JP2004042685A - キャスター - Google Patents
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Abstract
【課題】段差に対峙した場合でも、弾みや反動を利用することなく、軽い力で段差を登ることができるキャスターを提供する。
【解決手段】周辺に段差当接部1aおよび曲面部1bを有し、長手方向に長孔1dを形成した略トラック形状の非円形車輪1と、長孔1dを貫通し、かつ、長孔1d内を移動可能な車軸2を保持するブラケット3を有している。非円形車輪1はブラケット3を取り付けた車椅子などの進行方向に対して斜め上方に延びるように保持されており、段差当接部1aが段差に噛み合ったとき車軸2が長孔1d内を上昇し、それに追動してブラケット3も上昇して段差を乗り越える。
【選択図】 図1
【解決手段】周辺に段差当接部1aおよび曲面部1bを有し、長手方向に長孔1dを形成した略トラック形状の非円形車輪1と、長孔1dを貫通し、かつ、長孔1d内を移動可能な車軸2を保持するブラケット3を有している。非円形車輪1はブラケット3を取り付けた車椅子などの進行方向に対して斜め上方に延びるように保持されており、段差当接部1aが段差に噛み合ったとき車軸2が長孔1d内を上昇し、それに追動してブラケット3も上昇して段差を乗り越える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車椅子、台車、ショッピングカート、ベビーカーなどの移動車や運搬装置に使用されるキャスターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、車椅子を使用する高齢者や身障者向けに段差のないいわゆるバリアフリーの生活環境の整備が進んでおり、駅やデパートなど公共な場所においては段差の変わりに緩やかなスロープを形成して車椅子が段差を超えないですむようになってきている。しかしながら、このような環境は非常に少なく、多くの路面や駅、建造物では健常者向けの構造となっていて歩道縁や階段などの段差があるため車椅子で通行するのは困難であり、車椅子を押したり持ち上げてくれる介添者の協力が欠かせない。また、ショッピングカートやベビーカーを使用する人にとっても同様にショッピングカートやベビーカーを強い力で押したり、前輪を持ち上げて段差上に上げ、次に後方を持ち上げて走行させる必要があるなど使用者にとって段差は大きな障害となっている。
また、工場などで用いられる台車でも路面に配管などの段差があって上記と同様な動作で段差を越えなければならない。しかし、台車には通常重量物を載せているので、段差を乗り越えるには大きな力が必要である。
このような問題を解消するため、従来、段差に対応する補助装置を使用したキャスターがいくつか提案されている。たとえば、特開平9−58204号公報には主車輪取付部に軸の位置を浮かせて補助車輪を取り付け、段差に対して主車輪よりも補助車輪を先に作用させるものが開示されている。
また、特開平11−1102号公報には、前部車輪及び後部車輪を有し、路上の障害物が後部車輪に接触したときヨークの重心を前部車輪に近づかせて前部車輪を着地させようと下がらせ、これにより重量負担が軽減した後部車輪が障害物を乗り上げやすくする段差越え用車輪が開示されている。
また、特開2001−213110号公報には、2輪ハウジングと遊動台車支持柱を組み合わせて段差から受ける垂直方向の抵抗を水平方向に分散させる段差対応2輪キャスターが開示されている。
また、特開2001−213110号公報には、ブラケットの下端に軸部材を介してタイヤ部材とそれを支持する支持部材からなる車輪を取り付け、支持部材にタイヤ部材の回転中心より前方に伸びる長孔を設け、長孔内に軸部材を前方に摺動させて軸部材を偏心させる構成のキャスターが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の車輪やキャスターは、これらを使用しない場合に比較して車椅子やショッピングカート、ベビーカーなどを押す力は小さくなるが、段差を乗り上げる際に補助車輪や前部車輪あるいは車輪自身が直接段差にあたるので、段差上に乗り上げるときに依然として大きな力が必要である。したがって、段差の前で一旦停止して重心を移動させながら弾みをつけたり、反動を利用して段差に車輪を架けて乗り越える必要があり、女性や車椅子の利用者にとっては依然として負担が大きい。また、台車に適用した場合でも積載物への衝撃により積荷が崩れたりすることもある。
【0004】
本発明は、これらの課題を解決するもので、段差に対峙した場合でも、弾みや反動を利用することなく、キャスターが段差に押し付けられた状態で軽い力で段差を登ることができるキャスターを提供することを目的とする。
また、不要な上下運動や衝撃を発生させることがないキャスターを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明のキャスターは、周辺に段差当接部および曲面部を有し、長手方向に長孔を形成した非円形車輪と、前記長孔を貫通し、かつ、前記長孔内を移動可能な車軸を保持するブラケットを有することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪を、進行方向側に位置する一端部を他端部に対して斜め上方に配置させる保持手段を有することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のキャスターにおいて、前記保持手段として、前記非円形車輪が前記車軸に沿ってスライドすることを防止するスライドストッパと、前記非円形車輪が前記車軸を中心に下方に回転することを防止する回転ストッパを有することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪の回転をガイドするホイールガイドを有することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪が段差と接触したときに前記非円形車輪が浮き上がることを防止するリフトストッパを有することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記車軸に平行な回転軸を前記ブラケットに設け、前記回転軸に円形車輪を回転自在に取り付けたことを特徴とする。
請求項7に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪を中空構造とし、前記中空構造内において円形車輪を前記車軸に軸支したことを特徴とする。
