JP2004031061A - 低圧放電ランプおよび放電ランプ点灯装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コイルに熱電子放射性物質を適量かつ強固に担持した三重コイルを用いた電極を有し、バルブの黒化を低減して長寿命化できる蛍光ランプなどの低圧放電ランプおよびこの放電ランプの点灯器具を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラスバルブ1と、このバルブ1の端部に封着されたリード線4,4を有するステム3と、メインワイヤ6aにこのワイヤ6aより細径のサブワイヤ5aが遊巻された線状体51を巻回して形成した二重コイル状の端部を上記ステム3のリード線4,4に継線するとともに、この端部に連続する中間部をさらに巻回して形成した三重コイル状部53を有するコイル状電極5と、この三重コイル状部53のサブワイヤ5aの単コイル部51が形成する空間68内のみに充填された熱電子放射性物質8と、上記バルブ1内に封入された水銀および希ガスからなる放電媒体とを備えた低圧放電ランプLおよびこの放電ランプLの点灯装置9である。
【選択図】 図3
【解決手段】ガラスバルブ1と、このバルブ1の端部に封着されたリード線4,4を有するステム3と、メインワイヤ6aにこのワイヤ6aより細径のサブワイヤ5aが遊巻された線状体51を巻回して形成した二重コイル状の端部を上記ステム3のリード線4,4に継線するとともに、この端部に連続する中間部をさらに巻回して形成した三重コイル状部53を有するコイル状電極5と、この三重コイル状部53のサブワイヤ5aの単コイル部51が形成する空間68内のみに充填された熱電子放射性物質8と、上記バルブ1内に封入された水銀および希ガスからなる放電媒体とを備えた低圧放電ランプLおよびこの放電ランプLの点灯装置9である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、照明などの光源や紫外線などの放射源として用いられる蛍光ランプに代表される低圧放電ランプおよびこの放電ランプを装着したランプ点灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】低圧放電ランプ、たとえば蛍光ランプは、両端を封止し内面に蛍光体被膜を形成したガラス管バルブ内に一対のコイル電極を対峙させるとともに水銀およびアルゴンガスなどの放電媒体を封入して構成されている。
【0003】
そして、上記バルブ内においてコイル電極間に放電を生起させ、この放電によりバルブ内の水銀蒸気を電離および励起して紫外線を発生し、この紫外線を蛍光体被膜で可視光に変換してバルブ外に放射するようにしている。
【0004】
また、上記電極Dは通常タングステンフィラメントワイヤ(細線)やタングステンメインワイヤ(芯線)にタングステンサブワイヤをさらに巻いた線状体を二重(ダブル)または三重(トリプル)に巻回したコイル状に形成され、図8に示すようにリード線W,Wに継線された両端のレグ部Aを除く中間のコイル状部Cの全面に放電を容易にする熱電子放射性物質(エミッタ)Eを付着し担持させている。
【0005】
そして、蛍光ランプは、ランプ始動時および点灯中、コイル状部Cに担持された熱電子放射性物質Eが次第に消耗していき、ついには、正常の電圧では十分な熱電子放射が困難となり、アーク放電の維持が不可能となってランプは消灯して寿命が尽きる。
【0006】
上記のように蛍光ランプの寿命は、電極のコイル状部に担持させた熱電子放射性物質の蒸発飛散速度によるところが大きく、この熱電子放射性物質の付着量および蒸発熱源である電極(コイル)温度によって点灯寿命が決定されるといっても過言ではない。
【0007】
上述したように放電ランプの寿命は熱電子放射性物質の付着量によっても左右され、その付着量が少ないとランプが短寿命となることから、上記図8に示すように三重コイル状の部分を含むコイルで囲われた部分にまで熱電子放射性物質を付着させたり、コイル径を大きくするなどのことをして熱電子放射性物質の付着量を増すことが行われている。
【0008】
そして、通常、コイル状電極への熱電子放射性物質の付着は、アルカリ土類金属の炭酸塩とバインダとの懸濁液をコイルに塗布することにより行い、塗布後、このコイルに通電し加熱することによって炭酸塩を酸化物に分解する活性化を行っている。
【0009】
しかし、タングステンワイヤからなるコイルは導電性もあり発熱するが、熱電子放射性物質を形成する炭酸塩は絶縁体で熱電導性が非常に悪く温度上昇がし難く、このときフィラメントワイヤの近傍にある炭酸塩はフィラメントワイヤからの熱で温度上昇するが、フィラメントワイヤより離れた部分の炭酸塩は温度上昇が低く分解不足となる。これは熱電子放射性物質を増量した場合に生じる不具合である。
【0010】
この炭酸塩の分解不足は、炭酸塩がランプの点灯中にイオン衝撃を受け炭酸ガスや酸素などの不純ガスを放出する。そして、この不純ガスと水銀蒸気とが反応して水銀化合物となり、電極付近のバルブ内壁に付着して黒化を生じ、有効光量を減らし働程特性(光束維持率)が低下するとともに外観を損なうことと不純ガスによるちらつきの発生という問題がある。
【0011】
また、熱電子放射性物質が多いと上記分解作業時や振動、衝撃を受けた場合に少しの力で部分的に壊れ破片が脱落して、この脱落による孔や凹部には陰極起点が生じ易く局部的に高温となって熱電子放射性物質の消耗が早期化したり、熱電子放射性物質不足によって、短寿命になってしまうなどの不具合がある。
【0012】
このような熱電子放射性物質を増やした場合の、電極からの熱電子放射性物質の脱落および分解不足を防ぐ手段としては、電極を形成するコイル状部の構成により対応することが考えられる。
【0013】
