JP2004027012A - ゴムラテックス組成物およびそれを用いてなるゴム製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】天然ゴムラテックスおよび脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とするゴム製品(手袋、風船、コンドームなど)の剛性感を従来よりも増大させ、手袋などの装着感を改善する。
【解決手段】天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなるゴムラテックス組成物と、当該組成物を用いて浸漬法により皮膜成形して得られるゴム製品。外添アミノ酸としては水溶性アミノ酸(プロリン、グリシン、チロシンなど)が好ましく、また配合量は0.1phr以上であれば改善効果が大きい。
【選択図】なし
【解決手段】天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなるゴムラテックス組成物と、当該組成物を用いて浸漬法により皮膜成形して得られるゴム製品。外添アミノ酸としては水溶性アミノ酸(プロリン、グリシン、チロシンなど)が好ましく、また配合量は0.1phr以上であれば改善効果が大きい。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とする、剛性感が向上したゴム製品とその製造に用いるためのゴムラテックス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然ゴム製品は、十分な強度を有し、安価であることに特長があり、市場には多種の製品がみられる。天然ゴム製品に対抗するものとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)製の手袋が挙げられる。しかし、PVCなどの合成系原料は、近年ダイオキシン問題やフタル酸等による環境ホルモン影響物質との関係から、一般に慎重な廃棄処理が必要である。天然ゴム原料には、このような問題がなく環境に優しい材料であり、さらに利用が望まれている。
【0003】
従来、ゴム製品の原料であるフィールドラテックスは、必要により、脱蛋白処理したものが用いられている。すなわち、フィールドラテックス中には、ゴム成分以外に蛋白質等の成分が混在しており、最終製品を使用した人に対して強い接触アレルギー反応を引き起こすことが知られている。また、天然ゴムは、生産される地域や時期、気候の違いにより混在する蛋白質の量や種類が異なることから、最終ゴム製品の品質が悪くなる等の問題も発生する。
【0004】
そのために、天然ゴムラテックス中の蛋白質を除去することが行われており、例えば、特開平6−56902号公報、特開平6−56903号公報、特開平6−56904号公報あるいは特開平6−56905号公報などには蛋白質分解酵素と界面活性剤で処理し、蛋白質を分解し除去する方法によって、窒素含有率が0.02%以下もしくはさらに低レベルにまで脱蛋白された天然ゴムラテックスが得られている。また、特開平8−277295号公報には、ラテックス製品を水よりイオン強度が大きい塩の溶液または他の溶液中で洗浄するかまたは浸出してアレルゲン性蛋白を選択的に除去する方法が提案されている。このように、天然ゴムラテックスは、対象製品によっては、脱蛋白処理することが市場性の拡大につながっている。
【0005】
また、ゴム製品の品質向上を目的に、例えば特開2000−109596号公報には、ゴムラテックススポンジの製造において、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白を加水分解してアミノ酸とし、このアミノ酸を含んだ状態で発泡成形することが提案されている。このときのアミノ酸は外部から添加されるものではなく、蛋白の加水分解に由来するものであるから量的にも限界がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
