<概要>
本発明の装置は、複数のスピンドルを設け、眼鏡レンズと加工具との相対位置を移動させることによって、眼鏡レンズの加工を行う。これによって、容易に眼鏡レンズの加工を行うことができる。本発明では、粗加工時において、眼鏡レンズの加工径を小さくすることのできる装置について説明する。
以下、本発明の実施形態に係る装置の概要について図面を用いて説明する。図1〜図17は本実施形態に係る装置ついて説明するための図である。なお、本実施形態においては、図2において、紙面に対して奥行き方向(直交する方向)をX方向、水平方向(左右方向)をZ方向、鉛直方向(上下方向)をY方向として説明する。
本実施形態における眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの周縁を加工するために用いられる。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ回転手段と、軸角度変更手段と、移動手段と、粗加工具と、スピンドル部と、レンズチャック軸保持部と、制御手段(制御部)70と、を備える。
制御部70は、玉型を基にして得られた粗加工軌跡の動径データに基づいてレンズ回転手段及び移動手段を制御し、眼鏡レンズを粗加工具によって粗加工する。制御部70は、少なくとも粗加工時の動径データに含まれる加工径が所定の基準値を下回る動径角範囲においては、スピンドル部とレンズチャック軸保持部との干渉を避けるように、加工径に基づいて動径角毎の軸角度を設定し、設定された軸角度に基づいて軸角度変更手段を制御する。
例えば、レンズ回転手段としては、レンズチャックユニット20が用いられる。レンズチャックユニット20は、レンズチャック軸22と、保持アーム29L、29Rと、駆動源110、120と有し、レンズチャック軸22を回転させる。例えば、レンズチャック軸22は、一対のレンズチャック軸22Lとレンズチャック軸22Rとによって眼鏡レンズを挟持する。保持アーム29L、29Rは、レンズチャック軸22Lとレンズチャック軸22Rを回転可能に保持する。駆動源110、120は、レンズチャック軸22L、22Rをレンズチャック軸22L、22Rの軸を中心に回転させる。
例えば、軸角度変更手段としては、軸角度変更手段25が用いられる。軸角度変更手段25は、レンズチャック軸22の軸角度を変更するために用いられる。制御手段(制御部)70は、軸角度変更手段25の駆動を制御し、加工具回転軸(回転軸)40a1,40b1、40c1、45a1、45b1、45c1に対するレンズチャック軸22の軸角度を変更する。
例えば、軸角度変更手段25は、レンズチャック軸22の軸角度を変更するために、レンズチャック軸22を保持する回転ベース(キャリッジ)21を有する。キャリッジ21には、レンズチャック軸22が保持されている。軸角度変更手段25は、キャリッジ21をレンズチャック軸22に直交するキャリッジ21の中心軸の軸回りに回転させる。
例えば、移動手段としては、Z軸駆動機構85及びY軸駆動機構90が用いられる。Z軸駆動機構85及びY軸駆動機構90は、回転軸40a1,40b1、40c1、45a1、45b1、45c1とレンズチャック軸22との位置関係を相対的に変化させる移動手段であって、回転軸40a1,40b1、40c1、45a1、45b1、45c1とレンズチャック軸22との軸間距離を変化させる。なお、本実施形態においては、移動手段として、Z軸駆動機構85及びY軸駆動機構90の構成を挙げたがこれに限定されない。例えば、移動手段は、Z軸駆動機構85及びY軸駆動機構90の少なくとも一方によって軸間距離が変化される構成としてもよいし、さらに、その他の駆動機構(例えば、X軸駆動機構80)を用いる構成であってもよい。
粗加工具は、第1加工具ユニット40に備えられる。第1加工具ユニット40は、少なくとも1つの加工具回転手段(加工具ユニット)を備えて構成されている。また、第2加工具ユニット45は、少なくとも1つの加工具回転手段(加工具ユニット)を備えて構成されている。例えば、加工具回転手段は、粗加工具回転手段(粗加工具回転ユニット)、仕上げ加工具回転手段(仕上げ加工具回転ユニット)等が挙げられる。第1加工具ユニット40と第2加工具ユニット45は、対向して配置されている。
例えば、第1加工具ユニット40の粗加工具回転手段は、スピンドル部(スピンドル)40a、粗加工用加工具(粗加工具)60a、を備える。スピンドル40aは、回転軸40a1を回転可能に保持する。そして、スピンドル40aの回転軸40a1には、粗加工具(ツール)60aが設置される。粗加工具60aは、眼鏡レンズの周縁を粗加工するために用いられる。例えば、粗加工具60aは、スピンドルの外周径より小さい径を持つ。
例えば、基準値としては、回転軸40a1とレンズチャック軸22とが平行なままで、スピンドル40aに対して保持アーム29Lが接触せずに、最も接近できるときの加工径RS(レンズチャック軸22のチャック中心から加工具60aの加工面までの距離)が挙げられる。もちろん、基準値としては、回転軸40a1とレンズチャック軸22とが平行なままで、スピンドル40aに対して保持アーム29Lが接触しない値であれば、スピンドル40aに対して保持アーム29Lが最も接近できる距離よりも大きな値であってもよい。
例えば、動径角毎の軸角度の設定は、加工径が基準値以上の動径角部分においては、レンズチャック軸と加工具回転軸とが平行となるように軸角度を設定し、加工径が基準値を下回る動径角部分においては加工径に基づいて動径角毎の軸角度を設定する。
例えば、制御部70は、加工径が基準値を下回る動径角部分の軸角度を設定するときに記憶手段(例えば、メモリ3)に記憶された位置情報に基づいて設定を行う。例えば、記憶手段に記憶された位置情報は、レンズチャック軸に保持された眼鏡レンズの前面及び後面の屈折面の内、粗加工具の先端側に位置する屈折面の位置情報であって、加工径に対応したレンズチャック軸方向の位置情報が挙げられる。
例えば、粗加工具の先端側に位置する屈折面の位置情報は、レンズ形状検知手段(レンズ形状検知ユニット)50L、50Rによって検知する。この場合、本装置は、レンズチャック軸に保持された眼鏡レンズの前屈折面及び後屈折面のレンズチャック軸方向の位置を検知するレンズ形状検知ユニット50L、50Rを備える。そして、メモリ3には、レンズ形状検知手段によって検知された屈折面の位置情報が記憶される。制御部70は、レンズ形状検知ユニット50L、50Rによって検知された位置情報に基づいて軸角度を設定する。
例えば、粗加工具の先端側に位置する屈折面の位置情報は、予め、記憶手段に記憶された加工径に応じて設定された位置情報又は所定の位置情報が挙げられる。
このように、粗加工時において、加工径に応じて、軸角度を調整することによって、スピンドル40aとレンズチャック軸22との干渉を回避することができ、粗加工可能な眼鏡レンズの加工径を小さくすることができる。
<実施例>
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本件発明が適用される眼鏡レンズ加工装置の装置本体の概略構成図である。眼鏡レンズ加工装置1の上部には、レンズの加工を行うためのレンズ加工部10が設けられている。