請求項8に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記長孔が直線形状であることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記長孔がS字形状であることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記ブラケットは支軸に支持されており、前記支軸に対して回転自在であることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明の段差走行方法は、円形車輪の車軸を保持するブラケットと、前記ブラケットを上方へ押し上げるリフティング部材とを備え、平地走行時には前記円形車輪によって走行を行う段差走行方法であって、低地面から高地面への段差走行時には、前記リフティング部材を段差に当接させる第1のステップと、前記第1のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記リフティング部材を前記低地面に接地させる第2のステップと、前記第2のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記円形車輪を前記低地面から前記高地面に移動させる第3のステップと、前記円形車輪の前記高地面への移動によって、前記リフティング部材を前記低地面および前記段差から離間させる第4のステップとを有することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態によるキャスターは、周辺に段差当接部および曲面部を有し、長手方向に長孔を形成した非円形車輪と、この長孔内を移動可能な車軸を保持するブラケットを有しているので、非円形車輪の段差当接部を段差に噛み合った状態で長孔内を斜め上方に車軸を移動させることによりブラケットが段差を登り、段差を乗り越えることができる。したがって、軽い力で不要な上下運動や衝撃を発生させることなく段差を登ることができるキャスターを提供することができる。
【0007】
本発明の第2の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪を、進行方向側に位置する一端部を他端部に対して斜め上方に配置させる保持手段を有しているので、非円形車輪を確実に段差に対峙させることができる。
【0008】
本発明の第3の実施の形態によるキャスターは、第2の実施の形態によるキャスターにおいて、保持手段として、非円形車輪が車軸に沿ってスライドすることを防止するスライドストッパと、非円形車輪が車軸を中心に下方に回転することを防止する回転ストッパを有しているので、非円形車輪を簡単な構成で確実に保持することができる。
【0009】
本発明の第4の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪の回転をガイドするホイールガイドを有しているので、非円形車輪の回転を所定の状態で確実に行わせることができる。
【0010】
本発明の第5の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪が段差と接触したときに非円形車輪が浮き上がることを防止するリフトストッパを有しているので、車軸を長孔内で確実に斜め上方に移動させることができる。
【0011】
本発明の第6の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、車軸に平行な回転軸をブラケットに設け、前記回転軸に円形車輪を回転自在に取り付けたので、ブラケットの移動とともに円形車輪も同時に段差を登らせることができる。
【0012】
本発明の第7の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪を中空構造とし、中空構造内において円形車輪を車軸に軸支しているので、段差対応キャスターの重量を小さくすることができる。
【0013】
本発明の第8の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、長孔が直線形状であるので、車軸の長孔内での移動を直線状にガイドして小さい力で確実に斜め上方に移動させることができる。
【0014】
本発明の第9の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、長孔がS字形状であるので、車軸の長孔内での移動を一層小さい力で確実に斜め上方に移動させることができる。
【0015】
本発明の第10の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、ブラケットが支軸に支持されており、この支軸に対して回転自在であるので、進行方向を自由に変更させることができる。
【0016】
本発明の第11の実施の形態による段差走行方法は、低地面から高地面への段差走行時には、前記リフティング部材を段差に当接させる第1のステップと、前記第1のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記リフティング部材を前記低地面に接地させる第2のステップと、前記第2のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記円形車輪を前記低地面から前記高地面に移動させる第3のステップと、前記円形車輪の前記高地面への移動によって、前記リフティング部材を前記低地面および前記段差から離間させる第4のステップとを有するので、段差走行時には、リフティング部材を段差と低地面とに当接させた状態で、円形車輪を保持するブラケットを低地面から高地面に移動させることができ、段差を登る際の衝撃を緩和し、低地面から高地面への移動をスムーズに行わせることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は本発明の一実施例によるキャスターの構成を示す右側面図、図2は本実施例によるキャスターの構成を示す左側面図、図3は本実施例によるキャスターの構成を示す正面図である。ブラケット3は側面から見たときキャスター20の進行方向側の前面が後面よりも上下寸法が短い形状をしている。従って、ブラケット3を側面から見たとき、ブラケット3の下端辺は後面から前面に向かって斜め上方に延びるように形成されている。また、ブラケット3の両側面には、後面側近辺に車軸2が設けられている。
【0018】
ブラケット3内には非円形車輪(リフティング部材)1が取り付けられる。図4はこの非円形車輪の側面図である。
非円形車輪1は、概略的には陸上競技のトラック形状に類似した形状をしており、キャスター20の進行方向側に位置する一端部が他端部に対して斜め上方に配置させて取り付けられている。非円形車輪1は、そのトラック形状の直線部に相当する長辺部に鋸歯状の段部からなる段差当接部1aが形成され、トラック形状のコーナー部に相当する円形部は偏心した形状の曲面部1bが形成され、全体として中点1cに対して対称となる形状に形成されている。なお、段差当接部1aは、段差とのグリップ力を高めるために段部によって形成されることが好ましいが、直線状または蛇行状であってもよい。非円形車輪1の中央部には長手方向に沿って所定長さのスリット状の長孔1dが形成され、この長孔1d内に車軸2が貫通しており、車軸2は長孔1d内を摺動自在に移動可能で回転可能に形成されている。また、非円形車輪1の両端部近辺にはそれぞれボス1eが突出して設けられている。曲面部1bは、車軸2が長孔1dの下端部にある状態で、下方側から上方側に向かって車軸2からの距離が徐々に大きくなるように変化している。ここで、車軸2が長孔1dの下端部にある状態で、車軸2の中心から段差当接部1a側の曲面部1bの終端までの距離をd1、車軸2の中心から下端までの距離をd3、d1からd3までの間の車軸2から周縁までの距離をd2としたときd1>d2>d3となるように設定されている。
【0019】
ブラケット3の両外側の後端部中央付近に、車軸2と平行な回転軸13、14が設けられ、この回転軸13、14に円形車輪9a、9bが回転自在に設けられる。非円形車輪1の最下面は、通常(段差走行時以外の状態)は円形車輪9a、9bの最下面より上方に位置し、円形車輪9a、9bが路面に接地している状態では非円形車輪1は路面に接地しない。
なお、円形車輪9a、9bはいずれか1つを設けるようにしてもよい。
ブラケット3の一方の側面には、その側面の内面であって進行方向側に、スライドストッパ4および回転ストッパ6が形成されている。また、ブラケット3の他方の側面には、その側面の内面であって進行方向側に、ホイールガイド7およびリフトストッパ8が形成されている。スライドストッパ4および回転ストッパ6は、非円形車輪1を所定の位置に保持する保持手段として機能する。つまりスライドストッパ4および回転ストッパ6は、進行方向側に位置する非円形車輪1の一端部が非円形車輪1の他端部に対して斜め上方に配置するように非円形車輪1を保持する。またスライドストッパ4および回転ストッパ6は、路面に段差がない平坦な状態で、非円形車輪1が自重によって落下しないようにして、非円形車輪1を路面から浮かせて保持する。一方、ホイールガイド7およびリフトストッパ8は、例えば非円形車輪1が路面の段差に当接したときの衝撃等によって生じる非円形車輪1の進行方向側に位置する一端部の浮き上がりを防止する。
【0020】
スライドストッパ4は、1本のバネ5で正方向と逆方向のどちらへも傾斜できるよう2つの動作支点4a、4bを備えている。なお、スライドストッパ4は、正方向(進行方向と逆方向)へのボス1eの移動に対する保持力と、逆方向(進行方向)へのボス1eの移動に対する保持力に差をもたせるためにバネポストの位置を2つの動作支点4a、4bの中心より動作支点4b側にオフセットさせている。正方向へのボス1eの移動に対する保持力は、非円形車輪1の重量を支えるのに十分なものでなければならない。なお、正方向だけでなく逆方向へのボス1eの移動に対する保持力を加えることで、スライドストッパ4から生じる振動や騒音を防止することができる。
スライドストッパ4は、非円形車輪1が正方向へスライドする際には動作支点4aを中心に動作し、非円形車輪1が逆方向へスライドする際には動作支点4bを中心に動作する。なお、非円形車輪1の逆方向へのスライドを可能とすることで、利用者が段差を登っている途中で力尽きた場合などにバックすることができる。
またスライドストッパ4は、非円形車輪1が回転中にスライドを起こさないよう規制するホイールガイド4cの機能を備えている。また、このホイールガイド4cは、スライドの規制機能だけでなく、リフトストッパ8の動作位置決めの機能も有する。
ブラケット3は、支軸11に対して回転自在に取り付けられ、支軸11は、キャスター20を取り付ける移動車や運搬装置の脚部に固定する。
【0021】
図5は本実施例によるキャスター20を車椅子21に取り付けた状態を示す。
キャスター20は、車椅子21の車輪22の進行方向に対して前方位置に取り付けられる。なお、キャスター20の取り付け位置は、通常取り付けられているキャスターの位置に取り付けることができる。従って、車椅子21の既存のキャスターを取り外してその位置に取り付けるようにすることもできる。
【0022】
つぎに本発明のキャスター20の動作を図5に示した車椅子21に取り付けた状態で説明する。
車椅子21が平坦な路面12aを進行しているときは、キャスター20は図6、図7に示す状態と同じである。すなわち、円形車輪9a、9bは路面(低地面)12aに接地し、非円形車輪1は路面12aから離れている。このように非円形車輪1が路面12aに接地していない状態とすることで、円形車輪9a、9bの回転により車椅子21はスムーズに進行する。
車椅子21が進行してキャスター20が路面12aと路面(高地面)12bとの間の段差による側壁にあたると、非円形車輪1の段差当接部1aが路面12bの角部に当たる。このとき非円形車輪1は、まだ路面12aに接地していない。
この状態で車椅子21をさらに進行させると、キャスター20は図8に示すように非円形車輪1が段差から反力を受け、非円形車輪1の上方のボス1eがスライドストッパ4を押しのけ、非円形車輪1はブラケット3に対して進行方向と逆方向に移動して路面12aに接地する。なお、非円形車輪1はボス1eがリフトストッパ8に当接するので上方に浮き上がることはない。この結果、非円形車輪1は路面12aと段差12b間に斜めに架設された状態になる。
この状態からさらに車椅子21を進行させると、車軸2は、ブラケット3の進行方向への移動にともなって非円形車輪1の長孔1d内を案内されてキャスター20の進行方向に向かって移動する。従って、キャスター20は図9に示すように、円形車輪9a、9bおよび車椅子21は路面12bに向かって登りはじめる。車軸2が長孔1dの上方端部に達するとブラケット3の登りは終了する。この場合、円形車輪9a、9bの外周を非円形車輪1の外周より進行方向へはみ出さないように設計することにより段差を登っている際に円形車輪9a、9bが段差と接触することを防止できる。従って、円形車輪9a、9bが段差と接触することによる衝撃の発生や、段差を登っている途中での抵抗を受けることはない。なお、段差が図示の場合よりも低い場合には車軸2は、長孔1dの上端まで達しない。
この状態でさらに車椅子21を進行させると、非円形車輪1の上端側は路面12bに接地しているので、非円形車輪1に加わる重心の移動によって、非円形車輪1は車軸2を中心にしてその下端側が上方(矢印A方向)に回転を開始する。この結果、非円形車輪1の段差当接部1aが段差から離れ、非円形車輪1の曲面部1bと路面12bとの摩擦により非円形車輪1の矢印A方向の回転はさらに続く。非円形車輪1の曲面部1bは、図3で説明したように、d1>d2>d3となるように設定されているので、非円形車輪1の回転につれて円形車輪9a、9bは徐々に路面12bに近づき、非円形車輪1が垂直状態を過ぎて自重で回転を続けられる角度まで回転が進むと円形車輪9a、9bは路面12bに接地する。
【0023】