天然ゴムラテックスおよび脱蛋白天然ゴムラテックスのいずれを原料とするゴム製品も、上述のように有用性は高いものであるが、PVC製品に比べると剛性感に欠けるという指摘があり、品質をさらに向上させる上での課題となっている。剛性は曲げや捻りなどの変形に対する弾性的性質を意味するが、天然のゴムラテックスを原料とするゴム製品(例えばゴム手袋)は、剛性感が不足しているために、PVC製手袋に比べると、装着・脱着がし難く、装着感が悪いと言われている。この剛性感は、天然ゴムラテックスを脱蛋白処理することにより、さらに不足してくる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、天然ゴムラテックスおよび脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とし、従来よりも剛性感があり使い勝手のよいゴム製品を提供しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題解決のために、剛性感の付与に効果があると考えられる添加物を種々検索した結果、アミノ酸を天然ゴムラテックスに配合し、そのゴムラテックス組成物を用いて成形したゴム製品はモジュラスが高くなるとの知見を得、これに基づいてさらに検討して本発明を完成したものである。
すなわち、本発明のゴムラテックス組成物は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなることを特徴とする。
【0009】
前記ゴムラテックス組成物を用いることにより、剛性感の向上したゴム製品が得られるが、このためには外添アミノ酸を0.1phr以上配合することが好ましい。また外添アミノ酸の種類としては水溶性アミノ酸が好ましく用いられる。
なお、ここでいう「phr」は「parts per hundred parts of rubber」の略であり、この技術分野において、配合剤の質量をゴム100部に対する部数で示すときに用いる記号である(JIS K 6200)。
【0010】
また、本発明のゴム製品は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなるゴムラテックス組成物を成形することを特徴とする。この成形は、ゴムラテックス組成物を所要のゴム製品の形にし加硫することを意味する。
前記のゴム製品としては、浸漬法により皮膜成形して得られるゴム製品が好対象であり、例えば剛性感が向上し、装着具合に優れたゴム手袋を提供し得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる天然ゴムラテックスは、フィールドラテックスあるいはハイアンモニアラテックスを出発原料とし、常法どおり調製されたものであればよい。また、脱蛋白天然ゴムラテックスに関しても、特開平6−56905号公報等に開示する公知方法によって、天然ゴムラテックスを蛋白質分解酵素と界面活性剤で処理し、窒素含有率を例えば0.02%以下もしくはさらに低レベルにまで脱蛋白した天然ゴムラテックスを用いることができる。
【0012】
前にも言及したとおり、天然ゴムラテックスは、脱蛋白処理をすることにより、ゴム製品に供したときの剛性感が低下するが、本発明によるとこの剛性感を回復させ得ることは勿論、それ以上に向上させることができる。
本発明は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスに、加硫剤と共にアミノ酸を外添することが特徴である。脱蛋白処理において、蛋白質は蛋白分解酵素(特に、エキソ型ペプチダーゼ)で分解するときアミノ酸を生ずることもあるが、アレルゲンをできるだけ完全に除去する目的上、アミノ酸、ペプチドを含む分解物は遠心分離などによって除去するのが通常である。従って、一般の脱蛋白天然ゴムラテックスには、実質上アミノ酸が含まれていないか、残存したとしてもごく微量である。一方、本発明でいう外添アミノ酸とは、天然ゴムラテックス自体に由来するアミノ酸やその蛋白質の加水分解に由来するアミノ酸が残存するかどうかは別にして、ゴムラテックスに外部から新たに添加されるアミノ酸を意味する。
【0013】
前記外添アミノ酸としては、特に水溶性アミノ酸が好ましく、例えばプロリン、グリシンあるいはチロシンなどが挙げられるが、これらアミノ酸は1種でもよく2種以上を併用してもよい。これら外添アミノ酸がゴム製品に含まれていてもアレルゲンとなる恐れはない。
外添されるアミノ酸量は、従来の天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とするゴム製品にくらべて、剛性感を増加し得る添加量が状況に応じて適宜選択される。一般的には外添アミノ酸は0.1phr以上配合するのがよく、0.5phr以上であればより好ましく、1phr以上であればさらに好ましい。上限量は、ゴム製品の品質を損ねることがない限り特に制限されるものではないが、通常は10phr以下である。
【0014】
外添アミノ酸の種類や添加量によっては、原料ゴムラテックスのpHが変化することがあり、このときは適当なpH調整剤を添加してpHをもとに戻しておくことが好ましい。通常は、アミノ酸の外添は、pHを低下する方向に作用するので、pH調整剤としては一般にアルカリ剤(例、水酸化カリウム液)が用いられる。