図2は、レンズ加工部10の概略構成図を示している。以下、レンズ加工部10の構成について説明する。レンズ加工部10には、レンズチャックユニット20、スピンドル保持ユニット30が備えられている。
なお、実施例の装置においては、眼鏡レンズ加工装置1を正面から見たときの上下方向をY軸方向、前後方向をX軸方向、左右方向をZ軸方向として説明する。
<レンズチャックユニット>
レンズチャックユニット20は、眼鏡レンズLEを保持し、スピンドル保持ユニット30に対して、眼鏡レンズLEを移動させるためのものである。レンズチャックユニット20には、キャリッジ21、ベース24が備えられている。キャリッジ21は、眼鏡レンズLEを挟持するための一対のレンズチャック軸22(22L、22R)を備える。
<レンズチャック軸回転機構>
図3は、レンズチャックユニット20の概略構成図である。キャリッジ21の表側には、レンズチャック軸22Lを回転可能に保持する保持アーム29Lが固定されている。キャリッジ21の裏面には、図示無き左右に延びる2本のガイドレール上を移動可能なチャックテーブル23が設けられている。チャックテーブル23は、レンズチャック軸22Rを回転可能に保持する保持アーム29Rが固定されている。また、チャックテーブル23には、チャックテーブル23をレンズチャック軸22に対して、平行移動するための図示無き圧力駆動源が設けられている。圧力駆動源は、エアポンプ、バルブ、ピストン等で構成される。エアポンプは、空気を圧送するために用いられる。ピストンは、チャックテーブル23に固定されている。バルブは、ピストンが配置された密閉空間に設けられている。そして、密閉空間への空気の導入がバルブの開閉によって調整される。圧力駆動源は、密閉空間において空気の導入を調整することによって、レンズチャック軸に対して、ピストンを平行移動させる。これにより、チャックテーブル23とともに、保持アーム29R及びレンズチャック軸22Rがキャリッジ21に設けられたレンズチャック軸22L側へ平行移動される。そして、レンズチャック軸22Lとレンズチャック軸22Rとで眼鏡レンズLEが挟持される。なお、レンズチャック軸22Lとレンズチャック軸22Rとは、同軸の関係に配置されている。
レンズチャックユニット20には、駆動源(例えば、モータ)110が設けられている。モータ110は、レンズチャック軸22Rをその軸を中心に回転させるために、用いられる。モータ110の回転駆動によって、タイミングベルト、プーリー等の回転伝達機構を介してレンズチャック軸22Rが回転される。
また、レンズチャックユニット20には、駆動源(例えば、モータ)120が設けられている。モータ120は、レンズチャック軸22Lをその軸を中心に回転させるために、用いられる。モータ120の回転駆動によって、タイミングベルト、プーリー等の回転伝達機構を介してレンズチャック軸22Lがモータ120によって回転される。モータ110、120の回転軸には、レンズチャック軸22L、22Rの回転角を検知するエンコーダが取り付けられている。なお、モータ110、120は、同期して駆動される。すなわち、レンズチャック軸22L及び22Rは、同期して回転駆動をする。これらによりレンズ回転ユニットが構成される。
<キャリッジ回転駆動機構>
レンズチャックユニット20には、軸角度変更機構(軸角度変更手段)25が設けられている。軸角度変更機構25は、加工具の切り換えや眼鏡レンズ加工の際の眼鏡レンズと加工具との相対位置の調整に用いられる(詳細は後述する)。軸角度変更機構25は、駆動源(例えば、モータ等)26、プーリー27、タイミングベルト28で構成されている。プーリー27は、キャリッジ21が固定されている。モータ26が回転駆動されると、モータ26の回転がタイミングベルト28を介して、プーリー27へ伝達される。キャリッジ21は、プーリー27が回転されることによって、ベース24に対して、キャリッジ21の中心軸(A軸)を回転中心に回転駆動する。これによって、キャリッジ21の回転駆動とともに、レンズチャック軸22の軸角度がA軸を中心に変更(回転)される。なお、本実施例において、キャリッジ21の回転開始時の初期位置としては、レンズチャック軸22L、22Rによって眼鏡レンズを挟持した際に、レンズチャック軸22L、22Rの軸方向がY軸方向と平行軸となる位置に設定されている(図8(a)S参照)。このとき、レンズチャック軸22L、22Rにおいては、レンズチャック軸22Rが上側となり、レンズチャック軸22Lが下側となるように位置される。すなわち、眼鏡レンズLEの凹面(後面)が上側、眼鏡レンズの凸面(前面)が下側となる。レンズチャック軸22LがレンズLEの前面側となり、レンズチャック軸22RがレンズLEの後面側となる。
<X軸及びZ軸駆動機構>
図4は、レンズチャックユニット20のX軸方向及Z軸方向の駆動機構について説明する図である。レンズチャックユニット20には、レンズチャックユニット20をスピンドル保持ユニット30に対して、X方向及びZ方向にそれぞれ移動させる各駆動機構(X軸駆動機構80、Z軸駆動機構85)が設けられている。
X軸駆動機構80は、駆動源(モータ)81を備える。モータ81には、X軸方向に向かって延びるシャフト82が直結されている。また、モータ81の回転軸には、レンズチャックユニット20のX軸方向の移動位置を検知するエンコーダが取り付けられている。シャフト82の外周には、ネジ溝が形成されている。シャフト82の先には、軸受けとして図示無き移動部材(例えば、ナット)が嵌まりあっている。移動部材には、レンズチャックユニット20が固定されている。モータ81が回転駆動されると、レンズチャックユニット20がX軸方向に延びるシャフト82に沿って移動する。これによって、キャリッジ21とともに、レンズチャック軸22L、22RがX軸方向に直線移動される。
Z軸駆動機構85は、駆動源(モータ)86を備える。モータ86には、Z軸方向に向かって延びる図示無きシャフトが直結されている。また、モータ86の回転軸には、レンズチャックユニット20のZ軸方向の移動位置を検知するエンコーダが取り付けられている。シャフトの外周には、ネジ溝が形成されている。シャフトの先には、軸受けとして図示無き移動部材(例えば、ナット)が嵌まりあっている。移動部材には、レンズチャックユニット20が固定されている。モータ86が回転駆動されると、レンズチャックユニット20がZ軸方向に延びるシャフトに沿って移動する。これによって、キャリッジ21とともに、レンズチャック軸22L、22RがZ軸方向に直線移動される。
<スピンドル保持ユニット>
図2において、スピンドル保持ユニット30は、移動支基31、左右側面に第1加工具ユニット40、第2加工具ユニット45、レンズ形状検知ユニット50L、50Rが備えられている。移動支基31の左右側面には、第1加工具ユニット40及び第2加工具ユニット45が配置される。
<加工ユニット>
