JP2004050711A - 平滑化処理方法及びそれにより得られる物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギ−または光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、被加工物を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理する方法で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであり、被加工物表面の凹凸が低減され、表面平滑性が向上した物品が得られる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の包装材料や、電子デバイスの部材に有用であるプラスチックフィルムや、ガラス基板やガラス基板上に薄膜を形成した物品に関し、特にそれらの物品表面の凹凸が低減され、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成できる、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品等の包装材料には、特に柔軟性を有したプラスチックフィルム基材を使用した軟包装用材料には、内容物の品質を劣化させる要因である酸素・水蒸気の影響を防ぐために、ガスバリア膜(層)が形成されている。しかしながら、プラスチックフィルム表面の凹凸により、ガスバリア層は十分にその表面を被覆することができず、十分なガスバリア特性を得ることができなかった。
【0003】
液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルは、電子デバイス用基板として、従来はガラス基板を用いていた。昨今、軽量化・フレキシブル化・低コスト化によりプラスチック基板が検討されている。しかしながら、プラスチック基板はガラスに比較し、ガス透過率が大きい。したがって、プラスチック基板上に形成されている素子は酸素や水蒸気に触れ、劣化してしまうという問題が生じた。
これまで、ガスバリア層をプラスチック表面に形成することで、対策をおこなったが十分とはいえない。たとえば有機ELで問題となっているダークスポットは、プラスチック基板の凹凸に起因する突起により酸素・水蒸気ガスが透過し、その部分がショートし、発生する。
【0004】
さて、半導体デバイス用シリコンウエハや、X線用Siミラー、レーザー用タングステンミラー等の無機材料の表面の平滑化を行なう加工技術として、特開平1−125829、特開平5−234942、特開2001−44180等に記載された、高電圧を印加した電極により発生させた反応ガスに基く中性ラジカルを被加工物の加工面に供給し、この中性ラジカルと加工面を構成する原子又は分子とのラジカル反応によつて生成した揮発性物質を気化させて除去し、高精度に加工することが可能な無歪精密加工方法が開示されている。この加工方法は、プラズマCVM(Chemical Vapor Machining)法と言われている。
【0005】
上記のプラズマCVM法は、半導体デバイス用シリコンウエハや、X線用Siミラー、レーザー用タングステンミラー等の無機材料の難加工脆性材料の無歪切断、穿孔、研磨加工の精密加工であり、未だ有機材料のプラスチックフィルムやシリカ(SiO2)等の金属酸化物に対し、精密加工する技術として確立されたものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、プラスチックフィルム基材やプラスチックフィルム基材上に薄膜を形成した物品、及びガラス基板やガラス基板上に薄膜を形成した物品において、それらの物品表面の凹凸を低減し、またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成できる、表面が平滑な透明物品とその平滑化処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1として、本発明の平滑化処理方法は、被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギ−または光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、被加工物を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする。上記は被加工物の表面が上記方法で平滑化処理される。
【0008】
請求項2として、請求項1に記載する被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層に、平滑化処理を行なうことを特徴とする。これにより、基材、ガスバリア層、透明導電層の中のいずれか一つ以上に上記方法の平滑化処理がなされる。つまり、基材のみ、ガスバリア層のみ、透明導電層のみ、基材とガスバリア層の両方、基材と透明導電層の両方、ガスバリア層と透明導電層の両方、または基材とガスバリア層と透明導電層の全てに、平滑化処理がなされる。尚、平滑化処理が一つの物品の複層に行なわれれば、より均一な表面を有した物品が得られる。
【0009】
請求項3として、本発明の物品は、被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギーまたは光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、被加工物を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面が平滑化処理される物品で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする。
