JP2004031159A - 編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、種々の問題点を克服し、ガス拡散性、電気伝導性に優れ且つ薄い燃料電池用ガス拡散層基材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本の炭素化したマルチフィラメントからなり、開口率が5%以下である編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材、及び、繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成する燃料電池ガス拡散層基材の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本の炭素化したマルチフィラメントからなり、開口率が5%以下である編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材、及び、繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成する燃料電池ガス拡散層基材の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維織編物からなる燃料電池用ガス拡散層基材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維織編物は、従来から主に複合材料の基布として広く生産されている。又、炭素繊維織編物は、導電性が良好なことや機械的強度や耐蝕性に優れていることより、導電性基材としても注目されてきた。
【0003】
固体高分子型燃料電池の拡散層基材は、ガス拡散、ガス透過性、保水性、強度、柔軟性、電極製造時や電極を組んだときの圧縮に耐える強度等が必要とされる。また、固体高分子型燃料電池はリン酸型燃料電池に比べて小型のものが要求されているため、拡散層基材も薄型のものが必要とされている。このような固体高分子型燃料電池用の拡散層基材としては、炭素繊維紙や炭素繊維織物を基材としたものが主流となっている。
【0004】
特開昭63−233073号公報には、耐炎化繊維繊維束を用いた織編物に炭素化可能物質を含浸させ炭素化させた導電性基材が提案されている。
しかし、その導電性基材は、炭素繊維織物のみからなる拡散層基材ではなく、炭素化可能物質を含浸され、適切なガス拡散、ガス透過性となるものであった。更に、炭素化可能物質由来の炭素部分と炭素繊維織物由来の炭素部分では、ガス拡散、ガス透過性が大きく異なる不均一なものであるという点が問題であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を克服し、ガス拡散性、電気伝導性に優れ且つ薄い燃料電池用ガス拡散層基材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の要旨は、繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本の炭素化したマルチフィラメントからなり、開口率が5%以下である編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材である。
【0007】
第二の要旨は、繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成する燃料電池ガス拡散層基材の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
<炭素化したマルチフィラメント>
本発明で用いる炭素化したマルチフィラメントは、織編物とする前に炭素化されたマルチフィラメントでも、織編物にした後、炭素化したマルチフィラメントでも良い。
炭素化したマルチフィラメントの原料としても、ポリアクリロニトリル系繊維、レーヨン繊維、ピッチなどいずれであって良いが、炭素化した際マルチフィラメントの機械的強度が比較的高いポリアクリロニトリル系繊維が好ましい。
【0009】
ここでいうポリアクリロニトリル系繊維とは、原料としてアクリロニトリルを主成分とするポリマーを用いて製造されるものである。アクリロニトリル系繊維は200〜400℃の空気雰囲気中で該繊維を加熱焼成して酸化繊維に転換する耐炎化工程、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中でさらに300〜2500℃に加熱して炭化する炭化工程を経て、炭素化したマルチフィラメントとなる。
【0010】
本発明においては、炭素化したマルチフィラメントが繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本を有することが必要である。
炭素化したマルチフィラメントの繊度が30dtex未満の場合は、緻密で肉薄な織編物を形成しやすいものの製造コストが高くなり、逆に1000dtexを越える場合は、ガス拡散層基材に適した緻密で肉薄な織編物とは成り難い。更に繊度の下限は、100dtex以上が耐圧縮性や柔軟性があり好ましく、上限は400dtex以下が一般に広く普及している織機での製織が可能であり好ましい。
【0011】
炭素化したマルチフィラメントのフィラメント本数が20本未満の場合は、柔軟性に欠けたものとなり、逆に2500本を越える場合は、毛羽が発生しやすく、強度の劣るものとなる。更にフィラメント数の下限が100本以上の場合は、導伝性の向上する効果があり好ましく、上限は1000本以下の場合は取扱性が特に好ましい。
【0012】
本発明の織編物は、捲縮を有する炭素化したマルチフィラメントで構成されても良い。ここでいう捲縮とは、織編物を形成したことによる形付けられる繊維束の屈曲ではなく、織編物形成とは別に付与された屈曲、単繊維のマイグレーションをいう。捲縮の程度の目安として、JIS L 1013の伸縮性評価法があるが、一般的な仮撚捲縮糸の伸縮性とされる20%以上よりも低くて構わない。
【0013】
