JP2004052738A - ランキンサイクル装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ランキンサイクル装置において、蒸発器において発生する気相作動媒体の温度を応答性良く、かつ精度良く目標温度に制御する。
【解決手段】ランキンサイクル装置において、蒸発器の出口での蒸気温度を目標蒸気温度に一致させるべく、蒸発器への給水量を制御し、かつ膨張機の回転数を制御する。蒸発器への給水量をステップ状に減少させると、蒸発器の出口での蒸気温度はゆっくりと上昇して所定温度に収束する。また膨張機の回転数をステップ状に減少させると、一時的ではあるが蒸気温度が速やかに上昇する。従って、蒸発器への給水量の制御と膨張機の回転数の制御とを併用することにより、蒸発器の出口での蒸気温度を応答性良く、かつ精度良く目標蒸気温度に一致させることができ、蒸発器の効率および膨張機の効率を合わせた総合効率を最大にすることができる。
【選択図】   図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
実公平2−38161号公報には、一定速度で回転するエンジンの排気ガスを熱源とする廃熱貫流ボイラの出口での蒸気温度を目標蒸気温度と比較し、蒸気温度が目標蒸気温度に一致するように廃熱貫流ボイラへの給水量をフィードバック制御するものにおいて、廃熱貫流ボイラの出口での蒸気圧力に基づいて算出したフィードフォワード信号をフィードバック信号に加算することにより、エンジンの負荷変動を補償して蒸気温度の制御精度の向上を図るものが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図12に示すように、ランキンサイクル装置において、膨張機の出力がプラスになるには、つまり膨張機から機械エネルギーを取り出すためには、蒸発器の出口での蒸気温度を飽和蒸気温度以上に制御する必要がある。また図13に示すように、蒸発器の効率および膨張機の効率は蒸気温度によって変化し、両者の効率を合わせた総合効率を最大にするには、蒸気温度を最適温度に制御する必要がある。しかしながら、図4(A)に示すように、蒸発器への給水量をステップ状に変化させた場合に、蒸気温度の変化の応答性が低いために定常状態に達するのに数十秒から数百秒が必要であり、従ってエンジン負荷の変動速度が速い車両用のランキンサイクル装置では、蒸発器への給水量を変化させることで蒸発器の出口での蒸気温度を応答性良く、かつ精度良く制御することは困難である。
【0004】
給水量の増減で蒸気温度を応答性良く制御するには蒸発器のヒートマスを小さくすることが必要であり、そのためには蒸発器のケーシングを小型化し、伝熱管の長さを短くする必要があるが、このようにすると蒸発器が発生する蒸気量が不足したり、蒸発器の効率が低下したりする問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ランキンサイクル装置において、蒸発器において発生する気相作動媒体の温度を応答性良く、かつ精度良く目標温度に制御することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンの排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置において、蒸発器の出口での気相作動媒体の温度を目標温度に一致させるべく、蒸発器への液相作動媒体の供給量を制御し、かつ膨張機の回転数を制御する制御手段を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0007】
上記構成によれば、エンジンの排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器への液相作動媒体の供給量を制御し、かつ蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機の回転数を制御することにより、蒸発器で発生する気相作動媒体の温度を目標温度に応答性良く、かつ精度良く一致させ、蒸発器の効率および膨張機の効率を合わせた総合効率を最大にすることができる。
【0008】