図2に示されるように、第1加工具ユニット40は、移動支基31の左側面に配置されており、3つのスピンドル40a、40b、40cが備えられている。また、第2加工具ユニット45は、移動支基31の右側面に配置されており、3つのスピンドル45a、45b、45cが備えられている。第1加工具ユニット40のスピンドル40a、40b、40cはそれぞれ回転軸40a1,40b1、40c1を有し、その各回転軸と同軸に各加工具(ツール)60a、60b、60cが取り付けられる。また、第2加工具ユニット45のスピンドル45a、45b、45cはそれぞれ回転軸45a1、45b1、45c1を有し、その各回転軸に同軸に各加工具65a、65b、65cが取り付けられる。各加工具は、眼鏡レンズを加工するための加工具として用いられる。各スピンドルの回転軸は、各スピンドルの内部に配置された回転伝達機構を介し、各スピンドルの後方にそれぞれ配置された駆動源(例えば、モータ)により回転される。
例えば、本実施例においては、加工具60aには、粗加工具としてのエンドミル又はカッターが配置されている。加工具60aは、仕上げ加工前の未加工の眼鏡レンズLEを切削するために用いられる。加工具60bには、溝掘り加工具(溝加工具)としてカッターが配置される。加工具60cには、レンズLEの屈折面に穴を開けるための穴加工具としてのエンドミルが配置されている。加工具65aには、鏡面加工具として鏡面砥石が配置される。鏡面加工具は、水を用いて、眼鏡レンズLEの鏡面を磨くために用いられる。加工具65bには、仕上げ加工具として円錐形状を持つカッターが配置される。仕上げ加工具65bは、レンズLEの周縁にヤゲンを形成するためのヤゲン溝(V溝)とレンズLEの周縁を平加工するための平加工面とが形成されており、粗加工されたレンズ周縁をヤゲン加工及び平仕上げ加工するために用いられる。また、仕上げ加工具65b(平加工面)は面取り加工用として兼用される。加工具65cには、ヤゲン加工されたレンズ周縁をSらに段付き加工するためのステップ加工用の加工具が配置されている。
ここで、粗加工時にはレンズLEの切削量が多いため、加工具60aは、溝掘り加工具60b及び穴加工工具60aよりも高パワーで回転される。このため、加工具60aの回転軸40a1は、溝掘り加工具60b及び穴加工工具60aの回転軸よりも太くされ、また、回転軸40a1を回転可能に保持するための軸受け機構は、スピンドル40b、40cに設けられた軸受け機構より大きくされている。これらにより、スピンドル40aの外周の直径は加工具60aの直径よりも大きい。例えば、スピンドル40aの外周の直径は30mmほどである。これに対して、加工具60aの直径は、スピンドル40aの外周の直径よりも細く、さらに、レンズチャック軸22の直径よりも細く、例えば、4mmである。これにより、後述する図10のように、砥石による粗加工とは異なり、レンズLEが分割されるように粗加工することが可能となり、砥石による粗加工に対して粗加工時間が大幅に短縮される。
なお、仕上げ加工においてもレンズLEの切削量が多いため、仕上げ加工具65bのスピンドル45bもスピンドル40aと同じものが用いられている。
各スピンドルの近傍には、それぞれ、空気や水を送るためのホース41a、41b、41c、46a、46b、46cが設けられている。ホース41a、41b、41c、46a、46b、46cは、眼鏡レンズ加工後の切削片を空気によって除去するために用いられる。また、ホース46aは、眼鏡レンズを加工する際に用いる水を供給するために用いられる。もちろん、ホースは、用途に応じて、任意に交換可能である。例えば、水用のホースから空気用のホースに交換してもよい。
各スピンドルは、スピンドルの先端が下方(重力方向)に向かって傾斜して配置されている。本実施例においては、各スピンドルの傾斜角度がZ軸方向(水平方向)から下方に45°傾斜するように配置されている。
<Y軸駆動機構>
図5は、スピンドル保持ユニット30のY軸方向の駆動機構について説明する図である。スピンドル保持ユニット30には、スピンドル保持ユニット30をレンズチャックユニット20に対して、Y軸方向に移動させる各駆動機構(Y軸駆動機構90)が設けられている。
Y軸駆動機構90は、駆動源(モータ)91を備える。モータ91の回転軸には、Y軸方向に向かって延びるシャフト92が直結されている。また、モータ91には、スピンドル保持ユニット30のY軸方向の移動位置を検知するエンコーダが取り付けられている。シャフトの外周には、ネジ溝が形成されている。シャフトの先には、軸受けとして移動部材(例えば、ナット)94が嵌まりあっている。移動部材94には、移動支基31が固定されている。モータ91が回転駆動されると、移動支基31がY軸方向に延びるシャフトに沿って移動する。これによって、スピンドル保持ユニット30がY軸方向に直線移動される。なお、移動支基31には、図示無きバネが掛けられており、移動支基31の下方への荷重をキャンセルしてその移動が容易になるようにしている。
以上のような加工ユニットの構成において、Y軸駆動機構90及びZ軸駆動機構85は、加工具回転軸(40a1,40b1,40c1、45a1,45b1、45c1)に対するレンズチャック軸22の相対的な位置関係を変化させるための移動機構を構成し、さらに、その移動機構として、加工具回転軸とレンズチャック軸22との軸間距離を変動する機構と、レンズチャック軸22の軸方向にレンズチャック軸22を移動する機構と、を構成する。
<レンズ形状検知部>
図2において、キャリッジ21の上方には、レンズ形状検知ユニット(レンズコバ形状検知ユニット)50L、50R、レンズ形状検知ユニットの駆動機構55が設けられている。レンズ形状検知ユニット50Lは、レンズ前面の位置(玉型上のレンズ前面側の位置)を検知する。レンズ形状検知ユニット50Rは、レンズ後面の位置(玉型上のレンズ後面側の位置)を検知する。
レンズ形状検知ユニット50L、50Rの先端部には、測定子51F、51Rが固定されている。測定子51Fは、レンズLEの前面に接触される。測定子51Rは、レンズLEの後面に接触される。レンズ形状検知ユニット50L、50Rは、Z軸方向にスライド可能に保持されている。
駆動機構55は、レンズ形状検知ユニット50L、50RをZ軸方向に移動させるために用いられる。例えば、駆動機構55における図示無きモータの回転駆動がギヤ等の回転伝達機構を介してレンズ形状検知ユニット50L、50Rに伝えられる。これによって、退避位置に置かれた測定子51F、51RがレンズLE側に移動されると共に、測定子51F、51RをレンズLEに押し当てる測定圧が掛けられる。なお、測定子51F、51Rを押し当てる構成としては、これに限定されない。例えば、バネを用いることによって、測定子51F、51Rを押し当てる構成が挙げられる。
レンズLEの前面位置の検知時には、軸角度変更機構25によってレンズチャック軸22L、22RがZ軸方向に位置された後、玉型形状に基づいてレンズLEが回転されながらスピンドル保持ユニット30をY軸方向に移動させ、レンズ形状検知ユニット50Lに設けられた図示無きエンコーダによりレンズ前面のレンズチャック軸方向の位置(玉型上のレンズ前面側の位置)が検知される。また、レンズ後面においても、レンズ前面位置の検知時と同様にして、レンズ形状検知ユニット50Lに設けられた図示無きエンコーダにより後面のレンズチャック軸方向の位置が検知される。
<制御手段>
