JP2004026951A - 無機フィラー強化プロピレン重合体組成物 - Google Patents

無機フィラー強化プロピレン重合体組成物 Download PDF

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巽 富美男
Michio Onishi
大西 陸夫
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Abstract

【課題】機械的強度、耐熱性および耐衝撃性に優れ、しかも低コストで得られる無機フィラー強化プロピレン重合体組成物を提供すること。
【解決手段】プロピレン重合体(A1)100 部(質量部、以下同様)を、ラジカル開始剤(A2)0.01〜1部、および不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)0.1 〜1部とともに溶融混練することによって得られる変性プロピレン重合体(A) 1 〜99%(質量%、以下同様)、無機フィラー(B) 1〜50%ならびにプロピレン重合体(C) 0 〜98%を含有する樹脂組成物であって、上記変性プロピレン重合体(A) が、(1) 極限粘度[η](テトラリン中、135℃で測定) :1デシリットル/g以上、(2) 酸含率とポリマー鎖数の比(β値):0.5 〜3.0 および(3) ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した分子量1万以下の成分量:2%以下を満たす無機フィラー強化プロピレン重合体組成物である。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも無機フィラーおよび変性プロピレン重合体を含有する無機フィラー強化プロピレン重合体組成物に関し、さらに詳しくは機械的強度、耐熱性および耐衝撃性に優れ、しかも低コストで製造することができる無機フィラー強化プロピレン重合体組成物に関する。
本発明で用いられる変性プロピレン重合体は、従来用いられてきた変性プロピレン重合体にくらべて分子量が高いため、無機フィラー強化プロピレン重合体組成物としたときに優れた力学物性を有している。また、従来用いられてきた変性プロピレン重合体よりも少ない変性量で無機フィラーとの高い接着性が得られる。このため、変性プロピレン重合体をそのまま成形体として使用することもできる。また、同変性プロピレン重合体には未反応物が少なく、且つ、低分子量体も極めて少ないという特徴を有しているため、低分子量体のブリードアウトが問題となるような用途に有効である。
本発明の無機フィラー強化プロピレン重合体組成物は、自動車内外装部品、家電用ハウジング、電気部品、機械部品、事務用品、家具、日用雑貨、台所用品など、従来プロピレン重合体が使用されている分野において好適に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
結晶性プロピレン重合体を無機フィラーで強化した、いわゆるコンパウンド材料は、機械的強度、剛性および耐熱性等に優れるため、自動車部品、家電部品等の工業部品分野に広く使用されている。特に無機フィラーとしてガラス繊維やマイカを用いる場合は、無水マレイン酸変性プロピレン重合体等を添加してプロピレン重合体とフィラーとの界面接着性を向上させることにより、組成物の機械物性を改良できることが知られている。ここで用いられる変性プロピレン重合体の大半は分子量が小さいため、接着性を上げるために添加量を増加させるとプロピレン重合体組成物の物性が損なわれるという問題を有していた。
特開平4−198243号公報等に開示されている無水マレイン酸変性プロピレン重合体は、比較的低メルトフローレートの結晶性プロピレン重合体を溶融状態で、有機過酸化物の存在下に無水マレイン酸とグラフト重合させて製造されたものである。一般に溶融状態のプロピレン重合体に有機過酸化物および無水マレイン酸等のエチレン性不飽和結合含有モノマーを作用させると、モノマーのグラフトと同時に分子切断による分子量低下が起こる。特開平4−198243号公報に開示されている上記グラフト変性プロピレン重合体の原料として用いられている結晶性プロピレン重合体は分子量が小さいため、所望する無水マレイン酸グラフト量での変性プロピレン重合体の分子量は非常に小さい。従って、この変性プロピレン重合体に無機フィラーを添加した無機フィラー強化樹脂組成物の成形体は、耐衝撃性が十分でない場合が多い。そこで、変性プロピレン重合体の分子量を高く保持するために有機過酸化物の添加量を少なくすると、無水マレイン酸グラフト量が低下するだけでなく、未グラフトの無水マレイン酸が変性プロピレン重合体内に多く残存するため、樹脂組成物の機械物性の改良効果が小さくなってしまう。
【0003】
特公昭52−30545号公報には、炭化水素系の溶媒中で結晶性プロピレン重合体を加熱溶解または膨潤させた後、無水マレイン酸および有機過酸化物を作用させてグラフト変性プロピレン重合体を調製する方法が開示されている。この方法で得られるグラフト変性プロピレン重合体は、無水マレイン酸のグラフト反応が効率的に起こるため、所望するグラフト量での分子量が比較的高く、かつ未グラフト物が少ないので、無機フィラー強化プロピレン重合体に用いる変性プロピレン重合体としては好適といえるが、製造プロセスが煩雑で非常にコスト高になるため、工業的に有利な素材とはいえない。
