JP2004043788A - ポリプロピレン系樹脂組成物およびそのフィルム - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂組成物およびそのフィルム Download PDF

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Hiroshi Kawarada
川原田 博
Shuji Kanazawa
金沢 修治
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Abstract

【課題】空冷インフレ−ション法にて透明性に優れるポリプロピレンフィルムを安定して得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物および、および透明性に優れるポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】230℃でのメルトフローレート(MFR)と230℃での溶融張力(MT)がMT<11.32×MFR−0.7854の関係を満たすポリプロピレン系樹脂と、MFRとMTが11.32×MFR−0.7854≦MTの関係を満たす高溶融張力ポリプロピレン樹脂と、核剤とを含有し、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が99:1〜91:9(質量比)であり、核剤の含有量がポリプロピレン系樹脂組成物中0.01〜0.18質量%であるポリプロピレン系樹脂組成物およびこれからなるポリプロピレンフィルム。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびそのフィルムに関し、詳しくは、空冷インフレーション法にてフィルムを成形する際の溶融樹脂膜を安定化し、かつ透明性の高いフィルムの得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物および高透明ポリプロピレンフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンのチューブ状フィルムを得る方法としては、水冷リングから水を常にオーバーフローさせながら、これに溶融樹脂膜を接触させて冷却する水冷インフレーション法、送風機で発生させた風を、環状冷却装置(以下エアーリング)を介して溶融樹脂膜に吹きつけ冷却する空冷インフレーション法等がある。しかしながら、ポリプロピレンは結晶化速度が遅いため、透明なフィルムを得ようとしたとき、ダイから押出された溶融樹脂膜を急激に結晶化温度以下に冷却する必要がある。そのため、今日では溶融樹脂膜を水で冷却する、水冷インフレーション法が主流となっている。
【0003】
しかしながら、水冷インフレーション法は、フィルムの成形速度が遅く、かつフィルムの幅を変更する場合、水冷リングを交換しなければならず、作業が煩雑であるという問題を有していた。さらに、溶融樹脂膜の冷却に使用する水の管理が必要となり、また、飛び散った水での作業環境の悪化や、成形機に防錆処理を施す必要があるなど問題点も多かった。
【0004】
一方、空冷インフレーション法は、成形速度が水冷インフレーション法と比較して速く、フィルムの幅の変更も容易であり、また、溶融樹脂膜の冷却に水を使用しないため、作業環境や成形機に悪影響を及ぼすこともない。しかしながら、前述のとおり、透明なフィルムを得るためには、溶融樹脂膜を急激に冷却する必要があるものの、空冷では短時間に溶融樹脂膜を充分冷却できず、透明なフィルムを得ることは難しかった。
【0005】
これらの問題を解決し、空冷インフレーション法によって透明性の良いポリプロピレンフィルムを得るために、樹脂面の改良法、および加工面の改良法が提案されている。加工面の改良法としては、冷却速度を早めるために、エアーリングを多段にしたり、冷却エアーの温度を下げるといった方法が提案されている。一方、樹脂面の改良法としては、ポリプロピレン樹脂に透明核剤を添加して結晶サイズを小さくし、透明性を改良する方法が提案されている。
しかしながら、加工面から透明性を改良する方法は、期待したほどの効果はなく、ほとんど実用化されていない。
【0006】
一方、ポリプロピレン樹脂に核剤を添加する改良法は、比較的安定して透明性を発現することが可能であるが、そのためには、ある一定量の添加が必要である。通常、ポリプロピレン樹脂の透明性を改良するための添加量としては、0.2〜0.5質量%以上が必要とされており、その場合、長時間成形をすると、ダイ出口からピンチロールの間で形成されるバブル内部に粉吹きが発生することがあった。また、得られるフィルムにフィッシュアイが発生することがあった。さらに、核剤の種類によっては臭いが発生するといった問題点があった。また、核剤は比較的高価なものが多く、添加量が多いとコストアップにつながるといった問題もあった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭58−158223号公報
【特許文献2】
特開昭60−118727号公報
【特許文献3】
特開昭62−121704号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、空冷インフレーション法にて透明性に優れるポリプロピレンフィルムを安定して得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物および透明性に優れるポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、ポリプロピレン系樹脂に、高溶融張力ポリプロピレン樹脂を一定の比率で混合することにより得られた樹脂組成物を使用し、さらに高溶融張力ポリプロピレン樹脂と核剤との相乗効果により上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、下記の条件1を満たすポリプロピレン系樹脂と、下記の条件2を満たす高溶融張力ポリプロピレン樹脂と、核剤とを含有し、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が、質量比で99:1〜91:9の範囲であり、核剤の含有量が、ポリプロピレン系樹脂組成物中0.01〜0.18質量%であることを特徴とする。
条件1:230℃でのメルトフローレート(MFR)(g/10分)と230℃での溶融張力(MT)(g)が下記式1の関係を満たす。
式1 MT<11.32×MFR−0.7854