図10および図11は円形車輪9a、9bが路面12bに接地した瞬間の状態を示す。円形車輪9a、9bが路面12bに接地した後も非円形車輪1はさらに回転を続けて路面12bから離れはじめる。このとき、図11に示すように、上方のボス1eがホイールガイド7の周面に沿って、かつ、ホイールガイド7とリフトストッパ8間を移動しながら回転するので、非円形車輪1はスライドすることなく回転を続ける。非円形車輪1が図6、図7に示した位置に達するまで回転すると、ボス1eはホイールガイド7とリフトストッパ8からはずれ、回転ストッパ6にあたって回転は終了する。同時にスライドストッパ4によりスライドを規制されて保持され、段差を登る前の元の状態に復帰して次の段差に備える。
【0024】
(実施例2)
本発明によるキャスターの第2の実施例を図12および図13に示す。実施例1においては、ブラケット3の外側に円形車輪を設けた例であるが、本実施例は円形車輪を非円形車輪1に内包させた例である。図12、図13において、図1および図3と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。本実施例においては、非円形車輪10を中空構造とし、この中空構造内において車軸2に円形車輪9を軸支する。円形車輪9の外径は車軸2が長孔1aの両端位置にあるときに円形車輪9の外周が非円形車輪10の外周からはみ出すような大きさに設定される。その他の構成および動作は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0025】
(実施例3)
図14は本発明によるキャスターの第3の実施例における非円形車輪の構成を示す。図14において、図4と同一部分には同一符号を付す。本実施例においては、非円形車輪15の外周形状は図4の場合と同一であるが、長孔15dの形状を略S字型にする。この構成によれば、キャスター20の進行につれて車軸2が長孔15d内を進行する際の衝撃を吸収して車軸2の長孔15d内の進行をスムーズに行わせることができ、より小さい力で段差を登ることができる。キャスターのその他の構成および動作は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0026】
(実施例4)
実施例1〜3におけるキャスターはいずれも円形車輪9、9a、9bを設けた構成であるが、本実施例は実施例1〜3の構成から円形車輪9、9a、9bを省略し、円形車輪として車椅子その他の移動車や運搬装置に既設の物を利用する構成である。この場合、車軸2としては、円形車輪9、9a、9bの代わりに移動車や運搬装置に既設の車軸や、移動車や運搬装置に別途設けた断面円形のロッドを使用し、これらの車軸やロッドの移動と移動車や運搬装置の移動を連動させる構成とする。この構成は車輪を有していないので移動車や運搬装置を段差に登らせる段差走行装置として作用する。
この実施例における動作は、実施例1で説明した動作における円形車輪9a、9bの動作を省略した動作であるので詳細な動作説明は省略する。
この実施例は、電動カートの車輪のように車輪以外の機構が組み込まれているため車輪の交換が困難なものの場合に、既存の車輪を残したまま本発明によるキャスターの円形車輪を省略した構成を取り付ける場合などに好適である。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によるキャスターは、車椅子、台車、ショッピングカート、ベビーカーなどの移動車や運搬装置に適用した場合に、段差の高さや大きさに関係なく非円形車輪の長孔の傾斜に応じた一定の小さな力で段差や障害物を乗り越えることができる。したがって、段差の手前で弾みをつけたり反動を利用する必要がなく、衝撃や力の負担、揺れが軽減されて、安全で心地よい走行をすることができる。
また、車椅子、台車、ショッピングカート、ベビーカーなどの移動車や運搬装置に既存のキャスターや固定車輪と互換性があるので、既存のキャスターや固定車輪と交換して間単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例におけるキャスターの構成を示す右側面図
【図2】本発明の第1の実施例におけるキャスターの構成を示す左側面図
【図3】本発明の第1の実施例におけるキャスターの構成を示す正面図
【図4】本発明の第1の実施例におけるキャスターに使用される非円形車輪の側面図
【図5】本発明の第1の実施例におけるキャスターを車椅子に取り付けたときの側面図
【図6】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が段差に当接したときの右側面図
【図7】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が段差に当接したときの左側面図
【図8】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、ブラケットが段差を登り始めたときの右側面図
【図9】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、ブラケットが段差を登り終わったときの右側面図
【図10】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が回転して車輪が段差上面に接地したときの右側面図
【図11】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が回転して車輪が段差上面に接地したときの左側面図
【図12】本発明の第2の実施例におけるキャスターの構成を示す右側面図
【図13】本発明の第2の実施例におけるキャスターの構成を示す正面図
【図14】本発明の第3の実施例におけるキャスターに使用される非円形車輪の側面図
【符号の説明】
1、10、15 非円形車輪
1a 段差当接部
1b 曲面部
1c 中点
1d、15d 長孔
1e ボス
2 車軸
3 ブラケット
4 スライドストッパ
5 バネ
6 回転ストッパ
7 ホイールガイド7
8 リフトストッパ
9、9a、9b 円形車輪
11 支軸
12a 路面
12b 段差
13、14 回転軸
20 キャスター
21 車椅子
【発明の属する技術分野】
本発明は車椅子、台車、ショッピングカート、ベビーカーなどの移動車や運搬装置に使用されるキャスターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、車椅子を使用する高齢者や身障者向けに段差のないいわゆるバリアフリーの生活環境の整備が進んでおり、駅やデパートなど公共な場所においては段差の変わりに緩やかなスロープを形成して車椅子が段差を超えないですむようになってきている。しかしながら、このような環境は非常に少なく、多くの路面や駅、建造物では健常者向けの構造となっていて歩道縁や階段などの段差があるため車椅子で通行するのは困難であり、車椅子を押したり持ち上げてくれる介添者の協力が欠かせない。また、ショッピングカートやベビーカーを使用する人にとっても同様にショッピングカートやベビーカーを強い力で押したり、前輪を持ち上げて段差上に上げ、次に後方を持ち上げて走行させる必要があるなど使用者にとって段差は大きな障害となっている。