上記のような外添アミノ酸の添加量は、天然ゴムラテックスに由来する蛋白質を加水分解して生ずると考えられるアミノ酸量よりもはるかに多い。従って、本発明は、従来の技術、例えば前記の特開2000−109596号公報において、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白を加水分解してアミノ酸とし、この天然ゴムラテックスを発泡成形して得られる脱蛋白天然ゴムラテックス製品(スポンジ)におけるアミノ酸の利用とは異なるものである。
【0015】
本発明のゴムラテックス組成物に配合する加硫剤は、従来、天然ゴム製品の加硫に用いられているものであればよく、硫黄、無機・有機含硫黄化合物が好ましく用いられる。また、この組成物には、天然ゴム−硫黄加硫系用の加硫促進剤を適量添加しておくのが好ましく、その例としては亜鉛華などの無機促進剤や、チアゾール類(MZ、DMなど)、ジチオカーバメート類(BZなど)、チウラム類(TTなど)、グアニジン類、アミン類などの有機促進剤が挙げられる。更に、本発明のゴム組成物には、ゴム製品の品質改良等を目的に、可塑剤、充填剤、着色剤、老化防止剤などを適宜配合する。
【0016】
次に、本発明のゴム製品は、上記のとおり調製したゴムラテックス組成物を用いて、所望の形状に成形し、加熱加硫に付すことにより得られる。ここで対象とするゴム製品は、天然ゴム材料を用いるものであれば特に制限するものではないが、「課題を解決するための手段」の項でも述べたとおり、品質上において剛性感を補うことを要するゴム製品が好対象であって、例えば手袋、コンドーム、風船などの浸漬法により得られる製品が挙げられる。
【0017】
本発明において、浸漬法によるゴム製品は、従来法どおり、所望のゴム製品を形成するための型(浸漬型)に凝固液を付着させ、これを上記のゴムラテックス組成物中に浸漬して製膜し、引き上げてから、脱型して成形することによって得られる。例えば、手袋の場合は、特開平6−17301号公報に記載されているように、手袋金型を洗浄し、オーブンで予備加熱後、凝固液(例、硝酸カルシウム溶液)に浸漬し、直ちに取り出した後、100℃付近のオーブンで乾燥・加硫することによって製造される。この製造方法は、上記のゴムラテックス組成物を原料とすること以外、その他の作製条件、例えば凝固液、浸漬温度、浸漬時間、あるいはゴム製品を成形するための型、などは基本的に従来と同様である。
【0018】
本発明のゴム製品は、後述するJIS K 6251所載の試験方法に従って、モジュラスM500(Mpa)を測定するとき、通常のゴムラテックス(アミノ酸無添加)を原料とするゴム製品に比較して、10%以上も高いものである。このアミノ酸添加効果は、後述の実施例の結果にも示されるとおり、アミノ酸の外添量との関係からも裏付けられている。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜4および比較例1
表1に示す各組成の脱蛋白天然ゴムラテックス組成物を調製した。すなわち、脱蛋白天然ゴムラテックス(全固形分:60%、固形分の窒素含量:0.03%、pH:10.5)に、ボールミルで分散した硫黄、亜鉛華および加硫促進剤BZと、各アミノ酸を順次配合した。このとき、実施例1、2、3および4の組成物は、それぞれpH10.1、pH9.8、pH10.1およびpH10.1を示したので、水酸化カリウム水溶液を用いてもとのpH10.5となるように調整した。
【0020】
次に、上記のとおり調製された脱蛋白天然ゴムラテックス組成物中に、凝固液(硝酸カルシウム30%水溶液)を均一に付着させ、50℃に加温した陶器製の手袋型を浸漬し、直ちに引き上げ、100℃で30分間オーブン中に放置して加硫後、脱型し、ゴム手袋を得た。
〔引張試験測定法〕
上記の実施例1〜4および比較例1で得たゴム手袋を打ち抜いて、JIS 4号に規定された引張試験用の試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K 6251所載の試験方法に従って、伸び率500%のときのモジュラスを測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
これらの結果からわかるように、比較例1(アミノ酸無添加)のゴム手袋のモジュラスM500(MPa)を100とするとき、実施例1〜4(アミノ酸添加)のゴム手袋はそれぞれ114、120、122および133となり、剛性値を著しく増大させることができた。