特開2002−20560号公報には、超高分子量のプロピレン重合体を原料に用いる変性プロピレン重合体の調製方法が開示されている。この方法で得られる変性プロピレン重合体は、比較的高い分子量を有し、かつ製造プロセスも簡便であり、無機フィラー強化プロピレン重合体組成物の製造に用いる変性プロピレン重合体としては好適といえるが、変性プロピレン重合体のグラフト量が高いためにグラフトされた変性基に起因する物性低下が生じ、また、得られる変性プロピレン重合体の分子量も十分高いとはいえない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、機械的強度、耐熱性および耐衝撃性に優れ、しかも低コストで得られる無機フィラー強化プロピレン重合体組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の変性プロピレン重合体に無機フィラーを配合することにより、すなわち、プロピレン重合体を原料として用い、一分子鎖当たりの変性基の数を制御し、簡便な酸変性工程によって製造される、高分子量で、従来よりも変性量が少なく、かつ未反応モノマーや低分子量成分等の不純物が少ない変性プロピレン重合体に無機フィラーを配合することにより、機械的強度、耐熱性および耐衝撃性に優れ、しかも低コストで無機フィラー強化プロピレン重合体組成物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、プロピレン重合体(A1)100質量部を、ラジカル開始剤(A2)0.01〜1質量部、および不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)0.1〜1質量部とともに溶融混練することによって得られる変性プロピレン重合体(A)1〜99質量%、無機フィラー(B)1〜50質量%ならびにプロピレン重合体(C)0〜98質量%を含有する樹脂組成物であって、上記変性プロピレン重合体(A)が、下記(1)〜(3)
(1)極限粘度[η](テトラリン中、135℃で測定) :1デシリットル/g以上
(2)酸含率とポリマー鎖数の比(β値):0.5〜3.0
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量1万以下の成分量:2質量%以下
を満たすことを特徴とする無機フィラー強化プロピレン重合体組成物を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる変性プロピレン重合体(A)は、プロピレン重合体(A1)100質量部を、ラジカル開始剤(A2)0.01〜1質量部、および不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)0.1〜1質量部とともに溶融混練することによって得ることができる。
原料として用いるプロピレン重合体(A1)は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、少量の他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体の場合は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。プロピレン重合体(A1)は、本発明の組成物の用途に応じて適宜選択することができるが、機械的特性が重視される用途においてはプロピレン単独重合体が好ましい。
プロピレン重合体(A1)において、プロピレンと共重合する他のモノマーの含有量は、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下であるのが望ましい。他のモノマーとしては、たとえば、エチレン,1−ブテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ドデセンなどの炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のα−オレフィン;スチレン,ビニルシクロペンテン,ビニルシクロヘキサン,ビニルノルボルナンなどのビニル化合物;酢酸ビニルなどのビニルエステル;無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体;共役ジエン;ジシクロペンタジエン,1,4−ヘキサジエン,ジシクロオクタジエン,メチレンノルボルネン,5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ポリエン類等が挙げられる。これらは2種以上が共重合されていてもよい。
【0007】
プロピレン重合体(A1)は、三塩化チタンとアルキルアルミニウム化合物とからなるチーグラーナッタ触媒、またはマグネシウム化合物とチタン化合物とからなる複合触媒などの公知の触媒の存在下に、公知の重合方法により製造することができる。プロピレン重合体(A1)の好ましい製造方法としては、例えば高立体規則性ポリプロピレン製造用触媒の存在下に、プロピレンを単独で、またはプロピレンと他のモノマーとを単段あるいは多段重合で重合させて製造する方法などを挙げることができる。
プロピレン重合体(A1)は、135℃テトラリン中で測定された極限粘度[η]が2.8デシリットル/g以上、好ましくは4.0デシリットル/g以上、さらに好ましくは6.0デシリットル/g以上であることが望ましい。極限粘度[η]が2.8デシリットル/g未満のプロピレン重合体を原料とすると、グラフト反応時にプロピレン重合体の分子切断による分子量低下が生じるために、得られる変性プロピレン重合体(A)の分子量が低下し、組成物の機械的特性が著しく低下するおそれがある。
極限粘度[η]は、(株)離合社製VMR−053型自動粘度計を用い、測定溶媒には酸化防止剤として2, 6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を1g/リットル添加したテトラリンを用い、測定温度135℃、試料濃度0.8〜1.4g/リットルで測定を行った。ウベローデ型毛管粘度計において、濃度C(g/デシリットル)の試料溶液の落下時間がt秒、溶媒の落下時間がt0 秒であるとき、以下の関係式(Hugginsの式)を用い、k’=0.35として極限粘度[η]を算出した。
ηsp=t/t0 −1
ηsp/C=k’[η]2 C+[η]
【0008】さらに、プロピレン重合体(A1)は、プロピレン連鎖の立体規則性が13C−NMRより求めたペンタッド分率[mmmm]で80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上であることが望ましい。プロピレン重合体はプロピレン連鎖の立体規則性が高いほど結晶性が良好となるため、その結果として剛性、機械的強度などの機械的物性や耐熱性などに優れた組成物を得ることができる。
本発明で用いられるペンタッド分率[mmmm]とは、プロピレン重合体の13C−NMRにおいて、全メチル炭素領域(19.0〜22.5ppm)に現れる9つシグナルの総面積のうち、ペンタッドメソに帰属される21.8ppmのシグナルの占める面積の割合である。
【0009】
