JP3901609B2 - ランキンサイクル装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2000−345835号公報には、エンジンの冷却系の冷媒蒸気をエンジンの廃熱により加熱してタービンを駆動する廃熱回収装置において、冷却経路の圧力あるいは温度をエンジンの運転状態に応じて最適制御することにより熱効率を向上させるものが記載されている。具体的には、エンジン回転数およびエンジン負荷が増加するほど冷却経路の圧力の目標値を低く設定し、実際の圧力が目標圧力に一致するように冷媒循環用ポンプの吐出量等を制御している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
容積型の膨張機を備えたランキンサイクル装置において、図4に示すように、膨張機の入口における蒸気圧力が目標蒸気圧力(最適蒸気圧力)に一致していれば、膨張機の出口における蒸気圧力が膨張機の膨張比に見合った圧力になるが、入口の蒸気圧力が高すぎると膨張機の出口から排出される蒸気に余剰のエネルギーが残ってしまい、エネルギーが無駄に捨てられてしまう問題がある。逆に、入口の蒸気圧力が低すぎると膨張機の出口から排出される蒸気が負圧になってしまい、膨張機が負の仕事をして効率が低下してしまう問題がある。
【0004】
このように、膨張機に供給される蒸気圧力を目標蒸気圧力に一致させることは重要であるが、蒸発器への給水量を変化させて蒸気圧力を目標蒸気圧力に一致させようとすると、それに伴って蒸気温度が変化してしまう問題がある。即ち、図3に示すように、ランキンサイクル装置の蒸発器の効率および膨張機の効率は蒸気温度によって変化し、両者の効率を合わせた総合効率を最大にするには、蒸気温度を最適蒸気温度に制御する必要があり、蒸気圧力を目標蒸気圧力に一致させるべく給水量を変化させたことで蒸気温度が最適蒸気温度から外れてしまうと、蒸発器および膨張機の総合効率が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ランキンサイクル装置において、蒸発器への液相作動媒体の供給量を変化させることなく、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力を目標圧力に精度良く制御することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンの排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置において、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力を目標圧力に一致させるべく、蒸発器の出口での気相作動媒体の流量および目標圧力に基づいてフィードフォワード値を算出するとともに、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力および目標圧力の偏差に、前記気相作動媒体の流量に基づいて算出したフィードバックゲインを乗算してフィードバック値を算出し、フィードフォワード値およびフィードバック値の加・減算値に基づいて膨張機の回転数を制御する制御手段を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0007】
上記構成によれば、蒸発器の出口での気相作動媒体の流量および膨張機の入口での気相作動媒体の目標圧力に基づいてフィードフォワード値を算出するとともに、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力および目標圧力の偏差に気相作動媒体の流量に基づいて算出したフィードバックゲインを乗算してフィードバック値を算出し、フィードフォワード値およびフィードバック値の加・減算値に基づいて膨張機の回転数を制御するので、膨張機の回転数が変化したときの気相作動媒体の圧力の変化特性が気相作動媒体の流量の大小に応じて異なるのを補償し、蒸発器への液相作動媒体の供給量を変化させることなく、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く、かつ精度良く一致させることができる。
【0008】
