JP2004043559A - プレコートメタル用耐汚染性塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品 - Google Patents

プレコートメタル用耐汚染性塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品 Download PDF

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大須賀 章浩
Toshio Yamamoto
山本 登司男
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Abstract

【課題】優れた加工性、耐汚染性、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性のある塗膜を与えるプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)(a)Mnが1,500〜50,000、酸価が2〜30mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂と、(b)エポキシ基含有ビニル系重合体から成り、(a)/(b)の質量比が1/99〜80/20、(b)のエポキシ基と(a)のカルボキシル基が当量比で0.1以下の割合で反応して得られる水酸基を有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂に、特定のオルガノシリケート又はその縮合物を結合している、エポキシ当量が200〜2,000g/molのシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂と、(B)カルボキシル基、カルボン酸無水物基、又はアルキルビニルエーテル化合物でのブロック化カルボキシル基の反応性官能基を有する化合物を含有させる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品に関する。更に詳しくは、特に耐汚染性、耐薬品性、耐衝撃性に加え、特に加工性に優れる塗膜を形成できるプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建造物などの屋外の基材には、装飾又は保護を目的として耐候性に優れた屋外用塗料が塗装されている。例として、ポリウレタン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料などが挙げられるが、近年、大気汚染などの環境の変化に伴い、空気中に含まれる油滴や塵埃などが多くなり、屋外用の塗膜は、降雨時に油滴や塵埃などによる雨筋状の汚れが付くなど、以前に比べ汚染されやすいという問題が生じている。そのため、塗膜の性能として汚染に対する耐性である耐汚染性が望まれるようになってきた。
その手法として、特開昭62−25103号に示されるように、組成物中の樹脂のガラス転移温度を高くすることで塗膜硬度を高め、塗膜に対する汚染物質の付着を抑制する手法が検討されたが、これは耐汚染性と塗膜の加工性を同時に満たすことが困難である。
そこで塗膜表面を親水性にし、付着した油性の汚染物質を降雨時の雨水が塗膜表面に広がる作用によって、剥離し洗い流してしまう非汚染形塗料が各種発表されている。例えば、特開平4−370176号に示されるように、ポリアルキレンオキサイドセグメントなどの親水性セグメントとポリシロキサンなどの疎水性セグメントとを含むセグメント化ポリマーを塗料に含めることで、塗膜表面に疎水性と親水性を同時に付与し、汚染物質の付着の抑制および降雨による洗浄効果を期待したものがある。しかし、塗膜自体のバリアー性が不足しているため、耐汚染性が十分とは言えない。
【0003】
一方、国際公開公報WO94/06870号には、塗料中にオルガノシリケートを混合し、それらの反応によって塗膜表面に親水性化、硬度の向上の双方を図った方法が示されている。これはオルガノシリケートの加水分解反応により生ずるシラノール基やシロキサン結合が塗膜表面の親水性の要因となるのだが、塗膜表面の親水性化、硬度の向上のためには第一段階の酸触媒の存在による加水分解反応が律速となる。このような理由から上記塗料においては、当該オルガノシリケートの反応を進行させるために、酸などの表面処理が必要となる。しかし、実際の建物外壁への塗装を考慮すると、酸性雨などにより、反応は進行すると考えられるが、耐汚染性効果を発現するまでには、塗膜形成後かなりの長期間を必要とする。
また、特開2002−69366号に示されるように、オルガノシリケートによる変性樹脂含有耐汚染性塗料組成物では高度な親水性による耐汚染性の効果が示されているが、これは主に自動車塗装分野に用いられるものでプレコートメタル用塗料としては加工性が不足している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実状のもとで、耐汚染性、耐薬品性、耐衝撃性に加え、特に加工性に優れる塗膜を形成できるプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品を提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、(A)(a)数平均分子量が1,500〜50,000であり、且つ樹脂酸価が2〜30mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂成分と、(b)エポキシ基を有するビニル系重合体成分を構成成分として含有し、(a)/(b)の質量比が、1/99〜80/20であり、かつ(b)成分の重合体のエポキシ基の一部と、(a)成分のカルボキシル基が当量比で0.1以下の割合で反応されている、水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂に、特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物が結合されている、エポキシ当量が200〜2,000g/molのシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂を含有し、(B)一分子中にカルボキシル基、カルボン酸無水物基及びアルキルビニルエーテル化合物でブロックされたカルボキシル基の反応性官能基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物、及び必要により(C)特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を含有して成るプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物により、その目的を達成しうることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)(a)数平均分子量が1,500〜50,000であり、且つ樹脂酸価が2〜30mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂と、(b)エポキシ基を有するビニル系重合体を構成成分として含有し、(a)/(b)の質量比が1/99〜80/20であり、かつ(b)のエポキシ基の一部と(a)のカルボキシル基が当量比で0.1以下の割合で反応されている、水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂に、一般式(1):
(R−Si−(OR4−m    (1)
(式中のRおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、mは0又は1である。)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物が結合されている、エポキシ当量が200〜2,000g/molであるシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂と、
(B)一分子中にカルボキシル基、カルボン酸無水物基及びアルキルビニルエーテル化合物でブロックされたカルボキシル基の反応性官能基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を含有することを特徴とするプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は上記プレコートメタル用耐汚染性塗料組成物において、(C)一般式(2):
(R−Si−(OR4−n    (2)
(式中のR及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、nは0又は1である。)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物をさらに含有するプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は上記プレコートメタル用耐汚染性塗料組成物において、(D)オルガノシリケート及び/又はその縮合物の加水分解を促す助触媒であって、有機金属化合物、金属キレート化合物、及び有機金属石鹸から選ばれる少なくとも1種を含有するプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は上記プレコートメタル用耐汚染性塗料組成物を含有し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全不揮発成分100質量部当たり、顔料を0〜300質量部含有する上塗り塗料をプレコート金属板に塗装することを特徴とするプレコート金属板の塗装仕上げ方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、金属板に下塗り塗料の塗装を施し、次に必要に応じて中塗り塗料の塗装を施して順次塗装の都度硬化させ、しかる後に上記プレコートメタル用耐汚染性塗料組成物を含有し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全不揮発成分100質量部当たり、顔料を0〜300質量部含有する上塗り塗料を塗布し、加熱硬化させることを特徴とするプレコート金属板の塗装仕上げ方法を提供するものである。