ペンタッド分率[mmmm]は、下記の装置および条件にて測定した。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
試料濃度:220mg/3ミリリットル
酸化防止剤:2, 6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)8m
g/3ミリリットル
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(質量比)
混合溶媒
温度:130℃
共鳴周波数:100MHz
パルス幅:45°(9.0μs)
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0010】
ラジカル開始剤(A2)としては、ペルオキシケタール類、ジアルキルペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ペルオキシジカーボネート類およびハイドロペルオキシド類などの有機化酸化物を用いることができる。具体的には、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、ブチルペルオキシド、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、t−ブチルペルジエチルアセテート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペル−sec−オクトエート、t−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルフェニルアセテート、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ラウロイルペルオキシド、2, 5−ジメチル−2, 5−ジ(ペルオキシベンゾエート)へキシン−3、1, 3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1, 4−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2, 5−ジメチル−2, 5−ジ(t−ブチルペルオキシ)へキシン−3、2, 5−ジメチル−2, 5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、4,4−ジ−t−ブチルペルオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサハイドロフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシアゼレート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキソエート、t−ブチルペルオキシ−イソプロピルカービネート、サクシニックアシッドペルオキシドおよびビニルトリス−(t−ブチルペルオキシ)シラン等が挙げられる。
好ましいラジカル開始剤(A2)としては、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシドが挙げられる。
ラジカル開始剤(A2)の添加量は、プロピレン重合体(A1)100質量部に対して0.01〜1質量部が適当であり、好ましくは0.015〜0.2質量部である。ラジカル開始剤(A2)の最適な添加量は、その種類、溶融混練反応の条件、目的とする組成物の要求特性などによって変化するが、ラジカル開始剤(A2)の添加量が少なすぎると必要なグラフト反応が起こらず、無機フィラー(B)との接着性が低下するために組成物の物性が損なわれる。また、添加量が多すぎると変性プロピレン重合体(A)の分子量が著しく低下するため、組成物の物性、耐熱性などが損なわれる。
【0011】
(A3)成分の不飽和カルボン酸またはその無水物は、1分子内にエチレン性不飽和結合とカルボキシル基とを合わせ持つ化合物である。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸等が挙げられる。
(A3)成分としては、不飽和カルボン酸の無水物が好ましく、特に無水マレイン酸、無水イタコン酸が好ましい。不飽和カルボン酸および/またはその無水物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)の添加量は、プロピレン重合体(A1)100質量部に対して0.1〜1質量部が適当であり、好ましくは0.2〜0.5質量部である。不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)の最適な添加量は、その種類、溶融混練反応の条件、目的とする組成物の要求特性などによって変化するが、不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)の添加量が少なすぎるとグラフト反応により導入されるグラフト基が少なくなるため無機フィラーとの接着性が低下し、組成物の物性が損なわれる。また、添加量が多すぎると未反応の不飽和カルボン酸またはその無水物が増加し、変性プロピレン重合体(A)と無機フィラー(B)との接着を阻害する要因となる。また、グラフト反応時に多量の未反応物が生じるために刺激臭など作業環境の悪化を引き起こしたり、必要以上の原料を添加することはコスト増加の要因ともなり、好ましくない。
【0012】
プロピレン重合体(A1)、ラジカル開始剤(A2)、不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)を溶融混練するときの温度は160〜270℃、好ましくは180〜250℃、滞留時間は10秒〜10分間、好ましくは30秒〜5分間とするのが望ましい。
混練温度が160℃よりも低温では、ラジカル反応の効率が向上せず、目的とした酸変性量が達成できないおそれがある。270℃よりも高温では、プロピレン重合体の熱分解や酸化劣化が起こりやすくなる。滞留時間が10秒未満では、ラジカル反応が十分に進行せず、目的とした酸変性量が達成できないおそれがある。10分を超えると、プロピレン重合体(A1)の熱分解や酸化劣化が起こりやすくなる。
