JP2004026836A - ヒドロキシチロソール、皮膚外用剤又は浴用剤への応用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ヒドロキシチロソール(3,4−dihydroxyphenylethanol)をメラニン生成抑制剤の有効成分として又は過酸化脂質生成抑制剤の有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤又は浴用剤。
Description
本発明は、次の構造式(化1)で示されるヒドロキシチロソール(3,4−dihydroxyphenylethanol)についての新規な美容効果とそれに基づく皮膚外用剤又は浴用剤への応用に関する。
【化1】
【0002】
【産業上の利用分野】
本発明でいう皮膚外用剤又は浴用剤とは、シミ、ソバカスなどの色素沈着といった皮膚のトラブルに対し、その予防もしくは改善を目的とする外用製剤類全般を意味する。具体的には、液状、乳液状、クリーム状、軟膏状、ゲル状、パウダー状、顆粒状、固形状、或いは気泡性の、1)外用医薬品類、2)医薬部外品類、3)局所又は全身用の皮膚化粧品類、4)浴湯に投じて使用する浴用剤などが上げられる。
【0003】
【従来の技術】
肝斑(シミ)、雀卵斑(ソバカス)、老人性黒子といった皮膚の色素沈着は、紫外線の暴露や化粧品かぶれ、あるいは接触性皮膚炎などでしばしば観察される症状で、特に、女性にとっては大きな悩みの一つとされている。これらに起因するメラニン色素は、皮膚の表皮基底細胞層に分布するメラノサイトの細胞原形質内に形成されたプレメラノソームと呼ばれる小器官で、遺伝的に規定された一定の活性秩序のもとに生成されるものである。正常ではこのメラニン色素で満ちた成熟メラノソームは、角化過程と共に体表に至り、最終的に剥離して体外に排泄されていくわけであるが、種々の要因によりメラノソームの生成と排泄のバランスが崩れ、それが表皮細胞内に過剰に蓄積されると標記のような症状が現れることが明らかにされてきた。さて、これまでにこうした色素異常の予防もしくは治療に、外用剤として適用可能な有効成分についての開発が多くの研究者らによって行なわれ、既に実用されているものもいくらか存在している。
【0004】
これらを系統だててまとめてみると、色素沈着の原因としては、次の3つが主体と考えられている。
(1)正常レベルをこえたメラニン色素の形成
(2)メラニン色素の組織細胞への沈着化
(3)メラニン色素排除(排泄)機能の低下
そして、(1)に対する対策として、紫外線の遮断・吸収、活性酸素の生成抑制、過酸化脂質の生成抑制、Tyrosinase活性の阻害(メラニン色素生成抑制)などが、また(2)および(3)への対応としては、メラニン色素の還元・分解、ターンオーバーの促進、損傷細胞の修復といった作用・効果を発揮する成分などが検索され、例えば、日常的に用いられる化粧品などに応用するといった手法により検討されてきた。表1は、これまでに提案されてきた有効とされる成分の1例である。
【表1】
【0005】
一方、黒皮症や肝斑だけでなく、皮膚の老化(皮膚萎縮,しわ,乾皮症状など)、一次刺激性皮膚炎、老人性色素斑などといった皮膚疾患に悩む人も年々増加傾向をたどっている。これらの現象は、何れも過酸化脂質の有害作用の蓄積によるとする説が有力とされている。これまでの研究報文などによれば、過酸化脂質と皮膚疾患との関係には、次の2つの現象が指摘されている。一つには、過酸化脂質が直接表皮、真皮細胞の膜蛋白と複合体を形成し細胞変性を来たし有害作用をもたらす現象である。例えば、化粧品中に含まれる脂質が長期保存により酸化され、その結果増加した過酸化脂質分が皮膚を刺激し、皮膚炎、色素沈着などを引き起こす事例などで説明されている。また、もう一つには、紫外線暴露などにより皮脂中の脂肪酸からペルオキシラジカルが誘導され、その結果連続的に皮脂の自動酸化反応が起こり表皮細胞の変性破壊を引き起こしたり、あるいは皮膚蛋白の萎縮、弾性低下を生起して表皮のシワを増加させるという説である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
