JP2004043614A - 制電性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
【請求項1】(A)熱可塑性樹脂、未加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーの群から選ばれた少なくとも1種、(B)式R−(Y−Z)n−Y−RまたはX−(Z−Y)n−Z−X(ただし、Rはアルコキシ基、Yは炭素数4〜12のジカルボン酸残基、Xはモノカルボン酸残基、Zは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、nは0以上の整数を示す。)で表される構造を有するポリエステル化合物の少なくとも1種、ならびに、(C)アルカリ金属塩類および/またはアルカリ土類金属塩類を含有する制電性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制電性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、帯電防止性に優れた制電性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
制電性樹脂は、産業界において広く普及し、さまざまな用途に利用されている。
この制電性樹脂としては、例えば、各樹脂に対してカーボンブラックなどの導電性フィラーを高充填した組成物があり、経済性に優れることもあって、産業界を中心として広く利用されている。
ところで、近年、制電性樹脂およびその組成物は、ICチップの包装関係に普及し、材料のバリエーションも汎用プラスチックスからエンジニアリングプラスチックスに至るまで多様化している。また、用いられる導電性充填材も、カーボンブラック以外に、炭素繊維、黒鉛、金属コートフィラー、金属繊維などが、目的および機能に応じて広く使い分けられている。ICチップの包装に使用されるICトレーなどの素材としての制電性樹脂組成物は、軽量化、薄肉化、コンパクト化が検討されるようになり、強度と高い剛性が求められる傾向にある。さらに、ICの種類の識別などを目的として、トレー、キャリアテープにも着色性などの意匠性の要求もある。
【0003】
このような要求に対し、制電性フィラーとして汎用されているカーボンブラックは、経済的であり、体積(表面)抵抗率の低いものが得られるが、黒色に限定されるのと、一般的には加工性や材料強度などに問題があることから、通常は種々の改質材と共に複合化されて使用されている。
さらに、近年、ICやLSIなどの高性能化と大容量化によってトレーなどの包装用途や周辺機器に使用される高分子素材に求められる電気特性としては、体積抵抗率が1010Ω・cm未満、または表面抵抗率が1010Ω/sq.未満の特性が安定して求められるようになり、いわゆる従来の帯電防止領域の水準では充分ではなくなっているほか、静電気を利用した電子写真システムなどの普及により比較的高い体積(表面)抵抗率を安定的に発現させる高分子素材も求められるようになっている。
【0004】
また、帯電防止剤を含有した制電性樹脂組成物も広く普及しており、さまざまな用途に応用されている。帯電防止剤には、表面にブリードさせて機能を持たせる界面活性剤型のものと、いわゆる高分子型と称する、親水性セグメントを構造中に有する親水性高分子材料を、ポリマーアロイ化することによって機能を発現させるものがある。
界面活性剤型は、樹脂組成物中に含有されている界面活性剤の表面への移行によって帯電防止を図るものであるが、表面の払拭、洗浄によって制電性効果が失われたり、表面汚染、持続性の問題があるほか、満足のいく体積(表面)抵抗率は得られない。
【0005】
一方、高分子型は、熱可塑性樹脂に対し、親水性高分子をポリマーアロイ化することによって、永久的な制電性能を付与するものであり、産業上の利用価値が高い。しかしながら、高い制電機能を発現させようとすると、アロイ化するために必要な高分子型帯電防止剤の量が多くなるため、経済的に問題となる場合がある。高分子型帯電防止剤は一般的に親水性セグメントを有しているものが多く、柔軟性を有するものが多いため、アロイ化することにより、得られる制電性樹脂材料の剛性が低下し、成形品の変形が生じる他、柔軟性を有する高分子合成ゴム、熱可塑性エラストマーのような高分子素材への添加では、得られる制電性のバラツキが大きく、適用が難しい問題がある。
【0006】
さらに、従来知られている上記界面活性剤型、高分子型帯電防止剤を使用して得られる制電性樹脂組成物は、いずれも、その体積(表面)抵抗率が1010〜1012Ω・cm(1010〜1012Ω/sq.)までがほとんどであるため、目的を充分に満足しえない場合が多い。
また、特開昭56−136849号公報などに例示されているように、予め帯電防止剤を表面処理したフィラーを含有する制電性樹脂組成物があるが、体積(表面)抵抗率の低減が充分ではなく、帯電防止剤がフィラ−から分離しブリードアウトする問題がある。
【0007】
さらに、特開平11−256144号公報には、高分子型帯電防止剤として、片末端にアルキル基またはアルキル置換フェニル基を有し、エチレンオキシド基を有するポリ(オリゴ)エチレングリコールの末端基が、メタクリロイル基、またはアクリロイル基によりエステル化されたメタクリレートまたはアクリレートなどが挙げられている。上記片末端のアルキル基は、炭素数1〜25の直鎖または分岐のものが用いられている。同公報では、これらの親水性高分子によってフィラーの表面がコーティング処理されたものや、さらにこの高分子中にリチウム塩などが溶解されたものが提案されているが、リチウム塩として塩化リチウム塩などの塩素系が用いられているため、塩素系イオンによる接触機材の腐食、高分子の劣化、着色の問題がある。