尚、実施例のコントローラ20は本発明の制御手段に対応する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図12は本発明の第1実施例を示すもので、図1はランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図、図2は蒸気エネルギーおよび目標蒸気温度から目標蒸気圧力を検索するマップ、図3は最適蒸気温度と蒸発器および膨張機の最高総合効率との関係を示すグラフ、図4は膨張機の入口圧力と出口圧力との関係を示すグラフ、図5は膨張機の回転数をステップ状に変化させたときの蒸気圧力の変化を示すグラフ、図6はフィードバックゲインを固定した場合の蒸気圧力の収束状態を示す図、図7はフィードバックゲインを可変にした場合の蒸気圧力の収束状態を示す図、図8は蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート、図9はメインルーチンのステップS3のサブルーチンのフローチャート、図10はメインルーチンのステップS4のサブルーチンのフローチャート、図11は蒸気流量Qおよび目標蒸気圧力P0 から膨張機の回転数のフィードフォワード値NFFを検索するマップ、図12は蒸気流量Qからフィードバックゲインkpを検索するテーブルである。
【0011】
図1に示すように、車両のエンジン11の排気ガスの熱エネルギーを回収するためのランキンサイクル装置は、エンジン11の排気ガスで液相作動媒体(水)を加熱して高温高圧の気相作動媒体(蒸気)を発生させる蒸発器12と、蒸発器12で発生した高温高圧の蒸気の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機13と、膨張機13から排出された蒸気を冷却して水に凝縮させる凝縮器14と、凝縮器14から排出された水を貯留するタンク15と、タンク15内の水を吸引する給水ポンプ16と、給水ポンプ16で吸引した水を蒸発器12に噴射するインジェクタ17とを閉回路上に配置してなる。
【0012】
膨張機13に接続されたモータ・ジェネレータ18はエンジン11と駆動輪との間に配置されており、モータ・ジェネレータ18をモータとして機能させてエンジン11の出力をアシストするとともに、車両の減速時にモータ・ジェネレータ18をジェネレータとして機能させて車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。尚、モータ・ジェネレータ18は膨張機13に単体で接続されて電気エネルギーの発生機能のみを有するものでも良い。そして本発明では、モータ・ジェネレータ18の負荷(発電量)を調整することで、モータ・ジェネレータ18から膨張機13に加わる負荷を調整して該膨張機13の回転数を制御する。コントローラ20には、蒸発器12の出口での蒸気流量を検出する蒸気流量センサ21からの信号と、膨張機13の入口での蒸気圧力を検出する蒸気圧力センサ22からの信号とが入力される。
【0013】
コントローラ20は、膨張機13の入口での蒸気圧力の目標値である目標蒸気圧力を設定する目標蒸気圧力設定手段23を備える。図2に示すように、目標蒸気圧力設定手段23は目標蒸気温度および蒸気エネルギー(蒸気流量)に基づいて目標蒸気圧力を検索する。蒸発器12の出口での蒸気温度は、蒸発器12および膨張機13の総合効率が最大になる温度(つまり最適蒸気温度)に一致するように、インジェクタ17あるいは給水ポンプ16から蒸発器12への給水量を調整することにより制御されている。即ち、図3に示すように、蒸発器12の効率および膨張機13の効率は蒸気温度によって変化し、蒸気温度が増加すると蒸発器12の効率が減少して膨張機13の効率が増加し、逆に蒸気温度が減少すると蒸発器12の効率が増加して膨張機13の効率が減少することから、両者の効率を合わせた総合効率を最大になる最適蒸気温度が存在し、蒸発器12の出口での蒸気温度は前記最適蒸気温度に制御されている。
【0014】
膨張機13の入口での蒸気圧力を目標蒸気圧力に制御するのは、次のような理由からである。即ち、図4に示すように、膨張機13の入口における蒸気圧力が目標蒸気圧力に一致していれば、膨張機13の出口における蒸気圧力が膨張機13の膨張比に見合った圧力になるが、入口蒸気圧力が高すぎると膨張機13の出口から排出される蒸気に余剰のエネルギーが残ってしまい、エネルギーが無駄に捨てられてしまう問題がある。逆に、入口蒸気圧力が低すぎると膨張機13の出口から排出される蒸気が負圧になってしまい、膨張機13が負の仕事をして効率が低下してしまう問題がある。
【0015】
