JP2004039407A - 二次電池用負極およびその製造方法並びに該負極を用いた二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】合金材料を負極活物質の一部として用い、高い初期効率で良好なサイクル特性でかつ高エネルギー密度リチウム二次電池を提供する。
【解決手段】負極の構成要素として、集電体1a、リチウムと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を主成分とする層状成分を備え、かつ前記集電体と前記リチウム吸蔵層3aの間にバッファー層2aを有し前記バッファー層2aの厚みが前記リチウム吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とするか、または、前記集電体1a表面の中心線平均粗さRaが前記リチウム吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とする負極を用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】負極の構成要素として、集電体1a、リチウムと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を主成分とする層状成分を備え、かつ前記集電体と前記リチウム吸蔵層3aの間にバッファー層2aを有し前記バッファー層2aの厚みが前記リチウム吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とするか、または、前記集電体1a表面の中心線平均粗さRaが前記リチウム吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とする負極を用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池用負極その製造方法および該二次電池用負極を用いた二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やノートパソコン等のモバイル端末の普及により、その電力源となる二次電池の役割が重要視されている。これらの二次電池には小型・軽量で、かつ高容量であり、充放電を繰り返しても劣化しにくい性能が求められている。
これらの二次電池の負極には、高エネルギー密度でかつ軽量という観点から、金属リチウムを用いられることもあるが、二次電池の負極に金属リチウムをそのまま使用すると、充放電サイクルの繰り返しに伴い、充電時にリチウム表面に針状結晶(デンドライト)が析出し、この結晶がセパレータを貫通し、内部短絡を起こす結果、電池の寿命が短くなるという問題点があった。
【0003】
これに対し、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な黒鉛やハードカーボン等の炭素材料を負極として用いたリチウム電池では、充放電サイクルを良好に繰り返すことができるが、黒鉛材料は金属リチウム、リチウム合金と比較し、その充放電容量は小さく、ハードカーボンを用いたリチウム電池では、初回充放電における不可逆容量が大きく充放電効率が低いため、エネルギー密度が小さくなるという課題があった。
【0004】
このため、エネルギー密度を高める材料として、組成式がLiXA(A はAlなどの金属からなる。)で表されるリチウム合金を負極として用いることが検討されている。この負極は単位体積当りのリチウムイオンの吸蔵放出量が多く、高容量である。最近では、Sn等を含む金属酸化物を負極材料として用いる発明が開示されている(特開平9−147856号公報、特開平9−213329号公報、特開平10−144317号公報、特開平11−45712号公報、WO96/33519など)。
このような負極材料を用いることによって、高容量の負極が得られるとされている。
【0005】
この種の合金負極は、単位体積当りのリチウムイオンの吸蔵・放出量が多く、高容量であるものの、リチウムイオンが吸蔵放出される際に電極活物質である合金自体が膨脹収縮するために、この合金負極の微粉化が進行し、初回充放電における不可逆容量が大きく、また充放電サイクルの寿命が短いという問題点があった。
前記合金負極の微粉化を防ぐ対策として、合金活物質の粒径を小さくする方法が報告されている(Electrochemical and Solid−State Letters,2 (11) 547−549(1999))。上記報告において、合金活物質の粒径を小さくすることによって、不可逆容量の低減およびサイクル特性の向上が確認されたが、上記特性は不十分であり、また粒径を小さくすることで導電付与剤を多く必要とし、エネルギー密度が下がるという問題点を有していた。
【0006】
上記問題点を改善する試みとして、真空プロセスを使って合金活物質を層状に形成する報告がされている。また、合金活物質をアモルファス構造とすれば、初期不可逆容量を減少でき、サイクル特性を向上することが可能とされている(第42回電池討論会講演予稿集(2001)p78)。
しかし上記した技術を適用してCu箔集電体上に直接合金層を形成すると、(残留)応力により合金部分の集電体からの剥離が起こり、充放電を繰り返すと電池としての性能が劣化するという問題点を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の第一の問題点は、サイクル特性の良い炭素材料単体を用いた場合には、高エネルギー密度の電池が得られない。すなわち、炭素は理論容量が小さく、エネルギー密度の向上に限界がある。
【0008】
従来技術の第二の問題点は、負極にLiと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を含む場合に、十分な初期効率およびサイクル特性が得られない。すなわち、充放電に伴う体積変化により負極合金部分が微粉化し、集電特性が悪化する。
従来技術の第三の問題点は、Liと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を直接集電体に形成した負極を用いた場合に、十分なエネルギー密度が得られない。すなわち、充放電に伴う応力により集電体から前記リチウム吸蔵材料の剥離が起こり、活物質として機能しない。
【0009】
<発明の目的>
本発明の第一の目的は、負極の構成要素の一部としてLiと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を採用し、高容量の二次電池を提供することにある。
本発明の第二の目的は、負極中のリチウム吸蔵材料の劣化を防ぎ、高い初期効率および良好なサイクル特性を持つ二次電池を提供することにある。
本発明の第三の目的は、集電体からリチウム吸蔵材料の剥離を防ぎ、高容量の二次電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のリチウムイオン二次電池では、負極は、集電体上に形成されたバッファー層の上にLiと合金形成が可能な元素を主成分とする薄層構造のLi吸蔵層が形成された構造とする。また、本発明のリチウムイオン二次電池では、負極は、表面粗さの大きい集電体上にLiと合金形成が可能な元素を主成分する薄層構造のLi吸蔵層が形成された構造とする。上記バッファー層の厚みは上記Li吸蔵層の厚みの1/20以上1/2 以下とするのが好ましく、また、上記集電体の表面粗さが上記Li吸蔵層の1/20以上1/2 以下とするのが好ましい。上記負極を用いることによって、初期効率が高く、良好なサイクル特性を有しかつ高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を提供できる。
【0011】
【作用】
負極活物質としてLiと合金形成が可能なLi吸蔵物質を用い、薄層構造とすることにより、負極表面におけるLi吸蔵物質の分布は均一になり正極―負極間の電界分布は均一になる。これにより、局所的な電界集中の発生を防ぐことができ、薄く均一なSEI(Solid Electrolyte Interface:電極表面に生成される固体皮膜)が負極表面に形成される。このため、充放電のサイクルを繰り返しても負極は安定に存在し、容量劣化が発生しにくい。
【0012】
負極活物質としてLiと合金形成が可能なLi吸蔵物質を用い、薄層構造とした場合、上記のような利点があるが、集電体上に上記合金薄層を形成しようとした場合、成層時に膨張係数の違いに起因する応力が発生し、集電体から合金の剥離が起こってしまう。
【0013】
そこで、発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明では集電体およびLi合金形成可能な材料を主成分とするLi吸蔵層の両方と合金を形成する元素を主成分としたバッファー層を設ける、あるいは集電体の表面粗さを増加させることによってアンカー効果が生じること、あるいはLi吸蔵層の厚みによって、必要とするバッファー層の厚みが異なるかまたはLi吸蔵層の厚みによって、中心線平均粗さRaが異なることが判明した。これは、上記バッファー層が集電体およびLi吸蔵層の両方と合金を形成するため、Li吸蔵層が集電体から剥離することを抑制することができる。上記バッファー層の厚みはLi吸蔵層の1/20以上の厚みがあればよく、これによって十分に剥離を防ぐことが可能であり、Li吸蔵層の1/2 以下の厚みであれば、剥離を防ぎかつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。また、上記集電体の表面粗さは、中心線平均粗さRaがLi吸蔵層の1/20以上であればアンカー効果が発生して十分剥離を防ぐことができ、RaがLi吸蔵層の 1/2以下であれば上記したような剥離を防ぐ効果を生じると共に、集電体の表面粗さを反映しない平滑な電極が得られることが判明した。
【0014】
本発明は、上記したような負極を用いることによって、良好な初期効率およびサイクル特性を有する高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
次に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の非水電解液二次電池の負極の断面図である。
集電体1aは充放電の際電流を電池の外部に取り出す、あるいは外部から電池内に電流を取り込む電極である。この集電体1aの材質は導電性の金属箔であればよく、特に制限されず使用することができる。この集電体1aに使用される金属箔としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、金、タングステン、モリブデンなどを挙げることができる。集電体1aの厚みは、たとえば、5 〜25μm 程度である。
【0016】
バッファー層2a(第一の層)は、集電体1a上に形成される負極部材であり、この部材は、CVD 、蒸着、スパッタ、めっきにより作られる金属であり、好ましくはこの金属は、微結晶、多結晶あるいはアモルファスの金属の中から選択される1種または2種以上の混合物である。バッファー層2aで用いられる元素は集電体1aおよびLi吸蔵層3aの両方と合金を形成することができる元素であり、例としてコバルト、鉄、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)あるいはこれらの混合物などが挙げられる。好ましくは、コバルトまたは鉄あるいはこれらの混合物が用いられる。
