JP2004058175A - 両頭研削装置 - Google Patents

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Shinobu Maeda
前田 忍
Kiyohiro Okuma
大熊 清弘
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Abstract

【課題】エアカットの発生を抑制しながらワークを研削できる両頭研削装置を提供する。
【解決手段】板状のワークの両面に対向するように一対の砥石を配設して、前記ワークの両表面を研削する両頭研削装置であって、前記砥石の前端を検知する砥石前端検知手段と、前記砥石前端検知手段が砥石の前端を検知したときの該砥石の位置を検出する砥石位置検出手段と、前記砥石前端検知手段からの検知信号及び前記砥石位置検出手段からの検出信号を用いて、前記砥石の摩耗量を推定する砥石摩耗量推定手段とを備えている。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウエハ等のワークの両面を同時に研削する両頭研削装置に関する。特に、砥石の摩耗量から砥石位置を補正して、エアカットの発生を抑制しながらワークを研削できる両頭研削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来における一般的な両頭研削装置では、ワークを研削する砥石の進行方向での移動量である砥石の切込み量を制御するコントローラに、目標となる切込みを設定してワークの研削加工が実行されている。かかる研削加工においては、ワークを砥石で研削すると、砥石自身も摩耗して厚みが減少する。よって、初期に設定した砥石の切込み量を維持して、研削加工が繰り返されると、砥石がワークと接触するまでに空回りする状態(エアカットと称される)が発生する。このエアカットの状態が発生すると、砥石がワークに接触するまでに時間を浪費したり、ワークを所望の厚さに研削できない等の問題が発生する。そこで、従来においては未加工及び加工後のワーク厚みを計測して、目標として設定したワーク厚みとのずれ量を確認し、このずれ量から砥石の摩耗量を推定している。そして、この推定値に基づいて砥石位置を逐次補正してワークの研削が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来手法は、加工後のワーク厚みと目標として設定したワーク厚みとの差から砥石の摩耗量を推定している。すなわち、従来の手法はワーク厚みの変化から砥石摩耗量を間接的に推定したものである。このようにワーク厚みに基づいた補正は、実際の砥石位置を確認したものではないのでその精度に限界がある。従って、上述の手法では、エアカットの発生が確実に抑制できるとは言い難く、ワークを所望の厚さ通りに精度よく研削することが困難であった。
【0004】
また、ワークの夫々の面に対して用いられる各砥石の個体差等によって、各砥石の摩耗量が異なることがある。各砥石の摩耗量が異なることは、各砥石とワークとの距離が異なることを意味する。従って、摩耗量が異なる各砥石をワークに近づけていくと、一方の砥石が他方の砥石よりも先にワークに接触することになってしまい、ワークを所望の厚さに精度よく研削することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記問題に鑑みてなされたものであり、砥石位置を高精度に補正し、エアカットの発生を確実に抑制するとともに、ワークを所望の厚さに精度よく研削することができる両頭研削装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は請求項1に記載の如く、板状のワークの両面に対向するように一対の砥石を配設して、前記ワークの両表面を研削する両頭研削装置であって、前記砥石の前端を検知する砥石前端検知手段を備えた両頭研削装置により達成できる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、砥石前端検知手段により実際に検知した砥石の前端位置を確認できるので、これに基づいて砥石位置を補正できる。従って、砥石位置を高精度に補正し、エアカットの発生を確実に抑制できるとともに、ワークを所望の厚さに精度よく研削することが出来る。
【0008】
また、上記目的は請求項2に記載如く、板状のワークの両面に対向するように一対の砥石を配設して、前記ワークの両表面を研削する両頭研削装置であって、前記砥石の前端を検知する砥石前端検知手段と、前記砥石前端検知手段が砥石の前端を検知したときの該砥石の位置を検出する砥石位置検出手段と、前記砥石前端検知手段からの検知信号及び前記砥石位置検出手段からの検出信号を用いて、前記砥石の摩耗量を推定する砥石摩耗量推定手段とを備えた両頭研削装置により確実に達成できる。