この対応は、たとえばコイル状部のピッチ間隔を狭めることによりできるが、その容積が同じであれば巻回数が多くなりフィラメントワイヤ長さが長くなったり、また、用いるフィラメントワイヤの長さを長くして小径化するなどのことをしても、所定のランプ電流値内に収まらなくなるなどの不具合がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、近時、コイル状電極が、寿命特性などの面から三重(トリプル)コイル状のものが主流になりつつあることから、三重コイル状の電極およびこのコイル状部に担持させる熱電子放射性物質の関係について種々検討を行った。
【0015】
そして、電極のコイル径やコイルに担持させる電子放射性物質の付着量、付着態様および電極の冷抵抗値などを最適化することによって、長寿命化できる放電ランプが得られることを見い出した。
【0016】
本発明は、コイルに担持させる熱電子放射性物質の適正な保持量が確保できる三重コイルを用いた電極を有し、バルブの黒化を低減できるとともに長寿命化できる蛍光ランプなどの低圧放電ランプおよびこの放電ランプの点灯器具を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の低圧放電ランプは、ガラスバルブと、このバルブの端部に封着されたリード線を有するステムと、メインワイヤにこのワイヤより細径のサブワイヤが遊巻された線状体を巻回して形成した二重コイル状の端部を上記ステムのリード線に継線するとともに、この端部に連続する中間部をさらに巻回して形成した三重コイル状部を有するコイル状電極と、この三重コイル状部のサブワイヤの単コイル部が形成する空間内のみに充填された熱電子放射性物質と、上記バルブ内に封入された水銀および希ガスからなる放電媒体とを具備したことを特徴としている。
【0018】
本発明では三重コイル状部に担持させる熱電子放射性物質を、サブワイヤが形成する単コイル部内のみに充填してあるので、熱電子放射性物質が昇温し易くなるとともに通電時に加熱体となるメインワイヤおよびサブワイヤとの距離が近く熱電子放射性物質の活性化が完全に行え、バルブ内における分解不足による不純ガスの発生を防止できる。また、熱電子放射性物質は、サブワイヤにより形成された単コイル部内に囲まれているので強固に保持され、振動や衝撃が加わっても不所望な脱落を抑制できる。
【0019】
なお、本発明は熱電子放射性物質をサブワイヤが形成する単コイル部内のみに充填しているが、その充填率は100容積%に限らず75〜115容積%程度まで許容でき、ばらつきを考慮すると80〜110容積%程度が好ましい。
【0020】
この充填率が75容積%未満であると、所定の寿命が得られず短寿命を招き、また、115容積%を越えるとコイル外に付着していることになって、熱電子放射性物質の脱落の要因となる不具合がある。
【0021】
なお、本発明ならびに以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0022】
低圧放電ランプとは、ガラスバルブ内に一対以上のコイル状の電極を有するとともに内部に希ガスを200〜400Pa程度封入したランプで、蛍光ランプや紫外線放射ランプなどの各種放電ランプである。また、本発明は一般形の蛍光ランプに限らず、電球形やコンパクト形のランプあるいはガラスバルブ面と蛍光体被膜との間にアルミナなどの保護膜や透明導電膜を形成したりあるいは反射被膜を併設した他の種類の蛍光ランプにも適用できるものである。
【0023】
また、本発明のメインワイヤにこのワイヤより細径のサブワイヤが遊巻された線状体とは、メインワイヤの周囲にサブワイヤが緩やかな遊びをもって巻回されていることを指す。その巻回作業は複数本のメインワイヤが芯線(マンドレル)となってサブワイヤが巻かれ、その後一部のメインワイヤが除去されることにより形成されるが、両者のワイヤが部分的に接触していても全く離間していてもよい。
【0024】
また、線状体は、メインワイヤとサブワイヤとの関係位置が始端から終端までが同一であっても異なっていてもよい。また、そのサブワイヤの巻回形状は円形、長円形や多角形などであってもこれらの形が歪んだ形であってもよく、要するに両者間に熱電子放射性物質が充填される隙間が形成されていればよい。
【0025】
熱電子放射性物質は、(Ba、Ca、Sr)O、Ba−M−O(M;Ta、Al、V、W、Ti)、Ba−Ca−M−O(M;Ta、Al、V、W、Ti)などやこれらを組合わせたものあるいはAl2 O3 、ZrO2 、Sr2 O3 などを少量添加したものなどであってもよい。
【0026】
電極を構成するタングステンからなるコイルと熱電子放射性物質の材料とはその比熱が異なるが、熱電子放射性物質の担持量に応じてコイル各部の径、巻数やピッチなどの構成寸法を適宜決めればよい。
【0027】
ガラスバルブの材質はソーダライムガラスや鉛ガラスなどの軟質ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスや石英ガラスなどの硬質ガラスを用いることができる。その形状は、直管形、環形、U字形、W字形、ダブルまたはトリプルU字形などや複数本の直管状バルブを継いだものあるいは板状であってもよい。また、電極を支持接続するリード線はフレアステム、ボタンステムやヒードステムに設けられたものに限らず、バルブ端部に直接封着されたものであっても差支えない。
【0028】
また、バルブ内に封入される放電媒体としての水銀は、液状、アマルガム(合金)、水銀放出構体などであるが、水銀を封入しない希ガス発光による放電ランプにも適用できる。また、希ガスはアルゴン、クリプトン、キセノンやネオンなどを単独または混合したガスで、これらはランプ特性に合わせ、混合比や封入圧を適宜決めればよい。さらに、口金やホルダの有無は問わない。
【0029】
本発明の請求項2に記載の低圧放電ランプは、三重コイル状部の熱電子放射性物質が充填されているサブワイヤの単コイル部が形成する空間内の容積が0.5〜5.0mm3 であることを特徴としている。
【0030】
熱電子放射性物質を充填する容積については、従来の電極に対して30〜80%程度に減らしても、上記請求項1に記載の作用を奏する。
【0031】