【0017】
上記バッファー層2aの厚みは0.05μm〜20μmの範囲である。このバッファー層2aの厚みは、下記に記述するLi吸蔵層3aの1/20以上1/2 以下であることが望ましい。
バッファー層2aの厚みを上記の値とすることによって、Li吸蔵層3aは集電体1aからの剥離が起こらず、高い質量エネルギー密度の二次電池を得ることができる。
【0018】
Li吸蔵層3a(第2の層)は、充放電の際Liを吸蔵あるいは放出する負極部材である。前記Li吸蔵層3aは、CVD 、蒸着、スパッタ、溶射法、塗布により堆積して形成される金属であるかまたは多結晶、アモルファス金属のいずれか1つ、あるいはアモルファス構造と多結晶構造の両方を局所的に有する微結晶である。好ましくは、これらの中でもアモルファス構造をとることが望ましい。Li吸蔵層3aはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、インヂウム(In)、スズ(Sn)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)あるいはこれらの合金、さらにはこれらの金属酸化物、あるいはこれら金属、アモルファス金属、合金、金属酸化物の中から選択される1種または2種以上からなる多層層あるいは混合物からなる。このようなLi吸蔵層3aの中でも、Si、Al、Ge、Ag、Pb、Sn、さらにはこれらの中から選択される2種以上からなる合金から選択される1つが好ましい。特に好ましいのは、Si、Snまたはこれらの合金のいずれか1つである。このLi吸蔵層3aの厚みは、好ましくは、0.1μm〜240μmの範囲にある。またLi吸蔵層3aにアクセプターまたはドナーとなる物質を加えて抵抗率を下げたLi吸蔵層3aとしてもよい。
【0019】
図1 に示す本発明の実施の形態に類似する構成として、図2 に示すように、集電体1aの少なくとも片面にバッファー層2aとLi吸蔵層3aを組み合わせて具備する構造も採用することができ、このような、組み合わせて具備する構造を、集電体1aの両面に採用することが好ましく採用される。
【0020】
本発明のリチウム二次電池に用いることができる正極としては、LixMO2(ただしM は、少なくとも1種の遷移金属を表す。)である複合酸化物、具体的には、LixCoO2 、LixNiO2 、LixMn2O4、LixMnO3 、LixNiyC1−yO2などを、カーボンブラック等の導電付与剤、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系、有機化合物あるいは導電性の結着剤(導電付与剤を含む)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤(好ましくは極性溶媒)と分散混練してアルミニウム箔等の基体上に塗布して形成したものを用いることができる。すなわち、上記した複合酸化物である正極材料と、導電付与剤、結着剤、分散剤、フィラー、イオン導電剤、圧力増強剤および各種添加剤等を適宜含むリチウム合剤を用いることができる。
【0021】
導電付与剤は、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限なく使用できる。たとえば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カ−ボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維および金属粉、金属繊維、またはポリフェニレン誘導体、ポリアセチレンなどの導電性材料(導電付与剤)を1種またはこれらの混合物として含ませることができる。黒鉛とアセチレンブラックの併用がとくに好ましい。導電付与剤の表面層への添加量は、正極材料に対したとえば0.01〜50wt%程度、好ましくは0.4〜10wt%程度である。
【0022】
本発明で使用できる正極中の結着剤は、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、澱粉、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR、EPDM、スルホン化EPDM、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシドを挙げることができ、この中でもポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0023】
本発明のリチウム二次電池は、前記負極と、乾燥空気又は不活性気体雰囲気下に、前記正極と、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、PVDF、PTFE、PTFEにスルフォン酸基が導入された化合物(たとえば商標名ナフィオン)などのフッ素樹脂等の多孔性フィルムからなるセパレータを介して、積層、あるいは積層したものを巻回して形成した後に、電池缶に収容したり、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可とう性フィルム等によって封口することによって電池を製造することができる。
【0024】
本発明のリチウム2次電池に使用される電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類(環状カーボネートを含む)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸およびこれらのエステル類、γ− ブチロラクトン等のラクトン類(γ体を含む)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒から選択される一種又は二種以上を混合して使用し、これらの有機溶媒にリチウム塩を溶解させて電解液として使用する。
【0025】
電解液を作成するために用いられるリチウム塩としては、具体的にはLiPF6 、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2 、Li(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI 、LiSCN 、LiCl、ビストリフルオロメチルイミドリチウムなどのイミド類のリチウム塩、トリストリフルオロメチルスルホニルメチドリチウムなどがあげられる。また、上記した電解液に代えて、ポリアルキレンオキシド(単独重合体、共重合体を含む)、アルキレンオキシド−アクリロニトリル共重合体、アルキレンオキサイド−アクリロニトリル−アクリル(エステル体も含む)共重合体と、前記リチウム塩とを含むポリマー電解質、さらに上記ポリマーに代えてあるいは上記ポリマーとともに、ヘキサフルオロプロピレン−PVDF共重合体、あるいは公知の他のポリマー電解質を用いてもよく、さらに上記したポリマー電解質とその他の公知のポリマー電解質とを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
【実施例1】
図1は本発明のリチウム二次電池の実施例1を示す負極断面図であり、負極の集電体1aに厚さ10μm 、Ra=0.1μm の銅箔を用い、この集電体1aの上に、スパッタ法により、バッファー層2aとして金属構造のCo層を3μm 形成した。また、 Li吸蔵層3aとして、アモルファス構造のSi層を真空蒸着法により15μm形成した。正極活物質にはリチウム合剤として、以下のようにして調製したコバルト酸リチウム合剤を用いた。このコバルト酸リチウム合剤は、コバルト酸リチウム90gと導電付与剤である粉状の炭素5gとを混合し、これをポリフッ化ビニリデン:PVDF5gを溶解または分散させたN−メチルピロリドン80gに用いて分散させ、スラリー状に作製した。得られたスラリー(固形分55.5%)を集電体上にドクターブレードを用いて塗布し、真空下に100〜150℃で12時間乾燥させて電極材料を形成した。
【0027】
また、集電体にはアルミニウム箔を用いた。電解液はエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶媒(混合容積比:EC/DEC=30/70)に、LiPF6 を溶解させて1モル/リットル(M)の濃度の電解液を作成した。
上記したようにして、負極、正極、セパレータおよび電解液を用いて二次電池を作製した。この際に、電極はスパイラル状に捲回して作製した。上記したようにして作製された二次電池を、充放電試験機を用いて電気特性評価を行った。
【0028】
【実施例2】
実施例と同様の集電体を用い、この集電体上にアモルファス構造のCo層を 3μm 形成してバッファー層2aとし、また微結晶構造のSnを15μm 形成してLi吸蔵層3aを形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0029】
【実施例3】
バッファー層2aとして金属構造のCo層を 3μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして金属構造のPbを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0030】
【実施例4】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして微結晶構造のSiを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0031】
【実施例5】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとしてアモルファス構造のSnを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0032】
【実施例6】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 3μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして微結晶構造のAlを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0033】
【実施例7】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 5μm 形成し、またLi吸蔵層3aとしてアモルファス構造のGeを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0034】
【実施例8】
バッファー層2aとして金属構造のNi層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして金属構造のAgを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0035】
【実施例9】
