JP2004036690A - 等速自在継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】保持器の位置決めを可能とし、かつ、軸方向のスライド範囲全域でボールの転動を可能にする。
【解決手段】トラック溝15が設けられた円筒状の外輪11と、トラック溝17が設けられ、部分球面状の外表面18を持つ内輪12と、トラック溝17,15が協働して形成するボールトラックに配されたボール13と、ボール13を収容するポケット19を備え、内輪12と外輪11で接触案内され、軸方向に等距離オフセットした部分球面状の内外表面20,21を持つ保持器14とからなる等速自在継手において、内外輪12,11のトラック溝17,15を交叉状の配置で設け、両トラック溝17,15の交叉部分にボール13を組み込み、かつ、内輪12は、トラック溝17が外周面に形成されたトラック部材25と、トラック部材25に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面18を持つ球面部材26とからなる分割構造とする。
【選択図】 図1
【解決手段】トラック溝15が設けられた円筒状の外輪11と、トラック溝17が設けられ、部分球面状の外表面18を持つ内輪12と、トラック溝17,15が協働して形成するボールトラックに配されたボール13と、ボール13を収容するポケット19を備え、内輪12と外輪11で接触案内され、軸方向に等距離オフセットした部分球面状の内外表面20,21を持つ保持器14とからなる等速自在継手において、内外輪12,11のトラック溝17,15を交叉状の配置で設け、両トラック溝17,15の交叉部分にボール13を組み込み、かつ、内輪12は、トラック溝17が外周面に形成されたトラック部材25と、トラック部材25に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面18を持つ球面部材26とからなる分割構造とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のドライブシャフトなどの動力伝達機構において使用され、駆動側と従動側の二軸間で角度変位および軸方向変位を許容する摺動型等速自在継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、エンジン側と駆動車輪側との間に中間軸を介装し、その中間軸の一端部を摺動型等速自在継手を介してディファレンシャルに連結し、他端部を固定型等速自在継手および車輪軸受を介して駆動車輪に連結した構造を具備する。
【0003】
この摺動型等速自在継手には各種タイプのものがあるが、ドライブシャフトに使用する場合、他の摺動型等速自在継手であるトリポード型等速自在継手に比べて安価であるダブルオフセット型等速自在継手が多用されている。このダブルオフセット型等速自在継手の一例を図8および図9に示す。
【0004】
このダブルオフセット型等速自在継手は、車体側のディファレンシャルに取り付けられた外輪1と、中間軸の一端に取り付けられた内輪2と、外輪1および内輪2の間に組み込まれた複数のボール3と、外輪1と内輪2との間に介在してボール3を支持する保持器4とを主要な構成要素としている。
【0005】
外輪1は、その軸線に平行な複数の直線状トラック溝5が円周方向等間隔に形成された円筒状孔6を有する。内輪2は、外輪1のトラック溝5に対応させて軸線に平行な複数の直線状トラック溝7が円周方向等間隔に形成され、かつ、部分球面状の外表面8を有する。図示しないが、内輪2の内径には、トルク伝達可能なように中間軸の一端がセレーション嵌合により圧入される。
【0006】
ボール3は、外輪1のトラック溝5と内輪2のトラック溝7が協働して形成するボールトラックに配され、トルクを伝達する。保持器4は、ボール3を収容するポケット9を有し、このポケット9とボール3との間にポケットすきまXを設け、かつ、内輪2の外表面8と外輪1の円筒状孔6でそれぞれ接触案内され、ボール中心Cを含む継手中心面Pに対して軸線方向に等距離オフセット(オフセット量f)した曲率中心A,Bを有する部分球面状の内表面10aおよび外表面10bを備えている。
【0007】
この等速自在継手では、外輪1と内輪2との間に作動角が付与された場合、保持器4によりボール3を作動角の二等分面上に制御させて等速性を維持すると共に、ボール3のボールトラックからの飛び出しを保持器4のオフセットにより防止している。さらに、外輪1と内輪2が軸方向に相対変位すると、保持器4の外表面10bと外輪1の内表面5との間で滑りが生じ、円滑な軸方向変位を可能にしている。
【0008】
このダブルオフセット型等速自在継手は、他の摺動型等速自在継手であるトリポード型等速自在継手と比べて安価である反面、軸方向変位時における内輪2のスライド抵抗が大きい。ここで、スライド抵抗とは、ボール3がボールトラックに沿って転動する際、内輪2と一体になって移動する保持器4に拘束されるために生じる抵抗を意味する。このスライド抵抗が大きいと、エンジンのアイドリング時の振動を等速自在継手で吸収できず、そのアイドリング振動が車体側に伝達されて乗員に不快感を与えるという問題がある。
【0009】
この問題を解消する手段として、従来から、継手内部のスライド抵抗を低減させるための種々の提案がなされている。例えば、前述したように保持器4のポケット9とボール3との間にポケットすきまXを設けると共に、保持器4の内表面10aの曲率半径を内輪2の外表面8の曲率半径よりも大きくすることにより、両者の間に軸方向すきまYを形成したものがある。
【0010】