また、比較例1のゴム手袋のモジュラスM500(MPa)は、後記の表2に示す比較例2(脱蛋白処理をしていないもの)よりも低い値を示しており、脱蛋白処理することによってモジュラスM500(MPa)が低下することを示している。ところが、本発明に従ってアミノ酸を外添することにより、脱蛋白処理をしていないゴムラテックス程度までに増大させることは勿論、それ以上にすることができる。
【0023】
実施例5〜8および比較例2
表2に示す各組成の天然ゴムラテックス組成物を調製した。すなわち、天然ゴムラテックス(全固形分:60%、pH:10.5)に、ボールミルで分散した硫黄、亜鉛華および加硫促進剤BZと、各アミノ酸を順次配合した。このとき、実施例5、6、7および8の組成物は、それぞれpH10.1、pH10.1、pH9.8およびpH9.6を示したので、水酸化カリウム水溶液を用いてもとのpH10.5となるように調整した。
【0024】
次に、上記のとおり調製された天然ゴムラテックス組成物中に、凝固液(硝酸カルシウム30%水溶液)を均一に付着させ、50℃に加温した陶器製の手袋型を浸漬し、直ちに引き上げ、100℃で30分間オーブン中に放置して加硫後、脱型し、ゴム手袋を得た。
実施例5〜8および比較例2得られた各ゴム手袋について、前述の測定方法により、モジュラスM500(MPa)を測定した結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
これらの結果からわかるように、比較例2(アミノ酸無添加)のゴム手袋のモジュラスM500(MPa)を100とするとき、実施例5〜8(アミノ酸添加)のゴム手袋はそれぞれ110、128、146および161となり、著しく増大させることができた。このうち、実施例6、7および8からわかるように、チロシンの添加量を増やすことにより、手袋のモジュラスM500(MPa)も順次増大しており、アミノ酸の添加効果を認識することができる。
【0027】
比較例3
比較例2の天然ゴムラテックス組成物において、ケラチン5gを添加して同様に天然ゴムラテックス組成物を調製した。この組成物を用いて、前述の方法で手袋の製造を試みたが、加硫する不安定化し均一な膜を作製することができなかった。
【0028】
【発明の効果】
本発明によると、アミノ酸を天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスに添加するという簡単な手段により、これらゴムラテックスを原料とするゴム製品の剛性感を増大し、品質を向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とする、剛性感が向上したゴム製品とその製造に用いるためのゴムラテックス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然ゴム製品は、十分な強度を有し、安価であることに特長があり、市場には多種の製品がみられる。天然ゴム製品に対抗するものとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)製の手袋が挙げられる。しかし、PVCなどの合成系原料は、近年ダイオキシン問題やフタル酸等による環境ホルモン影響物質との関係から、一般に慎重な廃棄処理が必要である。天然ゴム原料には、このような問題がなく環境に優しい材料であり、さらに利用が望まれている。
【0003】
従来、ゴム製品の原料であるフィールドラテックスは、必要により、脱蛋白処理したものが用いられている。すなわち、フィールドラテックス中には、ゴム成分以外に蛋白質等の成分が混在しており、最終製品を使用した人に対して強い接触アレルギー反応を引き起こすことが知られている。また、天然ゴムは、生産される地域や時期、気候の違いにより混在する蛋白質の量や種類が異なることから、最終ゴム製品の品質が悪くなる等の問題も発生する。
【0004】
そのために、天然ゴムラテックス中の蛋白質を除去することが行われており、例えば、特開平6−56902号公報、特開平6−56903号公報、特開平6−56904号公報あるいは特開平6−56905号公報などには蛋白質分解酵素と界面活性剤で処理し、蛋白質を分解し除去する方法によって、窒素含有率が0.02%以下もしくはさらに低レベルにまで脱蛋白された天然ゴムラテックスが得られている。また、特開平8−277295号公報には、ラテックス製品を水よりイオン強度が大きい塩の溶液または他の溶液中で洗浄するかまたは浸出してアレルゲン性蛋白を選択的に除去する方法が提案されている。このように、天然ゴムラテックスは、対象製品によっては、脱蛋白処理することが市場性の拡大につながっている。