バッファー層2aとして金属構造のTi層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして多結晶構造のSiを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0036】
【実施例10】
バッファー層2aとして金属構造のCoNi合金層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして金属構造のSnを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0037】
【実施例11】
バッファー層2aとして金属構造のCoNi合金層を 4μm 形成し、また、以下のようにして、Li吸蔵層3aを形成した。すなわち平均粒径 1μm のSi粒子80gに結着剤としてPVDFを10g、導電付与剤として粉状の炭素を10g、溶媒(分散媒)としてN−メチルピロリドンを100g加えて攪拌し、得られたスラリー200g(固形分50%)を上記バッファー層2aの上にドクターブレードを用いて塗布し、100〜150℃下に12時間乾燥させて15μm の層厚のLi吸蔵層3aを形成した。このLi吸蔵層3aを用いて負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0038】
【実施例12】
Li吸蔵層3aとしてアモルファス構造のSiを 15μm形成し、バッファー層2aとして、Li吸蔵層3aの厚みの1/20にあたる0.75μm から、 1/2にあたる 7.5μm までの厚みで金属構造のCo層を形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0039】
【実施例13】
バッファー層2aとして、 0.5μm の厚みで金属構造のCo層を形成し、また、Li吸蔵層3aとしてアモルファス構造のSiを 5μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0040】
【比較例1】
図3に示すように、集電体1aとして厚さ10μm、Ra=0.1μmの銅箔を用い、Li吸蔵層3aとして15μm のアモルファスSiを用いた構造の負極を用いた以外は実施例1と同様の作製方法により二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0041】
【比較例2】
図1に示すように、バッファー層2aの構成元素にBiを用いた以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0042】
【比較例3】
図4に示すように、集電体1bに厚さ10μm 、Ra=0.1μm の銅箔を用い、活物質層4bに圧縮後の厚みが 100μm の黒鉛を用いて負極を作製した以外は実施例1と同様の作製方法によって二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0043】
【比較例4】
図1に示すように、バッファー層2aの厚みを、Li吸蔵層3aの1/30の厚みである0.5μm として負極を作製した以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0044】
【比較例5】
図1に示すように、バッファー層2aの厚みを、Li吸蔵層3aの2/3 の厚みである10μm として負極を作製した以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0045】
【比較例6】
図1に示すように、バッファー層2aの厚みを、Li吸蔵層3aと等しい厚みである15μm として負極を作製した以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0046】
上記したような実施例1〜11、比較例1〜4により作製した二次電池を用いて初回充放電を比較した。その充放電効率を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
前記表1で用いられた初回充放電効率は、式(1)を用い、300サイクル後の容量維持率は式(2)を用いて算出した。以下に用いた式(1)および式(2)を示す。
【0049】
【0050】
バッファー層2aを有する実施例1〜11は、バッファー層2aのない比較例1と比較すると、初回充放電効率が43% 以上向上し、300サイクル後の容量維持率が64% 以上増加した。バッファー層のない比較例1では、Li吸蔵層3aの集電体からの剥離が起こるのに対し、本実施例1〜11ではバッファー層が集電体と活物質の接着性を保つため、上記特性が得られたと考えられる。
このように、本実施例1〜11により、バッファー層を設けることで、初期効率およびサイクル特性を大幅に向上することが証明できた。
【0051】
Li吸蔵層3aと合金を作らない元素であるBiをバッファー層2aに用いた比較例2と、実施例1の初回充放電における充放電効率と300サイクル後の容量維持率を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1〜11と、比較例2とを比較すると、バッファー層2aを有する実施例1〜11では初回充放電効率が43% 以上向上し、300サイクル後の容量維持率が64% 以上増加した。Li吸蔵層3aから剥離しやすいBiをバッファー層2aに用いた比較例2では、Li吸蔵層3aの集電体からの剥離が起こるのに対し、本実施例1ではバッファー層が集電体と活物質の接着性を保つため、上記特性が得られたと考えられる。このように、本実施例1により、バッファー層を設けることで、初期効率およびサイクル特性を大幅に向上することが証明できた。
【0054】
表3に、300サイクル後の実施例1〜11と、比較例3の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3より、活物質に黒鉛を用いた比較例3と、実施例1〜11と比較すると、実施例は比較例3に比べて、質量エネルギー密度は2倍以上となった。このように、本実施例1〜11は、比較例3に比べて、より高エネルギー密度となることが証明できた。
【0057】
以上のように、本実施例1〜11により、初期効率が高く、サイクル特性が良好でかつ質量エネルギー密度の高いリチウム電池を作製できることが証明された。
【0058】
実施例12において、Li吸蔵層3aとして15μm のSiを用い、バッファー層2aの厚みを変化させてバッファー層2aの最適層厚を検討した。実施例12の初回充放電における充放電効率、300サイクル後の容量維持率、300サイクル後の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
初回充放電効率の算出には、前記同様に式(1)を用い、300サイクル後の容量維持率の算出には、式(2)を用いた。
【0061】
実施例12では、バッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下である場合に、バッファー層を持たない比較例1と比べて容量維持率が65% 以上も向上した。
【0062】
またバッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/30である比較例4と比べて実施例12では、容量維持率が63% 以上も向上し、良好なサイクル特性を示した。また、実施例12ではバッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/20以 1/2以下である場合に、バッファー層のない比較例1と比較すると、質量エネルギー密度が3倍を超えていた。
【0063】
このように、バッファー層2aの厚みをLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とすることによって、良好なサイクル特性を有し、かつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0064】
次に、表5に、実施例13と、比較例4との初回充放電効率と、300サイクル後の容量維持率と、300サイクル後の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)との比較を示す。実施例13は、バッファー層2aとして厚みが 0.5μm のCo層を用い、Li吸蔵層3aとして 5μm のSiを用いて二次電池を作製した。
【0065】
【表5】
【0066】
表5に示すように、実施例13では、比較例4と比べて300サイクルでの容量維持率が63% 以上も向上した。実施例13および比較例4ではバッファー層2aの厚みは同じだが、実施例13ではバッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上であるため、上記したような良好なサイクル特性を示した。このように、バッファー層2aの厚みをLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とすることによって、良好なサイクル特性を有し、かつ、高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができた。
【0067】
第2の実施の形態
次に、本発明のリチウム二次電池の第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0068】
図5は本発明の第1の実施の形態を示す非水電解液二次電池の負極の断面図である。
集電体1cは充放電の際電流を電池の外部に出力する、あるいは外部から電池内に電流を入力するための電極である。上記集電体1cはLi吸蔵層3cとの密着性を向上させるために、表面粗さの大きいものを用いる。
集電体1cの表面粗さを増加させる手法として、電気分解、プラズマ処理、あるいはめっきによる表面処理手法が用いられる。また、上記集電体1cを構成する元素は導電性の金属であれば、特に制限無く使用可能であり、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、金、タングステン、モリブデンなどを挙げることができる。
【0069】
Li吸蔵層3cは前述したように、充放電の際にLiを吸蔵あるいは放出する負極部材である。
このLi吸蔵層3cはCVD 、蒸着、スパッタにより作られる金属、アモルファス金属、あるいはアモルファス構造と多結晶構造の両方を局所的に有する微結晶(金属)であり、このLi吸蔵層3cは、アモルファス構造をとることが望ましい。Li吸蔵層3cはシリコン、スズあるいはこれらの合金、さらには金属酸化物、あるいはこれら金属、アモルファス金属、合金、金属酸化物のうち2種以上からなる多層層あるいは混合物からなる。さらに、上記Li吸蔵層3cにアクセプターまたはドナーとなる物質を加えて抵抗率を下げることもできる。
【0070】
上記集電体1cの表面の中心線平均粗さRaは、上記Li吸蔵層3cの厚みの1/20以上とすることが望ましい。上記の場合に、アンカー効果により集電体1cからのLi吸蔵層3cの剥離が起こらず、良好な初期特性およびサイクル特性が得られる。