【0009】
また、請求項3に記載の如く、請求項2に記載の両頭研削装置において、前記砥石摩耗量推定手段が推定した砥石摩耗量を用いて、前記砥石の初期位置を補正しながら該砥石の移動制御を行う移動制御手段をさらに備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、請求項4に記載の如く、請求項3に記載の両頭研削装置において、前記砥石摩耗量を用いた前記砥石の初期位置の補正は、任意の所定研削加工毎に実行するように設定してもよい。
【0011】
請求項2乃至4に記載の発明によれば、砥石摩耗量推定手段が砥石前端検知手段からの検知信号及び砥石位置検出手段からの検出信号を用いて砥石の摩耗量を推定し、これに基づき確実に砥石位置を高精度に補正できるので、エアカットを確実に抑制しながらワークを研削できる。上記補正は実際の砥石前端を検知したデータに基づくものであるので、所望の厚さを有するワークを高精度に加工することができる。
【0012】
また、請求項5に記載の如く、請求項2から4のいずれか一記載の両頭研削装置において、前記砥石摩耗量推定手段は、推定した砥石摩耗量を積算する機能をさらに備え、該積算値が予め設定した許容摩耗値を越えたときに砥石交換の警告を発するように設定されていることが望ましい。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、操作者が砥石に交換時期が来たことを確実に知ることができる。
【0014】
更に、請求項6に記載の如く、請求項2乃至5いずれか一記載の両頭研削装置において、前記砥石前端検知手段は、前記一対の砥石の夫々の前端を別個に検知し、前記砥石位置検出手段は、前記砥石前端検知手段が前記砥石の前端を検知したときの前記砥石の位置を前記一対の砥石の夫々において別個に検出し、前記砥石摩耗量推定手段は、前記一対の砥石の夫々の摩耗量を別個に推定するように設定されていてもよい。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、一対の砥石の夫々の摩耗量が異なる場合であっても、夫々の砥石の摩耗量を別個に測定し補正することができ、簡易な構造で、ワークを所望の厚さに精度よく研削することが出来る。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は実施例に係る両頭研削装置の概略構成を示した図である。この両頭研削装置は、第1のスピンドル装置1及び第2のスピンドル装置2、ワーク保持装置3及び砥石前端検知手段としてのタッチセンサ50を備えている。
【0017】
第1のスピンドル装置1はカップ型の砥石11及びこれを回転させる主軸部12を備えている。このカップ型砥石11は、その前端が平坦面に形成されている。このカップ型砥石11は、その中心軸を図1のX方向とする主軸部12に固定されている。上記スピンドル装置1は、ベッド4に設けられたリニアガイド41により、主軸部12の回転軸方向(図1でX方向)にスライド可能に設定されている。
【0018】
更に、スピンドル装置1はスライド機構13を備えている。このスライド機構13はスピンドル装置1をその主軸部12の回転軸方向へスライドさせるアクチュエータとして機能する。このスライド機構13として例えば油圧シリンダ機構を採用できる。図1に例示したスライド機構13は、シリンダ131、このシリンダ131内に嵌合したピストン132、及びこのピストン132に固定されたピストンロッド133により構成されている。上記シリンダ131は、スピンドル装置1のハウジング内にほぼ円柱状にくり貫かれたのと同等に形成された収容室14内に設けられている。具体的には、このシリンダ131の一端(図1において左)が、収容室14内における図1の左側の壁面に対して固定されている。なお、当該側壁には、貫通穴が設けられている。そして、ピストンロッド133は、この貫通穴に対して嵌合して、その一端を図1の左方へ突出している。このピストンロッド133の突出した端部は、ベース4から突出した固定部42に対して固定されている。
【0019】
上記構成からスピンドル装置1は、そのスライド機構13が図示せぬ油圧を受けて駆動されると、図1のX方向で移動するようになる。よって、スピンドル装置1の主軸部12及びカップ型砥石11は回転した状態で、図1のX方向において移動可能となる。
【0020】