この軸方向すきまYの存在により、内輪2と保持器4との相対的な軸方向変位が許容され、かつ、ポケットすきまXの存在によりボール3のスムーズな転動が確保されるので、外輪1と内輪2が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際の継手内部のスライド抵抗が低減される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述したダブルオフセット型等速自在継手では、保持器4とボール3間のポケットすきまXや、その保持器4と内輪2間の軸方向すきまYを拡げることによりボール3の転動を容易にしてスライド抵抗の低減化を図ることができる。しかしながら、外輪1と内輪2が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際に、保持器4の内表面10aの曲率中心と内輪2の外表面8の曲率中心とが一致することはほとんどなく、保持器4の位置が全く定まらない。
【0012】
そのため、外輪1に対して内輪2が軸方向変位するに際して、内輪2が外輪1の円筒状孔奥側に移動した場合と内輪2が外輪1の円筒状孔開口側に移動した場合とで、内輪2の外表面8が保持器4の内表面10aに接触するまでの軸方向の移動距離が異なってくる。このことから、外輪1に対して内輪2が軸方向変位するに際して、内輪2と保持器4間の軸方向すきまYが大きくなったり小さくなったりしてその軸方向すきまYが変動し、エンジンのアイドリング振動に起因する車両振動が不安定になるという現象が内在し、スライド範囲全域でボールの転動を可能にすることが困難であった。
【0013】
そこで、本発明は前記問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、保持器の位置決めを可能とし、かつ、スライド範囲全域でボールの転動を可能にし得る等速自在継手を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための技術的手段として、本発明は、複数の直線状トラック溝が軸方向に設けられた円筒状孔を備えた外方部材と、この外方部材のトラック溝と対応した直線状トラック溝が軸方向に設けられ、かつ、部分球面状の外表面を備えた内方部材と、前記外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝が協働して形成するボールトラックに配されてトルクを伝達する複数のボールと、これらのボールを収容するポケットを備え、かつ、前記内方部材の部分球面状外表面と前記外方部材の円筒状孔でそれぞれ接触案内され、前記ボール中心を含む継手中心面に対して軸方向に等距離オフセットした曲率中心を有する部分球面状の内表面および外表面を備えた保持器とからなる等速自在継手において、前記外方部材の直線状トラック溝と内方部材の直線状トラック溝とを交叉状の配置で設け、両トラック溝の交叉部分にボールを組み込み、かつ、前記内方部材は、直線状トラック溝が外周面に形成されたトラック部材と、そのトラック部材に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面を備えた球面部材とからなる分割構造としたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、外方部材と内方部材の両トラック溝を交叉状の配置で設け、その交叉部分にボールを組み込んだことにより、保持器、ボールおよび球面部材の相互間で軸方向位置が決められるため、外方部材に対して内方部材が軸方向変位するに際して、内方部材が外方部材の奥側または開口側のいずれに移動しても、内方部材と保持器間の軸方向すきまが大きくなったり小さくなったり変動することがなくなってその軸方向すきまの安定化が図れる。
【0016】
このように保持器の位置決めを可能にすると共に、内方部材をトラック部材と球面部材からなる分割構造とし、前記トラック部材を球面部材に対して軸方向に相対移動可能に係合したことにより、外方部材に対して内方部材が軸方向変位するに際して、球面部材に対するトラック部材の軸方向移動が得られるので、軸方向のスライド範囲全域でボールの転動が可能となる。
【0017】
なお、この内方部材の軸方向変位時、ボールがボールトラックから脱落することを未然に防止するため、内方部材のトラック部材の軸方向長さを大きくすることが望ましい。ここで、「スライド範囲全域」とは、製造業者が、保証している等速自在継手のスライド可能な範囲またはそれに準ずる範囲を意味する。また、内方部材は、中間軸と一体化することも可能である。
【0018】
なお、トラック部材と球面部材の係合は、トラック部材の外表面または球面部材の内表面のいずれか一方に凹部を形成すると共に他方に凸部を形成し、それら凹凸部を相互に嵌合させることにより、トラック部材と球面部材を軸方向に相対移動可能に係合させた構造でもって容易に実現することができる。
【0019】
前記構成における球面部材は、樹脂製の一体成形品であることが望ましい。このように球面部材が樹脂製であれば、球面部材が複雑な形状となっても、その加工製作が容易となる。また、トラック部材との間で良好な滑りも得られる。
【0020】
球面部材は、トラック部材のトラック溝に嵌入する肉厚部を有する環状基部と、その環状基部から軸方向に延びて前記トラック部材と係合する係合部とからなる構造とすることが望ましい。このようにすれば、環状基部の肉厚部により球面部材自体の強度を確保することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の実施形態で、摺動型等速自在継手の一例としてダブルオフセット型等速自在継手を示す。このダブルオフセット型等速自在継手は、車体側のディファレンシャルに取り付けられた外方部材である外輪11と、中間軸の一端に取り付けられた内方部材である内輪12と、外輪11および内輪12の間に組み込まれた複数のボール13と、外輪11と内輪12との間に介在してボール13を支持する保持器14とを主要な構成要素としている。