条件2:230℃でのメルトフローレート(MFR)(g/10分)と230℃での溶融張力(MT)(g)が下記式2の関係を満たす。
式2 11.32×MFR−0.7854≦MT
【0011】
また、前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと1種以上の炭素数2以上(3を除く)のα−オレフィンとの共重合体であって、230℃におけるメルトフローレートが0.01〜30g/10分の範囲にあるものであることが望ましい。
また、前記核剤は、有機リン酸系の核剤、またはビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトールアセタール系の核剤であることが望ましい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、少なくとも1種の脂環族飽和炭化水素樹脂をポリプロピレン系樹脂組成物中に1〜15質量%含有し、かつポリプロピレン系樹脂組成物の230℃におけるメルトフローレートが0.01〜30g/10分の範囲にあることが望ましい。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
また、本発明の積層体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むものであることを特徴とする。
また、本発明のインフレーションフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション法で成形してなるものであることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、高溶融張力ポリプロピレン樹脂および核剤を含有するものである。
【0013】
<ポリプロピレン系樹脂>
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと1種以上のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンの炭素数は、通常2〜20(3を除く)であり、特に、好ましくは、2〜10(3を除く)である。α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を好ましいものとして挙げることができる。これらのα−オレフィンのうち、特に、共重合性や、入手のしやすさの観点から、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1が好ましい。特に、エチレン、ブテン−1が好ましい。
【0014】
また、プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンは、2種以上併用してもよい。例えば、エチレンとブテン−1を使用すれば、プロピレン−エチレン−ブテン−1ターポリマーを構成する。α−オレフィンの重合割合は、共重合体においては、例えば0.1〜20質量%、好ましくは、0.5〜15質量%とすることが適当である。
必要により、その他の重合性のモノマーを使用してもよい。このようなモノマーとしては、例えば、ビニルシクロヘキサンなどのビニルシクロアルカン等を挙げることができる。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂は、単独で使用してもよいし、複数のポリプロピレン系樹脂からなるブレンドでもよい。
ポリプロピレン系樹脂の230℃でのMFR(メルトフローレート)は、例えば、0.01〜30g/10分、好ましくは0.1〜20g/10分、更に好ましくは0.4〜10g/10分である。MFRが0.01g/10分未満では、樹脂粘度が高すぎて、樹脂が伸びず、成形できないおそれがあり、30g/10分を超えると、樹脂粘度が低すぎて、バブルを形成できないおそれがある。
【0016】
また、ポリプロピレン系樹脂は、230℃でのメルトフローレート(MFR)(g/10分)と230℃での溶融張力(MT)(g)が下記式1の関係を満たしている必要がある。
式1 MT<11.32×MFR−0.7854
メルトフローレートと溶融張力が上記式1の関係を満たしていないポリプロピレン系樹脂を用いた場合、空冷インフレーション法によりフィルムの成形を行う際、溶融樹脂膜の粘度が高すぎてエアーリングへの吸引が不十分となるため、溶融樹脂膜が不安定となり、また、延展性が悪いため溶融樹脂膜が切れてしまう。さらに、ダイス出口におけるせん断によるメルトフラクチャーが発生し、透明性を阻害する。
【0017】
ここで、樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210に記載されている方法で230℃にて測定される。また、樹脂の溶融張力は、JIS K7210に示されるMFR測定用の装置に準じて測定する。具体的には、約5gの樹脂をシリンダー内に5分間230℃で予熱した後、ピストンによって押出速度20mm/分でキャピラリーより吐出し、吐出されたストランドを15.7m/分の定速度で引取り、途中滑車を介してストレスゲージにて荷重を読み取り、記録する。測定開始から120〜180秒間の読みの平均値を溶融張力とする。
【0018】
<高溶融張力ポリプロピレン樹脂>
本発明における高溶融張力ポリプロピレン樹脂とは、230℃でのメルトフローレート(MFR)(g/10分)と230℃での溶融張力(MT)(g)が下記式2の関係を満たしているポリプロピレン樹脂である。
式2 11.32×MFR−0.7854≦MT
メルトフローレートと溶融張力が上記式2の関係を満たしていない高溶融張力ポリプロピレン樹脂を用いた場合、成形が不安定となる。
【0019】
好ましい高溶融張力ポリプロピレン樹脂としては、230℃における溶融張力(MT)が0.01N(0.980665gf)以上であり、230℃におけるメルトフローレートが1g/10分以上のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0020】
また、好ましい高溶融張力ポリプロピレン樹脂としては、枝分かれ指数が1未満、好ましくは、0.4未満(下限は例えば、0.2)であり、歪み硬化伸び粘度を有するゲルを含まない、例えば、主としてアイソタクチックの半結晶性ポリプロピレンが挙げられる。このような高溶融張力ポリプロピレン樹脂としては、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンとエチレンのランダム共重合体からなるものが挙げられる。このような高溶融張力ポリプロピレン樹脂は、例えば特開昭62−121704号公報に記載された方法によって製造することができる。