また、工場などで用いられる台車でも路面に配管などの段差があって上記と同様な動作で段差を越えなければならない。しかし、台車には通常重量物を載せているので、段差を乗り越えるには大きな力が必要である。
このような問題を解消するため、従来、段差に対応する補助装置を使用したキャスターがいくつか提案されている。たとえば、特開平9−58204号公報には主車輪取付部に軸の位置を浮かせて補助車輪を取り付け、段差に対して主車輪よりも補助車輪を先に作用させるものが開示されている。
また、特開平11−1102号公報には、前部車輪及び後部車輪を有し、路上の障害物が後部車輪に接触したときヨークの重心を前部車輪に近づかせて前部車輪を着地させようと下がらせ、これにより重量負担が軽減した後部車輪が障害物を乗り上げやすくする段差越え用車輪が開示されている。
また、特開2001−213110号公報には、2輪ハウジングと遊動台車支持柱を組み合わせて段差から受ける垂直方向の抵抗を水平方向に分散させる段差対応2輪キャスターが開示されている。
また、特開2001−213110号公報には、ブラケットの下端に軸部材を介してタイヤ部材とそれを支持する支持部材からなる車輪を取り付け、支持部材にタイヤ部材の回転中心より前方に伸びる長孔を設け、長孔内に軸部材を前方に摺動させて軸部材を偏心させる構成のキャスターが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の車輪やキャスターは、これらを使用しない場合に比較して車椅子やショッピングカート、ベビーカーなどを押す力は小さくなるが、段差を乗り上げる際に補助車輪や前部車輪あるいは車輪自身が直接段差にあたるので、段差上に乗り上げるときに依然として大きな力が必要である。したがって、段差の前で一旦停止して重心を移動させながら弾みをつけたり、反動を利用して段差に車輪を架けて乗り越える必要があり、女性や車椅子の利用者にとっては依然として負担が大きい。また、台車に適用した場合でも積載物への衝撃により積荷が崩れたりすることもある。
【0004】
本発明は、これらの課題を解決するもので、段差に対峙した場合でも、弾みや反動を利用することなく、キャスターが段差に押し付けられた状態で軽い力で段差を登ることができるキャスターを提供することを目的とする。
また、不要な上下運動や衝撃を発生させることがないキャスターを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明のキャスターは、周辺に段差当接部および曲面部を有し、長手方向に長孔を形成した非円形車輪と、前記長孔を貫通し、かつ、前記長孔内を移動可能な車軸を保持するブラケットを有することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪を、進行方向側に位置する一端部を他端部に対して斜め上方に配置させる保持手段を有することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のキャスターにおいて、前記保持手段として、前記非円形車輪が前記車軸に沿ってスライドすることを防止するスライドストッパと、前記非円形車輪が前記車軸を中心に下方に回転することを防止する回転ストッパを有することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪の回転をガイドするホイールガイドを有することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪が段差と接触したときに前記非円形車輪が浮き上がることを防止するリフトストッパを有することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記車軸に平行な回転軸を前記ブラケットに設け、前記回転軸に円形車輪を回転自在に取り付けたことを特徴とする。
請求項7に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記非円形車輪を中空構造とし、前記中空構造内において円形車輪を前記車軸に軸支したことを特徴とする。
請求項8に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記長孔が直線形状であることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記長孔がS字形状であることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、請求項1に記載のキャスターにおいて、前記ブラケットは支軸に支持されており、前記支軸に対して回転自在であることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明の段差走行方法は、円形車輪の車軸を保持するブラケットと、前記ブラケットを上方へ押し上げるリフティング部材とを備え、平地走行時には前記円形車輪によって走行を行う段差走行方法であって、低地面から高地面への段差走行時には、前記リフティング部材を段差に当接させる第1のステップと、前記第1のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記リフティング部材を前記低地面に接地させる第2のステップと、前記第2のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記円形車輪を前記低地面から前記高地面に移動させる第3のステップと、前記円形車輪の前記高地面への移動によって、前記リフティング部材を前記低地面および前記段差から離間させる第4のステップとを有することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態によるキャスターは、周辺に段差当接部および曲面部を有し、長手方向に長孔を形成した非円形車輪と、この長孔内を移動可能な車軸を保持するブラケットを有しているので、非円形車輪の段差当接部を段差に噛み合った状態で長孔内を斜め上方に車軸を移動させることによりブラケットが段差を登り、段差を乗り越えることができる。したがって、軽い力で不要な上下運動や衝撃を発生させることなく段差を登ることができるキャスターを提供することができる。
【0007】
本発明の第2の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪を、進行方向側に位置する一端部を他端部に対して斜め上方に配置させる保持手段を有しているので、非円形車輪を確実に段差に対峙させることができる。
【0008】