また、本発明は、上記プレコート金属板の塗装仕上げ方法において、金属板が冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板又はアルミニウム合金板であるプレコート金属板の塗装仕上げ方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記塗装仕上げ方法により塗装された塗装物品を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のプレコートメタル用塗料組成物(以下、単に塗料組成物と略すこともある。)において、(A)成分として用いられるシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂(以下、変性樹脂ということもある。)は、塗膜を親水化させるのに必要である(A)成分に結合しているオルガノシリケート及び/又はその縮合物の成分を塗膜中に均一に存在させ、又は塗膜の親水化を一層向上させるのに必要であるオルガノシリケート及び/又はその縮合物を塗膜中に均一に分散させ、親水性の発現と耐水性の向上の両立を果たすために用いられ、かつビニル系重合体とポリエステル樹脂の複合重合体であることで2種の異なった重合体の相当部分が化学的に結合しているため、互いに大きく相分離することなくビニル系重合体とポリエステル樹脂双方の優れた特徴を付与することができる。
【0010】
かかる変性樹脂は、(a)数平均分子量が1,500〜50,000であり、且つ樹脂酸価が2〜30mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂成分と、(b)エポキシ基を有するビニル系単量体および他のビニル系単量体の重合体成分を構成成分として含有し、(a)/(b)の質量比が、1/99〜80/20で構成され、かつ(b)成分からなる重合体のエポキシ基の一部と(a)成分のカルボキシル基が、当量比で0.1以下の割合で反応されている、水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂に、一般式(1):
(R−Si−(OR4−m    (1)
(式中のRおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、mは0又は1である。)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物が結合されており、エポキシ当量が200〜2,000g/molである。
【0011】
(a)成分のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、分子主鎖骨格中にカルボン酸エステル結合を含むことを特徴としており、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂に柔軟性を付与する成分である。(a)成分のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、1,500〜50,000であり、好ましくは1,500〜25,000であり、さらに好ましくは1,500〜20,000である。該数平均分子量が1,500未満の場合には、得られる重合体の機械物性が劣る。また、数平均分子量が50,000を超える場合には、有機溶剤に対する溶解性が乏しくなる。
また、(a)成分のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の樹脂酸価は、2〜30mgKOH/gであり、好ましくは2〜25mgKOH/g、さらに好ましくは2〜20mgKOH/gである。樹脂酸価が2mgKOH/g未満の場合では、(a)成分のカルボキル基と(b)成分のビニル系単量体の重合体との化学結合の量が乏しくなり相分離が起こりやすく、安定なシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂を得ることが困難となる。また、樹脂酸価30mgKOH/g以上の場合には、(a)成分と(b)成分との化学結合の量が極度に多くなるため、反応系全体がゲル化を起こす。
なお、(a)成分のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、水酸基を有するものであってもよい。(a)成分のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、水酸基価が0〜15mgKOH/gであることが好ましい。
【0012】
(a)成分の製造方法としては、これまで公知の技術に基づく製法が応用可能である。例えば、カルボキシル基を有する化合物、又は該化合物とアルコールとのエステル体、ヒドロキシル基を有する化合物、酸無水物、ラクトン類、エポキシ基を有する化合物、1分子内に前記官能基の複数種類を有する化合物等の群から選択される適当な組み合わせを原料とした重縮合反応、付加重合反応により得ることができる。これらの化合物の種類の組み合わせは、重縮合反応、又は付加重合反応の結果、上記(a)成分の条件を満たすカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を得る組み合わせであれば自由に選択することができる。
【0013】
上記カルボキシル基を有する化合物、又は該化合物とアルコールとのエステル体としては、1分子内のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基の数が、1〜4個であることが好ましく、2個であるジカルボン酸がさらに好ましい。上記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸等の炭素数2〜22の脂肪族カルボン酸及びこれらのアルコールとのエステル体;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸及びこれらのアルコールとのエステル体;及びテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸及びこれらのアルコールとのエステル体等が挙げられる。ここで、使用されるアルコールとしては、炭素数1〜12の1価のアルコールが好ましく、その具体例としては例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロオクタノール等が挙げられる。
該カルボキシル基を有する化合物、又は該化合物とアルコールとのエステル体は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0014】
上記ヒドロキシル基を有する化合物の1分子内のヒドロキシル基の数は、1〜4個であることが好ましく、2個であるジオールがさらに好ましい。上記ヒドロキシル基を有する化合物の具体例としては、例えば、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、n−オクタデシルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、水添ビスフェノールA、グリセリン、ソルビトール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロバンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール、マニトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジベンタエリスリトール等の多価アルコール類;これらの多価アルコール類とγ−ブチロラクトンやε−カプロラクトン等のラクトン化合物との開環付加体;該多価アルコール類とトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物とのアルコール過剰下での付加体等が挙げられる。該ヒドロキシル基を有する化合物は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0015】
上記酸無水物としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の多価カルボン酸の酸無水物体等を挙げることができる。該酸無水物は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
上記ラクトン類としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。該ラクトン類は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
