JP2004055909A - 静電チャックおよび処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被吸着体を吸着保持するための静電チャックにおいて、経時劣化を抑えることができる静電チャックを提供すること。
【解決手段】チャック電圧を印加するためのチャック電極と、前記チャック電極の表面に設けられ、被処理体をその表面に吸着するための誘電体層と、を備えた静電チャックにおいて、前記誘電体層は少なくとも厚さ方向に連続発泡した泡状気孔を有する多孔質セラミックスと、この泡状気孔を埋める低抵抗体とを含む構成する。この場合、例えば溶射により製造した誘電体層のように内部に隙間(ポア)が残らないので例えばシリコーンのような封孔材の注入を必要としない。このため例えば基板との摩擦により静電チャックが経時劣化することが抑えられ、また静電チャックからのパーティクルの発生が少ない。この静電チャックは処理装置の載置台に組み込んでもよい。
【選択図】 図4
【解決手段】チャック電圧を印加するためのチャック電極と、前記チャック電極の表面に設けられ、被処理体をその表面に吸着するための誘電体層と、を備えた静電チャックにおいて、前記誘電体層は少なくとも厚さ方向に連続発泡した泡状気孔を有する多孔質セラミックスと、この泡状気孔を埋める低抵抗体とを含む構成する。この場合、例えば溶射により製造した誘電体層のように内部に隙間(ポア)が残らないので例えばシリコーンのような封孔材の注入を必要としない。このため例えば基板との摩擦により静電チャックが経時劣化することが抑えられ、また静電チャックからのパーティクルの発生が少ない。この静電チャックは処理装置の載置台に組み込んでもよい。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電チャック及び静電チャックを被処理体の載置台として用いた処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造工程の中には、例えばエッチングやCVD(chemical vapor deposition)による成膜処理等のように基板の処理を真空雰囲気にて行うものが多数あり、このような処理を行う真空処理装置に用いられる基板の載置台には一般に静電チャックが用いられている。
【0003】
この静電チェックの一例について図6を参照しながら説明する。図中1は半導体ウエハ(以下ウエハという)Wの載置台であり、支持部11の上面に静電チャック12と、この静電チャック12の側方を囲むように設けられるリング体13とを設けた構成とされている。この静電チャック12は導電性を有するシート状のチャック電極14の表裏を誘電体層15にて挟んだ構成とされており、直流電源16からチャック電極14に直流電圧(チャック電圧)を印加することで生じる静電気力によりウエハWを吸着保持できるようになっている。また、17はウエハWの処理時において、静電チャック12を介して伝熱して当該ウエハWの温度を調整するための例えば冷媒流路を備えた温度調整部であり、18は静電チャック12からウエハWを昇降させるための昇降ピン(周方向に沿って3本存在する)である。
【0004】
上述の誘電体層15は、例えばチタニア(TiO2)がコーティングされた例えばアルミナなどのセラミックス粒子を溶射して成形したものが用いられている。この誘電体層15の断面は、微視的にみると図7に示すように、溶射により噴き付けられたセラミックスの粒状体19aが重なり合うようにして積層構造をなす溶射皮膜が形成されているが、その粒状体19aと粒状体19aとの間には僅かながらの隙間(ポア)が残ってしまう。この隙間があると例えば真空雰囲気において絶縁破壊が起きる場合があるので、成形された溶射皮膜を、封孔材19b例えば液体シリコーンに含浸させた後、乾燥処理などを行って当該隙間をシリコーンで埋めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらシリコーンは樹脂状の封孔材であり、その機械強度がさほど大きくないことから上述の誘電体層15を用いた処理装置にてウエハWを繰り返し処理していると、例えばセラミックスよりも熱膨張度合の大きいウエハWが静電吸着された状態で熱伸縮してウエハWと誘電体層15の表面とが例えば横方向に擦れ合うことにより表層部にある封孔材がその摩擦力で破壊されて脱落してしまう問題があり(以下、このような脱落現象を経時劣化という)、この脱落した封孔材がパーティクルとなってウエハWの表面に付着してしまう場合がある。更には、封孔材が脱落すると誘電体層15表面が凸凹となり、ウエハWと誘電体層15との間に隙間が形成されてしまう。そのためウエハWと誘電体層15との固体接触面積が小さくなり、誘電体層15とウエハWとの間で行われる熱の伝達性が悪くなってウエハWの面内温度がばらついてしまう懸念がある。また溶射による製造手法において、機械的強度の大きい材質を選択して封孔材として用いることも考えられるが、ぬれ性(毛管現象)に優れるシリコーンなどの樹脂状の封孔材でなければ連続状態と不連続状態とが混在する前記ポアを隙間なく埋めるのは難しい。
【0006】
本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、経時劣化を抑えることができる静電チャックを提供することにある。また他の目的は、この静電チャックを用いることにより被処理体に対してパーティクルの付着を防止することのできる処理装置を提供することにある。更に他の目的は、この静電チャックを用いることにより被処理体に対して面内均一性の高い処理を行うことのできる処理装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電チャックは、チャック電極にチャック電圧を印加し、誘電体層の表面に被吸着体を吸着保持するための静電チャックにおいて、