表1のように、これまでに色素沈着の予防や改善、あるいは過酸化脂質の生成抑制などに有効な成分が多く提案されてきた。しかしながら、これらの中には極端にその効果が強く、永久的な脱色作用を引き起こす恐れのある美白成分や、各々に対して有効ではあるものの細胞毒性を示すもの、あるいは安全ではあるが試験系での効果ほど実用においては期待されなかったものなどが多く含まれていた。
また、安全性や、ある程度の有効性は認められるものであっても、著しく安定性が悪いものであったり、あるいは臭いや色調、溶解性などに問題があり、製剤化において何らかの措置、工夫を凝らさなければ応用できないといった欠点を有しているものもあり、ほんとうに実用的な有効成分と云えるのはごく僅かなものに限られているのが現状である。
【0007】
本発明者らは、効果が高くしかも実用性を兼ね備えた新規な美容成分の開発を目的となし鋭意研究を重ねてきた。その結果、ヒドロキシチロソール(3,4−dihydroxyphenylethanol)が、強いメラニン生成抑制作用、および過酸化脂質生成抑制作用を有すること、また同時に標記の問題点を解決することのできる極めて有用な成分であることを見い出した。そして、標記成分を皮膚外用剤や浴用剤に応用することにより、シミ、ソバカス等の防止や改善に有効であることを見出し本発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ヒドロキシチロソールをメラニン生成抑制剤の有効成分として又は過酸化脂質生成抑制剤の有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤又は浴用剤をもって構成する。
【0009】
本発明の有効成分:ヒドロキシチロソールは、天然物(例えば、Olea europaea Linne(Oleaceae)の果実など)より抽出されたもの、さらにそれより精製されたもの、または化学合成されたものの何れであってもよい。また皮膚外用剤配合用又は浴用剤配合用のメラニン生成抑制剤や過酸化脂質生成抑制剤には、オイル状のヒドロキシチロソールをそのままで、またはそれを含む天然物の抽出物という形で、あるいはそれらに後述の化粧品類で使用される種々の基剤、添加剤などを加えて調整した形で供される。
【0010】
また、本発明によるヒドロキシチロソールをメラニン生成抑制剤の有効成分として又は過酸化脂質生成抑制剤の有効成分として含有する皮膚外用剤または浴用剤は、通常化粧品類で使用される基剤や添加剤などと共に処方して製造される。例えば、油分としては動植物油,鉱物油をはじめ、エステル油,ワックス油,高級アルコール,脂肪酸類,シリコン油,リン脂質などが上げられる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤,カチオン界面活性剤,両性界面活性剤,非イオン界面活性剤などが用いられる。その他、p−アミノ安息香酸,アントラニル誘導体,サリチル酸誘導体,クマリン誘導体,アミノ酸系化合物,ベンゾトリアゾール誘導体,テトラゾール誘導体,イミダゾリン誘導体,ピリミジン誘導体,ジオキサン誘導体,カンファー誘導体,フラン誘導体,ピロン誘導体,核酸誘導体,アラントイン誘導体,ニコチン酸誘導体,シコニン,ビタミンB6誘導体などの紫外線吸収剤、アスコルビン酸およびその塩,ステアリン酸エステル,トコフェロールおよびそのエステル誘導体,ノルジヒドログアセレテン酸,ブチルヒドロキシトルエン(BHT),ブチルヒドロキシアニソール(BHA),パラヒドロキシアニソール,没食子酸プロピルなどの抗酸化剤、ヒドロキシエチルセルロース,メチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,アラビアガム,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリビニルメタアクリレート,ポリアクリル酸塩,カルボキシビニルポリマー,カラギーナン,ペクチン,アルギン酸およびその塩,カゼイン,ゼラチンなどの増粘剤、グリセリン,プロピレングリコール,1,3−ブチレングリコール,ヒアルロン酸およびその塩,ポリエチレングリコール,コンドロイチン硫酸およびその塩,水溶性キチンあるいはキトサン誘導体,乳酸ナトリウムなどの保湿剤,低級アルコール,多価アルコール,水溶性高分子,pH調整剤,キレート剤,防腐・防バイ剤,香料,着色料,清涼剤,安定化剤,動・植物を起源とした抽出物,動・植物性蛋白質およびその分解物,動・植物性多糖類およびその分解物,動・植物性糖蛋白質およびその分解物,血流促進剤,消炎・抗炎症剤,細胞賦活剤,ビタミン類,アミノ酸およびその塩,角質溶解剤,収斂剤,創傷治癒剤,増泡剤,消臭・脱臭剤など必要に応じて併用し、前述のような各種製品とすることができる。
【0011】
また、すでにメラニン生成抑制作用、過酸化脂質生成抑制作用、抗炎症・抗アレルギー作用などの種々の美肌作用があるとされている植物抽出物(通常、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはこれら任意の混液により得られたもの)や動物成分との併用、あるいは表1に示されるような既知の色素沈着防止成分との安全な範囲での併用は、本発明効果の増強が期待されうる。尚、種々の美肌作用があるとされている植物または生薬としては、例えば、アセンヤク(阿仙薬)、アシタバ、アルテア、アルニカ、アボカド、アマチャ(甘茶)、アロエ、アンゲリカ、イチヤクソウ、イラクサ、イチョウ(銀杏葉、銀杏)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、ウスバサイシン(細辛)、ウツボグサ、ウメ(烏梅)、ウラジロガシ、ノイバラ(営実)、ヒキオコシ(延命草)、オウギ、コガネバナ(オウゴン)、キハダ(黄柏)、ヤマザクラ(桜皮)、オウレン(黄連)、オタネニンジン(人参)、オトギリソウ(弟切草)、オドリコソウ、オランダガラシ、オレンジ、オナモミ、オンジ、カクシツ、カゴソウ、ツルドクダミ(何首烏)、ガジュツ(莪朮)、クズ(葛根)、カノコソウ(吉草根)、カバノキ、カミツレ、カワラヨモギ(インチンコウ)、カンゾウ(甘草)、キイチゴ、キウイ果実、キカラスウリ、キク(菊花)、キキョウ(桔梗)、キササゲ(梓実)、キュウリ、クコ(地骨皮,枸杞子,枸杞葉)、クララ(苦参)、クスノキ、クチナシ(山梔子)、クマザサ、クワ(桑白皮,桑葉)、ケイガイ、エビスグサ(決明子)、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、ホオノキ(厚朴)、ベニバナ(紅花)、コウホネ、コウホン、ゴシュユ(呉茱萸)、コツサイホ、ゴバイシ(五倍子)、ゴボウ、チョウセンゴミシ(五味子)、ヒレハリソウ(コンフリー)、ミシマサイコ(柴胡)、サフラン、サボンソウ、サルビア、サンザシ、サンショウ(山椒)、サンシチニンジン(三七人参)、サンシチソウ、シイタケ、ジオウ(地黄)、シクンシ(使君子)、ムラサキ(紫根)、シソ(紫蘇葉,紫蘇子)、カキ(柿)、シナノキ、シマカンギク、シャクヤク、オオバコ(車前子)、ワレモコウ(地楡)、ショウガ(生姜)、ショウブ(菖蒲)、トウネズミモチ(女貞子)、シモツケソウ、ショウマ、ジュズダマ、シラカンバ、スイカズラ(金銀花,忍冬)、スギナ、セイヨウキズタ、セイヨウトチノキ、セイヨウニワトコ、セイヨウノコギリソウ、セイヨウボダイジュ、センキュウ、センダン、センブリ(当薬)、ダイオウ、ナツメ(タイソウ)、ダイズ、タチジャコウソウ、タラノキ、タイム、タンポポ、チクセツニンジン(竹節人参)、緑茶、紅茶、チョウジ(丁子)、ウンシュウミカン(陳皮)、ツバキ、ツボクサ、ツワブキ、トウカ、トウキ(当帰)、トウキンセンカ、ダイダイ(橙皮)、トウモロコシ(南蛮毛)、トチュウ(杜仲,杜仲葉)トクサ、ドクダミ(十薬)、トマト、トロロアオイ、ナンテン(南天実)、ニワトコ、ニンニク(大蒜)、ノアザミ、パセリ、ハマゴウ、ハマメリス、バラ、ヒシ、ビワ(ビワ葉)、ビャクシ、フキ、フキタンポポ、フジバカマ、マツホド(ブクリョウ)、ボダイジュ、ホップ、マイカイ(マイカイカ)、ボタン(牡丹皮)、松葉、マンネンロウ、マロニエ、ミルラ、ムクロジ、メリロート、メリッサ、ボケ(木瓜)、モモ(桃仁,桃葉)、ヒオウギ(射干)、ヤグルマギク、ヤドリギ、ヤブジラミ、ユーカリ、ユキノシタ(虎耳草)、ヤマモモ(楊梅皮)、ハトムギ(ヨクイニン)、ヨメナ、ヨモギ(艾葉)、ラベンダー、リンドウ、レンギョウ、マンネンタケ(霊芝)、ローズマリー、ローマカミツレなどがあげられる。