上記エポキシ化合物の1分子内のエポキシ基の数としては1〜4個が好ましく、より好ましくは1〜2個であり、さらに好ましくは1個である。該エポキシ化合物の具体例としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルケンから誘導される脂肪族モノエポキシド化合物;セロキサイド2,000、セロキサイド3000(いずれも商品名、ダイセル化学工業(株)製)、リカレジンE−8(商品名、新日本理化(株)製)等のシクロアルケンから誘導される脂環式モノエポキシド化合物;スチレンオキシド、スチルべンオキシド等の芳香族環を有する芳香族モノエポキシド化合物;メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、(メタ)アリルグリシジルエーテル、ポリアルキレンオキシドモノグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;グリシジルイソブチレート、カージュラーE−10(商品名、シェル化学社製)等のグリシジルエステル類等が挙げられる。該エポキシ化合物は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0016】
また、(a)成分を製造する単量体は、ヒドロキシル基とカルボキシル基という様に複数種類の官能基を1分子内に有する化合物であってもよい。該複数種類の官能基を有する化合物の代表例としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシピバリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。該複数種類の官能基を有する化合物は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
さらに、(a)成分を得る方法としては、分子量が上限50,000を超えた範囲外である高分子量のポリエステル樹脂、或いは、酸価が下限の2mg/g未満であるポリエステル樹脂を出発物質として、アシドリシス、アルコーリシス、酸無水物の付加等の変性を行って範囲内のポリエステル樹脂とすることも可能である。
以上のポリエステル樹脂の中で特に(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂に好適に用いられるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールの構成単位から成る線状ポリエステル樹脂である。
【0017】
ジカルボン酸として好ましいものは、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸等の炭素数2〜22の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
また、ジオールのうち好ましいものとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール等の炭素数2〜22の脂肪族ジオール等が挙げられる。これらのジオールは、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0018】
ジカルボン酸とジオールの構成単位から成る線状ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールを重縮合することにより得られる線状ポリエステル樹脂、ジカルボン酸無水物とジオールの付加反応により得られる線状ポリエステル樹脂、さらにエステル交換反応により得られる線状ポリエステル樹脂等が挙げられ、原料がジカルボン酸とジオールである線状ポリエステル樹脂のみをいうのではなく、線状ポリエステル樹脂における構成単位がジカルボン酸から誘導される構成単位とジオールから誘導される構成単位と同じ構造であるものも含まれる。
該線状ポリエステル樹脂は、結晶性を落とす目的や、本発明に必要なカルボキシル基を導入する等の目的で、線状ポリエステル樹脂としての性質を損なわない範囲内であれば、若干量の3官能以上のカルボキシル基を有する化合物、ヒドロキシル基を有する化合物等から誘導される構成成分を含んでいても差し支えない。この様な事例としては、例えば末端水酸基の線状ポリエステル樹脂にトリメリット酸を付加反応させてカルボキシル基を含有させた線状ポリエステル樹脂や分子鎖内にトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメリット酸、ピロメリット酸等を若干量含有させて分岐させた線状ポリエステル樹脂や、結晶性を落とすために分子骨格中にトリメリット酸やトリメチロールプロパン等の3官能の構造を有する化合物を若干導入したもの等が挙げられる。3官能以上のカルボキシル基を有する化合物、ヒドロキシル基を有する化合物等は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0019】
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂における他の構成部分の1つであるエポキシ基を有するビニル系重合体は、エポキシ基を有するビニル系単量体の重合体またはエポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体の重合体である。
上記エポキシ基を有するビニル系単量体の1分子内のエポキシ基の数としては1〜4個が好ましく、より好ましくは1〜2個であり、さらに好ましくは1個である。具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アリルエーテル等のエポキシ基を有するビニル系単量体が挙げられる。このうちラジカル重合及びエポキシ基/カルボキシル基間の反応性がより高い、(メタ)アクリル酸エステル体であるグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートがより好ましい例として挙げられる。エポキシ基を有するビニル系単量体は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0020】
上記エポキシ基を有するビニル系重合体は、エポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体との共重合体とすることが好ましい。 上記エポキシ基を有するビニル系単量体と共重合させる他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、好ましくは、一般式(3):
HC=CRCOOR10    (3)
(式中、Rは水素原子叉はメチル基を示し、R10は炭素数1〜20の有機基を示す。)で表される化合物である。該R10の有機基は、飽和炭化水素基の他、水酸基、アセタール基、シクロカーボネート基、又はブロック化カルボキシル基のような反応性官能基を有した有機基が挙げられるが、これらのような反応性官能基を選択する際には、エポキシ基を有するビニル系単量体との共重合条件において、エポキシ基と強い反応性を示さないものを選択する必要がある。
【0021】
この(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。 その他のビニル系単量体のうち好ましいものとしては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエステル類、スチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルスチレン等の核置換スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。これらは単一種類で用いても複数種類用いても良い。一方、共重合するビニル系単量体として好ましくないものの例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのように、共重合する条件下で、エポキシ基と反応する可能性がある官能基を有する単量体が挙げられる。
エポキシ基を有するビニル系重合体は、上記エポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体の重合により得ることができるが、上記エポキシ基を有するビニル系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内で他の構成成分を含んでもよい。
【0022】
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂においては、(a)成分のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂のカルボキシル基と(b)成分のエポキシ基を有するビニル系重合体のエポキシ基の一部とが反応して結合されている。これにより、2種の異なった重合体の相溶性を著しく改善することができる。
(a)成分のカルボキシル基と(b)成分のエポキシ基とが結合している割合は、(b)成分のエポキシ基に対する(a)成分のカルボキシル基の当量比が0.1以下の割合であり、好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.06以下である。
(a)成分のカルボキシル基と(b)成分のエポキシ基とが反応することにより、エステル結合と水酸基が生成する。
【0023】
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂においては、(a)成分から成る構成部分の(b)成分の重合体から成る構成部分に対する質量比は、1/99〜80/20の範囲が好ましく、より好ましくは1/99〜70/30の範囲であり、さらに好ましくは1/99〜50/50の範囲である。前記質量比の1/99よりも(b)成分の重合体から成る構成部分の量が多くなる場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の柔軟性が不十分となることがある。一方、前記重量比の80/20よりも(b)成分の重合体から成る構成部分の量が少なくなる場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の硬度、耐薬品性、耐汚染性が低下することがある。
