JP2004040456A - リーダ/ライタ用アンテナ及び該アンテナを備えたリーダ/ライタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属ケース1表面に設置するリーダ/ライタ用アンテナ3aの磁芯材2の面積を30cm2以上とし、磁芯材2の厚さを0.16〜6mm、好ましくは0.48〜1.12mmの範囲とし、通常のリーダ/ライタ用アンテナ3aよりも大きなサイズの磁芯材2を用いることにより、金属ケース1によるタグ4のインダクタンスの減少を、磁芯を兼ねる磁性材によるインダクタンスの増加で相殺することができ、これによりタグ4のインダクタンスの変動を抑制して読み取り可能範囲を広げ、タグ4を金属ケース1に密着又は近接して用いることを可能とする。
【選択図】
図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実装されたICチップに対して非接触でデータの読み書きを行うことを特徴とするRFID(Radio Frequency Identification)システムのアンテナの構造に関し、特に、金属に近接して使用することができるリーダ/ライタ用アンテナの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ICチップを備えたタグとリーダ/ライタ(又はリーダ)との間でデータの交信を行うRFIDシステムが普及している。このRFIDシステムは、タグ及びリーダ/ライタの各々に備えたアンテナを用いてデータの交信を行うため、タグをリーダ/ライタから離した状態でも通信可能であることから、様々な用途、例えば、入退場管理や個人認証等の用途に利用されるようになってきている。
【0003】
このRFIDシステムに用いるリーダ/ライタ用アンテナとして、安価で優れた性能を有することから、従来は空芯のコイルが用いられていた。この空芯コイルのアンテナは、例えば、絶縁層で被覆された導線を渦巻き状に巻回してベース板に貼り付けて形成したものや、ベース板に堆積したアルミニウム箔や銅箔等の金属箔をエッチングにより除去して形成したもの等が知られている。
【0004】
上記空芯コイルのアンテナでは、磁束がベース板を貫通する方向に生じるため、例えば、図7に示すように、空芯構造のリーダ/ライタ用アンテナ3aを金属ケース1等の金属製の部材に密着させて設置する場合、磁束5が金属ケース1を貫通し、これにより金属内に渦電流が発生し、タグのアンテナの電波が渦電流による磁束により相殺されるためRFIDシステムが正常に作動しなくなる。そこで、従来はリーダ/ライタ回路のケースをプラスチック製としてアンテナ3aを組み込んでいた。回路のケースを金属製にする場合はアンテナ3aを回路のケースに組み込まず外部に配置し、アンテナはケーブルで接続していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、RFIDシステムの性能向上、小型化、低価格化に伴って、リーダ/ライタは単独の装置としてのみならず、各種電子機器内に搭載されるようになってきている。電子機器は、内部の部品を保護するために一般に金属製のケースに収納されるが、電子機器にリーダ/ライタを組み込む場合、リーダ/ライタ用アンテナは金属ケース表面に設置する必要があり、この場合、渦電流により電波が相殺されタグとのデータの交信に支障が生じてしまうという問題があった。
【0006】
しかし、金属ケースにタグを近づけると金属ケースの影響によりタグ用アンテナのインダクタンスが減少し、共振周波数が高くなって通信が不可能になるという問題がある。特に、携帯端末機器等の電子機器にリーダ/ライタを組み込む場合は、リーダ/ライタ用アンテナのサイズを大きくすることができず、必然的にタグをリーダ/ライタ用アンテナに密着又は近接させて用いることになるため、金属ケースの影響が顕著となってインダクタンスが著しく減少し、その結果、通信できない領域が生じてしまう。
【0007】
上記タグと金属ケースとの相互作用を防止するために、タグが金属ケースに近づきすぎないようにスペーサを設置する方法もあるが、スペーサを用いると金属ケース自体のサイズが大きくなってしまい、携帯端末機器の小型化の大きな障害となる。