捲縮を付与することにより、多方向への微細な導電路を確保できる。嵩高になることで通気量が増大し、ガス拡散性も向上する他、後の製品加工で加圧効果が得られるので、燃料電池用ガス拡散層基材として好都合である。炭素化したマルチフィラメントに捲縮を付与することは、困難なので、耐炎化糸又はその前段階である前駆体繊維に付与する。
【0014】
捲縮の付与方法は限定されないが、例えば、加撚−熱固定−解撚によって捲縮を付与する方法、加熱されたボックスの中に繊維束を押し込むことによって捲縮を付与する方法、ギア等の凹凸のあるもので加圧して捲縮を付与する方法等が挙げられる。いずれの場合においても、耐炎化糸が毛羽立たない程度の条件に設定することが好ましい。毛羽があると、織編物製造工程通過性に影響する他、織編物に炭素化可能物質を含浸する際や焼成を行う際に、毛羽脱落が起こる場合も有り、強力や外観の面でも好ましくない。
【0015】
本発明の織編物は、実撚りした炭素化したマルチフィラメントで構成されても良い。ここでいう実撚りとは、紡糸工程で繊維束の集束向上のために付与される撚や、その後の製織工程通過性を考慮した追燃をいう。実撚数、撚方向は特に制限されないが、繊維束自身のトルクで工程通過性に悪影響を及ぼさない範囲に設定するのが好ましい。
【0016】
<織編物>
本発明においては、前記炭素化したマルチフィラメントで織編物を形成し、その開口率を5%以下とすることが必要である。
開口率が5%を越える場合は、織編物としての均一性に劣り、拡散層基材として良好な導電性、保水性が得られない。開口率が1%以下の場合は、導電性、保水性の他に更に厚みの均一が得られ、好ましい。
本発明の炭素化したマルチフィラメント織編物では、開口率が0%でも、その組織・繊度・断面形状等によりガス拡散性は確保される為、下限値は0%でもよい。
【0017】
開口率は、次の式で求められる。
開口率(%)=(S2/S1)×100
S1:織編物面積
S2:織編物面積S1領域内で織編物を構成する糸が存在しない部分の面積
【0018】
S1、S2は次のように測定する。
織編物の裏面側から光を当て、実体顕微鏡を使用して織編物表面を撮影する。炭素化されたマルチフィラメントは黒色なため光を透過せず、織編物を構成する糸が存在しない部分は光を透過する。この透過した部分(S2)と透過しない部分(S1)の面積を画像解析によって求め、上記式で計算する。光量はハレーションを起こさないレベルとし、解析時の倍率は10倍以内とする。同じ織編物につき5箇所以上測定し、平均する。
【0019】
本発明において織編物の組織は限定されず、一般的に製造・使用されているもので構わない。例えば、織物では、平織、綾織、朱子織等の基本組織の他、変化組織でも構わない。必要に応じて多重織にしても良い。編物では、経編でも横編でも丸編でもよく、平編、ゴム編等の基本組織の他、変化組織でも構わない。
【0020】
<燃料電池用ガス拡散層基材>
本発明の織編物は、そのままで、又、織編物に炭素化可能物質を含浸・焼成して、燃料電池用ガス拡散層基材、特に固体高分子型燃料電池のガス拡散層基材として用いることができる。
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材は、厚みが0.05〜0.5mmでかつ嵩密度0.3〜0.8g/cm3であることが好ましい。厚みが0.05mm未満であると、厚み方向の強度が弱くなり、セルスタックを組んだときのハンドリングに耐えられなくなる。又、0.5mmを越えるとその電気抵抗が高くなり、スタックを積層した際にトータルの厚みが大きくなる。
【0021】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の嵩密度は、0.3〜0.8g/cm3であることが好ましく、0.4〜0.7g/cm3がより好ましい。嵩密度が0.3g/cm3未満である場合、電気抵抗が高くなるうえ、満足できる柔軟性も得られない。また、0.8g/cm3を越えるとガス透過性が悪くなり、燃料電池の性能が低下する。尚、本発明のガス拡散板の厚みは、厚み測定用ダイヤルシックネスゲージを使用し、測定する。このときの測定子の大きさは、直径10mmで測定圧力は1.5kPaで行う。
【0022】
嵩密度は、実測した厚みを用いて、以下の式により算出する。
嵩密度(g/cm3)=目付(g/m2)/(1000×厚み(mm))
【0023】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の通気量は、30cm3/cm2・秒以上が好ましい。通気量が30cm3/cm2・秒より小さいと良好なガス拡散性能が得られない。通気量は開口率とも関係が有り、開口率が大きいと当然通気量も大きくなるが、ここで重要なことは、本発明の編織物の開口率が5%以下、好ましくは0%であり、且つ該通気量を満たすものであることである。それには、本発明の捲縮を有する炭素化したマルチフィラメントからなる織編物が特に効果的である。尚、通気量はJIS L 1069 A法で測定し得られた値とする。
【0024】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の面抵抗は10Ω・cm以下で経方向と緯方向の比が1.5以下であることが好ましく、貫通抵抗は5Ω・cm2以下であることが好ましい。尚、面抵抗は、ガス拡散板の片面に2cmの間隔をあけて銅線をのせ、10mA/cm2の電流密度で電流を流した時の抵抗を測定する。
【0025】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の貫通抵抗は、ガス拡散板の銅板にはさみ、銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cm2の電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求める。
貫通抵抗(Ω・cm2)=測定抵抗値(Ω)×試料面積(cm2)