【0021】
ここで、枝分かれ指数は、長鎖枝分かれの程度を定量化するものであり、[η]sr/[η]Lin で定義される。ここで、[η]srは、枝分かれポリプロピレンの固有粘度であり、[η]Lin は、質量平均分子量が実質的に同じ直鎖状ポリプロピレンの固有粘度である。
また、伸び粘度は、流体または半流体物質の伸びに対する抵抗である。歪み硬化伸び粘度は、伸び量が増加するに伴い、伸び粘度が高くなる現象を示す特性である。長鎖分岐を導入することにより歪み硬化伸び粘度を示すようになる。この伸び粘度は、一定速度で引張歪みを受けたときの溶融状態にある試料の応力と歪みを測定する装置により測定できる。
【0022】
<核剤>
本発明における核剤は、特に限定はされないが、臭気が少ないことから、有機リン酸系の核剤、ビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトールアセタール系の核剤が好適に用いられる。
【0023】
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比は、質量比で99:1〜91:9の範囲であり、好ましくは98:2〜92:8の範囲であり、さらに好ましくは97:3〜93:7の範囲である。高溶融張力ポリプロピレン樹脂の量が少なすぎると、十分な溶融張力が得られず、空冷インフレーション法によるフィルム成形時の安定性を改良することが難しい。一方、高溶融張力ポリプロピレン樹脂の量が多すぎると、ダイスとのせん断により、メルトフラクチャーが発生し、得られたフィルムの腰が強くなり過ぎ、脆くなる傾向が見られ、特に衝撃強度が低下しやすい。また、得られるフィルムの透明性も悪くなる。
【0024】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における核剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂組成物中0.01質量%〜0.18質量%であり、好ましくは0.03〜0.15質量%であり、さらに好ましくは0.04〜0.1質量%である。核剤の含有量が0.01質量%未満では、透明性が充分発現されない。また、核剤の含有量が0.18質量%を超えると、成形時の粉、発煙が多くなり、臭いも強くなる。
【0025】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、ポリプロピレンフィルムのフラット性を更に改良することを目的に、脂環族飽和炭化水素樹脂を一定の範囲で加えるとができる。
脂環族飽和炭化水素樹脂としては、例えば、天然のテルピン油を原料とする水添テルペン樹脂、石油の分解時に発生するオレフィン系、ジオレフィン系の芳香族系不飽和炭化水素を原料とする水添石油樹脂等が挙げられる。
水添テルペン樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社の「クリアロン」等を使用することができる。水添石油樹脂としては、例えば、荒川化学株式会社の「アルコン」およびトーネックス株式会社の「ESCOREZ」(商品名)等を使用することができる。
【0026】
脂環族飽和炭化水素樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂組成物中1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。含有量が1質量%未満では、フラット性改良の効果がなく、15質量%を超えると、脂環族飽和炭化水素樹脂は一般に溶融粘度が低いため組成物全体の溶融粘度が低下し成形が困難となる。
【0027】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、滑剤、粘着剤、防曇剤、防滴剤、防霧剤、帯電防止剤、紫外線など特定波長の光線を吸収する光線吸収剤、老化防止剤、無機物などの充填剤、顔料などの各種添加剤を適宜配合することが可能である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂および高溶融張力ポリプロピレン樹脂、それぞれのペレットを単に混合することによって、あるいはこの混合物を押出機を通し溶融混合することによって得ることが可能である。
【0028】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01〜30g/10分 、さらに好ましくは、0.1〜10g/10分である。メルトフローレートが0.01g/10分未満では、溶融張力が大きすぎて、樹脂が伸びず、成形できないおそれがあり、30g/10分を超えると、溶融張力が低くなりすぎて、バブルを形成できず、成形できないおそれがある。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の溶融張力は、好ましくは、1〜15g、さらに好ましくは、1.2〜12gである。溶融張力が1g未満では、高速成形で押出ムラが起こり易く、15gを超えると、高速成形時にフィルム切れが発生し易い。
【0029】
以上説明したような本発明のポリプロピレン系樹脂組成物にあっては、特定量の高溶融張力ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレン系樹脂に配合されているので、組成物としての溶融張力が高くなる。これにより、空冷インフレーション法にてフィルムを成形する際の溶融樹脂膜が安定化し、成形安定性が向上する。また、成形安定性が向上することによって、空冷インフレーション法によるフィルム成形時におけるフィルムバブルのゆれが押さえられ、またフロストラインが変動しにくくなってフィルムの偏肉がなくなり、また得られるフィルムのフラット性も向上する。
【0030】
また、高溶融張力ポリプロピレン樹脂および核剤が、ポリプロピレン系樹脂に配合されているので、高溶融張力ポリプロピレン樹脂および核剤の相乗効果によって、得られるフィルムの透明性が、それぞれが単独で配合された場合に比べて著しく向上する。また、高溶融張力ポリプロピレン樹脂および核剤の相乗効果による透明性の向上により、核剤の添加量を従来に比べ大幅に減らすことができ、フィルム成形時のバブル内部における粉ふきの問題、フィルムにおける臭気、フィッシュアイの発生等の問題およびフィルムのコストを低減することができる。
【0031】