蒸発器12の出口での蒸気温度を最適蒸気温度に保ったまま、つまり蒸発器12への給水量を変化させずに、膨張機13の入口での蒸気圧力を目標蒸気圧力に制御するには、モータ・ジェネレータ18から膨張機13に加わる負荷を調整して該膨張機13の回転数を制御すれば良い。図5に示すように、膨張機13の回転数を減少させると蒸気圧力は増加し、逆に膨張機13の回転数を増加させると蒸気圧力は減少する。但し、蒸気圧力の変化の応答性は蒸気流量によって変化し、蒸気流量が小さいときには応答性が低くなり、蒸気圧力が定常状態に達するのに100秒以上が必要であるのに対し、蒸気流量が大きいときには応答性が高くなり、蒸気圧力が定常状態に達するのに10秒以下で済む。
【0016】
尚、インジェクタ17の前後差圧を検出し、目標給水量に一致するようにTi値を制御するか、あるいは給水ポンプ16の吐出圧を検出し、該給水ポンプ16の回転数を制御すれば、膨張機13の回転数が変化しても蒸発器12への給水量が一定に保持され、蒸発器11の出口での蒸気温度を最適蒸気温度に保持することができる。
【0017】
蒸気圧力を目標蒸気圧力にフィードバック制御する際に、図6(A)に示すようにフィードバックゲインkp(比例項)を一定値とすると、図6(B)に示すように、蒸気流量が大きいときに適切な応答性が得られるように前記フィードバックゲインkpを設定すると、蒸気流量が小さいときに充分な応答性が得られなくなってしまう。それに対して、図7(A)に示すように蒸気流量をパラメータとするゲインテーブルから検索したフィードバックゲインkpを用いることにより、図7(B)に示すように、蒸気流量が大きいときにも小さいときにも適切な応答性が得られるようになる。
【0018】
つまり、本発明の要点は、膨張機13の入口での蒸気圧力を目標蒸気圧力に一致させるべく膨張機13の回転数をフィードバック制御する際に、フィードバックゲインを蒸気流量に応じて変更することにある。以下、その具体的な内容を、図1のブロック図および図8〜図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
先ず、図8のフローチャートのステップS1で蒸気流量センサ21により蒸発器12の出口での蒸気流量Qを検出し、ステップS2で蒸気圧力センサ22により膨張機13の入口での蒸気圧力Pを検出した後に、ステップS3で膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFを算出する。即ち、図9のフローチャートのステップS11で図11のマップから蒸気流量Qおよび目標蒸気圧力P0 をパラメータとして膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFを検索する。図11から明らかなように、フィードフォワード値NFFは、蒸気流量Qが小さく目標蒸気圧力P0 が大きいほど小さく、蒸気流量Qが大きく目標蒸気圧力P0 が小さいほど大きくなるように設定されている。
【0020】
図8のフローチャートに戻り、ステップS4で膨張機13の回転数のフィードバック値NFBを算出する。即ち、図10のフローチャートのステップS21で蒸気圧力センサ22により検出した膨張機13の入口での蒸気圧力Pと、目標蒸気圧力設定手段23で設定した目標蒸気圧力P0 との偏差ΔP=|P−P0 |を算出し、続くステップS22で蒸気流量センサ21により検出した蒸気流量Qを図12のテーブルに適用してゲインkpを検索する。図12のテーブルから明らかなように、ゲインkpは蒸気流量Qの増加に伴って減少する。そしてステップS23でゲインkpに偏差ΔPを乗算して膨張機13の回転数のフィードバック値NFBを算出する。
【0021】
図8のフローチャートに戻り、ステップS5で蒸気圧力Pが目標蒸気圧力P0 以上であれば、ステップS6で膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFにフィードバック値NFBを加算して膨張機13の回転数指令値Nを算出し、またステップS5で蒸気圧力Pが目標蒸気圧力P0 未満であれば、ステップS7で膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFからフィードバック値NFBを減算して膨張機13の回転数指令値Nを算出する。しかして、回転数指令値Nに基づいてモータ・ジェネレータ18の回転数、つまり膨張機13の回転数を制御することで、膨張機13の入口での蒸気圧力Pを目標蒸気圧力P0 に応答性良く、かつ精度良く収束させることができ、これにより、膨張機13の出口から排出される蒸気に余剰のエネルギーが残ったり、膨張機13の出口から排出される蒸気が負圧になって膨張機13が負の仕事をして効率が低下したりする問題を解消することができる。
【0022】