そして、本発明者の実験によれば三重コイル状部のコイル部が形成する空間内に充填された熱電子放射性物質の容積が、ランプ電流100〜200mAの場合は0.6〜2.6mm3 、ランプ電流300〜480mAの場合は1.6〜4.7mm3 、ランプ電流540〜640mAの場合は1.8〜5.0mm3 、ランプ電流700〜900mAの場合は5.0〜12.0mm3 で、この空間容積の75〜115容積%程度の熱電子放射性物質が充填されていればよかった。
【0032】
本発明の請求項3に記載の低圧放電ランプは、三重コイル状の電極の冷抵抗値が2〜8Ωであることを特徴としている。
【0033】
電極の冷抵抗値については各品種において下限値未満であると、グロー回路によるランプ始動時のコイル昇温特性が悪化し、点滅時に早期黒化を招くなどの不具合があり、また、上限値を越えるとインバータ回路などで一定電流で予熱を行った際に予熱過剰となって短寿命を招く不具合がある。
【0034】
本発明の請求項4に記載の放電ランプ点灯装置は、基体と、この基体に取着された請求項1ないし3のいずれか一に記載の低圧放電ランプと、この放電ランプの点灯回路とを具備したことを特徴としている。
【0035】
点灯装置は、上記請求項1ないし3に記載の作用を有する放電ランプを装着したので、点灯経過に伴う光束の低下が小さく、長寿命の照明を行うことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は低圧放電ランプたとえば直管形の蛍光ランプLの一部断面正面図、図2は図1のランプに使用されるコイル状電極の概略正面図、図3は図2のコイル状電極の一部を省略した拡大概略正面図、図4は図2のコイル状電極の三重コイル状部の一部拡大概略正面図、図5は図2のコイル状電極の三重コイル状部のコイル部に熱電子放射性物質を塗布した後の状態を示す一部拡大断面図、図6はコイル状電極の製造工程途中の二次コイル部の一部を拡大して示す正面断面図である。
【0037】
この蛍光ランプLは、直管形のガラス管バルブ1の両端にそれぞれ封止部2(一方のみ記載。)が設けられ、この封止部2にはコイル状の電極5,5を有するステム3,3が封着されている。また、バルブ1の内壁面にはたとえば青色、緑色、赤色に発光領域を有する蛍光体を混合した3波長形の希土類蛍光体や連続波長発光形のハロリン酸塩蛍光体などを塗布した蛍光体被膜7が塗布形成されているとともに、このバルブ1内には水銀とアルゴンなどの希ガスからなる放電媒体が封入されている。図中、21,21は口金で、ステム3,3から導出したリード線4,4を電気的に接続している。
【0038】
上記ステム3はフレアステムからなり、ピンチシール部31内に封着して貫通した一対のリード線4,4に、タングステンからなるコイル状電極5のレグ部54,54を継線したものからなる。
【0039】
このコイル状の電極5は図2ないし図5に示すように、タングステンからなるメインワイヤ(芯線)6aにこのマンドレルより細径のタングステンからなるサブワイヤ(フィラメント)5aを緩やかに巻回した線状体(51)を、さらに巻回したコイル状(このときサブワイヤ5aは二重コイル状52となっている。)とし、両端のレグ部54,54を除く中間部をさらに巻回してコイル状53(このときサブワイヤ5aは三重コイル状53となっている。)をしている。
【0040】
そして、図4および図5に示すようにコイル状の電極5の三重コイル状部53のサブワイヤ5aが形成する単コイル部51の空間68内にのみバリウムBa、ストロンチウムSr、カルシウムCaの酸化物を主体とする熱電子放射性物質8を充填付着して担持させてある。
【0041】
この三重コイル状の電極5の製造は次のようにして行われる。まず、モリブデン線からなる太目のメインワイヤ(芯線)6bとタングステン線からなる細目のメインワイヤ(芯線)6aとを平行直線上に密着せしめた一次メインワイヤ(芯線)6a,6b上にサブワイヤ5aを巻回して一次コイル51を形成する。(このときメインワイヤ6a,6bは直線状で、サブワイヤ5aは単コイル状51となっている。)
次に、この一次(単)コイル51を図6に示すようにモリブデン線からなる二次メインワイヤ(芯線)6cに巻回して二重コイル52を形成する。(このとき一次メインワイヤ6a.6bは単コイル状で、サブワイヤ5aは二重コイル状52となっている。)
さらに、この二重コイル52の中間部を三次メインワイヤ(芯線)(図示しない。)に巻回して、一方の一次メインワイヤ6aを残して他方のメインワイヤ6b、6c(および図示しない三次メインワイヤを含む。)は引抜くか、混酸液中に浸漬して除去するなどして図2に示す三重コイル状部53を有するコイル5を形成する。これにより、他方のメインワイヤ6bが除去された部分に空間68が形成される。
【0042】
なお、三重コイル状部53の両端の二重コイル状のレグ部54,54は、上記ステム3、3に植設されたリード線4,4に溶接やかしめあるいは挟圧などの手段で継線されている。
【0043】
そして、このコイル状の電極5への熱電子放射性物質8の形成は、三重コイル状部53をBa、Sr、Caを主体とする炭酸化物溶液中に浸漬あるいは三重コイル状部53に溶液を流下させて、一次メインワイヤ6aが残っている一次コイル51(巻回ターン内およびピッチ間)部分および二次コイル52で形成される空隙内(巻回ターン内およびピッチ間)に毛管現象などを利用して溶液を付着させる。
【0044】
この炭酸化物溶液が付着した上記三重コイル状部53に当て板、刷毛状物などを当接したりあるいは気体を吹きかけて二重コイル52および三重コイル状部53のピッチ間にある溶液を除去して、上記三重コイル状部53のサブワイヤ5aが形成する単コイル51部の空間68内のみに溶液が充填されて残るようにし、この溶液を乾燥する。
【0045】
そして、バルブ1の両端にステム3,3を封着させた後のランプLの排気工程においてコイル状電極5、5を高周波などによって加熱し、三重コイル状部53部に付着した熱電子放射性物質の充填体を分解させて酸化物とし、熱電子放射性物質8を形成させる。
