JP2004027267A - ガス拡散陰極を備えた食塩電解槽 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガス拡散陰極3を備えた電解槽1の陰極ガス室6に縦方向の目開きが3mm以上で、ガス拡散陰極とガス室背板10の距離が0.5mm以上3mm以下である金網11を設置する。このような条件を満足する電解槽を使用して食塩電解を行なうと、酸素の物質移動効果を損なうことなく、ガス室のガス流の圧力損失を低下させることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス拡散陰極を備えた食塩電解槽に関し、より詳細にはガス拡散陰極への酸素の物質移動を損なうことなく、陰極ガス室のガス流の圧力損失を低下させることのできるイオン交換膜型食塩電解槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業の基礎材料である苛性ソーダ、塩素は、食塩水の電気分解によって製造されるが、その製造の際には大量の電力が使用されている。そのため食塩水の電気分解方法については、過去に精力的に電力使用量を低減する努力が行われ、大幅な省エネルギーが図られた。将来に向けて更に大幅な省エネルギーが期待できるガス拡散陰極を備えた酸素陰極食塩電解槽が検討され、このガス拡散陰極を使用する方法においては、食塩と酸素と水から、苛性ソーダと塩素ガスを得ることができる。
【0003】
酸素陰極食塩電解は通常3室法で構成される。陽イオン交換膜とガス拡散陰極とによって、陽極室、陰極液室、陰極ガス室に区画される。陽極室には陽極が配置され、そこに飽和食塩水を供給する。陽イオン交換膜とガス拡散陰極に挟まれた狭い陰極液室には、下部から希薄な苛性ソーダ液を供給する。陰極ガス室には、上部から酸素含有ガスを供給する。飽和食塩水を電気分解すると、陽極室では塩素ガスと濃度の低下した塩水が得られ、陰極液室上部から高濃度化した苛性ソーダ液が取り出され、ガス室下部出口からは、未反応の酸素を含有するガスを排出する。陰極ガス室には多孔性材料などをはじめとする種々の形態の金網等がガス室充填材として挿入配置されている。酸素含有ガスは巨視的にガス拡散陰極に並行に流すが、挿入したガス室充填材によってガスを混合させ、恰も攪拌を行ったかのように酸素濃度を均一化してガス拡散陰極への供給を促している。
この電解方法では、苛性ソーダと塩素を従来のイオン交換膜電解法に比べ約1V低い2V前後の電解電圧で得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述した通り、ガス拡散陰極を備えた食塩電解槽においては、ガス室には酸素含有ガスを通常上部から下部方向に流し、ガス拡散陰極内へ酸素を拡散供給させる必要がある。陰極ガス室での酸素供給に際しては、ガス流路を狭め、さらに邪魔物等を配置してガスを混合し、酸素濃度を均一化することが望ましいが、ガス流速を増大させることにより圧力損失が発生し、ガス室上部ほど圧力は高くなる。一方、ガス拡散陰極を介して陰極ガス室と隣接する陰極液室では、苛性ソーダ水溶液を上昇流で流す。その結果、ガス拡散陰極の上部ではガス側が加圧、液側が常圧となるのに対し、ガス拡散陰極下部ではガス側が常圧、液側は水頭により加圧となる。
このように、ガス拡散陰極上下で生じる圧力差は、ガス拡散陰極の固定する位置を変位させかねない。陰極ガス室の圧力損失が大きくなると、ガス拡散陰極の変位の度合いは大きくなり、固定自体も不能にすることになる。したがって、陰極ガス室の圧力損失はできるだけ小さくすることが望まれるが、ガス流路を狭めガス混合を促進すると圧力損失は増大しがちである。
【0005】