さらに、上記集電体1c表面の中心線平均粗さRaは上記Li吸蔵層3cの厚みの 1/2以下とすることが望ましい。集電体1c表面の中心線平均粗さRaを上記の範囲とすることで、Li吸蔵層3cが均一に集電体1cの表面を覆い、層厚の均一な電極を作製することができる。
【0071】
また図5に示す本発明の実施の形態に類似する構成として、図6に示すように集電体1cの両面にLi吸蔵層3cを具備する構造も採用することができる。
【0072】
【表6】
【0073】
本第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の正極、セパレータ、電解液、電池構成を用いることができる。
【0074】
以下に、本発明の二次電池による第2の実施の形態の具体例である以下に記載する実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0075】
【実施例14】
本実施例で使用する負極を図5に示す。本実施例では、電気分解により作製した厚さ10μm 、表面粗さRa=1μm の銅箔を集電体1cとして用い、上記集電体1c上に、アモルファス構造のSi層をスパッタ法を用いて15μm 形成してLi吸蔵層3aを形成した。
正極活物質として、実施例1に記載したのと同様のコバルト酸リチウム合剤を用いた。
また、集電体にはアルミニウム箔を用いた。電解液はLiPF6 をエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶媒(混合容積比:EC/DEC=30/70)に溶解して1モル/リットル(1M)の濃度の電解液を調製して使用した。その他、実施例1と同様に、負極、正極、セパレータおよび電解液を用いて二次電池を作製し得られた二次電池の電気特性評価を、充放電試験機を用いて行った。
【0076】
【実施例15】
プラズマ処理により表面粗さを増加させた厚さ10μm 、表面粗さRa=1μm の集電体1cを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0077】
【実施例16】
めっき処理により形成した厚さ10μm 、表面粗さRa=1μm の集電体1cを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0078】
【実施例17】
Li吸蔵層3aにアモルファス構造のSiを15μm 形成した負極を用い、集電体1cとして、Li吸蔵層3aの厚みの1/20にあたる0.75μm から、 1/2にあたる 7.5μm までの表面粗さRaのものを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0079】
【実施例18】
Li吸蔵層3aにアモルファス構造のSiを 2μm 形成した負極を用い、集電体1cとして、表面粗さRaが 0.5μm のものを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0080】
【比較例7】
表面粗さRa=0.5μm で厚さ10μm の銅箔を用いて電池を作製した以外は、実施例14と同じ材料、作製方法を用いて二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0081】
【比較例8】
表面粗さRa=8.0μm で厚さ10μm の銅箔を用いて電池を作製した以外は、実施例14と同じ材料、作製方法を用いて二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0082】
実施例14〜16、比較例7の初回充放電における充放電効率および300サイクルまで連続して充放電させたときの300サイクル後の容量維持率を表6に示す。初回充放電効率は式(1)の計算式にて、容量維持率は式(2)の計算式にて算出した。表面粗さRa=0.5μm の集電体1cを用いた比較例7と比較すると表面粗さRa=2μm の集電体1cを用いた実施例14、実施例15、実施例16では初回充放電効率が42% 以上向上し、300サイクル後の容量維持率が60% 以上増加した。このように、本実施例14〜16により、集電体1cの表面粗さ表面粗さRaをLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上とすることでサイクル特性を大幅に向上することが証明できた。
【0083】
また、比較例3を基準としたときの300サイクル後の実施例14〜16、比較例3の300サイクル後の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)を表7に示す。
【0084】
【表7】
【0085】
表7より、実施例14〜16の負極質量エネルギー密度は、比較例3の12倍以上となり、実施例14〜16では高エネルギー密度となることが証明できた。このように、本実施例14〜16により、初期効率が高く、サイクル特性が良好でかつ質量エネルギー密度の高いリチウム電池を作製できることが証明された。
【0086】
実施例17において、Li吸蔵層3cとして15μm のSiを用い、集電体1cの表面粗さRaを変化させて集電体1cの表面粗さRaの最適値を検討した。実施例17の初回充放電における充放電効率、300サイクル後の容量維持率を表8に示す。
【0087】
【表8】
【0088】
初回充放電効率は前記同様に、式(1)を用い、300サイクル後の容量維持率は、式(2)を用いて算出した。
実施例12では集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上である場合に、集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/20未満である比較例7と比べてサイクル特性が62% 以上向上し、良好なサイクル特性を示した。
また、集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/2 以上である比較例8では、ジェリーロール作製時に電極が折れて活物質の剥離が発生したのに対して、集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/2 以下である実施例17では良好なサイクル特性を示すリチウム二次電池を得ることができた。
【0089】
このように、集電体1cの表面粗さRaをLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上1/2 以下とすることで、Li吸蔵層3cが集電体1cから剥離せず、良好なサイクル特性でかつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0090】
次に、実施例18において、集電体1cの表面粗さRaが 0.5μm のものを用い、Li吸蔵層3cとして 2μm のSiを用いた。実施例13の初回充放電における充放電効率、300サイクル後の容量維持率を表9に示す。
【0091】
【表9】
【0092】
実施例18では、比較例7と比べて300サイクルでの容量維持率が62% 以上向上した。実施例18および比較例7では集電体1cの表面粗さRaは同じ厚みだが、実施例18では集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上であるため、良好なサイクル特性を示した。このように、集電体1cの表面粗さRaをLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上1/2 以下とすることで、良好なサイクル特性でかつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、負極の構成要素として特定の材料を採用したことによって、高エネルギー密度の二次電池を提供することができる。
【0094】
また、本発明によれば、負極活物質として、リチウムと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を用い、薄層構造を採用することによって、負極中のリチウム吸蔵部分の劣化を防ぎ、高い初期効率および良好なサイクル特性を持つ二次電池を得ることができる。
【0095】
さらに、本発明によれば、において集電体と前記リチウム吸蔵層との間にバッファー層を設け、かつ、バッファー層の厚みを前記リチウム吸蔵層の厚みの1/20以上1/2 以下とする負極を採用し、あるいは集電体の表面粗さRaを前記リチウム吸蔵層の厚みの1/20以上1/2 以下とする負極を採用することによって、前記リチウム吸蔵層の集電体からの剥離を防ぎ、高エネルギー密度の二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態、および、比較例2、比較例4〜6に採用された非水電解液二次電池の負極の断面図の1例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す非水電解液二次電池の負極の断面の1例を示す図である。
【図3】比較例1の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す図である。
【図4】比較例3の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す図である。
【図5】第2の実施の形態および比較例7と比較例8の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す図である。
【図6】本発明の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す第2の実施の形態の図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c 集電体
2a バッファー層
3a,3b Li吸蔵層
4b 活物質層
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池用負極その製造方法および該二次電池用負極を用いた二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やノートパソコン等のモバイル端末の普及により、その電力源となる二次電池の役割が重要視されている。これらの二次電池には小型・軽量で、かつ高容量であり、充放電を繰り返しても劣化しにくい性能が求められている。
これらの二次電池の負極には、高エネルギー密度でかつ軽量という観点から、金属リチウムを用いられることもあるが、二次電池の負極に金属リチウムをそのまま使用すると、充放電サイクルの繰り返しに伴い、充電時にリチウム表面に針状結晶(デンドライト)が析出し、この結晶がセパレータを貫通し、内部短絡を起こす結果、電池の寿命が短くなるという問題点があった。
【0003】
これに対し、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な黒鉛やハードカーボン等の炭素材料を負極として用いたリチウム電池では、充放電サイクルを良好に繰り返すことができるが、黒鉛材料は金属リチウム、リチウム合金と比較し、その充放電容量は小さく、ハードカーボンを用いたリチウム電池では、初回充放電における不可逆容量が大きく充放電効率が低いため、エネルギー密度が小さくなるという課題があった。
