JP2004055165A - スチレン系高分子電解質及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(以下、SPSと略称する)と、該SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂とを含む混合物から成形体を形成し、該成形体中の該樹脂を該SPS不溶性溶媒を用いて除去することにより該成形体中に細孔を形成した後、該成形体を構成しているSPSにイオン交換基を導入することを特徴とする高分子電解質の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質、それを用いた高分子電解質膜に関し、より詳細には、燃料電池や、海水からの製塩、廃液からの酸の回収などに好適な高分子電解質及び高分子電解質膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解質としての機能を持った高分子材料は、クリーンな発電を行うことで注目されている燃料電池や、水中のイオンの分離によるセンサーなど新技術の実用化において重要な位置付けとなってきている。さらに近年では、イオンの透過性をコントロールできるバイポーラ膜等に注目が集まっている。また、高分子電解質を用いた電池は、メンテナンスが容易であり、軽量化が可能であるといった特徴から自動車用・携帯端末用として有望視されている。
【0003】
一般に、高分子電解質は、スチレン系樹脂やフッ素系樹脂にイオン交換基を導入することで製造され、その使用環境によって種々のものが使い分けられている。スチレン系樹脂のスルホン化体は、それのみでは、水分によってゲル化し、膜形状を保持することができない。そのため、スチレン系樹脂のスルホン化体からなる高分子電解質は、スチレン系モノマーとジビニルベンゼンとを共重合させることで、含水時の膜形状を保持し、且つ、共重合体中に高分子電解質材料に要求される適度な空孔を形成させているという特徴を有する。スチレン−ジビニルベンゼン共重合体は安価であるが、長期の安定性には問題がある。これは、樹脂構造を維持するために共重合されるジビニルベンゼンの未反応二重結合が残存したり、ジビニルベンゼンによる架橋が経時的に分解したりすることに起因すると考えられている。また、スチレンージビニルベンゼン共重合体は、化学架橋体であるために、溶解や融解などによる再利用ができないという問題もある。
【0004】
また、フッ素系の樹脂は長期安定性が高いため有用ではあるが、非常に高価であり、さらに廃棄時にフッ素化合物を排出することから、環境への悪影響が懸念されている。
【0005】
本発明者は、スルホン化したアタクチック構造を有するポリスチレンとシンジオタクチック構造を有するポリスチレンとで構成される高分子電解質を提案し、この高分子電解質が、従来の高分子電解質膜とは大きく異なる物性(高い含水率、高いイオン交換容量、高い電気伝導性等)と耐久性を有することを見出した(国際公開第WO01/60873号公報)。しかしながら、この高分子電解質は、イオン伝導性に影響を与える細孔がコントロールされていないため、膜性能に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点に鑑み、本発明は、スチレン系樹脂のスルホン化体の長期使用時の劣化の原因となるジビニルベンゼンを用いることなく、長期に渡って構造を維持できる高い安定性を有し、且つ安価なスチレン系樹脂からなる高分子電解質及びそれからなる高分子電解質膜を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(以下、SPSと略称することがある)と、SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂とを含む混合物から成形体を形成し、この成形体中の前記樹脂を前記SPS不溶性溶媒を用いて除去することにより、高分子電解質材料に要求される空孔(細孔)を形成することができ、さらに、この細孔を有するSPS成形体にイオン交換基を導入することによって、水に浸しても長期に渡って形状を保持しうる高分子電解質を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレンからなる多孔質成形体にイオン交換基を導入してなることを特徴とする高分子電解質。
2.ポリスチレンが、一般式(I)
【化2】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子、酸素原子若しくはケイ素原子のいずれか1種以上を含む置換基を示し、mは1〜5の整数を示す。但し、mが複数であるときは、R1は同一でも異なってもよい。)
で示されるスチレン系モノマーの1種以上を重合又は共重合したものであることを特徴とする上記1に記載の高分子電解質。
【0009】
3.スチレン系モノマーが、スチレン、(C1−C20)アルキルスチレン類、ハロゲン化スチレン類、ビニルビフェニル類、ビニルフェニルナフタレン類、ビニルフェニルアントラセン類、ビニルフェニルフェナントレン類、ビニルフェニルピレン類、ビニルターフェニル類、ビニルフェニルターフェニル類、ビニル(C1−C20)アルキルビフェニル類、ハロゲン化ビニルビフェニル類、トリ(C1−C20)アルキルシリルビニルビフェニル類、トリ(C1−C20)アルキルシリルメチルビニルビフェニル類、ハロゲン置換(C1−C20)アルキルスチレン類、(C1−C20)アルキルシリルスチレン類、フェニル基含有シリルスチレン類、ハロゲン含有シリルスチレン類及びシリル基含有シリルスチレン類からなる群から選択されることを特徴とする上記2に記載の高分子電解質。