【0012】
また動物性の成分としては、人または牛の胎盤エキス、コラーゲンまたはエラスチンあるいはそれらの加水分解物、シルクペプチド、ムチンなどの糖蛋白質またはその分解物などがある。その他、酵母エキス、セレン含有酵母エキス、米醗酵エキス、醗酵乳エキスなどの併用も効果的と考えられる。
【0013】
本発明による皮膚外用剤または浴用剤において、特にヒドロキシチロソールの含有量を規定するものではないが、短期間にて色素沈着や肌のくすみ等の皮膚トラブルの改善を目的とするような場合においては、通常0 . 5〜5重量%の範囲の任意の割合で含まれているのがよい。一方、そうした種々の皮膚トラブルに対し、単に予防的な目的であったり、あるいは累積的な効果により徐々に改善をしていくような目的の製品形態にあっては、通常の処方量(0.0001〜1.0重量%程度)で含有されていれば目的効果は十分に期待される。また浴用剤の場合では、200〜300リットルの浴湯に投じて同程度の濃度となるように処方を考慮したり、使用量を調整したりすればよい。以下に実施例をもとに、より具体的に説明する。
【0014】
【実施例】製造例1:天然物からの抽出
ヒドロキシチロソールは、オリーブ油などに多く含まれる成分で、例えば、次のような方法により高含有する抽出物を得ることができる。オリーブ油(100 g)にヘキサン(100 mL)を加え、50〜70%メタノール水溶液(60 mL)で2〜3回抽出し、抽出物を回収し、減圧下40〜50℃で溶媒を留去する。必要により残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒/酢酸エチル:石油エーテル=1:1)に供し、ヒドロキシチロソール分画を精製する。
【0015】
【実施例】製造例2:化学合成
ヒドロキシチロソールの合成を、次に示される合成プロセス(化2)に従い行った。
【化2】
【0016】
1)3,4−dihydroxyphenylacetic acid [2] の合成
赤リン(0.2 g)及び55%ヨウ化水素酸(100 mL)の懸濁液を、茶褐色が消えるまで加熱還流した後、これを冷却し、窒素気流下において 3,4−dimethoxyphenylacetic acid [1](19.6 g,0.10 mol)を加え3時間加熱還流した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、減圧濃縮し、得られた残渣に対して水(150 mL)を加えてよく振とうして再度減圧濃縮する。この操作を2〜3回繰り返した後、残渣に熱水(100 mL)を加え、ろ過して赤リンを除去し、得られたろ液を塩化ナトリウムの飽和溶液とし、酢酸エチル(75 mL)にて3〜4回抽出操作を行う。抽出した酢酸エチル層を回収し、4N−硫酸水素ナトリウム水溶液(25 mL)で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、さらに活性炭処理を行い、減圧濃縮して固形乾燥物を得る。次に、この固形乾燥物を酢酸エチル−シクロヘキサン(1:1)混液から再結晶することにより目的物[2](15.8 g,収率94%)を精製する。
【0017】
2)ヒドロキシチロソール(3,4−dihydroxyphenylethanol [3])の合成