また、タグを金属ケースに近接した状態で所望の共振周波数となるようにタグの共振回路定数を設定することもできるが、この場合はタグが金属ケースから離れてしまうと正常に読み取りができなくなってしまい、また、金属製でないケースを用いる場合にも読み取りができない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、電子機器の金属ケース表面にリーダ/ライタ用アンテナを設置する場合であっても、金属ケースの影響によるタグのインダクタンスの減少を抑制することができるリーダ/ライタ用アンテナを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のリーダ/ライタ用アンテナは、電磁誘導又は電磁結合を利用してアンテナ間でデータの通信を行うRFIDシステムにおけるリーダ/ライタ用アンテナであって、前記アンテナは、金属又は金属を含む部材により構成されるケース上に設置され、平板状の磁性材からなる磁芯を備えるものであり、前記磁芯には、アンテナコイルが形成される領域と、前記リーダ/ライタ用アンテナと交信するタグの、前記ケースとの相互作用によるインダクタンスの減少を抑制するインダクタンス補償領域とを備えるものである。このアンテナの磁束の方向は平板の面方向、即ち金属板に平行であるため金属に流れる渦電流に相殺されることはない。
【0010】
また、本発明のリーダ/ライタ用アンテナは、電磁誘導又は電磁結合を利用してアンテナ間でデータの通信を行うRFIDシステムにおけるリーダ/ライタ用アンテナであって、前記アンテナは、金属又は金属を含む部材により構成されるケース上に設置され、平板状の磁性材からなる磁芯を備えるものであり、前記磁芯は、前記リーダ/ライタ用アンテナと交信するタグの、前記ケースとの相互作用によるインダクタンスの減少を抑制可能な面積及び厚さで形成されているものである。
【0011】
本発明においては、前記アンテナが、前記磁芯の表裏面を巻回するように形成される構成、又は、前記磁芯の一方の面に渦巻き状に形成される構成とすることができ、前記磁芯の面積が、30cm2以上に設定されることが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記磁性材の厚さが、0.16mm以上、6mm以下、又は、0.16mm以上、1.12mm以下の範囲に設定される構成とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記磁性材が、金属の粒またはフレーク、フェライトの粒と有機物との複合材よりなる構成、又は、軟磁性フェライト、パーマロイ又は珪素鉄のいずれかである構成、又は、前記磁性材が、アモルファス箔またはアモルファス箔の積層材である構成とすることができる。
【0014】
このように、本発明では、電子機器の金属ケースに設置するリーダ/ライタ用アンテナの磁芯材として、所定の厚さ、面積の平板状の磁性材を用いることにより、金属ケースによるインダクタンスの減少と、磁芯を兼ねる磁性材によるインダクタンスの増加とを相殺してタグのインダクタンスの変動を抑制し、それによりタグの読み取り可能範囲を広げてリーダ/ライタとタグとの通信性能を向上させることができる。
【0015】
特に、磁芯材として、金属粒または金属のフレークを含む塗料をPETフィルムに塗布乾燥し、必要によっては積層したものを用いることにより磁性材の厚みを薄くすることができ、これによりリーダ/ライタ用アンテナの厚みを小さくすることができ、携帯端末機器等の小型の電子機器にリーダ/ライタを組み込むことが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
従来技術において記載したように、RFIDリーダ/ライタを電子機器を組み込む場合、金属ケース上にリーダ/ライタ用アンテナを設置することになるが、この場合、リーダ/ライタのアンテナの磁束が金属面に垂直になるため金属内に流れる渦電流により相殺されるという第1の問題と、金属ケースとタグとの相互作用により、タグのインダクタンスが減少するという第2の問題とが生じる。
【0017】
上記第1の問題に対して、本願出願人は先願(特願2002−8146号)において、リーダ/ライタのアンテナの磁束が金属面に垂直になるため金属に流れる渦電流による磁束により相殺されるという課題に対し、軟磁性部材からなる板状の磁芯材にコイルを巻き、金属の面に平行に配置することにより、リーダ/ライタの電波の磁気成分が金属の面に平行になる構造のアンテナ及び平面状の渦巻き状アンテナの金属に接する方向に磁芯材を配置し、磁束がその磁芯材を通り金属を通過しない構造のアンテナを提案している。
【0018】
上記先願の構造は、所定の材料、製法で形成した所定の厚さの軟磁性材からなる平板状の磁芯にアンテナコイルを形成するものであり、この構造では、磁束が磁芯内を通過するために、どちらの構造でも、リーダ/ライタ用アンテナを金属ケース表面に直接設置した状態でも使用することができる。
【0019】
しかしながら、先願記載の構造は、リーダ/ライタ用アンテナに関するものであるため、その構造のリーダ/ライタ用アンテナを用いても金属ケースとタグとの相互作用を十分に抑制できない場合もありえる。
【0020】
