JP2004026606A - 低熱膨張ガラス - Google Patents

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西村 啓道
Kaoru Yokota
横田 芳
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八木 幹彦
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Abstract

【課題】100〜300℃の平均熱膨張係数が40×10−7/℃以下であり、転移点が600℃以上の耐高温性を有するガラスであり、且つ、より低い温度(1500℃以下)で溶解し得るガラスを提供すること。
【解決手段】本発明に係るガラスの組成は、重量%で、SiOを20〜43%、Pを10〜21%、Bを8〜30%、Alを22〜30%、ZnOを9〜17%及び/又は、CaOを4〜13%及び/又はMgOを3〜14%含み;これら酸化物の合計が少なくとも98%以上であり;ZnO、CaOおよびMgOの合計が6〜17%であり、且つ;PとAlとの重量比P/Alが0.80以下とした。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な低膨張ガラス組成に関するもので、耐急熱急冷性と比較的高い転移点を有し、これらの特性を必要とする種々の理化学装置、調理器、ランプおよび反射鏡用途など分野に使用されるガラスに適用される。また、電気絶縁性を必要とする用途にも適する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、低熱膨張係数のガラスが開発・実用化されている。100℃〜300℃の平均熱膨張係数が40×10−7/℃以下のガラス組成としては、SiO−P−B−Al系にアルカリ土類酸化物を含有させたものとして、下記のドレクスラー等の報告がある。
Franz Drexler und Wolfram Schutz: Die
Aluminiumorthophosphatglaser, Glastechn. Berichte, 172−176, Heft 7, 24 jahrg.
1951
この報告中には、重量%で、SiOを20%、Pを17.4〜23.2%、Bを5〜10%、Alを30〜32.6%、合計量20%のBaO、ZnO、MgOを含有させた例がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのガラスはAlの含有率が高いため、非常に高い1550℃の溶解温度で溶解されている。また、アルカリ土類酸化物が多いため、軟化温度が比較的低い。
【0004】
本発明の第1の目的は、100℃〜300℃の平均熱膨張係数が40×10−7/℃以下であり、転移点が600℃以上の耐高温性を有するガラスであり、且つ、より低い温度(1500℃以下)で溶解し得るガラス組成を提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の目的は、能率の良い直接通電溶解法によって製造可能なガラス組成を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るガラスの組成は、表1に示すように、重量%で、SiOを20〜43%、Pを10〜21%、Bを8〜30%、Alを22〜30%、ZnOを9〜17%及び/又は、CaOを4〜13%及び/又はMgOを3〜14%含み;これら酸化物の合計が少なくとも98%以上であり;ZnO、CaOおよびMgOの合計が6〜17%であり、且つ;PとAlとの重量比P/Alが0.80以下とした。平均線熱膨張係数が40×10−7/℃以下のガラス組成について検討した結果、上記のような基本的組成範囲においてガラス化することが判明した。
【0007】
【表1】
Figure 2004026606
【0008】
例えば、熱膨張係数が40×10−7/℃で転移点が725℃のガラス組成として、重量%でSiOを39.8%、Pを10.1%、Bを8.8%、Alを26.6%、CaOを12.0%、TiOを2.7%含むガラスを見い出した。
【0009】
SiOは20%より以下では乳白化し、43%以上ではガラスの粘度が上がり未溶解物が残るか乳白化する。Pは10%以下または21%以上では乳白化する。Bはガラスの粘度を下げる方向に働くが、8%以下、40%以上では乳白化が生じる。Alは20%以下、30%以上で同様に乳白化する。
【0010】
アルカリ土類酸化物含有率は、熱膨張係数に影響し、分子量の比較的小さい酸化物が低膨張ガラスとなり、含有率が増加すると熱膨張係数が増加する傾向を示す。MgO、CaOおよびZnOの合計が17%以上では平均熱膨張係数が40×10−7/℃以上となり、6%以下では乳白化が起こり易い。個々の酸化物の含有率では、MgOは14%以上でチンダル現象、または乳白化し、3%以下では未溶解物が残る傾向がある。CaOは、14%以上では熱膨張係数が40×10−7/℃以上となる。ZnOは9%以下で失透化し、17%以上では熱膨張係数が40×10−7/℃以上となる。P/Alの重量比が0.80以上では失透する傾向があり、Pの増加による溶解炉浸食が大となる。また、本組成に記載した酸化物以外に少量の酸化物などを含有させることは可能であり、このため規定した酸化物の合計量を98%以上とした。
【0011】