尚、実施例のコントローラ20は本発明の制御手段に対応する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図9は本発明の第1実施例を示すもので、図1はランキンサイクル装置の全体構成図、図2は蒸発器の内部の作動媒体の温度分布を示す図、図3は膨張機回転数をステップ状に変化させたときの蒸気圧力および蒸気温度の変化を示すグラフ、図4は給水量および膨張機回転数を同時に変化させたときの蒸気温度の変化を示すグラフ、図5は蒸気温度制御のメインルーチンのフローチャート、図6は給水量フィードフォワード値算出ルーチンのフローチャート、図7は目標膨張機回転数算出ルーチンのフローチャート、図8はエンジン回転数Neおよび吸気負圧Pb等のエンジン運転状態から燃料流量GF を検索するマップ、図9は排気ガス流量Ggas および排気ガス温度Tgから給水量フィードフォワード値QFFを検索するマップである。
【0011】
図1に示すように、車両のエンジン11の排気ガスの熱エネルギーを回収するためのランキンサイクル装置は、エンジン11の排気ガスで液相作動媒体(水)を加熱して高温高圧の気相作動媒体(蒸気)を発生させる蒸発器12と、蒸発器12で発生した高温高圧の蒸気の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機13と、膨張機13から排出された蒸気を冷却して水に凝縮させる凝縮器14と、凝縮器14から排出された水を貯留するタンク15と、タンク15内の水を吸引する給水ポンプ16と、給水ポンプ16で吸引した水を蒸発器12に噴射するインジェクタ17とを閉回路上に配置してなる。
【0012】
膨張機13に接続されたモータ・ジェネレータ18は例えばエンジン11と駆動輪との間に配置されており、モータ・ジェネレータ18をモータとして機能させてエンジン11の出力をアシストするとともに、車両の減速時にモータ・ジェネレータ18をジェネレータとして機能させて車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。尚、モータ・ジェネレータ18は膨張機13に単体で接続されて電気エネルギーの発生機能のみを有するものでも良い。そして本発明では、モータ・ジェネレータ18の負荷(発電量)を調整することで、モータ・ジェネレータ18から膨張機13に加わる負荷を調整して該膨張機13の回転数を制御する。エンジン11の運転状態、つまりエンジン回転数Ne、吸気負圧Pb、排気ガス温度Tgおよび空燃比A/Fと、蒸気温度センサ19で検出した蒸発器12の出口での蒸気温度Tが入力されるコントローラ20は、インジェクタ17の水供給量(あるいは給水ポンプ16の回転数)と、モータ・ジェネレータ18が発生する負荷、つまり膨張機13の回転数とを制御する。
【0013】
次に、膨張機13の回転数を調整することで蒸発器12の出口での蒸気温度を制御できる理由について説明する。
【0014】
図2(A)は蒸発器12の構造を模式的に示すもので、蒸発器12のケーシング21の内部に配置された伝熱管22は、インジェクタ17に連なる水入口22aと膨張機13に連なる蒸気出口22bとを備えており、ケーシング21は蒸気出口22b側に排気ガス入口21aを備えるとともに水入口22a側に排気ガス出口21bを備える。従って、作動媒体および排気ガスは相互に逆方向に流れることになる。
【0015】
図2(B)に示すように、伝熱管22の水入口22aに供給された水は液相状態で次第に温度上昇し、a点において飽和温度に達すると水および蒸気が共存する湿り飽和蒸気(二相状態)になって飽和温度に維持され。b点において水が全て気相状態の過熱蒸気になって該蒸気の温度は飽和温度から上昇する。膨張機13への蒸気の供給量を一定に保持したまま、図3に示すように、モータ・ジェネレータ18の負荷を低減して膨張機13の回転数をステップ状に増加させると蒸気圧力が減少し、水の気化潜熱および膨張熱によって一時的に蒸気温度が低下する。つまり、図2(C)に示すように、飽和温度が低下してa点およびb点が水入口22a側にシフトし、蒸気出口22bから排出される蒸気温度が一時的に低下する。この蒸気温度の低下速度は蒸気圧力の低下速度に比例するもので数秒のオーダーである。その後、図2(D)に示すように、伝熱管22内の作動媒体は排気ガスの熱エネルギーを受け続けて温度上昇し、図3に示すように、膨張機13の回転数を増加させる前の温度に復帰する。この温度変化は蒸発器12のヒートマスの影響を受けるため、数十秒〜数百秒のオーダーとなる。このように、膨張機13の回転数を増減させることで、蒸発器12の出口での蒸気温度を、一時的にではあるが応答性良く制御することができる。