図13〜図16は本発明の第2実施例を示すもので、図13はランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図、図14は蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート、図15はメインルーチンのステップS34のサブルーチンのフローチャート、図16は蒸気圧力Pおよび蒸気温度Tから蒸気の比容積Vを検索するマップである。
【0023】
図13に示すように、第2実施例は第1実施例(図1参照)の蒸気流量センサ21を備えておらず、その代わりに蒸発器12の入口側に給水量センサ24を備えるとともに、膨張機13の入口側に蒸気温度センサ25を備える。第1実施例が蒸気流量Qを蒸気流量センサ21によって直接検出するのに対し、第2実施例では蒸気流量Qを蒸気圧力センサ22で検出した蒸気圧力Pと、給水量センサ24で検出した給水質量流量Gwと、蒸気温度センサ25で検出した蒸気温度Tとを用いて算出しており、その他の構成および作用は第1実施例と同様である。
【0024】
第2実施例の作用をフローチャートを参照して説明すると、先ず、図14のフローチャートのステップS31で蒸気温度センサ25により膨張機13の入口での蒸気温度Tを検出し、ステップS32で蒸気圧力センサ22により膨張機13の入口での蒸気圧力Pを検出し、更にステップS33で給水量センサ24で蒸発器12への給水質量流量Gwを検出する。
【0025】
続くステップS34で蒸気流量センサ21を用いずに膨張機13への蒸気流量Qを算出する。即ち、図15のフローチャートのステップS41で図16のマップから蒸気温度Tおよび蒸気圧力Pをパラメータとして蒸気の比容積Vを検索する。図16から明らかなように、蒸気の比容積Vは、蒸気圧力Pが小さく、かつ蒸気温度Tが高いほど大きくなるように設定されている。続くステップS42で蒸気流量Qを、比容積Vに給水量センサ24で検出した給水質量流量Gwを乗算することにより算出する。
【0026】
以上のようにして蒸気流量Qが算出されると、図14のフローチャートのステップS35〜S39に移行する。これらのステップは図8のフローチャート(第1実施例)のステップS3〜S7と全く同一であるため、その重複する説明を省略する。しかして、この第2実施例によれば、蒸気流量センサ21を廃止することができる。
【0027】
図17〜図20は本発明の第3実施例を示すもので、図17はランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図、図18は蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート、図19はメインルーチンのステップS53のサブルーチンのフローチャート、図20はメインルーチンのステップS54のサブルーチンのフローチャートである。
【0028】
図17に示すように、第3実施例は第2実施例(図13参照)の給水量センサ24を備えておらず、その代わりにコントローラ20に温度制御部26が設けられる。第2実施例が給水質量流量Gwを給水量センサ24で検出するのに対し、第3実施例では温度制御部26が出力する指令給水質量流量G0 から前記給水質量流量Gwに対応する蒸気質量流量Gsを算出しており、その他の構成および作用は第2実施例と同様である。
【0029】
第3実施例の作用をフローチャートを参照して説明すると、先ず、図18のフローチャートのステップS51で蒸気温度センサ25により膨張機13の入口での蒸気温度Tを検出し、ステップS52で蒸気圧力センサ22により膨張機13の入口での蒸気圧力Pを検出し、更にステップS53で蒸気質量流量Gsを算出する。
【0030】
即ち、図19のフローチャートのステップS61でインジェクタ17あるいは給水ポンプ16の給水量を制御することで蒸気温度Tを制御する温度制御部26が出力する指令給水質量流量G0 を読み込み、ステップS62で指令給水質量流量G0 に遅れフィルタ処理を施すことで蒸気質量流量Gsを算出する。この遅れフィルタ処理は、温度制御部26が指令給水質量流量G0 を出力してから、蒸発器12が実際に蒸気を発生するまでの時間遅れを補償するためのものである。
【0031】
続いて図18のフローチャートのステップS54で蒸気流量Qを算出する。このステップS54のサブルーチンが図20に示されているが、図20のフローチャートは第2実施例の図15のフローチャートと実質的に同じであり、第2実施例の給水質量流量Gwが、それと実質的に同じものである蒸気質量流量Gsに変わっただけである。
【0032】
以上のようにして蒸気流量Qが算出されると、図18のフローチャートのステップS55〜S59に移行する。これらのステップは図8のフローチャート(第1実施例)のステップS3〜S7と全く同一であるため、その重複する説明を省略する。しかして、この第3実施例によれば、給水量センサ24を廃止することができる。