【0004】
このため、エネルギー密度を高める材料として、組成式がLiXA(A はAlなどの金属からなる。)で表されるリチウム合金を負極として用いることが検討されている。この負極は単位体積当りのリチウムイオンの吸蔵放出量が多く、高容量である。最近では、Sn等を含む金属酸化物を負極材料として用いる発明が開示されている(特開平9−147856号公報、特開平9−213329号公報、特開平10−144317号公報、特開平11−45712号公報、WO96/33519など)。
このような負極材料を用いることによって、高容量の負極が得られるとされている。
【0005】
この種の合金負極は、単位体積当りのリチウムイオンの吸蔵・放出量が多く、高容量であるものの、リチウムイオンが吸蔵放出される際に電極活物質である合金自体が膨脹収縮するために、この合金負極の微粉化が進行し、初回充放電における不可逆容量が大きく、また充放電サイクルの寿命が短いという問題点があった。
前記合金負極の微粉化を防ぐ対策として、合金活物質の粒径を小さくする方法が報告されている(Electrochemical and Solid−State Letters,2 (11) 547−549(1999))。上記報告において、合金活物質の粒径を小さくすることによって、不可逆容量の低減およびサイクル特性の向上が確認されたが、上記特性は不十分であり、また粒径を小さくすることで導電付与剤を多く必要とし、エネルギー密度が下がるという問題点を有していた。
【0006】
上記問題点を改善する試みとして、真空プロセスを使って合金活物質を層状に形成する報告がされている。また、合金活物質をアモルファス構造とすれば、初期不可逆容量を減少でき、サイクル特性を向上することが可能とされている(第42回電池討論会講演予稿集(2001)p78)。
しかし上記した技術を適用してCu箔集電体上に直接合金層を形成すると、(残留)応力により合金部分の集電体からの剥離が起こり、充放電を繰り返すと電池としての性能が劣化するという問題点を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の第一の問題点は、サイクル特性の良い炭素材料単体を用いた場合には、高エネルギー密度の電池が得られない。すなわち、炭素は理論容量が小さく、エネルギー密度の向上に限界がある。
【0008】
従来技術の第二の問題点は、負極にLiと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を含む場合に、十分な初期効率およびサイクル特性が得られない。すなわち、充放電に伴う体積変化により負極合金部分が微粉化し、集電特性が悪化する。
従来技術の第三の問題点は、Liと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を直接集電体に形成した負極を用いた場合に、十分なエネルギー密度が得られない。すなわち、充放電に伴う応力により集電体から前記リチウム吸蔵材料の剥離が起こり、活物質として機能しない。
【0009】
<発明の目的>
本発明の第一の目的は、負極の構成要素の一部としてLiと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を採用し、高容量の二次電池を提供することにある。
本発明の第二の目的は、負極中のリチウム吸蔵材料の劣化を防ぎ、高い初期効率および良好なサイクル特性を持つ二次電池を提供することにある。
本発明の第三の目的は、集電体からリチウム吸蔵材料の剥離を防ぎ、高容量の二次電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のリチウムイオン二次電池では、負極は、集電体上に形成されたバッファー層の上にLiと合金形成が可能な元素を主成分とする薄層構造のLi吸蔵層が形成された構造とする。また、本発明のリチウムイオン二次電池では、負極は、表面粗さの大きい集電体上にLiと合金形成が可能な元素を主成分する薄層構造のLi吸蔵層が形成された構造とする。上記バッファー層の厚みは上記Li吸蔵層の厚みの1/20以上1/2 以下とするのが好ましく、また、上記集電体の表面粗さが上記Li吸蔵層の1/20以上1/2 以下とするのが好ましい。上記負極を用いることによって、初期効率が高く、良好なサイクル特性を有しかつ高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を提供できる。
【0011】
【作用】
負極活物質としてLiと合金形成が可能なLi吸蔵物質を用い、薄層構造とすることにより、負極表面におけるLi吸蔵物質の分布は均一になり正極―負極間の電界分布は均一になる。これにより、局所的な電界集中の発生を防ぐことができ、薄く均一なSEI(Solid Electrolyte Interface:電極表面に生成される固体皮膜)が負極表面に形成される。このため、充放電のサイクルを繰り返しても負極は安定に存在し、容量劣化が発生しにくい。
【0012】
負極活物質としてLiと合金形成が可能なLi吸蔵物質を用い、薄層構造とした場合、上記のような利点があるが、集電体上に上記合金薄層を形成しようとした場合、成層時に膨張係数の違いに起因する応力が発生し、集電体から合金の剥離が起こってしまう。
【0013】
そこで、発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明では集電体およびLi合金形成可能な材料を主成分とするLi吸蔵層の両方と合金を形成する元素を主成分としたバッファー層を設ける、あるいは集電体の表面粗さを増加させることによってアンカー効果が生じること、あるいはLi吸蔵層の厚みによって、必要とするバッファー層の厚みが異なるかまたはLi吸蔵層の厚みによって、中心線平均粗さRaが異なることが判明した。これは、上記バッファー層が集電体およびLi吸蔵層の両方と合金を形成するため、Li吸蔵層が集電体から剥離することを抑制することができる。上記バッファー層の厚みはLi吸蔵層の1/20以上の厚みがあればよく、これによって十分に剥離を防ぐことが可能であり、Li吸蔵層の1/2 以下の厚みであれば、剥離を防ぎかつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。また、上記集電体の表面粗さは、中心線平均粗さRaがLi吸蔵層の1/20以上であればアンカー効果が発生して十分剥離を防ぐことができ、RaがLi吸蔵層の 1/2以下であれば上記したような剥離を防ぐ効果を生じると共に、集電体の表面粗さを反映しない平滑な電極が得られることが判明した。
【0014】
本発明は、上記したような負極を用いることによって、良好な初期効率およびサイクル特性を有する高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
次に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の非水電解液二次電池の負極の断面図である。
集電体1aは充放電の際電流を電池の外部に取り出す、あるいは外部から電池内に電流を取り込む電極である。この集電体1aの材質は導電性の金属箔であればよく、特に制限されず使用することができる。この集電体1aに使用される金属箔としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、金、タングステン、モリブデンなどを挙げることができる。集電体1aの厚みは、たとえば、5 〜25μm 程度である。
【0016】
バッファー層2a(第一の層)は、集電体1a上に形成される負極部材であり、この部材は、CVD 、蒸着、スパッタ、めっきにより作られる金属であり、好ましくはこの金属は、微結晶、多結晶あるいはアモルファスの金属の中から選択される1種または2種以上の混合物である。バッファー層2aで用いられる元素は集電体1aおよびLi吸蔵層3aの両方と合金を形成することができる元素であり、例としてコバルト、鉄、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)あるいはこれらの混合物などが挙げられる。好ましくは、コバルトまたは鉄あるいはこれらの混合物が用いられる。
【0017】
上記バッファー層2aの厚みは0.05μm〜20μmの範囲である。このバッファー層2aの厚みは、下記に記述するLi吸蔵層3aの1/20以上1/2 以下であることが望ましい。
バッファー層2aの厚みを上記の値とすることによって、Li吸蔵層3aは集電体1aからの剥離が起こらず、高い質量エネルギー密度の二次電池を得ることができる。
【0018】
Li吸蔵層3a(第2の層)は、充放電の際Liを吸蔵あるいは放出する負極部材である。前記Li吸蔵層3aは、CVD 、蒸着、スパッタ、溶射法、塗布により堆積して形成される金属であるかまたは多結晶、アモルファス金属のいずれか1つ、あるいはアモルファス構造と多結晶構造の両方を局所的に有する微結晶である。好ましくは、これらの中でもアモルファス構造をとることが望ましい。Li吸蔵層3aはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、インヂウム(In)、スズ(Sn)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)あるいはこれらの合金、さらにはこれらの金属酸化物、あるいはこれら金属、アモルファス金属、合金、金属酸化物の中から選択される1種または2種以上からなる多層層あるいは混合物からなる。このようなLi吸蔵層3aの中でも、Si、Al、Ge、Ag、Pb、Sn、さらにはこれらの中から選択される2種以上からなる合金から選択される1つが好ましい。特に好ましいのは、Si、Snまたはこれらの合金のいずれか1つである。このLi吸蔵層3aの厚みは、好ましくは、0.1μm〜240μmの範囲にある。またLi吸蔵層3aにアクセプターまたはドナーとなる物質を加えて抵抗率を下げたLi吸蔵層3aとしてもよい。
【0019】
図1 に示す本発明の実施の形態に類似する構成として、図2 に示すように、集電体1aの少なくとも片面にバッファー層2aとLi吸蔵層3aを組み合わせて具備する構造も採用することができ、このような、組み合わせて具備する構造を、集電体1aの両面に採用することが好ましく採用される。
【0020】
本発明のリチウム二次電池に用いることができる正極としては、LixMO2(ただしM は、少なくとも1種の遷移金属を表す。)である複合酸化物、具体的には、LixCoO2 、LixNiO2 、LixMn2O4、LixMnO3 、LixNiyC1−yO2などを、カーボンブラック等の導電付与剤、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系、有機化合物あるいは導電性の結着剤(導電付与剤を含む)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤(好ましくは極性溶媒)と分散混練してアルミニウム箔等の基体上に塗布して形成したものを用いることができる。すなわち、上記した複合酸化物である正極材料と、導電付与剤、結着剤、分散剤、フィラー、イオン導電剤、圧力増強剤および各種添加剤等を適宜含むリチウム合剤を用いることができる。