<ポリプロピレンフィルム>
本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものである。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法としては、従来公知のフィルム成形法を採用できるが、以下の理由から空冷インフレーション法が適している。
(i)水冷インフレーション法に比べて、成形速度が速く、水冷リングが不要であるためフィルムの幅の変更が容易であり、冷却水設備が不要であるため設備費を軽減でき、作業環境や成形機に悪影響を及ぼすことがない、(ii)Tダイフィルム成形法と比較して、成形温度が低温で成形できるため、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加量を少なくできる、(iii)成形法の特性上、フィルムの縦および横方向の分子配行の制御が可能であることなどから、得られるフィルムがラップなどのように横方向への手切れ性を重視する用途に適している。
【0032】
本発明のポリプロピレンフィルムの厚さは、通常8〜200μm、好ましくは10〜150μmである。フィルムの厚さが8μm未満では、フィルムの強度が低下し、すぐに破損を生じてしまう。また、フィルムの厚さが200μmを超えると、厚くなりすぎ、取り扱い性が著しく低下する。
【0033】
本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであるので、透明性の高いフィルムとなる。また、本発明のポリプロピレンフィルムは、成形安定性に優れた本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであるので、空冷インフレーション法により成形する場合であっても、フラット性に優れ、かつ安定して得ることができる。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、透明性が優れるとともに、表面光沢(グロス)にもたいへん優れているので、ポリプロピレン発泡容器等に貼合するための貼合フィルムに好適である。
【0034】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むものである。
本発明の積層体としては、例えば、二層フィルムの一方の層が本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層(本発明のポリプロピレンフィルム)、他方の層がポリオレフィン系樹脂からなる層(フィルム)のもの、あるいは組成比の違う二種類の本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をそれぞれ異なる層に配したものなどが挙げられる。このような二層フィルムは、空冷インフレーション法によるフィルム成形時の安定性に優れる。三層以上のフィルムについても同様で、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を少なくとも一層に配することによりフィルム成形時の安定性が改善される。他の層には最終使用のフィルムの要求物性に応じて適当なポリオレフィン系樹脂あるいはポリオレフィン系樹脂組成物を用いればよい。
【0035】
本発明の積層体は、本発明のポリプロピレンフィルムの高透明性を生かした用途に用いられる。その用途の例としては、バッグインボックス用内袋、シュリンクラップ、一般包装等が挙げられる。また、透明性、腰の強さを生かし、これまでキャスト法で成形されてきたラミ原反、発泡トレーとの貼合用フィルム、スタンディングパウチのシーラントフィルムなどに応用可能である。特に、本発明の積層体は、透明性が優れるとともに、表面光沢(グロス)にもたいへん優れているので、表面光沢が求められる貼合用フィルムに好適である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例および比較例を参照しながら、本発明について、さらに詳細に説明する。
まず、実施例および比較例で採用される評価方法について説明する。
<ヘイズ(曇価)>
JIS K7105に準拠し、測定を行った。具体的には、スガ試験機製の積分球式光線透過率測定装置(ヘイズメーター)を用いて、拡散透過率および全光線透過率を測定し、以下の計算式を用いてヘイズを算出した。
H=Td/Tt
(式中、H:ヘイズ(曇価)(%)、Td:拡散透過率(%)、Tt:全光線透過率(%))
各フィルムの任意の個所から縦および横が5cmの正方形に切りだした3枚のフィルムサンプルについて測定を行い、それらの平均値を求めた。
<グロス(光沢)>
JIS K7105に準拠し、測定を行った。具体的には、スガ試験機製、表面光沢計を用いて、屈折率1.567のガラス製標準版の正反射を100としたときの試料の反射率をグロスとして用いた。数値が大きいほど、光沢が優れる。
各フィルムの外層側の任意の個所から縦および横が5cmの正方形に切りだした3枚のフィルムサンプルについて測定を行い、それらの平均値を求めた。
【0037】
<粉吹き>
プラコーφ55インフレーション成形機を用い、押出し量20kg/時、成形速度13.2m/分の条件で、樹脂組成物から、厚さ40μm、幅350mmのフィルムを30分間連続で成形し、30分後にバブル内部における粉の発生の有無を観察した。
<臭い>
フィルムサンプルから適宜切り出したサンプル片の臭いを嗅ぎ、下記の表1に基づき点数を付けた。点数が小さい程、臭いは強い。
【0038】
【表1】
Figure 2004043788
【0039】
<成形安定性>(実施例1、8、12〜15および比較例3〜9)
プラコーφ55インフレーション成形機を用い、押出し量20kg/時、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)、引取速度13.2m/分で、樹脂組成物からフィルムを成形する際、溶融樹脂膜(以下、バブルと記す)の揺れ状態を観察し、下記表2の基準に従い点数をつけ比較評価した。
<成形安定性>(実施例11、16、17および比較例10、11)
トミー3種3層インフレーション成形機を用い、外層、中間層、内層の厚さの比が、1:5:1となるように調整し、押出し量20kg/時、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)、引取速度13.2m/分で、樹脂組成物からフィルムを成形する際、溶融樹脂膜(以下、バブルと記す)の揺れ状態を観察し、下記表2の基準に従い点数をつけ比較評価した。