また、エポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体との質量比は、エポキシ当量にもよるが、7/93〜80/20の範囲が好ましく、より好ましくは10/90〜70/30の範囲であり、さらに好ましくは15/85〜60/40の範囲である。エポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体の重量比において、7/93よりもエポキシ基を有するビニル系単量体の量が少なくなる場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂を塗料組成物に用いようとする場合の硬化性が不足することがある。一方、前記質量比が80/20よりもエポキシ基を有するビニル系単量体の量が多くなる場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の柔軟性が損なわれることがある。
【0024】
(A)成分においては、水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂の水酸基と一般式(1)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物とが反応することにより、一般式(1)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物が水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂に結合されている。
一般式(1)で表されるオルガノシリケートの好ましい具体例としては、テトラヒドロキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、プロポキシトリメトキシシラン、ブトキシトリメトキシシランなどが挙げられる。
またオルガノシリケートの縮合物としては、前記一般式(1)で表されるオルガノシリケートの1種又は2種以上の分岐状もしくは直鎖状の縮合物であって、重量平均分子量が200〜2000の範囲にあるものが好ましく、300〜1500の範囲内にあるものが特に好ましい。オルガノシリケートの縮合物の市販品としては、MKCシリケートMS51、MS56、MS57、MS56S、MS56SB5、ES40、EMS31、BTS(いずれも商品名、三菱化学(株)製)、メチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート40T、エチルシリケート48(いずれも商品名、コルコート(株)製)、エチルシリケート40、45(いずれも商品名多摩化学工業(株)製)などが挙げられる。上記オルガノシリケート及び/又はその縮合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
一般式(1)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物の(A)成分の変性樹脂における結合量は、(A)成分の変性樹脂中1〜70質量%の範囲が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。該オルガノシリケート及び/又はその縮合物が1質量%未満の場合、最終的に得られる硬化塗膜の耐汚染性が不十分となるため好ましくなく、70質量%を越える場合は硬化塗膜の耐水性が低下するため好ましくない。
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂は、上記構成成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の構成成分を含んでもよい。
さらに、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂のエポキシ当量は、200〜2,000g/molであり、好ましくは250〜1,500g/molであり、さらに好ましくは275〜1,100g/molである。エポキシ当量が2,000g/molを超える場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂を本発明の塗料組成物として使用しようとした場合の硬化性が不足し、逆にエポキシ当量が200g/mol未満となる場合には、架橋密度が高くなりすぎて柔軟性等が損なわれる。
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂は、50±1%の不揮発分となる有機溶媒溶液の20℃における粘度が、通常1〜2000ポイズの範囲が適当である。
また、本発明のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物において、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂は(A)、(B)及び(C)成分の全不揮発分総量に対して3〜80質量%の範囲内で用いられることが好ましく、10〜80質量%がより好ましく、20〜80質量%が特に好ましい。ここで(A)成分が3質量%未満の場合、最終的に得られる硬化塗膜の耐汚染性が不十分となるため好ましくなく、80質量%を越える場合は硬化塗膜の耐水性が低下するため好ましくない。
【0026】
次に、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の好ましい製造方法について説明する。
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂は、(a)数平均分子量が1,500〜50,000であり、且つ樹脂酸価が2〜30mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、一般式(1)に示されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物及び有機溶媒の存在下で、(b’)エポキシ基を有するビニル系単量体及び必要に応じて(c’)他のビニル系単量体をラジカル重合開始剤により重合させる方法により好ましく製造することができる。なお、一般式(1)に示されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物は、(b’)エポキシ基含有ビニル単量体と(c’)他のビニル単量体の共重合の終了後に、反応させてもよい。
エポキシ基を有するビニル系単量体は、他のエポキシ基を有するビニル系単量体と重合するか、又は他のビニル系単量体と共重合するとともに、(a)成分中のカルボキシル基と化学結合を形成することにより、(b)エポキシ基を有するビニル系重合体と(a)成分のポリエステル樹脂との間の化学結合を形成する作用があり、その結果、2種の異なった重合体の相溶性を著しく改善することができる。さらに(b)成分のエポキシ基のうち、(a)成分中のカルボキシル基と反応せずに残ったエポキシ基により、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂に、多量のエポキシ基を導入することができる。
【0027】
エポキシ基を有するビニル系単量体の使用量は、エポキシ基に対する(a)成分のカルボキシル基の当量比が0.1以下の割合になるように選定され、好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.06以下である。この様な(a)成分のカルボキシル基に対して大過剰のエポキシ基を有するビニル系単量体を用いることにより、重合反応進行と同時に効率よくエポキシ基を有するビニル系重合体と(a)成分との間に化学結合を生成することができる。逆に、エポキシ基を有するビニル系単量体のエポキシ基に対する(a)成分のカルボキシル基の当量比が0.1を超える場合には、ビニル系共重合体と(a)成分との化学結合が十分に得られずに相分離する傾向がある。
(a)成分の(b’)エポキシ基を有するビニル系単量体及び(c’)他のビニル系単量体の合計質量に対する質量比率は、1/99〜80/20の範囲が好ましく、より好ましくは1/99〜70/30の範囲であり、さらに好ましくは1/99〜50/50の範囲である。前記質量比率の1/99よりも(b’)エポキシ基を有するビニル系単量体及び(c’)他のビニル系単量体の合計質量が多くなる場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の柔軟性が不十分となることがある。一方、前記質量比率の80/20よりも(b’)エポキシ基を有するビニル系単量体及び(c’)他のビニル系単量体の合計質量の比率が少なくなる場合には、(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の硬度、耐薬品性、耐汚染性が低下することがある。
なお、(b’)エポキシ基を有するビニル系単量体と(c’)他のビニル系単量体との質量比は、前記したものと同様である。
【0028】