【0046】
この三重コイル状部53のサブワイヤ5aの単コイル51部が形成する空間68内のみにBa、Sr、Caの酸化物を主体とする熱電子放射性物質8が充填された状態の一部を図5に示す。すなわち、サブワイヤ5aが形成する単コイル51部内において熱電子放射性物質8がメインワイヤ6aを埋没する状態で充填している。
【0047】
そして、この構成の蛍光ランプの点灯は、コイル状電極5,5に電流を流して予熱すると、メインワイヤ6aおよびサブワイヤ5aが発熱し、単コイル51部が形成する空間内のみに充填担持された熱電子放射性物質8を加熱して、この熱電子放射性物質8から熱電子が豊富にバルブ1内に放出され、この熱電子が反対側の電極5の高圧に引かれて移動し容易にアーク放電が始まる。この放電により流れる電子はバルブ1内の水銀原子と衝突して紫外線を発生し、この紫外線によりバルブ内面に塗布されている蛍光体被膜7が励起されて可視光線を発光する。この発光は蛍光体の種類によって、白色、昼光色、青色などの所定の色光がランプから放射される。
【0048】
そして、本発明では三重コイル状部53に担持させる熱電子放射性物質8を、サブワイヤ5aが形成する単コイル51部内のみに充填してあるので、通電時に加熱体となるメインワイヤ6aおよびサブワイヤ5aとの距離が近く熱電子放射性物質8の活性化が完全に行え、バルブ1内における分解不足による不純ガスの発生を防止して、寿命中のちらつきの発生やバルブ1内面の黒化による光束の低下を抑制した、長期に亘り安定な電子放射が行われる長寿命の蛍光ランプLを提供できる。
【0049】
また、熱電子放射性物質8はサブワイヤ5aにより形成された単コイル51部内に囲まれているので強固に保持され、振動や衝撃が加わっても不所望な脱落を防止できる。
【0050】
そして通常、この蛍光ランプLは所定の消費電力に適合するよう電流と電圧、封入する希ガスの種類や水銀の量などとともに寿命の観点からも最適な電極5,5の設計がなされている。
【0051】
そして、本発明者等が各種蛍光ランプにおいて、上記実施の形態に示す構造の三重コイル電極5のサブワイヤ5aにより形成された単コイル51に囲まれる熱電子放射性物質を充填する容積および加熱体となる電極5の冷抵抗値について好適な範囲は表1の通りであった。
【表1】
上記表1から明らかなように、本発明に係わる電極5の単コイル51に囲まれる熱電子放射性物質8を充填する容積については、従来の電極に対して30〜80%程度でよく、上記の利点を有するほかに熱電子放射性物質8の使用量を減らしてコスト低減がはかれることが分かった。
【0052】
また、電極5の冷抵抗値については、その大部分がメインワイヤ6aの線径と長さによって決まるものであり、冷抵抗値は2〜8Ωの範囲が好ましい。
【0053】
そして、この蛍光ランプLは商用周波数で点灯する安定化回路を有する低圧放電ランプの点灯装置で点灯させることができる。図7は本発明の直管形蛍光ランプLを用いた点灯装置(照明器具)9の実施の形態を示す斜視図である。
【0054】
図中91は装置本体(基体)で、装置(器具)9の建物などへの取付具、電源接続機構や安定器などの点灯回路92が収納されている。この本体91の下方にはセード93が設けられ、この内部に取付けられたソケット95,95,…には2本の直管形蛍光ランプL,Lの口金6,6が装着され電気的な接続と支持が行われている。また、図中94は反射板である。
【0055】
この蛍光ランプL,Lは、電源接続機構、安定器などの点灯回路92、図示しないコードおよびソケット95,95を介し給電され安定した点灯ができる。そして、この点灯装置(照明器具)9に装着された蛍光ランプL,Lは、発光特性の低下の虞がなく長期に亘りランプ交換などの必要がない、保守などが容易な照明を行うことができる。
【0056】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、熱電子放射性物質が昇温し易く、かつ、強固に保持され、バルブ内における不純ガスの発生や脱落を防止して寿命中の光束低下およびランプ電圧上昇などの特性低下を抑制した、長期に亘り安定な電子放射が行われ長寿命化がはかれる低圧放電ランプを提供できる。
【0057】
請求項2の発明によれば、熱電子放射性物質を充填する容積について、従来の電極に対して30〜80%程度減らすことができ、熱電子放射性物質の使用量を減らしてコストの低減がはかれる低圧放電ランプを提供できる。
【0058】
請求項3の発明によれば、熱電子放射性物質を最適に保ちながら、コイルの電気特性を最適値に設計した低圧放電ランプを提供できる。
【0059】
請求項4の発明によれば、上記請求項1ないし3に記載の効果を有する放電ランプを装着したので、発光特性の低下の虞がなく長期に亘りランプ交換などの必要がないので、保守なども容易な優れた照明を行うことができる照明器具などの点灯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低圧放電ランプ(直管形蛍光ランプ)の実施の形態を示す一部切欠断面正面図。
【図2】図1のランプに使用されるコイル状電極の概略正面図。
【図3】図2のコイル状電極の一部を省略した拡大概略正面図。
【図4】図2のコイル状電極の三重コイル状部の一部拡大概略正面図。
【図5】図2のコイル状電極の三重コイル状部のコイル部に熱電子放射性物質を塗布した後の状態を示す一部拡大断面図。
【図6】コイル状電極の製造工程途中の二次コイル部の一部を拡大して示す正面断面図。
【図7】本発明の点灯装置の実施の形態を示す斜視図。
【図8】従来の低圧放電ランプに使用されているコイル状電極を示す概略正面図。
【符号の説明】
L:低圧放電ランプ(蛍光ランプ)、 1:ガラスバルブ、 3:ステム、
4:リード線、 5:コイル状電極、 5a:サブワイヤ、
53:三重コイル状部、 6a:マンドレル(芯線)、 68:空間、
8:熱電子放射性物質、 9:点灯装置(照明器具)、 91:基体(本体)、 92:点灯回路、