【0005】
また、ゴム製品の品質向上を目的に、例えば特開2000−109596号公報には、ゴムラテックススポンジの製造において、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白を加水分解してアミノ酸とし、このアミノ酸を含んだ状態で発泡成形することが提案されている。このときのアミノ酸は外部から添加されるものではなく、蛋白の加水分解に由来するものであるから量的にも限界がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
天然ゴムラテックスおよび脱蛋白天然ゴムラテックスのいずれを原料とするゴム製品も、上述のように有用性は高いものであるが、PVC製品に比べると剛性感に欠けるという指摘があり、品質をさらに向上させる上での課題となっている。剛性は曲げや捻りなどの変形に対する弾性的性質を意味するが、天然のゴムラテックスを原料とするゴム製品(例えばゴム手袋)は、剛性感が不足しているために、PVC製手袋に比べると、装着・脱着がし難く、装着感が悪いと言われている。この剛性感は、天然ゴムラテックスを脱蛋白処理することにより、さらに不足してくる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、天然ゴムラテックスおよび脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とし、従来よりも剛性感があり使い勝手のよいゴム製品を提供しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題解決のために、剛性感の付与に効果があると考えられる添加物を種々検索した結果、アミノ酸を天然ゴムラテックスに配合し、そのゴムラテックス組成物を用いて成形したゴム製品はモジュラスが高くなるとの知見を得、これに基づいてさらに検討して本発明を完成したものである。
すなわち、本発明のゴムラテックス組成物は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなることを特徴とする。
【0009】
前記ゴムラテックス組成物を用いることにより、剛性感の向上したゴム製品が得られるが、このためには外添アミノ酸を0.1phr以上配合することが好ましい。また外添アミノ酸の種類としては水溶性アミノ酸が好ましく用いられる。
なお、ここでいう「phr」は「parts per hundred parts of rubber」の略であり、この技術分野において、配合剤の質量をゴム100部に対する部数で示すときに用いる記号である(JIS K 6200)。
【0010】
また、本発明のゴム製品は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなるゴムラテックス組成物を成形することを特徴とする。この成形は、ゴムラテックス組成物を所要のゴム製品の形にし加硫することを意味する。
前記のゴム製品としては、浸漬法により皮膜成形して得られるゴム製品が好対象であり、例えば剛性感が向上し、装着具合に優れたゴム手袋を提供し得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる天然ゴムラテックスは、フィールドラテックスあるいはハイアンモニアラテックスを出発原料とし、常法どおり調製されたものであればよい。また、脱蛋白天然ゴムラテックスに関しても、特開平6−56905号公報等に開示する公知方法によって、天然ゴムラテックスを蛋白質分解酵素と界面活性剤で処理し、窒素含有率を例えば0.02%以下もしくはさらに低レベルにまで脱蛋白した天然ゴムラテックスを用いることができる。
【0012】
前にも言及したとおり、天然ゴムラテックスは、脱蛋白処理をすることにより、ゴム製品に供したときの剛性感が低下するが、本発明によるとこの剛性感を回復させ得ることは勿論、それ以上に向上させることができる。
本発明は、天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスに、加硫剤と共にアミノ酸を外添することが特徴である。脱蛋白処理において、蛋白質は蛋白分解酵素(特に、エキソ型ペプチダーゼ)で分解するときアミノ酸を生ずることもあるが、アレルゲンをできるだけ完全に除去する目的上、アミノ酸、ペプチドを含む分解物は遠心分離などによって除去するのが通常である。従って、一般の脱蛋白天然ゴムラテックスには、実質上アミノ酸が含まれていないか、残存したとしてもごく微量である。一方、本発明でいう外添アミノ酸とは、天然ゴムラテックス自体に由来するアミノ酸やその蛋白質の加水分解に由来するアミノ酸が残存するかどうかは別にして、ゴムラテックスに外部から新たに添加されるアミノ酸を意味する。