本発明の第3の実施の形態によるキャスターは、第2の実施の形態によるキャスターにおいて、保持手段として、非円形車輪が車軸に沿ってスライドすることを防止するスライドストッパと、非円形車輪が車軸を中心に下方に回転することを防止する回転ストッパを有しているので、非円形車輪を簡単な構成で確実に保持することができる。
【0009】
本発明の第4の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪の回転をガイドするホイールガイドを有しているので、非円形車輪の回転を所定の状態で確実に行わせることができる。
【0010】
本発明の第5の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪が段差と接触したときに非円形車輪が浮き上がることを防止するリフトストッパを有しているので、車軸を長孔内で確実に斜め上方に移動させることができる。
【0011】
本発明の第6の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、車軸に平行な回転軸をブラケットに設け、前記回転軸に円形車輪を回転自在に取り付けたので、ブラケットの移動とともに円形車輪も同時に段差を登らせることができる。
【0012】
本発明の第7の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、非円形車輪を中空構造とし、中空構造内において円形車輪を車軸に軸支しているので、段差対応キャスターの重量を小さくすることができる。
【0013】
本発明の第8の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、長孔が直線形状であるので、車軸の長孔内での移動を直線状にガイドして小さい力で確実に斜め上方に移動させることができる。
【0014】
本発明の第9の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、長孔がS字形状であるので、車軸の長孔内での移動を一層小さい力で確実に斜め上方に移動させることができる。
【0015】
本発明の第10の実施の形態によるキャスターは、第1の実施の形態によるキャスターにおいて、ブラケットが支軸に支持されており、この支軸に対して回転自在であるので、進行方向を自由に変更させることができる。
【0016】
本発明の第11の実施の形態による段差走行方法は、低地面から高地面への段差走行時には、前記リフティング部材を段差に当接させる第1のステップと、前記第1のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記リフティング部材を前記低地面に接地させる第2のステップと、前記第2のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記円形車輪を前記低地面から前記高地面に移動させる第3のステップと、前記円形車輪の前記高地面への移動によって、前記リフティング部材を前記低地面および前記段差から離間させる第4のステップとを有するので、段差走行時には、リフティング部材を段差と低地面とに当接させた状態で、円形車輪を保持するブラケットを低地面から高地面に移動させることができ、段差を登る際の衝撃を緩和し、低地面から高地面への移動をスムーズに行わせることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は本発明の一実施例によるキャスターの構成を示す右側面図、図2は本実施例によるキャスターの構成を示す左側面図、図3は本実施例によるキャスターの構成を示す正面図である。ブラケット3は側面から見たときキャスター20の進行方向側の前面が後面よりも上下寸法が短い形状をしている。従って、ブラケット3を側面から見たとき、ブラケット3の下端辺は後面から前面に向かって斜め上方に延びるように形成されている。また、ブラケット3の両側面には、後面側近辺に車軸2が設けられている。
【0018】
ブラケット3内には非円形車輪(リフティング部材)1が取り付けられる。図4はこの非円形車輪の側面図である。
非円形車輪1は、概略的には陸上競技のトラック形状に類似した形状をしており、キャスター20の進行方向側に位置する一端部が他端部に対して斜め上方に配置させて取り付けられている。非円形車輪1は、そのトラック形状の直線部に相当する長辺部に鋸歯状の段部からなる段差当接部1aが形成され、トラック形状のコーナー部に相当する円形部は偏心した形状の曲面部1bが形成され、全体として中点1cに対して対称となる形状に形成されている。なお、段差当接部1aは、段差とのグリップ力を高めるために段部によって形成されることが好ましいが、直線状または蛇行状であってもよい。非円形車輪1の中央部には長手方向に沿って所定長さのスリット状の長孔1dが形成され、この長孔1d内に車軸2が貫通しており、車軸2は長孔1d内を摺動自在に移動可能で回転可能に形成されている。また、非円形車輪1の両端部近辺にはそれぞれボス1eが突出して設けられている。曲面部1bは、車軸2が長孔1dの下端部にある状態で、下方側から上方側に向かって車軸2からの距離が徐々に大きくなるように変化している。ここで、車軸2が長孔1dの下端部にある状態で、車軸2の中心から段差当接部1a側の曲面部1bの終端までの距離をd1、車軸2の中心から下端までの距離をd3、d1からd3までの間の車軸2から周縁までの距離をd2としたときd1>d2>d3となるように設定されている。
【0019】
ブラケット3の両外側の後端部中央付近に、車軸2と平行な回転軸13、14が設けられ、この回転軸13、14に円形車輪9a、9bが回転自在に設けられる。非円形車輪1の最下面は、通常(段差走行時以外の状態)は円形車輪9a、9bの最下面より上方に位置し、円形車輪9a、9bが路面に接地している状態では非円形車輪1は路面に接地しない。
なお、円形車輪9a、9bはいずれか1つを設けるようにしてもよい。
ブラケット3の一方の側面には、その側面の内面であって進行方向側に、スライドストッパ4および回転ストッパ6が形成されている。また、ブラケット3の他方の側面には、その側面の内面であって進行方向側に、ホイールガイド7およびリフトストッパ8が形成されている。スライドストッパ4および回転ストッパ6は、非円形車輪1を所定の位置に保持する保持手段として機能する。つまりスライドストッパ4および回転ストッパ6は、進行方向側に位置する非円形車輪1の一端部が非円形車輪1の他端部に対して斜め上方に配置するように非円形車輪1を保持する。またスライドストッパ4および回転ストッパ6は、路面に段差がない平坦な状態で、非円形車輪1が自重によって落下しないようにして、非円形車輪1を路面から浮かせて保持する。一方、ホイールガイド7およびリフトストッパ8は、例えば非円形車輪1が路面の段差に当接したときの衝撃等によって生じる非円形車輪1の進行方向側に位置する一端部の浮き上がりを防止する。