また、他方の第2のスピンドル装置2は、前述した第1のスピンドル装置1と同様の構成であり、砥石21、主軸部22及びスライド機構23を備えている。これらスピンドル装置1、2は、そのカップ型砥石11、21を同軸に対向させた状態で、各々がベッド4上に配置されており図1の左右方向(X方向)に移動可能となっている。これら各スピンドル装置1、2が移動すると、主軸部12、22も移動することになる。このため、これら主軸部12、22の各々に砥石11、21が固定された状態においては、両カップ型砥石11、21の間隔は自在に調整できるので、これらカップ型砥石11、21間に配置させたワークWを両面から研削することができる。
【0021】
また、スピンドル装置1は、そのスライド機構13により移動されるスピンドル装置1、2の位置を検出するために砥石位置検出手段としてリニアセンサ16を備えている。リニアセンサ16はスピンドル装置1、2の位置を検出するので、このスピンドル装置1、2の各々に形成されているカップ型砥石11、21の位置も特定できることになる。このリニアセンサ16として、リニアエンコーダやレーザ干渉計等を採用することができる。上記各リニアセンサ16の座標原点はワークWの中心位置に対応するように設計されている。
【0022】
また、ワーク保持装置3は、ワークWを回転させた状態で保持するワークホルダ31及びこのワークホルダ31を各スピンドル装置1、2間に配置するホルダ機構32等を備えている。このワーク保持装置3としては従来一般的な構成が採用されている。
【0023】
そして、本両頭研削装置には、砥石11、21の前端を検知するタッチセンサ50が設けられている。タッチセンサ50の中心位置は、ワークWの中心位置に一致している。このタッチセンサ50は、研削が実行される合間でワークWが取り外されているときに、両カップ型砥石11、21間に位置して砥石11、21の前端(刃先とも称される)位置を検知する。その際、砥石11、21は各々単独で移動され、タッチセンサ50に接触したときに砥石11、21の前端が検知される。図1では、タッチセンサ50の周辺の構成を省略して示しているが、後に詳細に説明する。
【0024】
図2は、本両頭研削装置に含まれる構成の内で砥石摩耗量推定に関連した部分を示したブロック図である。この図2に示されるように本両頭研削装置は、コントローラ60を備えている。このコントローラ60は例えばCPUにより実現されている。このコントローラ60は本両頭研削装置全体の駆動制御を実行するコンピュータ等により実現される構成としてもよい。
【0025】
まず、コントローラ60には前記タッチセンサ50が接続されている。コントローラ60は、ワークWがワーク保持装置3に装着されていない時にタッチセンサ50を砥石11、21間に移動する共に、このタッチセンサ50が砥石11、21それぞれの前端に接触したときの検知信号を取得するようになっている。
【0026】
また、コントローラ60には前記リニアセンサ16が接続されている。前述したようにリニアセンサ16は、座標原点を基準にスピンドル装置1、2の移動位置を検出している。そして、コントローラ60は、タッチセンサ50が砥石11、21の前端に接触したときの検知信号を取得したときに、リニアセンサ16から検出信号を確認するように構成されている。
【0027】
特に、本コントローラ60は、前回において接触検知信号を取得したときの検出信号によるスピンドル装置1、2の位置と、次回において接触検知信号を取得したときの検出信号によるスピンドル装置1、2の位置とのずれを比較する。この位置ずれは、ワークWを研削したことにより砥石11、21自身が摩耗し、前端が後退したことにより生じるものである。よって、コントローラ60はこの位置ずれを砥石摩耗量として推定する。この点において、コントローラ60は砥石摩耗量推定手段として機能している。
【0028】
また、前述したように本実施例装置のスピンドル装置1、2は、油圧により駆動されるスライド機構13、23によりX方向に駆動される。コントローラ60はスライド機構13、23へ供給される油圧を制御することにより砥石11、21が設けられた各スピンドル装置1、2の移動制御も実行している。すなわち、コントローラ60は移動制御手段として機能し、上記のようにして得た砥石摩耗量分を用いて砥石11、21の初期位置を補正しながら砥石の移動制御を行う。ここで、初期位置とは研削を開始する直前に砥石11、21が配置される位置である。具体的には、コントローラ60は未加工ワークの研削を開始する前にリニアセンサ16からの位置データに上記砥石摩耗量分を補正値として付加し、砥石11、21の初期位置がワークW側に近付くように補正してから砥石の移動制御を実行する。
【0029】
なお、本実施例では、コントローラ60は複数回のワーク研削、例えば未加工ワークを5回加工した時点で、上記タッチセンサ50を砥石11、21間に位置させて、砥石の前端位置の状態を確認するように設定されている。この回数の設定は下記の入力パネル61を介して操作者が任意に行うことができる。