特開平11−256144号公報には、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム塩が用いられているものが例示されている。同公報記載の発明では、導電性は良好であるものの、目的の導電性を得るために必要なこのようなフィラーの充填には、50〜60重量%以上の高添加量を必要とするため、高充填による加工性、機械特性の低下、成形品の表面外観の悪化、着色性(黄変)、材料の熱劣化などの問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来の技術的課題を解決するものであり、表面抵抗率を低く保ち、成形性、表面平滑性、寸法安定性に優れ、成形品に不具合を生じない制電性樹脂組成物を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)熱可塑性樹脂、未加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーの群から選ばれた少なくとも1種、
(B)下記式(1)または(2)で表される構造を有するポリエステル化合物の少なくとも1種、ならびに、
R−(Y−Z)n−Y−R ・・・(1)
X−(Z−Y)n−Z−X ・・・(2)
(ただし、Rは脂肪族アルコキシ基、脂環式アルコキシ基または芳香族アルコキシ基、Yは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基、Xは脂肪酸残基またはベンゼンモノカルボン酸残基、Zは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、nは0以上の整数を示す。)
(C)アルカリ金属塩類および/またはアルカリ土類金属塩類、
を含有することを特徴とする制電性樹脂組成物に関する。
上記(A)成分は、ポリエステル系(共)重合体樹脂、ポリアミド系(共)重合体樹脂、ポリウレタン系(共)重合体樹脂、エーテル結合および/またはエステル結合を含む(共)重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂、アルキレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル共重合樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、アルキル変性ポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエステルアミド樹脂、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂より選ばれた少なくとも1種の(共)重合体を含有してもよい。
上記(C)成分は、Li+、Na+、K+、Mg2+およびCa2+よりなる群から選ばれるカチオン、ならびにCl−,Br−,F−,I−,NO3 −,SCN−,ClO4 −,CF3SO3 −,BF4 −,(CF3SO2)2N−および(CF3SO2)3C−よりなる群から選ばれるアニオンとによって構成されていることがさらに好ましい。
上記(C)成分は、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムの群から選ばれた少なくとも1種のリチウム塩であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の制電性樹脂組成物に用いられる(A)熱可塑性樹脂は、公知の樹脂が使用できる。具体的には、ポリオレフィン系樹脂〔(低密度、中密度、高密度、直鎖状低密度)ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、ポリブテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、EVA樹脂、EVOH樹脂など〕、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AXS樹脂など)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12など)、ポリアセタール系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ2,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂(ポリアクリレート、アクリレート/メタクリレート樹脂など)、塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂など)、フッ素樹脂(ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂など)、液晶ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ジアリールフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂である。
なかでも、成形性の点からは、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのビニルモノマー重合体または共重合体;ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体や結晶性プロピレン−ブテン1共重合体などの結晶性プロピレン共重合体、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、特にポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS樹脂)などのビニルモノマー重合体または共重合体が好ましい。
また、耐熱性の点からは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリエーテルなどが好ましい。
これらの樹脂は、単独でも、二種以上を組み合わせても使用できる。
【0011】
未加硫ゴムとしては、公知のゴムが使用できる。具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。これらのゴムは単独でも、二種以上を組み合わせても使用できる。
【0012】