前記誘電体層は、少なくとも厚さ方向に連続発泡した泡状気孔を有する多孔質セラミックスと、この泡状気孔を埋める前記多孔質セラミックスよりも低抵抗の低抵抗体とを含むことを特徴とする。
【0008】
前記誘電体層は、例えば体積固有抵抗値が1014Ω・cmよりも小さくてもよい。また前記低抵抗体は、例えばチタニアを主成分として含むようにしてもよい。更に前記連続発泡した泡状気孔は、例えば直径100μm〜1000μmの気孔であり、多孔質セラミックスの気孔率が例えば50%〜90%を有する構成であってもよい。なお体積固有抵抗値とは、多孔質セラミックスおよび低抵抗体に選択された材質、および多孔質セラミックスの気孔率などにより決まる誘電体層の単位体積あたりの抵抗値を意味する。
【0009】
本発明の静電チャックによれば、多孔質セラミックスを骨格とし、この多孔質セラミックスが内包する連続発泡した泡状気孔を低抵抗体で埋めた誘電体層を用いることにより、例えば溶射により製造した誘電体層のように内部にポアが残らないので例えばシリコーンのような封孔材を必要としない。このため基板との摩擦により静電チャックが経時劣化することが抑えられ、静電チャックからのパーティクルの発生が少ない。
【0010】
本発明の処理装置は、被処理体に対して所定の処理を行うための処理容器と、この処理容器内に設けられ、前記被処理体を静電吸着するための上述の静電チャックを備えた載置台と、を有することを特徴とする。前記静電チャックに吸着保持された被処理体の温度を裏面側から調整するための温度調整部を備えた構成であってもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る静電チャックを用いた処理装置を、処理の一つである真空状態でのエッチングに適用した実施の形態について、図1および図2を参照しながら説明する。図1は処理装置の全体構造を示す縦断面図である。図中2は処理容器をなす真空チャンバであり、例えばアルミニウムにより気密構造をなすように形成されており、接地されている。この真空チャンバ2内には上部電極を兼用し、接地されたガスシャワーヘッド3と、下部電極を兼ねる載置台4とが対向して設けられており、底面には例えばターボ分子ポンプやドライポンプなどからなる真空排気手段21と連通する真空排気路である排気管22が接続されている。また真空チャンバ2の側壁部には被処理体(被吸着体)例えばウエハWを搬入出するための開口部23が形成されており、ゲートバルブGにより開閉自在とされている。この側壁部の外方には開口部23を上下に挟む位置に、例えば夫々リング状をなす永久磁石24、25が設けられている。
【0012】
ガスシャワーヘッド3は、載置台4上のウエハWに対向する位置に多数の孔部31が形成され、上部のガス供給管32から送られる処理ガスを当該孔部31を介してウエハWの表面へ均一に供給するように構成されている。
【0013】
また載置台4は例えばアルミニウムからなり、真空チャンバ2に対して絶縁部材41aにより絶縁された円柱状の本体部41と、この本体部41の上面に設けられた静電チャック42と、この静電チャック42の周囲を囲むリング状の導電部材である導電リング43と、この導電リング43と本体部41との間に設けられたリング状の絶縁部材である絶縁リング43aとを備えた構成とされている。載置台4の例えば本体部41には、コンデンサC1及びコイルL1を介して高周波電源40が接続されている。なお導電リング43はウエハWの周縁及びその近傍の濃いプラズマを拡散させ、プラズマの均一性を高める役割を果たすものである。また載置台4の側壁部には、排気時においてウエハWの周方向に均一な排気流を形成するためのバッフル板44が設けられている。なお、図2は作図の便宜上導電リング43および絶縁リング43aの記載を省略している。
【0014】
前記本体部41には、ウエハWの温度を所定の温度に調整するため温度調整部、例えば温調用の媒体である冷媒の通流室50が設けられており、冷媒が通流室50と図示しない外部の温調ユニットとの間を循環するようになっている。更にまた、静電チャック42あるいはウエハWには、研磨精度の限界から表面に僅かながら凸凹が形成されており、「発明の解決しようとする課題」に記載の隙間と比べると十分に小さいものではあるが静電チャック42とウエハWとの間に隙間(空間)ができる。そして真空チャンバ2内が真空雰囲気になると、このような隙間は熱を殆ど伝えない。そのため載置台4には、例えばヘリウムなどの伝熱用のガスを当該隙間(載置台4の表面とウエハWの裏面との間)にパージするためのガス供給孔51(図1に記載せず)が穿設されており、このガス供給孔51は例えば図示しない供給路を介してガス供給手段と接続されている。従ってこの例では通流室50、冷媒、ガス供給手段及び伝熱用のガスなどによって、ウエハWの温度を裏面側から調整するための温度調整手段が構成される。
【0015】
静電チャック42は、例えば円形状の誘電体層45内に箔状のチャック電極46を設けてなり、チャック電極46は、スイッチ部SW1を介して直流電源47とアースとの間で切り換え接続できるように構成されている。誘電体層45表面とチャック電極46との距離は例えば250μm程度である。
【0016】