図6は、眼鏡レンズ加工装置の制御ブロック図である。制御部(制御手段)70には、モータ26、モータ110、モータ120、モータ81、モータ86、モータ91、図示無き各スピンドルの内部に配置されたモータ、図示無き圧力駆動源、レンズ形状検知ユニット50L、50R、とが接続されている。
また、制御部70には、加工条件のデータ入力用のタッチパネル機能を持つディスプレイ5、加工スタートスイッチ等が設けられたスイッチ部7、メモリ3、ホストコンピュータ1000等が接続されている。ホストコンピュータ1000は、玉型データ、玉型に対する眼鏡レンズの光学中心のレイアウトデータ、等のレンズ加工に必要な加工条件データを入力するためのデータ入力ユニットして機能する。
<制御動作>
以下、本実施例における眼鏡レンズ加工装置1の制御動作について説明する。眼鏡レンズの加工は、ホストコンピュータ1000から入力された玉型等の加工条件データに応じて、種々の加工ステップが選択されることによって行われる。以下の説明においては、種々の加工ステップとして、粗加工及び仕上げ加工を例に挙げて説明する。
初めに、図示無き搬送装置から眼鏡レンズ加工装置1に眼鏡レンズが搬送される。搬送装置は、眼鏡レンズをレンズチャック軸22L、22Rに挟持させる。眼鏡レンズが挟持されると、制御部70は、予め入力された玉型等の加工条件データに基づいて、各加工ステップにて、眼鏡レンズの加工を開始する。
図7は、眼鏡レンズ加工時の眼鏡レンズ加工装置1の駆動動作について説明する図である。図7(a)は、眼鏡レンズを設置又は取り出す際における加工開始前後の眼鏡レンズ加工装置1の位置関係(初期位置)を示す図である。S(点線)は、加工を開始する際のレンズチャック軸22の初期位置を示している。また、Y軸方向の初期位置は、Y軸方向の駆動範囲の最上端位置となる。Z軸方向の初期位置は、Z軸方向の駆動範囲の中間位置となる。X軸方向の初期位置は、X軸方向の駆動範囲の最前面位置となる。なお、初期位置は上記構成に限定されない。初期位置は、眼鏡レンズ加工装置1の駆動範囲であればよい。もちろん、検者が初期位置を任意に設定可能な構成としてもよい。
初めに、レンズ形状検知ユニット50L、50Rによって、眼鏡レンズ前面、眼鏡レンズ後面の位置を検知し、レンズ形状データを取得する。レンズ形状検知ユニット50L、50Rによって検知されたレンズ前面及び後面の検知情報は、メモリ3に記憶される。制御部70は、モータ81を駆動させ、レンズチャックユニット20をX軸方向に後退させる。次いで、制御部70は、モータ91を駆動させ、スピンドル保持ユニット30をY軸方向に移動させる(図7(b)参照)。また、Y軸方向の移動時に、制御部70は、モータ26を駆動させることによって、A軸を中心にキャリッジ21を回転させ、レンズチャック軸22の軸角度を変更する。例えば、図7(c)に示されるように、制御部70は、A軸を回転中心として、初期位置Sからレンズチャック軸22をa方向(反時計回り方向)に所定角度回転させる。もちろん、b方向(時計回り方向)に所定角度回転させる構成としてもよい。また、制御部70は、モータ86を駆動させ、Z軸方向に移動させる(図7(d)参照)。
図8は、YZ軸方向の位置調整及びレンズチャック軸22の調整後の位置関係について説明する図である。図8(a)は、レンズ形状検知ユニット50L、50Rによる検知時の図を示している。図8(b)は、加工具60aによる粗加工時の図を示している。図8(c)は、仕上げ加工具65bによる仕上げ加工時の図を示している。
制御部70は、YZ軸方向の位置調整及びレンズチャック軸22の軸角度を調整し、レンズ形状検知ユニット50L、50Rの位置に眼鏡レンズLEが来るようにする(図8(a)参照)。そして、YZ軸方向の位置調整及びレンズチャック軸22の軸角度の調整後、制御部70は、モータ81を駆動させ、レンズチャックユニット20をX軸方向に前進させる。このようにして、制御部70は、レンズ形状検知ユニット50L、50Rの位置に眼鏡レンズLEが位置されると、レンズチャック軸22の回転駆動とY軸方向の駆動を玉型に基づいて制御し、レンズ前面及び後面の玉型に対応するレンズチャック軸方向のレンズ形状データを取得する。
次いで、制御部70は、各加工具による眼鏡レンズLEの種々の加工を行う。各加工具で加工を行う場合、レンズの前面側が、各加工具の基部に向くように、レンズチャック軸22を所定角度回転させる。以下、各加工について説明する。
<粗加工>
粗加工時においては、粗加工後の他の加工を考慮して眼鏡レンズの切削を行う必要がある。図9は、粗加工及び仕上げ加工の加工軌跡について説明する図である。眼鏡レンズは、粗加工が完了すると、加工具65bによって仕上げ加工され、仕上げ加工の最終的なレンズLEの加工径は入力された玉型である仕上げ加工軌跡L1とされる。なお、レンズLEの粗加工及び仕上げ加工の基礎として用いられる玉型は、レンズチャック軸22のチャック中心(加工中心)Oを基準にした動径データ(rn、θn)(n=1,2,3,・・・,N)に変換される。rnは動径長であり、θnは動径角である。Nは、例えば、1000ポイントである。
粗加工軌跡L2は、仕上げ加工軌跡L1(玉型)の動径長に対して一定量(例えば、1mm)の仕上げ代(仕上げを行うための部分)が加えられた加工径となるように、制御部70によって玉型(動径データ)に基づいて演算される。粗加工軌跡L2の動径データを(Rn、θn)(n=1,2,3,・・・,N)とする。粗加工時の加工径は動径長Rnでもあるので、以下では加工径Rnとする。
図10は、粗加工時の加工手順の一例について説明する図である。例えば、粗加工は、2回の切削(第1切削部分DA、第2切削部分DB)を行うことによって、眼鏡レンズLEを切削する。もちろん、2回より多い複数回の加工によって切削を完了させる構成としてもよい。2回の切削によって粗加工を行う場合、初めに、MA方向の加工を行う。MA方向の加工を行うために、制御部70は、加工具60aをレンズ外周の加工開始位置Ps1を位置させた後、位置Ps1より眼鏡レンズLEの切削を開始し、経路M1、M2(玉型形状部分)、M3の順に切削を行う。この例では、経路M3はチャック中心Oに対して経路M1と180度反対側の方向に設定されている。経路M1の加工では、制御部70は、レンズLEの回転を停止した状態で加工具60aがチャック中心Oに向かい、粗加工軌跡L2に到達するまで相対的にレンズLEを移動させる。経路M2の加工では、制御部70は、レンズLE(レンズチャック軸)を回転させながら、玉型を基にして求められた粗加工軌跡L2に基づいてレンズチャック軸22に対する加工具60aの接近距離を変化させる。経路M3のチャック中心O側の位置Ps2まで加工具60aが達したら、制御部70は、レンズLEの回転を停止し、加工具60aが経路M3に沿ってレンズLEの外周に抜けるように相対的にレンズLEを移動させる。
これにより、レンズチャック軸22に保持されたレンズLEから第1切削部分DAが切り落とされる。