【0030】
更に、コントローラ60には、入力パネル61が接続されている。この入力パネル61により、操作者が所定の指示や所望の設定値を入力できるようになっている。また、コントローラ60には、ROM62が接続されている。このROM62には、砥石前端を検知するための種々のプログラムや、砥石11、21が固定されているスピンドル装置1、2を移動させるスライド機構13の駆動制御プログラム等が格納されている。コントローラ60はこのROM62からの情報を利用して本両頭研削装置の駆動制御を実行する。
【0031】
そして、コントローラ60は砥石11、21の使用限界も監視している。コントローラ60は前述したように推定した砥石摩耗量分を積算しており、その積算値が予め設定した許容摩耗値を越えた時には、警告装置65に警告信号を供給して操作者に砥石11、21が交換時期にとなったことを認知させるようにしている。この警告装置65は、操作者に砥石交換を促すものであれば、特に限定は無い。警告灯、警告音等の一般的な警告装置を採用すればよい。
【0032】
更に、図3を用いて、本両頭研削装置のタッチセンサ50の周部構成について説明する。図3(A)は図1の本両頭研削装置の一部をI−I矢視により示した図で、図1で右側の砥石21とタッチセンサ50との関係を示している。なお、タッチセンサ50を保持するアーム55は図1に示したホルダ機構32のフレームに固定されている。また、図3(B)は、図3(A)において矢印α側から見たタッチセンサ50を単体で示した図である。
【0033】
図3(B)に示すように、タッチセンサ50は基部51から垂下部52が下方向に延在し、その下端に水平方向に接触子53a、53bを備えた構造を有している。垂下部52は基部51に対して揺動自在に配設されている。接触子53a、53bが砥石11、21の前端に接触するとこれにより垂下部52が傾き、基部51内に設けた電圧生成回路から所定の電圧が生成されるようになっている。
【0034】
なお、図3(A)に示すように、本実施例装置では、所定回使用した砥石11、21の目立て(ドレッシング)を行うドレッシング装置70がタッチセンサ50と共にアーム55に設けられている。このドレッシング装置70とタッチセンサ50とは図示せぬ駆動源によりアーム55が回動されることで、砥石11、21間に交互に配置できるようになっている。ドレッシング装置70は、砥石11、21の目立てをする砥石71を有している。砥石11、21の研削効果が低下したときにドレッシングが実行される。
【0035】
さらに、以下においては上記構成を有する本両頭研削装置で、初期の条件設定から砥石11、21の前端位置を確認して砥石の摩耗量を推定するまでの処理について説明する。
【0036】
図4は、コントローラ60により実行される砥石摩耗量の推定と、砥石位置補正までの一連の工程を模式的に示した図である。
【0037】
図4の(I)は準備手順として基準砥石MASを用いての基準位置の設定、(II)は整形(ツルーイング)が完了した研削用砥石を新たに設定した場合の調整、 (III)は研削により砥石が摩耗した場合やドレッシング後の調整について示している。なお、ここでの説明では先の図1〜図3も参照する。
【0038】
図4の(I)及び(II)に示す工程は、原則として砥石交換を行った場合に実行される。砥石を交換しないでワークの研削を継続する場合には、上記(III)の工程が設定回数の研削が完了した毎に繰り返される。なお、タッチセンサ50の左右の作業は同様であるので、図4では左側のみを示して説明し、右側については図示および説明を省略する。
【0039】
(I)に示す工程では、左右一対の基準砥石MASを主軸部12、22の各々に固定して、砥石の基準位置が設定される。また、以下に示す処理は原則として入力パネル61を介した操作者からの入力指示に基づいて、コントローラ60が全体的な駆動制御を行っている。基準砥石MASは規定寸法に予め形成され、その前端が砥石11の前端が位置すべき理想位置となるように設けられている。コントローラ60はスライド機構13を駆動してスピンドル装置1を介して基準砥石MASをタッチセンサ50に向けて移動させる。そして、基準砥石MASの前端がタッチセンサ50の接触子53aに接触したときにスピンドル装置1の位置が記憶され、これにより砥石11が最初に位置すべき基準位置が定まる。
【0040】
次に、(II)ではツルーイング後の砥石11をスピンドル装置1の主軸部12に固定してから(I)の場合と同様に砥石11の前端の検出がコントローラ60により実行される。このとき、砥石11の前端位置が、基準砥石MASaの前端位置から後方に長さTHずれていれば、この長さTH分余計に進んだときにタッチセンサ50により検知される。コントローラ60はリニアセンサ16の出力信号を確認し、上記(I)での記憶データと比較することによりこの長さTHを検出する。図4では長さTH分後方にずれていた場合を示しているが、前方にずれていた場合はこの逆となる。