【0040】
【表2】
Figure 2004043788
【0041】
<フラット性>
粉吹きの評価の際に作成したインフレーションフィルムから1mの長さのサンプルを切り取り、これを平板上に置いて目視で観察し、表3の基準に従い点数をつけ比較評価した。点数が多いものをフラット性が良いものとした。
【0042】
【表3】
Figure 2004043788
【0043】
<フィルムインパクト>
JIS P8134に準拠して試験を行った。具体的には、フィルムの任意の箇所から10cm四方の大きさにサンプルを10枚切りだし、それらの厚さを0.001mmの桁まで測定した。東洋精器製のインパクトテスターのサンプル固定部にサンプルを固定し、サンプルに1インチ半球の衝撃頭にて衝撃を加え、サンプルの中央を打ち抜いた。衝撃値を目盛版から読み取り、サンプルの厚さで衝撃値を除して、得られた値をフィルムインパクト強度とした。10枚のサンプルについて測定を行い、平均値を求めた。
<水蒸気透過率>
Lyssy社製L80−5000水蒸気透過度テスターを用いて測定を行った。相対湿度範囲10%HR(相対湿度差90%HR)、測定温度40℃の条件下で、10cm四方の大きさに切ったフィルムを装置に取り付け測定を行い、測定値が平衡化したところの数値を採用した。1サンプルにつき同様の測定を3回行い、平均値を求めた。
【0044】
[実施例1]
MFR1.5g/10分(230℃)、溶融張力2.0g(230℃)、プロピレン含有量95.5質量%、エチレン含有量4.5質量%のポリプロピレン系樹脂と、高溶融張力ポリプロピレン樹脂として、Basell社製「PF623」(プロピレン単独重合体、MFR=15g/10分(230℃)、密度=0.900g/cm 、溶融張力(MT)=2.2g(230℃))とを、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が95:5(質量比))となるように配合し、さらにこれに、核剤として、旭電化工業より販売されている有機リン酸系核剤「NA−21」を組成物中0.08質量%となるように、フェノール系酸化防止剤として、チバスペシャリティーケミカルズより販売されているイルガノックス1010を組成物中0.15質量%となるように、リン系酸化防止剤として、チバスペシャリティーケミカルズから販売されているイルガフォス168を組成物中0.1質量%となるように、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを組成物中0.08質量%となるように添加し、これらをヘンシェルミキサーで混合し、押出機で溶融、混練の後、水中で冷却したストランドをカッティングしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、プラコーφ55mmインフレーション成形機を用いて、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)に製膜し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
【0045】
[実施例2]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.02質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
[実施例3]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.04質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
【0046】
[実施例4]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.06質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
[実施例5]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
【0047】
[実施例6]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.14質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
[実施例7]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.18質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
[実施例8]
有機リン酸系核剤「NA−21」を、ミリケンジャパンより販売されているビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトールアセタール系核剤「Millad3988」に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表6に示す。
【0048】
[実施例9]
MFR1.5g/10分(230℃)、溶融張力2.0g(230℃)、プロピレン含有量95.5質量%、エチレン含有量4.5質量%のポリプロピレン系樹脂と、高溶融張力ポリプロピレン樹脂として、Basell社製「PF623」(プロピレン単独重合体、MFR=15g/10分(230℃)、密度=0.900g/cm 、溶融張力(MT)=2.2g(230℃))とを、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が95:5(質量比)となるように配合し、さらにこれに、核剤として、旭電化工業より販売されている有機リン酸系核剤「NA−21」を組成物中0.08質量%となるように、フェノール系酸化防止剤として、チバスペシャリティーケミカルズより販売されているイルガノックス1010を組成物中0.15質量%となるように、リン系酸化防止剤として、チバスペシャリティーケミカルズから販売されているイルガフォス168を組成物中0.1質量%となるように、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを組成物中0.08質量%となるように、脂環族飽和炭化水素樹脂として、ヤスハラケミカルの「クリアロンP−125」を組成物中5質量%となるように添加し、これらをヘンシェルミキサーで混合し、押出機で溶融、混練の後、水中で冷却したストランドをカッティングしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、プラコーφ55mmインフレーション成形機を用いて、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)に製膜し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表7に示す。