4.核磁気共鳴法(13C−NMR法)によって定量されるシンジオタクティシティーが、ラセミダイアッドで75%以上又はラセミペンタッドで30%以上であるポリスチレンを用いた上記1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。
【0010】
5.核磁気共鳴法(13C−NMR法)によって定量されるシンジオタクティシティーが、ラセミダイアッドで85%以上又はラセミペンタッドで50%以上であるポリスチレンを用いた上記1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。
6.ポリスチレンの重量平均分子量が5千〜450万であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の高分子電解質。
7.イオン交換基が、スルホン酸基、リン酸基及びアミノ基から選択されることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の高分子電解質。
8.上記1〜7のいずれかに記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜。
【0011】
9.主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(以下、SPSと略称する)と、該SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂とを含む混合物から成形体を形成し、該成形体中の該樹脂を該SPS不溶性溶媒を用いて除去することにより該成形体中に細孔を形成した後、該成形体を構成しているSPSにイオン交換基を導入することを特徴とする高分子電解質の製造方法。
10.少なくとも1種のスチレン系モノマー、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)を製造するための触媒及び該スチレン系モノマーを重合又は共重合して得られるSPS不溶性溶媒に可溶な樹脂を、溶媒の存在下又は不存在下に混合し、該スチレン系モノマーを重合又は共重合することにより、SPSと該樹脂との混合物を得ることを特徴とする上記9に記載の高分子電解質の製造方法。
【0012】
11.SPS不溶性溶媒が、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類、エーテル類及び含ハロゲン炭化水素類からなる群から選択されることを特徴とする上記9又は10に記載の高分子電解質の製造方法。
12.SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂が、スチレン系重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル類、縮合系重合体類、アクリル系重合体類、ポリオレフィン類、スチレン系化合物を含むゴム、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルエステルゴム、ポリエステルエステルゴム、オレフィン系ゴム及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記9〜11のいずれかに記載の高分子電解質の製造方法。
13.SPSとSPS不溶性溶媒に可溶な樹脂との混合物中の該樹脂の割合が、0.1〜60質量%であることを特徴とする上記9〜12のいずれかに記載の高分子電解質の製造方法、
を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子電解質は、主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレンからなる多孔質成形体にイオン交換基を導入してなることを特徴とする。
「高分子電解質」とは、高分子鎖中に固定された解離基(陽イオン又は陰イオン)を有する高分子(又は高分子物質)であり、水に溶解すると解離して高分子イオンとなるものである。固定される解離基、すなわち、イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、4級アンモニウム基、アミノ基などが挙げられ、このうち、スルホン酸基、リン酸基及びアミノ基が好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。
【0014】
本発明において、「ポリスチレン」は、スチレン系重合体及びスチレン系共重合体を含む。スチレン系重合体又は共重合体(以下、両者をまとめて、スチレン系(共)重合体ということがある)を製造するために使用できるスチレン系モノマーは、スチレン及び/又はスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体からなるスチレン系モノマーとしては、各種のものがあるが、好ましいものとしては、一般式(I)
【0015】
【化3】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子、酸素原子若しくはケイ素原子のいずれか1種以上を含む置換基を示し、mは1〜5の整数を示す。但し、mが複数であるときは、R1は同一でも異なってもよい。)で表わされるスチレン系モノマーを挙げることができる。
【0016】
上記一般式(I)で表わされるスチレン系モノマーにおいて、R1は前述の如く各種の置換基を表すが、ここで、ハロゲン原子としては、塩素、フッ素、臭素及び沃素を挙げることができる。また、炭素原子を含む置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜20のアルキル基、又はクロロエチル基、ブロモエチル基などの炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基が挙げられる。さらにまた、炭素原子とケイ素原子を含む置換基の具体例としては、トリメチルシリル基などの炭素数1〜20のアルキルシリル基が挙げられる。