ガス拡散陰極の固定位置の変位に影響しない好ましいガス室の圧力損失は、苛性ソーダ液出口の水頭程度の200mm水頭以下であり、この値に維持することが望ましい。圧力損失を低下する方法として種々の手段があるが、過度に圧力損失を低下させるとガスの混合効果が減小してガス拡散陰極への酸素供給効果が損なわれ、過電圧(過電圧=セル電解電圧−理論電解電圧−オーム損)は上昇しやすくなる。現状得られている電解性能を維持するためには、過電圧は少なくとも0.45Vを越えてはならない。
従来、陰極ガス室内にガス透過性多孔体を挿入して圧力損失の低減等を意図した例はある。例えば特開平10−1102845号公報においては陰極ガス室内に3次元的にガスの流れが可能な多孔性材料を充填してガスを混合し、酸素濃度を均一化し、ガス拡散陰極への酸素供給効果を上げて陰極反応における電極過電圧を低く抑えることが提案されている。しかし、その従来技術においては、ガス拡散陰極内へ酸素含有ガスを拡散供給させるため、過度にガス流路を狭め、さらに密な邪魔物等を配置してガスの混合を促進させるものであった。過度なガスの混合は圧力損失の増大につながり、よってガス拡散陰極の変位の度合いは大きくなり、固定自体も不能にしかねないものであった。
【0006】
そこで本発明は、ガス拡散陰極中への酸素の物質移動効果を損なうことなくガス室のガス流の圧力損失を適度に低下させ、また製作が容易で安定した操業が可能で安価な電解槽を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
ガス拡散陰極を使用する食塩電解では、酸素はガス拡散陰極に入り反応点まで拡散する必要があり、酸素を効率的に反応点に供給することが重要な点である。効率が悪ければ酸素拡散抵抗が増大し、過電圧として電解電圧を上昇させることになる。
効率向上のためにはガス拡散陰極/ガス室界面における物質移動境膜を薄くすることが必要であり、そのためにはガス流を乱流化することが効果的である。
本発明者は、構造がシンプルでかつ陰極への酸素供給効果が損なわれない電解槽構造を鋭意探求した結果、下記の手段で上記の課題を解決した、すなわち、
(1)ガス拡散陰極を備えた電解槽のガス室に設置した金網のガスの流れる方向の目開きが3mm以上であり、ガス拡散陰極と陰極ガス室背板の距離が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする食塩電解槽。
(2)前記ガス室の空隙率が80%以上である食塩電解槽。
(3)前期金網の互いに重なりあった2本の金属線のそれぞれがガス拡散陰極とガス室背板に接触して該ガス拡散陰極とガス室背板間の距離を保持する食塩電解槽。
【0008】
従来技術に比べて、本発明におけるガス室に充填する金網は、ガス拡散陰極へのガスの供給は圧力損失が少なくなるように設置され、場合によっては陰極ガス室の空間を一定の厚みに保つこともできる。
本発明における金網はガスの流通が可能な構造であれば電気伝導性のものでなくても良く、更にガス拡散陰極中にガスを均一に流入させうるものであればより好ましいが、電気伝導性のものであることおよび熱による形状変化がないものが更に好ましい。
好ましい形態をさらに詳細に述べる。本発明における電解槽の金網は、ガス流方向と並行する線状のものが好ましいが、目開き(金網等の線の内端から内端までの距離)の粗い織物でも良い。目開きの細かい織物や編物、エキスパンドメッシュ等ではガス流路を狭め圧力損失の増大につながるため好ましくない。
【0009】
本発明における電解槽の金網として織物を用いる場合は、そのガスの流れる方向の目開きが3mm以上のものが用いられ、好ましい上限は10mmである。1枚単独で使用することもできるし、複数枚重ねて使用することもできる。電気の導電を確実にするためにも重ねた金網はスポット溶接などで互いに溶接し、さらに背板と溶接するのが好ましい。ガス拡散陰極との接触を確実にするためには、金網へ銀メッキを施すことは良好な結果をもたらす。