請求項4として、請求項3に記載する被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層が、平滑化処理されたことを特徴とする。これにより、基材、ガスバリア層、透明導電層の中のいずれか一つ以上に上記記載の平滑化処理がなされる。つまり、基材のみ、ガスバリア層のみ、透明導電層のみ、基材とガスバリア層の両方、基材と透明導電層の両方、ガスバリア層と透明導電層の両方、または基材とガスバリア層と透明導電層の全てに、平滑化処理がなされる。尚、平滑化処理が一つの物品の複層に行なわれれば、より均一な表面を有した物品が得られる。
【0010】
請求項5として、請求項3または4に記載する物品の平滑化処理された面は、最大高低差(P−V)が、500〜0.1nmであることを特徴とする。
また、請求項6として、請求項3または4に記載するガスバリア層が、透明無機酸化物であることを特徴とする。
請求項7として、請求項3または4に記載する透明導電層が、透明無機酸化物であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の平滑化処理方法を説明する概略図である。プラスチックフィルムの被加工物1が供給ロール8から巻上ロール9へ巻き取られる連続状の形態をとっている。その供給ロール8と巻上ロール9との間に、円柱状のドラム形状の定盤6が配置され、その定盤6の外周面にプラスチックフィルム1を密着させ、その定盤6の上にプラスチックフィルム1を介して、電極5が配置される。その電極5には反応ガスの供給口10があり、供給口10から高圧の反応ガスが被加工物であるプラスチックフィルム1表面に噴射される。その際に、被加工物であるプラスチックフィルム1と電極5間には電気エネルギーとして、電圧が印加される。すると、プラスチックフィルム1と電極5間のスペースSに、プラズマが発生し、プラスチックフィルム1の表面の凸部7を構成する原子または分子が揮発性物質に変化し、つまり凸部7が気化して除去され、プラスチックフィルム1の表面が平滑化される。この平滑化処理が行なわれるのは、反応容器4の中で行なわれ、反応容器4内は、反応ガスを含む雰囲気として密閉されている。
【0012】
図2は、本発明の平滑化処理方法を説明する他の概略図である。プラスチックフィルムの被加工物1が供給ロール8から巻上ロール9へ巻き取られる連続状の形態をとっている。その供給ロール8と巻上ロール9との間に、円柱状のドラム形状の定盤6が配置され、その定盤6の外周面にプラスチックフィルム1を密着させ、その定盤6の上にプラスチックフィルム1を介して、部材12が配置される。その部材12には光エネルギー11に対する入射口13が設けられ、その入射口13から光ファイバー15を経由して、射出口14が形成されている。部材12に光エネルギー11が加えられると、入射口13から光ファイバー15を通過して、射出口14から光エネルギーが被加工物のプラスチックフィルム1表面に照射される。その際に、被加工物であるプラスチックフィルム1と部材12との間のスペースSには、図示していないが、反応ガスが供給され、プラズマが発生し、プラスチックフィルム1の表面の凸部7を構成する原子または分子が揮発性物質に変化し、つまり凸部7が気化して除去され、プラスチックフィルム1の表面が平滑化される。この平滑化処理が行なわれるのは、反応容器4の中で行なわれ、反応容器4内は、反応ガスを含む雰囲気として密閉されている。
【0013】
図3は、本発明の物品の一つの実施形態である概略断面図である。プラスチックフィルム基材1の一方の面16にガスバリア層2が積層されたものである。そのプラスチックフィルム基材1の一方の面16は、予め反応ガスを含む雰囲気中に配置し、電気エネルギーまたは光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、プラスチックフィルム基材を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、平滑化処理されている。但し、この構成で、プラスチックフィルム基材1とガスバリア層2の両方とも、上記平滑化処理を行なうことも可能であり、またプラスチックフィルム基材1を平滑化処理せず、ガスバリア層のみ上記平滑化処理を行なうことも可能である。
図4は、本発明の物品の他の実施形態である概略断面図であり、プラスチックフィルム基材1の一方の面16にガスバリア層2、透明導電層3が積層されたものである。そのプラスチックフィルム基材1の一方の面16は、予め反応ガスを含む雰囲気中に配置し、電気エネルギーまたは光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、プラスチックフィルムを構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、平滑化処理されている。但し、この構成で、プラスチックフィルム基材1とガスバリア層2の2層、プラスチックフィルム基材1と透明導電層3の2層、またプラスチックフィルム基材1を平滑化処理せず、ガスバリア層2と透明導電層3の2層に対し、上記平滑化処理を行なうことも可能であり、またガスバリア層のみ、透明導電層3のみに上記平滑化処理を行なうことも可能である。さらに、プラスチックフィルム基材1、ガスバリア層2、透明導電層3の3層全てに対し、上記平滑化処理を行なうことも可能である。
【0014】
(平滑化処理方法)
本発明の平滑化処理方法は、プラスチックフィルム基材やプラスチックフィルム基材上に薄膜を形成した物品、及びガラス基板やガラス基板上に薄膜を形成した物品の被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギ−または光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、その時に配置した被加工物の表面を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するものである。プラズマCVM法により、被加工物の表面を精密に切削加工して、平坦化、平滑化の処理を行なう。
【0015】