【0041】
上記の長さTHは、基準砥石MASと実際に研削に用いる砥石11での前端位置のずれ量となる。よって、コントローラ60はこの長さTHを砥石長補正量として砥石11の初期位置を前方にずらす修正を実行する。
【0042】
上記図4の(I)及び(II)の工程により、交換後の砥石11の初期位置が確定し研削加工を行うための準備が完了する。前述したように、この(I)及び(II)の工程は、新たな砥石11に交換された時にのみ実行される。よって、コントローラ60は(I)及び(II)の手順で設定した条件を、砥石11の交換時まで維持する。
【0043】
次に、(III)の工程を説明する。砥石11はワークを研削することにより摩耗する。よって、砥石11の前端位置は(II)で示しているツルーイング後よりも長さTM分、前端が後退する。この摩耗が進んだ砥石11の前端位置をタッチセンサ50で検知したときにも、コントローラ60はリニアセンサ16の出力信号を確認する。これにより長さTMを検出して砥石摩耗量として推定する。そして、コントローラ60はこの砥石長摩耗量分、砥石11の初期位置を前方にずらす補正を実行する。この(III)の手順は予め設定した研削回数が終了した合間に実行される。この(III)の工程は、ドレッシング処理がされた後にも同様に実行される。なお、コントローラ60は、前述したように推定した砥石摩耗量を積算しており、この積算値が予め入力パネル61を介して設定している許容摩耗量を越えたときに砥石交換信号を警告装置65に供給する。
【0044】
ところで、上述のように、タッチセンサ50の左右の作業は同様であるので、図4では左側のみを示して説明し、右側については図示および説明を省略した。ここで、「左右の作業は同様」とは、左側の砥石11の初期位置を砥石11の砥石長摩耗量分ずらす補正をした後に、右側の砥石21についても、砥石11とは別に、(I)乃至(III)の工程を経て、砥石21の砥石長摩耗量分ずらす補正をすることが出来るということである。従って、左右の砥石11、21の摩耗量が異なる場合であっても、砥石11、21の摩耗量を別個に測定し補正することによって、ワークの中心位置と一致しているタッチセンサ50の中心位置と左右の砥石11、21の前端の間の距離を同一にすることができ、簡易な構造で、ワークを所望の厚さに精度よく研削することが出来る。
【0045】
次に、上記(III)の工程についてコントローラ60が実行する好ましい処理例について説明する。図5は上記(III)での処理を説明するために示した図であり、図4と同様にタッチセンサ50の位置よりも左側のみ図示しており、左側と同様の右側については図示および説明を省略する。また、図6はコントローラ60が実行する処理例を示したフローチャ−トである。
【0046】
図5ではタッチセンサ50を簡素化して図で示している。コントローラ60は迅速かつ確実に砥石11をタッチセンサ50に向けて移動させるための構成を有している。コントローラ60は、砥石11が設定される位置とタッチセンサ50との間に減速位置GEを、タッチセンサ50よりも後方位置に限界位置EDを仮想的に設定している。砥石11が上記減速位置GE或いは限界位置EDに来たことは、リニアセンサ16の検出信号から確認する。
【0047】
上記減速位置GEは砥石11の移動速度を低速に切替える位置である。すなわち、コントローラ60は当初、砥石11の移動速度を早く設定するが、この減速位置GEを越えてタッチセンサ50に近付いたときには遅い移動(クリープ移動)に切替える。これにより砥石11の衝突によるタッチセンサ50への負荷を抑制しつつ砥石11がタッチセンサ50に接触させるまでの時間を短縮できる。
【0048】
一方、何らかのトラブルで、砥石11がタッチセンサ50の位置を越えて移動する場合も想定される。この場合には処理を停止するために限界位置EDが設定されている。
【0049】
ここでのコントローラ60による処理を図6を用いて簡単に説明する。砥石の前端位置の計測が開始されるとコントローラ60は砥石11を比較的高速でタッチセンサ50に向けて移動させ、減速位置GEを越えると(S101)、砥石11をクリープ移動に切替える。
【0050】
次に、タッチセンサ50がONした場合には(S105)、前述したように砥石11の位置を確認し(S107)、これに基づき砥石摩耗量を推定し(S109)、砥石位置の補正を実行する(S111)。
【0051】