また前記誘電体層45は、図3の断面図において模式的に示すように、少なくとも誘電体層45の厚さ方向、例えばチャック電極46からウエハWに跨るように連続発泡された微細な泡状気孔を内包すると共に誘電体層45の骨格をなす多孔質セラミックス48と、この多孔質セラミックス48の泡状気孔を隙間なく埋めるようにして充填された低抵抗体49とを備えている。この泡状気孔は、例えば気孔径Lが100〜1000μm程度の多数の気孔が3次元的に均一に分散し、更に隣接する泡状気孔同士が連通するようにして形成されており、単位体積あたり例えば50〜90%程度の気孔率を有している。
【0017】
前記多孔質セラミックス48は、例えばアルミナ、ムライト、コージェライト、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、水酸化アパタイトなどのセラミックス系の材質、好ましくはアルミナあるいは炭化珪素、さらに好ましくは高純度なアルミナを主成分とし、また低抵抗体49は例えばチタニア(TiO2)を主成分とする。この低抵抗体49はチタニア以外の材質でもよいが、誘電体層45の体積固有抵抗値が1014Ω・cmよりも小さくなるものが選択され、更には、単位面積当たりの応力が例えば20KPa程度の機械的強度を有する材質であることが好ましい。ここで体積固有抵抗値とは、多孔質セラミックス48および低抵抗体49の選択された材質、および多孔質セラミックス48の気孔率などにより決まる誘電体層45の単位体積あたりの抵抗値を意味する。
【0018】
続いて誘電体層45の製造方法の一例について説明する。先ず多孔質セラミックス48について説明すると、前記したセラミックスの原料粉末例えばアルミナ粉末1kg、硬化性成分例えばエポキシ樹脂化合物80g、および気泡剤例えばステアリン酸アンモニウム25gを混合し、所定時間撹拌して気泡保持スラリーを調製する。そしてこのスラリーに硬化剤例えばアミン系化合物を添加して撹拌し、次いで成形型に流し込んで成形体を形成した後に、例えば1650℃で焼成することにより多孔質セラミックス48が得られる。当該多孔質セラミックス48としては、東芝セラミックス株式会社製の泡セラミックス(商品名)が適用できる。そして低抵抗体49を多孔質セラミックス48内に導入するための熱処理が行われる。即ち還元雰囲気または少なくとも非酸化雰囲気中にて約2000℃で焼成した多孔質セラミックス48を例えば低抵抗体49の蒸気と接触させるか、あるいは加熱されて液体状となっている低抵抗体49、または低抵抗体49の微粉末を溶媒に混合してなる液体に成形後の多孔質セラミックス48を含浸させるなどして多孔質セラミックス48の泡状気孔内に低抵抗体49を充填して多孔質セラミックス48および低抵抗体49を含む誘電体層45を得る。
【0019】
載置台4の内部には、外部の図示しない搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行うための昇降部材である昇降ピン61が複数例えば3本突没自在に設けられており、この昇降ピン61は連結部材62を介して駆動機構63により昇降できるように構成されている。64は昇降ピン61の貫通孔と大気側との間の気密を保持するベローズである。
【0020】
次いで本実施の形態の作用について説明する。先ずゲートバルブGを開き、図示しない搬送アームにより被処理体であるウエハWを真空チャンバ2内に搬入し、昇降ピン61との協働動作により載置台4の上につまり静電チャック42の上に載置される。
【0021】
そしてスイッチSW1を直流電源47側に切り替えることにより、チャック電極46に例えば数百V程度の正電圧(チャック電圧)が印加され、これにより正電荷がチャック電極46に供給される。誘電体層45の体積固有抵抗値は1012〜1014Ω・cm程度であるから誘電体層45とウエハWとの間にはクーロン力とジョンソン・ラーベック力と呼ばれる吸引力が作用する。図4はチャック電極46にチャック電圧を印加したときの電荷の動きを模式的に示した図であり、先ずチャック電極46の正電荷とウエハW内部の自由電子とが互いに引き合うクーロン力が作用してウエハWへの吸着作用が発生する。更に低抵抗体47がリーク電流のパスとして作用して、チャック電極46の正電荷が当該低抵抗体47を通って誘電体層45の表面まで移動し、誘電体層45表面(静電チャック42表面)が正電荷を帯びてジョンソン・ラーベック力と呼ばれる吸着力が発生する。つまりジョンソン・ラーベック力が支配的に作用してウエハWに対して強い吸着力が働き、ウエハWは静電チャック42に吸着保持される。また、その電気的なメカニズムは完全に把握されていないが、誘電体層45の多孔質セラミックス48の内部が分極化されることにより、ある程度の吸着作用も働いていると考えられる。
【0022】
一方、載置台4の表面は、通流室50に冷媒が循環しているため所定の温度に設定されており、この表面にウエハWが吸着されるとガス供給孔51からウエハWの裏面と載置台4の表面との間にバックサイドガスなどと呼ばれている伝熱用のガスが供給され、後述のようにプラズマが発生したときに、プラズマからウエハWに伝熱される熱と、載置台4から伝熱用のガスを介してウエハWに伝熱される熱とのバランスによってウエハWが所定のプロセス温度に調整されることとなる。そして真空チャンバ2内はゲートバルブGを閉じて例えば一旦排気管22を介して真空引きが行われ、次いでガスシャワーヘッド3から処理ガスをウエハWに供給して内部圧力が例えば30mTorr〜100mTorr(約4〜13.3Pa)に維持されるように調節を行う。そして高周波電源40により下部電極をなす載置台4と上部電極をなすガスシャワーヘッド3との間に高周波電圧を印加して、処理ガスをプラズマ化すると共に磁石24、25によりプラズマを高密度化し、ウエハW表面の例えばシリコン酸化膜をエッチングする。そしてエッチングが終了すると、高周波電源40を停止すると共に、SW1をアース側に切り替えて静電チャック42の除電が行われる。続いて駆動機構63により昇降ピン61を上昇させてウエハWを裏面側から突き上げるようにして載置台4から脱離され、ゲートバルブGを介して搬出される。