【0049】
[実施例10]
脂環族飽和炭化水素樹脂として、ヤスハラケミカルの「クリアロンP−125」の代わりに、荒川化学の「アルコンP−125」を用いた以外は、実施例9と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表7に示す。
[実施例11]
外層および内層用樹脂として、実施例1と同じペレットを準備し、中間層用樹脂として、軟質ポリプロピレン系樹脂であるBasell社製「Q100F」(MFR=0.6g/10分)を準備した。これらを、トミー3種3層インフレーション成形機を用いて、外層、中間層、内層の厚さの比が1:5:1となるように調整して、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)に製膜し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表8に示す。
【0050】
[比較例1]
有機リン酸系核剤「NA−21」を添加しない以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
[比較例2]
有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.20質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
【0051】
[比較例3]
高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell社製「PF623」を配合せず、有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.02質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た(ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が100:0(質量比))。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
[比較例4]
高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell社製「PF623」を配合せず、有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.04質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た(ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が100:0(質量比))。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
[比較例5]
高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell社製「PF623」を配合しない以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た(ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が100:0(質量比))。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
【0052】
[実施例12]
ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂(Basell社製「PF623」)との配合比を98:2(質量比)に変更し、有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.02質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
[実施例13]
ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂(Basell社製「PF623」)との配合比を98:2(質量比)に変更し、有機リン酸系核剤「NA−21」の添加量を組成物中0.04質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
[実施例14]
ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂(Basell社製「PF623」)との配合比を98:2(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
【0053】
[実施例15]
ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂(Basell社製「PF623」)との配合比を92:8(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
[比較例6]
ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂(Basell社製「PF623」)との配合比を90:10(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
[比較例7]
ポリプロピレン系樹脂として、サンアロマー社から販売されている「サンアロマーPF430A」(プロピレン−エチレンランダムコポリマー、MFR=1.8g/10分(230℃)、溶融張力=2.0g(230℃)、密度0.900g/cm )を、プラコーφ55mmインフレーション成形機を用いて、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)に製膜し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表5に示す。
【0054】
[比較例8]