本発明における金網とは、縦方向の金属線と横方向の金属線を編み込んだ通常の平織金網の他にエキスパンドメッシュ等が含まれる。金網を使用する場合そのピッチは5ないし20mm、厚みは0.5ないし2mmが適当である。
【0010】
陰極ガス室の厚みは、電解槽の大きさによって適当な厚みは異なるが、通常の大きさの電解槽では0.5mmないし3mmである。0.5mmより狭いとガスの通過に伴う圧力損失が増大し、3mmより広いとガス拡散陰極への酸素の供給が悪化し過電圧の上昇を招く。ガス室は厚み1mmないし2mm程度で維持された構造は極めて好ましい条件となる。
この手段によって、酸素ガス必要理論量の1.2倍程度のガスを供給してもガス室の圧力損失を200mm水頭以下に抑えることができ、かつ過電圧上昇も0.05V以下に維持して過電圧を0.45V以下で電解を行うことができる。
つまり、電解槽の特に陰極ガス室に供給されるガスの流れる方向(縦方向)の目開きが3mm以上で、ガス拡散陰極とガス室背板の距離(陰極ガス室の幅)が0.5mm以上3mm以下である場合、過電圧は0.45V以下に抑えられ安定した電解が行われ、かつガス室の圧力損失も200mm水頭以下に抑えることができる。
【0011】
これに対し、縦方向の目開きが3mm未満の場合や陰極ガス室の幅が0.5mm未満ではガス室の圧力損失が200mm水頭を越えてガス拡散陰極の固定に悪影響が及ぶことがある。更に陰極ガス室の幅が3mmを超えると電解性能が悪化し、過電圧上昇が0.45Vを越えて適切な電解性能が得られなくなる可能性が高くなる。
陰極ガス室の空隙率も重要である。この空隙率は陰極ガス室内に設置する金網を除いた体積を陰極ガス室の全空間に対する割合として体積基準で表したものである。ガス室の空隙率が小さいとガスの通過に伴う圧力損失が増大しがちであり、空隙率は80%以上とすることが好ましい。
【0012】
次に運転方法について述べる。酸素含有ガスは酸素濃縮ガスを使用するのが望ましい。特に90%以上であることが望ましい。PSA装置は濃縮設備として最も望ましい設備の例であり、94%程度の濃縮酸素を容易に得ることができる。酸素濃縮ガスは上部から下部へ向けて下降流で流す。必要流量は通電量から計算することができ、過剰に流す必要がある。またワンパス方式と循環方式の両方が可能である。循環方式では流量が多くなり、各電極ユニットに酸素ガスを均一に導入する観点からは好ましいが、流量が多いため圧力損失は大きくなるという不利もある。本発明の陰極ガス室の構造は圧力損失が小さく、ワンパス方式において酸素ガス必要理論量の1.2倍量程度を流しても200mm水頭以下にすることができる。
導入する酸素含有ガスは、予め電解槽の運転温度に加熱してから導入するのが好ましい。冷たい場合、電解槽を冷却して電圧を高めることになり兼ねない。また2室法の場合、酸素と同時に水分を供給する必要がある。水分は加熱された液状水分、ミスト状水分、水蒸気等の形態で使用される。
又本発明で前記金網を使用することにより陰極ガス室の強度向上が可能になる。つまり前記金網の互いに重なりあった2本の金属線のそれぞれをガス拡散陰極とガス室背板に接触させると、陰極ガス室の内方向への変形が前記金網により抑制されて形状保持が確保され、前記金網に目開きによる圧力均一化に加えて、電解運転の適正化が達成できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の食塩電解槽の一例を図1に従って詳細に説明する。図1Aは液不透過型のガス拡散陰極を使用し、陰極液室と陰極ガス室が完全に分離された形式の3室法と呼ばれるガス拡散陰極使用食塩電解槽の縦断面図、図1Bは図1Aのガス室内に収容された金網の側面図である。
【0014】
食塩電解槽1はイオン交換膜2並びにガス拡散陰極3により、陽極室4−陰極液室5−陰極ガス室6の3室に分割されている。つまり陽極室4の背板とイオン交換膜2の間に陽極室4が、イオン交換膜2とガス拡散陰極3間に陰極液室5が、更にガス拡散陰極3と陰極室背板間に陰極ガス室6が形成される。