【0020】
スライドストッパ4は、1本のバネ5で正方向と逆方向のどちらへも傾斜できるよう2つの動作支点4a、4bを備えている。なお、スライドストッパ4は、正方向(進行方向と逆方向)へのボス1eの移動に対する保持力と、逆方向(進行方向)へのボス1eの移動に対する保持力に差をもたせるためにバネポストの位置を2つの動作支点4a、4bの中心より動作支点4b側にオフセットさせている。正方向へのボス1eの移動に対する保持力は、非円形車輪1の重量を支えるのに十分なものでなければならない。なお、正方向だけでなく逆方向へのボス1eの移動に対する保持力を加えることで、スライドストッパ4から生じる振動や騒音を防止することができる。
スライドストッパ4は、非円形車輪1が正方向へスライドする際には動作支点4aを中心に動作し、非円形車輪1が逆方向へスライドする際には動作支点4bを中心に動作する。なお、非円形車輪1の逆方向へのスライドを可能とすることで、利用者が段差を登っている途中で力尽きた場合などにバックすることができる。
またスライドストッパ4は、非円形車輪1が回転中にスライドを起こさないよう規制するホイールガイド4cの機能を備えている。また、このホイールガイド4cは、スライドの規制機能だけでなく、リフトストッパ8の動作位置決めの機能も有する。
ブラケット3は、支軸11に対して回転自在に取り付けられ、支軸11は、キャスター20を取り付ける移動車や運搬装置の脚部に固定する。
【0021】
図5は本実施例によるキャスター20を車椅子21に取り付けた状態を示す。
キャスター20は、車椅子21の車輪22の進行方向に対して前方位置に取り付けられる。なお、キャスター20の取り付け位置は、通常取り付けられているキャスターの位置に取り付けることができる。従って、車椅子21の既存のキャスターを取り外してその位置に取り付けるようにすることもできる。
【0022】
つぎに本発明のキャスター20の動作を図5に示した車椅子21に取り付けた状態で説明する。
車椅子21が平坦な路面12aを進行しているときは、キャスター20は図6、図7に示す状態と同じである。すなわち、円形車輪9a、9bは路面(低地面)12aに接地し、非円形車輪1は路面12aから離れている。このように非円形車輪1が路面12aに接地していない状態とすることで、円形車輪9a、9bの回転により車椅子21はスムーズに進行する。
車椅子21が進行してキャスター20が路面12aと路面(高地面)12bとの間の段差による側壁にあたると、非円形車輪1の段差当接部1aが路面12bの角部に当たる。このとき非円形車輪1は、まだ路面12aに接地していない。
この状態で車椅子21をさらに進行させると、キャスター20は図8に示すように非円形車輪1が段差から反力を受け、非円形車輪1の上方のボス1eがスライドストッパ4を押しのけ、非円形車輪1はブラケット3に対して進行方向と逆方向に移動して路面12aに接地する。なお、非円形車輪1はボス1eがリフトストッパ8に当接するので上方に浮き上がることはない。この結果、非円形車輪1は路面12aと段差12b間に斜めに架設された状態になる。
この状態からさらに車椅子21を進行させると、車軸2は、ブラケット3の進行方向への移動にともなって非円形車輪1の長孔1d内を案内されてキャスター20の進行方向に向かって移動する。従って、キャスター20は図9に示すように、円形車輪9a、9bおよび車椅子21は路面12bに向かって登りはじめる。車軸2が長孔1dの上方端部に達するとブラケット3の登りは終了する。この場合、円形車輪9a、9bの外周を非円形車輪1の外周より進行方向へはみ出さないように設計することにより段差を登っている際に円形車輪9a、9bが段差と接触することを防止できる。従って、円形車輪9a、9bが段差と接触することによる衝撃の発生や、段差を登っている途中での抵抗を受けることはない。なお、段差が図示の場合よりも低い場合には車軸2は、長孔1dの上端まで達しない。
この状態でさらに車椅子21を進行させると、非円形車輪1の上端側は路面12bに接地しているので、非円形車輪1に加わる重心の移動によって、非円形車輪1は車軸2を中心にしてその下端側が上方(矢印A方向)に回転を開始する。この結果、非円形車輪1の段差当接部1aが段差から離れ、非円形車輪1の曲面部1bと路面12bとの摩擦により非円形車輪1の矢印A方向の回転はさらに続く。非円形車輪1の曲面部1bは、図3で説明したように、d1>d2>d3となるように設定されているので、非円形車輪1の回転につれて円形車輪9a、9bは徐々に路面12bに近づき、非円形車輪1が垂直状態を過ぎて自重で回転を続けられる角度まで回転が進むと円形車輪9a、9bは路面12bに接地する。
【0023】
図10および図11は円形車輪9a、9bが路面12bに接地した瞬間の状態を示す。円形車輪9a、9bが路面12bに接地した後も非円形車輪1はさらに回転を続けて路面12bから離れはじめる。このとき、図11に示すように、上方のボス1eがホイールガイド7の周面に沿って、かつ、ホイールガイド7とリフトストッパ8間を移動しながら回転するので、非円形車輪1はスライドすることなく回転を続ける。非円形車輪1が図6、図7に示した位置に達するまで回転すると、ボス1eはホイールガイド7とリフトストッパ8からはずれ、回転ストッパ6にあたって回転は終了する。同時にスライドストッパ4によりスライドを規制されて保持され、段差を登る前の元の状態に復帰して次の段差に備える。
【0024】
(実施例2)
本発明によるキャスターの第2の実施例を図12および図13に示す。実施例1においては、ブラケット3の外側に円形車輪を設けた例であるが、本実施例は円形車輪を非円形車輪1に内包させた例である。図12、図13において、図1および図3と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。本実施例においては、非円形車輪10を中空構造とし、この中空構造内において車軸2に円形車輪9を軸支する。円形車輪9の外径は車軸2が長孔1aの両端位置にあるときに円形車輪9の外周が非円形車輪10の外周からはみ出すような大きさに設定される。その他の構成および動作は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0025】
(実施例3)
図14は本発明によるキャスターの第3の実施例における非円形車輪の構成を示す。図14において、図4と同一部分には同一符号を付す。本実施例においては、非円形車輪15の外周形状は図4の場合と同一であるが、長孔15dの形状を略S字型にする。この構成によれば、キャスター20の進行につれて車軸2が長孔15d内を進行する際の衝撃を吸収して車軸2の長孔15d内の進行をスムーズに行わせることができ、より小さい力で段差を登ることができる。キャスターのその他の構成および動作は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0026】
