JP2004050447A - 印刷用多層シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2層以上積層された多層シートであって、その少なくとも1層がポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれた少なくとも1種以上である樹脂組成物からなりABS樹脂を20重量%以上含むことを特徴とする昇華転写可能な印刷層であり、また少なくとも1層がポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル5〜100重量部とポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれた1種または2種以上をブレンドした樹脂95〜0重量部とからなる融着層を持つことを特徴とする昇華転写印刷用多層シート。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華転写印刷方式によって図柄等を印刷するのに適したIDカード及びICカードの製造等に使用されるプラスチックシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ストライプカードなどのプラスチックカードは、一般にコアシートの上下に磁気ストライプを設けたオーバーシートを重ねて熱プレスで層間を接着(以下、ラミネートという)した後、カード形状に打ち抜いて製造される。しかし、近年磁気ストライプカードの偽造による被害が急増してきている。偽造防止対策の有力な手法としてはICチップを搭載したICカード化があり、急速に普及し始めている。IC化以外の対策としては、昇華転写印刷方式によって顔写真や絵柄等が印刷される場合が増加してきている。
カードの素材としては、現在ポリ塩化ビニル系樹脂(以下PVCという)が主に使われている。PVCはカレンダー加工で大量に生産できる上に、ラミネート適性、打ち抜き性、エンボス刻印性等の二次加工性に優れており、カード素材として好適な材料である。PVCカードに昇華転写印刷をする場合には、大きな不具合も無く明瞭な画像が形成される。
【0003】
最近、非PVC系のカード用素材のニーズが高まってきており、ポリエステル系の材料が使用され始めている。しかし、ポリエステル系材料のカードに昇華転写印刷を行うと、サーマルヘッドの熱によりインクリボンがカード表面に張り付いてしまってインクリボンが引きちぎれてしまうことがある。一方、サーマルヘッドの温度を低くして印刷すると、インクの染色が弱すぎて明瞭な画像が得られないという問題があった。その為、現在は受容層と呼ばれる印刷層をコートする必要があり作業工数増やコストアップの要因となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする問題】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、昇華印刷適性が改良された、非PVC系樹脂の昇華転写印刷用シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、
(1) 2層以上積層された多層シートであって、その少なくとも1層がポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートから選ばれた少なくとも1種以上の樹脂とABS樹脂とを含む樹脂組成物からなり、ABS樹脂を20重量%以上含む昇華転写可能な印刷層であり、また少なくとも1層がポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル5〜100重量部とポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれた1種または2種以上をブレンドした樹脂95〜0重量部とからなる融着層であり、印刷層及び融着層の各々の厚みが5μm以上であり多層シートの総厚みが30〜500μmである昇華転写印刷用多層シート、
(2) (1)項記載の昇華転写印刷用多層シートを少なくとも1層以上ラミネートされて得られたカード
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の多層シートを構成する印刷層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートから選ばれた少なくとも1種以上の樹脂とABS樹脂とを含む樹脂組成物から構成される。
また、本発明の多層シートを構成する融着層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル5〜100重量部とポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれた1種または2種以上をブレンドした樹脂95〜0重量部とからなる。
本発明の印刷層及び融着層に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂においてエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステルは、エチレングリコール成分の置換量が10モル%未満では熱融着性が劣り、融着後のシートの弾性率が低下する。これは、ポリエチレンテレフタレート樹脂は結晶性樹脂であるため融着後の冷却時にシートの再結晶化が進むことにより熱融着性が無くなり、シートの弾性率が低下するためである。また逆に、エチレングリコール成分の置換量が70モル%を越えると共重合ポリエステル樹脂の弾性率が下がり、熱融着性が下がる。これは、共重合ポリエステル樹脂の置換量が多くなると再結晶化が早く進み、熱融着性が無くなってしまう為である。融着層に使用される場合には、5重量部以上の添加が必要である。5重量部未満になると十分な熱融着強度が得られずデラミするなどの不具合が発生する。融着層の厚みは、5μm以上でなければならない。5μm未満になると十分な熱融着強度が得られずデラミするなどの不具合が発生する。
融着層に使用される共重合ポリエステルの添加量は、5〜90重量部が好ましい。5重量部未満になるとカードとしてラミネートする際に十分な融着強度を持たせることができない。90重量部より大きくなるとシリコーン成分が10重量部より多く入った系では、剛性の低下が著しく低下することにより印刷中にシートの変形しまう等の不具合が発生する為好ましくない。
【0007】
本発明の印刷層及び融着層に用いるポリカーボネート樹脂は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。
【0008】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられ、これらは単独だけでなく2種類以上混合して使用してもよい。
【0009】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度、耐熱性の面より通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し分子量調節剤、触媒等を必要に応じて添加しても差し支えない。