熱可塑性エラストマーとしては、公知のエラストマーが使用できる。具体的には、ポリアミド系エラストマー(TPAE)、ポリエーテル/ポリエステル系熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)(具体例としては、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、SBBS)などが挙げられる。
また、(A)成分としては、上記熱可塑性樹脂、未加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーを適宜組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明の(A)成分は、ポリエステル系(共)重合体樹脂、ポリアミド系(共)重合体樹脂、ポリウレタン系(共)重合体樹脂、エーテル結合および/またはエステル結合を含む(共)重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂、アルキレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル共重合樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、アルキル変性ポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエステルアミド樹脂、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂より選ばれた少なくとも1種の(共)重合体であってもよいが、上記(共)重合体がそれ以外の熱可塑性樹脂、未加硫ゴム、熱可塑性エラストマーに含有されているものでもよい。
【0014】
上記生分解性脂肪族ポリエステル樹脂は、一般的に市販されているものも用いることができる。例えば、昭和高分子(株)より販売されている商品名ビオノーレ(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート)やダイセル化学工業(株)より販売されている商品名セルグリーン(ポリカプロラクトン)などが挙げられるが、用途や特性に応じた樹脂を任意に選定することができる。工業的には、脂肪族ジカルボン酸と過剰のジオールを出発原料として、脱水重縮合反応および脱ジオール反応によって合成されるものなどが挙げられる。このような生分解性脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびその共重合体が一般的であり、各種高分子量タイプが工業生産されている。
【0015】
本発明に好適に用いられる生分解性脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート(コハク酸と1,4−ブタンジオールの2元系縮合物)、ポリブチレンサクシネートアジペート(コハク酸およびアジピン酸、ならびに1,4−ブタンジオールの3元系縮合物)などが挙げられる。
また、本発明の生分解性脂肪族ポリエステルには、イソシアネート基、ウレタン基といった反応基を構造中に導入することも可能である。さらに、本発明の生分解性脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸などを共重合したコポリエステルのような種々の共重合体を用いることもできる。
【0016】
本発明の(A)成分中の上記(共)重合体の含有量は、用途により異なるが、(A)成分100重量部中に、好ましくは3〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。3重量部未満であると電気特性が不充分である。また、25重量部を超えると電気特性は良好であるが、成形収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品には不向きである。
【0017】
次に、本発明の制電性樹脂組成物には、(B)成分である上記式(1)〜(2)で表される構造を有するポリエステル化合物の群から選ばれた少なくとも1種が含まれる。
本発明の樹脂組成物は、(B)成分を含むことにより、金属塩の溶解性、解離安定性、ブリードアウト防止、電気伝導性の促進、加工安定性、表面外観の改良に効果がある。
上記(B)成分は、一般的なエステル化合物の製造方法によって製造することができる。すなわち、多塩基酸成分と多価アルコール成分、ならびに一価アルコール成分および/または一価カルボン酸成分を用いて縮合させて製造される。
【0018】
上記多塩基酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸などの好ましくは炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸などや、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、ならびにそれらの無水物などが挙げられる。多塩基酸成分は、これら1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0019】
上記多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタン−ジオール−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオールなどの炭素数2〜18の脂肪族グリコール、およびジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
多価アルコール成分は、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0020】
一価アルコール成分としては、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、2−メチルオクタノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどの炭素数8〜18の脂肪族アルコ−ル、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、1−フェニルエタノール、2−フェノキシエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−ヒドロキシエチルベンジルエーテルなどの芳香族アルコールが挙げられる。一価アルコール成分は、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0021】