高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell社製「PF623」を添加しない以外は、実施例8と同様にしてフィルムを得た(ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が100:0(質量比))。このフィルムについて評価を行った。結果を表6に示す。
[比較例9]
ビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトールアセタール系核剤「Millad3988」の添加量を組成物中0.2質量%に変更した以外は、比較例8と同様にしてフィルムを得た(ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が100:0(質量比))。このフィルムについて評価を行った。結果を表6に示す。
【0055】
[比較例10]
外層および内層用樹脂として、サンアロマー社から販売されている「PF430A」(プロピレン−エチレンランダムコポリマー、MFR=1.8g/10分(230℃)、溶融張力=2.0g(230℃)、密度0.900g/cm )を準備し、中間層用樹脂として、軟質ポリプロピレン系樹脂であるBasell社製「Q100F」(MFR=0.6g/10分)を準備した。これらを、トミー3種3層インフレーション成形機を用いて、外層、中間層、内層の厚さの比が1:5:1となるように調整して、厚さ40μm、幅350mm(ブロー比2.2)に製膜し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表8に示す。
【0056】
[実施例16]
外層および内層用樹脂として、実施例1と同じペレットを準備し、中間層用樹脂として、ポリプロピレン系樹脂であるサンアロマー株式会社製「サンアロマーPC412A」(プロピレン単独重合体、MFR=2.0g/10分(230℃))を準備した。これらを、実施例11と同様にして成形し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表9に示す。
【0057】
[実施例17]
ポリプロピレン系樹脂であるサンアロマー株式会社製「サンアロマーPW412N」(プロピレン単独重合体、MFR=2.0g/10分(230℃))と、高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell社製「PF623」(プロピレン単独重合体、MFR=15g/10分(230℃)、密度=0.900g/cm 、溶融張力(MT)=2.2g(230℃))とを、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が95:5(質量比)となるように配合し、さらにこれに、核剤として、旭電化工業より販売されている有機リン酸系核剤「NA−21」を組成物中0.08質量%となるように、フェノール系酸化防止剤として、チバスペシャリティーケミカルズより販売されているイルガノックス1010を組成物中0.15質量%となるように、リン系酸化防止剤として、チバスペシャリティーケミカルズから販売されているイルガフォス168を組成物中0.1質量%となるように、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを組成物中0.08質量%となるように添加し、これらをヘンシェルミキサーで混合し、押出機で溶融、混練の後、水中で冷却したストランドをカッティングしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
外層および内層用樹脂として、実施例1と同じペレットを準備し、中間層用樹脂として、本実施例のペレットを準備した。これらを、実施例11と同様にして成形し、フィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表9に示す。
【0058】
[比較例11]
外層および内層用樹脂として、サンアロマー株式会社から販売されている「PF430A」(プロピレン−エチレンランダムコポリマー、MFR=1.8g/10分(230℃)、溶融張力=2.0g、密度0.900g/cm )を用いた以外は、実施例16と同様にしてフィルムを得た。このフィルムについて評価を行った。結果を表9に示す。
【0059】
【表4】
Figure 2004043788
【0060】
表4の結果から、実施例1のフィルムは、高透明であり、低臭で、粉吹きがないことがわかる。実施例2〜7も同様の結果が得られている。実施例2のフィルムは核剤が少ないため、透明性が若干低下し、実施例7のフィルムは、核剤が多いため臭いが悪くなる傾向にあるが、実用上問題のない程度であった。比較例1のフィルムは、核剤が添加されていないため、透明性が劣っていた。比較例2のフィルムは、核剤が多すぎるため、臭いおよび粉吹きの点で問題があった。これらから、高溶融張力ポリプロピレン樹脂と核剤とを併用することにより、核剤の添加量を低減でき、臭いや粉吹きが改善されることがわかる。
【0061】
【表5】
Figure 2004043788
【0062】
表5の結果から、比較例3〜5のフィルムは、溶融張力ポリプロピレン樹脂が配合されていないため、成形安定性が劣り、中には透明性が十分でないものがあることがわかる。実施例12〜14は、溶融張力ポリプロピレン樹脂の配合量が少ない例であるが、成形安定性に問題はなかった。実施例14、実施例1、実施例15および比較例6の結果から、ポリプロピレン系樹脂と溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が90:10(質量比)となると、透明性と成形安定性が低下することがわかる。これは、溶融張力ポリプロピレン樹脂の配合量が増えると、フィルムの表面が荒れて外部ヘイズが低下すること、および溶融張力が高くなりすぎて溶融樹脂膜の冷却エアーリングへの吸い付きが悪くなり、結果として成形安定性が低下したことによるものと思われる。比較例7のフィルムは、高溶融張力ポリプロピレン樹脂と核剤とを含まないため、透明性と成形安定性が劣っていた。
【0063】
【表6】
Figure 2004043788
【0064】
表6は、核剤にソルビトール系の核剤を用いた結果であり、実施例8のフィルムは、実施例1に比べ透明性が若干劣るものの、透明性は高く、臭い、粉吹きともに問題はなかった。比較例8のフィルムは、高溶融張力ポリプロピレン樹脂が配合されていないため、透明性が劣り、比較例9のフィルムは、核剤が多すぎるため、粉吹きが発生した。
【0065】
【表7】
Figure 2004043788
【0066】
