JP2004025842A - 可逆熱変色性表示体 - Google Patents

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Kuniyuki Chiga
千賀 邦行
Katsuyuki Fujita
藤田 勝幸
Shigehiro Koide
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Abstract

【課題】温度変化により相異なる多彩な像を現出させて、変色の妙味、意外性、マジック性、デザインの多様化等に優れ、顕著な視覚効果をもたらす可逆熱変色性表示体を提供する。
【解決手段】加熱により発色し、降温により消色する加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色像と、加熱により消色し、降温により発色する加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色像とを支持体上に設した、或いは、前記加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色層と加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色層を積層した可逆熱変色性表示体であって、加熱発色型可逆熱変色性顔料として(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)′没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応を特定温度で可逆的に生起させる、融点50℃未満のアルコール類、エステル類、ケトン類、及び炭化水素から選ばれる反応媒体を内包させたマイクロカプセル顔料を用いる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可逆熱変色性表示体に関する。詳細には、加熱発色型の可逆熱変色顔料を含む加熱発色像と、加熱消色型の可逆熱変色顔料を含む加熱消色像とを共存させてなる、或いは、加熱発色型の可逆熱変色顔料を含む加熱発色層と、加熱消色型の可逆熱変色顔料を含む加熱消色層とを積層させてなる可逆熱変色性表示体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、加熱消色型の可逆熱変色性材料として(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物及び(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分を含む均質相溶体からなる可逆熱変色性組成物を例示でき、玩具、印刷物等に広く用いられている(例えば、特許文献1乃至4参照)。
しかしながら、これらの可逆熱変色性材料は着色状態からの昇温で消色し、消色状態からの冷却で発色するという単一の熱変色機能を有するのみであり、加熱或いは冷却によってもたらされる熱変色の視覚効果はやや単調なものになることは避けられなかった。
そこで本出願人は更に加熱発色像と加熱消色像を組み合わせた可逆熱変色性表示体について提案した(例えば、特許文献5参照)。
前記可逆熱変色性表示体は加熱発色像と加熱消色像との組み合わせにより多彩な熱変色挙動を示し、変色の妙味、意外性、マジック性に富んだ顕著な視覚効果を有するものである。
前記可逆熱変色性表示体の構成は加熱発色型の可逆熱変色材料と、加熱消色型の可逆熱変色材料とからなり、前記加熱発色型の可逆熱変色材料は(ロ)′成分の電子受容性化合物としてアルコキシフェノール化合物及び/又はヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いることを特徴とする。
【0003】
【特許文献1】
特公昭51−44706号公報
【0004】
【特許文献2】
特公昭51−44708号公報
【0005】
【特許文献3】
特公平1−29398号公報
【0006】
【特許文献4】
特公平4−17154号公報
【0007】
【特許文献5】
特開2000−194295号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(ロ)′成分としてアルコキシフェノール化合物及び/又はヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いた加熱発色型の可逆熱変色材料は(1)発色濃度がやや低い、(2)消色状態からの加熱による発色過程において、極大発色温度から更に加熱すると徐々に発色濃度が低下する、(3)変色温度に制約があり、特に30〜40℃の低温に変色点を設定することは困難である、(4)冷却による消色の際、完全消色温度T に達した後、少なくとも数分間は温度を保持しないと完全に消色しない(消色鋭敏性がやや劣る)等の問題点を有していた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記問題点を解決するため鋭意検討を行なった結果、(ロ)′成分として没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物を用いた加熱発色型の可逆熱変色材料が、良好な発色濃度及び変色挙動、変色温度の広い選択性を備えており、前記没食子酸エステル系加熱発色型可逆熱変色材料と加熱消色型可逆熱変色材料とを組み合わせることにより、優れた高温発色性と鋭敏な熱変色特性を備えた可逆熱変色性表示体が得られることを見出した。
即ち、本発明は消色状態からの加熱により発色し、発色状態からの降温により消色する加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色像と、発色状態からの加熱により消色し、消色状態からの冷却により発色する加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色像とを支持体上に共存させてなる可逆熱変色性表示体において、前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)′没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応を特定温度で可逆的に生起させる、融点50℃未満の、アルコール類、エステル類、ケトン類、及び炭化水素から選ばれる反応媒体を含む必須三成分を少なくとも内包させた、温度−色濃度曲線においてΔH値(ヒステリシス温度幅)が3〜40℃の範囲にあり、平均粒子径0.5〜50μmのマイクロカプセル形態の加熱発色型可逆熱変色性顔料であることを要件とする。
更に、消色状態からの加熱により発色し、発色状態からの降温により消色する加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色層と、発色状態からの加熱により消色し、消色状態からの冷却により発色する加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色層とを積層してなる可逆熱変色性表示体であって、前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)′没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応を特定温度で可逆的に生起させる、融点50℃未満の、アルコール類、エステル類、ケトン類、及び炭化水素から選ばれる反応媒体を含む必須三成分を少なくとも内包させた、温度−色濃度曲線においてΔH値(ヒステリシス温度幅)が3〜40℃の範囲にあり、平均粒子径0.5〜50μmのマイクロカプセル形態の加熱発色型可逆熱変色性顔料であることを要件とする。