【0022】
外輪11は、複数の直線状トラック溝15が円周方向等間隔に形成された円筒状孔16を有する。内輪12は、外輪11のトラック溝15に対応させて複数の直線状トラック溝17が円周方向等間隔に形成され、かつ、部分球面状の外表面18を有する。内輪12の内径には、トルク伝達可能なように中間軸23の一端がセレーション嵌合により圧入されている。
【0023】
ボール13は、外輪11のトラック溝15と内輪12のトラック溝17が協働して形成するボールトラックに配され、トルクを伝達する。保持器14は、ボール13を収容するポケット19を有し、このポケット19とボール13との間にポケットすきまXを設け、かつ、内輪12の外表面18と外輪11の円筒状孔16でそれぞれ接触案内され、ボール中心Cを含む継手中心面Pに対して軸線方向に等距離オフセット(オフセット量f)した曲率中心A,Bを有する部分球面状の内表面20および外表面21を備えている。
【0024】
また、前述したように保持器14のポケット19とボール13との間にポケットすきまXを設けると共に、保持器14の内表面20の曲率半径を内輪12の外表面18の曲率半径よりも大きくすることにより、両者の間に軸方向すきまYを形成している。この軸方向すきまYの存在により、内輪12と保持器14との相対的な軸方向変位が許容され、かつ、ポケットすきまXの存在によりボール13のスムーズな転動が確保されるので、外輪11と内輪12が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際の継手内部のスライド抵抗が低減される。
【0025】
この等速自在継手では、外輪11と内輪12との間に作動角が付与された場合、保持器14によりボール13を作動角の二等分面上に制御させて等速性を維持すると共に、ボール13のボールトラックからの飛び出しを保持器14のオフセットにより防止する。さらに、外輪11と内輪12が軸方向に相対変位すると、保持器14の外表面21と外輪11の内表面22との間で滑りが生じ、円滑な軸方向変位を可能にしている。
【0026】
この実施形態では、軸方向のスライド範囲全域でボールの転動を可能にする目的から、以下のような構造を採用している。つまり、図3に示すように前述の内輪12を、直線状トラック溝17が外周面に形成されたトラック部材25(図4参照)と、そのトラック部材25に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面18を備えた球面部材26(図5参照)とからなる分割構造とする。
【0027】
このように内輪12をトラック部材25と球面部材26からなる分割構造とし、トラック部材25を球面部材26に対して軸方向に相対移動可能に係合したことにより、外輪11に対して内輪12が軸方向変位するに際して、球面部材26に対するトラック部材25の軸方向移動が得られるので、スライド範囲全域でボールの転動が可能となる。
【0028】
トラック部材25の内径には、中間軸23の一端がトルク伝達可能なように嵌合するセレーション(図示せず)が形成されている。なお、トラック部材25は、中間軸23と一体化することも可能である。また、トラック部材25の外径には、外輪12のトラック溝15と対応させて複数のトラック溝17が円周方向等間隔に形成されているが、前述したように軸方向のスライド範囲全域でボールの転動を可能とするに際して、外輪11に対する内輪12の軸方向変位時、保持器14の位置決めを実現する手段として、トラック部材25のトラック溝17と外輪11のトラック溝15とを相互にわずかに交叉するように配置する。
【0029】
つまり、トラック部材25のトラック溝17を軸方向に対してわずかに傾斜させて配し、かつ、外輪11のトラック溝15を軸方向に対して前述のトラック溝17の傾斜方向と反対にわずかに傾斜させて配する(図2参照)。また、外輪11のトラック溝15およびトラック部材25のトラック溝17はともに、円周方向等間隔に配置されているが、その円周方向一つおきに軸方向に対して傾斜する向きを同一とし、円周方向で隣接する相互間では軸方向に対して傾斜する向きが反対となっている(図2乃至図4参照)。
【0030】
このように内輪12のトラック溝17と外輪11のトラック溝15の交叉部分にボール13を組み込むことにより、保持器14、ボール13および球面部材26の相互間で軸方向位置が決められるため、外輪11に対して内輪12が軸方向変位するに際して、内輪12が外輪11の奥側または開口側のいずれに移動しても、内輪12と保持器14間の軸方向すきまYが大きくなったり小さくなったり変動することがなくなってその軸方向すきまYの安定化が図れる。
【0031】
ここで、外輪11に対する内輪12の軸方向変位時、ボール13がボールトラックから脱落することを未然に防止するため、内輪12のトラック部材25の軸方向長さを、例えば保持器14の軸方向長さよりも大きくする(図1参照)。なお、内輪12のトラック部材25の軸方向長さを大きくした分、外輪11と内輪12が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際に、トラック部材25の外径と保持器14の内径とが干渉することを防止するため、保持器14の大径側(外輪11の円筒状孔16の奥側)の内径を拡径させてテーパ状とする。
【0032】