溶融混練に用いる混練機としては、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機など、通常樹脂を混練するために用いられる混練機を使用することができ、なかでも二軸押出機が好ましい。二軸押出機の具体例としては、東洋精機製作所製のラボプラストミル、東芝機械(株)製のTEM−35Bなどを挙げることができる。
【0013】
上記溶融混練による変性反応で得られた変性プロピレン重合体(A)は、変性反応後に炭素数6〜20の脂肪族および/または炭素数6〜20の脂環式炭化水素(D)と、ジアルキルケトン(E)の混合溶媒中で、40〜90℃の温度で接触させ、続いて、炭素数1〜8のアルコール(F)、ジアルキルケトン(E)またはこれらの混合溶媒中に浸漬した後に乾燥させることにより、洗浄処理を行うことが好ましい。
炭素数6〜20の脂肪族および/または炭素数6〜20の脂環式炭化水素(D)としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の直鎖状炭化水素化合物、デカリン、テトラリン等の脂環炭化水素が挙げられる。特に、ポリオレフィン製造装置で用いているヘキサン、ヘプタン等の重合溶媒が好ましく、若干の不純物が混入した溶媒でも、変性プロピレン重合体(A)が膨潤すれば問題なく使用することができる。
ジアルキルケトン(E)としては、炭素数3以上のケトンが好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン等が挙げられる。特に、好適にはアセトンである。
変性プロピレン重合体(A)に対する、炭素数6〜20の脂肪族および/または脂環式炭化水素(D)とジアルキルケトン(E)の混合溶媒の使用量としては、混合溶媒の量が、容積または質量で変性プロピレン重合体と同量以上であればよく、変性プロピレン重合体が混合溶媒に完全に浸る量以上が好ましい。
【0014】
ジアルキルケトン(E)と炭素数6〜20の脂肪族および/または脂環式炭化水素(D)の体積比[(E)/(D)]としては、0.05〜0.6が好ましい。0.6を超えると変性プロピレン重合体原料が十分に膨潤せず、変性プロピレン重合体原料内にジアルキルケトン(E)が浸透せず、未反応の不飽和カルボン酸および/またはその無水物の除去効率が低下することがある。
変性プロピレン重合体と混合溶媒の接触方法としては、例えば、混合溶媒中で変性プロピレン重合体を加熱攪拌する方法が挙げられる。変性プロピレン重合体(A)と混合溶媒は、40〜90℃、好ましくは70〜90℃で接触させる。40℃未満では、未反応の不飽和カルボン酸および/またはその無水物の除去効率が低下する。90℃を超えると、水系の加温システムでの実施が困難になり、また、変性プロピレン重合体が融着するおそれがある。接触時間は、30分〜5時間、好ましくは1〜5時間である。
次に、変性プロピレン重合体(A)は、炭素数6〜20の脂肪族および/または脂環式炭化水素(D)とジアルキルケトン(E)の混合溶媒から分離後、炭素数1〜8のアルコール(F)、ジアルキルケトン(E)またはこれらの混合溶媒に浸漬することにより接触処理される。
炭素数1〜8のアルコール(F)としては、メタノール、エタノール、n −プロパノ−ル、イソプロパノール、ブタノ−ル、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。炭素数1〜8のアルコールまたはジアルキルケトンの使用量としては、例えば、変性プロピレン重合体が十分浸漬する量でよい。
処理温度としては、0〜40℃、好ましくは室温〜25℃である。処理時間としては10分〜4時間、好ましくは30分〜2時間である。
上記の洗浄処理を行うことにより、未反応の不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)や低分子量成分をほとんど含まない変性プロピレン重合体(A)を、容易に製造することができる。
【0015】
本発明で用いる変性プロピレン重合体(A)は、下記(1)〜(3)を満たすものである。
(1)極限粘度[η](テトラリン中、135℃で測定) :1デシリットル/g以上
(2)酸含率とポリマー鎖数の比(β値):0.5〜3.0
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量1万以下の成分量:2質量%以下
135℃テトラリン中で測定された極限粘度[η]が1デシリットル/g以上であることを要し、好ましくは1.2デシリットル/g以上である。酸含率とポリマー鎖数の比(β値)は0.5〜3.0であることを要し、好ましくは0.8〜2.0である。ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量(Mw)1万以下の成分量は2質量%以下であることを要し、好ましくは0.5質量%以下である。変性プロピレン重合体(A)は、さらに、分子量分布Mw/Mnが2.8以下であることが好ましく、より好ましくは2.3以下である。
変性プロピレン重合体(A)において、135℃テトラリン中で測定された極限粘度[η]が1デシリットル/g未満では、プロピレン重合体としての機械的物性が著しく損なわれる。また、後述する未変性プロピレン重合体(C)との分子量(Mw)の差が大きく、互いに均一に相溶し難くなる。このため、無機フィラー強化プロピレン重合体組成物の物性が大きく低下する。なお、極限粘度[η]は、上述した方法と同様の方法で測定した。
【0016】
変性プロピレン重合体(A)において、酸含率とポリマー鎖数の比(β値)が0.5未満では、無機フィラーとの接着性を有しないポリマー分子が多数存在することとなり、十分な接着性を得るには変性プロピレン重合体の配合量を多くする必要があるため、経済的でない。また、β値が3.0を超える変性プロピレン重合体は、製造するために多量の不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)を必要とするために経済的でないばかりか、無機フィラーとの接着に関与しないグラフト分子が多数存在するためにプロピレン重合体としての物性が大きく損なわれる。
分子量1万以下の成分量が2質量%を超える変性プロピレン重合体(A)は、低分子量成分を多く含有するため、得られる組成物の物性が低下したり、ブリードアウトやべたつきの原因となるため、好ましくない。また、変性プロピレン重合体(A)においてMw/Mnが2.8を超えると、上記と同様の不都合が生じるおそれがある。