そこで、本発明のRFIDリーダ/ライタでは、金属ケースとリーダ/ライタ用アンテナとの相互作用のみならず、金属ケースとタグとの相互作用も抑制することができるように、磁芯材の面積、厚さを特定することを特徴としている。
【0021】
具体的には、金属ケース表面に設置するリーダ/ライタ用アンテナの磁芯材の面積を、表裏面を巻回する形状又は渦巻き状のアンテナに対して30cm2以上とし、磁芯材の厚さを0.16〜6mm、好ましくは0.48〜1.12mmの範囲とし、通常のリーダ/ライタ用アンテナ3aよりも大きなサイズの磁芯材を用いることにより、金属ケースによるタグのインダクタンスの減少を、磁芯を兼ねる磁性材によるインダクタンスの増加で相殺することができ、これによりタグのインダクタンスの変動を抑制して読み取り可能範囲を広げ、タグを金属ケースに密着又は近接して用いる場合であっても良好な交信状態を保つことができるようにしている。以下、上記実施の形態についてさらに詳細に説明する。
【0022】
【実施例】
本発明の一実施例について、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、電子機器の金属ケースに組み込んだリーダ/ライタの構成を示す図である。また、図2乃至図5は、本発明の一実施例に係るリーダ/ライタ用アンテナの構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。また、図6は、本実施例の磁性材の構造を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、電子機器に組み込まれるRFIDシステムは、リーダ/ライタ用アンテナ3aと、送受信信号を変換するための通信回路や送受信信号をデコードするための演算処理回路等の制御部3bとからなるリーダ/ライタ(又はリーダ)3と、タグ用アンテナ4aを備えたラベル型、シート型、スティック型等の種々の形状のタグ4とからなり、リーダ/ライタ用アンテナ3aは、携帯端末機器の金属ケース1表面に取り付けられ、制御部3bは、金属ケース1の内部に組み込まれている。そして、タグ4をリーダ/ライタ用アンテナ3aに近づけるとタグ4内に備えたICに記録されたデータがリーダ/ライタ3に読み取られ、例えば、ICに顧客情報を書き込んでおけば、このRFIDシステムを用いて顧客の認証等の処理を行うことができる。
【0024】
通常、タグ用アンテナ4aは平面上に配置された渦巻き状の空芯コイルで形成され、このようなコイルは導体である金属板1aに近接するとその影響によりインダクタンスが減少する。一方、このようなコイルは磁性体に近接するとその影響によりインダクタンスが増加することが知られている。そこで、リーダ/ライタ用アンテナ3aの磁芯材2を大きな寸法で形成することにより、磁芯材2をアンテナの磁芯として機能させると共に、金属ケース1の影響を相殺してインダクタンスの変動を抑制する手段として機能させている。
【0025】
この磁芯材2は、アモルファス合金、パーマロイ、電磁鋼、珪素鋼、センダスト合金、Fe−Al合金又は軟磁性フェライトの急冷凝固材、鋳造材,圧延材,鍛造材又は焼結材や、アモルファス箔やアモルファス箔の積層材、金属粉、カーボニル鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ粉(純鉄、Si、Cr、Al等を含む鉄、パーマロイ、Co−Fe等)、アモルファス粉(B、P、Si、Cr等を含む鉄、コバルト、ニッケルを水またはガスアトマイズして製造したもの)等の粒状の粉体若しくはフレークとプラスチック、ゴム等の有機物との複合材、又は上記粉体若しくはフレークを含む塗料の塗膜等により形成することができる。
【0026】
上記複合材を製造する方法としては、射出成形、塗布、圧縮成形、圧延等を用いることができる。射出成形又は圧縮成形により形成された磁芯材2はフェライトにより形成されたものと比較して、強靭であるため薄くしても割れ難いという特徴がある。塗布の場合は、例えば、粒状粉体をアトラター、ボールミル、スタンプミル等で扁平化してフレークとした後、フレーク又は粒状粉体を含む塗料をフィルム上に塗布/乾燥を繰り返して形成することができ、その際、塗布中に磁場を印加することによりフレークを一定の方向に配向させることができ、特性を向上させることができる。
【0027】
また、複合材におけるプラスチックとしては加工性の良い熱可塑性のプラスチックを用いたり、或いは耐熱性の良い熱硬化性のプラスチックを用いたりすることができ、また、絶縁性を有するアクリル、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシ等の樹脂を用いることもできる。
【0028】