球面部材26は、複雑な形状となってもその加工製作が容易で、また、トラック部材25との間で良好な滑りが得られるように樹脂製の一体成形品とする。この球面部材26は、トラック部材25のトラック溝17に嵌入する肉厚部27を有する環状基部28と、その環状基部28から軸方向に延びてトラック部材25と係合してそのトラック溝17間に配置される係合部29とからなる構造を具備する。前述したように環状基部28に肉厚部27を形成したことにより、球面部材26の強度を確保することができる。
【0033】
トラック部材25と球面部材26については、例えばトラック部材25の外周面でトラック溝17間で軸方向に延びる直線溝状の凹部30を形成し、球面部材26の係合部29の内周面に軸方向に延びる直状の凸部31を形成し、それら凹部30と凸部31を相互に嵌合させることにより、トラック部材25と球面部材26を軸方向に相対移動可能に係合させた構造とする。なお、前述の構造とは逆に、トラック部材25の外周面に凸部を形成し、球面部材26の内周面に凹部を形成するようにして両者を係合させる構造であってもよい。
【0034】
【実施例】
本発明者は、本発明の等速自在継手(実施例)と従来の等速自在継手(比較例1〜3)について、加振なしの静的スライド抵抗を測定した。この試験では、等速自在継手における作動角θ=0°、回転数N=0rpm、負荷トルクT=9.8N・mを測定条件とした。また、比較例1には、保持器4が実公昭63−2665号公報に記載のRPCF(ローリング・プランジ・クリアランス・フラット)タイプのものを使用し、比較例2,3には、保持器4が特開平9−280261号公報に記載のRPE(ローリング・プランジ・エクステンド)タイプのものを二つ使用した。
【0035】
この試験結果を図6に示す。同図に示すように比較例1では、スライド量が約2mm程度でスライド抵抗が急激に上昇し、比較例2,3では、スライド量が約6mm程度でスライド抵抗が急激に上昇した。これに対して、実施例では、スライド抵抗の急激な上昇が見られず、スライド範囲全域でボールのスムーズな転動が可能となっている。
【0036】
次に、アイドリング時のエンジンからのトルク相当分を等速自在継手に負荷した状態で、アイドリング振動を想定した正弦波状の加振ありのスライド抵抗を測定した。この試験では、等速自在継手における作動角θ=6°、負荷トルクT=196N・m、振幅=±0.25mm、周波数=20Hzを測定条件とした。また、比較例1には、保持器4がST(スタンダード)タイプのものを使用し、比較例2には、保持器4がRPCF(ローリング・プランジ・クリアランス・フラット)タイプのものを使用した。
【0037】
この試験結果を図7に示す。同図に示すように比較例1ではスライド抵抗が2000〜3000Nであり、比較例2ではスライド抵抗が300〜500Nであったのに対して、実施例ではスライド抵抗が200〜250Nであり、スライド抵抗の低減が見られた。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、外方部材と内方部材の両トラック溝を交叉状の配置で設け、その交叉部分にボールを組み込んだことにより、保持器、ボールおよび球面部材の相互間で軸方向位置決めを可能とし、内方部材をトラック部材と球面部材からなる分割構造とし、トラック部材を球面部材に対して軸方向に相対移動可能に係合したことにより、外方部材に対する内方部材の軸方向変位時、球面部材に対するトラック部材の軸方向移動が得られるので、内方部材のスライド範囲全域でボールの転動を可能とすることができ、エンジンのアイドリング振動に起因する車両振動の安定化が図れる。
【0039】
また、前述の球面部材を樹脂製の一体成形品とすれば、球面部材が複雑な形状となっても、その加工製作が容易となり、トラック部材との間で良好な滑りも得られる。さらに、球面部材は、トラック部材のトラック溝に嵌入する肉厚部を有する環状基部と、その環状基部から軸方向に延びて前記トラック部材と係合する係合部とからなる構造とすれば、環状基部の肉厚部により球面部材の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る等速自在継手の実施形態で、図2のI−I線に沿う断面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】トラック部材と球面部材を組み付けた内輪を示す斜視図である。
【図4】内輪のトラック部材を示す斜視図である。
【図5】内輪の球面部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例で、加振なしの静的スライド抵抗についての測定結果を示す特性図である。
【図7】本発明の他の実施例で、加振ありのスライド抵抗についての測定結果を示す特性図である。
【図8】従来の等速自在継手で、ダブルオフセット型の等速自在継手を示す断面図である。
【図9】図8の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
11 外方部材(外輪)
12 内方部材(内輪)
13 ボール
14 保持器
15 外方部材の直線状トラック溝
16 円筒状孔
17 内方部材の直線状トラック溝
18 内方部材の外表面
19 ポケット
20 保持器の内表面
21 保持器の外表面
25 トラック部材
26 球面部材
27 肉厚部
28 環状基部
29 係合部
30 凹部
31 凸部
A,B 曲率中心
C ボール中心
P 継手中心面
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のドライブシャフトなどの動力伝達機構において使用され、駆動側と従動側の二軸間で角度変位および軸方向変位を許容する摺動型等速自在継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、エンジン側と駆動車輪側との間に中間軸を介装し、その中間軸の一端部を摺動型等速自在継手を介してディファレンシャルに連結し、他端部を固定型等速自在継手および車輪軸受を介して駆動車輪に連結した構造を具備する。