【0026】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材は、前述した織編物に熱硬化性樹脂を含浸し、加熱加圧により硬化し、次いで炭素化することにより燃料電池ガス拡散層基材とすることが好ましい。
【0027】
ここで用いる熱硬化性樹脂は常温において粘着性、或いは流動性を示す物でかつ炭素化後も導電性物質として残存する物質が好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂等を用いることができる。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。
【0028】
フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
【0029】
この熱硬化性樹脂はその種類や織編物への含浸量により、最終的にガス拡散板に炭化物として残る割合が異なってくる。ガス拡散板を100質量%とした時に、ガス拡散板の柔軟性発現の観点から20〜60質量%が炭素繊維分を除いた樹脂由来の炭化物であることが好ましい。より好ましい下限は30質量%、上限は50質量%である。
【0030】
樹脂または樹脂と導電体の混合物を織編物に含浸する方法としては、絞り装置を用いる方法もしくは熱硬化性樹脂フィルムを織編物に重ねる方法が好ましい。絞り装置を用いる方法は樹脂溶液もしくは混合液中に織編物を含浸し、絞り装置で取り込み液が織編物全体に均一に塗布されるようにし、液量は絞り装置のロール間隔を変えることで調節する方法である。比較的粘度が低い場合はスプレー法等も用いることができる。
【0031】
熱硬化樹脂フィルムを用いる方法は、まず熱硬化性樹脂を離型紙に一旦コーティングし、熱硬化性樹脂フィルムとする。その後、織編物に前記フィルムを積層して加熱加圧処理を行い、熱硬化性樹脂を転写する方法である。
この加熱加圧工程は、生産性の観点から、織編物の全長にわたって連続して行うことが好ましい。また加熱加圧に先立って予熱を行うことが好ましい。この予熱工程において、熱硬化性樹脂を軟化させ、その後に続く加熱加圧工程にて、プレスによりガス拡散板の厚みを良好にコントロールできる。予熱した樹脂含浸織編物を予熱温度より50℃以上高い温度でプレスすることで所望の厚み、密度のガス拡散板を得ることができる。また、所望の厚み、密度のガス拡散板を得るために、樹脂含浸織編物を複数枚重ねて、加熱加圧を行っても良い。
【0032】
前記した加熱加圧は、連続式加熱ロールプレス装置あるいは一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置を用いて行うことが好ましい。前者の連続式加熱プレス装置は、ベルトでガス拡散板を送り出すことになるので、ガス拡散板にはほとんど張力はかからない。したがって、製造中のガス拡散板の破壊は生じにくく、工程通過性に優れる。また、後者の連続加熱式ロールプレス装置は構造が単純であり、ランニングコストも低い。以上、2つの加熱加圧方式は連続で樹脂を硬化するのに適した方法であり、本発明のガス拡散板の製造に用いることが好ましい。
【0033】
前記したエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置を用いる際の加圧圧力は線圧で1.5×104〜1×105N/mであることが好ましい。加熱加圧は繊維中に樹脂を十分にしみ込ませ、曲げ強度を上げるために必要な工程である。樹脂を熱硬化させる時に1.5×104N/m以上の線圧で加圧することにより、十分な導電性と柔軟性を生むことができる。また、1×105N/m以下の線圧で加圧することにより、硬化の際、樹脂から発生する蒸気を十分に外に逃がすことができ、ひび割れの発生を抑えることができる。
【0034】
加熱加圧処理での加熱温度は、硬化処理時間あるいは生産性の観点から140℃以上が好ましく、加熱加圧装置等の設備のためのコストの観点から320℃以下が好ましい。より好ましくは160〜300℃の範囲である。また前記予熱の温度は100〜200℃の範囲が好ましい。
【0035】
樹脂硬化の後に続く炭素化を織編物の全長にわたって連続で行うことが好ましい。ガス拡散板が長尺であれば、ガス拡散層基材の生産性が高くなるだけでなく、その後工程のMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。具体的には、炭素化は不活性処理雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で、織編物の全長にわたって連続して焼成処理することが好ましい。炭素化においては、不活性雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で焼成する炭素化処理の前に行われる、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行っても良い。
【0036】
以上から最終的に得られるガス拡散層基材は、少なくとも外径50cm以下、さらに好ましくは外径40cm以下のロールに巻き取ることが好ましい。外径50cm以下のロールに巻き取ることができれば、ガス拡散層基材としての製品形態をコンパクトにでき、梱包や輸送コストの面でも有利である。
【0037】
次に、上述した織編物の製造方法について説明する。
本発明では、得られる織編物のガス拡散層基材としての適性の面で、繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成して、耐炎化糸を炭素化する。
【0038】
(耐炎化糸)
本発明の製造方法においては、耐炎化糸が繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本を有することが必要である。
耐炎化糸の繊度が50dtex未満の場合は、緻密で肉薄な織編物を形成しやすいものの製造コストが高くなり、逆に1800dtexを越える場合は、緻密な織編物の形成が困難となり、ガス拡散板とした場合に性能の均一さや保水性に劣るものとなる。更に繊度の下限は、100dtex以上であることがガス拡散層基材に耐圧縮性や柔軟性が付与され更に好ましく、上限は400dtex以下であることが一般に広く普及している織機での製織が可能であり更に好ましい。