磁芯材2の構造を図示すると図6のようになる。例えば、複合材の場合は、図6(a)に示すように、プラスチック、ゴム等の樹脂バインダー7中に粉体、フレーク6が分散され、その粉体若しくはフレーク6が相互に絶縁されているため、磁芯材2全体としては導電性を有せず、高周波の電波を受けても渦電流損失を減少させることができる。また、アモルファス箔の積層材の場合は、図6(b)に示すように、アモルファス箔8と絶縁層9とが交互に積層された構造となり、製造が容易であるがアモルファス箔8は周波数が高い場合損失が大きいため、アモルファス箔8は低周波たとえば125MHzでのみ使用できる。
【0029】
上記材料、製法で製作される各種磁芯材2は、その厚さ及び面積によりタグ4のインダクタンスを増加させる効果が異なることが推測される。そこで、まず、本発明の用途に用いる磁芯材2の適切な厚さを求めるために、図2の構造において、磁芯材2の厚さと、タグ4と磁芯材2との距離(図の距離R)を各々変化させた場合のタグ4のインダクタンスを測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、タグ用アンテナ4aとしては、86mm×54mmの板上の周囲に沿って1mm間隔で導体を6回巻いたアンテナとした。また、磁芯材2として、1.6mm以下のものは0.05mmのPETフィルムの両面に磁性フレークを含む塗料を塗布した全体の厚さが0.16mmの複合材を積層したものを用い、3mm、6mmのものは射出成形した複合材を用いた。このタグ用アンテナ4aは作動距離を最大にするためにカードの周囲に沿った空芯の巻線としており、使用するタグ4の種類により巻線数は異なるが、インダクタンスの変化率としては同様であり、ある巻線数で磁芯材2の厚さを決定すれば、同じ寸法のタグ4全てに適用することができる。
【0032】
表1より、磁芯材2を用いない試料では、タグ4とリーダ/ライタ用アンテナ3aとの距離が小さくなるに従って金属板1aの影響を受けて徐々にタグ4のインダクタンスが減少し、読み取り可能な範囲の下限を下回るが、磁性材からなる磁芯材2を用いた試料では距離が小さくなっても磁芯材2によるインダクタンスの増大効果により金属板1aの影響が相殺されて読み取り可能な範囲(表の網掛け部分)が広がっていることがわかる。また、磁芯材2の厚さが厚くなるに従って磁芯材2の影響によるインダクタンスの増大効果が顕著となり、距離が小さい部分では逆にインダクタンスの値が読み取り上限を上回ることが分かる。
【0033】
以上の結果をまとめると、▲1▼磁性材の厚さは0.16mmでも読み取り可能な範囲を広げる効果がある、▲2▼0.48mm、0.64mmでは、距離に係わらず密着した状態でも読み取り可能である、▲3▼0.48mm〜1.12mmでは、金属ケース1表面を更に保護部材で覆う使用形態では、事実上距離に係わらず読み取り可能な範囲にある、▲3▼6mmまで効果は認められるが、これ以上厚くしても読み取り範囲を広げる効果はなく、逆に磁芯材2のコストが高くなり、また、金属ケース1表面からの突出量も大きくなるため好ましくない、ということが言え、磁芯材2の厚さとしては、0.16mm〜6mm、好ましくは、0.16mm〜1.12mmが適切であることが判明した。
【0034】
次に、本発明の用途に用いる磁芯材2の適切な面積を求めるために、磁芯材2の面積と、タグ4と磁芯材2との距離(図の距離R)を各々変化させた場合のタグ4のインダクタンスを測定した。
【0035】
実験条件としては、120mm×70mm、厚さ1.2mmの工業用純アルミ製の金属ケース1上に、長さ30、40、50、60mm、幅100mm、厚さ0.64mmの磁芯に幅3mm、厚さ30μmの箔線を磁気的軸が長さ方向に2回巻いたリーダ/ライタ用アンテナ3aを配置した。また、タグ4は、JIS規格に準拠した86mm×45mm、厚さ0.74mmの平板に巻数6回のエッチングしたアンテナコイルを形成したものを用いた。なお、リーダ/ライタ用アンテナ3a及びタグ用アンテナ4aはバリアブルコンデンサを用いて共振周波数を13.56MHzに調整した。
【0036】
また、比較例として、長さ10、20mm、幅100mm、厚さ0.64mmの磁芯に幅3mm、厚さ30μmの箔線を磁気的軸が幅方向に2回巻いたものを配置した。そして、各々のリーダ/ライタ用アンテナ3aに対して、タグ4をリーダ/ライタ用アンテナ3aに密着させた状態から20mm離した範囲まで動かし、タグ4のインダクタンスを測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、長さ30mmのリーダ/ライタ用アンテナ3aでは、タグ4をリーダ/ライタ用アンテナ3aに密着させた状態(距離0)ではタグ4を感知せず、1mm〜20mmの範囲で読み取り可能(表の網掛け領域)であることを確認した。なお、タグ4及びリーダ/ライタ用アンテナ3aには各々外装があり、リーダ/ライタ用アンテナ3aとタグ4とが密着することはなく、実際の使用形態では1mm程度の間隔が生じるため、1mm程度の距離で感知できれば実用上問題ないと言える。