【0021】
導電付与剤は、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限なく使用できる。たとえば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カ−ボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維および金属粉、金属繊維、またはポリフェニレン誘導体、ポリアセチレンなどの導電性材料(導電付与剤)を1種またはこれらの混合物として含ませることができる。黒鉛とアセチレンブラックの併用がとくに好ましい。導電付与剤の表面層への添加量は、正極材料に対したとえば0.01〜50wt%程度、好ましくは0.4〜10wt%程度である。
【0022】
本発明で使用できる正極中の結着剤は、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、澱粉、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR、EPDM、スルホン化EPDM、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシドを挙げることができ、この中でもポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0023】
本発明のリチウム二次電池は、前記負極と、乾燥空気又は不活性気体雰囲気下に、前記正極と、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、PVDF、PTFE、PTFEにスルフォン酸基が導入された化合物(たとえば商標名ナフィオン)などのフッ素樹脂等の多孔性フィルムからなるセパレータを介して、積層、あるいは積層したものを巻回して形成した後に、電池缶に収容したり、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可とう性フィルム等によって封口することによって電池を製造することができる。
【0024】
本発明のリチウム2次電池に使用される電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類(環状カーボネートを含む)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸およびこれらのエステル類、γ− ブチロラクトン等のラクトン類(γ体を含む)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒から選択される一種又は二種以上を混合して使用し、これらの有機溶媒にリチウム塩を溶解させて電解液として使用する。
【0025】
電解液を作成するために用いられるリチウム塩としては、具体的にはLiPF6 、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2 、Li(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI 、LiSCN 、LiCl、ビストリフルオロメチルイミドリチウムなどのイミド類のリチウム塩、トリストリフルオロメチルスルホニルメチドリチウムなどがあげられる。また、上記した電解液に代えて、ポリアルキレンオキシド(単独重合体、共重合体を含む)、アルキレンオキシド−アクリロニトリル共重合体、アルキレンオキサイド−アクリロニトリル−アクリル(エステル体も含む)共重合体と、前記リチウム塩とを含むポリマー電解質、さらに上記ポリマーに代えてあるいは上記ポリマーとともに、ヘキサフルオロプロピレン−PVDF共重合体、あるいは公知の他のポリマー電解質を用いてもよく、さらに上記したポリマー電解質とその他の公知のポリマー電解質とを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
【実施例1】
図1は本発明のリチウム二次電池の実施例1を示す負極断面図であり、負極の集電体1aに厚さ10μm 、Ra=0.1μm の銅箔を用い、この集電体1aの上に、スパッタ法により、バッファー層2aとして金属構造のCo層を3μm 形成した。また、 Li吸蔵層3aとして、アモルファス構造のSi層を真空蒸着法により15μm形成した。正極活物質にはリチウム合剤として、以下のようにして調製したコバルト酸リチウム合剤を用いた。このコバルト酸リチウム合剤は、コバルト酸リチウム90gと導電付与剤である粉状の炭素5gとを混合し、これをポリフッ化ビニリデン:PVDF5gを溶解または分散させたN−メチルピロリドン80gに用いて分散させ、スラリー状に作製した。得られたスラリー(固形分55.5%)を集電体上にドクターブレードを用いて塗布し、真空下に100〜150℃で12時間乾燥させて電極材料を形成した。
【0027】
また、集電体にはアルミニウム箔を用いた。電解液はエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶媒(混合容積比:EC/DEC=30/70)に、LiPF6 を溶解させて1モル/リットル(M)の濃度の電解液を作成した。
上記したようにして、負極、正極、セパレータおよび電解液を用いて二次電池を作製した。この際に、電極はスパイラル状に捲回して作製した。上記したようにして作製された二次電池を、充放電試験機を用いて電気特性評価を行った。
【0028】
【実施例2】
実施例と同様の集電体を用い、この集電体上にアモルファス構造のCo層を 3μm 形成してバッファー層2aとし、また微結晶構造のSnを15μm 形成してLi吸蔵層3aを形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0029】
【実施例3】
バッファー層2aとして金属構造のCo層を 3μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして金属構造のPbを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0030】
【実施例4】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして微結晶構造のSiを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0031】
【実施例5】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとしてアモルファス構造のSnを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0032】
【実施例6】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 3μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして微結晶構造のAlを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0033】
【実施例7】
バッファー層2aとして金属構造のFe層を 5μm 形成し、またLi吸蔵層3aとしてアモルファス構造のGeを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0034】
【実施例8】
バッファー層2aとして金属構造のNi層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして金属構造のAgを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0035】
【実施例9】
バッファー層2aとして金属構造のTi層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして多結晶構造のSiを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0036】
【実施例10】
バッファー層2aとして金属構造のCoNi合金層を 4μm 形成し、またLi吸蔵層3aとして金属構造のSnを15μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0037】
【実施例11】
バッファー層2aとして金属構造のCoNi合金層を 4μm 形成し、また、以下のようにして、Li吸蔵層3aを形成した。すなわち平均粒径 1μm のSi粒子80gに結着剤としてPVDFを10g、導電付与剤として粉状の炭素を10g、溶媒(分散媒)としてN−メチルピロリドンを100g加えて攪拌し、得られたスラリー200g(固形分50%)を上記バッファー層2aの上にドクターブレードを用いて塗布し、100〜150℃下に12時間乾燥させて15μm の層厚のLi吸蔵層3aを形成した。このLi吸蔵層3aを用いて負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0038】
【実施例12】
Li吸蔵層3aとしてアモルファス構造のSiを 15μm形成し、バッファー層2aとして、Li吸蔵層3aの厚みの1/20にあたる0.75μm から、 1/2にあたる 7.5μm までの厚みで金属構造のCo層を形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法にて二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0039】
【実施例13】
バッファー層2aとして、 0.5μm の厚みで金属構造のCo層を形成し、また、Li吸蔵層3aとしてアモルファス構造のSiを 5μm 形成して負極とした以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0040】
【比較例1】
図3に示すように、集電体1aとして厚さ10μm、Ra=0.1μmの銅箔を用い、Li吸蔵層3aとして15μm のアモルファスSiを用いた構造の負極を用いた以外は実施例1と同様の作製方法により二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0041】
【比較例2】
図1に示すように、バッファー層2aの構成元素にBiを用いた以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0042】
【比較例3】
図4に示すように、集電体1bに厚さ10μm 、Ra=0.1μm の銅箔を用い、活物質層4bに圧縮後の厚みが 100μm の黒鉛を用いて負極を作製した以外は実施例1と同様の作製方法によって二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0043】
【比較例4】
図1に示すように、バッファー層2aの厚みを、Li吸蔵層3aの1/30の厚みである0.5μm として負極を作製した以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0044】