【0017】
本発明で用いるポリスチレンの製造に用いられるスチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン;o−メチルスチレン;m−メチルスチレン;2,4−ジメチルスチレン;2,5−ジメチルスチレン;3,4−ジメチルスチレン;3,5−ジメチルスチレン;p−ターシャリーブチルスチレンなどのアルキルスチレン、p−クロロスチレン;m−クロロスチレン;o−クロロスチレン;p−ブロモスチレン;m−ブロモスチレン;o−ブロモスチレン;p−フルオロスチレン;m−フルオロスチレン;o−フルオロスチレン;o−メチル−p−フルオロスチレンなどのハロゲン化スチレン、4−ビニルビフェニル;3−ビニルビフェニル;2−ビニルビフェニルなどのビニルビフェニル類、1−(4−ビニルフェニル)−ナフタレン;2−(4−ビニルフェニル)−ナフタレン;1−(3−ビニルフェニル)−ナフタレン;2−(3−ビニルフェニル)−ナフタレン;1−(2−ビニルフェニル)−ナフタレン;2−(2−ビニルフェニル)ナフタレンなどのビニルフェニルナフタレン類、1−(4−ビニルフェニル)−アントラセン;2−(4−ビニルフェニル)−アントラセン;9−(4−ビニルフェニル)−アントラセン;1−(3−ビニルフェニル)−アントラセン;2−(3−ビニルフェニル)−アントラセン;9−(3−ビニルフェニル)−アントラセン;1−(2−ビニルフェニル)−アントラセン;2−(2−ビニルフェニル)−アントラセン;9−(2−ビニルフェニル)−アントラセンなどのビニルフェニルアントラセン類、1−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン;2−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン;3−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン;4−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン;9−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン;1−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン;2−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン;3−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン;4−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン;9−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン;1−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン;2−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン;3−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン;4−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン;9−(2−ビニルフェニル)−フェナントレンなどのビニルフェニルフェナントレン類、1−(4−ビニルフェニル)−ピレン;2−(4−ビニルフェニル)−ピレン;1−(3−ビニルフェニル)−ピレン;2−(3−ビニルフェニル)−ピレン;1−(2−ビニルフェニル)−ピレン;2−(2−ビニルフェニル)−ピレンなどのビニルフェニルピレン類、4−ビニル−p−ターフェニル;4−ビニル−m−ターフェニル;4−ビニル−o−ターフェニル;3−ビニル−p−ターフェニル;3−ビニル−m−ターフェニル;3−ビニル−o−ターフェニル;2−ビニル−p−ターフェニル;2−ビニル−m−ターフェニル;2−ビニル−o−ターフェニルなどのビニルターフェニル類、4−(4−ビニルフェニル)−p−ターフェニルなどのビニルフェニルターフェニル類、4−ビニル−4’−メチルビフェニル;4−ビニル−3’−メチルビフェニル;4−ビニル−2’−メチルビフェニル;2−メチル−4−ビニルビフェニル;3−メチル−4−ビニルビフェニルなどのビニルアルキルビフェニル類、4−ビニル−4’−フルオロビフェニル;4−ビニル−3’−フルオロビフェニル;4−ビニル−2’−フルオロビフェニル;4−ビニル−2−フルオロビフェニル;4−ビニル−3−フルオロビフェニル;4−ビニル−4’−クロロビフェニル;4−ビニル−3’−クロロビフェニル;4−ビニル−2’−クロロビフェニル;4−ビニル−2−クロロビフェニル;4−ビニル−3−クロロビフェニル;4−ビニル−4’−ブロモビフェニル;4−ビニル−3’−ブロモビフェニル;4−ビニル−2’−ブロモビフェニル;4−ビニル−2−ブロモビフェニル;4−ビニル−3−ブロモビフェニルなどのハロゲン化ビニルビフェニル類、4−ビニル−4’−トリメチルシリルビフェニルなどのトリアルキルシリルビニルビフェニル類、4−ビニル−4’−トリメチルシリルメチルビフェニルなどのトリアルキルシリルメチルビニルビフェニル類、p−クロロエチルスチレン;m−クロロエチルスチレン;o−クロロエチルスチレンなどのハロゲン置換アルキルスチレン、p−トリメチルシリルスチレン;m−トリメチルシリルスチレン;o−トリメチルシリルスチレン;p−トリエチルシリルスチレン;m−トリエチルシリルスチレン;o−トリエチルシリルスチレン;p−ジメチルターシャリ−ブチルシリルスチレンなどのアルキルシリルスチレン類、p−ジメチルフェニルシリルスチレン;p−メチルジフェニルシリルスチレン;p−トリフェニルシリルスチレンなどのフェニル基含有シリルスチレン類、p−ジメチルクロロシリルスチレン;p−メチルジクロロシリルスチレン;p−トリクロロシリルスチレン;p−ジメチルブロモシリルスチレン;p−ジメチルヨードシリルスチレンなどのハロゲン含有シリルスチレン類、p−トリメチルシリルジメチルシリルスチレンなどのシリル基含有シリルスチレン類などが挙げられる。