【0010】
本発明に用いられる加熱消色型可逆熱変色性顔料としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44708号公報、特公平1−29398号公報、特公平4−17154号公報等に記載された、従来より汎用の可逆熱変色性材料、即ち(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物及び(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分を含む均質相溶体をマイクロカプセルに内包させた形態のものが好適に用いられる。
【0011】
また、加熱発色型の可逆熱変色性顔料としては、本出願人が先に提案した特願2002−45108に記載の加熱発色型可逆熱変色性顔料が用いられる。
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)′没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物、及び前記(イ)と(ロ)′の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の三成分を内包させたマイクロカプセル形態のものである。
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料は(ロ)′成分としてアルコキシフェノール化合物及び/又はヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いた加熱発色型の可逆熱変色顔料と比較して、発色濃度が高く、一旦最大発色濃度に達した後更に加温しても発色濃度が低下せず、変色温度設定の自由度が高い等の優れた特性を備えており、前記加熱消色型可逆熱変色性顔料との組み合わせにより得られる可逆熱変色性表示体は従来にない複雑でコントラストに優れた熱変色挙動を示し、変色の妙味、意外性、マジック性に富んだ顕著な視覚効果を有するものである。
【0012】
本発明に用いられる加熱発色型可逆熱変色性顔料及び加熱消色型可逆熱変色性顔料に配合される(イ)成分としては従来より公知のジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が適用できる。
また(ハ)成分についても従来より公知のアルコール類、エステル類、ケトン類、炭化水素類等を適用することができる。
【0013】
前記加熱消色型可逆熱変色性顔料に配合される(ロ)成分としては、活性プロトンを有する化合物、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用し、(イ)成分を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等が挙げられるが、フェノール性水酸基を有する化合物群が最も有効な熱変色特性を発現させることができる。
【0014】
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料に配合される(ロ)′成分は、没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物であり、没食子酸ドデシル、没食子酸トリデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ペンタデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸オクタデシル、没食子酸エイコシル、没食子酸ベヘニル等を例示でき、前記(イ)及び(ハ)成分との組み合わせにより良好な加熱発色特性を示す。
【0015】
本発明に用いられる加熱発色型可逆熱変色性顔料の変色挙動について以下に説明する。
前記した(イ)成分と(ロ)′成分である没食子酸エステル及び(ハ)成分からなる均質相溶混合物は、加熱時にあっては、液相に転移して(イ)成分と(ロ)′成分が接触状態となり、(ロ)′成分の呈色力が(ハ)成分の減感力を上回って発色状態を現出させ、温度降下時にあっては、(ロ)′成分が析出して(イ)成分と(ロ)′成分の結合が解離されて消色状態に復帰する可逆的熱変色挙動を呈する。
【0016】
前記(イ)、(ロ)′、(ハ)三成分の混合物をマイクロカプセルに内包させた加熱発色型可逆熱変色性顔料の変色挙動を図1の色濃度−温度曲線の説明図について説明する。
ここで、温度T は発色開始温度、T は完全発色温度、T は消色開始温度、T は完全消色温度を示す。
ΔHは、消色状態から発色状態に至る経路と、発色状態から消色状態に至る経路の温度差として下記の式より算出される。
ΔH=(T −T )/2−(T −T )/2
色濃度−温度曲線において、色濃度の変化は矢印に沿って進行する。
 以下の温度域で消色状態を呈し、加熱過程においてT の温度より、発色し始め、T の温度に達すると完全発色状態となり、T を越える温度まで昇温させて、降温する過程においてT の温度に達すると消色し始め、更に降温すると色濃度が低下し、T の温度に達すると完全に消色し、ΔH値(ヒステリシス温度幅)は、7〜40℃の範囲で組成物特有のΔH値を示し、加熱に要した熱を取り去った後にあっても、ΔH値の範囲内で発色状態を保持する特性を有する。
【0017】
前記三成分系に第四の成分である、(ニ)融点50℃以上の単分子有機化合物、又は軟化点70℃以上の高分子化合物を添加した系(図2)にあっては、前記(ニ)成分の作用により系内の結晶化を促進し、(ロ)′没食子酸エステルの析出速度(白化)を早め、当該(ニ)成分の未添加の系(点線で示す)に比べて、消色開始温度(T )及び完全消色温度(T )を高温側にシフトさせ、ΔH値を狭めてΔH値を3〜25℃の範囲となし、発色保持温度幅の狭小化により、加熱手段により発色させた後にあって、特殊の冷却手段を適用することなく、元の消色状態への復帰を促進させるために機能する。
【0018】
前記(ニ)成分を以下に具体的に例示する。
融点50℃以上の単分子有機化合物として、好適に用いられる脂肪酸エステル類としては、ラウリン酸エイコシル、ラウリン酸ベヘニル、ラウリン酸テトラコシル、ラウリン酸ヘキサコシル、ラウリン酸オクタコシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ステアリル、ミリシチン酸エイコシル、ミリスチン酸ベヘニル、ミリスチン酸テトラコシル、ミリスチン酸ヘキサコシル、ミリスチン酸オクタコシル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸エイコシル、パルミチン酸ベヘニル、パルミチン酸テトラコシル、パルミチン酸ヘキサコシル、パルミチン酸オクタコシル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸エイコシル、ステアリン酸ベヘニル、ステアリン酸テトラコシル、ステアリン酸ヘキサコシル、ステアリン酸オクタコシル、エイコ酸デシル、エイコ酸ウンデシル、エイコ酸トリデシル、エイコ酸ミリスチル、エイコ酸セチル、エイコ酸ステアリル、エイコ酸エイコシル、エイコ酸ドコシル、エイコ酸テトラコシル、エイコ酸ヘキサコシル、エイコ酸オクタコシル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸デシル、ベヘン酸ウンデシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸トリデシル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸セチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸エイコシル、べへン酸ベヘニル、ベヘン酸テトラコシル、ベヘン酸ヘキサコシル、ベヘン酸オクタコシルを挙げることができる。