一般式(1)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物の(A)成分の変性樹脂に結合させるには、水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂の水酸基と、オルガノシリケート及び/又はその縮合物のアルコキシル基を反応させることにより、行うことができる。水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂の水酸基は、オルガノシリケート及び/又はその縮合物のアルコキシル基と全て反応させてもよいし、一部のみ反応させてもよいが、全て反応させることが好ましい。
なお、一般式(1)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物の結合量は、前記したものと同様である。
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の製造方法に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、t−ブチルヒドロペルオキンド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシネオデカネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシソプロピルカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。以上は単一種類用いても複数種類用いても差し支えない。
【0029】
なお、本発明では(b)成分を含むビニル系単量体の重合反応と、(a)成分のカルボキシル基と(b)成分のエポキシ基間の反応とを同時に進行する必要性から、上記のラジカル重合開始剤の中より、10時間半減期温度か50℃以上のアゾ化合物、又は有機過酸化物から選択することが好ましい。その様なアゾ化合物又は有機過酸化物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシネオデカネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシソプロピルカーポネート等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤の系においては必要に応じてジメチルアニリン、硫酸第1鉄、塩化第1鉄、酢酸第1鉄等の第1鉄塩、酸性亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット等の還元剤を組み合わせても差し支えないが、重合温度が低くなりすぎないように留意して選択する必要がある。
【0030】
本発明の(A)成分の製造において用いられる有機溶媒は(a)成分のカルボキシル基または(b)成分のエポキシ基と反応する官能基を有さないものが好ましい。
本発明の(A)成分の製造において用いられる有機溶媒の適当な例としては、例えばシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等の含窒素系溶剤が挙げられる。以上は単独であっても、又は複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。この際、シリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の不揮発成分濃度は重合体の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常不揮発成分濃度で10〜70%である。
なお、必要に応じて、(a)成分のカルボキシル基と(b)成分のエポキシ基間の反応を促進する目的で、ルイス酸、三級アミン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の公知の反応触媒も1種又は複数種組合せて用いることができる。
【0031】
(A)成分のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂の製造に際して(a)成分及び(b)成分を含むビニル系単量体の混合方法、有機溶媒及びラジカル重合開始剤の添加方法は任意であるが、重合熱、反応熱をコントロールする目的で、(a)成分又はその有機溶媒溶液を反応槽に仕込み撹拌しなから、滴下槽より(b)成分を含むビニル系単量体又はその有機溶媒溶液を滴下する方法、又は(a)成分又はその有機溶媒溶液、(b)成分を含むビニル系単量体又はその有機溶媒溶液の双方を滴下槽より滴下する方法が好ましい。なお、上記(b)成分を含むビニル系単量体は、(b)成分のエポキシ基を有するビニル系単量体のみでもよいし、(b)成分のエポキシ基を有するビニル系単量体と(c)成分の他のビニル系単量体との混合物でもよい。
上記重合反応の重合温度はラジカル重合開始剤の種類、併用する還元剤の有無、カルボキシル基とエポキシ基の反応触媒の有無によって異なるが、50〜200℃の条件で行うことが好ましく、80℃〜160℃の条件で行うことがさらに好ましい。重合温度が50℃以下の場合には、(a)成分のカルボキシル基と(b)成分のエポキシ基の反応が十分に進行せず、ビニル系単量体とポリエステル樹脂とが相分離し易くなることがある。一方20 0℃を越える場合には予期せぬ解重合等の副反応が起こることがある。
【0032】
本発明の(A)成分であるシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂は、重合時の(a)成分の樹脂酸価や分子量、(b)ビニル系共重合体の分子量やそのビニル系単量体の含有量、さらには溶剤の種類により透明な溶液となったり、乳白色な分散液となったりする。このうち、乳白色な分散液となるのは、生成するシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂のポリエステル部分とビニル系単量体の重合体部分がミクロ相分離しているためと考えられるが、本発明の範囲内のシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂においてはその分散液の安定性が優れており、貯蔵時の安定性、製膜時の透明性、光沢に何ら問題が生じない。
本発明のプレコートメタル用耐汚染塗料組成物に用いられる(B)成分は(A)成分と熱硬化反応する化合物であり、一分子中にカルボキシル基、カルボン酸無水物基及びアルキルビニルエーテル化合物でブロック化されたカルボキシル基の反応性官能基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物(以下、単に硬化剤と略す場合もある)である。かかる硬化剤の具体例としては、一分子中にカルボキシル基を有する化合物では、例えばコハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ダイマー酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0033】
また、その他の一分子中にカルボキシル基を有する化合物としては、▲1▼一分子当たり水酸基を1個以上、好ましくは2〜50個有するポリオールとカルボン酸無水物をハーフエステルさせる、▲2▼一分子当たりイソシアネート基を1個以上、好ましくは2〜50個有するポリイソシアネート化合物とヒドロキシカルボン酸又はアミノ酸とを付加させる、▲3▼カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体を単独重合又は他のラジカル重合性単量体と共重合させる、▲4▼カルボキシル基末端のポリエステル樹脂を合成するなどの方法によって得られる化合物などが挙げられる。また、一分子中にカルボン酸無水物基を有する化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸などの一分子中にカルボン酸無水物基を1個有する化合物の他に、酸無水物基を有するラジカル重合性単量体、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸などと他のラジカル重合性単量体との共重合体が挙げられる。
【0034】
さらに、アルキルビニルエーテル化合物でブロックされたカルボキシル基を有する化合物としては、上記のカルボキシル基を有する化合物のカルボキシル基をアルキルビニルエーテル化合物でブロックすることによって得られる化合物などが挙げられる。かかるアルキルビニルエーテル化合物としては、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、イソヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピランなどが挙げられる。
本発明の耐汚染性塗料組成物において、この(B)成分の化合物は1種用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の耐汚染性塗料組成物は、前記(A)成分並びに(B)成分を必須成分としている。(A)成分と(B)成分の混合比は、エポキシ基と、これと化学結合を形成しうる(B)成分の反応性官能基とが当量比0.2:1.0〜1.0:0.2の範囲が好ましい。
【0035】
本発明のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物に用いられる(C)成分は、塗膜表面に浮上し濃縮層を形成することで、塗膜硬化後に短時間で高度な耐汚染性を発現するためにより効果的であり、一般式(2)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物が用いられる。一般式(2)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物の好ましい具体例としては、例えばテトラヒドロキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、プロポキシトリメトキシシラン、ブトキシトリメトキシシランなどが挙げられる。