なお、最低の熱膨張係数29×10−7/℃を示したのは、17%のZnOを含むガラスであった(表2参照)。MgO、CaOおよびZnOの組み合わせ組成も合計が6〜17%の範囲内で調合し得る。TiO、ZrOは3%以下で含有させることができる。アルカリ酸化物、特にLiOは、2%までは含有させることができ、特にSiOが多いときには粘度を下げる効果があるが、それ以上になると熱膨張係数が増加し40×10−7/℃以上となる。清澄剤としてのAsなどは、約1%以下含有させ得る。この場合、硝酸塩を併用する方が好ましい。
【0012】
【実施例】
本発明の実施例に係るガラスの組成を表2及び表3に示す。本実施例においては、重量%の調合組成で、比重;転移点(Tg:℃);軟化点(Eg:℃);100℃〜300℃の平均線熱膨張係数(×10−7/℃)及びヌープ硬度(Hk:kgf/mm)を測定した。
【0013】
【表2】
Figure 2004026606
【0014】
本発明における諸特性は、日本光学硝子工業会規格(JOGIS)及び日本工業規格(JIS)に従って求めた。比重を測定し、平均線熱膨張係数(以下10−7/℃単位で表示)を測定した。転移点(Tg:/℃)、軟化点(Eg:/℃)の温度特性は、粗焼鈍されたブロックから長さ50±5mm、断面4±0.5mmの試料サンプルを作成し、±1℃均熱加熱炉内に水平に置き、20gの荷重を加え、常温から+4℃/分の一定速度で昇温し、温度対伸びのカーブから求めた。なお、平均熱膨張係数は100〜300℃間での値である。
【0015】
またヌープ硬度(Hk:kgf/mm)は、ブロックの研磨面について、先端の対稜角が
172°30’と130°のダイアモンド圧子ヌープ硬度計を使用し、押し込み荷重0.1kg、加圧時間は15秒で同一ガラスで5回測定し、その平均値を採り、kgf/単位で表示した。
【0016】
溶解は炭化ケイ素発熱体電気炉で、理論ガラス量約1kgの白金内張りポットで溶解し、溶解温度を1420℃一定とし、原料装入40分、清澄・攪拌時間平均5時間20分行い、清澄終了後直ちに600〜700℃に予熱した金型に鋳込み、1時間保持後炉内で放冷し粗焼鈍を行った。ガラスブロックについて、失透、石、乳白などを観察した他、鋳込み後ポットを溶解炉内に戻し、一夜放置後観察しガラスの安定性を確認した。
【0017】
表2中、ガラス番号101〜111は、アルカリ土類酸化物が単一の例を示し、ガラス番号110は109に0.5%のAsを添加し、合計を100%にした例である。また、ガラス番号201〜205は、混合アルカリ土類酸化物の例およびTiO,LiOを含有した例である。
【0018】
組成は、酸化物で表示したが、使用した主な原料は珪砂、硼酸、水酸化アルミニウム、酸化チタン、亜ヒ酸、5−2酸化リンはリン酸塩として正リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン亜鉛、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸アルミニウムなどの組み合わせを使用したが、特にこれらに限定されるものではない。
【0019】
表3に示すように、本発明においては、重量%で3%までのTiOまたはZrO、或いは、2%までのLiOを含有することができる。また、清澄剤として1%以下のAs又は/及びSbを含有することができる。なお、表3中、MOはアルカリ土類酸化物の合計を示し、MeOはアルカリ酸化物の合計を示す。
【表3】
Figure 2004026606
【0020】
【発明の効果】
本発明による新規組成のガラスは、熱膨張係数が低く、かつ転移点が高いという大きな特徴を有するものである。硬質一級に相当するパイレックス(登録商標)#7740は0〜300℃の平均熱膨張係数が34.5×10―7/℃、最高使用温度は490℃と公表されている。また、発明者による実測では、転移点Tg=541℃、軟化点Eg=607℃であった。本発明によるガラスでは、パイレックス(登録商標)#7740と同等、若しくはそれ以下の熱膨張係数を有し、且つ転移点も高く最高使用温度は600℃以上となる。
【0021】
また、無アルカリガラス組成とすることにより、高い電気絶縁性用途も期待できる。一方製造面では、最高溶解温度を1500℃以下(例えば、1420℃)とすることができ、経済的な溶解が可能となる。従って、本発明に係るガラスは、低膨張、耐熱性(耐高温性)及び耐光性を必要とする多くの用途に適すると言える。
【0022】
更に、本発明によれば、低熱膨張係数の確保等の所期の目的を達成しつつ、蒸発し易く耐火物に対する浸食性の激しいPの含有量を低く抑えることができるというメリットもある。

Claims (4)

  1. 重量%で、SiOを20〜43%、Pを10〜21%、Bを8〜30%、Alを22〜30%、9〜17%のZnO及び/又は、4〜13%のCaO及び/又は3〜14%のMgO含み、
    これら酸化物の合計が少なくとも98%以上であり、
    ZnO、CaOおよびMgOの合計が6〜17%であり、且つ、
    とAlとの重量比P/Alが0.80以下であることを特徴とする低熱膨張ガラス。
  2. 請求項1に記載のガラス組成において、
    CaOを4〜13%含有するガラス。
  3. 請求項1又は2に記載のガラス組成において、
    重量%で3%までのTiOまたはZrO、或いは、2%までのLiOを含有するガラス。
  4. 請求項1,2又は3に記載のガラス組成において、
    清澄剤として1%以下のAs又は/及びSbを含有するガラス。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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