【0039】
耐炎化糸のフィラメント本数が20本未満の場合は、柔軟性に欠けたものとなり、逆に2500本を越える場合は、毛羽が発生しやすく、強度の劣るものとなる。更にフィラメント数の下限は100本以上であることがガス拡散層基材の導電性が更に向上する効果があり更に好ましく、上限は1000本以下であることがガス拡散層基材の取扱性が向上し更に好ましい。
【0040】
耐炎化糸の単繊維繊度は、1.2dpf以下が好ましい。このような細dpf繊維を用いることにより、織編物とした時に柔軟性や高い電気伝導性を得ることができる。繊度が1.2dpfより大きいと柔軟性が不足し、繊維間の結着点が少なく、このような耐炎化糸を用いて作製したガス拡散板は抵抗が大きくなってしまう。
【0041】
(耐炎化糸からなる織編物)
本発明において、耐炎化糸からなる織編物の組織は限定されず、一般的に製造・使用されているもので構わない。例えば、織物では、平織、綾織、朱子織等の基本組織の他、変化組織でも構わない。必要に応じて多重織にしても良い。編物では、経編でも横編でも丸編でもよく、平編、ゴム編等の基本組織の他、変化組織でも構わない。
耐炎化糸からなる織編物は、炭素化により収縮し、前記開口率が小さくなる性質があるので好ましい。耐炎化糸からなる織編物の開口率は0〜5%であることが炭素化後の織編物の性状の点から好ましい。
本発明の織編物の製造に使用する織機、編機は限定されない。耐炎化糸を使用するため、電気的な安全対策を特別にする必要もなく、一般に広く普及しているレピア織機、エアジェットルーム、横編機、丸編機等が使用でき、特別な設備が不要な為、コスト的にもメリットが有る。
【0042】
本発明の織編物の製造には、開繊工程を加えても良い。開繊工程を加えることで、より開口率を小さくすることが可能な他、厚みを小さくすることができる。また、表面の凹凸も抑えることが出来る。
【0043】
開繊の方法は特に限定されないが、従来提案されている方法でよい。例えば、織編物を振動ロールに接触させる方法、織編物に鋼球を間歇的に打ち当てる方法等が挙げられる。いずれも、毛羽立たない程度の条件で行うことが好ましい。
開繊工程は、耐炎化糸からなる織編物を焼成する前に実施しても良いし、焼成後の炭素化したマルチフィラメントに実施しても良い。また、織物の場合、製織時に経糸に対して実施しても良い。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
尚、各実施例、比較例で得られたものの織編物密度と、その織編物を用いた燃料電池用ガス拡散層基材の特性評価結果を表1に示す。表1中のfはフィラメント本数である。
【0044】
(実施例1)
アクリロニトリル系マルチフィラメントを耐炎化して得られた1100dtex/フィラメント数1000本の耐炎化糸に1m当たり60回(S方向)の撚を加え集束性を良くした。この耐炎化糸でレピア織機を用いて、表1に示した打ち込み本数(織編物密度)で平織物を製織した。次いで窒素雰囲気中で2000℃に加熱して焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は700dtex)を更にガス拡散層基材としたところ、開口率が0%で、通気量、貫通抵抗、面比抵抗のバランスの取れたのガス拡散層基材が得られた。
【0045】
(実施例2)
アクリロニトリル系マルチフィラメントを耐炎化して得られた360dtex/フィラメント本数300本の耐炎化糸に1m当たり60回(S方向)の撚を加え集束性を良くした。この耐炎化糸でレピア織機を用いて、表1に示した打ち込み本数(織編物密度)で平織物を製織した。次いで実施例1と同様に焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は210dtex)を更にガス拡散層基材としたところ、実施例1で得られたものより薄く、貫通抵抗の小さい、ガス拡散層基材が得られた。
【0046】
(実施例3)
アクリロニトリル系マルチフィラメントを耐炎化して得られた360dtex/フィラメント本数300本の耐炎化糸を仮撚機で、加工速度70m/分、ヒーター温度170℃、スピンドル回転数84000rpmで仮撚加工し捲縮糸を得た。この捲縮糸をレピア織機を用いて、表1に示した打ち込み本数(織編物密度)で平織物を製織した。
次いで実施例1と同様に焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は210dtex)を更にガス拡散層基材としたところ、実施例2で得られた織物よりも嵩高で通気性に優れた、ガス拡散層基材が得られた。
【0047】
(実施例4)
実施例2で得た耐炎化糸織物を炭化する前に、その表面に多数の直径5mmの鋼球を加しん力7Gで織物表面に当て開繊(特開平2001−316971号公報記載)した。この開繊処理は加工速度1m/分、雰囲気温度150℃で行った。得られた織物を実施例1と同様の条件で焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は210dtex)をガス拡散層基材としたところ、面比抵抗における経緯差の少ない、ガス拡散層基材が得られた。
【0048】
(実施例5)
実施例2で得た炭化した織物に、実施例4と同様の開繊を行い、更にガス拡散層基材としたところ、実施例4で得たもの同等のガス拡散層基材が得られた。
【0049】
(比較例1)
打ち込み本数(織編物密度)を経29本/2.54cm、緯24本/2.54cmに変更したほかは実施例1と同様に操作し、開口率7%の平織物を製織し、焼成後、織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は700dtex)をガス拡散層基材としたところ、通気量は大きいものの、全体的に開口部がみられ、貫通抵抗の大きい、ガス拡散層基材には適さないものであった。
【0050】
【表1】
【発明の効果】