本発明の平滑化処理方法で用いる超精密切削加工装置(プラズマCVM加工装置)は、例えば、図1を参照して説明すると、被加工物1と加工用電極5とを、被加工物材質によって決定される反応ガスの大気圧雰囲気中に配し、被加工物1と加工用電極5との間に高周波電力供給部によって直流電圧若しくは高周波電圧を印加して、加工用電極5と被加工物1との間に、大気圧に起因する局所領城プラズマを発生させる。プラズマCVM加工装置は、局所領城プラズマの発生に伴う反応ガスに基づく中性ラジカルを発生させ、中性ラジカルを被加工物1と化学反応させ、被加工物1の原子または分子を揮発性物質に変化させる事によって、被加工物1の原子または分子を除去する。
【0016】
詳細には、プラズマCVM加工装置では、加工用電極5の被加工物対向部形状を電界が分散する平面となし、更には加工用電極5の内部に、反応ガス供給口10によって供給された反応ガスを含む雰囲気気体を形成し、更に反応ガスを含む雰囲気気体を噴出する加工面側に開口した多数のガス噴出口を設け(図1ではガス噴出口は1個であるが、2個以上、多数設けることができる。)、ガス噴出口より加工用電極5と被加工物1との間の局所領域プラズマに反応ガスを含む雰囲気気体を噴出させる事により、平坦化及び平滑化を行っている。ここで加工用電極5と被加工物1との間隔dの調整を、加工用電極5若しくは被加工物1の一方を固定し、他方を被加工物走査試料台6に接続されたZステージを移動させることによって行い、あるいは反応ガス噴出口から噴出する雰囲気気体の動圧によって加工用電極を浮上させる事で実現できる。
【0017】
さらに加工用電極5は、反応ガス排出部に接続された反応ガス排出口を持ち、反応ガス排出口より被加工物1と反応ガスとの化学反応によって生じた反応生成物の除去を行なう。
被加工物1と加工用電極5との間に印加する電圧の強度は、被加工物の材質、表面状態等の条件により、決定する。被加工物の材質がプラズマCVM法で切削しにくいものであったり、表面の凸部の高さが大き目である場合、印加する電圧レベルを高めにする。
【0018】
上記のプラズマCVM加工装置は、被加工物に電気エネルギーを加えた例で、被加工物と電極との間に高電圧を加えたが、それに限定されず、被加工物に光エネルギーを加えて、プラズマを発生することができる。光エネルギーとしては、局所領城プラズマの発生に伴う反応ガスに基づく中性ラジカルを発生させることができれば、限定されるものではなく、例えば、レーザー、発光ダイオード、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ等を照射することが挙げられる。この際加えられる光エネルギーは、被加工物の材質、表面状態等により、露光距離、時間、強度を調整することにより適時選択して用いることができる。
本発明の平滑化処理方法で使用する反応ガスは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン系のガスにヘリウム、ネオン等の希ガスの不活性ガスを混合したものが用いられる。
【0019】
本発明の平滑化処理方法は、基材として、基板や、枚葉状のシート品でも、図1、2に示すようなロール状に巻き上げられた長尺品でも、いずれでも使用できる。ロール状に巻き上げられた長尺品の方を用い、供給ロールから巻上ロールへ巻き取る方向へ、基材を搬送させ、プラズマCVM法による基材表面の切削加工を連続的に行なうことが、大量生産しやすく、効率的で、便利なため好ましい
【0020】
(物品)
以下、本発明の物品を構成する各層の説明を行なう。
(基材)
本発明の物品における基材1は、ガスバリア層を保持することができるものであれば特に限定されるものではなく、いかなるものでも用いることができる。
【0021】
具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、・ポリイミド(PI)樹脂、・ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、・ポリサルホン(PS)樹脂、・ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、・ポリカーボネート(PC)樹脂、・ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、・ポリアリレート(PAR)樹脂、・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、等からなるプラスチックのフィルムやシートの基材を用いることができる。
【0022】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物からなる樹脂組成物や、前記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物からなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材として用いることも可能である。
前記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0023】
上記のプラスチック基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明では基材として、ガラス基板単独や、ガラス基板上に薄膜を形成したものも使用することができる。
【0024】
基材は、枚葉状のシート品でも、図1、2に示すようなロール状に巻き上げられた長尺品でも、いずれでも使用できる。但し、ロール状に巻き上げられた長尺品の方が、本発明の平滑化処理方法で連続的に処理して、大量生産しやすく、効率的で、便利である。
基材の厚さは、得られるガスバリア物品の用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。また、ガラス基板では数μm〜数cm単位の厚みのものまで使用することができる。
本発明の物品は、上記の平滑化処理方法により、少なくとも片面を平滑化処理し、その処理された面は、最大高低差(P−V、Peak−Valley)が、500〜0.1nmであることが望ましい。