【発明の属する技術分野】本発明は、照明などの光源や紫外線などの放射源として用いられる蛍光ランプに代表される低圧放電ランプおよびこの放電ランプを装着したランプ点灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】低圧放電ランプ、たとえば蛍光ランプは、両端を封止し内面に蛍光体被膜を形成したガラス管バルブ内に一対のコイル電極を対峙させるとともに水銀およびアルゴンガスなどの放電媒体を封入して構成されている。
【0003】
そして、上記バルブ内においてコイル電極間に放電を生起させ、この放電によりバルブ内の水銀蒸気を電離および励起して紫外線を発生し、この紫外線を蛍光体被膜で可視光に変換してバルブ外に放射するようにしている。
【0004】
また、上記電極Dは通常タングステンフィラメントワイヤ(細線)やタングステンメインワイヤ(芯線)にタングステンサブワイヤをさらに巻いた線状体を二重(ダブル)または三重(トリプル)に巻回したコイル状に形成され、図8に示すようにリード線W,Wに継線された両端のレグ部Aを除く中間のコイル状部Cの全面に放電を容易にする熱電子放射性物質(エミッタ)Eを付着し担持させている。
【0005】
そして、蛍光ランプは、ランプ始動時および点灯中、コイル状部Cに担持された熱電子放射性物質Eが次第に消耗していき、ついには、正常の電圧では十分な熱電子放射が困難となり、アーク放電の維持が不可能となってランプは消灯して寿命が尽きる。
【0006】
上記のように蛍光ランプの寿命は、電極のコイル状部に担持させた熱電子放射性物質の蒸発飛散速度によるところが大きく、この熱電子放射性物質の付着量および蒸発熱源である電極(コイル)温度によって点灯寿命が決定されるといっても過言ではない。
【0007】
上述したように放電ランプの寿命は熱電子放射性物質の付着量によっても左右され、その付着量が少ないとランプが短寿命となることから、上記図8に示すように三重コイル状の部分を含むコイルで囲われた部分にまで熱電子放射性物質を付着させたり、コイル径を大きくするなどのことをして熱電子放射性物質の付着量を増すことが行われている。
【0008】
そして、通常、コイル状電極への熱電子放射性物質の付着は、アルカリ土類金属の炭酸塩とバインダとの懸濁液をコイルに塗布することにより行い、塗布後、このコイルに通電し加熱することによって炭酸塩を酸化物に分解する活性化を行っている。
【0009】
しかし、タングステンワイヤからなるコイルは導電性もあり発熱するが、熱電子放射性物質を形成する炭酸塩は絶縁体で熱電導性が非常に悪く温度上昇がし難く、このときフィラメントワイヤの近傍にある炭酸塩はフィラメントワイヤからの熱で温度上昇するが、フィラメントワイヤより離れた部分の炭酸塩は温度上昇が低く分解不足となる。これは熱電子放射性物質を増量した場合に生じる不具合である。
【0010】
この炭酸塩の分解不足は、炭酸塩がランプの点灯中にイオン衝撃を受け炭酸ガスや酸素などの不純ガスを放出する。そして、この不純ガスと水銀蒸気とが反応して水銀化合物となり、電極付近のバルブ内壁に付着して黒化を生じ、有効光量を減らし働程特性(光束維持率)が低下するとともに外観を損なうことと不純ガスによるちらつきの発生という問題がある。
【0011】
また、熱電子放射性物質が多いと上記分解作業時や振動、衝撃を受けた場合に少しの力で部分的に壊れ破片が脱落して、この脱落による孔や凹部には陰極起点が生じ易く局部的に高温となって熱電子放射性物質の消耗が早期化したり、熱電子放射性物質不足によって、短寿命になってしまうなどの不具合がある。
【0012】
このような熱電子放射性物質を増やした場合の、電極からの熱電子放射性物質の脱落および分解不足を防ぐ手段としては、電極を形成するコイル状部の構成により対応することが考えられる。
【0013】
この対応は、たとえばコイル状部のピッチ間隔を狭めることによりできるが、その容積が同じであれば巻回数が多くなりフィラメントワイヤ長さが長くなったり、また、用いるフィラメントワイヤの長さを長くして小径化するなどのことをしても、所定のランプ電流値内に収まらなくなるなどの不具合がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、近時、コイル状電極が、寿命特性などの面から三重(トリプル)コイル状のものが主流になりつつあることから、三重コイル状の電極およびこのコイル状部に担持させる熱電子放射性物質の関係について種々検討を行った。
【0015】
そして、電極のコイル径やコイルに担持させる電子放射性物質の付着量、付着態様および電極の冷抵抗値などを最適化することによって、長寿命化できる放電ランプが得られることを見い出した。
【0016】
本発明は、コイルに担持させる熱電子放射性物質の適正な保持量が確保できる三重コイルを用いた電極を有し、バルブの黒化を低減できるとともに長寿命化できる蛍光ランプなどの低圧放電ランプおよびこの放電ランプの点灯器具を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の低圧放電ランプは、ガラスバルブと、このバルブの端部に封着されたリード線を有するステムと、メインワイヤにこのワイヤより細径のサブワイヤが遊巻された線状体を巻回して形成した二重コイル状の端部を上記ステムのリード線に継線するとともに、この端部に連続する中間部をさらに巻回して形成した三重コイル状部を有するコイル状電極と、この三重コイル状部のサブワイヤの単コイル部が形成する空間内のみに充填された熱電子放射性物質と、上記バルブ内に封入された水銀および希ガスからなる放電媒体とを具備したことを特徴としている。
【0018】
本発明では三重コイル状部に担持させる熱電子放射性物質を、サブワイヤが形成する単コイル部内のみに充填してあるので、熱電子放射性物質が昇温し易くなるとともに通電時に加熱体となるメインワイヤおよびサブワイヤとの距離が近く熱電子放射性物質の活性化が完全に行え、バルブ内における分解不足による不純ガスの発生を防止できる。また、熱電子放射性物質は、サブワイヤにより形成された単コイル部内に囲まれているので強固に保持され、振動や衝撃が加わっても不所望な脱落を抑制できる。
