
【0036】
上記の実施例及び比較例で得られた各物品に対し、最表面(実施例1は基材の平滑化処理面、実施例2はガスバリア層表面、実施例3は透明導電層表面、比較例1は平滑化処理されていない基材表面、比較例2はガスバリア層表面、比較例3は透明導電層表面)の最大高低差(P−V)、さらに得られた物品(基材上にバリア層や透明導電層を設けたもの)の酸素透過率、水蒸気透過率、シート抵抗値を以下の条件にて測定した。
【0037】
(測定条件)
1)P−V値:原子間力顕微鏡(セイコ−製ナノピクス)を用い、100μmのスキャニング範囲にて、最大高低差(P−V)を測定した。
2)酸素透過率:MOCON社製酸素透過率測定装置(オキシトラン2/20)を用い、23℃90%Rhの条件で測定した。
3)水蒸気透過率:MOCON社製水蒸気透過率測定装置(パ−マトラン3/31)を用い、40℃100%Rhの条件で測定した。
4)シート抵抗値:表面電気抵抗率測定装置(三菱油化製ロレスタAP)を用い4探針法で測定した。
【0038】
測定結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0039】
上記結果より、実施例1の基材表面は、本発明のガスクラスターイオン照射により、平滑化処理されているため、P−V値が1〜500nmの範囲内であった。しかし、比較例1の基材表面はガスクラスターイオン照射による平滑化処理されていないため、P−V値が1〜500nmの範囲外であった。
また、酸素透過率において、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3で比べ、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理しているか、処理していないかの違いで、その基材上に設けたガスバリア層を設けた場合、さらに透明導電層を設けた場合の両方で、平滑化処理している基材では、平滑化処理していない基材を用いた場合に対して、5/8〜1/5の酸素透過率となり、実施例のガスバリア性の高さが出ている。
【0040】
また、水蒸気透過率において、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3で比べ、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理しているか、処理していないかの違いで、その基材上に設けたガスバリア層を設けた場合、さらに透明導電層を設けた場合の両方で、平滑化処理している基材では、平滑化処理していない基材を用いた場合に対して、1/5〜1/2の水蒸気透過率となり、実施例のガスバリア性の高さが出ている。
さらに、実施例3と比較例3の基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したもので、シート抵抗値を比べると、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理したものを使用した実施例3の物品は、基材表面をガスクラスターイオン照射により平滑化処理していないものを使用した比較例3と比べ、抵抗値が2/3となって、低抵抗値の特性が得られている。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理する方法で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであり、被加工物表面の凹凸が低減され、表面平滑性が向上した物品が得られる。ガスクラスターイオンを用いるため、原子レベルでの精密研磨が可能で、イオンの持つエネルギーが通常のイオンエッチングと異なり低いため、低損傷での研磨が可能となる。
またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成でき、ガスバリア性が高く、さらに透明導電層を形成すれば、均一な透明導電層が得られ、低抵抗値が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平滑化処理方法を説明する概略図である。
【図2】本発明の平滑化処理方法を説明する他の概略図である。
【図3】本発明の物品の一つの実施形態である概略断面図である。
【図4】本発明の物品の他の実施形態である概略断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 ガスバリア層
3 透明導電層
4 被加工物
5 ガス
6 チャンバー
7 ノズル
8 スキマー
9 フィラメント
10 イオン化部
11 加速部
12 減速電界部
13 排気ポンプ(ソースチャンバー)
14 排気ポンプ(メインチャンバー)
15 加速部
16 定盤
17 凸部
18 供給ロール
19 巻上ロール
20 平滑化処理面
61 ソースチャンバー
62 メインチャンバー
Claims (7)
- チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなり、被加工物に該ガスクラスターイオンを照射して、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする平滑化処理方法。
- 上記の被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層に、平滑化処理を行なうことを特徴とする請求項1に記載する平滑化処理方法。
- チャンバー内に被加工物を配置し、チャンバー内に加圧状態のガスを噴出させて、断熱膨張によりガスクラスターを形成し、形成されたガスクラスターが電子を照射され、ガスクラスターイオンとなって、被加工物に該ガスクラスターイオンが照射されて、被加工物の少なくとも片面が平滑化処理される物品で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする物品。
- 上記の被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層が、平滑化処理されたことを特徴とする請求項3に記載する物品。
- 前記の物品の平滑化処理された面は、最大高低差(P−V)が、500〜1nmであることを特徴とする請求項3または4に記載する物品。
- 前記のガスバリア層が、透明無機酸化物であることを特徴とする請求項3または4に記載する物品。
- 前記の透明導電層が、透明無機酸化物であることを特徴とする請求項3または4に記載する物品。
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- 2002-07-26 JP JP2002218728A patent/JP2004058415A/ja active Pending
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