【0010】
本発明の印刷層及び融着層に用いられるABS樹脂は、アクリロニトリル成分とブタジエン成分とスチレン成分を共重合することにより得られるものである。ABS樹脂が印刷層中に含まれる場合には20重量%以上の添加が必要である。20重量%未満になるとインクリボンの融着等が
発生し昇華転写印刷ができない。印刷層の厚みは、5μm以上であることが望ましい。5μm未満になると昇華転写印刷不良を引き起こす場合がある。
【0011】
本発明の印刷層及び融着層に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、PETの製造におけるエチレングリコールの変わりにテトラメチレングリコールに置き換えて製造されたポリエステルである。
【0012】
本発明の印刷層及び融着層に用いるポリエチレンナフタレート樹脂は、PETの製造におけるテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルの変わりにナフタレンジカルボン酸又はナフタレンジカルボン酸ジメチルに置き換えて製造されたポリエステルである。
【0013】
本発明の多層シートの総厚みは30〜500μmであることが好ましい。それ以外の厚みでは、カードの生産効率が悪くコストアップの要因となってしまう。
【0014】
これらの積層体を製造する為の方法としては、印刷層、融着層の少なくとも2層を一工程で積層する共押出法、また、印刷層、融着層の少なくとも一方を予めシートとして準備し、押出ラミネート、サーマルラミネート、ドライラミネートのいずれかの方法を用いて多層化する手法が取られる。また、印刷層と融着層の間に融着可能な接着層や熱可塑性樹脂層を入れて3層以上の構成にしても差し支えない。
【0015】
本発明のシートには、所望により通常に使用される添加剤、例えば安定剤、滑剤、補強剤、加工助剤、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、分散剤、増粘剤、その他無機充填剤等を含有させることもできる。
【0016】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
《多層シートの作成》
表1に示した配合比率の樹脂組成物(印刷層)と表2及び表3に示した配合比率の樹脂組成物(融着層)、表4に示した樹脂組成物(中間層)の2または3材料を表5の厚み構成比率で共押出することにより100μm厚のシートを作成した。
《コアシートの作製》
ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分30モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる非晶性ポリエステル樹脂を押し出し法を用いて、厚さ500μmのシートを作成した。
【0017】
《実施例、比較例》
作製した多層シート及びコアシートを積層し、150℃で10分間プレスしてカードを作成した。このカードのオーバーシート面に、昇華転写印刷テストを実施した。この結果を表6に示す。評価については、下記に基づいて実施した。
(1)昇華印刷テスト: 日本データカード社製イメージカードSにより、昇華印刷を実施した。
○:明瞭な画像が得られたもの
×:インクの染色が弱く明瞭な画層がえられないもの、又はインクリボンが融着してし
まったもの
(2)融着性:ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分30モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル樹脂のコアシートと表4の比率で作成したオーバーシートを150℃で10分間プレスした後、切り込みを入れ2枚のシートが剥離してしまうかどうか確認した。
○:シートが完全に融着しているもの
△:シートが一部剥離してしまったが使用できるレベルもの
×:シートが完全に剥離してしまったもの
【0018】
表中の記号は、以下の通りである。
(1)PETG樹脂−1:ポリエチレンテレフタレート樹脂においてエチレングリコール成分の30モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換した共重合ポリエステル樹脂。(Tg=81℃)
(2)PC樹脂−1:ポリカーボネート樹脂(Tg=120℃)
(3)ABS樹脂−1:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン供重合体(サンタック ET−70 日本A&L製)
(4)PBT樹脂−1 :ポリブチレンテレフタレート樹脂(Tg=210℃)
(5)PEN樹脂 −1:ポリエチレンナフタレート樹脂(Tg=120℃)
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【発明の効果】
本発明は、昇華転写印刷方式によって図柄等を印刷するのに適したIDカード及びICカードの製造等に使用されるプラスチックシートに関するものである。
Claims (2)
- 2層以上積層された多層シートであって、その少なくとも1層がポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートから選ばれた少なくとも1種以上の樹脂とABS樹脂とを含む樹脂組成物からなり、ABS樹脂を20重量%以上含む昇華転写可能な印刷層であり、また少なくとも1層がポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール成分の10〜70モル%をシクロヘキサンジメタノールに置換してなる共重合ポリエステル5〜100重量部とポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれた1種または2種以上をブレンドした樹脂95〜0重量部とからなる融着層であり、印刷層及び融着層の各々の厚みが5μm以上であり多層シートの総厚みが30〜500μmであることを特徴とする昇華転写印刷用多層シート。
- 請求項1記載の昇華転写印刷用多層シートを少なくとも1層以上ラミネートされて得られたカード。
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JP2002207491A JP4098014B2 (ja) | 2002-07-16 | 2002-07-16 | 印刷用多層シート |
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JP2015507544A (ja) * | 2011-03-08 | 2015-03-12 | ゾマーズ, インコーポレイテッド | 加飾熱可塑性フィルムおよびそれを作製するための方法 |
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