またオルガノシリケートの縮合物としては、前記一般式(2)で表されるオルガノシリケートの1種又は2種以上の分岐状もしくは直鎖状の縮合物であって、重量平均分子量が500〜10,000の範囲にあるものが好ましく、500〜5,000の範囲内にあるものが特に好ましい。オルガノシリケートの縮合物の市販品としては、MKCシリケートMS51、MS56、MS57、MS56S、MS56SB5、ES40、EMS31、BTS(いずれも商品名、三菱化学(株)製)、メチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート40T、エチルシリケート48(いずれも商品名、コルコート(株)製)、エチルシリケート40、45(いずれも商品名、多摩化学工業(株)製)などが挙げられ、上記オルガノシリケートの縮合物の市販品を微量の水存在下でさらに縮合を進めたものも用いることができる。
【0036】
本発明の耐汚染性塗料組成物において、(C)成分のオルガノシリケート及び/又はその縮合物の含有量は、(A)、(B)及び(C)成分の全不揮発分総量に対して0〜30質量%が好ましく、0.2〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が特に好ましい。30質量%を越える場合は硬化塗膜の耐水性が低下するため好ましくない。
本発明のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物には、助触媒である(D)成分を含有させることが好ましい。
本発明の(D)成分は、一般式(1)及び/又は一般式(2)に示されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物の加水分解を促進する触媒である。オルガノシリケート及び/又はその縮合物は、そのアルコキシル基が加水分解により水酸基に変換され、親水性の高いシラノール基を生成する。すなわち、本発明では(A)成分、あるいは(A)成分及び/又は(C)成分が親水性の高いシラノール基を生成することで塗膜表面が親水性化し、降水等に由来する水が塗膜と汚染物質との界面に浸透、流入し、その水とともに汚染物質を洗い流すことで耐汚染性を発現するものである。
【0037】
(D)成分としては、ルイス酸が好ましく、その具体例としては、例えば有機金属化合物、金属キレート化合物、及び有機金属石鹸等が挙げられる。
助触媒の具体例として、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズなどの金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズなどの有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム 、モノアセチルアセトナトビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセト アセテート)アルミニウム、モノエチルアセトアセテート.ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトアセテート)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス (アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジクロロ・ビス(アセチルアセトナト)スズ、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)クロム、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルトなどの金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチルスズイソオクチルチオグリコレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、オクチル酸ビスマス、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛などの有機金属石鹸が挙げられる。助触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。助触媒の使用量は、プレコートメタル用塗料組成物の(A)成分に結合されているオルガノシリケート及び/又はその縮合物、又はそれと(C)成分100質量部あたり0〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。この助触媒の配合割合が20重量部を超えると、加工性、光沢低下等の物性低下を生じる恐れがある。
【0038】
本発明のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物は、その硬化性をより促進する目的で、硬化触媒としてルイス酸、プロトン酸等の公知の酸触媒及びプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物類、及びエポキシ基を含有する化合物、含イオウ化合物、ルイス酸から成る化合物又はそれらとカルボン酸化合物及び/又は無水力ルボン酸化合物からなる化合物がさらに好ましく挙げられる。
本発明のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物においては、硬化触媒は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、またその配合量は(A)成分、(B)成分との総不揮発分量100質量部当たり、通常0.01〜20質量部の範囲、好ましくは0.02〜10質量部の範囲で配合されるように選ばれる。
硬化触媒の量が0.01質量部未満では触媒量が少なすぎて反応を促進させる効果が十分に発揮されない。また、硬化触媒の量が20質量部を越えると、量のわりには反応を促進させる効果の向上がみられず、むしろ耐汚染性塗料組成物中に触媒が多量に残存することにより、塗膜の物性が低下する場合があり好ましくない。
【0039】
本発明の耐汚染性塗料組成物はそのままで、又は必要に応じ、着色顔料、フィラー、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動調製剤などの各種添加剤を配合して、塗料、インク、接着剤、成形品など硬化性を利用する種々の用途に使用することができる。
本発明の耐汚染性塗料組成物は、上記した成分を混合し、必要に応じて各種添加剤を配合することにより製造することができる。各成分の配合方法及び各種添加剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、種々の方法により行うことができ、混合順序及び添加順序も種々の順序で行うことができる。
本発明の耐汚染性塗料組成物を使用する適当な塗装方法には、塗料組成物を、必要に応じて加温したり、有機溶媒又は反応性希釈剤を添加することにより所望の粘度に調整した後、エアスプレー、静電エアスプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング形式による塗装機などの通常使用される塗装機、又は刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いて乾燥後の塗膜が0.5〜300μmになるように塗布し、通常50〜300℃の温度で5秒〜1時間加熱硬化させる方法が挙げられる。
【0040】
また、本発明の耐汚染性塗料組成物を用いて金属板を塗装仕上げすることが出来る。金属板の塗装仕上げ方法としては、例えば金属板に必要に応じて下塗り塗料及び中塗り塗料を塗布して硬化させ、その後本発明の塗料組成物中の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全不揮発成分100質量部当たり、顔料を0〜300質量部含有する上塗り塗料を塗布し、加熱硬化させる金属板の塗装仕上げ方法が挙げられる。
下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料の塗装方法は、種々の塗装方法により行うことができるが、ロールコーター、フローコーター又はスプレー等による塗装方法が好ましい。ロールコーターにより上塗り塗料を塗布する場合、ナチュラル方式及びリバース方式が考えられるが、リバース方式の方が塗面の表面平滑性の点で好ましい。
下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料で塗布した塗膜は、順次塗布の都度硬化させるが、この硬化は、通常100〜300℃で、5秒〜5分の硬化条件で行えはよく、例えばコイルコーティングなどによって塗装するプレコート塗装分野においては、通常素材到達最高温度が120℃〜260℃で、15〜120秒の硬化条件で硬化すれば良い。
【0041】
該金属板としては、種々の金属板が用いられ、例えば冷延鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、電気合金亜鉛メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板(非合金化)・亜鉛鉄板、溶融亜鉛メッキ鋼板(合金化)、溶融亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板などの亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などが挙げられる。