【0023】
このような実施の形態によれば、連続発泡した泡状気孔を内包する多孔質セラミックス48を骨格として用い、この気孔を低抵抗体49で隙間なく埋めることで得られる誘電体層45を用いることにより、溶射により製造した誘電体層のように内部にポアが残らないのでシリコーンなどの封孔材を含浸する必要がない。そのため機械的強度が大きい低抵抗体49は、前記したシリコーンのようにウエハWとの摩擦で破壊されることが少ないので、経時劣化してパーティクルとなることが抑えられる。また処理時にウエハWを温調する場合には、ウエハWに対して面内均一に熱が伝わるので高精度な温度制御をすることができる。
【0024】
更に本実施の形態によれば、連続発泡されているセラミックス中の気孔を低抵抗体49により埋めて誘電体層45を形成しているので、誘電体層45の厚さ方向に低抵抗体49が連続するリーク電流のパスが形成され、従ってこのパス群によるトータルのリーク電流を調整することにより、例えば多孔質セラミックス48の気孔率、気孔径及び低抵抗体の抵抗値を調整することにより、吸着力や遅延時間などを精度良く最適化できる。このようにして吸着力の制御が可能になると、例えば吸着力を大きくして伝熱用のガスの供給圧力を高くし、これにより載置台4からウエハWへの熱伝達を大きくするといった設定を行うことができ、このためウエハWの温度調整範囲を広げることができる。従って例えばアルミナ粉末とチタニア粉末との混合物を一緒に焼いて成形した場合に比べて有利である。
【0025】
ここで誘電体層45の体積固有抵抗値ρ(Ω・cm)が1012<ρ<1014のときには、クーロン力とジョンソン・ラーベック力との両方が作用し、1012>ρのときには、チャック電極46の正電荷の低抵抗体49内の移動量が多くなってジョンソン・ラーベック力が強く作用する一方、クーロン力による吸着作用はウエハWの吸着に影響しないほどに小さくなる。なおジョンソン・ラーベック力(F)及びスイッチSW1をオンにしてチャック電極46に正電荷を印加してから吸着力が作用するまでの遅延時間(t)は、例えば夫々(1)、(2)式で表わされる。これらの式を用いてジョンソン・ラーベック力(F)や遅延時間(t)を計算により求めることもできるが、例えば種々の体積固有抵抗値の誘電体層45を用いて予め試験を行うことにより、これらの値を確認しておくようにしてもよい。
F=S((1/2)ε0εr(V/d)^2+(1/2)ε0(V/g)^2) …(1)
q=CV(1−εk)、k=−t/(RC)…(2)
S:誘電体層表面の面積
εr:誘電体層の比誘電率
ε0:真空中の誘電率
V:直流電圧(チャック電圧)
d:チャック電極と誘電体層表面との距離
g:ウエハと誘電体層表面との距離
q:誘電体層の電荷量
C:誘電体層の静電容量
ε:誘電体層の誘電率
R:誘電体層の抵抗値
【0026】
また本発明においては、多孔質セラミックス48の気孔率は面内で均一に限られず、厚さ方向に抵抗の異なる第1の部位と第2の部位を形成することにより、その吸着力について面内分布を持たせるようにしてもよい。その一例としては、例えば図5に示すように、例えばウエハWの周縁部に対応する部位の気孔率及び/又は気孔径が中心部よりも大きくなるように形成された多孔質セラミックス48を用いてもよい。このように構成しても、上述の場合と同様の効果を得ることができ、更にはウエハWの周縁部と静電チャック42とが強い吸着力で吸着されるので、ウエハWの周縁部側から伝熱用のガスが漏れるのを抑えることができる。更には、例えばウエハWの周縁部を埋める低抵抗体49が中心部を埋める低抵抗体49よりも低抵抗な材質を選択するようにして、第1の部位と第2の部位を形成するようにしてもよい。この場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0027】
更にまた、本発明においては、処理の一例としてエッチングを挙げているが、CVDやアッシング、スパッタ処理などの処理を行う場合にも適用できる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、静電チャックの経時劣化を抑えることができる。また当該静電チャックを用いることにより被処理体に対してパーティクルの付着を防止することができる。更に当該静電チャックを用いることにより被処理体に対して面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る処理装置の実施の形態における全体構成を示す縦断面図である。
【図2】前記処理装置の載置台を示す斜視図である。
【図3】前記載置台が備えた静電チャックの誘電体層の断面構造を示す説明図である。
【図4】前記載置台が備えた静電チャックがウエハを静電吸着する様子を示す説明図である。
【図5】前記載置台が備えた静電チャックの他の誘電体層を示す説明図である。
【図6】従来の技術に係る処理装置の載置台を示す縦断面図である。
【図7】従来の技術に係る処理装置の載置台に用いられる誘電体層の断面構造を示す説明図である。
【符号の説明】
W ウエハ
SW1,SW2 スイッチ部
2 真空チャンバ
21 上部電極
22 排気管
3 ガスシャワーヘッド
33 高周波電源
4 載置台
41 本体部
42 静電チャック
45 誘電体層
46 チャック電極
48 多孔質セラミックス
49 低抵抗体