【0025】
(ガスバリア層)
本発明の物品は基材上に、ガスバリア層を設ける。ガスバリア層2は、従来から用いられているガスバリア層が使用でき、特に無機酸化物から構成される透明性を有するものが好ましい。透明性を有する無機酸化物のガスバリア層としては、基本的に金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜であれば使用可能であり、例えば、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を使用することができる。而して、包装用材料等に適するものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を挙げることができる。而して、上記の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiOX、AiOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる。)で表される。
【0026】
また、上記Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、包装用材料としては、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0027】
本発明において、上記のような無機酸化物のガスバリア層の膜厚としては、使用する金属、または金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜3000Å位、好ましくは、100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。また、本発明においては、無機酸化物のガスバリア層としては、無機酸化物の薄膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した積層体の状態でもよく、また、使用する金属、または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の膜を構成することもできる。
次に、本発明において、基材の上に、ガスバリア層を形成する方法について説明すると、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0028】
(透明導電層)
本発明の物品で形成する透明導電層3は、図4に示すように基材上に、ガスバリア層、透明導電層の順に形成したり、あるいは基材上に透明導電層、ガスバリア層の順に形成したりすることができる。
透明導電層を本発明の物品で設けた場合、例えば、電子デバイスの部材として、透明電極として利用することができ、またその透明性と導電性を利用した他の用途にも使用することができる。
【0029】
透明導電層は、透明性を有する無機酸化物から構成することができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛、酸化第2スズ等あるいは、酸化チタン等の高屈折率無機酸化物の間に金、銀、銅等の金属薄膜を挟みこんだことで一般的に知られている導電材料を用いて、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法、めっき法、印刷法等で形成することができる。但し、湿気排除等の点から、真空成膜法が好ましい。
透明導電層は、その膜厚は、200〜8000Å程度で形成することができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
PETフィルム100μm(東洋紡製 E5101)を被加工物1として、プラズマCVM加工装置に設置した。PETフィルム1と電極5のギャップdを250μmとした。表面が平面である定盤6の上にPETフィルム1が密着し、その定盤6の上にPETフィルム1を介して、電極5が配置される。装置内を真空排気(10−4Pa以下)にした後、フッ素混入ヘリウムガス(0.1%CF4、99.9%He)を装置内に導入し、プラズマ放電(150MHz)させた。プラズマ放電下に、設置したPETフィルム1を搬送させ、PETフィルム表面の平坦化加工を連続的に施した。その際電極5は5000rpmで回転させた(200mmφ)。(図5参照)
【0031】
(実施例2)
実施例1で平坦化したPETフィルムをスパッタリング装置に設置した。
装置内を真空排気(10−4Pa以下)にした後、タ−ゲットSiをアルゴンプラズマ(2kW 30sccm)によりスパッタ(成膜圧力:0.25Pa)し、酸素(10sccm)を導入することで、シリカ膜を100nmで成膜した。
【0032】
(実施例3)
実施例2で得られたガスバリアフィルムをスパッタリング装置に設置した。
装置内を真空排気(10−4Pa以下)にした後、タ−ゲットITO(Sn:10%)をアルゴンプラズマ(2kW 100sccm)によりスパッタ(成膜圧力:0.25Pa)し、酸素(10sccm)を導入することで、透明導電性ITO膜を150nmで成膜した。
【0033】
(比較例1)
PETフィルム100μm(東洋紡製 E5101)に、プラズマCVM加工を行わなかった。
【0034】
(比較例2)
比較例1のフィルム基材を用い、実施例2と同様の手法により、シリカ膜を100nmで成膜した。
【0035】
(比較例3)
比較例2のガスバリア性フィルムを用い、実施例3と同様の手法により、ITO膜を150nmで成膜した。
【0036】
上記の実施例及び比較例で得られた各物品に対し、最表面(実施例1は基材の平滑化処理面、実施例2はガスバリア層表面、実施例3は透明導電層表面、比較例1は平滑化処理されていない基材表面、比較例2はガスバリア層表面、比較例3は透明導電層表面)の最大高低差(P−V)、さらに得られた物品(基材上にバリア層や透明導電層を設けたもの)の酸素透過率、水蒸気透過率、シート抵抗値を以下の条件にて測定した。
【0037】
(測定条件)