MA方向の加工が完了すると、MB方向の加工を開始する。MB方向の加工において、加工具60aが経路M4を通過するように加工が行われる。すなわち、制御部70は、加工具60aを位置Ps2に位置させた後、レンズLEを回転させながら、粗加工軌跡L2に基づいてレンズチャック軸22に対する加工具60aの接近距離を変化させ、経路M4に沿って加工具60aを移動させる。これにより、レンズチャック軸22に保持されたレンズLEから第2切削部分DBが切り落とされる。
なお、MB方向の加工においては、加工開始位置を経路M1側の位置Ps3より開始するようにして、経路M4を粗加工具が通るように切削を行っていく構成であってもよい。また、MA方向から切削を開始する構成ではなく、MB方向から切削を開始する構成であってもよい。
ここで、眼鏡レンズLEの粗加工する際、図11のように、基本的に加工具60aの回転軸40a1に対してレンズチャック軸22が平行な状態で(本明細書では、5度以内の傾きも「平行」に含まれるものとする)レンズLEの周縁が粗加工される。しかし、粗加工を行うための加工具60aの径がスピンドル40aの外周径より細いため、レンズチャック軸22Lを回転可能に保持する保持アーム29Lとスピンドル40aとが、仕上げ加工等の他の加工と比較して大きく接近する。図11において、RSは、回転軸40a1とレンズチャック軸22とが平行なままで、スピンドル40aに対して保持アーム29Lが接触せずに、最も接近できるときの加工径(レンズチャック軸22のチャック中心から加工具60aの加工面までの距離)を示す。
なお、本実施例では、レンズLEの前面側にスピンドル40aが位置し、レンズLEの前面側に加工具60aの先端が位置する状態で、粗加工が行われる。
粗加工軌跡L2の加工径Rnが所定の加工径(基準値)RSより小さいと、スピンドル40aに取り付けられた加工具60aを加工径Rnの位置まで進める際に、加工具60aが加工径Rnの位置に到達する前に、保持アーム29Lとスピンドル40aが接触してしまう(図11参照)。これによって、加工具60aが加工径Rnの位置まで届かなくなり、切削ができなくなる。すなわち、保持アーム29Lとスピンドルとが接触干渉することにより、眼鏡レンズの周縁を粗加工できる動径範囲が限定されてしまう。
このため、本実施例の制御部70は、少なくとも粗加工時の眼鏡レンズの加工径Rnが所定の加工径RSを下回る動径角部分においては、加工径Rnに応じて、加工具回転軸40a1に対するレンズチャック軸22の軸角度を変更して、スピンドル40aと保持アーム29Lとが干渉しないように、眼鏡レンズの粗加工を行う。
<軸角度変更>
以下、レンズチャック軸22の軸角度変更について説明する。図12は、加工径Rnと軸角度αの関係について説明する図である。図12(a)は、加工径Rnが加工径RS以上の場合のレンズチャック軸22と加工具60aとの関係を示す図である。また、図12(b)は、加工径Rnが加工径RSより小さい場合のレンズチャック軸22と加工具60aとの関係を示す図である。
加工径Rnが加工径RS以上の動径θn部分では、制御部70は、スピンドル40aの回転軸40a1(軸中心O1)とレンズチャック軸22(軸中心O2)とが平行となるように、レンズチャック軸22の軸角度を調整して加工を行う。この場合、回転軸40a1とレンズチャック軸22とを平行な状態にして粗加工を行っても、加工径Rnが加工径RS以上であるため、スピンドル40aと保持アーム29Lとが干渉しない状態で加工を行うことができる(図12(a)参照)。
例えば、スピンドル40aの直径が30mm、スピンドル40a側の保持アーム29Lの半径が8mm、加工具60aの刃径が3mmの構成の場合、加工径RSを21.5mmとし、加工径Rnが21.5mm以上であれば、スピンドル45aと保持アーム29Lとを平行な状態にして粗加工を行っても、スピンドル40aと保持アーム29Lとが干渉しない状態で加工を行うことができる。
加工径Rnが加工径RSより小さい場合、制御部70は、回転軸40a1の軸中心O1とレンズチャック軸22の軸中心O2との成す角度αを調整して加工を行う(図12(b)参照)。
なお、スピンドル40aの回転軸に対してレンズチャック軸22が所定の角度α分傾斜するように、レンズチャック軸22を傾斜させて粗加工を行う場合、眼鏡レンズ前面と眼鏡レンズ後面とで、加工具60aとの動径長方向(レンズチャック軸22に対して垂直な方向)の接点(加工位置)が異なる。すなわち、粗加工後においては、眼鏡レンズの動径角における眼鏡レンズ後面の加工径が眼鏡レンズ前面の加工径よりも小さくなる。このため、各動径角における眼鏡レンズ後面の粗加工後の加工径が粗加工軌跡の加工径Rnよりも大きくなるように、眼鏡レンズ後面位置に基づいて粗加工を行う。
なお、保持アーム29Lには、保持アーム29Lの外周径がレンズLEの方向に向かうに従って徐々に小さくなる形状の切欠き11が設けられている(図12参照)。例えば、スピンドル40aを用いて加工する場合、保持アーム29L22に切欠き11が設けられていることによって、保持アーム29Lとスピンドル40aをより近距離まで近づけることが可能となる。すなわち、保持アーム29Lとスピンドルを近づけた際に、保持アーム29Lがスピンドルと接触する部分に関して、レンズチャック軸の一部を取り除くことによって、保持アーム29Lとスピンドルをより近づけることが可能となる。
<軸角度の設定>
スピンドル40aと保持アーム29Lとが干渉しない軸角度αは、制御部70による計算やシミュレーション等によって、加工径Rnと、レンズ後面位置情報と、に基づいて、設定(算出)される。なお、加工径Rn及びレンズ後面位置情報に応じた軸角度αが軸角度相関テーブルとして、メモリ3に記憶されている。もちろん、制御部70は、軸角度αの算出プログラムを備え、加工の際に、加工径Rn及び眼鏡レンズ後面位置情報から軸角度を算出する構成としてもよい。
以下、加工径Rnに応じた軸角度の算出方法について説明する。図13は、加工径Rnが加工径RSより小さい場合に、加工径Rnに応じた軸角度αの設定について説明する図である。例えば、スピンドル40a(回転軸40a1)の軸中心O1上における、回転軸40a1と加工具60aとの連結位置Pから、レンズチャック軸22の垂直方向における軸中心O2までの距離YSとする。この場合、距離YSが予め設定された所定の距離(レンズチャック軸22を傾斜させた場合に、保持アーム29Lとスピンドル40aとが干渉しないように両者を接近できる距離)より小さくなると、スピンドル40aと保持アーム29Lの干渉が生じるため、加工径Rnに応じて、距離YSが所定距離より大きくなるように軸角度αを設定する。上記のレンズチャック軸22の傾斜とは、レンズチャック軸22に対して加工具60aの後端よりも先端側の距離が近づくことを言う。
なお、本実施例においては、連結位置Pを基準に軸角度を設定したがこれに限定されない。干渉が生じない軸角度であればよく、軸角度を設定するための基準はどの部位に設定してもよい。例えば、加工具60aの先端位置を基準としてもよいし、スピンドル40aの外周位置を基準としてもよい。
また、本実施例において、軸角度は、加工径Rnの他に眼鏡レンズ後面位置情報を考慮して、設定されている。以下、加工径Rnとレンズ後面位置情報とに基づいた軸角度の設定を説明する。