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電チャック及び静電チャックを被処理体の載置台として用いた処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造工程の中には、例えばエッチングやCVD(chemical vapor deposition)による成膜処理等のように基板の処理を真空雰囲気にて行うものが多数あり、このような処理を行う真空処理装置に用いられる基板の載置台には一般に静電チャックが用いられている。
【0003】
この静電チェックの一例について図6を参照しながら説明する。図中1は半導体ウエハ(以下ウエハという)Wの載置台であり、支持部11の上面に静電チャック12と、この静電チャック12の側方を囲むように設けられるリング体13とを設けた構成とされている。この静電チャック12は導電性を有するシート状のチャック電極14の表裏を誘電体層15にて挟んだ構成とされており、直流電源16からチャック電極14に直流電圧(チャック電圧)を印加することで生じる静電気力によりウエハWを吸着保持できるようになっている。また、17はウエハWの処理時において、静電チャック12を介して伝熱して当該ウエハWの温度を調整するための例えば冷媒流路を備えた温度調整部であり、18は静電チャック12からウエハWを昇降させるための昇降ピン(周方向に沿って3本存在する)である。
【0004】
上述の誘電体層15は、例えばチタニア(TiO2)がコーティングされた例えばアルミナなどのセラミックス粒子を溶射して成形したものが用いられている。この誘電体層15の断面は、微視的にみると図7に示すように、溶射により噴き付けられたセラミックスの粒状体19aが重なり合うようにして積層構造をなす溶射皮膜が形成されているが、その粒状体19aと粒状体19aとの間には僅かながらの隙間(ポア)が残ってしまう。この隙間があると例えば真空雰囲気において絶縁破壊が起きる場合があるので、成形された溶射皮膜を、封孔材19b例えば液体シリコーンに含浸させた後、乾燥処理などを行って当該隙間をシリコーンで埋めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらシリコーンは樹脂状の封孔材であり、その機械強度がさほど大きくないことから上述の誘電体層15を用いた処理装置にてウエハWを繰り返し処理していると、例えばセラミックスよりも熱膨張度合の大きいウエハWが静電吸着された状態で熱伸縮してウエハWと誘電体層15の表面とが例えば横方向に擦れ合うことにより表層部にある封孔材がその摩擦力で破壊されて脱落してしまう問題があり(以下、このような脱落現象を経時劣化という)、この脱落した封孔材がパーティクルとなってウエハWの表面に付着してしまう場合がある。更には、封孔材が脱落すると誘電体層15表面が凸凹となり、ウエハWと誘電体層15との間に隙間が形成されてしまう。そのためウエハWと誘電体層15との固体接触面積が小さくなり、誘電体層15とウエハWとの間で行われる熱の伝達性が悪くなってウエハWの面内温度がばらついてしまう懸念がある。また溶射による製造手法において、機械的強度の大きい材質を選択して封孔材として用いることも考えられるが、ぬれ性(毛管現象)に優れるシリコーンなどの樹脂状の封孔材でなければ連続状態と不連続状態とが混在する前記ポアを隙間なく埋めるのは難しい。
【0006】
本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、経時劣化を抑えることができる静電チャックを提供することにある。また他の目的は、この静電チャックを用いることにより被処理体に対してパーティクルの付着を防止することのできる処理装置を提供することにある。更に他の目的は、この静電チャックを用いることにより被処理体に対して面内均一性の高い処理を行うことのできる処理装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電チャックは、チャック電極にチャック電圧を印加し、誘電体層の表面に被吸着体を吸着保持するための静電チャックにおいて、
前記誘電体層は、少なくとも厚さ方向に連続発泡した泡状気孔を有する多孔質セラミックスと、この泡状気孔を埋める前記多孔質セラミックスよりも低抵抗の低抵抗体とを含むことを特徴とする。
【0008】
前記誘電体層は、例えば体積固有抵抗値が1014Ω・cmよりも小さくてもよい。また前記低抵抗体は、例えばチタニアを主成分として含むようにしてもよい。更に前記連続発泡した泡状気孔は、例えば直径100μm〜1000μmの気孔であり、多孔質セラミックスの気孔率が例えば50%〜90%を有する構成であってもよい。なお体積固有抵抗値とは、多孔質セラミックスおよび低抵抗体に選択された材質、および多孔質セラミックスの気孔率などにより決まる誘電体層の単位体積あたりの抵抗値を意味する。
【0009】
本発明の静電チャックによれば、多孔質セラミックスを骨格とし、この多孔質セラミックスが内包する連続発泡した泡状気孔を低抵抗体で埋めた誘電体層を用いることにより、例えば溶射により製造した誘電体層のように内部にポアが残らないので例えばシリコーンのような封孔材を必要としない。このため基板との摩擦により静電チャックが経時劣化することが抑えられ、静電チャックからのパーティクルの発生が少ない。
【0010】