【0019】
なお、本発明は熱電子放射性物質をサブワイヤが形成する単コイル部内のみに充填しているが、その充填率は100容積%に限らず75〜115容積%程度まで許容でき、ばらつきを考慮すると80〜110容積%程度が好ましい。
【0020】
この充填率が75容積%未満であると、所定の寿命が得られず短寿命を招き、また、115容積%を越えるとコイル外に付着していることになって、熱電子放射性物質の脱落の要因となる不具合がある。
【0021】
なお、本発明ならびに以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0022】
低圧放電ランプとは、ガラスバルブ内に一対以上のコイル状の電極を有するとともに内部に希ガスを200〜400Pa程度封入したランプで、蛍光ランプや紫外線放射ランプなどの各種放電ランプである。また、本発明は一般形の蛍光ランプに限らず、電球形やコンパクト形のランプあるいはガラスバルブ面と蛍光体被膜との間にアルミナなどの保護膜や透明導電膜を形成したりあるいは反射被膜を併設した他の種類の蛍光ランプにも適用できるものである。
【0023】
また、本発明のメインワイヤにこのワイヤより細径のサブワイヤが遊巻された線状体とは、メインワイヤの周囲にサブワイヤが緩やかな遊びをもって巻回されていることを指す。その巻回作業は複数本のメインワイヤが芯線(マンドレル)となってサブワイヤが巻かれ、その後一部のメインワイヤが除去されることにより形成されるが、両者のワイヤが部分的に接触していても全く離間していてもよい。
【0024】
また、線状体は、メインワイヤとサブワイヤとの関係位置が始端から終端までが同一であっても異なっていてもよい。また、そのサブワイヤの巻回形状は円形、長円形や多角形などであってもこれらの形が歪んだ形であってもよく、要するに両者間に熱電子放射性物質が充填される隙間が形成されていればよい。
【0025】
熱電子放射性物質は、(Ba、Ca、Sr)O、Ba−M−O(M;Ta、Al、V、W、Ti)、Ba−Ca−M−O(M;Ta、Al、V、W、Ti)などやこれらを組合わせたものあるいはAl2 O3 、ZrO2 、Sr2 O3 などを少量添加したものなどであってもよい。
【0026】
電極を構成するタングステンからなるコイルと熱電子放射性物質の材料とはその比熱が異なるが、熱電子放射性物質の担持量に応じてコイル各部の径、巻数やピッチなどの構成寸法を適宜決めればよい。
【0027】
ガラスバルブの材質はソーダライムガラスや鉛ガラスなどの軟質ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスや石英ガラスなどの硬質ガラスを用いることができる。その形状は、直管形、環形、U字形、W字形、ダブルまたはトリプルU字形などや複数本の直管状バルブを継いだものあるいは板状であってもよい。また、電極を支持接続するリード線はフレアステム、ボタンステムやヒードステムに設けられたものに限らず、バルブ端部に直接封着されたものであっても差支えない。
【0028】
また、バルブ内に封入される放電媒体としての水銀は、液状、アマルガム(合金)、水銀放出構体などであるが、水銀を封入しない希ガス発光による放電ランプにも適用できる。また、希ガスはアルゴン、クリプトン、キセノンやネオンなどを単独または混合したガスで、これらはランプ特性に合わせ、混合比や封入圧を適宜決めればよい。さらに、口金やホルダの有無は問わない。
【0029】
本発明の請求項2に記載の低圧放電ランプは、三重コイル状部の熱電子放射性物質が充填されているサブワイヤの単コイル部が形成する空間内の容積が0.5〜5.0mm3 であることを特徴としている。
【0030】
熱電子放射性物質を充填する容積については、従来の電極に対して30〜80%程度に減らしても、上記請求項1に記載の作用を奏する。
【0031】
そして、本発明者の実験によれば三重コイル状部のコイル部が形成する空間内に充填された熱電子放射性物質の容積が、ランプ電流100〜200mAの場合は0.6〜2.6mm3 、ランプ電流300〜480mAの場合は1.6〜4.7mm3 、ランプ電流540〜640mAの場合は1.8〜5.0mm3 、ランプ電流700〜900mAの場合は5.0〜12.0mm3 で、この空間容積の75〜115容積%程度の熱電子放射性物質が充填されていればよかった。
【0032】
本発明の請求項3に記載の低圧放電ランプは、三重コイル状の電極の冷抵抗値が2〜8Ωであることを特徴としている。
【0033】
電極の冷抵抗値については各品種において下限値未満であると、グロー回路によるランプ始動時のコイル昇温特性が悪化し、点滅時に早期黒化を招くなどの不具合があり、また、上限値を越えるとインバータ回路などで一定電流で予熱を行った際に予熱過剰となって短寿命を招く不具合がある。
【0034】
本発明の請求項4に記載の放電ランプ点灯装置は、基体と、この基体に取着された請求項1ないし3のいずれか一に記載の低圧放電ランプと、この放電ランプの点灯回路とを具備したことを特徴としている。
【0035】
点灯装置は、上記請求項1ないし3に記載の作用を有する放電ランプを装着したので、点灯経過に伴う光束の低下が小さく、長寿命の照明を行うことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は低圧放電ランプたとえば直管形の蛍光ランプLの一部断面正面図、図2は図1のランプに使用されるコイル状電極の概略正面図、図3は図2のコイル状電極の一部を省略した拡大概略正面図、図4は図2のコイル状電極の三重コイル状部の一部拡大概略正面図、図5は図2のコイル状電極の三重コイル状部のコイル部に熱電子放射性物質を塗布した後の状態を示す一部拡大断面図、図6はコイル状電極の製造工程途中の二次コイル部の一部を拡大して示す正面断面図である。
【0037】