【0018】
本発明で用いるポリスチレンは、上記スチレン系モノマーの一種類を重合したものでもよく、あるいは二種以上を共重合したものでもよい。本発明では、スチレン系モノマーを(共)重合することによって得られるスチレン系(共)重合体、特に高度のシンジオタクチック構造を有するスチレン系(共)重合体(ポリスチレン)を用いるが、本発明においては、得られるスチレン系(共)重合体の性質あるいは繰り返し単位の連鎖におけるシンジオタクチック構造を著しく損なわない範囲でさらに第三成分を加えることもできる。
【0019】
ここで、「シンジオタクチック構造」とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、すなわち、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティー(立体規則度)は、安定同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量できる。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば、連続する構成単位が2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。
【0020】
本発明において、「主として」シンジオタクチック構造を有するポリスチレンとは、スチレン系繰返し単位の連鎖において、好ましくはラセミダイアッドで75%以上、より好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するものをいう。なお、ポリスチレンの側鎖の置換基の種類等によってシンジオタクティシティーの度合いは若干変動する。すなわち、「主として」とは、本発明の高分子電解質を構成するポリスチレンは、上記のような割合でシンジオタクチック構造部分を有していればよく、必ずしも100%のシンジオタクティシティーを有していなくてもよいことを意味する。例えば、部分的にアイソタクチック又はアタクチック構造を含んでいてもよい。
【0021】
本発明で用いるシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)を得るには、(A)遷移金属化合物、及び(B)アルミノキサンまたは遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物を主成分とする触媒などの存在下で、上記スチレン系モノマーを(共)重合させる。また、必要に応じて(C)有機アルミニウム化合物を触媒として添加してもよい。
【0022】
本発明で用いるシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)の分子量は、重合条件により変動しうるが、通常、重量平均分子量(GPCによって得られるポリスチレン換算の分子量)で5000〜450万であり、好ましくは1万以上である。そして、上記のようにして得られるシンジオタクチック構造を有するポリスチレンのガラス転移温度は通常96℃以上である。
本発明の高分子電解質は、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)によって構成される多孔質成形体にイオン交換基を導入したものである。SPSからなる多孔質成形体を得る方法及びこの多孔質成形体を構成するSPSにイオン交換基を導入する方法については後述する。
【0023】
本発明の高分子電解質の製造方法(以下、本発明の製造方法という)は、主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)と、SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂とを含む混合物から成形体を形成し、得られた成形体中の前記樹脂を前記SPS不溶性溶媒を用いて除去することにより成形体中に細孔を形成した後、成形体を構成するSPSにイオン交換基を導入することを特徴とする。
【0024】
SPSと、SPSを溶解しない溶媒に溶解する樹脂とを混合し、得られた混合物から所望の形状を有する成形体を形成し、成形体中の前記樹脂を前記溶媒で溶解して成形体から除去することにより、成形体中の前記樹脂が占めていた部分が空間として残され細孔が形成される。これにより、SPSからなる成形体を多孔質化することができる。すなわち、SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂は、溶出後、細孔を形成する。以下、SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂を、「可溶樹脂」ということがある。
【0025】