本発明の処理装置は、被処理体に対して所定の処理を行うための処理容器と、この処理容器内に設けられ、前記被処理体を静電吸着するための上述の静電チャックを備えた載置台と、を有することを特徴とする。前記静電チャックに吸着保持された被処理体の温度を裏面側から調整するための温度調整部を備えた構成であってもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る静電チャックを用いた処理装置を、処理の一つである真空状態でのエッチングに適用した実施の形態について、図1および図2を参照しながら説明する。図1は処理装置の全体構造を示す縦断面図である。図中2は処理容器をなす真空チャンバであり、例えばアルミニウムにより気密構造をなすように形成されており、接地されている。この真空チャンバ2内には上部電極を兼用し、接地されたガスシャワーヘッド3と、下部電極を兼ねる載置台4とが対向して設けられており、底面には例えばターボ分子ポンプやドライポンプなどからなる真空排気手段21と連通する真空排気路である排気管22が接続されている。また真空チャンバ2の側壁部には被処理体(被吸着体)例えばウエハWを搬入出するための開口部23が形成されており、ゲートバルブGにより開閉自在とされている。この側壁部の外方には開口部23を上下に挟む位置に、例えば夫々リング状をなす永久磁石24、25が設けられている。
【0012】
ガスシャワーヘッド3は、載置台4上のウエハWに対向する位置に多数の孔部31が形成され、上部のガス供給管32から送られる処理ガスを当該孔部31を介してウエハWの表面へ均一に供給するように構成されている。
【0013】
また載置台4は例えばアルミニウムからなり、真空チャンバ2に対して絶縁部材41aにより絶縁された円柱状の本体部41と、この本体部41の上面に設けられた静電チャック42と、この静電チャック42の周囲を囲むリング状の導電部材である導電リング43と、この導電リング43と本体部41との間に設けられたリング状の絶縁部材である絶縁リング43aとを備えた構成とされている。載置台4の例えば本体部41には、コンデンサC1及びコイルL1を介して高周波電源40が接続されている。なお導電リング43はウエハWの周縁及びその近傍の濃いプラズマを拡散させ、プラズマの均一性を高める役割を果たすものである。また載置台4の側壁部には、排気時においてウエハWの周方向に均一な排気流を形成するためのバッフル板44が設けられている。なお、図2は作図の便宜上導電リング43および絶縁リング43aの記載を省略している。
【0014】
前記本体部41には、ウエハWの温度を所定の温度に調整するため温度調整部、例えば温調用の媒体である冷媒の通流室50が設けられており、冷媒が通流室50と図示しない外部の温調ユニットとの間を循環するようになっている。更にまた、静電チャック42あるいはウエハWには、研磨精度の限界から表面に僅かながら凸凹が形成されており、「発明の解決しようとする課題」に記載の隙間と比べると十分に小さいものではあるが静電チャック42とウエハWとの間に隙間(空間)ができる。そして真空チャンバ2内が真空雰囲気になると、このような隙間は熱を殆ど伝えない。そのため載置台4には、例えばヘリウムなどの伝熱用のガスを当該隙間(載置台4の表面とウエハWの裏面との間)にパージするためのガス供給孔51(図1に記載せず)が穿設されており、このガス供給孔51は例えば図示しない供給路を介してガス供給手段と接続されている。従ってこの例では通流室50、冷媒、ガス供給手段及び伝熱用のガスなどによって、ウエハWの温度を裏面側から調整するための温度調整手段が構成される。
【0015】
静電チャック42は、例えば円形状の誘電体層45内に箔状のチャック電極46を設けてなり、チャック電極46は、スイッチ部SW1を介して直流電源47とアースとの間で切り換え接続できるように構成されている。誘電体層45表面とチャック電極46との距離は例えば250μm程度である。
【0016】
また前記誘電体層45は、図3の断面図において模式的に示すように、少なくとも誘電体層45の厚さ方向、例えばチャック電極46からウエハWに跨るように連続発泡された微細な泡状気孔を内包すると共に誘電体層45の骨格をなす多孔質セラミックス48と、この多孔質セラミックス48の泡状気孔を隙間なく埋めるようにして充填された低抵抗体49とを備えている。この泡状気孔は、例えば気孔径Lが100〜1000μm程度の多数の気孔が3次元的に均一に分散し、更に隣接する泡状気孔同士が連通するようにして形成されており、単位体積あたり例えば50〜90%程度の気孔率を有している。
【0017】
前記多孔質セラミックス48は、例えばアルミナ、ムライト、コージェライト、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、水酸化アパタイトなどのセラミックス系の材質、好ましくはアルミナあるいは炭化珪素、さらに好ましくは高純度なアルミナを主成分とし、また低抵抗体49は例えばチタニア(TiO2)を主成分とする。この低抵抗体49はチタニア以外の材質でもよいが、誘電体層45の体積固有抵抗値が1014Ω・cmよりも小さくなるものが選択され、更には、単位面積当たりの応力が例えば20KPa程度の機械的強度を有する材質であることが好ましい。ここで体積固有抵抗値とは、多孔質セラミックス48および低抵抗体49の選択された材質、および多孔質セラミックス48の気孔率などにより決まる誘電体層45の単位体積あたりの抵抗値を意味する。
【0018】