金属板に下塗り塗料を塗布する際には、金属板の表面に塗装前処理を施すことが好ましく、この塗装前処理としては、ブレコートメタル用前処理として用いられる化成処理ならいすれでもよく、例えばクロメート化成処理、リン酸塩化成処理、複合酸化皮膜処理などが挙げられる。
本発明の耐汚染性塗料組成物を塗布して得られる塗装物品としては、例えば金属製品などが挙げられる。より具体的には、自動車、鋼板などの金属板、二輪車、船舶、鉄道車両、航空機、家具、楽器、家電製品、建築材料、容器、事務用品、スポーツ用品、玩具などの金属製品などが挙げられる。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。なお、本発明の塗料組成物により得られる塗膜の性能は次のようにして求めた。
(i)耐屈曲性(1)
20℃の室温にて、幅5cmに切断した試験片について、4Tでは試験片と同一の塗板を4枚内側にはさみ、また、2Tでは試験片と同一の塗板を2枚内側にはさみ塗膜を外側にして180度密着曲げを行った。評価はその後セロハン粘着テープにて剥離し、以下の基準で評価した。
◎;剥離なし
○;剥離が10%以下
△;剥離が10%を超えて、50%以下
×;剥離が50%超
(ii)耐屈曲性(2)
20℃の室温にて、幅5cmに切断した試験片について、6Tでは試験片と同一の塗板を6枚内側にはさみ、また、4Tでは試験片と同一の塗板を4枚内側にはさみ塗膜を外側にして180度密着曲げを行った。評価は10倍ルーペで先端部を観察し、以下の基準で評価した。
◎;クラックなし
〇;クラックが10%以下
△;クラックが10%を超えて、50%以下
×;クラックが50%超
該ルーペ観察による耐屈曲性の判定は、耐屈曲性(1)のセロハン粘着テープ剥離による判定方法に比較し、はるかに厳しい判定である。
【0043】
(iii)耐衝撃性(1)
衝撃変形試験器 JIS K−5400(1990)8.3.2 デユポン式を用い、半径6.35mmの撃ち型に試験片をはさみ、500gのおもりを40cmの高さから落下させた際の塗膜の損傷を目視にて、以下に示す基準に従って判定した。
◎;剥離なし
○;剥離が10%以下
△;剥離が10%を超えて、50%以下
×;剥離が50%超
(iv)耐衝撃性(2)
耐衝撃性(1)の試験方法に準じ、1000gのおもりを40cmの高さから落下させた際の塗膜の損傷を目視にて、以下に示す基準に従って判定した。耐衝撃試験(1)による判定方法に比較し、はるかに厳しい判定である。
◎;剥離なし
○;剥離が10%以下
△;剥離が10%を超えて、50%以下
×;剥離が50%超
(v)鉛筆引っかき値
JIS K−5400(1990)8.4.1(a)に準じて鉛筆引っかき試験機で傷の発生しない鉛筆硬度を求めた。
(vi)耐塩水噴霧性
JIS Z−2371及びK−5400(1990)9.1に準じて、4T曲げ加工を施した試験片について1000時間の塩水噴霧試験を行った。(イ)平面部のふくれ、白錆発生状況、(ロ)4T折り曲げ加工部分のふくれ、白錆発生状況、(ハ)クロスカット部の塗膜ふくれ、白錆の発生状況を観察し、以下の基準で判定を行った。
○;塗膜ふくれ、白錆の発生なし
△;僅かに塗膜のふくれ又は白錆が認められる
×;明らかに塗膜のふくれ又は白錆が認められる
【0044】
(vii)耐沸騰水性
JIS K−5400(1990)8.20に準じて試験片を沸騰水に2時間浸せきした後、塗膜の異常を観察し、以下の基準で判定した。
〇;塗膜に全く異常なし
△;僅かに塗膜のふくれが認められる
×;明らかに塗膜のふくれが認められる
(viii)耐候性
サンシャインカーボンアーク灯式 [JIS K−5400(1990)9.8.1]を用いて1000時間暴露後、塗膜の60度鏡面光沢度値[JIS K−5400(1990)7.6鏡面光沢度]を測定し、未暴露時の光沢値と比較した。
(ix)耐酸性
40wt%硫酸2mlを試験片上にスポット状に乗せ、60℃で30分間加熱後、塗膜の異常を目視にて判定した。
(x)耐マジック汚染性
マジックインクを塗装面に塗布し、室温で48時間放置した後、キシレンを浸した柔らかい布で塗布したマジックインクを拭い去った後を目視で観察した。
【0045】
(xi)耐カーボン汚染性
カーボンブラック/水:5/95(重量比)の割合の分散液1mlを塗面上にのせ、20℃の恒温室内で24時間放置後数回洗浄を行い、分散液を載せた部分の塗面の汚れ跡の程度を目視にて観察し、以下の基準で判定した。
◎;汚れ跡が見られない
○;汚れ跡がわずかに認められる
△;汚れ跡がかなり残る
×;汚れ跡が濃く残る
(xii)接触角
得られたサンプルの試験片を水中に1時間浸漬し、エアーブローで表面の水を除去し、更に1時間乾燥させた後、協和界面科学(株)製FACE自動接触角測定器(CA−Z型)を用いて、接触角の測定を行った。
(xiii)屋外曝露試験
試験片(100×200×0.3mm)を軒先をモデル化した設置台に、北側に塗膜を面するように取り付け、横浜市戸塚の日本油脂(株)屋上にて曝露試験を行った。耐汚染性、及び雨筋汚染性(雨筋上の汚れ跡)は曝露前後の色差をJIS Z8370に基づいて測定及び目視判定を以下の評価方法で行った。
耐汚染性(ΔE)
○;2未満
△;2〜5未満
×;5以上
ΔEはスガ試験機(株)製の多光源分光測色計MSC−5Nで測定した。
雨筋汚染性
◎;雨筋跡が見られない
○;雨筋跡がわずかに認められる
△;雨筋跡がかなり残る
×;雨筋跡が濃く残る
【0046】
<製造例1>
ポリエステル樹脂の合成
温度計、ディーンスターク(ポリエステル合成時の縮合反応における水等を除去するための分留器)、還流冷却器、窒素導入管、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、イソフタル酸463質量部、、1,5−ペンタンジオール590質量部を仕込み、170℃から240℃に昇温しながら撹拌し、酸価が5mgKOH/g以下となるように縮合反応を行った。次に無水フタル酸447質量部を仕込み、140℃から240℃まで減圧しながら昇温・撹拌し付加反応と縮合反応を行った。その後、キシレン350質量部を加えた結果、不揮発分80質量%、樹脂酸価 12.6mgKOH/g、数平均分子量5600のポリエステル樹脂の溶液を得た。
【0047】
<製造例2>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、表1に示した質量部のキシレン、シクロヘキサノン、製造例1のポリエステル樹脂溶液およびオルガノシリケート混合物(初期仕込み)を仕込み、攪拌下で加熱し120℃を保った。次に120℃の温度で表1の組成の単量体および重合開始剤混合物(滴下成分)を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後120℃の温度を1時間保った後、反応温度を100℃に下げた。、その後表1の組成の重合開始剤溶液(追加触媒)を添加し、さらに100℃の温度を2時間保ったところで反応を終了し、表1記載の不揮発分を有する変性樹脂溶液A−1を得た。
【0048】
<製造例3>
製造例2における製造例1のポリエステル樹脂溶液の替わりに、市販のポリエステル GK150(東洋紡績(株)製、水酸基価6.0mgKOH/g、酸価6.0mgKOH/g、数平均分子量12,000)を用いた以外は、製造例2と同様の条件で反応を行い、表1記載の不揮発分を有する変性樹脂溶液A−2を得た。
【0049】
【表1】
Figure 2004043559
表中の添字の物質は、以下に示すものである。
1)GK−150(商品名、東洋紡績(株)製、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、水酸基価6.0mgKOH/g、樹脂酸価6.0mgKOH/g、数平均分子量12,000)
2) メチルシリケート51(商品名、コルコート(株)製、メチルシリケート低縮合物、重量平均分子量500〜900)
【0050】
<製造例4>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコにトリメチロールプロパン134質量部およびシクロヘキサノン425.3質量部を仕込み攪拌下で120℃に加熱した。次いで、120℃の温度を保ちながらメチルヘキサヒドロフタル酸無水物504質量部を2時間かけて滴下し、混合物の酸価(ピリジン/水=9/1(重量比)混合液で約50重量倍に希釈し、90℃で30分間加熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が、160以下になるまで加熱攪拌を継続することで不揮発分60質量%、溶液としてのカルボン酸当量355の硬化剤溶液B−1を得た。
【0051】
<製造例5>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレン40質量部、シクロヘキサノンシクロヘキサノン25質量部およびポリエステル樹脂GK−150の25質量部を仕込み、攪拌下で加熱し120℃を保った。次に120℃の温度で、メタクリル酸グリシジル28.4質量部、メタクリル酸n−ブチル10.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル11.6質量部、t−ブチルパーオキシラウレート1.0質量部を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後120℃の温度を1時間保った後、反応温度を100℃に下げた。その後2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部およびシクロヘキサノン8.5質量部を添加し、さらに100℃の温度を2時間保ったところで反応を終了し、不揮発分50.4%、溶液としてのエポキシ当量756のエポキシ基を含有するポリエステル変性アクリル樹脂溶液E−1を得た。