【比較例5】
図1に示すように、バッファー層2aの厚みを、Li吸蔵層3aの2/3 の厚みである10μm として負極を作製した以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0045】
【比較例6】
図1に示すように、バッファー層2aの厚みを、Li吸蔵層3aと等しい厚みである15μm として負極を作製した以外は、実施例1と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製した。このようにして得られた二次電池を、実施例1と同様にして、電気特性評価を行った。
【0046】
上記したような実施例1〜11、比較例1〜4により作製した二次電池を用いて初回充放電を比較した。その充放電効率を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
前記表1で用いられた初回充放電効率は、式(1)を用い、300サイクル後の容量維持率は式(2)を用いて算出した。以下に用いた式(1)および式(2)を示す。
【0049】
【0050】
バッファー層2aを有する実施例1〜11は、バッファー層2aのない比較例1と比較すると、初回充放電効率が43% 以上向上し、300サイクル後の容量維持率が64% 以上増加した。バッファー層のない比較例1では、Li吸蔵層3aの集電体からの剥離が起こるのに対し、本実施例1〜11ではバッファー層が集電体と活物質の接着性を保つため、上記特性が得られたと考えられる。
このように、本実施例1〜11により、バッファー層を設けることで、初期効率およびサイクル特性を大幅に向上することが証明できた。
【0051】
Li吸蔵層3aと合金を作らない元素であるBiをバッファー層2aに用いた比較例2と、実施例1の初回充放電における充放電効率と300サイクル後の容量維持率を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1〜11と、比較例2とを比較すると、バッファー層2aを有する実施例1〜11では初回充放電効率が43% 以上向上し、300サイクル後の容量維持率が64% 以上増加した。Li吸蔵層3aから剥離しやすいBiをバッファー層2aに用いた比較例2では、Li吸蔵層3aの集電体からの剥離が起こるのに対し、本実施例1ではバッファー層が集電体と活物質の接着性を保つため、上記特性が得られたと考えられる。このように、本実施例1により、バッファー層を設けることで、初期効率およびサイクル特性を大幅に向上することが証明できた。
【0054】
表3に、300サイクル後の実施例1〜11と、比較例3の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3より、活物質に黒鉛を用いた比較例3と、実施例1〜11と比較すると、実施例は比較例3に比べて、質量エネルギー密度は2倍以上となった。このように、本実施例1〜11は、比較例3に比べて、より高エネルギー密度となることが証明できた。
【0057】
以上のように、本実施例1〜11により、初期効率が高く、サイクル特性が良好でかつ質量エネルギー密度の高いリチウム電池を作製できることが証明された。
【0058】
実施例12において、Li吸蔵層3aとして15μm のSiを用い、バッファー層2aの厚みを変化させてバッファー層2aの最適層厚を検討した。実施例12の初回充放電における充放電効率、300サイクル後の容量維持率、300サイクル後の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
初回充放電効率の算出には、前記同様に式(1)を用い、300サイクル後の容量維持率の算出には、式(2)を用いた。
【0061】
実施例12では、バッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下である場合に、バッファー層を持たない比較例1と比べて容量維持率が65% 以上も向上した。
【0062】
またバッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/30である比較例4と比べて実施例12では、容量維持率が63% 以上も向上し、良好なサイクル特性を示した。また、実施例12ではバッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/20以 1/2以下である場合に、バッファー層のない比較例1と比較すると、質量エネルギー密度が3倍を超えていた。
【0063】
このように、バッファー層2aの厚みをLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とすることによって、良好なサイクル特性を有し、かつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0064】
次に、表5に、実施例13と、比較例4との初回充放電効率と、300サイクル後の容量維持率と、300サイクル後の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)との比較を示す。実施例13は、バッファー層2aとして厚みが 0.5μm のCo層を用い、Li吸蔵層3aとして 5μm のSiを用いて二次電池を作製した。
【0065】
【表5】
【0066】
表5に示すように、実施例13では、比較例4と比べて300サイクルでの容量維持率が63% 以上も向上した。実施例13および比較例4ではバッファー層2aの厚みは同じだが、実施例13ではバッファー層2aの厚みがLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上であるため、上記したような良好なサイクル特性を示した。このように、バッファー層2aの厚みをLi吸蔵層3aの厚みの1/20以上1/2 以下とすることによって、良好なサイクル特性を有し、かつ、高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができた。
【0067】
第2の実施の形態
次に、本発明のリチウム二次電池の第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0068】
図5は本発明の第1の実施の形態を示す非水電解液二次電池の負極の断面図である。
集電体1cは充放電の際電流を電池の外部に出力する、あるいは外部から電池内に電流を入力するための電極である。上記集電体1cはLi吸蔵層3cとの密着性を向上させるために、表面粗さの大きいものを用いる。
集電体1cの表面粗さを増加させる手法として、電気分解、プラズマ処理、あるいはめっきによる表面処理手法が用いられる。また、上記集電体1cを構成する元素は導電性の金属であれば、特に制限無く使用可能であり、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、金、タングステン、モリブデンなどを挙げることができる。
【0069】
Li吸蔵層3cは前述したように、充放電の際にLiを吸蔵あるいは放出する負極部材である。
このLi吸蔵層3cはCVD 、蒸着、スパッタにより作られる金属、アモルファス金属、あるいはアモルファス構造と多結晶構造の両方を局所的に有する微結晶(金属)であり、このLi吸蔵層3cは、アモルファス構造をとることが望ましい。Li吸蔵層3cはシリコン、スズあるいはこれらの合金、さらには金属酸化物、あるいはこれら金属、アモルファス金属、合金、金属酸化物のうち2種以上からなる多層層あるいは混合物からなる。さらに、上記Li吸蔵層3cにアクセプターまたはドナーとなる物質を加えて抵抗率を下げることもできる。
【0070】
上記集電体1cの表面の中心線平均粗さRaは、上記Li吸蔵層3cの厚みの1/20以上とすることが望ましい。上記の場合に、アンカー効果により集電体1cからのLi吸蔵層3cの剥離が起こらず、良好な初期特性およびサイクル特性が得られる。
さらに、上記集電体1c表面の中心線平均粗さRaは上記Li吸蔵層3cの厚みの 1/2以下とすることが望ましい。集電体1c表面の中心線平均粗さRaを上記の範囲とすることで、Li吸蔵層3cが均一に集電体1cの表面を覆い、層厚の均一な電極を作製することができる。
【0071】
また図5に示す本発明の実施の形態に類似する構成として、図6に示すように集電体1cの両面にLi吸蔵層3cを具備する構造も採用することができる。
【0072】
【表6】
【0073】
本第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の正極、セパレータ、電解液、電池構成を用いることができる。
【0074】
以下に、本発明の二次電池による第2の実施の形態の具体例である以下に記載する実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0075】
【実施例14】
本実施例で使用する負極を図5に示す。本実施例では、電気分解により作製した厚さ10μm 、表面粗さRa=1μm の銅箔を集電体1cとして用い、上記集電体1c上に、アモルファス構造のSi層をスパッタ法を用いて15μm 形成してLi吸蔵層3aを形成した。
正極活物質として、実施例1に記載したのと同様のコバルト酸リチウム合剤を用いた。
また、集電体にはアルミニウム箔を用いた。電解液はLiPF6 をエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)の混合溶媒(混合容積比:EC/DEC=30/70)に溶解して1モル/リットル(1M)の濃度の電解液を調製して使用した。その他、実施例1と同様に、負極、正極、セパレータおよび電解液を用いて二次電池を作製し得られた二次電池の電気特性評価を、充放電試験機を用いて行った。
【0076】
【実施例15】
プラズマ処理により表面粗さを増加させた厚さ10μm 、表面粗さRa=1μm の集電体1cを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により、二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0077】
【実施例16】
めっき処理により形成した厚さ10μm 、表面粗さRa=1μm の集電体1cを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0078】
【実施例17】
Li吸蔵層3aにアモルファス構造のSiを15μm 形成した負極を用い、集電体1cとして、Li吸蔵層3aの厚みの1/20にあたる0.75μm から、 1/2にあたる 7.5μm までの表面粗さRaのものを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0079】
【実施例18】
Li吸蔵層3aにアモルファス構造のSiを 2μm 形成した負極を用い、集電体1cとして、表面粗さRaが 0.5μm のものを用いた以外は、実施例14と同様の電極構造および作製方法により二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0080】