一価カルボン酸成分としては、例えばカプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸などが挙げられ、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0022】
なお、(B)ポリエステル化合物には、必要に応じ、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価またはそれ以上の多価アルコールおよび多塩基酸を変性剤として使用してもよい。
【0023】
また、(B)ポリエステル化合物には、必要に応じ、カルボン酸基とアルコール基、またはカルボン酸残基とアルコール残基を分子内に有する化合物、例えばカプロラクトン、1,2−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ラノリン誘導脂肪酸、オキシ安息香酸などを、多塩基酸および多価アルコールの一部として組み込ませ用いることも可能である。
【0024】
これらの(B)ポリエステル化合物の合成反応は、例えばパラトルエンスルフォン酸、リン酸、などの酸触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチルオキサイド、および塩化亜鉛などの金属触媒により促進されるので、通常、これらの触媒の存在下で行なうのが良い。触媒の使用量は、通常0.005〜0.2%の範囲である。
通常、その反応は、100〜250℃好ましくは130〜250℃に加熱して反応させる。
【0025】
本発明で使用される(B)ポリエステル化合物の数平均分子量(Mn)は、好ましくは100〜4,000、好ましくは200〜1,000が好適である。性能の安定上、通常(B)成分へ(C)成分を溶解して用いることが好ましく、100未満であると溶解性は良好であるが、(B)成分の他樹脂との接触による移行、熱安定性、揮発特性の低下に伴う加工時のガス発生などの問題を引き起こす。一方、4,000を超えると溶解した溶液の粘度が著しく上昇するため配合作業性が悪くなる。
【0026】
(B)成分の添加量は、(A)成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。0.1重量部未満では、充分な導電性を得ることが難しく、一方、20重量部を超えると、得られる組成物の粘度が著しく低下し、成形加工が困難となるほか、熱安定性、揮発特性の低下に伴う加工時のガス発生などの問題、ブリードアウトなどの問題が生じる他、得られる組成物の物理的特性の低下を招く。
【0027】
次に、本発明の(C)アルカリ金属塩類またはアルカリ土類金属塩類は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオン、およびイオン解離可能なアニオンとによって構成されている化合物である。
(C)成分のアルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、リチウムLi+、ナトリウムNa+、カリウムK+、マグネシウムMg2+およびカルシウムCa2+が挙げられ、好ましくはイオン半径の小さいリチウム、ナトリウム、さらに好ましくは、リチウムである。
また、(C)成分のイオン解離可能なアニオンとしては、例えば、Cl−,Br−,F−,I−,NO3 −,SCN−,ClO4 −,CF3SO3 −,BF4 −,(CF3SO2)2N−,(CF3SO2)3C−などが挙げられる。好ましくは、過塩素酸アニオンClO4 −、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンCF3SO3 −、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CF3SO2)2N−、およびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(CF3SO2)3C−であり、さらに好ましくはCF3SO3 −,(CF3SO2)2N−,(CF3SO2)3C−である。
【0028】
上記カチオンおよびアニオンによって構成されている金属塩類は数多くあるが、中でも、過塩素酸リチウムLiClO4,過塩素酸ナトリウムNaClO4,過塩素酸マグネシウムMg(ClO4)2,過塩素酸カリウムKClO4,トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLi(CF3SO3),ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLi・N(CF3SO2)2,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウムK・N(CF3SO2)2,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムNa・N(CF3SO2)2,トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムLi・C(CF3SO2)3,トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウムNa・C(CF3SO2)3が好ましい。中でも、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムがさらに好ましい。特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムが好ましい。(C)成分としては、これらの金属塩類の中から1種または2種以上の混合物が目的に応じて適宜選択される。