本発明は、薄く緻密で、ガス拡散性、電気伝導性に優れた燃料電池用ガス拡散板を得ることが出来る。また、従来から広く普及した設備を用いることで、低コストで生産が可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維織編物からなる燃料電池用ガス拡散層基材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維織編物は、従来から主に複合材料の基布として広く生産されている。又、炭素繊維織編物は、導電性が良好なことや機械的強度や耐蝕性に優れていることより、導電性基材としても注目されてきた。
【0003】
固体高分子型燃料電池の拡散層基材は、ガス拡散、ガス透過性、保水性、強度、柔軟性、電極製造時や電極を組んだときの圧縮に耐える強度等が必要とされる。また、固体高分子型燃料電池はリン酸型燃料電池に比べて小型のものが要求されているため、拡散層基材も薄型のものが必要とされている。このような固体高分子型燃料電池用の拡散層基材としては、炭素繊維紙や炭素繊維織物を基材としたものが主流となっている。
【0004】
特開昭63−233073号公報には、耐炎化繊維繊維束を用いた織編物に炭素化可能物質を含浸させ炭素化させた導電性基材が提案されている。
しかし、その導電性基材は、炭素繊維織物のみからなる拡散層基材ではなく、炭素化可能物質を含浸され、適切なガス拡散、ガス透過性となるものであった。更に、炭素化可能物質由来の炭素部分と炭素繊維織物由来の炭素部分では、ガス拡散、ガス透過性が大きく異なる不均一なものであるという点が問題であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を克服し、ガス拡散性、電気伝導性に優れ且つ薄い燃料電池用ガス拡散層基材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の要旨は、繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本の炭素化したマルチフィラメントからなり、開口率が5%以下である編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材である。
【0007】
第二の要旨は、繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成する燃料電池ガス拡散層基材の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
<炭素化したマルチフィラメント>
本発明で用いる炭素化したマルチフィラメントは、織編物とする前に炭素化されたマルチフィラメントでも、織編物にした後、炭素化したマルチフィラメントでも良い。
炭素化したマルチフィラメントの原料としても、ポリアクリロニトリル系繊維、レーヨン繊維、ピッチなどいずれであって良いが、炭素化した際マルチフィラメントの機械的強度が比較的高いポリアクリロニトリル系繊維が好ましい。
【0009】
ここでいうポリアクリロニトリル系繊維とは、原料としてアクリロニトリルを主成分とするポリマーを用いて製造されるものである。アクリロニトリル系繊維は200〜400℃の空気雰囲気中で該繊維を加熱焼成して酸化繊維に転換する耐炎化工程、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中でさらに300〜2500℃に加熱して炭化する炭化工程を経て、炭素化したマルチフィラメントとなる。
【0010】
本発明においては、炭素化したマルチフィラメントが繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本を有することが必要である。
炭素化したマルチフィラメントの繊度が30dtex未満の場合は、緻密で肉薄な織編物を形成しやすいものの製造コストが高くなり、逆に1000dtexを越える場合は、ガス拡散層基材に適した緻密で肉薄な織編物とは成り難い。更に繊度の下限は、100dtex以上が耐圧縮性や柔軟性があり好ましく、上限は400dtex以下が一般に広く普及している織機での製織が可能であり好ましい。
【0011】
炭素化したマルチフィラメントのフィラメント本数が20本未満の場合は、柔軟性に欠けたものとなり、逆に2500本を越える場合は、毛羽が発生しやすく、強度の劣るものとなる。更にフィラメント数の下限が100本以上の場合は、導伝性の向上する効果があり好ましく、上限は1000本以下の場合は取扱性が特に好ましい。
【0012】
本発明の織編物は、捲縮を有する炭素化したマルチフィラメントで構成されても良い。ここでいう捲縮とは、織編物を形成したことによる形付けられる繊維束の屈曲ではなく、織編物形成とは別に付与された屈曲、単繊維のマイグレーションをいう。捲縮の程度の目安として、JIS L 1013の伸縮性評価法があるが、一般的な仮撚捲縮糸の伸縮性とされる20%以上よりも低くて構わない。
【0013】
捲縮を付与することにより、多方向への微細な導電路を確保できる。嵩高になることで通気量が増大し、ガス拡散性も向上する他、後の製品加工で加圧効果が得られるので、燃料電池用ガス拡散層基材として好都合である。炭素化したマルチフィラメントに捲縮を付与することは、困難なので、耐炎化糸又はその前段階である前駆体繊維に付与する。
【0014】
捲縮の付与方法は限定されないが、例えば、加撚−熱固定−解撚によって捲縮を付与する方法、加熱されたボックスの中に繊維束を押し込むことによって捲縮を付与する方法、ギア等の凹凸のあるもので加圧して捲縮を付与する方法等が挙げられる。いずれの場合においても、耐炎化糸が毛羽立たない程度の条件に設定することが好ましい。毛羽があると、織編物製造工程通過性に影響する他、織編物に炭素化可能物質を含浸する際や焼成を行う際に、毛羽脱落が起こる場合も有り、強力や外観の面でも好ましくない。
【0015】
本発明の織編物は、実撚りした炭素化したマルチフィラメントで構成されても良い。ここでいう実撚りとは、紡糸工程で繊維束の集束向上のために付与される撚や、その後の製織工程通過性を考慮した追燃をいう。実撚数、撚方向は特に制限されないが、繊維束自身のトルクで工程通過性に悪影響を及ぼさない範囲に設定するのが好ましい。