図14は、レンズLEの厚みの違いによってレンズ後面位置が異なる場合を模式的に示した図である。レンズLEの厚みが異なるレンズG1,G2及びG3について、BL1、BL2及びBL3は加工径RnにおけるレンズG1,G2及びG3の後面位置をそれぞれ示している。F1、F2及びF3は、レンズチャック軸22の軸方向における基準位置FOから位置BL1、BL2及びBL3までの距離を示している。距離F1は、レンズ形状検知ユニット50Rの検知結果に基づいて得られる。レンズ形状検知ユニット50Rの検知では、レンズ後面位置は玉型の動径長rnに対応した位置として得られるが、近似的に粗加工軌跡L2の加工径Rnにおける位置としても実用上の問題は無い。同様に、距離F2及び距離F3は、それぞれレンズ形状検知ユニット50Rの検知結果に基づいて得られる。
レンズG1を粗加工する場合、その後面位置BL1を確保するためにレンズチャック軸22を傾けるときの軸角度α1は、例えば、連結位置Pの距離YSと、レンズチャック軸方向の基準位置FOからの位置Pの距離FPと、距離F1と、加工径Rnと、に基づいて数学的に求められる。そして、加工径Rnが加工径RSを下回る動径角範囲に関して、動径角θn毎の加工径Rnについて同様な演算を行うことにより、動径角θn毎の軸角度α1が求められる。
レンズG2の場合、加工具60aの連結位置Pは同じとして、後面位置BL2を確保するための軸角度α2は、レンズG1に対して距離F1を距離F2に置き換えることで求められる。レンズG3の場合、後面位置BL3を確保するための軸角度α3は、レンズG1に対して距離F1を距離F3に置き換えることで求められる。これらレンズG2,G3においても、レンズG1と同様な方法によって動径角θn毎の軸角度α2、α3が求められる。
なお、レンズチャック軸22の軸角度αが大きくなると、レンズ前面側に残る仕上げ加工量が増大する。しかし、この仕上げ加工量は、レンズチャック軸22を加工具60aの回転軸40a1と平行にしたまま、加工径RSで加工する場合に残る加工量に比べれば少ないため、加工具65bによる仕上げ加工時の加工負荷及び加工時間を短くできる。
図14の説明においては、加工具60aの連結位置Pの距離YSは加工径Rnに拘わらず同一としたが、保持アーム29Lとスピンドル40aとが干渉しない距離であれば、加工径Rnに応じて変化させても良い。また、レンズチャック軸22の軸方向における連結位置Pの位置(距離FP)についても、レンズ前面の位置(これはレンズ形状検知ユニット50Lによって得られる)に応じて変化させても良い。これらの場合も、連結位置Pのレンズチャック軸に対する相対的な位置関係、加工径Rn及びレンズ後面位置情報に基づいて軸角度αが求められる。
上記では、レンズ後面位置情報はレンズ形状検知ユニット50Rの検知結果によって得られるものとしたが、これに限られない。例えば、簡易的には、加工対象となるレンズLEの最大のレンズ厚を想定し、このレンズにおけるレンズ後面位置情報を所定値として予めメモリ3に記憶しておく。すなわち、レンズ後面位置は加工径Rnに応じて予め設定された値である。例えば、図14のレンズG3が最大のレンズ厚であるとすれば、上記の演算によって動径角θn毎の軸角度α1が求められる。
また、レンズ後面位置情報は加工径Rnに応じた値で無く、想定されるレンズの最大を考慮して定められた一定値であって、加工径Rnによって変化しない一定値をメモリ3に記憶しておいても良い。この場合であっても、加工具60aをレンズチャック軸22と平行にしたまま、加工径RSで粗加工する場合に比べて、粗加工後に行われる仕上げ加工量を少なくできる。
高カーブレンズがレンズチャック軸22に保持されている場合、レンズ後面のカーブがきつくなり、粗加工前のレンズ形状検知ユニット50Rによる測定ができないかもしれない。この場合には、上記のように予め設定されたレンズ後面位置情報を使用することができる。
レンズLEが低カーブの場合(レンズLEが所定の高カーブで無い場合)には、レンズ形状検知ユニット50Rによる測定が可能である。このため、レンズLEが所定のカーブの高カーブレンズか低カーブレンズかを入力ユニットであるホストコンピュータ1000から装置1に入力される構成とし、制御部70は、低カーブレンズの場合には、レンズ形状検知ユニット50Rを駆動し、これによって得られたレンズ後面位置情報に基づいて軸角度αを設定する。高カーブレンズの場合には、制御部70は、予め設定されたレンズ後面位置情報に基づいて軸角度αを設定する。
なお、本実施例では、レンズLEの前面側にスピンドル40aが位置し、レンズLEの後面側に加工具60aの先端が位置する状態で粗加工を実施する構成である。このため、上記では、軸角度αの設定に際して、レンズ後面位置情報を基にしたが、レンズLEの前面側に加工具60aの先端が位置する状態で粗加工を実施する構成の場合には、前述のレンズ後面位置情報をレンズ前面位置情報に置き換えることによって、加工径Rnに応じた軸角度αを設定することができる。すなわち、軸角度αは、レンズチャック軸22に保持されたレンズLEの前面及び後面の屈折面の内、加工具60aの先端側に位置する屈折面の位置情報(レンズチャック軸方向の位置情報)と、加工径Rnに基づいて求められる。加工具60aの先端側にレンズ前面が位置する構成の場合、レンズ前面位置情報は、粗加工前に駆動されるレンズ形状検知ユニット50Lの検知結果によって得られる。
<粗加工制御>
以下、粗加工時の具体的な加工制御について説明する。粗加工を行う場合、制御部70は、モータ81を駆動させ、レンズチャックユニット20をX軸方向に後退させる。制御部70は、粗加工を行うための加工具60aの位置に眼鏡レンズLEが来るように、Y軸駆動機構90及びZ軸駆動機構85の駆動を制御し、YZ軸方向の位置を調整する。また、制御部70は、レンズ形状測定によって取得されてメモリ3に記憶された眼鏡レンズ後面位置情報、及び粗加工用の動径長情報である加工径Rnに基づいて、動径角毎の軸角度を設定する。そして、設定された軸角度に基づいて軸角度変更機構25の駆動を制御し、レンズチャック軸22の軸角度を調整し、粗加工を行うための加工具60aの位置に眼鏡レンズLEが来るようにする(図8(b)参照)。
制御部70は、加工具60aの位置に眼鏡レンズLEが位置されると、図示無き駆動源を駆動させ、加工具60aを回転させる。制御部70は、粗加工軌跡に基づき、図10に示したような経路で加工具60aが移動するようにY軸駆動機構90及びZ軸駆動機構85の駆動を制御する。粗加工軌跡に沿った切削加工段階(経路M2、M4)では、制御部70は、レンズ形状測定によって取得されてメモリ3に記憶された眼鏡レンズ後面位置情報、及び粗加工用の動径長情報である加工径Rnに基づいて、動径角毎の軸角度を設定する。そして、制御部70は、レンズLEを設定された軸角度に基づいて軸角度変更機構25の駆動を制御し、レンズチャック軸22の軸角度を変更させる。例えば、加工径Rnが加工径RS以上の動径角部分を切削する際には、スピンドル40aの回転軸40a1とレンズチャック軸22とが平行な関係となるように軸角度を制御して加工を行う。そして、加工径Rnが加工径RSを下回るようになったら動径角毎に設定された軸角度に徐々に軸角度を変更させると共に、加工径Rnに基づいてレンズチャック軸22と回転軸40a1との軸間距離を変化させるようにY軸駆動機構90及びZ軸駆動機構85の駆動を制御する。これによって、各動径角の位置での仕上げ代を少なくすることができ、仕上げ加工時の加工効率を向上させることができる。このような構成により、加工具60aによって粗加工可能な加工径を小さくすることが可能となる。