【0017】
上記変性プロピレン重合体の酸含率は、以下のようにして測定した。まず、変性プロピレン重合体(A)約1gと酸化防止剤としてBHT0.1gを0.1リットルのパラキシレン中で攪拌しながら130℃に加熱して、完全に溶解させた。この変性プロピレン重合体溶液を、アセトン/メタノールの1/1(容量比)混合溶媒0.5リットルに投入して再沈殿させて、濾過後、130℃で6時間真空乾燥させて、未反応の不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)を完全に除去した。この精製した変性プロピレン重合体を、220℃でホットプレスすることにより厚さ約0.2mmのフィルムにして、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により、1700〜1800cm−1に生じるカルボニル基に起因する赤外吸収ピークの強度を測定した。
赤外吸収強度から酸含率を計算するための検量線は、変性反応に用いた不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)をパウダー状の未変性プロピレン重合体にブレンドし、同様にFT−IRで測定することにより作成した。
【0018】
上記酸含率とポリマー鎖数の比(β値)は、以下のようにして測定した。上記の方法で算出した変性プロピレン重合体(A)の酸含率(モル/g)を、後述する方法で算出した数平均分子量Mnから計算されるポリマー鎖数(モル/g)で除することにより算出した。ポリマー鎖1本当たりに1分子の不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)が付加した場合に、β値が1となる。
また、上記分子量分布Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、下記の装置および条件で測定したポリプロピレン換算のMwおよびMnより算出することができる。
【0019】
GPC測定装置
カラム:TOSOGMHHR−H(S)HT
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
測定条件
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:145℃
流速:1.0ミリリットル
試料濃度:2.2mg/ミリリットル
注入量:160マイクロリットル
検量線:Univesal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0020】
ポリプロピレン換算分子量で1万以下の成分量を全溶出成分量で除することにより、分子量(Mw)1万以下の成分量を算出した。変性プロピレン重合体中の分子量(Mw)が1万以下の成分量は、GPC曲線の分子量1万以下の成分量を意味している。
変性プロピレン重合体(A)の配合量は、本発明の組成物中1〜99質量%である。変性プロピレン重合体(A)は十分に高い分子量を有しているために未変性プロピレン重合体と同等な機械的物性を有し、単独で後述する無機フィラー(B)との組成物として使用することができる。また、無機フィラー(B)との接着力も十分に高いため、後述する未変性のプロピレン重合体(C)をブレンドすることもできる。しかしながら、変性プロピレン重合体(A)の配合量が著しく減少した場合には、無機フィラー(B)との接着性が低下するために組成物の機械的物性が悪化するため、フィラー種、使用目的に合わせて、変性プロピレン重合体(A)は、1質量%以上を配合することを要する。また、変性プロピレン重合体(A)の配合量が99質量%を超えると、無機フィラー(C)の配合量が少なすぎることとなるため、組成物の機械的物性などが低下してしまう。
【0021】
本発明で用いられる無機フィラー(B)としては、従来からポリプロピレンに配合されている公知の無機フィラーが制限なく使用できる。具体的なものとしては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、酸化チタン、ガラスビーズ、カーボンブラック、水酸化マグネシウム等の粒状フィラー;チタン酸カリウム、モスハイジ等のウィスカー状フィラー;マイカ等の板状フィラー;ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の繊維状フィラーなどが挙げられる。その他にもクレー、ケイソウ土、ワラストナイト、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、多孔質シリカ、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、シラスバルーンおよびガラスバルーンなどが挙げられる。
無機フィラ−(B)としてはガラス繊維、炭素繊維、マイカ、タルクおよび炭酸カルシウムが好ましい。無機フィラー(B)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
無機フィラー(B)の配合量としては、配合量が多くなるほど弾性率、強度などの機械的物性が向上するが、組成物中50質量%を超えると、組成物の流動性が低下し、製造が困難であるとともに2次成形性も低下するため、実用的でない。無機フィラー(B)の配合量は、好ましくは10〜40質量%である。
【0022】
本発明で用いられる未変性のプロピレン重合体(C)としては、通常用いられるプロピレン重合体が制限なく使用できる。プロピレンの単独重合体であってもよいし、少量の他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体の場合は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、複数のプロピレン重合体を組み合わせて使用することもできる。