【0016】
<織編物>
本発明においては、前記炭素化したマルチフィラメントで織編物を形成し、その開口率を5%以下とすることが必要である。
開口率が5%を越える場合は、織編物としての均一性に劣り、拡散層基材として良好な導電性、保水性が得られない。開口率が1%以下の場合は、導電性、保水性の他に更に厚みの均一が得られ、好ましい。
本発明の炭素化したマルチフィラメント織編物では、開口率が0%でも、その組織・繊度・断面形状等によりガス拡散性は確保される為、下限値は0%でもよい。
【0017】
開口率は、次の式で求められる。
開口率(%)=(S2/S1)×100
S1:織編物面積
S2:織編物面積S1領域内で織編物を構成する糸が存在しない部分の面積
【0018】
S1、S2は次のように測定する。
織編物の裏面側から光を当て、実体顕微鏡を使用して織編物表面を撮影する。炭素化されたマルチフィラメントは黒色なため光を透過せず、織編物を構成する糸が存在しない部分は光を透過する。この透過した部分(S2)と透過しない部分(S1)の面積を画像解析によって求め、上記式で計算する。光量はハレーションを起こさないレベルとし、解析時の倍率は10倍以内とする。同じ織編物につき5箇所以上測定し、平均する。
【0019】
本発明において織編物の組織は限定されず、一般的に製造・使用されているもので構わない。例えば、織物では、平織、綾織、朱子織等の基本組織の他、変化組織でも構わない。必要に応じて多重織にしても良い。編物では、経編でも横編でも丸編でもよく、平編、ゴム編等の基本組織の他、変化組織でも構わない。
【0020】
<燃料電池用ガス拡散層基材>
本発明の織編物は、そのままで、又、織編物に炭素化可能物質を含浸・焼成して、燃料電池用ガス拡散層基材、特に固体高分子型燃料電池のガス拡散層基材として用いることができる。
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材は、厚みが0.05〜0.5mmでかつ嵩密度0.3〜0.8g/cm3であることが好ましい。厚みが0.05mm未満であると、厚み方向の強度が弱くなり、セルスタックを組んだときのハンドリングに耐えられなくなる。又、0.5mmを越えるとその電気抵抗が高くなり、スタックを積層した際にトータルの厚みが大きくなる。
【0021】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の嵩密度は、0.3〜0.8g/cm3であることが好ましく、0.4〜0.7g/cm3がより好ましい。嵩密度が0.3g/cm3未満である場合、電気抵抗が高くなるうえ、満足できる柔軟性も得られない。また、0.8g/cm3を越えるとガス透過性が悪くなり、燃料電池の性能が低下する。尚、本発明のガス拡散板の厚みは、厚み測定用ダイヤルシックネスゲージを使用し、測定する。このときの測定子の大きさは、直径10mmで測定圧力は1.5kPaで行う。
【0022】
嵩密度は、実測した厚みを用いて、以下の式により算出する。
嵩密度(g/cm3)=目付(g/m2)/(1000×厚み(mm))
【0023】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の通気量は、30cm3/cm2・秒以上が好ましい。通気量が30cm3/cm2・秒より小さいと良好なガス拡散性能が得られない。通気量は開口率とも関係が有り、開口率が大きいと当然通気量も大きくなるが、ここで重要なことは、本発明の編織物の開口率が5%以下、好ましくは0%であり、且つ該通気量を満たすものであることである。それには、本発明の捲縮を有する炭素化したマルチフィラメントからなる織編物が特に効果的である。尚、通気量はJIS L 1069 A法で測定し得られた値とする。
【0024】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の面抵抗は10Ω・cm以下で経方向と緯方向の比が1.5以下であることが好ましく、貫通抵抗は5Ω・cm2以下であることが好ましい。尚、面抵抗は、ガス拡散板の片面に2cmの間隔をあけて銅線をのせ、10mA/cm2の電流密度で電流を流した時の抵抗を測定する。
【0025】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材の貫通抵抗は、ガス拡散板の銅板にはさみ、銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cm2の電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求める。
貫通抵抗(Ω・cm2)=測定抵抗値(Ω)×試料面積(cm2)
【0026】
本発明の編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材は、前述した織編物に熱硬化性樹脂を含浸し、加熱加圧により硬化し、次いで炭素化することにより燃料電池ガス拡散層基材とすることが好ましい。
【0027】
ここで用いる熱硬化性樹脂は常温において粘着性、或いは流動性を示す物でかつ炭素化後も導電性物質として残存する物質が好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂等を用いることができる。前記フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。
【0028】
フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
【0029】
この熱硬化性樹脂はその種類や織編物への含浸量により、最終的にガス拡散板に炭化物として残る割合が異なってくる。ガス拡散板を100質量%とした時に、ガス拡散板の柔軟性発現の観点から20〜60質量%が炭素繊維分を除いた樹脂由来の炭化物であることが好ましい。より好ましい下限は30質量%、上限は50質量%である。
【0030】