【0016】
上述したように、膨張機13の回転数の増減による蒸気温度の変化一時的なものであり、時間の経過と共に蒸気温度は元に戻ってしまうため、膨張機13の回転数の増減と同時にインジェクタ17から蒸発器12への給水量を制御する。例えば、蒸発器12の出口での蒸気温度を上昇させるべく、図4(A)に示すように、蒸発器12への給水量をステップ状に減少させると、蒸発器12の出口での蒸気温度は数十秒〜数百秒のオーダーでゆっくりと上昇して所定温度に収束する。このように、給水量の増減による蒸気温度の制御は応答性が極めて低いものであるが、これと同時並行して、図4(B)に示すように、膨張機13の回転数をステップ状に減少させて蒸気温度を一時的に上昇させることで、図4(C)に示すように、蒸気温度を応答性良く、かつ精度良く目標蒸気温度に制御することができ、その結果、蒸発器の効率および膨張機の効率を合わせた総合効率を最大にすることができる。
【0017】
次に、上記作用を図5〜図7のフローチャートに基づいて更に説明する。
【0018】
先ずステップS1で蒸気温度センサ19により蒸発器12の出口での蒸気温度Tを検出し、ステップS2でエンジン11の運転状態、つまりエンジン回転数Ne、吸気負圧Pb、排気ガス温度Tgおよび空燃比A/Fを検出し、ステップS3で給水量フィードフォワード値QFFをNe,Pb,Tg,A/Fに基づいて算出する。
【0019】
図6は前記ステップS3のサブルーチンを示すもので、ステップS11でエンジン回転数Neおよび吸気負圧Pbを図8のマップに適用してエンジン11の燃料流量GF を検索する。燃料流量GF はエンジン回転数Neが大きいほど、また吸気負圧Pbが高いほど大きくなる。尚、吸気負圧Pbが高い領域で燃料流量GF が急激に増加するのは、エンジン11の高負荷時に燃料がリッチになるためである。続くステップS12で排気ガス流量Ggas を空燃比A/Fおよび燃料流量GF を用いて、(A/F+1)×GF により算出する。そしてステップS13で排気ガス流量Ggas および排気ガス温度Tgを図9のマップに適用して給水量フィードフォワード値QFFを検索する。給水量フィードフォワード値QFFは、排気ガス流量Ggas が大きいほど、また排気ガス温度Tgが高いほど大きくなる。尚、給水量フィードフォワード値QFFは、目標蒸気温度T0 の上昇に応じて僅かに増加するように補正される。
【0020】
このようにして給水量フィードフォワード値QFFが算出されると、図5のフローチャートに戻り、ステップS4でインジェクタ17の給水指令値、つまりインジェクタ17の開度指令値Tiを給水量フィードフォワード値QFFから算出する。尚、給水量は給水ポンプ16の回転数に応じて変化することから、前記ステップS4に代えて、ステップS4′でインジェクタ17の給水指令値、つまり給水ポンプ16の回転数Npを給水量フィードフォワード値QFFから算出しても良い。
【0021】
続くステップS5で蒸気温度Tを目標蒸気温度T0 に制御するための膨張機13の目標回転数Nexp を算出する。図7は前記ステップS5のサブルーチンを示すもので、ステップS21で蒸気温度Tが目標蒸気温度T0 を越えていれば、ステップS22で目標膨張機回転数Nexp に回転数増減量ΔNexp を加算し、逆に蒸気温度Tが目標蒸気温度T0 以下であれば、ステップS23で目標膨張機回転数Nexp から回転数増減量ΔNexp を減算する。そして図5のフローチャートのステップS6で目標膨張機回転数Nexp を指令値として出力し、モータ・ジェネレータ18が発生する負荷を変化させて膨張機13の回転数を制御する。
【0022】
次に、図10および図11に基づいて本発明の第2実施例を説明する。図10のフローチャートは図5のフローチャート(第1実施例)のステップS3(給水量フィードフォワード値算出)の後に、ステップS3A,S3Bを付加したものであり、その他のステップは実質的に同じである。即ち、ステップS3Aで給水量フィードバック値QFBを目標蒸気温度T0 と蒸気温度Tとの偏差T0 −TのPID演算値として算出する。そしてステップS3Bで給水量フィードフォワード値QFFに給水量フィードバック値QFBを加算して給水量Q0 を算出し、ステップS4(あるいはステップS4′)で給水量Q0 に基づいて給水量指令値を算出する。
【0023】