陽極室4には、酸化ルテニウムをコーティングしたDSA(登録商標)と呼ばれるTi基材からなる多孔性の陽極7がイオン交換膜に近接又は密着して設置され、この陽極室4には濃厚、しばしば飽和食塩水が陽極液導入口8より供給され、使用により希釈された食塩水が陽極液取出口12から取り出される。陽極室4は湿潤塩素環境に耐える必要があり、その構成材料として殆どの場合Ti材が使用される。陽極室は通常70−95℃の温度で運転される。
【0015】
前記陰極ガス室6は、ガス室背板10とガス拡散陰極3の間の空間に形成され、このガス室背板10とガス拡散陰極3間の距離つまり陰極ガス室6の幅(d1)は0.5mm以上3mm以下に設定される。該陰極ガス室6内にはガス導入口9から酸素含有ガスが供給され、この酸素含有ガスは陰極ガス室で消費されて余剰ガスがガス取出口13より排出される。
前記陰極ガス室6内には、縦方向の金属線11aと横方向の金属線11bを編み込んだ金網11が収容され、この金網11は陰極集電体としても機能し、かつ陰極ガス室6内を流れる酸素含有ガスを制御する。この金網11は図示の例では、縦方向の金属線11aと横方向の金属線11bの重なり部分と陰極ガス室6の幅が等しく、換言すると、金網の互いに重なりあった2本の金属線のそれぞれがガス拡散陰極3と陰極ガス室背板10に接触して該ガス拡散陰極と陰極ガス室背板間の距離、つまり陰極ガス室6の幅を保持して陰極ガス室6の変形を防止している。
【0016】
この金網11のガスの流れる方向(縦方向)の目開き(d2)、つまり隣接する横方向の金属線11b間の距離は3mm以上とし、好ましい上限は10mmである。
この陰極ガス室6内に充填された金網11は、陰極集電体としても機能し、この金網11を通してガス拡散陰極3に給電される。
前記陰極液室5内には下部の陰極液供給口14から希薄苛性ソーダ水溶液が供給され、高濃度化した苛性ソーダ水溶液が陽極液取出口15から取り出される。
【0017】
ガス拡散陰極3においては、陰極液室5側から水分が、反対面の陰極ガス室6の側から酸素含有ガスが供給され、ガス拡散陰極3の反応点において苛性ソーダの生成反応が進行する。ガス拡散陰極3のガス室6側はガス拡散層と呼ばれ、相対的に疎水性であり、ガスは拡散し易く、液は透過できない。ガス拡散陰極3の陰極液室5側は反応層と呼ばれ、相対的に親水性であり、該反応層において高濃度の苛性ソーダ水溶液が生成し、生成した苛性ソーダ水溶液は濃度勾配に従って液内部側へ拡散する。
電極3内部における物質移動の促進は非常に重要であり、特に酸素の供給が重要である。酸素源として酸素濃度90%以上の濃縮空気を使用したとしても、ガス拡散層には反応層側から水蒸気が拡散してくる。酸素ガスはこうした水蒸気の流れに抗して拡散していかなければ反応は進行しない。気体とガス拡散陰極3の界面における物質移動を促進することが重要である。
【0018】
このような電解槽の陽極室4に飽和食塩水を、陰極液室5に希釈苛性ソーダ水溶液を、陰極ガス室6に酸素含有ガスをそれぞれ供給しながら両極間に通電する。これにより、陽極7上では塩素イオンの電気化学的酸化反応が起こり、塩素ガスが発生する。Naイオンは電位勾配により陽イオン交換膜2を通して陰極液室5へ泳動する。陽極液は濃度を低下させて陽極液出口12を通して陽極室4から排出され、前記酸素含有ガスは陰極ガス室で消費されて余剰ガスがガス取出口13より排出される。
ガス拡散陰極3内部では酸素と水分が還元される陰極還元反応が起こる。この還元反応により生成する水酸イオンは、ガス拡散陰極3内から、陰極液室5へ流入する。一方、陽極室4からはナトリウムイオンが陽イオン交換膜2を通して陰極液室5へ流入し、水酸イオンと結合して苛性ソーダを生成する。
【0019】