SPSを溶解しないが可溶樹脂を溶解する溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、等の脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソブロパノール、等のアルコール類;メチルエチルケトン、等のケトン類;蟻酸、酢酸、等のカルボン酸類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;及び塩化メチレン等の含ハロゲン炭化水素類、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0026】
上記SPSを溶解しない溶媒に溶解する樹脂(可溶樹脂)としては、特に限定されないが、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系重合体、PETなどのポリエステル、PC(ポリカーボネート)、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル、ポリアミド、PPS、ポリオキシメチレンなどの縮合系重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、SEBS、SEPS、SBR、ABSゴムなどのスチレン系化合物を含むゴム、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルエステルゴム、ポリエステルエステルゴム、オレフィン系ゴム、これらの混合物、又はこれらの高分子化合物を構成するモノマー2種以上からなる共重合体が挙げられる。
【0027】
SPSと可溶樹脂との混合方法としては、両者を溶解しうる溶媒で両者を溶解して混合する方法や、両者を溶融状態で混練することによって混合する方法がある。
溶媒によって溶解する方法に用いることができる溶媒としては、両者の混合後に除去し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロルベンゼン(オルト体、メタ体、パラ体)、トリクロロベンゼン(1,2,4−トリクロロベンゼンなど)などの芳香族化合物、デカリン(シス体、トランス体)、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどの非芳香族化合物が挙げられる。これら溶媒は二種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、SPS及び可溶樹脂を溶解し得る量であれば特に制限されない。
また、混練は、通常、バンバリーミキサー、単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミキシングロールなどの溶融混練機器を用いて行う。
【0028】
SPSと可溶樹脂との混合割合は、目的とする高分子電解質成形体の用途に応じて適宜選択することができる。SPSと可溶樹脂の混合物中に含まれる可溶樹脂の割合は、通常0.1〜60質量%、好ましくは0.1〜40質量%、特に好ましくは0.1〜30質量%になるように設定する。これにより、SPS中に可溶樹脂が均一に分散している混合物を得ることができる。
【0029】
また、別法として、可溶樹脂の存在下に、スチレン系モノマーを前記SPS製造のための触媒によって重合させたり、SPSを可溶樹脂製造時に共存させたりすることによって、SPSと可溶樹脂との混合物を得ることもできる。具体的には、可溶樹脂を、スチレン系モノマーに溶解するか、又はSPS及び可溶樹脂の両者を溶解しうる炭化水素系溶媒、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素若しくは芳香族炭化水素の中から選択した溶媒に溶解し、この溶液に上記触媒を加えて、スチレン系モノマーを重合させたり、SPSを可溶樹脂の原料モノマーや原料モノマーともに溶媒に溶解して可溶樹脂を製造することによって、可溶樹脂がSPS中に高度に分散した混合物を得る。
【0030】
上記のようにして得られたSPSと可溶樹脂との混合物は、次いで、通常実施されている方法で所望の形状に成形される。成形体の形状には、特に制限はないが、膜状物、フィルム、シート、パイプ、フィラメント、中空糸などの薄型成形体が特に好適である。さらに、粒子(ビーズ状)に成形することもできる。なお、成形の前に、さらに混合物を混練するなどの前処理を施してもよい。
【0031】
得られた成形体は、SPSからなる成形体の骨格中に可溶樹脂が均一に分散した状態になっている。この成形体中に分散している可溶樹脂を成形体中から除去することによって、多孔質化されたSPS成形体を効率的に製造することができる。
成形体から、可溶樹脂を除去するには、通常実施されている公知の手法を適用することができる。例えば、成形体中の可溶樹脂を、SPSは溶解しないが可溶樹脂を溶解する溶媒を用いて抽出、洗浄、浸出、あるいは溶媒をガス状にして成形体に吹きつけるなど様々な手段を用いることができ、適宜選択すればよい。ここで用いるSPSは溶解しないが可溶樹脂を溶解する溶媒は、前記の通りである。
【0032】
なお、本発明においては、可溶樹脂の成形体からの除去は、成形体を必要な程度まで多孔質化できればよく、必ずしも可溶樹脂を100%除去しなくてもよい。このようにして多孔質化されたSPS成形体は、結晶性を有し、耐熱性、耐溶剤性に優れている。
【0033】