【0003】
この摺動型等速自在継手には各種タイプのものがあるが、ドライブシャフトに使用する場合、他の摺動型等速自在継手であるトリポード型等速自在継手に比べて安価であるダブルオフセット型等速自在継手が多用されている。このダブルオフセット型等速自在継手の一例を図8および図9に示す。
【0004】
このダブルオフセット型等速自在継手は、車体側のディファレンシャルに取り付けられた外輪1と、中間軸の一端に取り付けられた内輪2と、外輪1および内輪2の間に組み込まれた複数のボール3と、外輪1と内輪2との間に介在してボール3を支持する保持器4とを主要な構成要素としている。
【0005】
外輪1は、その軸線に平行な複数の直線状トラック溝5が円周方向等間隔に形成された円筒状孔6を有する。内輪2は、外輪1のトラック溝5に対応させて軸線に平行な複数の直線状トラック溝7が円周方向等間隔に形成され、かつ、部分球面状の外表面8を有する。図示しないが、内輪2の内径には、トルク伝達可能なように中間軸の一端がセレーション嵌合により圧入される。
【0006】
ボール3は、外輪1のトラック溝5と内輪2のトラック溝7が協働して形成するボールトラックに配され、トルクを伝達する。保持器4は、ボール3を収容するポケット9を有し、このポケット9とボール3との間にポケットすきまXを設け、かつ、内輪2の外表面8と外輪1の円筒状孔6でそれぞれ接触案内され、ボール中心Cを含む継手中心面Pに対して軸線方向に等距離オフセット(オフセット量f)した曲率中心A,Bを有する部分球面状の内表面10aおよび外表面10bを備えている。
【0007】
この等速自在継手では、外輪1と内輪2との間に作動角が付与された場合、保持器4によりボール3を作動角の二等分面上に制御させて等速性を維持すると共に、ボール3のボールトラックからの飛び出しを保持器4のオフセットにより防止している。さらに、外輪1と内輪2が軸方向に相対変位すると、保持器4の外表面10bと外輪1の内表面5との間で滑りが生じ、円滑な軸方向変位を可能にしている。
【0008】
このダブルオフセット型等速自在継手は、他の摺動型等速自在継手であるトリポード型等速自在継手と比べて安価である反面、軸方向変位時における内輪2のスライド抵抗が大きい。ここで、スライド抵抗とは、ボール3がボールトラックに沿って転動する際、内輪2と一体になって移動する保持器4に拘束されるために生じる抵抗を意味する。このスライド抵抗が大きいと、エンジンのアイドリング時の振動を等速自在継手で吸収できず、そのアイドリング振動が車体側に伝達されて乗員に不快感を与えるという問題がある。
【0009】
この問題を解消する手段として、従来から、継手内部のスライド抵抗を低減させるための種々の提案がなされている。例えば、前述したように保持器4のポケット9とボール3との間にポケットすきまXを設けると共に、保持器4の内表面10aの曲率半径を内輪2の外表面8の曲率半径よりも大きくすることにより、両者の間に軸方向すきまYを形成したものがある。
【0010】
この軸方向すきまYの存在により、内輪2と保持器4との相対的な軸方向変位が許容され、かつ、ポケットすきまXの存在によりボール3のスムーズな転動が確保されるので、外輪1と内輪2が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際の継手内部のスライド抵抗が低減される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述したダブルオフセット型等速自在継手では、保持器4とボール3間のポケットすきまXや、その保持器4と内輪2間の軸方向すきまYを拡げることによりボール3の転動を容易にしてスライド抵抗の低減化を図ることができる。しかしながら、外輪1と内輪2が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際に、保持器4の内表面10aの曲率中心と内輪2の外表面8の曲率中心とが一致することはほとんどなく、保持器4の位置が全く定まらない。
【0012】
そのため、外輪1に対して内輪2が軸方向変位するに際して、内輪2が外輪1の円筒状孔奥側に移動した場合と内輪2が外輪1の円筒状孔開口側に移動した場合とで、内輪2の外表面8が保持器4の内表面10aに接触するまでの軸方向の移動距離が異なってくる。このことから、外輪1に対して内輪2が軸方向変位するに際して、内輪2と保持器4間の軸方向すきまYが大きくなったり小さくなったりしてその軸方向すきまYが変動し、エンジンのアイドリング振動に起因する車両振動が不安定になるという現象が内在し、スライド範囲全域でボールの転動を可能にすることが困難であった。
【0013】
そこで、本発明は前記問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、保持器の位置決めを可能とし、かつ、スライド範囲全域でボールの転動を可能にし得る等速自在継手を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための技術的手段として、本発明は、複数の直線状トラック溝が軸方向に設けられた円筒状孔を備えた外方部材と、この外方部材のトラック溝と対応した直線状トラック溝が軸方向に設けられ、かつ、部分球面状の外表面を備えた内方部材と、前記外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝が協働して形成するボールトラックに配されてトルクを伝達する複数のボールと、これらのボールを収容するポケットを備え、かつ、前記内方部材の部分球面