【0029】
(C)成分は、少量存在するだけで樹脂組成物の体積(表面)抵抗率が低くなるが、配合量としては、(A)成分100重量部に対し、好ましくは0.001〜3.0重量部、さらに好ましくは0.3〜2.4重量部である。0.001重量部未満であると導電性が不十分である。一方、3.0重量部を超えると導電性は変わらず、物性、熱安定性が低下する。
(C)成分は、それ単独でも使用可能であるが、金属塩類の解離状態が不充分で必要以上の添加量を要する場合が多いほか、金属塩によっては危険性の高いものもあることから、好ましくは上記(B)ポリエステル化合物に予め溶解したものを使用した方が好ましい。
【0030】
本発明の制電性組成物には、本発明の目的を損なわないかぎり、安定剤、着色剤、可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、補強剤、滑剤、発泡剤、耐候(光)剤、金属粉などの添加剤を配合することができる。
【0031】
本発明の組成物は、予備混合し、溶融混練して、通常の2次加工原料形態であるペレット状コンパウンドとしても使用することができる。ペレット加工することによって、各種成分を均一に予備分散ならしめ、高分子特性としての安定性を得ることができる。
ペレット状コンパウンドの加工において用いられる予備混合機としては、予備分散、分配、拡散混合を目的とするブレンダーが用いられる。ブレンダーの代表例としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(スーパーミキサー)、タンブラーミキサー、タンブルミキサー、エアーブレンダーなどが挙げられる。これらの予備混合機は、充填される可塑剤や副資材の形態や拡散レベルに応じて選定される。また、予備混合機を用いず、各配合物をそれぞれ異なるブラベンダーなどの定量切出機や定量液体添加装置を用いて、溶融混練機に投入してもよい。溶融混練機としては、一般的には単軸、二軸押出機、バンバリー式、ロール式などが挙げられる。これらも、組成物の形態や目的、生産性に応じて選定し、溶融混練することにより、ペレット状の原料を製造することが可能である。
また、本発明の組成物は、配合物をドライブレンドして得られるパウダー状としても使用できる。上記ペレット状コンパウンドの加工において用いられる予備混合機を用いて、ドライブレンドしてパウダー状の混合物の原料を製造することも可能である。
【0032】
本発明の制電性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂の混合、混練に用いられる通常の装置、設備を用いて問題なく製造できる。押し出し機としては、ベント付きの単軸、二軸異方向、二軸同方向押し出し機が望ましい。また、押し出し機に代えて、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、コニーダーなどの混練機を用いても良い。通常(B)成分は溶液の形態を有するためポンプなどを用いて定量的に供給することも可能である。
【0033】
本発明の制電性樹脂組成物は、その優れた特性を生かし、先述の機械部品、自動車部品、スポーツ用品関係、OA機器、家電分野、電気・電子分野、その他の各種パーツ、パッケージ、チューブ、被覆関係などの静電気対策関係に好適に使用することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り重量部および重量%である。
【0035】
実施例および比較例に用いた各種成分は、以下のとおりである。
(A)成分;
(A−1)脂肪族ポリエステル:昭和高分子株式会社製、商品番号#3020(メルトフローレート(MFR):19.5〜29.4g/10分)
(A−2)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR):ジェイエスアール株式会社製、商品名N520(アクリロニトリル 40%含有)
(A−3)ポリウレタン樹脂:大日本インキ化学工業(株)製、アジペート系ポリウレタン、商品名パンデックスT−1190
(A−4)熱可塑性ポリエステルエラストマー(ポリエーテル/ポリエステル系):東洋紡績(株)製、商品名ペルプレンP−40B(硬度D=31)
(A−5)ABS樹脂:東レ(株)製、商品名トヨラック600(曲げ弾性率;2,500MPa)(Tg:80〜90℃)
(A−6)ポリエーテルエステルアミド樹脂(PEEA):三洋化成工業(株)製、商品名ペレスタット6321
【0036】
(B)成分+(C)成分(溶液);
大日本インキ(株)製、商品名ポリサイザーW−220−EL(アジピン酸系ポリエステル、Mn=800、末端脂肪族アルコキシ基)に、金属塩として過塩素酸リチウム(LiClO4)を表1,2に示す割合で溶解した溶液を用いた。
さらに、比較例の添加剤として、カーボンブラック〔ライオン(株)製、商品名ケッチェンブラックEC〕を用いた。
【0037】
試験片の調製;
サンプルペレットを型締め圧力80ton/cm2の射出成形機により、試験片を成形した。成形条件は、シリンダー温度=220℃、金型温度は60℃であった。
物性測定は、試験片を室温23±2℃、相対湿度50%中で24時間調整後、下記物性の測定を行った。
【0038】
表面抵抗率;
幅6×長さ6×厚み0.3(cm)の射出成形試験片を用い、三菱化学(株)製、ハイレスタにて、ASTM D257に準じて測定を行なった。本発明の目的とする表面抵抗率は、1010Ω/sq.以下である。
【0039】
成形性、表面平滑性、寸法安定性のサンプルの調製
サンプルペレットを型締め圧力220ton/cm2の射出成形機により、幅13×長さ32×厚み0.5(cm)11点ゲートの金型を用い、シリンダー温度220℃、金型温度60℃にて成形品を作製した。成形品の状態について観察を行ない、以下のようにして評価した。
【0040】
成形性;
成形品の成形性〔流動性、離型性、ショート、スプルー切れなどの総合評価〕は、下記の判断基準により評価した。
◎;非常に良好
○;成形可能
△;成形性可能であるが、安定した成形操作が行なえない。
×;成形不可能
【0041】