【0039】
また、長さ40、50、60mmのリーダ/ライタ用アンテナ3aでは、タグ4をリーダ/ライタ用アンテナ3aに密着させた状態でもタグ4を感知することができ、0mm〜20mmの範囲で読み取り可能であることを確認した。
【0040】
一方、比較例として作成した長さ10、20mmのリーダ/ライタ用アンテナ3aでは、タグ4をリーダ/ライタ用アンテナ3aに密着させた状態から15mm未満の範囲までは感知することができず、15mm〜20mmの範囲でのみ読み取り可能であった。なお、15mm未満で感知しないのは金属ケース1の影響でインダクタンスが減少し共振周波数が高くなるためであり、20mmを超える範囲で作動しないのは電波が微弱となるためである。
【0041】
以上の結果から、リーダ/ライタ用アンテナの磁芯材として、幅100mmに対して長さ30mm以上、面積に換算すると30cm2以上であれば、金属ケース1によるタグ4のインダクタンスの減少を相殺することができることが分かった。
【0042】
この結果は、磁芯材2の表裏面にアンテナコイルを巻回させた図2に示す構造に対するものであるが、リーダ/ライタ用アンテナ3aの形状としては、図2の形状の他に、図3に示すように、磁芯材2の一方の面に周囲に沿って渦巻き状に巻線を形成した構造であっても良い。そこで、渦巻き状の巻線構造のリーダ/ライタ用アンテナ3aについても同様に面積を変えてタグ4の読み取り可能範囲を調べたところ、データは記載しないが、磁芯材2の面積を30cm2以上とすれば、タグ4をリーダ/ライタ用アンテナ3aに近接又は密着させた状態でも事実上読み取り可能とすることができることを確認している。
【0043】
更に、本発明の構造は、リーダ/ライタ用アンテナ3aの磁芯材2を、磁束5が金属ケース1に侵入しないようにする手段(金属ケース1とリーダ/ライタ用アンテナ3aとの相互作用を抑制する目的)の他に、金属ケース1の影響によるタグ4のインダクタンスの減少を抑制する手段(金属ケース1とタグ4との相互作用を抑制する目的)として機能させるものであり、磁芯材2の全てをアンテナの磁芯として機能させる必要はない。
【0044】
そこで、例えば、図4に示すように、磁芯材2を、アンテナとして機能させるアンテナ領域2aと、タグ4のインダクタンスの補償手段として機能させるインダクタンス補償領域2bとに分け、アンテナ領域2aにのみアンテナコイルを形成し、インダクタンス補償領域2bは磁芯材2を露出させ、両方の領域を合わせた面積を30cm2以上とする構成としても良い。また、渦巻き状の巻線構造においても、図5に示すように、アンテナ領域2aにのみ渦巻き状アンテナコイルを形成し、インダクタンス補償領域2bは磁芯材2を露出させ、両方の領域を合わせた面積を30cm2以上とする構成としても良い。
【0045】
このように、電子機器の金属ケース1に設置するリーダ/ライタ用アンテナ3aを、その磁芯材2として平板状の軟磁性部材を用い、磁芯材2の面積を、30cm2以上とし、磁芯材2の厚さを0.16〜6mm、好ましくは0.16〜1.12mmとすることによって、金属板1aによるインダクタンスの減少を磁芯材2で相殺することができ、タグ4を金属ケース1に近接又は密着して使用する場合であっても、良好な交信状態を維持することができる。
【0046】
なお、図2乃至図5に示す構造は例示であり、面積及び厚さの条件を満たす限りにおいて、磁芯材2はどのような形状であってもよく、磁芯材2に巻回する巻線の太さ、巻回する方向も任意に設定することができる。また、上記各実施例では、本発明のリーダ/ライタ用アンテナ3aを電子機器の金属ケース1に設置する場合について記載したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、金属又は金属材料を含む任意の構造体にリーダ/ライタ用アンテナ3aを設置する場合に適用することができるのは明らかである。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のリーダ/ライタ用アンテナの構造によれば、アンテナを金属ケース表面に設置する場合であっても、金属板の影響によるタグのインダクタンスの減少を抑制して読み取り可能範囲を広げることができる。
【0048】