状外表面と前記外方部材の円筒状孔でそれぞれ接触案内され、前記ボール中心を含む継手中心面に対して軸方向に等距離オフセットした曲率中心を有する部分球面状の内表面および外表面を備えた保持器とからなる等速自在継手において、前記外方部材の直線状トラック溝と内方部材の直線状トラック溝とを交叉状の配置で設け、両トラック溝の交叉部分にボールを組み込み、かつ、前記内方部材は、直線状トラック溝が外周面に形成されたトラック部材と、そのトラック部材に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面を備えた球面部材とからなる分割構造としたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、外方部材と内方部材の両トラック溝を交叉状の配置で設け、その交叉部分にボールを組み込んだことにより、保持器、ボールおよび球面部材の相互間で軸方向位置が決められるため、外方部材に対して内方部材が軸方向変位するに際して、内方部材が外方部材の奥側または開口側のいずれに移動しても、内方部材と保持器間の軸方向すきまが大きくなったり小さくなったり変動することがなくなってその軸方向すきまの安定化が図れる。
【0016】
このように保持器の位置決めを可能にすると共に、内方部材をトラック部材と球面部材からなる分割構造とし、前記トラック部材を球面部材に対して軸方向に相対移動可能に係合したことにより、外方部材に対して内方部材が軸方向変位するに際して、球面部材に対するトラック部材の軸方向移動が得られるので、軸方向のスライド範囲全域でボールの転動が可能となる。
【0017】
なお、この内方部材の軸方向変位時、ボールがボールトラックから脱落することを未然に防止するため、内方部材のトラック部材の軸方向長さを大きくすることが望ましい。ここで、「スライド範囲全域」とは、製造業者が、保証している等速自在継手のスライド可能な範囲またはそれに準ずる範囲を意味する。また、内方部材は、中間軸と一体化することも可能である。
【0018】
なお、トラック部材と球面部材の係合は、トラック部材の外表面または球面部材の内表面のいずれか一方に凹部を形成すると共に他方に凸部を形成し、それら凹凸部を相互に嵌合させることにより、トラック部材と球面部材を軸方向に相対移動可能に係合させた構造でもって容易に実現することができる。
【0019】
前記構成における球面部材は、樹脂製の一体成形品であることが望ましい。このように球面部材が樹脂製であれば、球面部材が複雑な形状となっても、その加工製作が容易となる。また、トラック部材との間で良好な滑りも得られる。
【0020】
球面部材は、トラック部材のトラック溝に嵌入する肉厚部を有する環状基部と、その環状基部から軸方向に延びて前記トラック部材と係合する係合部とからなる構造とすることが望ましい。このようにすれば、環状基部の肉厚部により球面部材自体の強度を確保することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の実施形態で、摺動型等速自在継手の一例としてダブルオフセット型等速自在継手を示す。このダブルオフセット型等速自在継手は、車体側のディファレンシャルに取り付けられた外方部材である外輪11と、中間軸の一端に取り付けられた内方部材である内輪12と、外輪11および内輪12の間に組み込まれた複数のボール13と、外輪11と内輪12との間に介在してボール13を支持する保持器14とを主要な構成要素としている。
【0022】
外輪11は、複数の直線状トラック溝15が円周方向等間隔に形成された円筒状孔16を有する。内輪12は、外輪11のトラック溝15に対応させて複数の直線状トラック溝17が円周方向等間隔に形成され、かつ、部分球面状の外表面18を有する。内輪12の内径には、トルク伝達可能なように中間軸23の一端がセレーション嵌合により圧入されている。
【0023】
ボール13は、外輪11のトラック溝15と内輪12のトラック溝17が協働して形成するボールトラックに配され、トルクを伝達する。保持器14は、ボール13を収容するポケット19を有し、このポケット19とボール13との間にポケットすきまXを設け、かつ、内輪12の外表面18と外輪11の円筒状孔16でそれぞれ接触案内され、ボール中心Cを含む継手中心面Pに対して軸線方向に等距離オフセット(オフセット量f)した曲率中心A,Bを有する部分球面状の内表面20および外表面21を備えている。
【0024】
また、前述したように保持器14のポケット19とボール13との間にポケットすきまXを設けると共に、保持器14の内表面20の曲率半径を内輪12の外表面18の曲率半径よりも大きくすることにより、両者の間に軸方向すきまYを形成している。この軸方向すきまYの存在により、内輪12と保持器14との相対的な軸方向変位が許容され、かつ、ポケットすきまXの存在によりボール13のスムーズな転動が確保されるので、外輪11と内輪12が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際の継手内部のスライド抵抗が低減される。
【0025】
この等速自在継手では、外輪11と内輪12との間に作動角が付与された場合、保持器14によりボール13を作動角の二等分面上に制御させて等速性を維持すると共に、ボール13のボールトラックからの飛び出しを保持器14のオフセットにより防止する。さらに、外輪11と内輪12が軸方向に相対変位すると、保持器14の外表面21と外輪11の内表面22との間で滑りが生じ、円滑な軸方向変位を可能にしている。
【0026】