現在ソーダ電解分野で使用可能なイオン交換膜は苛性ソーダ濃度32〜33%で最も効率的な電解反応を行うことができる。またNaイオンが通過するとき同伴する水分子数は4分子前後である。もし外部から何の供給もなければ濃度38%前後の苛性ソーダが得られることになる。このままでは電流効率は低く、電圧は高い。効率を高めるためには陰極液室への水分追加して希釈することが望ましい。しかしながら陰極液室に直接水を導入することはしない方が良い。陰極液室に部分的に希薄な濃度域が形成され、イオン交換膜にとっても好ましくないからである。希薄な苛性ソーダ液を陰極液入口14から導入し、生成苛性ソーダにより濃縮し、陰極液出口15より室外へ排出し、一部を製品として回収し、残りの苛性ソーダ液に水分を加えて希釈し、再び陰極液室5へ陰極液入口14を通して導入する。陰極室へは30〜32%で導入し33%ぐらいで排出するのがもっとも効率的である。
なお図示の例では金網11の金属線が水平方向及び垂直方向に延びる態様のみを示したが、金属線が傾斜するように金網を設置しても良く、又複数の金属線により形成される区画も四角形に限定されず、三角形や六角形でも良い。この場合の目開きとは、各区画の最上位と最下位の内縁部の縦方向の距離をいう。
【0020】
【実施例】
次に実施例により本発明の食塩電解槽を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
有効面積が幅10cm、高さ120cmの3室型電解槽を使用した。銀メッキを施したニッケル製マイクロメッシュを芯材とし、PTFE粉末、カーボン粉末を混練充填して製作されたガス拡散陰極を使用した。このガス拡散陰極はガス拡散層と反応層との2層構造からなり、反応層には銀微粒子触媒を担持させた。前記芯材は給電体としても働くようにした。
ニッケル製背板、ニッケル製平織金網、前記ガス拡散陰極、イオン交換膜(アシプレックスF4401、旭化成製)、メッシュ状陽極(DSA、登録商標)の順に重ねて電解槽を構成した。背板とガス拡散陰極の間隔は1mm、ガス拡散陰極とイオン交換膜との間隔は1mm、イオン交換膜と陽極の間隔は0mmとした。
【0022】
酸素含有ガスはガス室の上部から下部へ流し、前記金網の目開きは縦(ガスの流れる方向)3.7mm、横(ガスの流れる方向に対し直角方向)3.7mmとし、線径0.5mm、交点厚みが1.0mmとした。ガス室の厚みは1.0mmとし、ガス室の空隙率は91%であった。
ガス室には上部から、温度88℃に加熱したPSA濃縮酸素(94%)を酸素基準で1.5Nリットル/min(必要理論量の1.2倍)で導入した。陰極液室には下部より約31%の苛性ソーダを100ミリリットル/minの割合で導入した。陽極室には飽和食塩水を導入した。電解槽全体を88℃に温度調節しながら電流360Aを通電し電解を行った。電流密度は3kA/m2であった。定常状態に達した後の陽極液濃度は210g/リットル、生成苛性ソーダ濃度は33.0%であった。苛性ソーダ生成電流効率は96であった。このときの過電圧は0.40で、ガス室の圧力損失130mm水頭であった。
【0023】
[実施例2]
実施例1の平織金網の替わりに、目開きが縦3.2mm、横3.2mm、線径1.0mm、交点厚みが2.0mmのニッケル製平織金網を使用し、ガス室の厚みを2.0mm、ガス室の空隙率は82%としたこと以外は、実施例1と同様の条件で電解を行ったところ、過電圧は0.40Vで、ガス室の圧力損失94mm水頭であった。
【0024】
[比較例1]
実施例1の金網に替えて、目開きが短径0.6mm、長径横0.8mm、板厚0.4mm、線幅0.4mm、厚さ方向の距離が1.0mmのニッケル製のエキスパンドメッシュにうねり加工を加えた金網(コルゲートメッシュ)を長径がガス流に直交となるように、実施例1の電解槽の陰極ガス室内に設置した。陰極ガス室の厚みは1.0mm、ガス室の空隙率は81%であった。