成形品外観(表面平滑性);
成形品の平滑性、艶むら、ウェルドマーク、フラッシュマーク、毛羽立ちなどの総合判定は、成形品を目視して下記の判断基準により評価した。
◎;非常に良好
○;精密部品にも使用可能
△;汎用部品には使用可能であるが、精密部品には不向き。
×;使用不可
【0042】
成形品外観(ヒケ、ブツ);
上記試験片と同様の、6×6×0.3cmの射出成形プレートの表面外観を目視観察し、ヒケ、凝集物(以下、凝集物を「ブツ」と表現する)を評価した。
【0043】
寸法安定性;
寸法安定性の評価は、成形品の形状として問題となる反り、ひけ、変形などを目視には評価した。
◎;非常に良好
○;精密部品にも使用可能
△;汎用部品には使用可能であるが、精密部品には不向き。
×;使用不可
【0044】
実施例1〜8、比較例1〜6
表1,2の配合処方に基づき、(A)〜(C)成分およびその他の添加成分をタンブラーミキサーにより予備ドライブレンドし、47mm同方向2軸押し出し機により220℃で溶融混合し、ダイスから出た紐状の溶融混合物を水槽にて冷却処理し、カッターに通して樹脂組成物のペレットを作製した。結果を表1,2に示す。
【0045】
【表1】
*1)樹脂(A成分)合計100部に対する部数。
【0046】
【表2】
*1)樹脂(A成分)合計100部に対する部数。
*2)比較例6のカーボンブラックを入れた構成の試験片は、3倍に延伸後、表面抵抗率を測定したところ、1012Ω/sq.以上と極端に悪かった。また、測定値もバラツキが有った。
【0047】
表1,2の実施例より、本発明の組成物は、いずれも表面抵抗率が低く、成形性、表面平滑性、寸法安定性に優れていた。一方、本発明の(B)成分を含まない比較例1〜4、本発明の(B)および(C)成分を含まない比較例5は、寸法安定性に劣るものがあり、不具合が生じ、表面抵抗率が高いものであった。また、通常の導電性充填剤であるカーボンブラックを添加した比較例6は、試験片を3倍に延伸後測定すると表面抵抗率が1012Ω/sq.以上と極端に悪くなった。(実施例1は、同様に延伸後表面抵抗率を測定したとき109Ω/sq.と、延伸後も表面抵抗率は安定し、変化無しであった。)また、成形品表面にブツが発生した。
【0048】
【発明の効果】
本発明の制電性樹脂組成物は、表面抵抗率を低く保ち、成形性、表面平滑性、寸法安定性に優れ、成形品に不具合を生じないものであり、ICチップの包装関係など種々の工業分野に利用が期待される。
Claims (4)
- (A)熱可塑性樹脂、未加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーの群から選ばれた少なくとも1種、
(B)下記式(1)または(2)で表される構造を有するポリエステル化合物の少なくとも1種、ならびに、
R−(Y−Z)n−Y−R ・・・(1)
X−(Z−Y)n−Z−X ・・・(2)
(ただし、Rは脂肪族アルコキシ基、脂環式アルコキシ基または芳香族アルコキシ基、Yは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基、Xは脂肪酸残基またはベンゼンモノカルボン酸残基、Zは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、nは0以上の整数を示す。)
(C)アルカリ金属塩類および/またはアルカリ土類金属塩類、
を含有することを特徴とする制電性樹脂組成物。 - 上記(A)成分が、ポリエステル系(共)重合体樹脂、ポリアミド系(共)重合体樹脂、ポリウレタン系(共)重合体樹脂、エーテル結合および/またはエステル結合を含む(共)重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂、アルキレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル共重合樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、アルキル変性ポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエステルエステルアミド樹脂、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂より選ばれた少なくとも1種の(共)重合体を含有する請求項1記載の制電性樹脂組成物。
- (C)成分が、Li+、Na+、K+、Mg2+およびCa2+よりなる群から選ばれるカチオン、ならびにCl−,Br−,F−,I−,NO3 −,SCN−,ClO4 −,CF3SO3 −,BF4 −,(CF3SO2)2N−および(CF3SO2)3C−よりなる群から選ばれるアニオンとによって構成されている請求項1または2記載の制電性樹脂組成物。
- (c)成分が、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムの群から選ばれた少なくとも1種のリチウム塩である請求項3記載の制電性樹脂組成物。
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KR100607709B1 (ko) * | 2004-03-08 | 2006-08-01 | 에스케이케미칼주식회사 | 정전 분산능을 가지는 고분자 수지 및 고분자 수지혼합물의 제조방법 |
KR100844225B1 (ko) | 2006-11-08 | 2008-07-04 | 광 석 서 | 대전방지 폴리에스터 쉬트 및 이로 부터 제조된 부품 운반용기 |
JP2009030028A (ja) * | 2007-07-04 | 2009-02-12 | Shin Etsu Chem Co Ltd | 帯電防止性能を有するシリコーン粘着剤組成物およびシリコーン粘着テープ |
-
2002
- 2002-07-11 JP JP2002202199A patent/JP2004043614A/ja active Pending
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