この実施形態では、軸方向のスライド範囲全域でボールの転動を可能にする目的から、以下のような構造を採用している。つまり、図3に示すように前述の内輪12を、直線状トラック溝17が外周面に形成されたトラック部材25(図4参照)と、そのトラック部材25に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面18を備えた球面部材26(図5参照)とからなる分割構造とする。
【0027】
このように内輪12をトラック部材25と球面部材26からなる分割構造とし、トラック部材25を球面部材26に対して軸方向に相対移動可能に係合したことにより、外輪11に対して内輪12が軸方向変位するに際して、球面部材26に対するトラック部材25の軸方向移動が得られるので、スライド範囲全域でボールの転動が可能となる。
【0028】
トラック部材25の内径には、中間軸23の一端がトルク伝達可能なように嵌合するセレーション(図示せず)が形成されている。なお、トラック部材25は、中間軸23と一体化することも可能である。また、トラック部材25の外径には、外輪12のトラック溝15と対応させて複数のトラック溝17が円周方向等間隔に形成されているが、前述したように軸方向のスライド範囲全域でボールの転動を可能とするに際して、外輪11に対する内輪12の軸方向変位時、保持器14の位置決めを実現する手段として、トラック部材25のトラック溝17と外輪11のトラック溝15とを相互にわずかに交叉するように配置する。
【0029】
つまり、トラック部材25のトラック溝17を軸方向に対してわずかに傾斜させて配し、かつ、外輪11のトラック溝15を軸方向に対して前述のトラック溝17の傾斜方向と反対にわずかに傾斜させて配する(図2参照)。また、外輪11のトラック溝15およびトラック部材25のトラック溝17はともに、円周方向等間隔に配置されているが、その円周方向一つおきに軸方向に対して傾斜する向きを同一とし、円周方向で隣接する相互間では軸方向に対して傾斜する向きが反対となっている(図2乃至図4参照)。
【0030】
このように内輪12のトラック溝17と外輪11のトラック溝15の交叉部分にボール13を組み込むことにより、保持器14、ボール13および球面部材26の相互間で軸方向位置が決められるため、外輪11に対して内輪12が軸方向変位するに際して、内輪12が外輪11の奥側または開口側のいずれに移動しても、内輪12と保持器14間の軸方向すきまYが大きくなったり小さくなったり変動することがなくなってその軸方向すきまYの安定化が図れる。
【0031】
ここで、外輪11に対する内輪12の軸方向変位時、ボール13がボールトラックから脱落することを未然に防止するため、内輪12のトラック部材25の軸方向長さを、例えば保持器14の軸方向長さよりも大きくする(図1参照)。なお、内輪12のトラック部材25の軸方向長さを大きくした分、外輪11と内輪12が角度変位および軸方向変位を伴いながら回転トルクを伝達する際に、トラック部材25の外径と保持器14の内径とが干渉することを防止するため、保持器14の大径側(外輪11の円筒状孔16の奥側)の内径を拡径させてテーパ状とする。
【0032】
球面部材26は、複雑な形状となってもその加工製作が容易で、また、トラック部材25との間で良好な滑りが得られるように樹脂製の一体成形品とする。この球面部材26は、トラック部材25のトラック溝17に嵌入する肉厚部27を有する環状基部28と、その環状基部28から軸方向に延びてトラック部材25と係合してそのトラック溝17間に配置される係合部29とからなる構造を具備する。前述したように環状基部28に肉厚部27を形成したことにより、球面部材26の強度を確保することができる。
【0033】
トラック部材25と球面部材26については、例えばトラック部材25の外周面でトラック溝17間で軸方向に延びる直線溝状の凹部30を形成し、球面部材26の係合部29の内周面に軸方向に延びる直状の凸部31を形成し、それら凹部30と凸部31を相互に嵌合させることにより、トラック部材25と球面部材26を軸方向に相対移動可能に係合させた構造とする。なお、前述の構造とは逆に、トラック部材25の外周面に凸部を形成し、球面部材26の内周面に凹部を形成するようにして両者を係合させる構造であってもよい。
【0034】
【実施例】
本発明者は、本発明の等速自在継手(実施例)と従来の等速自在継手(比較例1〜3)について、加振なしの静的スライド抵抗を測定した。この試験では、等速自在継手における作動角θ=0°、回転数N=0rpm、負荷トルクT=9.8N・mを測定条件とした。また、比較例1には、保持器4が実公昭63−2665号公報に記載のRPCF(ローリング・プランジ・クリアランス・フラット)タイプのものを使用し、比較例2,3には、保持器4が特開平9−280261号公報に記載のRPE(ローリング・プランジ・エクステンド)タイプのものを二つ使用した。
【0035】
この試験結果を図6に示す。同図に示すように比較例1では、スライド量が約2mm程度でスライド抵抗が急激に上昇し、比較例2,3では、スライド量が約6mm程度でスライド抵抗が急激に上昇した。これに対して、実施例では、スライド抵抗の急激な上昇が見られず、スライド範囲全域でボールのスムーズな転動が可能となっている。
【0036】
次に、アイドリング時のエンジンからのトルク相当分を等速自在継手に負荷した状態で、アイドリング振動を想定した正弦波状の加振ありのスライド抵抗を測定した。この試験では、等速自在継手における作動角θ=6°、負荷トルクT=196N・m、振幅=±0.25mm、周波数=20Hzを測定条件とした。また、比較例1には、保持器4がST(スタンダード)タイプのものを使用し、比較例2には、保持器4がRPCF(ローリング・プランジ・クリアランス・フラット)タイプのものを使用した。
【0037】