この蛍光ランプLは、直管形のガラス管バルブ1の両端にそれぞれ封止部2(一方のみ記載。)が設けられ、この封止部2にはコイル状の電極5,5を有するステム3,3が封着されている。また、バルブ1の内壁面にはたとえば青色、緑色、赤色に発光領域を有する蛍光体を混合した3波長形の希土類蛍光体や連続波長発光形のハロリン酸塩蛍光体などを塗布した蛍光体被膜7が塗布形成されているとともに、このバルブ1内には水銀とアルゴンなどの希ガスからなる放電媒体が封入されている。図中、21,21は口金で、ステム3,3から導出したリード線4,4を電気的に接続している。
【0038】
上記ステム3はフレアステムからなり、ピンチシール部31内に封着して貫通した一対のリード線4,4に、タングステンからなるコイル状電極5のレグ部54,54を継線したものからなる。
【0039】
このコイル状の電極5は図2ないし図5に示すように、タングステンからなるメインワイヤ(芯線)6aにこのマンドレルより細径のタングステンからなるサブワイヤ(フィラメント)5aを緩やかに巻回した線状体(51)を、さらに巻回したコイル状(このときサブワイヤ5aは二重コイル状52となっている。)とし、両端のレグ部54,54を除く中間部をさらに巻回してコイル状53(このときサブワイヤ5aは三重コイル状53となっている。)をしている。
【0040】
そして、図4および図5に示すようにコイル状の電極5の三重コイル状部53のサブワイヤ5aが形成する単コイル部51の空間68内にのみバリウムBa、ストロンチウムSr、カルシウムCaの酸化物を主体とする熱電子放射性物質8を充填付着して担持させてある。
【0041】
この三重コイル状の電極5の製造は次のようにして行われる。まず、モリブデン線からなる太目のメインワイヤ(芯線)6bとタングステン線からなる細目のメインワイヤ(芯線)6aとを平行直線上に密着せしめた一次メインワイヤ(芯線)6a,6b上にサブワイヤ5aを巻回して一次コイル51を形成する。(このときメインワイヤ6a,6bは直線状で、サブワイヤ5aは単コイル状51となっている。)
次に、この一次(単)コイル51を図6に示すようにモリブデン線からなる二次メインワイヤ(芯線)6cに巻回して二重コイル52を形成する。(このとき一次メインワイヤ6a.6bは単コイル状で、サブワイヤ5aは二重コイル状52となっている。)
さらに、この二重コイル52の中間部を三次メインワイヤ(芯線)(図示しない。)に巻回して、一方の一次メインワイヤ6aを残して他方のメインワイヤ6b、6c(および図示しない三次メインワイヤを含む。)は引抜くか、混酸液中に浸漬して除去するなどして図2に示す三重コイル状部53を有するコイル5を形成する。これにより、他方のメインワイヤ6bが除去された部分に空間68が形成される。
【0042】
なお、三重コイル状部53の両端の二重コイル状のレグ部54,54は、上記ステム3、3に植設されたリード線4,4に溶接やかしめあるいは挟圧などの手段で継線されている。
【0043】
そして、このコイル状の電極5への熱電子放射性物質8の形成は、三重コイル状部53をBa、Sr、Caを主体とする炭酸化物溶液中に浸漬あるいは三重コイル状部53に溶液を流下させて、一次メインワイヤ6aが残っている一次コイル51(巻回ターン内およびピッチ間)部分および二次コイル52で形成される空隙内(巻回ターン内およびピッチ間)に毛管現象などを利用して溶液を付着させる。
【0044】
この炭酸化物溶液が付着した上記三重コイル状部53に当て板、刷毛状物などを当接したりあるいは気体を吹きかけて二重コイル52および三重コイル状部53のピッチ間にある溶液を除去して、上記三重コイル状部53のサブワイヤ5aが形成する単コイル51部の空間68内のみに溶液が充填されて残るようにし、この溶液を乾燥する。
【0045】
そして、バルブ1の両端にステム3,3を封着させた後のランプLの排気工程においてコイル状電極5、5を高周波などによって加熱し、三重コイル状部53部に付着した熱電子放射性物質の充填体を分解させて酸化物とし、熱電子放射性物質8を形成させる。
【0046】
この三重コイル状部53のサブワイヤ5aの単コイル51部が形成する空間68内のみにBa、Sr、Caの酸化物を主体とする熱電子放射性物質8が充填された状態の一部を図5に示す。すなわち、サブワイヤ5aが形成する単コイル51部内において熱電子放射性物質8がメインワイヤ6aを埋没する状態で充填している。
【0047】
そして、この構成の蛍光ランプの点灯は、コイル状電極5,5に電流を流して予熱すると、メインワイヤ6aおよびサブワイヤ5aが発熱し、単コイル51部が形成する空間内のみに充填担持された熱電子放射性物質8を加熱して、この熱電子放射性物質8から熱電子が豊富にバルブ1内に放出され、この熱電子が反対側の電極5の高圧に引かれて移動し容易にアーク放電が始まる。この放電により流れる電子はバルブ1内の水銀原子と衝突して紫外線を発生し、この紫外線によりバルブ内面に塗布されている蛍光体被膜7が励起されて可視光線を発光する。この発光は蛍光体の種類によって、白色、昼光色、青色などの所定の色光がランプから放射される。
【0048】
そして、本発明では三重コイル状部53に担持させる熱電子放射性物質8を、サブワイヤ5aが形成する単コイル51部内のみに充填してあるので、通電時に加熱体となるメインワイヤ6aおよびサブワイヤ5aとの距離が近く熱電子放射性物質8の活性化が完全に行え、バルブ1内における分解不足による不純ガスの発生を防止して、寿命中のちらつきの発生やバルブ1内面の黒化による光束の低下を抑制した、長期に亘り安定な電子放射が行われる長寿命の蛍光ランプLを提供できる。
【0049】
また、熱電子放射性物質8はサブワイヤ5aにより形成された単コイル51部内に囲まれているので強固に保持され、振動や衝撃が加わっても不所望な脱落を防止できる。
【0050】
そして通常、この蛍光ランプLは所定の消費電力に適合するよう電流と電圧、封入する希ガスの種類や水銀の量などとともに寿命の観点からも最適な電極5,5の設計がなされている。
【0051】