【0033】
図21〜図25は本発明の第4実施例を示すもので、図21はランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図、図22は蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート、図23はメインルーチンのステップS72のサブルーチンのフローチャート、図24はメインルーチンのステップS73のサブルーチンのフローチャート、図25はメインルーチンのステップS74のサブルーチンのフローチャートである。
【0034】
図21に示すように、第4実施例は第3実施例(図13参照)の蒸気温度センサ25を備えておらず、その代わりにコントローラ20の温度制御部26が指令給水質量流量G0 に加えて指令蒸気温度T0 を出力する。比容積マップには、指令蒸気温度T0 を遅れフィルタ2で遅れ処理した蒸気温度Tと、目標蒸気圧力P0 とが入力され、そこで検索された蒸気の比容積Vが蒸気質量流量Gsに乗算されて蒸気流量Qが算出される。また第1〜第3実施例の蒸気流量Qおよび目標蒸気圧力P0 をパラメータとして膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFを検索するマップに代えて、蒸気流量Qだけをパラメータとして膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFを検索するテーブルを備えており、その他の構成および作用は第3実施例と同様である。
【0035】
尚、蒸気の比容積Vは、図16の横軸を「蒸気圧力P」から「目標蒸気圧力P0 」に読み換えて示す。
【0036】
第4実施例の作用をフローチャートを参照して説明すると、先ず、図22のフローチャートのステップS71で蒸気圧力センサ22により膨張機13の入口での蒸気圧力Pを検出し、更にステップS72で蒸気質量流量Gsを算出する。ステップS72のサブルーチンである図23のフローチャートは、第3実施例の図19のフローチャートと実質的に同一であるが、時定数τを後述する第2時定数τ2と区別するための第1時定数τ1としている点でのみ異なっている。
【0037】
続いて図22のフローチャートのステップS73で蒸気流量Qを算出する。このステップS73のサブルーチンが図24に示されており、図24のフローチャートのステップS91で温度制御部26が出力する指令蒸気温度T0 を遅れフィルタ2で遅れ処理して蒸気温度Tを算出し、ステップS92で前記蒸気温度Tと、目標蒸気圧力設定手段23が出力する目標蒸気圧力P0 とを比容積マップに適用して蒸気の比容積Vを検索する。そしてステップS93で遅れフィルタ1が出力する蒸気質量流量Gsに蒸気の比容積Vを乗算して蒸気流量Qを算出する。
【0038】
続いて、図22のフローチャートのステップS74、つまり図25のフローチャートのステップS101で蒸気流量Qを膨張機回転数テーブルに適用して膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFを検索する。この膨張機回転数テーブルは第1〜第3実施例と異なって目標蒸気圧力P0 をパラメータとしていないが、蒸気流量Qを算出する過程で比容積マップに目標蒸気圧力P0 を適用しているので、結果的に目標蒸気圧力P0 が考慮されていることになる。このようにして蒸気流量Qから検索された算出された膨張機13の回転数のフィードフォワード値NFFは、蒸気温度や蒸気圧力に関わらずに蒸気流量Qに比例するものであるが、実際には蒸気のリーク等の影響で蒸気流量Qに正確に比例しない場合があり、その誤差は膨張機13の回転数のフィードバック制御により補償される。
【0039】
図22のフローチャートの最後のステップS75〜S78は、図8のフローチャート(第1実施例)のステップS4〜S7と全く同一であるため、その重複する説明を省略する。しかして、この第4実施例によれば、蒸気温度センサ25を廃止することができる。
【0040】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0041】