この試験結果を図7に示す。同図に示すように比較例1ではスライド抵抗が2000〜3000Nであり、比較例2ではスライド抵抗が300〜500Nであったのに対して、実施例ではスライド抵抗が200〜250Nであり、スライド抵抗の低減が見られた。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、外方部材と内方部材の両トラック溝を交叉状の配置で設け、その交叉部分にボールを組み込んだことにより、保持器、ボールおよび球面部材の相互間で軸方向位置決めを可能とし、内方部材をトラック部材と球面部材からなる分割構造とし、トラック部材を球面部材に対して軸方向に相対移動可能に係合したことにより、外方部材に対する内方部材の軸方向変位時、球面部材に対するトラック部材の軸方向移動が得られるので、内方部材のスライド範囲全域でボールの転動を可能とすることができ、エンジンのアイドリング振動に起因する車両振動の安定化が図れる。
【0039】
また、前述の球面部材を樹脂製の一体成形品とすれば、球面部材が複雑な形状となっても、その加工製作が容易となり、トラック部材との間で良好な滑りも得られる。さらに、球面部材は、トラック部材のトラック溝に嵌入する肉厚部を有する環状基部と、その環状基部から軸方向に延びて前記トラック部材と係合する係合部とからなる構造とすれば、環状基部の肉厚部により球面部材の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る等速自在継手の実施形態で、図2のI−I線に沿う断面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】トラック部材と球面部材を組み付けた内輪を示す斜視図である。
【図4】内輪のトラック部材を示す斜視図である。
【図5】内輪の球面部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例で、加振なしの静的スライド抵抗についての測定結果を示す特性図である。
【図7】本発明の他の実施例で、加振ありのスライド抵抗についての測定結果を示す特性図である。
【図8】従来の等速自在継手で、ダブルオフセット型の等速自在継手を示す断面図である。
【図9】図8の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
11 外方部材(外輪)
12 内方部材(内輪)
13 ボール
14 保持器
15 外方部材の直線状トラック溝
16 円筒状孔
17 内方部材の直線状トラック溝
18 内方部材の外表面
19 ポケット
20 保持器の内表面
21 保持器の外表面
25 トラック部材
26 球面部材
27 肉厚部
28 環状基部
29 係合部
30 凹部
31 凸部
A,B 曲率中心
C ボール中心
P 継手中心面
Claims (5)
- 複数の直線状トラック溝が軸方向に設けられた円筒状孔を備えた外方部材と、この外方部材のトラック溝と対応した直線状トラック溝が軸方向に設けられ、かつ、部分球面状の外表面を備えた内方部材と、前記外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝が協働して形成するボールトラックに配されてトルクを伝達する複数のボールと、これらのボールを収容するポケットを備え、かつ、前記内方部材の部分球面状外表面と前記外方部材の円筒状孔でそれぞれ接触案内され、前記ボール中心を含む継手中心面に対して軸方向に等距離オフセットした曲率中心を有する部分球面状の内表面および外表面を備えた保持器とからなる等速自在継手において、
前記外方部材の直線状トラック溝と内方部材の直線状トラック溝とを交叉状の配置で設け、両トラック溝の交叉部分にボールを組み込み、かつ、前記内方部材は、直線状トラック溝が外周面に形成されたトラック部材と、そのトラック部材に対して軸方向に相対移動可能に係合され、部分球面状の外表面を備えた球面部材とからなる分割構造としたことを特徴とする等速自在継手。 - 前記トラック部材の外表面または球面部材の内表面のいずれか一方に凹部を形成すると共に他方に凸部を形成し、それら凹凸部を相互に嵌合させることにより、トラック部材と球面部材を軸方向に相対移動可能に係合させたことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
- 前記トラック部材は、中間軸と一体化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の等速自在継手。
- 前記球面部材は、樹脂製の一体成形品であることを特徴とする請求項1又は2に記載の等速自在継手。
- 前記球面部材は、トラック部材のトラック溝に嵌入する肉厚部を有する環状基部と、その環状基部から軸方向に延びて前記トラック部材と係合する係合部とからなることを特徴とする請求項1、2又は4のいずれかに記載の等速自在継手。
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Cited By (2)
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WO2007029514A1 (ja) * | 2005-09-06 | 2007-03-15 | Honda Motor Co., Ltd. | 等速ジョイント |
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-
2002
- 2002-07-01 JP JP2002192253A patent/JP2004036690A/ja not_active Withdrawn
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