【0013】
前記外添アミノ酸としては、特に水溶性アミノ酸が好ましく、例えばプロリン、グリシンあるいはチロシンなどが挙げられるが、これらアミノ酸は1種でもよく2種以上を併用してもよい。これら外添アミノ酸がゴム製品に含まれていてもアレルゲンとなる恐れはない。
外添されるアミノ酸量は、従来の天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスを原料とするゴム製品にくらべて、剛性感を増加し得る添加量が状況に応じて適宜選択される。一般的には外添アミノ酸は0.1phr以上配合するのがよく、0.5phr以上であればより好ましく、1phr以上であればさらに好ましい。上限量は、ゴム製品の品質を損ねることがない限り特に制限されるものではないが、通常は10phr以下である。
【0014】
外添アミノ酸の種類や添加量によっては、原料ゴムラテックスのpHが変化することがあり、このときは適当なpH調整剤を添加してpHをもとに戻しておくことが好ましい。通常は、アミノ酸の外添は、pHを低下する方向に作用するので、pH調整剤としては一般にアルカリ剤(例、水酸化カリウム液)が用いられる。
上記のような外添アミノ酸の添加量は、天然ゴムラテックスに由来する蛋白質を加水分解して生ずると考えられるアミノ酸量よりもはるかに多い。従って、本発明は、従来の技術、例えば前記の特開2000−109596号公報において、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白を加水分解してアミノ酸とし、この天然ゴムラテックスを発泡成形して得られる脱蛋白天然ゴムラテックス製品(スポンジ)におけるアミノ酸の利用とは異なるものである。
【0015】
本発明のゴムラテックス組成物に配合する加硫剤は、従来、天然ゴム製品の加硫に用いられているものであればよく、硫黄、無機・有機含硫黄化合物が好ましく用いられる。また、この組成物には、天然ゴム−硫黄加硫系用の加硫促進剤を適量添加しておくのが好ましく、その例としては亜鉛華などの無機促進剤や、チアゾール類(MZ、DMなど)、ジチオカーバメート類(BZなど)、チウラム類(TTなど)、グアニジン類、アミン類などの有機促進剤が挙げられる。更に、本発明のゴム組成物には、ゴム製品の品質改良等を目的に、可塑剤、充填剤、着色剤、老化防止剤などを適宜配合する。
【0016】
次に、本発明のゴム製品は、上記のとおり調製したゴムラテックス組成物を用いて、所望の形状に成形し、加熱加硫に付すことにより得られる。ここで対象とするゴム製品は、天然ゴム材料を用いるものであれば特に制限するものではないが、「課題を解決するための手段」の項でも述べたとおり、品質上において剛性感を補うことを要するゴム製品が好対象であって、例えば手袋、コンドーム、風船などの浸漬法により得られる製品が挙げられる。
【0017】
本発明において、浸漬法によるゴム製品は、従来法どおり、所望のゴム製品を形成するための型(浸漬型)に凝固液を付着させ、これを上記のゴムラテックス組成物中に浸漬して製膜し、引き上げてから、脱型して成形することによって得られる。例えば、手袋の場合は、特開平6−17301号公報に記載されているように、手袋金型を洗浄し、オーブンで予備加熱後、凝固液(例、硝酸カルシウム溶液)に浸漬し、直ちに取り出した後、100℃付近のオーブンで乾燥・加硫することによって製造される。この製造方法は、上記のゴムラテックス組成物を原料とすること以外、その他の作製条件、例えば凝固液、浸漬温度、浸漬時間、あるいはゴム製品を成形するための型、などは基本的に従来と同様である。
【0018】
本発明のゴム製品は、後述するJIS K 6251所載の試験方法に従って、モジュラスM500(Mpa)を測定するとき、通常のゴムラテックス(アミノ酸無添加)を原料とするゴム製品に比較して、10%以上も高いものである。このアミノ酸添加効果は、後述の実施例の結果にも示されるとおり、アミノ酸の外添量との関係からも裏付けられている。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜4および比較例1
表1に示す各組成の脱蛋白天然ゴムラテックス組成物を調製した。すなわち、脱蛋白天然ゴムラテックス(全固形分:60%、固形分の窒素含量:0.03%、pH:10.5)に、ボールミルで分散した硫黄、亜鉛華および加硫促進剤BZと、各アミノ酸を順次配合した。このとき、実施例1、2、3および4の組成物は、それぞれpH10.1、pH9.8、pH10.1およびpH10.1を示したので、水酸化カリウム水溶液を用いてもとのpH10.5となるように調整した。