なお、粗加工時において、加工具60aの回転数を50000rpm(rotation per minute)以上として加工を行うと、切削力が向上し、加工時間が短縮されるため、より好ましい。
なお、本実施例においては、軸角度の設定は前述の例に限定されない。例えば、眼鏡レンズ前面位置のみを検知し、眼鏡レンズ前面位置から所定の厚みを備えた眼鏡レンズを想定し、眼鏡レンズの後面位置を推測する。そして、推測した眼鏡レンズの後面位置と加工径Rnから軸角度を設定する構成が挙げられる。なお、眼鏡レンズの後面位置の推測の際には、最大の厚みを備えた眼鏡レンズを想定して推測をするとよりよい。
なお、本実施例においては、軸角度の設定は、上記の例に限定されない。例えば、所定範囲の加工径毎に軸角度が設定されている構成であってもよい。この場合、最小径が所定範囲の境界を越える毎に、軸角度が段階的に変更される。
なお、本実施例においては、軸角度の設定は、上記の例に限定されない。例えば、粗加工軌跡内で最小加工径に応じて軸角度が設定される構成であってもよい。
なお、本実施例においては、粗加工の制御において、各動径角毎の動径長(加工径Rn)に応じて、軸角度を変更しながら粗加工を行う構成としたがこれに限定されない。例えば、粗加工時の軸角度を一定にして加工を行う構成であってもよい。この場合、制御部70は、レンズチャック軸の軸角度を粗加工軌跡内で最小加工径を加工する際の軸角度となるように、軸角度を変更し、一定の軸角度にて加工を行う。
<仕上げ加工>
粗加工完了後、制御部70は、仕上げ加工を行う。制御部70は、モータ81を駆動させ、レンズチャックユニット20をX軸方向に後退させる。制御部70は、上記記載と同様にして、YZ軸方向の位置調整及びレンズチャック軸22の軸角度を調整し、仕上げ加工を行うための加工具65bの位置に眼鏡レンズLEが来るようにする(図9(c)参照)。
制御部70は、加工具65bの円錐の加工面に対して、レンズチャック軸22を平行にする。又は、制御部70は、レンズコバをテーパ(先細り形状)に持たせる場合には、そのテーパ角度に応じて、円錐の加工面に対して角度傾斜するように、レンズチャック軸22を傾斜させる。そして、仕上げ加工を行う。
例えば、ヤゲン仕上げ加工では、制御部70は、ヤゲン軌跡(レンズのコバ厚に基づき、所定の演算により求められる)に基づいて、粗加工後のレンズコバの所定位置が加工具65bのヤゲン溝に位置するように、Y軸方向及びZ軸方向の駆動を制御する。また、制御部70は、所定角度傾斜又は眼鏡レンズLE前面カーブに垂直な角度となるように、A軸を回転中心として、レンズチャック軸22の軸角度を変更させ、レンズチャック軸22の軸角度の回転駆動を制御する。
また、平仕上げ加工では、制御部70は、粗加工後のレンズコバが加工具の平仕上げ加工面に位置するように、玉型に基づいてY軸方向及びZ軸方向の駆動を制御する。また、制御部70は、円錐の平加工面に対して所定角度傾斜又は眼鏡レンズLE前面カーブに垂直な角度となるように、A軸を回転中心として、レンズチャック軸22の軸角度を変更させ、レンズチャック軸22の軸角度の回転駆動を制御する。
制御部70は、加工具65bの位置に眼鏡レンズLEが位置されると、図示無き駆動源を駆動させ、スピンドル45bを回転駆動させ、その同軸に各加工具を回転させる。そして、制御部70は、玉型に基づいてY軸方向、Z軸方向、レンズチャック軸22の軸角度の駆動を制御し、仕上げ加工を行う。
なお、本実施例においては、加工具65bを面取り用の加工具として兼用する。この場合、平仕上げ加工面が、面取り加工面として兼用される。制御部70は、面取りの角度に基づいてレンズチャック軸22の傾斜角度を制御する。すなわち、制御部70は、面取り軌跡(レンズの前面(前面コバ)位置、後面(後面コバ)位置に基づき、所定の演算により求められる)に基づいてY軸方向及びZ軸方向の制御を行うことによって、面取り加工を行う。この場合、制御部70は、レンズチャック軸22の軸角度をa方向又はb方向に180°回転させ、加工具65bにて加工を行う眼鏡レンズの前面と後面との切り換えを行う。以上のように、レンズチャック軸22の軸角度を変更することによって、1つの加工具にて、眼鏡レンズの前面と後面の面取り加工を行うことができる。
<鏡面加工>
鏡面加工が設定されている場合、制御部70は、鏡面加工を行う。制御部70は、モータ81を駆動させ、レンズチャックユニット20をX軸方向に後退させる。制御部70は、上記粗加工及び仕上げ加工時と同様にして、YZ軸方向の位置調整及びレンズチャック軸22の軸角度を調整し、鏡面加工を行うための加工具65aの位置に眼鏡レンズLEが来るようにする。
鏡面加工は、上記記載の通常の仕上げ加工と同様な制御にて行われる。制御部70は、加工具65bの位置に眼鏡レンズLEが位置されると、図示無き駆動源を駆動させ、スピンドル45bを回転駆動させ、その同軸に各加工具を回転させる。そして、制御部70は、玉型に基づいてY軸方向、Z軸方向、レンズチャック軸22の軸角度の駆動を制御し、鏡面加工を行う。なお、鏡面加工時には、水が使用される。
<その他の加工>
なお、その他の加工においても、上記記載と同様にして、各加工具の位置に眼鏡レンズLEが来るように、YZ軸方向の位置調整及びレンズチャック軸22の軸角度を調整する。
例えば、溝堀り加工において、制御部70は、加工具60bを用いて、平仕上げ加工後、溝掘り軌跡(レンズのコバ厚に基づき、所定の演算により求められる)に基づいてY軸方向及びZ軸方向の駆動を制御し、加工を行う。
例えば、穴加工において、制御部70は、レンズ前面を加工具60cの先端方向に向ける。制御部70は、入力された穴位置データと、穴位置でのレンズ前面形状(レンズ形状測定により得られる)に基づき、穴位置での法線方向に穴加工具の軸が向くように、レンズチャック軸を傾斜させ、Y軸方向及びZ軸方向の駆動を制御し、加工を行う。
例えば、ステップ加工において、制御部70は、加工具65cの傾斜に基づき、レンズチャック軸22を傾斜させる。そして、制御部70は、ヤゲン軌跡、入力されたステップ加工軌跡(L字上の角部の位置の軌跡)に基づき、Y軸方向及びZ軸方向の駆動を制御し、加工を行う。
<有効刃長>
次に、刃長の短い加工具60であっても適切な粗加工を可能にする制御動作を説明する。なお、以下では、レンズチャック軸22の軸方向を、説明の便宜上、H軸方向として説明する。
H軸方向の駆動において、制御部70は、眼鏡レンズ前面位置情報に基づいて、H軸方向の駆動制御を行う。例えば、粗加工前にレンズ形状検知ユニット50Lによって眼鏡レンズ前面の位置(玉型上のレンズ前面側の位置)の検知を行う。そして、眼鏡レンズ前面の加工位置と加工具60aの有効刃長の内で回転軸40a1にもっとも近い部位とのH軸方向の位置を一致させるようにして、粗加工を行う。なお、本実施例において、有効刃長は、加工具60aにおける、切削を行うことが可能な範囲(領域)を示している。