1)P−V値:原子間力顕微鏡(セイコ−製ナノピクス)を用い、100μmのスキャニング範囲にて、最大高低差(P−V)を測定した。
2)酸素透過率:MOCON社製酸素透過率測定装置(オキシトラン2/20)を用い、23℃90%Rhの条件で測定した。
3)水蒸気透過率:MOCON社製水蒸気透過率測定装置(パ−マトラン3/31)を用い、40℃100%Rhの条件で測定した。
4)シート抵抗値:表面電気抵抗率測定装置(三菱油化製ロレスタAP)を用い4探針法で測定した。
【0038】
測定結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0039】
上記結果より、実施例1の基材表面はプラズマCVM法で平滑化処理されているため、P−V値が0.1〜500nmの範囲内であった。しかし、比較例1の基材表面はプラズマCVM法で平滑化処理されていないため、P−V値が0.1〜500nmの範囲外であった。
また、酸素透過率において、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3で比べ、基材表面をプラズマCVM法で平滑化処理しているか、処理していないかの違いで、その基材上に設けたガスバリア層を設けた場合、さらに透明導電層を設けた場合の両方で、平滑化処理している基材では、平滑化処理していない基材を用いた場合に対して、1/2〜1/4の酸素透過率となり、実施例のガスバリア性の高さが出ている。
【0040】
また、水蒸気透過率において、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3で比べ、基材表面をプラズマCVM法で平滑化処理しているか、処理していないかの違いで、その基材上に設けたガスバリア層を設けた場合、さらに透明導電層を設けた場合の両方で、平滑化処理している基材では、平滑化処理していない基材を用いた場合に対して、1/10の水蒸気透過率となり、実施例のガスバリア性の高さが出ている。
さらに、実施例3と比較例3の基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したもので、シート抵抗値を比べると、基材表面をプラズマCVM法で平滑化処理したものを使用した実施例3の物品は、基材表面をプラズマCVM法で平滑化処理していないものを使用した比較例3と比べ、抵抗値が2/3となって、低抵抗値の特性が得られている。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギ−または光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、被加工物を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理する方法で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであり、被加工物表面の凹凸が低減され、表面平滑性が向上した物品が得られる。
またプラスチックフィルム基材やガラス基板上にピンホールの無い、均一なガスバリア層が形成でき、ガスバリア性が高く、さらに透明導電層を形成すれば、均一な透明導電層が得られ、低抵抗値が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平滑化処理方法を説明する概略図である。
【図2】本発明の平滑化処理方法を説明する他の概略図である。
【図3】本発明の物品の一つの実施形態である概略断面図である。
【図4】本発明の物品の他の実施形態である概略断面図である。
【図5】本発明の平滑化処理方法の例を説明する概略図である。
【符号の説明】
1 基材(プラスチックフィルム)
2 ガスバリア層
3 透明導電層
4 反応容器
5 電極
6 定盤
7 凸部
8 供給ロール
9 巻上ロール
10 反応ガス供給口
11 光エネルギー
12 部材
13 入射口
14 射出口
15 光ファイバー
16 平滑化処理面
Claims (7)
- 被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギ−または光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、被加工物を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面を平滑化処理するもので、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする平滑化処理方法。
- 上記の被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層に、平滑化処理を行なうことを特徴とする請求項1に記載する平滑化処理方法。
- 被加工物を、反応ガスを含む雰囲気中に配置し、被加工物に電気エネルギーまたは光エネルギーを加え、プラズマを発生させ、被加工物を構成する原子または分子を揮発性物質に変えて、被加工物の少なくとも片面が平滑化処理される物品で、被加工物が基材自体、基材上にガスバリア層を積層したもの、基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものの中の少なくとも一つであることを特徴とする物品。
- 上記の被加工物が、基材上にガスバリア層を積層したもの、または基材上にガスバリア層、透明導電層を積層したものであり、基材及び/又はガスバリア層が、平滑化処理されたことを特徴とする請求項3に記載する物品。
- 前記の物品の平滑化処理された面は、最大高低差(P−V)が、500〜0.1nmであることを特徴とする請求項3または4に記載する物品。
- 前記のガスバリア層が、透明無機酸化物であることを特徴とする請求項3または4に記載する物品。
- 前記の透明導電層が、透明無機酸化物であることを特徴とする請求項3または4に記載する物品。
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