【0020】
次に、上記のとおり調製された脱蛋白天然ゴムラテックス組成物中に、凝固液(硝酸カルシウム30%水溶液)を均一に付着させ、50℃に加温した陶器製の手袋型を浸漬し、直ちに引き上げ、100℃で30分間オーブン中に放置して加硫後、脱型し、ゴム手袋を得た。
〔引張試験測定法〕
上記の実施例1〜4および比較例1で得たゴム手袋を打ち抜いて、JIS 4号に規定された引張試験用の試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K 6251所載の試験方法に従って、伸び率500%のときのモジュラスを測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
これらの結果からわかるように、比較例1(アミノ酸無添加)のゴム手袋のモジュラスM500(MPa)を100とするとき、実施例1〜4(アミノ酸添加)のゴム手袋はそれぞれ114、120、122および133となり、剛性値を著しく増大させることができた。
また、比較例1のゴム手袋のモジュラスM500(MPa)は、後記の表2に示す比較例2(脱蛋白処理をしていないもの)よりも低い値を示しており、脱蛋白処理することによってモジュラスM500(MPa)が低下することを示している。ところが、本発明に従ってアミノ酸を外添することにより、脱蛋白処理をしていないゴムラテックス程度までに増大させることは勿論、それ以上にすることができる。
【0023】
実施例5〜8および比較例2
表2に示す各組成の天然ゴムラテックス組成物を調製した。すなわち、天然ゴムラテックス(全固形分:60%、pH:10.5)に、ボールミルで分散した硫黄、亜鉛華および加硫促進剤BZと、各アミノ酸を順次配合した。このとき、実施例5、6、7および8の組成物は、それぞれpH10.1、pH10.1、pH9.8およびpH9.6を示したので、水酸化カリウム水溶液を用いてもとのpH10.5となるように調整した。
【0024】
次に、上記のとおり調製された天然ゴムラテックス組成物中に、凝固液(硝酸カルシウム30%水溶液)を均一に付着させ、50℃に加温した陶器製の手袋型を浸漬し、直ちに引き上げ、100℃で30分間オーブン中に放置して加硫後、脱型し、ゴム手袋を得た。
実施例5〜8および比較例2得られた各ゴム手袋について、前述の測定方法により、モジュラスM500(MPa)を測定した結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
これらの結果からわかるように、比較例2(アミノ酸無添加)のゴム手袋のモジュラスM500(MPa)を100とするとき、実施例5〜8(アミノ酸添加)のゴム手袋はそれぞれ110、128、146および161となり、著しく増大させることができた。このうち、実施例6、7および8からわかるように、チロシンの添加量を増やすことにより、手袋のモジュラスM500(MPa)も順次増大しており、アミノ酸の添加効果を認識することができる。
【0027】
比較例3
比較例2の天然ゴムラテックス組成物において、ケラチン5gを添加して同様に天然ゴムラテックス組成物を調製した。この組成物を用いて、前述の方法で手袋の製造を試みたが、加硫する不安定化し均一な膜を作製することができなかった。
【0028】
【発明の効果】
本発明によると、アミノ酸を天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスに添加するという簡単な手段により、これらゴムラテックスを原料とするゴム製品の剛性感を増大し、品質を向上させることができる。
Claims (7)
- 天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなるゴムラテックス組成物。
- 外添アミノ酸を0.1phr以上配合してなる請求項1記載のゴムラテックス組成物。
- 外添アミノ酸が水溶性アミノ酸である請求項1記載のゴムラテックス組成物。
- 天然ゴムラテックスまたは脱蛋白天然ゴムラテックスと、加硫剤および外添アミノ酸とを配合してなるゴムラテックス組成物を成形してなるゴム製品。
- 外添アミノ酸を0.1phr以上配合してなる請求項4記載のゴム製品。
- 外添アミノ酸が水溶性アミノ酸である請求項4記載のゴム製品。
- 浸漬法により皮膜成形して成る請求項4〜6のいずれかに記載のゴム製品。
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