上記のようにして得られる多孔質化SPS成形体にイオン交換基を導入するには、公知の手法を用いることができる。導入されるイオン交換基としては、陽イオン交換基又は陰イオン交換基のいずれであってもよく、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、4級アンモニウム基、1級、2級、3級アミン基などが挙げられ、スルホン酸基、リン酸基及びアミノ酸基が好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。例えば、スルホン酸基を導入する場合には、多孔質化SPS成形体を濃硫酸中で加熱する方法や、クロルスルホン酸とSPSとを反応させる方法などが挙げられる。このようにして、多孔質化SPS成形体にイオン交換基が導入された本発明の高分子電解質を得ることができる。
【0034】
本発明の高分子電解質のイオン交換基の導入量は、用途によって異なるが、スチレンモノマーに対し、0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜50モル%の範囲がさらに好ましい。イオン交換基の導入量が0.1モル%未満であると、例えば、高分子電解質膜として使用した場合、所望のイオン交換容量が得られないことがある。また、50モル%を超える場合には、水に対する親和性が高すぎてハンドリングが困難となる場合がある。
また、本発明の高分子電解質の電解質としての機能を向上させるため、金属触媒や金属酸化物などの無機物質を、SPSと可溶樹脂との混合物に配合することができる。使用しうる金属触媒としては、特に制限はないが、白金、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。これらの金属触媒の配合量は、高分子電解質に対して0.01〜80質量%となるように適宜選択することができる。
【0035】
金属酸化物としては特に制限はないが、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、酸化スズ(SnO2)、イットリア(Y2O3)などが挙げられ、これらのうちの1種又は複数種を組み合わせて配合することができる。金属酸化物の形状については特に制限はなく、微細粒子状、繊維状等いずれの形状でもよい。また、金属酸化物は、表面から内部にかけて無数の細孔を有する無機多孔質粒子であってもよい。これらの金属酸化物の配合量は、高分子電解質に対して0.01〜50質量%となるように選択するのが好ましい。
【0036】
また、本発明の高分子電解質を製造する際に、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用することできる。
上記本発明の製造方法によって製造された高分子電解質の含水率は、通常、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%であり、イオン交換容量は、通常0.001〜10meq/g、好ましくは0.005〜5meq/gである。
【0037】
本発明において、薄膜状の高分子電解質を得るには、SPSと可溶樹脂との混合物を薄膜状に成形し、可溶樹脂を除去した後に、イオン交換基を導入する。
SPSと可溶樹脂との混合物を薄膜状に成形する手法には特に制限はないが、例えば、溶液状態の混合物から製膜する方法(溶液キャスト法)、溶融状態の混合物から製膜する方法(溶融プレス法あるいは溶融押し出し法など)、溶融状態の混合物から製膜した後延伸する方法、溶融状態より成膜した後延伸して得られたSPS膜等に溶液状態のSPSと可溶樹脂との混合物を含浸させ次いで溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0038】
例えば、溶液キャスト法であれば、SPSと可溶樹脂との混合物を適当な溶媒(例えば、1,2,4−トリクロロベンゼン)に溶解した溶液とし、これをガラス板上に流延塗布した後、溶媒を除去して薄膜とし、この薄膜から前述の方法で可溶樹脂を除去することにより多孔質化SPS薄膜を得る。得られた薄膜に、前述の方法でイオン交換基を導入することにより、本発明の高分子電解質膜を得ることができる。
【0039】
ここで、溶液キャスト法に用いることができる溶媒は、SPSと可溶樹脂との混合物を溶解し、その後に除去し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロルベンゼン(オルト体、メタ体、パラ体)、トリクロロベンゼン(1,2,4−トリクロロベンゼンなど)などの芳香族化合物、デカリン(シス体、トランス体)、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどの非芳香族化合物が挙げられる。これら溶媒は二種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、SPSと可溶樹脂との混合物を溶解し得る量であればよい。
【0040】
また、溶液キャスト法に用いる溶媒を除去する際の熱処理温度は、使用する溶媒の種類などによって変動しうるが、−50〜200℃の範囲であることが望ましい。この範囲を逸脱すると所望の高分子電解質膜としての性能が損なわれることがある。溶媒を除去する手法としては、薄膜を真空下におく方法や、気流中に放置する手法を用いることができる。
また、本発明の高分子電解質膜は、補強材として織布等に塗布することで支持されていてもよい。
【0041】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によって、更に詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例によって何ら制限されるものではない。
<実施例1>