実施例1と同様の条件で電解を行なったところ、過電圧は0.40Vで、ガス室の圧力損失225mm水頭であった。実施例1と比較して、過電圧には変化なかったが、ガス室の圧力損失は95mm水頭上昇した。
【0025】
[比較例2]
実施例1の金網に替えて、目開きが縦4.1mm、横4.1mm、線径0.15mm、交点厚みが0.3mmのニッケル製平織金網を使用した。ガス室の厚みは0.3mm、ガス室の空隙率は99%であった。
実施例1と同様の条件で電解を行なったところ、過電圧は0.40Vで、ガス室の圧力損失394mm水頭であった。実施例1と比較して、過電圧には変化なかったが、ガス室の圧力損失は264mm水頭上昇した。
【0026】
[比較例3]
実施例1の金網に替えて、目開きが縦4.4mm、横4.4mm、線径2.0mm、交点厚みが4.0mmのニッケル製平織金網を使用した。ガス室の厚みは4.0mm、ガス室の空隙率は76%であった。
実施例1と同様の条件で電解を行なったところ、過電圧は0.49Vで、ガス室の圧力損失は64mm水頭であった。実施例1と比較して、過電圧は0.09V上昇したが、ガス室の圧力損失は200mm水頭以下に止まった。実施例1と比較して、過電圧は0.09V上昇したが、ガス室の圧力損失は200mm水頭以下に止まった。
【0027】
実施例1、2及び比較例1、2、3の過電圧とガス室の圧力損失の結果は表1の通りである。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1、2に示すガスの流れる方向(縦方向)の目開きが3mm以上で、ガス拡散陰極とガス室背板の距離が0.5mm以上3mm以下である場合、過電圧は0.45V以下に抑えられ安定した電解が行われ、かつガス室の圧力損失も200mm水頭以下に抑えることができた。
これに比較しガスの流れる方向(縦方向)の目開きが3mm未満の比較例1及びガス拡散陰極とガス室背板の距離が0.5mm未満の比較例2ではガス室の圧力損失が200mm水頭を越えてしまい、ガス拡散陰極の固定作用に影響し、固定位置を変位させかねない結果となった。またガス拡散陰極とガス室背板の距離が3mm以上の比較例3では電解性能が悪化し、過電圧上昇が0.45Vを越える状態となり、現状得られている性能が維持できない状況をもたらした。
【0030】
【発明の効果】
本発明の電解槽は、上記のような構成から成るため、ガス拡散陰極中に吸収される酸素の物質移動効果を損なうことなく、陰極ガス室のガス流の圧力損失が低下でき、製作が容易で、ガス室空間支持体として使用する金網も非常に安価であるため電解槽コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは 本発明のガス拡散陰極を備えた食塩電解槽の一実施態様を示す縦断面図、図1Bは図1Aの陰極ガス室内に収容された金網の側面図である。
【符号の説明】
1 食塩電解槽
2 イオン交換膜
3 ガス拡散陰極
4 陽極室
5 陰極液室
6 陰極ガス室
7 陽極
10 ガス室背板
11 金網
11a 縦方向の金属線
11b 横方向の金属線
Claims (3)
- ガス拡散陰極を備えた陰極ガス室に設置した金網のガスの流れる方向の目開きが3mm以上であり、ガス拡散陰極と陰極ガス室背板の距離が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする食塩電解槽。
- 陰極ガス室の空隙率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の食塩電解槽。
- 金網の互いに重なりあった2本の金属線のそれぞれがガス拡散陰極と陰極ガス室背板に接触して該ガス拡散陰極と陰極ガス室背板間の距離を保持することを特徴とする請求項1または2に記載の食塩電解槽。
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