一方、上記S105でタッチセンサ50がONせず、砥石11の位置が限界位置EDにまで到達したときには、コントローラ60は砥石前端の検知にエラーがあると判断して(S115)、警告を発して処理を停止する。この警告には前記警告装置65を兼用できる。
【0052】
以上説明した実施例では、コントローラ60が移動制御手段を実現して、所定回の研削毎に砥石11、21の初期位置を補正する。このようにすると操作者が設定した回数の研削を実行している間は、自動で処理が進むので作業が効率化できる。しかし、これに限らず一研削毎に砥石摩耗量を推定して砥石の初期位置補正を実行するように構成してもよい。
【0053】
また、コントローラ60が砥石摩耗量推定手段としてのみ機能するようして、この推定された砥石摩耗量に基づいて操作者が砥石の加工開始位置を補正するようにしてもよい。
【0054】
さらに、単に上記タッチセンサ50を両頭研削装置に設けただけの構成であったも砥石の前端を検知できるので、操作者がこれに基づいて砥石位置を補正するようにしてもよい。
【0055】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明によれば、砥石位置を高精度に補正し、エアカットの発生を確実に抑制するとともに、ワークを所望の厚さに精度よく研削することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る両頭研削装置の概略構成を示した図である。
【図2】両頭研削装置に含まれる構成の内で砥石摩耗量推定に関連した部分を示したブロック図である。
【図3】両頭研削装置のタッチセンサの周部構成について示した図である。
【図4】コントローラにより実行される砥石摩耗量の推定と、砥石位置補正までの一連の手順を模式的に示した図である。
【図5】図4の(III)での処理を説明するために示した図である。
【図6】コントローラが実行する処理例を示したフローチャ−トである。
【符号の説明】
1、2       スピンドル装置
3         ワーク保持装置
11、21     カップ型砥石(砥石)
13、23     スライド機構
16        リニアセンサ(砥石位置検出手段)
50        タッチセンサ(砥石前端検知手段)
51        タッチセンサの基部
52        垂下部
53a、b     接触子
60        コントローラ(砥石摩耗量推定手段、移動制御手段)
61        入力パネル
62        ROM
65        警告装置

Claims (6)

  1. 板状のワークの両面に対向するように一対の砥石を配設して、前記ワークの両表面を研削する両頭研削装置であって、
    前記砥石の前端を検知する砥石前端検知手段を備えたことを特徴とする両頭研削装置。
  2. 板状のワークの両面に対向するように一対の砥石を配設して、前記ワークの両表面を研削する両頭研削装置であって、
    前記砥石の前端を検知する砥石前端検知手段と、
    前記砥石前端検知手段が砥石の前端を検知したときの該砥石の位置を検出する砥石位置検出手段と、
    前記砥石前端検知手段からの検知信号及び前記砥石位置検出手段からの検出信号を用いて前記砥石の摩耗量を推定する砥石摩耗量推定手段を備えたことを特徴とする両頭研削装置。
  3. 請求項2に記載の両頭研削装置において、
    前記砥石摩耗量推定手段が推定した砥石摩耗量を用いて前記砥石の初期位置を補正してから該砥石の移動制御を行う移動制御手段を更に備えたことを特徴とする両頭研削装置。
  4. 請求項3に記載の両頭研削装置において、
    前記砥石摩耗量を用いた前記砥石の初期位置の補正は、任意の所定研削加工毎に実行するように設定されていることを特徴とする両頭研削装置。
  5. 請求項2乃至4いずれか一記載の両頭研削装置において、
    前記砥石摩耗量推定手段は、推定した砥石摩耗量を積算する機能を更に備え、該積算値が予め設定した許容摩耗値を越えたときに砥石交換の警告を発するように設定されていることを特徴とする両頭研削装置。
  6. 請求項2乃至5いずれか一記載の両頭研削装置において、
    前記砥石前端検知手段は、前記一対の砥石の夫々の前端を別個に検知し、
    前記砥石位置検出手段は、前記砥石前端検知手段が前記砥石の前端を検知したときの前記砥石の位置を前記一対の砥石の夫々において別個に検出し、
    前記砥石摩耗量推定手段は、前記一対の砥石の夫々の摩耗量を別個に推定するように設定されていることを特徴とする両頭研削装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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