【比較例7】
表面粗さRa=0.5μm で厚さ10μm の銅箔を用いて電池を作製した以外は、実施例14と同じ材料、作製方法を用いて二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0081】
【比較例8】
表面粗さRa=8.0μm で厚さ10μm の銅箔を用いて電池を作製した以外は、実施例14と同じ材料、作製方法を用いて二次電池を作製し、実施例14と同様にして電気特性評価を行った。
【0082】
実施例14〜16、比較例7の初回充放電における充放電効率および300サイクルまで連続して充放電させたときの300サイクル後の容量維持率を表6に示す。初回充放電効率は式(1)の計算式にて、容量維持率は式(2)の計算式にて算出した。表面粗さRa=0.5μm の集電体1cを用いた比較例7と比較すると表面粗さRa=2μm の集電体1cを用いた実施例14、実施例15、実施例16では初回充放電効率が42% 以上向上し、300サイクル後の容量維持率が60% 以上増加した。このように、本実施例14〜16により、集電体1cの表面粗さ表面粗さRaをLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上とすることでサイクル特性を大幅に向上することが証明できた。
【0083】
また、比較例3を基準としたときの300サイクル後の実施例14〜16、比較例3の300サイクル後の負極質量エネルギー密度(集電体を除く)を表7に示す。
【0084】
【表7】
【0085】
表7より、実施例14〜16の負極質量エネルギー密度は、比較例3の12倍以上となり、実施例14〜16では高エネルギー密度となることが証明できた。このように、本実施例14〜16により、初期効率が高く、サイクル特性が良好でかつ質量エネルギー密度の高いリチウム電池を作製できることが証明された。
【0086】
実施例17において、Li吸蔵層3cとして15μm のSiを用い、集電体1cの表面粗さRaを変化させて集電体1cの表面粗さRaの最適値を検討した。実施例17の初回充放電における充放電効率、300サイクル後の容量維持率を表8に示す。
【0087】
【表8】
【0088】
初回充放電効率は前記同様に、式(1)を用い、300サイクル後の容量維持率は、式(2)を用いて算出した。
実施例12では集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上である場合に、集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/20未満である比較例7と比べてサイクル特性が62% 以上向上し、良好なサイクル特性を示した。
また、集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/2 以上である比較例8では、ジェリーロール作製時に電極が折れて活物質の剥離が発生したのに対して、集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/2 以下である実施例17では良好なサイクル特性を示すリチウム二次電池を得ることができた。
【0089】
このように、集電体1cの表面粗さRaをLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上1/2 以下とすることで、Li吸蔵層3cが集電体1cから剥離せず、良好なサイクル特性でかつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0090】
次に、実施例18において、集電体1cの表面粗さRaが 0.5μm のものを用い、Li吸蔵層3cとして 2μm のSiを用いた。実施例13の初回充放電における充放電効率、300サイクル後の容量維持率を表9に示す。
【0091】
【表9】
【0092】
実施例18では、比較例7と比べて300サイクルでの容量維持率が62% 以上向上した。実施例18および比較例7では集電体1cの表面粗さRaは同じ厚みだが、実施例18では集電体1cの表面粗さRaがLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上であるため、良好なサイクル特性を示した。このように、集電体1cの表面粗さRaをLi吸蔵層3cの厚みの1/20以上1/2 以下とすることで、良好なサイクル特性でかつ高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることができる。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、負極の構成要素として特定の材料を採用したことによって、高エネルギー密度の二次電池を提供することができる。
【0094】
また、本発明によれば、負極活物質として、リチウムと合金形成可能なリチウム吸蔵材料を用い、薄層構造を採用することによって、負極中のリチウム吸蔵部分の劣化を防ぎ、高い初期効率および良好なサイクル特性を持つ二次電池を得ることができる。
【0095】
さらに、本発明によれば、において集電体と前記リチウム吸蔵層との間にバッファー層を設け、かつ、バッファー層の厚みを前記リチウム吸蔵層の厚みの1/20以上1/2 以下とする負極を採用し、あるいは集電体の表面粗さRaを前記リチウム吸蔵層の厚みの1/20以上1/2 以下とする負極を採用することによって、前記リチウム吸蔵層の集電体からの剥離を防ぎ、高エネルギー密度の二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態、および、比較例2、比較例4〜6に採用された非水電解液二次電池の負極の断面図の1例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す非水電解液二次電池の負極の断面の1例を示す図である。
【図3】比較例1の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す図である。
【図4】比較例3の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す図である。
【図5】第2の実施の形態および比較例7と比較例8の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す図である。
【図6】本発明の非水電解液二次電池の負極の断面構造を示す第2の実施の形態の図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c 集電体
2a バッファー層
3a,3b Li吸蔵層
4b 活物質層
Claims (16)
- 集電体上に形成された第一の層と、前記第一の層上に形成されたリチウムと合金の形成可能なリチウム吸蔵材料を有する第二の層とを含むことを特徴とする二次電池用負極。
- 前記第一の層が、前記集電体および前記第二の層と合金を形成する成分を含むことを特徴とする請求項1記載の二次電池用負極。
- 前記第一の層が、Co、Fe、NiまたはTiからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことを特徴とする請求項1記載の二次電池用負極。
- 前記第一の層が、前記第二の層の1/20以上の厚みであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の二次電池用負極。
- 前記第一の層が、前記第二の層の1/2 以下の厚みであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の二次電池用負極。
- 前記第二の層が、Si、Ge、In、Sn、Ag、AlまたはPbからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の二次電池用負極。
- 前記第二の層がアモルファス構造をとることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の二次電池用負極。
- 前記第二の層が、 CVD法、スパッタリング法、溶射法、または蒸着法により堆積して形成された層であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の二次電池用負極。
- 集電体上に形成されたリチウムと合金の形成可能なリチウム吸蔵材料を有する膜状成分を含むリチウム吸蔵層であって、前記集電体の表面粗さRaが前記リチウム吸蔵層の1/20以上1/2 以下であることを特徴とする二次電池用負極。
- 前記集電体を、電気分解処理、プラズマ処理、あるいはめっき処理による表面処理が施されることを特徴とする請求項9に記載の二次電池用負極。
- 前記リチウム吸蔵層が、Si、Ge、In、Sn、Ag、AlまたはPbからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項9乃至10記載の二次電池用負極。
- 前記リチウム吸蔵層がアモルファス構造をとることを特徴とする請求項9に記載の二次電池用負極。
- 前記リチウム吸蔵層が、 CVD法、スパッタリング法、溶射法、または蒸着法により堆積して形成された層であることを特徴とする請求項9に記載の二次電池用負極。
- 請求項1乃至13のいずれか1項に記載の負極と、リチウムイオンを吸蔵および放出することのできる正極と、前記正極と前記負極の間に配置された電解質とを具備することを特徴とする二次電池。
- 前記正極活物質が、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物から選択される化合物の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項14に記載の二次電池。
- 導電性の集電体上に、バッファー層を介してリチウム吸蔵層を設けることを特徴とする二次電池用負極の製造方法。
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JP2010262843A (ja) * | 2009-05-08 | 2010-11-18 | Furukawa Electric Co Ltd:The | リチウムイオン二次電池用の負極、それを用いたリチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用の負極の集電体、リチウムイオン二次電池用の負極の製造方法 |
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KR101338808B1 (ko) | 2006-12-29 | 2013-12-06 | 주식회사 효성 | 표면 러프니스가 향상된 스틸코드 및 그 제조방법 |
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2002
- 2002-07-02 JP JP2002193906A patent/JP2004039407A/ja active Pending
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