その理由は、リーダ/ライタ用アンテナの磁芯材として平板状の軟磁性部材を用い、その面積を30cm2以上とし、かつ、厚さを0.16mm〜6mm、好ましくは0.16mm〜1.12mmとすることによって、タグが金属ケースに近接又は密着した状態においてタグのインダクタンスを増加させ、金属板の影響によるインダクタンスの減少を相殺することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかるRFIDシステムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係るリーダ/ライタ用アンテナ(表裏面巻回形状)の構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係るリーダ/ライタ用アンテナ(渦巻き形状)の構造を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係るリーダ/ライタ用アンテナ(表裏面巻回形状)の他の構造を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係るリーダ/ライタ用アンテナ(渦巻き形状)の他の構造を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る磁性材の構造を模式的に示す断面図である。
【図7】従来のリーダ/ライタ用アンテナの構造を示す図である。
【符号の説明】
1 金属ケース
2 磁芯材
2a アンテナ領域
2b インダクタンス補償領域
3 リーダ/ライタ
3a リーダ/ライタ用アンテナ
3b 制御部
4 タグ
4a タグ用アンテナ
5 磁束
6 フレーク
7 樹脂バインダー
8 アモルファス箔
9 絶縁層
Claims (12)
- 電磁誘導又は電磁結合を利用してアンテナ間でデータの通信を行うRFIDシステムにおけるリーダ/ライタ用アンテナであって、
前記アンテナは、金属又は金属を含む部材により構成されるケース上に設置され、平板状の磁性材からなる磁芯を備えるものであり、
前記磁芯には、アンテナコイルが形成される領域と、前記リーダ/ライタ用アンテナと交信するタグの、前記ケースとの相互作用によるインダクタンスの減少を抑制するインダクタンス補償領域とを備えることを特徴とするリーダ/ライタ用アンテナ。 - 電磁誘導又は電磁結合を利用してアンテナ間でデータの通信を行うRFIDシステムにおけるリーダ/ライタ用アンテナであって、
前記アンテナは、金属又は金属を含む部材により構成されるケース上に設置され、平板状の磁性材からなる磁芯を備えるものであり、
前記磁芯は、前記リーダ/ライタ用アンテナと交信するタグの、前記ケースとの相互作用によるインダクタンスの減少を抑制可能な面積及び厚さで形成されていることを特徴とするリーダ/ライタ用アンテナ。 - 前記アンテナが、前記磁芯の表裏面を巻回するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記アンテナが、前記磁芯の一方の面に渦巻き状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記磁芯の面積が、30cm2以上に設定されることを特徴とする請求項3又は4に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記磁性材の厚さが、0.16mm以上、6mm以下の範囲に設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記磁性材の厚さが、0.16mm以上、1.12mm以下の範囲に設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記磁性材が、金属の粒またはフレーク、フェライトの粒と有機物との複合材よりなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記金属粒が、アトマイズ鉄粉、アトマイズ合金鉄粉、アトマイズ合金粉、カーボニル鉄粉、アモルファス合金粉のいずれかであることを特徴とする請求項8記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記複合材が、射出成形材、圧縮成形材、圧延材又は塗料の塗布材のいずれかであることを特徴とする請求項8又は9に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記磁性材が、軟磁性フェライト、パーマロイ又は珪素鉄のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
- 前記磁性材が、アモルファス箔またはアモルファス箔の積層材であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のリーダ/ライタ用アンテナ。
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Publications (2)
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