以下、加工具60aの構造について説明する。図15は、加工具(カッター)60aの構造について説明する図である。加工具60aにおいて、部位E0から部位Eの範囲EBは、回転による切削能力が小さいために、切削刃として機能しない。部位Eから先端部ETまでの範囲ELは、切削刃(有効刃長)として機能する。粗加工において、眼鏡レンズの切削は、有効刃長ELで行う。なお、部位E0側が回転軸40a1と連結される。また、有効刃長は、最大の厚み(コバ)を持つ眼鏡レンズのコバよりも大きく構成されている。例えば、本実施例においては、範囲EBが2mm、有効刃長ELが21mmで構成される。
以下、粗加工時における眼鏡レンズLEと加工具60aのH軸方向の位置関係について説明する。図16は、眼鏡レンズLEと加工具60aのH軸方向の位置関係について説明する模式図である。なお、図16においては、レンズチャック軸22を固定とし、スピンドル40a及び加工具60aが移動可能な構成として説明する。
例えば、制御部70は、眼鏡レンズLEを加工径Rnの位置まで粗加工する場合、加工具60aの有効刃長ELの内で最もスピンドル40a側の端部E(図15の部位E)と、眼鏡レンズ前面FLの内で玉型の位置(加工径RSの加工位置)FL1と、のH軸方向における位置が一致するように制御する。すなわち、制御部70は、眼鏡レンズ前面の玉型に対応した位置FL1と有効刃長の端部EのZ軸方向の位置ずれΔHが0となるようにZ軸方向の駆動を制御する。なお、眼鏡レンズ前面の位置FL1は、粗加工前のレンズ形状検知ユニット50Lによって検知される。
以下、H軸方向の駆動制御について、具体的に説明する。図17は、H軸方向の駆動を行った場合の加工具60aの端部Eと眼鏡レンズ前面位置との関係を示す模式図である。図17(a)は、制御部70は、スピンドル40aの中心軸O1とレンズチャック軸22の中心軸軸O2とが平行となるようにして、粗加工を行った場合の図である。また、図17(b)は、スピンドル40aの中心軸軸O1とレンズチャック軸22の中心中心軸O2との成す角度αAがある角度となるように、レンズチャック軸22の軸角度を調整して粗加工を行った場合の図である。
なお、実施例の装置では、粗加工時において、制御部70は、玉型の位置FL1に基づいて、A軸を回転中心とした軸角度変更機構25の回転駆動を制御し、レンズチャック軸22の軸角度を変更する。また、ΔHに基づいて眼鏡レンズLEのY軸方向及びZ軸方向の移動を制御する。図10のように、玉型に沿った経路M3、M4を粗加工するとき、制御部70は、レンズチャック軸の軸角度がいずれの場合(図17(a)、(b))であっても、H軸方向の移動を制御することによって、加工具60aの端部Eが、玉型の動径角毎の眼鏡レンズ前面位置に沿った移動軌跡で移動させる。もちろん、粗加工時において、レンズチャック軸22の軸角度を一定として粗加工を行ってもよい。
なお、図10のように、粗加工ではレンズLEの回転を停止したまま、レンズLEの外周から玉型に対応した位置Ps3(粗加工軌跡)まで加工具60aを進める。位置Ps3に加工具60aが到達するまでの眼鏡レンズの切削は、玉型に対応した眼鏡レンズ前面位置に加工具60aの端部Eを合わせた状態で、玉型の加工位置に到達させる。すなわち、玉型に対応した眼鏡レンズ前面位置と端部Eとの位置を合わせた状態で、位置Ps3まで切削を行う。図10における経路M3の加工にいても同様な方法で切削を行う。
これによって、粗加工時において、眼鏡レンズ前面位置に加工具60aの端部Eが移動されるため、眼鏡レンズの前面が有効刃長ELからはみださない。また、眼鏡レンズのコバよりも有効刃長ELが長いため、眼鏡レンズ後面も有効刃長ELの先端部ETからはみださずに、眼鏡レンズのコバが粗加工される。
以上のような構成によって、有効刃長を短くした加工具であっても、粗加工が可能となり、眼鏡レンズ切削時における軸ぶれや、加工具破損の低減をすることが可能となる。
なお、本実施例においては、眼鏡レンズ前面位置に基づいて、H軸方向の制御を行う構成としたがこれに限定されない。眼鏡レンズの後面位置に基づいて、H軸方向の制御を行う構成としてもよい。例えば、レンズ形状検知ユニット50Rによって眼鏡レンズ後面の位置を検知する。制御部70は、眼鏡レンズ後面の玉型位置と有効刃長の先端部ETのH軸方向の位置ずれΔHが0となるようにH軸方向の駆動を制御する。
また、眼鏡レンズ前面位置及び眼鏡レンズの後面位置に基づいて、H軸方向の制御を行う構成としてもよい。例えば、レンズ形状検知ユニット50L、50Rによって眼鏡レンズ前面位置及び眼鏡レンズ後面の位置を検知する。制御部70は、眼鏡レンズ前面位置と眼鏡レンズ後面位置からコバを算出し、コバが加工具60aの有効刃長内に収まるように、H軸方向の駆動を制御する。この場合、例えば、眼鏡レンズの前面位置と眼鏡レンズ後面位置との中間位置を算出し、中間位置と有効刃長の中心が一致するように制御を行うことが挙げられる。
なお、本実施例においては、レンズ形状検知ユニット50L、50Rによって眼鏡レンズ前面位置及び眼鏡レンズ後面位置を検出する構成としたがこれに限定されない。眼鏡レンズのカーブデータが入力される構成としてもよい。
なお、本実施例においては、玉型に対応した位置における眼鏡レンズ前面位置を検出する構成としたがこれに限定されない。図10の経路M1、M3の加工においては、例えば、玉型に対応した位置の他の位置における眼鏡レンズ前面位置を検出して、眼鏡レンズの前面のカーブ形状を取得する。そして、そのカーブ形状に基づいて、経路M1、M3の加工時のH軸方向の制御を行う構成としてもよい。あるいは、経路M1、M3に沿ってレンズ形状検知ユニット50Lの測定子51Lを移動させて、レンズ前面のカーブ形状を直接得ても良い。この場合、眼鏡レンズの切削が開始され、加工位置(玉型周辺の位置)に加工具60aが到達するまでの眼鏡レンズの切削においても、眼鏡レンズの前面のカーブ形状が算出されているため、H軸方向の制御を行うことが可能となり、眼鏡レンズを適切に切削することができる。すなわち、眼鏡レンズの切削を開始し、加工位置に到達するまでにも、眼鏡レンズの前面位置に沿って加工具60aの端部Eが位置合わせされて、粗加工が行われる。このとき、加工位置に加工具60aが到達するまでの眼鏡レンズの切削は、回転軸40a1(中心軸O1)が眼鏡レンズLEの前面カーブの法線方向となるように、レンズチャック軸22を傾斜させ、粗加工具60aの加工範囲に入るように行う。この場合、眼鏡レンズの後面位置情報を取得し、粗加工後の眼鏡レンズの後面が玉型よりも小さくならないように、制御を行う。なお、加工位置に加工具60aが到達するまでの眼鏡レンズの切削は、回転軸40a1とレンズチャック軸22を平行な状態にて加工を行う構成としてもよい。
なお、本実施例においては、粗加工の制御において、動径角毎の動径長(加工径Rn)に応じて、軸角度を変更しながら粗加工を行う構成としたがこれに限定されない。例えば、粗加工時の軸角度を一定にして加工を行う構成であってもよい。この場合、制御部70は、レンズチャック軸の傾斜角度を最小加工径を加工する際の傾斜角度となるように、軸角度を変更し、一定の軸角度にて加工を行う。