(実施例4)
実施例1〜3におけるキャスターはいずれも円形車輪9、9a、9bを設けた構成であるが、本実施例は実施例1〜3の構成から円形車輪9、9a、9bを省略し、円形車輪として車椅子その他の移動車や運搬装置に既設の物を利用する構成である。この場合、車軸2としては、円形車輪9、9a、9bの代わりに移動車や運搬装置に既設の車軸や、移動車や運搬装置に別途設けた断面円形のロッドを使用し、これらの車軸やロッドの移動と移動車や運搬装置の移動を連動させる構成とする。この構成は車輪を有していないので移動車や運搬装置を段差に登らせる段差走行装置として作用する。
この実施例における動作は、実施例1で説明した動作における円形車輪9a、9bの動作を省略した動作であるので詳細な動作説明は省略する。
この実施例は、電動カートの車輪のように車輪以外の機構が組み込まれているため車輪の交換が困難なものの場合に、既存の車輪を残したまま本発明によるキャスターの円形車輪を省略した構成を取り付ける場合などに好適である。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によるキャスターは、車椅子、台車、ショッピングカート、ベビーカーなどの移動車や運搬装置に適用した場合に、段差の高さや大きさに関係なく非円形車輪の長孔の傾斜に応じた一定の小さな力で段差や障害物を乗り越えることができる。したがって、段差の手前で弾みをつけたり反動を利用する必要がなく、衝撃や力の負担、揺れが軽減されて、安全で心地よい走行をすることができる。
また、車椅子、台車、ショッピングカート、ベビーカーなどの移動車や運搬装置に既存のキャスターや固定車輪と互換性があるので、既存のキャスターや固定車輪と交換して間単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例におけるキャスターの構成を示す右側面図
【図2】本発明の第1の実施例におけるキャスターの構成を示す左側面図
【図3】本発明の第1の実施例におけるキャスターの構成を示す正面図
【図4】本発明の第1の実施例におけるキャスターに使用される非円形車輪の側面図
【図5】本発明の第1の実施例におけるキャスターを車椅子に取り付けたときの側面図
【図6】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が段差に当接したときの右側面図
【図7】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が段差に当接したときの左側面図
【図8】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、ブラケットが段差を登り始めたときの右側面図
【図9】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、ブラケットが段差を登り終わったときの右側面図
【図10】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が回転して車輪が段差上面に接地したときの右側面図
【図11】本発明の第1の実施例におけるキャスターの動作を説明するための図で、非円形車輪が回転して車輪が段差上面に接地したときの左側面図
【図12】本発明の第2の実施例におけるキャスターの構成を示す右側面図
【図13】本発明の第2の実施例におけるキャスターの構成を示す正面図
【図14】本発明の第3の実施例におけるキャスターに使用される非円形車輪の側面図
【符号の説明】
1、10、15 非円形車輪
1a 段差当接部
1b 曲面部
1c 中点
1d、15d 長孔
1e ボス
2 車軸
3 ブラケット
4 スライドストッパ
5 バネ
6 回転ストッパ
7 ホイールガイド7
8 リフトストッパ
9、9a、9b 円形車輪
11 支軸
12a 路面
12b 段差
13、14 回転軸
20 キャスター
21 車椅子
Claims (11)
- 周辺に段差当接部および曲面部を有し、長手方向に長孔を形成した非円形車輪と、前記長孔を貫通し、かつ、前記長孔内を移動可能な車軸を保持するブラケットとを有することを特徴とするキャスター。
- 前記非円形車輪を、進行方向側に位置する一端部を他端部に対して斜め上方に配置させる保持手段を有することを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記保持手段として、前記非円形車輪が前記車軸に沿ってスライドすることを防止するスライドストッパと、前記非円形車輪が前記車軸を中心に下方に回転することを防止する回転ストッパを有することを特徴とする請求項2に記載のキャスター。
- 前記非円形車輪の回転をガイドするホイールガイドを有することを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記非円形車輪が段差と接触したときに前記非円形車輪が浮き上がることを防止するリフトストッパを有することを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記車軸に平行な回転軸を前記ブラケットに設け、前記回転軸に円形車輪を回転自在に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記非円形車輪を中空構造とし、前記中空構造内において円形車輪を前記車軸に軸支したことを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記長孔が直線形状であることを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記長孔がS字形状であることを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 前記ブラケットは支軸に支持されており、前記支軸に対して回転自在であることを特徴とする請求項1に記載のキャスター。
- 円形車輪の車軸を保持するブラケットと、前記ブラケットを上方へ押し上げるリフティング部材とを備え、平地走行時には前記円形車輪によって走行を行う段差走行方法であって、低地面から高地面への段差走行時には、前記リフティング部材を段差に当接させる第1のステップと、前記第1のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記リフティング部材を前記低地面に接地させる第2のステップと、前記第2のステップの後、前記ブラケットの進行方向への移動にともなって前記円形車輪を前記低地面から前記高地面に移動させる第3のステップと、前記円形車輪の前記高地面への移動によって、前記リフティング部材を前記低地面および前記段差から離間させる第4のステップとを有することを特徴とする段差走行方法。
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