プロピレン重合体(C)において、プロピレンと共重合する他のモノマーの含有量は、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下であるのが望ましい。他のモノマーとしては、たとえば、エチレン,1−ブテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ドデセンなどの炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のα−オレフィン;スチレン,ビニルシクロペンテン,ビニルシクロヘキサン,ビニルノルボルナンなどのビニル化合物;酢酸ビニルなどのビニルエステル;無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体;共役ジエン;ジシクロペンタジエン,1,4−ヘキサジエン,ジシクロオクタジエン,メチレンノルボルネン,5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ポリエン類等が挙げられる。これらは2種以上共重合されていてもよい。
【0023】
プロピレン重合体(C)は、三塩化チタンとアルキルアルミニウム化合物とからなるチーグラーナッタ触媒、またはマグネシウム化合物とチタン化合物とからなる複合触媒などの公知の触媒の存在下に、公知の重合方法により製造することができる。プロピレン重合体(C)の好ましい製造方法としては、例えば高立体規則性ポリプロピレン製造用触媒の存在下に、プロピレンを単独で、またはプロピレンと他のモノマーとを単段あるいは多段重合で重合させて製造する方法などを挙げることができる。
プロピレン重合体(C)の配合量は、組成物中0〜98質量%であるが、この配合量が98質量%を超えると、無機フィラー(B)の配合量が減少するため、組成物の機械的物性が悪化する。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1
(1)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付き三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したオクタン60ミリリットル、ジエトキシマグネシウム16gを加えた。40℃に加熱し、四塩化ケイ素2.4ミリリットルを加えて20分間攪拌した後、フタル酸ジブチル1.6ミリリットルを添加した。この溶液を80℃まで昇温し、引き続き、四塩化チタンを77ミリリットル滴下し、内温125℃で、2時間攪拌して接触操作を行った。その後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。100ミリリットルの脱水オクタンを加え、攪拌しながら125℃まで昇温し、1分間保持した後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。この洗浄操作を7回繰り返した。さらに、四塩化チタンを122ミリリットル加え、内温125℃で、2時間攪拌して2回目の接触操作を行った。その後、上記の125℃の脱水オクタンによる洗浄を6回繰り返し、固体触媒成分を得た。
(2)予備重合
内容積0.5リットルの攪拌機付き三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム25ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.5ミリモル、上記固体触媒成分4gを加えた。内温を50℃に昇温し、攪拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体触媒1g当たり4gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分を得た。
(3)プロピレン重合
内容積6リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6リットル、トリエチルアルミニウム12.5ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン1.2ミリモルを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、攪拌しながらプロピレンを導入した。内温80℃、プロピレン圧力0.78MPa・G(8kg/cm2 ・G)に系内が安定した後、上記予備重合触媒成分をTi原子換算で0.10ミリモル含んだヘプタンスラリー50ミリリットルを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で4時間重合を行った。
重合終了後、50ミリリットルのメタノールを添加し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し85℃に昇温し固液分離した。更に、85℃のヘプタン6リットルで固体部を2回洗浄し、真空乾燥してプロピレン単独重合体(A1−1)3.0kgを得た。この重合体の特性値は、極限粘度[η]=8.1デシリットル/g、ペンタッド分率[mmmm]=97.8モル%、融点=164.8℃であった。また、固体触媒1g当たりの触媒活性は、重合4時間で16.5kg/g−cat.・4hrであった。
(4)変性プロピレン重合体の製造
上記プロピレン単独重合体(A1−1)8.0kg、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(A2−1)3.2g[日本油脂(株)製,パーヘキサ25B,純度40質量%を8.0g]と、無水マレイン酸(A3−1)24.0gとをブレンドした後、径20mmの二軸混練機により230℃で溶融混練し、ペレット状の未精製無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体を得た。内容積8リットルのステンレス製耐圧容器に、未精製無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体3.5kg、アセトン1.5kgおよびヘプタン2.5kgを入れ、80℃に加熱して2時間攪拌した。室温まで冷却した後、ステンレス製メッシュでペレットを濾過し、これを5.0kgのアセトン中に12時間浸漬した。回収したペレットを風乾した後、80℃で6時間真空乾燥することにより、無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(A−1)を得た。この重合体の物性を表1に示す。なお、物性の評価は、下記の方法により行った。