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS;GPC(ガス・パーミエイション・クロマトグラフィー)によって得られるポリスチレン換算の分子量:30万、13C−NMRによって得られるラセミペンタッドでのシンジオタクティシティー:94%)9gと、ポリフェニレンオキサイド(PPE;GPCによって得られるポリスチレン換算の分子量:24万)1gとを、1,2,4−トリクロロベンゼン50g中に添加し、160℃で3時間攪拌して均一溶液を得た。この溶液をガラス板上に流延塗布し、厚さ400μmの膜を作製し、この膜を110℃で24時間乾燥して1,2,4−トリクロロベンゼンを除去した。この膜を、クロロホルムに室温で24時間浸漬してPPEを除去し、SPSからなる多孔質膜を得た。得られた多孔質膜を、メタノールで洗浄し、90℃で8時間乾燥し、更に120℃で2時間乾燥した。この多孔質膜を95%濃硫酸100mlに浸漬し、60℃で24時間加熱してSPSにスルホン酸基を導入した。スルホン酸基が導入された膜を、イオン交換水で繰り返し洗浄し、目的の高分子電解質膜を得た。
【0042】
得られた高分子電解質膜の含水率は5.8質量%、イオン交換容量は0.017meq/gであった。
ここで、含水率は、次のようにして求めた。
得られた膜を、イオン交換水中に24時間浸漬した後、表面の水分を拭き取り、質量(W1(g))を測定した。この膜を、100℃で4時間乾燥した後、質量(W2(g))を測定した。これらの測定値を下記式に代入することにより含水率(質量%)を求めた。
C=[(W1−W2)/W1]×100
【0043】
また、イオン交換容量は、次のようにして求めた。
得られた膜を、1.0モル/リットル塩酸水溶液に24時間浸漬した後、膜を取り出し、膜の表面をイオン交換水で洗浄した。この膜を、3.0モル/リットル塩化カリウム水溶液150ml中に入れ、0.1モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液を用いて滴定した。中和に要した水酸化ナトリウム水溶液の容積をV(リットル)とした。滴定終了後、塩化カリウム水溶液から膜を取り出し、表面の水分を拭き取った後、湿潤状態質量(Wa(g))を測定した。これらの測定値を下記式に代入することによりイオン交換容量(E(meq/g))を求めた。なお、式中のCは、上記で求めた膜の含水率(質量%)を示す。
E=(0.1×V)/[Wa×(1−C/100)]
【0044】
<比較例1>
PPEを用いなかった以外は実施例1と同様にして膜を製造した。得られた膜の含水率は0質量%、イオン交換容量は0meq/gであり、高分子電解質膜としての機能を有していなかった。
【0045】
<比較例2>
硫酸によるスルホン酸基の導入処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして膜を製造した。得られた膜の含水率は0質量%、イオン交換容量は0meq/gであり、高分子電解質膜としての機能を有していなかった。
【0046】
<実施例2>
PPEの代わりに、ポリスチレン(GPCによって得られるポリスチレン換算の分子量:14万)1gを用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜を製造した。得られた高分子電解質膜の含水率は7.8質量%、イオン交換容量は0.020meq/gであった。
【0047】
<実施例3>
内容積1.0リットルの攪拌機付き反応容器を、予め窒素で十分に置換した。この反応容器を70℃に加熱した後、乾燥したトルエン80ml、スチレン420mlおよびポリ(α−メチルスチレン)10gを仕込み、触媒としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)10ミリモル及びメチルアルミノキサン10ミリモルを加えて30分間攪拌した。次いで、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシドを50μmol加え、重合反応を6時間行った後、メタノールを注入して反応を停止した。DSC(示差走査熱量計)による測定を行った結果、得られたポリスチレンの融点(Tm)は268℃で、ガラス転移温度(Tg)は101℃であった。13C−NMRを測定した結果、スチレン連鎖の芳香環C1炭素シグナルが145.1ppmに観測された。このシグナルから、得られたポリスチレンがシンジオタクチック構造を有することが確認できた。そして、このポリスチレンのラセミペンタッドでのシンジオタクティシティーは、94%であった。また、ポリ(α−メチルスチレン)の含量は11.1質量%であった。
【0048】
上記のようにして得られたポリスチレンとポリ(α−メチルスチレン)との混合物を、成形温度300℃で、5.0cm×5.0cm×0.05cmの薄膜状に熱成形した。次いで、この薄膜を、ポリ(α−メチルスチレン)の良溶媒であるメチルエチルケトンで、80℃で4時間洗浄してポリ(α−メチルスチレン)を除去し、さらにメタノールで十分に洗浄した後、90℃で8時間乾燥した。さらに、120℃で20分間加熱して多孔質膜を得た。
【0049】
得られた多孔質膜を、95%濃硫酸100ml中に浸漬し、60℃で24時間加熱してスルホン酸基を導入した。スルホン酸基が導入された多孔質膜を、イオン交換水で繰り返し洗浄して、目的の高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜の含水率は5.8質量%、イオン交換容量は0.017meq/gであった。
【0050】
<実施例4>
ポリ(α−メチルスチレン)に代えて、ポリ〔N−(4−クロルフェニル)マレイミド〕8gを使用した以外は実施例3と同様にしてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)とポリ〔N−(4−クロルフェニル)マレイミド〕との混合物99gを得た。混合物中のポリスチレンのTgは99℃、Tmは268℃であり、13C−NMRで測定したラセミペンタッドでのシンジオタクティシティーは93%であった。また、ポリ〔N−(4−クロルフェニル)マレイミド〕の含量は6.5質量%であった。