【0052】
<製造例6>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレン35質量部、シクロヘキサノン20質量部およびメチルシリケート51の12質量部を仕込み、攪拌下で加熱し120℃を保った。次に120℃の温度で、メタクリル酸グリシジル28.4質量部、メタクリル酸n−ブチル10.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル11.6質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.0質量部、t−ブチルパーオキシラウレート1.0質量部を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後120℃の温度を1時間保った後、反応温度を100℃に下げた。その後2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部およびシクロヘキサノン8.5質量部を添加し、さらに100℃の温度を2時間保ったところで反応を終了し、不揮発分50.7%、溶液としてのエポキシ当量648のエポキシ基を含有するアクリル樹脂溶液E−2を得た。
【0053】
<実施例1〜5>
(1)プレコートメタル用エナメル樹脂塗料の製造
表2に記載の成分のうち、(A)成分及びに酸化チタンをサンドミルに入れて、粒度が10μm以下になるまで分散した。その後、表2に記載のその他の成分をそれぞれ添加混合しエナメル塗料とした。得られた塗料は、ソルベッソ#100(エッソ(株)製:芳香族石油ナフサ)により、フォードカップNo.4で120±10秒になるように粘度調整を行った。
【0054】
【表2】
Figure 2004043559
表中の添字の物質は、以下のものを示す。
1):製造例2の変性樹脂溶液A−1
2):製造例3の変性樹脂溶液A−2
3):製造例4の硬化剤溶液B−1
4):MKCシリケートMS57(商品名、三菱化学(株)製、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物、重量平均分子量1400)
5):MKCシリケートMS58B15(商品名、三菱化学(株)製、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物のメトキシ基をn−ブチルアルコールにより15mol%交換したもの、重量平均分子量1600)
6):オクチル酸亜鉛
7):ネオスタンU−340(商品名、日東化成(株)製、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート)
なお、表2において、(A)のエポキシ基と(B)の反応性官能基との当量比は、実施例1〜実施例5の全て1.05:1.00であった。
【0055】
<比較例1〜3>
表3に記載の成分のうち、E−1、E−2成分及び二酸化チタンをサンドミルに入れて、粒度が10μm以下になるまで分散した。その後、表3に記載のその他の成分をそれぞれ添加混合しエナメル塗料とした。得られた塗料は、ソルベッソ#100(エッソ(株)製:芳香族石油ナフサ)により、フォードカップNo.4で120±10秒になるように粘度調整を行った。
【0056】
【表3】
Figure 2004043559
表中の添字は、以下のものを示す。
3)、4)、6)、7)前出と同じ。
8)上記により製造したポリエステル樹脂含有エポキシ基を含有するアクリル樹脂溶液E−1
9)上記により製造した変性エポキシ樹脂溶液E−2
【0057】
【表4】
Figure 2004043559
なお、表4において、素材、化成処理及び下塗り塗料の略号は、以下に示すものである。
素材:GL(溶融55%Al−Zn系合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)、板厚0.27mm)
化成処理:Cr(塗布型クロメート処理)
塗料:HP−32(商品名「プレカラープライマーHP−32」、日本油脂ビーエーエスエフコーティングス(株)製、エポキシ塗料)
【0058】
(実施例と比較例の評価)
塗布型クロメート処理を施された板厚0.27mmのがルバリウム鋼板に、エポキシ樹脂系のプライマー(商品名「プレカラーHP−32」、日本油脂ビーエーエスエフコーティングス(株)製)を乾燥塗膜厚が5μmになるようにロールコーターで塗装し、PMT(塗布板最高到達温度)が200℃になるような40秒間の条件で焼き付けた。次に、上塗り塗料として実施例1〜5及び比較例1〜3の塗料をロールコーターにて、乾燥塗膜厚が15μmとなるように塗装し、PMTが230℃になるような50秒間の条件で焼き付けた。
塗膜性能を表4に示すが、実施例1〜5では仕上がり外観性に優れた塗膜が得られ、また、優れた加工性(耐屈曲性)、耐衝撃性、硬度、耐水性、耐薬品性、耐候性、初期耐汚染性(30日屋外耐汚染性)、長期耐汚染性(180日屋外耐汚染性)、及び汚染除去性を示した。
比較例1では表4に示すように、塗膜は耐候性が劣っている結果となった。また、比較例2では、加工性が劣っている結果となった。さらに、比較例3では、加工性が劣っており、さらに初期耐汚染性、長期耐汚染性及び汚染除去性に劣った。
【0059】
【発明の効果】
本発明のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物は、プレコートメタルに必要とされる加工性を保持しつつ、塗膜形成直後から高度な親水性に基づく耐汚染性能を有し、さらに良好な長期耐候性、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性を有する塗膜を与えることができる。

Claims (7)

  1. (A)(a)数平均分子量が1,500〜50,000であり、且つ樹脂酸価が2〜30mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂と、(b)エポキシ基を有するビニル系重合体を構成成分として含有し、(a)/(b)の質量比が、1/99〜80/20であり、かつ(b)のエポキシ基の一部と(a)のカルボキシル基が当量比で0.1以下の割合で反応されている、水酸基を含有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂に、一般式(1):
    (R−Si−(OR4−m    (1)
    (式中のRおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、mは0又は1である。)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物が結合されている、エポキシ当量が200〜2,000g/molであるシリケート変性エポキシ基含有ポリエステル樹脂と、
    (B)一分子中にカルボキシル基、カルボン酸無水物基及びアルキルビニルエーテル化合物でブロックされたカルボキシル基の反応性官能基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物を含有することを特徴とするプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物。
  2. (C)一般式(2):
    (R−Si−(OR4−n    (2)
    (式中のR及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、nは0又は1である。)で表されるオルガノシリケート及び/又はその縮合物をさらに含有する請求項1に記載のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物。
  3. (D)オルガノシリケート及び/又はその縮合物の加水分解を促す助触媒であって、有機金属化合物、金属キレート化合物、及び有機金属石鹸から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載のプレコートメタル用耐汚染性塗料組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の耐汚染性塗料組成物を含有し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全不揮発成分100質量部当たり、顔料を0〜300質量部含有する上塗り塗料をプレコート金属板に塗装することを特徴とするプレコート金属板の塗装仕上げ方法。
  5. 金属板に下塗り塗料の塗装を施し、次に必要に応じて中塗り塗料の塗装を施して順次塗装の都度硬化させ、しかる後に請求項1〜3のいずれかに記載の耐汚染性塗料組成物を含有し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の全不揮発成分100質量部当たり、顔料を0〜300質量部含有する上塗り塗料を塗布し、加熱硬化させることを特徴とするプレコート金属板の塗装仕上げ方法。
  6. 金属板が冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板又はアルミニウム合金板である請求項5に記載のプレコート金属板の塗装仕上げ方法。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の塗装仕上げ方法により塗装された塗装物品。
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