樹脂または樹脂と導電体の混合物を織編物に含浸する方法としては、絞り装置を用いる方法もしくは熱硬化性樹脂フィルムを織編物に重ねる方法が好ましい。絞り装置を用いる方法は樹脂溶液もしくは混合液中に織編物を含浸し、絞り装置で取り込み液が織編物全体に均一に塗布されるようにし、液量は絞り装置のロール間隔を変えることで調節する方法である。比較的粘度が低い場合はスプレー法等も用いることができる。
【0031】
熱硬化樹脂フィルムを用いる方法は、まず熱硬化性樹脂を離型紙に一旦コーティングし、熱硬化性樹脂フィルムとする。その後、織編物に前記フィルムを積層して加熱加圧処理を行い、熱硬化性樹脂を転写する方法である。
この加熱加圧工程は、生産性の観点から、織編物の全長にわたって連続して行うことが好ましい。また加熱加圧に先立って予熱を行うことが好ましい。この予熱工程において、熱硬化性樹脂を軟化させ、その後に続く加熱加圧工程にて、プレスによりガス拡散板の厚みを良好にコントロールできる。予熱した樹脂含浸織編物を予熱温度より50℃以上高い温度でプレスすることで所望の厚み、密度のガス拡散板を得ることができる。また、所望の厚み、密度のガス拡散板を得るために、樹脂含浸織編物を複数枚重ねて、加熱加圧を行っても良い。
【0032】
前記した加熱加圧は、連続式加熱ロールプレス装置あるいは一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置を用いて行うことが好ましい。前者の連続式加熱プレス装置は、ベルトでガス拡散板を送り出すことになるので、ガス拡散板にはほとんど張力はかからない。したがって、製造中のガス拡散板の破壊は生じにくく、工程通過性に優れる。また、後者の連続加熱式ロールプレス装置は構造が単純であり、ランニングコストも低い。以上、2つの加熱加圧方式は連続で樹脂を硬化するのに適した方法であり、本発明のガス拡散板の製造に用いることが好ましい。
【0033】
前記したエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置を用いる際の加圧圧力は線圧で1.5×104〜1×105N/mであることが好ましい。加熱加圧は繊維中に樹脂を十分にしみ込ませ、曲げ強度を上げるために必要な工程である。樹脂を熱硬化させる時に1.5×104N/m以上の線圧で加圧することにより、十分な導電性と柔軟性を生むことができる。また、1×105N/m以下の線圧で加圧することにより、硬化の際、樹脂から発生する蒸気を十分に外に逃がすことができ、ひび割れの発生を抑えることができる。
【0034】
加熱加圧処理での加熱温度は、硬化処理時間あるいは生産性の観点から140℃以上が好ましく、加熱加圧装置等の設備のためのコストの観点から320℃以下が好ましい。より好ましくは160〜300℃の範囲である。また前記予熱の温度は100〜200℃の範囲が好ましい。
【0035】
樹脂硬化の後に続く炭素化を織編物の全長にわたって連続で行うことが好ましい。ガス拡散板が長尺であれば、ガス拡散層基材の生産性が高くなるだけでなく、その後工程のMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。具体的には、炭素化は不活性処理雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で、織編物の全長にわたって連続して焼成処理することが好ましい。炭素化においては、不活性雰囲気下にて1000〜3000℃の温度範囲で焼成する炭素化処理の前に行われる、300〜800℃の程度の不活性雰囲気での焼成による前処理を行っても良い。
【0036】
以上から最終的に得られるガス拡散層基材は、少なくとも外径50cm以下、さらに好ましくは外径40cm以下のロールに巻き取ることが好ましい。外径50cm以下のロールに巻き取ることができれば、ガス拡散層基材としての製品形態をコンパクトにでき、梱包や輸送コストの面でも有利である。
【0037】
次に、上述した織編物の製造方法について説明する。
本発明では、得られる織編物のガス拡散層基材としての適性の面で、繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成して、耐炎化糸を炭素化する。
【0038】
(耐炎化糸)
本発明の製造方法においては、耐炎化糸が繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本を有することが必要である。
耐炎化糸の繊度が50dtex未満の場合は、緻密で肉薄な織編物を形成しやすいものの製造コストが高くなり、逆に1800dtexを越える場合は、緻密な織編物の形成が困難となり、ガス拡散板とした場合に性能の均一さや保水性に劣るものとなる。更に繊度の下限は、100dtex以上であることがガス拡散層基材に耐圧縮性や柔軟性が付与され更に好ましく、上限は400dtex以下であることが一般に広く普及している織機での製織が可能であり更に好ましい。
【0039】
耐炎化糸のフィラメント本数が20本未満の場合は、柔軟性に欠けたものとなり、逆に2500本を越える場合は、毛羽が発生しやすく、強度の劣るものとなる。更にフィラメント数の下限は100本以上であることがガス拡散層基材の導電性が更に向上する効果があり更に好ましく、上限は1000本以下であることがガス拡散層基材の取扱性が向上し更に好ましい。
【0040】
耐炎化糸の単繊維繊度は、1.2dpf以下が好ましい。このような細dpf繊維を用いることにより、織編物とした時に柔軟性や高い電気伝導性を得ることができる。繊度が1.2dpfより大きいと柔軟性が不足し、繊維間の結着点が少なく、このような耐炎化糸を用いて作製したガス拡散板は抵抗が大きくなってしまう。
【0041】
(耐炎化糸からなる織編物)
本発明において、耐炎化糸からなる織編物の組織は限定されず、一般的に製造・使用されているもので構わない。例えば、織物では、平織、綾織、朱子織等の基本組織の他、変化組織でも構わない。必要に応じて多重織にしても良い。編物では、経編でも横編でも丸編でもよく、平編、ゴム編等の基本組織の他、変化組織でも構わない。