【0051】
上記のようにして得られたポリスチレンとポリ〔N−(4−クロルフェニル)マレイミド〕との混合物を用いて、実施例3と同様にして、目的の高分子電解質膜を製造した。得られた高分子電解質膜の含水率は6.8質量%、イオン交換容量は0.021meq/gであった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、長期使用時の高分子電解質の劣化の原因となるジビニルベンゼンを用いることなく、高分子電解質に要求される適度な空孔を有し、長期に渡って形状を維持できる、耐久性に優れたスチレン系(共)重合体からなる高分子電解質を有利に得ることができる。
本発明の高分子電解質は、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)から構成され、このSPSは結晶性を有するため、有機溶剤、酸やアルカリの薬品に対して安定である。
本発明では、高価なフッ素系樹脂を使用しないため経済的に有利である。
Claims (13)
- 主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレンからなる多孔質成形体にイオン交換基を導入してなることを特徴とする高分子電解質。
- スチレン系モノマーが、スチレン、(C1−C20)アルキルスチレン類、ハロゲン化スチレン類、ビニルビフェニル類、ビニルフェニルナフタレン類、ビニルフェニルアントラセン類、ビニルフェニルフェナントレン類、ビニルフェニルピレン類、ビニルターフェニル類、ビニルフェニルターフェニル類、ビニル(C1−C20)アルキルビフェニル類、ハロゲン化ビニルビフェニル類、トリ(C1−C20)アルキルシリルビニルビフェニル類、トリ(C1−C20)アルキルシリルメチルビニルビフェニル類、ハロゲン置換(C1−C20)アルキルスチレン類、(C1−C20)アルキルシリルスチレン類、フェニル基含有シリルスチレン類、ハロゲン含有シリルスチレン類及びシリル基含有シリルスチレン類からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の高分子電解質。
- 核磁気共鳴法(13C−NMR法)によって定量されるシンジオタクティシティーが、ラセミダイアッドで75%以上又はラセミペンタッドで30%以上であるポリスチレンを用いた請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 核磁気共鳴法(13C−NMR法)によって定量されるシンジオタクティシティーが、ラセミダイアッドで85%以上又はラセミペンタッドで50%以上であるポリスチレンを用いた請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- ポリスチレンの重量平均分子量が5千〜450万であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- イオン交換基が、スルホン酸基、リン酸基及びアミノ基から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜。
- 主としてシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(以下、SPSと略称する)と、該SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂とを含む混合物から成形体を形成し、該成形体中の該樹脂を該SPS不溶性溶媒を用いて除去することにより該成形体中に細孔を形成した後、該成形体を構成しているSPSにイオン交換基を導入することを特徴とする高分子電解質の製造方法。
- 少なくとも1種のスチレン系モノマー、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(SPS)を製造するための触媒及び該スチレン系モノマーを重合又は共重合して得られるSPS不溶性溶媒に可溶な樹脂を、溶媒の存在下又は不存在下に混合し、該スチレン系モノマーを重合又は共重合することにより、SPSと該樹脂との混合物を得ることを特徴とする請求項9に記載の高分子電解質の製造方法。
- SPS不溶性溶媒が、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類、エーテル類及び含ハロゲン炭化水素類からなる群から選択されることを特徴とする請求項9又は10に記載の高分子電解質の製造方法。
- SPS不溶性溶媒に可溶な樹脂が、スチレン系重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル類、縮合系重合体類、アクリル系重合体類、ポリオレフィン類、スチレン系化合物を含むゴム、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルエステルゴム、ポリエステルエステルゴム、オレフィン系ゴム及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の高分子電解質の製造方法。
- SPSとSPS不溶性溶媒に可溶な樹脂との混合物中の該樹脂の割合が、0.1〜60質量%であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の高分子電解質の製造方法。
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