そして、本発明者等が各種蛍光ランプにおいて、上記実施の形態に示す構造の三重コイル電極5のサブワイヤ5aにより形成された単コイル51に囲まれる熱電子放射性物質を充填する容積および加熱体となる電極5の冷抵抗値について好適な範囲は表1の通りであった。
【表1】
上記表1から明らかなように、本発明に係わる電極5の単コイル51に囲まれる熱電子放射性物質8を充填する容積については、従来の電極に対して30〜80%程度でよく、上記の利点を有するほかに熱電子放射性物質8の使用量を減らしてコスト低減がはかれることが分かった。
【0052】
また、電極5の冷抵抗値については、その大部分がメインワイヤ6aの線径と長さによって決まるものであり、冷抵抗値は2〜8Ωの範囲が好ましい。
【0053】
そして、この蛍光ランプLは商用周波数で点灯する安定化回路を有する低圧放電ランプの点灯装置で点灯させることができる。図7は本発明の直管形蛍光ランプLを用いた点灯装置(照明器具)9の実施の形態を示す斜視図である。
【0054】
図中91は装置本体(基体)で、装置(器具)9の建物などへの取付具、電源接続機構や安定器などの点灯回路92が収納されている。この本体91の下方にはセード93が設けられ、この内部に取付けられたソケット95,95,…には2本の直管形蛍光ランプL,Lの口金6,6が装着され電気的な接続と支持が行われている。また、図中94は反射板である。
【0055】
この蛍光ランプL,Lは、電源接続機構、安定器などの点灯回路92、図示しないコードおよびソケット95,95を介し給電され安定した点灯ができる。そして、この点灯装置(照明器具)9に装着された蛍光ランプL,Lは、発光特性の低下の虞がなく長期に亘りランプ交換などの必要がない、保守などが容易な照明を行うことができる。
【0056】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、熱電子放射性物質が昇温し易く、かつ、強固に保持され、バルブ内における不純ガスの発生や脱落を防止して寿命中の光束低下およびランプ電圧上昇などの特性低下を抑制した、長期に亘り安定な電子放射が行われ長寿命化がはかれる低圧放電ランプを提供できる。
【0057】
請求項2の発明によれば、熱電子放射性物質を充填する容積について、従来の電極に対して30〜80%程度減らすことができ、熱電子放射性物質の使用量を減らしてコストの低減がはかれる低圧放電ランプを提供できる。
【0058】
請求項3の発明によれば、熱電子放射性物質を最適に保ちながら、コイルの電気特性を最適値に設計した低圧放電ランプを提供できる。
【0059】
請求項4の発明によれば、上記請求項1ないし3に記載の効果を有する放電ランプを装着したので、発光特性の低下の虞がなく長期に亘りランプ交換などの必要がないので、保守なども容易な優れた照明を行うことができる照明器具などの点灯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低圧放電ランプ(直管形蛍光ランプ)の実施の形態を示す一部切欠断面正面図。
【図2】図1のランプに使用されるコイル状電極の概略正面図。
【図3】図2のコイル状電極の一部を省略した拡大概略正面図。
【図4】図2のコイル状電極の三重コイル状部の一部拡大概略正面図。
【図5】図2のコイル状電極の三重コイル状部のコイル部に熱電子放射性物質を塗布した後の状態を示す一部拡大断面図。
【図6】コイル状電極の製造工程途中の二次コイル部の一部を拡大して示す正面断面図。
【図7】本発明の点灯装置の実施の形態を示す斜視図。
【図8】従来の低圧放電ランプに使用されているコイル状電極を示す概略正面図。
【符号の説明】
L:低圧放電ランプ(蛍光ランプ)、 1:ガラスバルブ、 3:ステム、
4:リード線、 5:コイル状電極、 5a:サブワイヤ、
53:三重コイル状部、 6a:マンドレル(芯線)、 68:空間、
8:熱電子放射性物質、 9:点灯装置(照明器具)、 91:基体(本体)、 92:点灯回路、
Claims (4)
- ガラスバルブと;
このバルブの端部に封着されたリード線を有するステムと;
メインワイヤにこのワイヤより細径のサブワイヤが遊巻された線状体を巻回して形成した二重コイル状の端部を上記ステムのリード線に継線するとともに、この端部に連続する中間部をさらに巻回して形成した三重コイル状部を有するコイル状電極と;
この三重コイル状部のサブワイヤの単コイル部が形成する空間内のみに充填された熱電子放射性物質と;
上記バルブ内に封入された水銀および希ガスからなる放電媒体と;
を具備したことを特徴とする低圧放電ランプ。 - 三重コイル状部の熱電子放射性物質が充填されているサブワイヤの単コイル部が形成する空間内の容積が0.5〜5.0mm3 であることを特徴とする請求項1に記載の低圧放電ランプ。
- 三重コイル状の電極の冷抵抗値が2〜8Ωであることを特徴とする請求項1に記載の低圧放電ランプ。
- 基体と;
この基体に取着された請求項1ないし3のいずれか一に記載の低圧放電ランプと;
この放電ランプの点灯回路と;
を具備したことを特徴とする放電ランプ点灯装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008198598A (ja) * | 2007-01-15 | 2008-08-28 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 蛍光ランプ |
JP2014072112A (ja) * | 2012-10-01 | 2014-04-21 | Hitachi Appliances Inc | 蛍光ランプ及びこの蛍光ランプを用いた点灯装置 |
-
2002
- 2002-06-25 JP JP2002184320A patent/JP2004031061A/ja active Pending
Cited By (2)
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