テトラヒドロフラン THF(200 mL)及びリチウムアルミニウムハイドライド LiAlH4(5.12 g,0.13 mol)を0℃に冷却し、撹拌下に、3,4−dihydroxyphenylacetic acid [2](7.6 g,0.045 mol)を20〜30分かけて加えた後、徐々に昇温し6時間還流した。反応液を放冷後、セライトをひいたグラスフィルターにてろ過し、ろ液に精製水(100 mL)および10%塩酸(100 mL)を加えて反応を停止させる。次いで、酢酸エチル(100 mL)にて3〜4回抽出し、回収した酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下で溶媒を留去してゲルを得る。このゲルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒/酢酸エチル:石油エーテル=1:1)に供し、オイル状の 3,4−dihydroxyphenylethanol [3](4.5 g,収率66%)を精製した。
【0018】
【実施例】メラニン生成抑制試験
C57BLマウス(8週令,雄)に紫外線(東芝製紫外線FL20−SEランプ)を15.2 mJ/cm2、1日1回、3日間連続照射した。最終照射日より1週間後に耳介を採取し、軟骨を除去後、外耳の皮膚を2N−NaBr溶液に37℃、2時間漬浸した。その後、表皮を直皮から剥離し、この表皮を0.1%L−DOPA溶液(0.1Mリン酸緩衝液、pH=7.2)に37℃、3時間漬浸してDOPA染色を行った。尚、製造例1〜2で得られた試料は、あらかじめ dimethyl sulfoxide(DMSO)および精製水にて調整し、DOPA溶液中に、各濃度(W/W)になるよう添加し、対照として試料調整時に使用した溶媒を同量添加した。また比較例1として、4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコピラノシドを、さらに比較例2として、コウジ酸を供試した。判定は、一定部分(5mm2)のメラノサイト数を顕微鏡にて計測し、1mm2当たりの細胞数を求め、対象数を100として抑制率を算出した。
【0019】
試験結果は、表2の通りである。紫外線により活性化された有色マウス耳介の表皮のメラノサイトをDOPA液で特異的に染色したところ、製造例1及び2で得られた試料は、比較例の4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコピラノシドやコウジ酸に比べ、高いメラニン生成抑制作用を示すことが確認された。
【表2】
【0020】
【実施例】過酸化脂質生成抑制試験(TBA法)
0.8%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液に0.1%リノレン酸を加え溶解し、この溶液(3.9 mL)を10 mLの透明なガラススクリュー瓶にとる。これに各濃度にエタノールにて調整した試料溶液(0.1 mL)を加え、紫外線(東芝製:FL−20SEランプ,FL−20SBLランプ 各3灯並列配置,距離15 cm)を1時間照射した後、この液を1 mL取り、これに0.67%チオバルビツール酸水溶液と15%酢酸水溶液(pH3.5)の混液を1 mL、4.5%ジブチルヒドロキシトルエンを20μL加え、95℃で1時間加熱する。冷却後、これにメタノール/n−ブタノール混液(15:85)4 mLを加え良く振った後、遠心分離する。次に、このn−ブタノール層の534 nmにおける吸光度を測定し過酸化脂質量とした。尚、試料を加えて紫外線を照射した場合の過酸化脂質量をa、試料を加えて紫外線を照射しない場合の過酸化脂質量をb、試料の代わりにエタノールを加え紫外線を照射した場合の過酸化脂質量をa’、試料の代わりにエタノールを加え紫外線を照射しない場合の過酸化脂質量をb’として、抑制率を次式(数1)により算出した。
【数1】
【0021】
試験結果は、表3の通りである。製造例1および2で得られた試料はともに比較例のd,l−α−トコフェロールよりも強い過酸化脂質生成抑制作用を示すことが確認された。
【表3】
【0022】
【実施例】安全性試験
1)皮膚一次刺激性試験