続いて誘電体層45の製造方法の一例について説明する。先ず多孔質セラミックス48について説明すると、前記したセラミックスの原料粉末例えばアルミナ粉末1kg、硬化性成分例えばエポキシ樹脂化合物80g、および気泡剤例えばステアリン酸アンモニウム25gを混合し、所定時間撹拌して気泡保持スラリーを調製する。そしてこのスラリーに硬化剤例えばアミン系化合物を添加して撹拌し、次いで成形型に流し込んで成形体を形成した後に、例えば1650℃で焼成することにより多孔質セラミックス48が得られる。当該多孔質セラミックス48としては、東芝セラミックス株式会社製の泡セラミックス(商品名)が適用できる。そして低抵抗体49を多孔質セラミックス48内に導入するための熱処理が行われる。即ち還元雰囲気または少なくとも非酸化雰囲気中にて約2000℃で焼成した多孔質セラミックス48を例えば低抵抗体49の蒸気と接触させるか、あるいは加熱されて液体状となっている低抵抗体49、または低抵抗体49の微粉末を溶媒に混合してなる液体に成形後の多孔質セラミックス48を含浸させるなどして多孔質セラミックス48の泡状気孔内に低抵抗体49を充填して多孔質セラミックス48および低抵抗体49を含む誘電体層45を得る。
【0019】
載置台4の内部には、外部の図示しない搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行うための昇降部材である昇降ピン61が複数例えば3本突没自在に設けられており、この昇降ピン61は連結部材62を介して駆動機構63により昇降できるように構成されている。64は昇降ピン61の貫通孔と大気側との間の気密を保持するベローズである。
【0020】
次いで本実施の形態の作用について説明する。先ずゲートバルブGを開き、図示しない搬送アームにより被処理体であるウエハWを真空チャンバ2内に搬入し、昇降ピン61との協働動作により載置台4の上につまり静電チャック42の上に載置される。
【0021】
そしてスイッチSW1を直流電源47側に切り替えることにより、チャック電極46に例えば数百V程度の正電圧(チャック電圧)が印加され、これにより正電荷がチャック電極46に供給される。誘電体層45の体積固有抵抗値は1012〜1014Ω・cm程度であるから誘電体層45とウエハWとの間にはクーロン力とジョンソン・ラーベック力と呼ばれる吸引力が作用する。図4はチャック電極46にチャック電圧を印加したときの電荷の動きを模式的に示した図であり、先ずチャック電極46の正電荷とウエハW内部の自由電子とが互いに引き合うクーロン力が作用してウエハWへの吸着作用が発生する。更に低抵抗体47がリーク電流のパスとして作用して、チャック電極46の正電荷が当該低抵抗体47を通って誘電体層45の表面まで移動し、誘電体層45表面(静電チャック42表面)が正電荷を帯びてジョンソン・ラーベック力と呼ばれる吸着力が発生する。つまりジョンソン・ラーベック力が支配的に作用してウエハWに対して強い吸着力が働き、ウエハWは静電チャック42に吸着保持される。また、その電気的なメカニズムは完全に把握されていないが、誘電体層45の多孔質セラミックス48の内部が分極化されることにより、ある程度の吸着作用も働いていると考えられる。
【0022】
一方、載置台4の表面は、通流室50に冷媒が循環しているため所定の温度に設定されており、この表面にウエハWが吸着されるとガス供給孔51からウエハWの裏面と載置台4の表面との間にバックサイドガスなどと呼ばれている伝熱用のガスが供給され、後述のようにプラズマが発生したときに、プラズマからウエハWに伝熱される熱と、載置台4から伝熱用のガスを介してウエハWに伝熱される熱とのバランスによってウエハWが所定のプロセス温度に調整されることとなる。そして真空チャンバ2内はゲートバルブGを閉じて例えば一旦排気管22を介して真空引きが行われ、次いでガスシャワーヘッド3から処理ガスをウエハWに供給して内部圧力が例えば30mTorr〜100mTorr(約4〜13.3Pa)に維持されるように調節を行う。そして高周波電源40により下部電極をなす載置台4と上部電極をなすガスシャワーヘッド3との間に高周波電圧を印加して、処理ガスをプラズマ化すると共に磁石24、25によりプラズマを高密度化し、ウエハW表面の例えばシリコン酸化膜をエッチングする。そしてエッチングが終了すると、高周波電源40を停止すると共に、SW1をアース側に切り替えて静電チャック42の除電が行われる。続いて駆動機構63により昇降ピン61を上昇させてウエハWを裏面側から突き上げるようにして載置台4から脱離され、ゲートバルブGを介して搬出される。
【0023】
このような実施の形態によれば、連続発泡した泡状気孔を内包する多孔質セラミックス48を骨格として用い、この気孔を低抵抗体49で隙間なく埋めることで得られる誘電体層45を用いることにより、溶射により製造した誘電体層のように内部にポアが残らないのでシリコーンなどの封孔材を含浸する必要がない。そのため機械的強度が大きい低抵抗体49は、前記したシリコーンのようにウエハWとの摩擦で破壊されることが少ないので、経時劣化してパーティクルとなることが抑えられる。また処理時にウエハWを温調する場合には、ウエハWに対して面内均一に熱が伝わるので高精度な温度制御をすることができる。
【0024】
更に本実施の形態によれば、連続発泡されているセラミックス中の気孔を低抵抗体49により埋めて誘電体層45を形成しているので、誘電体層45の厚さ方向に低抵抗体49が連続するリーク電流のパスが形成され、従ってこのパス群によるトータルのリーク電流を調整することにより、例えば多孔質セラミックス48の気孔率、気孔径及び低抵抗体の抵抗値を調整することにより、吸着力や遅延時間などを精度良く最適化できる。このようにして吸着力の制御が可能になると、例えば吸着力を大きくして伝熱用のガスの供給圧力を高くし、これにより載置台4からウエハWへの熱伝達を大きくするといった設定を行うことができ、このためウエハWの温度調整範囲を広げることができる。従って例えばアルミナ粉末とチタニア粉末との混合物を一緒に焼いて成形した場合に比べて有利である。