表7の結果から、脂環族飽和炭化水素樹脂が配合されたフィルムは、フラット性が改善されていることがわかる。また、核剤、高溶融張力ポリプロピレン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂のいずれも含まないフィルムは、透明性およびフラット性が大きく劣っていることがわかる。
【0067】
【表8】
Figure 2004043788
【0068】
表8は、多層フィルムの例である。実施例11のフィルムは、中間層に強度の高い樹脂を使用しているので、高透明で、強度が高いフィルムを安定して得ることができた。
【0069】
【表9】
Figure 2004043788
【0070】
表9は、ポリプロピレン発泡容器に貼合するための貼合用フィルムとして検討した例である。実施例16は、貼合用フィルムに求められる、表面光沢(グロス)が大きく改善されていることがわかる。実施例17は、高溶融張力ポリプロピレン樹脂および核剤を配合した組成物を中間層に使用することにより、さらに表面光沢が改善されていることがわかる。また、実施例16および実施例17は、中間層にプロピレン単独重合体を用いたことによって、水蒸気透過率が低くなり、容器に貼合した後の、容器との接着面における剥離が起きにくくなる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記の条件1を満たすポリプロピレン系樹脂と、上記の条件2を満たす高溶融張力ポリプロピレン樹脂と、核剤とを含有し、ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が、質量比で99:1〜91:9の範囲であり、核剤の含有量が、ポリプロピレン系樹脂組成物中0.01〜0.18質量%であるものであるので、空冷インフレーション法にて透明性に優れるポリプロピレンフィルムを安定して得ることができる。また、核剤を添加することにより発生する不都合、具体的には、フィッシュアイや添加した核剤のブリードによる粉吹き、それらに伴う臭気の発生等を防止する効果があり、さらに、核剤の添加量を大幅に減量できるため、コストダウンが図れる。このようなポリプロピレン系樹脂組成物は、空冷インフレーション法で安定的に効率の良い成形ができることから、高い生産性と衛生性で、食品包装用のラミ原反、特にシュリンクラップのフィルムに最適である。
【0072】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物が、少なくとも1種の脂環族飽和炭化水素樹脂をポリプロピレン系樹脂組成物中に1〜15質量%含有していれば、フィルムのフラット性が改善される。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであるので、空冷インフレーション法により得られたものであっても、透明性、フラット性に優れ、かつ安定して得ることができる。
また、本発明の積層体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むものであるので、強度、耐熱性等を付与された透明性に優れるポリプロピレンフィルムを得ることができる。
また、本発明のインフレーションフィルムは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション法で成形してなるものであるので、透明性、フラット性に優れ、かつ安定して得ることができる。
また、本発明のフィルムおよび積層体は、透明性が優れるとともに、表面光沢(グロス)にもたいへん優れているので、表面光沢が求められる貼合用フィルムに好適である。

Claims (8)

  1. 下記の条件1を満たすポリプロピレン系樹脂と、下記の条件2を満たす高溶融張力ポリプロピレン樹脂と、核剤とを含有し、
    ポリプロピレン系樹脂と高溶融張力ポリプロピレン樹脂との配合比が、質量比で99:1〜91:9の範囲であり、
    核剤の含有量が、ポリプロピレン系樹脂組成物中0.01〜0.18質量%であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件1:230℃でのメルトフローレート(MFR)(g/10分)と230℃での溶融張力(MT)(g)が下記式1の関係を満たす。
    式1 MT<11.32×MFR−0.7854
    条件2:230℃でのメルトフローレート(MFR)(g/10分)と230℃での溶融張力(MT)(g)が下記式2の関係を満たす。
    式2 11.32×MFR−0.7854≦MT
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと1種以上の炭素数2以上(3を除く)のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと1種以上の炭素数2以上(3を除く)のα−オレフィンとの共重合体であって、230℃におけるメルトフローレートが0.01〜30g/10分の範囲にあるものであることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. 前記核剤が、有機リン酸系の核剤、またはビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトールアセタール系の核剤であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. 少なくとも1種の脂環族飽和炭化水素樹脂をポリプロピレン系樹脂組成物中に1〜15質量%含有し、かつポリプロピレン系樹脂組成物の230℃におけるメルトフローレートが0.01〜30g/10分の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1ないし5いずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであることを特徴とするポリプロピレンフィルム。
  7. 請求項1ないし5いずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含むものであることを特徴とする積層体。
  8. 請求項1ないし5いずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション法で成形してなるものであることを特徴とするインフレーションフィルム。
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