【0025】
▲1▼極限粘度[η]
明細書本文に記載の方法により測定した。すなわち、(株)離合社製VMR−053型自動粘度計を用い、測定溶媒には酸化防止剤として2, 6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を1g/リットル添加したテトラリンを用い、測定温度135℃、試料濃度0.8〜1.4g/リットルで測定を行った。ウベローデ型毛管粘度計において、濃度C(g/デシリットル)の試料溶液の落下時間がt秒、溶媒の落下時間がt0 秒であるとき、以下の関係式(Hugginsの式)を用い、k’=0.35として極限粘度[η]を算出した。
ηsp=t/t0 −1
ηsp/C=k’[η]2 C+[η]
【0026】
▲2▼酸含率
明細書本文に記載の方法により測定した。まず、変性プロピレン重合体(A)約1gと酸化防止剤としてBHT0.1gを0.1リットルのパラキシレン中で攪拌しながら130℃に加熱して、完全に溶解させた。この変性プロピレン重合体溶液を、アセトン/メタノールの1/1(容量比)混合溶媒0.5リットルに投入して再沈殿させて、濾過後、130℃で6時間真空乾燥させて、未反応の不飽和カルボン酸またはその無水物(A3)を完全に除去した。この精製した変性プロピレン重合体を、220℃でホットプレスすることにより厚さ約0.2mmのフィルムにして、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により、1700〜1800cm−1に生じるカルボニル基に起因する赤外吸収ピークの強度を測定した。
赤外吸収強度から酸含率を計算するための検量線は、変性反応に用いた不飽和カルボン酸またはその無水物(A3)をパウダー状の未変性プロピレン重合体にブレンドし、同様にFT−IRで測定することにより作成した。
【0027】
▲3▼β値
上記酸含率とポリマー鎖数の比(β値)は、明細書本文に記載の方法により.定した。すなわち、上記の方法で算出した変性プロピレン重合体(A)の酸含率(モル/g)を、下記の方法で算出した数平均分子量Mnから計算されるポリマー鎖数(モル/g)で除することにより算出した。ポリマー鎖1本当たりに1分子の不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)が付加した場合に、β値が1となる。
▲4▼分子量(Mw)が1万以下の成分量および分子量分布
分子量分布Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、上述した装置および条件で測定したポリプロピレン換算のMwおよびMnより算出した。ポリプロピレン換算分子量で1万以下の成分量を全溶出成分量で除することにより、分子量(Mw)1万以下の成分量を算出した。変性プロピレン重合体中の分子量(Mw)が1万以下の成分量は、GPC曲線の分子量1万以下の成分量を意味している。
【0028】
製造例2
(1)予備重合
内容積0.5リットルの攪拌機付き三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタン400ミリリットル、ジエチルアルミニウムクロライド18グラムを加え、市販のSolvay型三塩化チタン触媒(東ソー・ファインケム社製)2gを加えた。内温を20℃に保持し、攪拌しながらプロピレンを導入した。80分後、攪拌を停止し、結果的に固体触媒1g当たり0.8gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分を得た。
(2)プロピレン重合
内容積6リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6リットルを加え、系内の窒素をプロピレンで置換した。その後、水素を0.059MPa・G(0.6kg/cm2 ・G)加え、攪拌しながらプロピレンを導入した。内温65℃、プロピレン圧力0.74MPa・G(7.5kg/cm2 ・G)に系内が安定した後、上記予備重合触媒成分を固体触媒換算で0.5グラム含んだヘプタンスラリー50ミリリットルを加え、プロピレンを連続的に供給しながら65℃で3時間重合を行った。
次に、内温を50℃として攪拌を弱め、脱圧を行った。その後、水素を0.039MPa・G(0.4kg/cm2 ・G)加え、攪拌しながらプロピレンを導入した。内温50℃、プロピレン圧力0.74MPa・G(7.5kg/cm2 ・G)でプロピレンを連続的に供給しながら50℃で3時間重合を行った。
重合終了後、50ミリリットルのメタノールを添加し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し85℃に昇温し、固液分離した。更に、85℃のヘプタン6リットルで固体部を2回洗浄し、真空乾燥してプロピレン単独重合体(A−2)2.4kgを得た。この重合体の特性値は、極限粘度[η]=2.9デシリットル/g、ペンタッド分率[mmmm]=93.6モル%、融点=160.9℃であった。また、固体触媒1g当たりの触媒活性は、重合6時間で4.8kg/g−cat.・6hrであった。
(3)変性プロピレン重合体の製造
上記プロピレン単独重合体(A1−2)8.0kg、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(A2−1)1.6gと、無水マレイン酸(A3−1)24.0gとをブレンドした後、製造例1と同様に溶融混練し、洗浄処理を行うことによって、無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(A−2)を得た。この重合体の物性を表1に示す。
【0029】
製造例3
プロピレン重合時に加えるジシクロペンチルジメトキシシランを0.1ミリモル、予備重合触媒成分を0.08ミリモル、重合時間を3時間とした以外は製造例1と同様にして、プロピレン単独重合体(A1−3)2.5kgを得た。この重合体の特性値は、極限粘度[η]=6.7デシリットル/g、ペンタッド分率[mmmm]=97.0モル%、融点=163.4℃であった。また、固体触媒1g当たりの触媒活性は、重合3時間で9.8kg/g−cat.・3hrであった。