【0025】
ここで誘電体層45の体積固有抵抗値ρ(Ω・cm)が1012<ρ<1014のときには、クーロン力とジョンソン・ラーベック力との両方が作用し、1012>ρのときには、チャック電極46の正電荷の低抵抗体49内の移動量が多くなってジョンソン・ラーベック力が強く作用する一方、クーロン力による吸着作用はウエハWの吸着に影響しないほどに小さくなる。なおジョンソン・ラーベック力(F)及びスイッチSW1をオンにしてチャック電極46に正電荷を印加してから吸着力が作用するまでの遅延時間(t)は、例えば夫々(1)、(2)式で表わされる。これらの式を用いてジョンソン・ラーベック力(F)や遅延時間(t)を計算により求めることもできるが、例えば種々の体積固有抵抗値の誘電体層45を用いて予め試験を行うことにより、これらの値を確認しておくようにしてもよい。
F=S((1/2)ε0εr(V/d)^2+(1/2)ε0(V/g)^2) …(1)
q=CV(1−εk)、k=−t/(RC)…(2)
S:誘電体層表面の面積
εr:誘電体層の比誘電率
ε0:真空中の誘電率
V:直流電圧(チャック電圧)
d:チャック電極と誘電体層表面との距離
g:ウエハと誘電体層表面との距離
q:誘電体層の電荷量
C:誘電体層の静電容量
ε:誘電体層の誘電率
R:誘電体層の抵抗値
【0026】
また本発明においては、多孔質セラミックス48の気孔率は面内で均一に限られず、厚さ方向に抵抗の異なる第1の部位と第2の部位を形成することにより、その吸着力について面内分布を持たせるようにしてもよい。その一例としては、例えば図5に示すように、例えばウエハWの周縁部に対応する部位の気孔率及び/又は気孔径が中心部よりも大きくなるように形成された多孔質セラミックス48を用いてもよい。このように構成しても、上述の場合と同様の効果を得ることができ、更にはウエハWの周縁部と静電チャック42とが強い吸着力で吸着されるので、ウエハWの周縁部側から伝熱用のガスが漏れるのを抑えることができる。更には、例えばウエハWの周縁部を埋める低抵抗体49が中心部を埋める低抵抗体49よりも低抵抗な材質を選択するようにして、第1の部位と第2の部位を形成するようにしてもよい。この場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0027】
更にまた、本発明においては、処理の一例としてエッチングを挙げているが、CVDやアッシング、スパッタ処理などの処理を行う場合にも適用できる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、静電チャックの経時劣化を抑えることができる。また当該静電チャックを用いることにより被処理体に対してパーティクルの付着を防止することができる。更に当該静電チャックを用いることにより被処理体に対して面内均一性の高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る処理装置の実施の形態における全体構成を示す縦断面図である。
【図2】前記処理装置の載置台を示す斜視図である。
【図3】前記載置台が備えた静電チャックの誘電体層の断面構造を示す説明図である。
【図4】前記載置台が備えた静電チャックがウエハを静電吸着する様子を示す説明図である。
【図5】前記載置台が備えた静電チャックの他の誘電体層を示す説明図である。
【図6】従来の技術に係る処理装置の載置台を示す縦断面図である。
【図7】従来の技術に係る処理装置の載置台に用いられる誘電体層の断面構造を示す説明図である。
【符号の説明】
W ウエハ
SW1,SW2 スイッチ部
2 真空チャンバ
21 上部電極
22 排気管
3 ガスシャワーヘッド
33 高周波電源
4 載置台
41 本体部
42 静電チャック
45 誘電体層
46 チャック電極
48 多孔質セラミックス
49 低抵抗体
Claims (6)
- チャック電極にチャック電圧を印加し、誘電体層の表面に被吸着体を吸着保持するための静電チャックにおいて、
前記誘電体層は、少なくとも厚さ方向に連続発泡した泡状気孔を有する多孔質セラミックスと、この泡状気孔を埋める前記多孔質セラミックスよりも低抵抗の低抵抗体とを含むことを特徴とする静電チャック。 - 前記誘電体層は、体積固有抵抗値が1014Ω・cmよりも小さいことを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
- 前記低抵抗体はチタニアを主成分として含むことを特徴とする請求項1又は2記載の静電チャック。
- 前記連続発泡した泡状気孔は、直径100μm〜1000μmの気孔であり、多孔質セラミックスの気孔率が50%〜90%を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の静電チャック。
- 被処理体に対して所定の処理を行うための処理容器と、
この処理容器内に設けられ、前記被処理体を静電吸着するための請求項1ないし4のいずれかに記載の静電チャックを備えた載置台と、を有することを特徴とする処理装置。 - 前記静電チャックに吸着保持された被処理体の温度を裏面側から調整するための温度調整部を備えたことを特徴とする請求項5記載の静電チャック。
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-
2002
- 2002-07-22 JP JP2002212809A patent/JP2004055909A/ja active Pending
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