例えば、作動媒体は水(蒸気)に限定されず、他の適宜の作動媒体を採用することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、蒸発器の出口での気相作動媒体の流量および膨張機の入口での気相作動媒体の目標圧力に基づいてフィードフォワード値を算出するとともに、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力および目標圧力の偏差に気相作動媒体の流量に基づいて算出したフィードバックゲインを乗算してフィードバック値を算出し、フィードフォワード値およびフィードバック値の加・減算値に基づいて膨張機の回転数を制御するので、膨張機の回転数が変化したときの気相作動媒体の圧力の変化特性が気相作動媒体の流量の大小に応じて異なるのを補償し、蒸発器への液相作動媒体の供給量を変化させることなく、膨張機の入口での気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く、かつ精度良く一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図
【図2】蒸気エネルギーおよび目標蒸気温度から目標蒸気圧力を検索するマップ
【図3】最適蒸気温度と蒸発器および膨張機の最高総合効率との関係を示すグラフ
【図4】膨張機の入口圧力と出口圧力との関係を示すグラフ
【図5】膨張機の回転数をステップ状に変化させたときの蒸気圧力の変化を示すグラフ
【図6】フィードバックゲインを固定した場合の蒸気圧力の収束状態を示す図
【図7】フィードバックゲインを可変にした場合の蒸気圧力の収束状態を示す図
【図8】蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート
【図9】メインルーチンのステップS3のサブルーチンのフローチャート
【図10】メインルーチンのステップS4のサブルーチンのフローチャート
【図11】蒸気流量Qおよび目標蒸気圧力P0 から膨張機の回転数のフィードフォワード値NFFを検索するマップ
【図12】蒸気流量Qからフィードバックゲインkpを検索するテーブル
【図13】第2実施例に係るランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図
【図14】蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート
【図15】メインルーチンのステップS34のサブルーチンのフローチャート
【図16】蒸気圧力Pおよび蒸気温度Tから蒸気の比容積Vを検索するマップ
【図17】第3実施例に係るランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図
【図18】蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート
【図19】メインルーチンのステップS53のサブルーチンのフローチャート
【図20】メインルーチンのステップS54のサブルーチンのフローチャート
【図21】第4実施例に係るランキンサイクル装置およびその制御系のブロック図
【図22】蒸気圧力制御のメインルーチンのフローチャート
【図23】メインルーチンのステップS72のサブルーチンのフローチャート
【図24】メインルーチンのステップS73のサブルーチンのフローチャート
【図25】メインルーチンのステップS74のサブルーチンのフローチャート
【符号の説明】
11 エンジン
12 蒸発器
13 膨張機
20 コントローラ(制御手段)
FF フィードフォワード値
FB フィードバック値
kp フィードバックゲイン

Claims (1)

  1. エンジン(11)の排気ガスで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器(12)と、蒸発器(12)で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機(13)とを備えたランキンサイクル装置において、
    膨張機(13)の入口での気相作動媒体の圧力を目標圧力に一致させるべく、蒸発器(12)の出口での気相作動媒体の流量および目標圧力に基づいてフィードフォワード値(NFF)を算出するとともに、膨張機(13)の入口での気相作動媒体の圧力および目標圧力の偏差に、前記気相作動媒体の流量に基づいて算出したフィードバックゲイン(kp)を乗算してフィードバック値(NFB)を算出し、フィードフォワード値(NFF)およびフィードバック値(NFB)の加・減算値に基づいて膨張機(13)の回転数を制御する制御手段(20)を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置。
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