上記プロピレン単独重合体(A1−3)8.0kg、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(A2−1)1.28gと、無水マレイン酸(A3−1)32.0gとをブレンドした後、製造例1と同様に溶融混練し、洗浄処理を行うことによって、無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(A−3)を得た。この重合体の物性を表1に示す。
【0030】
製造例4
プロピレン重合時に加えるジシクロペンチルジメトキシシランを0.3ミリモル、予備重合触媒成分をTi原子換算で0.03ミリモル、プロピレンを導入する前に水素を0.25MPa・G(2.5kg/cm2 ・G)張り込み、重合時間を2時間とした以外は製造例1と同様にして、プロピレン単独重合体(A1−4)2.5kgを得た。この重合体の特性値は、極限粘度[η]=1.2デシリットル/g、ペンタッド分率[mmmm]=97.2モル%、融点=163.7℃であった。また、固体触媒1g当たりの触媒活性は、重合2時間で26.4kg/g−cat.・2hrであった。
上記プロピレン単独重合体(A1−4)8.0kg、t−ブチルクミルペルオキサイド(A2−2)9.6g[日本油脂(株)製,パーブチルC,純度90質量%を10.7g]および無水マレイン酸(A3−1)56.0gをブレンドした後、製造例1と同様に溶融混練した。製造例1で行った、溶融混練後の洗浄処理は行わずに、無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(A−4)を得た。この重合体の物性を表1に示す。
また、市販の無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体[東洋化成工業(株)製,トーヨータックH−1100P](A−5)および無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体[三洋化成工業(株)製,ユーメックス1001](A−6)の物性も表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 2004026951
【0032】
実施例1〜3および比較例1〜3
(A)成分の変性プロピレン重合体として、上記無水マレイン酸グラフト変性プロピレン重合体(A−1)〜(A−6)、(B)成分の無機フィラーとして、ガラス繊維チョップドストランド[日東紡績(株)製,3J254S;繊維径11μm,繊維長3mm]、(C)成分のプロピレン重合体として、プロピレン単独重合体[出光石油化学(株)製,J−2000GP;MI(メルトインデックス)=21g/10分(JIS−K7120に準拠し、測定温度230℃、荷重21.2Nで測定)]を使用した。
表2に示した配合割合で成分(A)と成分(C)をドライブレンドし、このブレンド物を径45mmの2軸押出機(池貝鉄鋼(株)製PCM45II)のホッパーに投入し、(B)成分を、表2に示した配合割合となるように、押出機の途中からトップフィードにより供給し、バレル温度250℃で溶融混練して組成物を作製し、押出したストランドをカットして、無機フィラー強化プロピレン重合体組成物のペレットを得た。このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業(株)製FE−120)を用いてシリンダー温度210℃、金型温度50℃で射出成形してASTM規格のテストピースを作製し、下記の評価方法で力学物性を測定した。その結果を表3に示す。
【0033】
▲1▼引張弾性率、引張強度および引張破断伸び
ASTMD638に準拠して測定した。
▲2▼曲げ弾性率および曲げ強度
ASTMD790に準拠して測定した。
▲3▼IZOD(アイゾット)衝撃強度
ASTMD256に準拠して、23℃で測定した。
▲4▼熱変形温度
ASTMD648に準拠して測定した。
【0034】
【表2】
Figure 2004026951
【0035】
【表3】
Figure 2004026951
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度、耐熱性および耐衝撃性に優れ、しかも低コストで得られる無機フィラー強化プロピレン重合体組成物を得ることができる。

Claims (4)

  1. プロピレン重合体(A1)100質量部を、ラジカル開始剤(A2)0.01〜1質量部、および不飽和カルボン酸および/またはその無水物(A3)0.1〜1質量部とともに溶融混練することによって得られる変性プロピレン重合体(A)1〜99質量%、無機フィラー(B)1〜50質量%ならびにプロピレン重合体(C)0〜98質量%を含有する樹脂組成物であって、上記変性プロピレン重合体(A)が、下記(1)〜(3)
    (1)極限粘度[η](テトラリン中、135℃で測定) :1デシリットル/g以上
    (2)酸含率とポリマー鎖数の比(β値):0.5〜3.0
    (3)ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した分子量1万以下の成分量:2質量%以下
    を満たすことを特徴とする無機フィラー強化プロピレン重合体組成物。
  2. プロピレン重合体(A1)の135℃テトラリン中で測定された極限粘度[η]が2.8デシリットル/g以上である、請求項1に記載の無機フィラー強化プロピレン重合体組成物。
  3. プロピレン重合体(A1)のプロピレン連鎖の立体規則性が、13C−NMRより求めたペンタッド分率[mmmm]で80モル%以上である請求項1または2に記載の無機フィラー強化プロピレン重合体組成物。
  4. 変性プロピレン重合体(A)が、変性反応後に、炭素数6〜20の脂肪族および/または炭素数6〜20の脂環式炭化水素(D)と、ジアルキルケトン(E)との混合溶媒中で、40〜90℃の温度で接触させ、続いて、炭素数1〜8のアルコール(F)、ジアルキルケトン(E)またはこれらの混合溶媒中に浸漬した後に乾燥させることにより製造されてなるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の無機フィラー強化プロピレン重合体組成物。
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