ステップS5で目標膨張機回転数Nexp を算出するとき(図7参照)、図11に示すように、蒸気流量が小さいときには目標膨張機回転数Nexp の回転数増減量ΔNexp が小さくても蒸気温度を変化させることができるが、蒸気流量が大きいときには目標膨張機回転数Nexp の回転数増減量ΔNexp を大きくしないと蒸気温度を変化させることができない。また目標蒸気温度T0 と蒸気温度Tとの偏差T0 −Tが大きいときには回転数増減量ΔNexp を大きくし、偏差T0 −Tが小さいときには回転数増減量ΔNexp を小さくすることで、膨張機回転数を目標膨張機回転数Nexp に速やかに収束させることができる。
【0024】
以上のように、第2実施例によれば、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを併用したことで、膨張機回転数を目標膨張機回転数Nexp に一層精密に収束させることができる。
【0025】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0026】
例えば、図6のフローチャートで給水量フィードフォワード値QFFをNe,Pb,Tg,A/Fに基づいて算出しているが、それを流量センサで排ガス流量を直接検出しても良い。
【0027】
また図6のフローチャートのステップS11でエンジン11の燃料流量GF をエンジン回転数Neおよび吸気負圧Pbからマップ検索しているが、それをエンジン11の燃料噴射量から算出しても良い。
【0028】
また作動媒体は水(蒸気)に限定されず、他の適宜の作動媒体を採用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、エンジンの排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器への液相作動媒体の供給量を制御し、かつ蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機の回転数を制御することにより、蒸発器で発生する気相作動媒体の温度を目標温度に応答性良く、かつ精度良く一致させ、蒸発器の効率および膨張機の効率を合わせた総合効率を最大にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ランキンサイクル装置の全体構成図
【図2】蒸発器の内部の作動媒体の温度分布を示す図
【図3】膨張機回転数をステップ状に変化させたときの蒸気圧力および蒸気温度の変化を示すグラフ
【図4】給水量および膨張機回転数を同時に変化させたときの蒸気温度の変化を示すグラフ
【図5】蒸気温度制御のメインルーチンのフローチャート
【図6】給水量フィードフォワード値算出ルーチンのフローチャート
【図7】目標膨張機回転数算出ルーチンのフローチャート
【図8】エンジン回転数Neおよび吸気負圧Pb等のエンジン運転状態から燃料流量GF を検索するマップ
【図9】排気ガス流量Ggas および排気ガス温度Tgから給水量フィードフォワード値QFFを検索するマップ
【図10】第2実施例に係る蒸気温度制御のメインルーチンのフローチャート
【図11】蒸気流量および偏差T0 −Tから回転数増減量ΔNexp を検索するマップ
【図12】蒸気温度と膨張機出力との関係を示すグラフ
【図13】最適蒸気温度と蒸発器および膨張機の最高効率との関係を示すグラフ
【符号の説明】
11    エンジン
12    蒸発器
13    膨張機
20    コントローラ(制御手段)

Claims (1)

  1. エンジン(11)の排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器(12)と、蒸発器(12)で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機(13)とを備えたランキンサイクル装置において、
    蒸発器(12)の出口での気相作動媒体の温度を目標温度に一致させるべく、蒸発器(12)への液相作動媒体の供給量を制御し、かつ膨張機(13)の回転数を制御する制御手段(20)を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置。
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