耐炎化糸からなる織編物は、炭素化により収縮し、前記開口率が小さくなる性質があるので好ましい。耐炎化糸からなる織編物の開口率は0〜5%であることが炭素化後の織編物の性状の点から好ましい。
本発明の織編物の製造に使用する織機、編機は限定されない。耐炎化糸を使用するため、電気的な安全対策を特別にする必要もなく、一般に広く普及しているレピア織機、エアジェットルーム、横編機、丸編機等が使用でき、特別な設備が不要な為、コスト的にもメリットが有る。
【0042】
本発明の織編物の製造には、開繊工程を加えても良い。開繊工程を加えることで、より開口率を小さくすることが可能な他、厚みを小さくすることができる。また、表面の凹凸も抑えることが出来る。
【0043】
開繊の方法は特に限定されないが、従来提案されている方法でよい。例えば、織編物を振動ロールに接触させる方法、織編物に鋼球を間歇的に打ち当てる方法等が挙げられる。いずれも、毛羽立たない程度の条件で行うことが好ましい。
開繊工程は、耐炎化糸からなる織編物を焼成する前に実施しても良いし、焼成後の炭素化したマルチフィラメントに実施しても良い。また、織物の場合、製織時に経糸に対して実施しても良い。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
尚、各実施例、比較例で得られたものの織編物密度と、その織編物を用いた燃料電池用ガス拡散層基材の特性評価結果を表1に示す。表1中のfはフィラメント本数である。
【0044】
(実施例1)
アクリロニトリル系マルチフィラメントを耐炎化して得られた1100dtex/フィラメント数1000本の耐炎化糸に1m当たり60回(S方向)の撚を加え集束性を良くした。この耐炎化糸でレピア織機を用いて、表1に示した打ち込み本数(織編物密度)で平織物を製織した。次いで窒素雰囲気中で2000℃に加熱して焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は700dtex)を更にガス拡散層基材としたところ、開口率が0%で、通気量、貫通抵抗、面比抵抗のバランスの取れたのガス拡散層基材が得られた。
【0045】
(実施例2)
アクリロニトリル系マルチフィラメントを耐炎化して得られた360dtex/フィラメント本数300本の耐炎化糸に1m当たり60回(S方向)の撚を加え集束性を良くした。この耐炎化糸でレピア織機を用いて、表1に示した打ち込み本数(織編物密度)で平織物を製織した。次いで実施例1と同様に焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は210dtex)を更にガス拡散層基材としたところ、実施例1で得られたものより薄く、貫通抵抗の小さい、ガス拡散層基材が得られた。
【0046】
(実施例3)
アクリロニトリル系マルチフィラメントを耐炎化して得られた360dtex/フィラメント本数300本の耐炎化糸を仮撚機で、加工速度70m/分、ヒーター温度170℃、スピンドル回転数84000rpmで仮撚加工し捲縮糸を得た。この捲縮糸をレピア織機を用いて、表1に示した打ち込み本数(織編物密度)で平織物を製織した。
次いで実施例1と同様に焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は210dtex)を更にガス拡散層基材としたところ、実施例2で得られた織物よりも嵩高で通気性に優れた、ガス拡散層基材が得られた。
【0047】
(実施例4)
実施例2で得た耐炎化糸織物を炭化する前に、その表面に多数の直径5mmの鋼球を加しん力7Gで織物表面に当て開繊(特開平2001−316971号公報記載)した。この開繊処理は加工速度1m/分、雰囲気温度150℃で行った。得られた織物を実施例1と同様の条件で焼成し、この織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は210dtex)をガス拡散層基材としたところ、面比抵抗における経緯差の少ない、ガス拡散層基材が得られた。
【0048】
(実施例5)
実施例2で得た炭化した織物に、実施例4と同様の開繊を行い、更にガス拡散層基材としたところ、実施例4で得たもの同等のガス拡散層基材が得られた。
【0049】
(比較例1)
打ち込み本数(織編物密度)を経29本/2.54cm、緯24本/2.54cmに変更したほかは実施例1と同様に操作し、開口率7%の平織物を製織し、焼成後、織物(炭素化したマルチフィラメントの繊度は700dtex)をガス拡散層基材としたところ、通気量は大きいものの、全体的に開口部がみられ、貫通抵抗の大きい、ガス拡散層基材には適さないものであった。
【0050】
【表1】
【発明の効果】
本発明は、薄く緻密で、ガス拡散性、電気伝導性に優れた燃料電池用ガス拡散板を得ることが出来る。また、従来から広く普及した設備を用いることで、低コストで生産が可能である。
Claims (7)
- 繊度30〜1000dtex、フィラメント本数20〜2500本の炭素化したマルチフィラメントからなり、開口率が5%以下である編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材。
- 捲縮を有する炭素化したマルチフィラメントの編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材。
- 実撚りを有する炭素化したマルチフィラメントの編織物からなる燃料電池ガス拡散層基材。
- 繊度50〜1800dtex、フィラメント本数20〜2500本の耐炎化糸からなる織編物を焼成する燃料電池ガス拡散層基材の製造方法。
- 耐炎化糸に捲縮を付与した後、織編物とする、請求項4記載の燃料電池ガス拡散層基材の製造方法。
- 耐炎化糸からなる織編物を開繊処理後焼成する、請求項4記載の燃料電池ガス拡散層基材の製造方法。
- 耐炎化糸からなる織編物を焼成後開繊処理する、請求項4記載の燃料電池ガス拡散層基材の製造方法。
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