製造例1〜2によって得られた天然抽出物および合成したヒドロキシチロソールを、背部を除毛したハートレー系モルモット(1群5匹,体重310g前後)の皮膚に貼付した。判定は、貼付後24時間に一次刺激性の評点法により紅斑および浮腫を指標として行った。その結果、何れの試料についてもすべての動物において、何等、紅斑および浮腫を認めず陰性と判定された。
【0023】
【実施例】安全性試験
2)皮膚累積刺激性試験
製造例1〜2によって得られた天然抽出物および合成したヒドロキシチロソールを、側腹部を除毛したハートレー系モルモット(雌性,1群5匹,体重320g前後)の皮膚に1日1回の頻度で、週5回,0.5mL/動物当りを塗布した。塗布は、4週にわたって、また除毛は各週の最終塗布日に行った。判定は、各週の最終日の翌日に一次刺激性の評点法により、紅斑および浮腫を指標として行った。その結果、何れの試料についてもすべての動物において塗布後1〜4週目にわたって、何等、紅斑および浮腫を認めず陰性と判定された。
【0024】
【実施例】安全性試験
3)急性毒性試験
製造例1〜2によって得られた天然抽出物および合成したヒドロキシチロソールを、試験前4時間絶食させたddy系マウス(雌性,1群5匹,体重28g)に2,000mg/kg量経口投与し、毒性症状の発現、程度などを経時的に観察した。その結果、すべてのマウスにおいて14日間何等異常を認めず、また解剖の結果も異常がなかった。LD50は2,000mg/kg以上と判定された。
【0025】
【実施例】軟膏の使用試験
日本薬局方の親水軟膏に製造例2で得られた試料を添加し、シミ、ソバカスで悩む男女パネラー(計12名)に1日3回、3週間連続使用してもらい、効果について評価した。尚、軟膏は試料濃度1%,3%,5%の3タイプを調整し、各々を適応部位を変えて行った。その結果は、次表(表4)の通りである。
【表4】
【0026】
【実施例】各種外用製剤の製造
上記の評価結果に従い、ヒドロキシチロソールを含有する各種外用製剤を製造した。以下にその処方例を示すが、本発明による皮膚外用剤はこれらに限定されるわけではない。
【0027】
1)ローションの製造例
次の処方によりローションを製造した。
【0028】
2)乳液の製造例
次の処方により乳液を製造した。
【0029】
3)クリームの製造例
次の処方によりクリームを製造した。
【0030】
4)ボディーソープの製造例
次の処方によりボディーソープを製造した。
【0031】
5)軟膏の製造例
次の処方により軟膏を製造した。
【0032】
6)クリームファンデーション
次の処方によりクリームファンデーションを製造した。
【0033】
7)浴用剤の製造例
次の処方により浴用剤を製造した。
【0034】
【実施例】乳液、浴用剤の使用試験
実施例で製造した乳液、浴用剤を男女パネラー(計20名)に1カ月間自由に使用してもらい、効果、使用感についてのアンケート調査を求めた。尚、パネラーは10名づつの2グループに分け、乳液担当グループと浴用剤担当グループを割り当てた。その結果は、次表(表5)の通りである。
【表5】
【0035】
【発明の効果】
本発明によるヒドロキシチロソールは、優れたメラニン生成抑制作用および過酸化脂質生成抑制作用を兼ね備え、しかも皮膚に対して刺激がないことから皮膚外用剤や浴用剤への応用に適している。ヒドロキシチロソールを含有する皮膚外用剤または浴用剤では、それを継続的に使用することにより皮膚のシミ、ソバカス、くすみなどを予防、改善効果が得られることが示された。シミ、ソバカスなどの色素沈着症といった皮膚のトラブルに悩む人は多く、特に敏感肌の人ではそうした精神的ストレスがより症状を悪化させることもあると云われている。本発明は、これら皮膚のトラブルを予防しまたは改善することのできる新規で安全な皮膚外用剤または浴用剤を提供するものである。
Claims (1)
- ヒドロキシチロソールをメラニン生成抑制剤の有効成分として又は過酸化脂質生成抑制剤の有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤又は浴用剤。
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