【0019】
二塩基酸エステル類としては、シュウ酸ジステアリル、シュウ酸ジエイコシル、シュウ酸ベヘニル、コハク酸ジステアリル、コハク酸エイコシル、コハク酸ベヘニル、グルタル酸ジステアリル、グルタル酸ジエイコシル、グルタル酸ベヘニル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、アジピン酸エイコシル、アジピン酸ベヘニル、スベリン酸ジセチル、スベリン酸ジステアリル、スベリン酸ジエイコシル、スベリン酸ベヘニル、アゼライン酸ミリスチル、アゼライン酸ジセチル、アゼライン酸ジステアリル、アゼライン酸エイコシル、アゼライン酸ベヘニル、セバシン酸ジミリスチル、セバシン酸ジセチル、セバシン酸ジステアリル、セバシン酸ジエイコシル、セバシン酸ジベヘニル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジトリデシル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジミリスチル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジセチル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジパルミチル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジステアリル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジエイコシル、1−,14−テトラデカメチレンジカルボン酸ジベヘニル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸酸ジラウリル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジトリデシル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジミリスチル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジセチル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジパルミチル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジステアリル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジエイコシル、1−,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸ジベヘニル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジデシル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジラウリル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジトリデシル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジミリスチル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジセチル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジパルミチル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジステアリル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジエイコシル、1−,18−オクタデカメチレンジカルボン酸ジベヘニル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジデシル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジラウリル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジトリデシル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジミリスチル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジセチル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジパルミチル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジステアリル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジエイコシル、1−,20−エイコシルメチレンジカルボン酸ジベヘニル、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、トリノナデカノイン、カプロン酸コレステロール、カプリル酸コレステロール、カプリン酸コレステロール、ウンデカン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、エイコサン酸コレステロール、ベヘン酸コレステロール等を例示できる。
【0020】
ケトン類のうち、好適に用いられる脂肪族ケトン類としては、ジオクチルケトン、ジノニルケトン、ジウンデシルケトン、ジトリデシルケトン、ジペンタデシルケトン、ジヘプタデシルケトン、ジノナデシルケトン、フェニルオクチルケトン、フェニルウンデシルケトン、フェニルトリデシルケトン、フェニルペンタデシルケトン、フェニルヘプタデシルケトン等が挙げられる。
酸アミド類のうち、好適に用いられる脂肪族酸アミド類としては、ヘキシルアミド、ヘプチルアミド、オクチルアミド、ノニルアミド、デシルアミド、ウンデシルアミド、ラウリルアミド、トリデシルアミド、ミリスチルアミド、パルミチルアミド、ステアリルアミド、エイコシルアミド、ベヘニルアミド、ヘキサコシルアミド、オクタコシルアミド等が挙げられる。
【0021】
エーテル類としては、ペンタデシルエーエル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、ジエイコシルエーテル、ジドコシルエーテル等が挙げられる。
脂肪酸としては、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、メリシン酸等が挙げられる。
【0022】
炭化水素類としては、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン、1−オクタコセン、1−ノナコセン、1−トリアコンテン等が挙げられる。
軟化点70℃以上の高分子化合物としては、アクリル共重合芳香族炭化水素樹脂を例示でき、具体的には、アクリルスチレン共重合樹脂〔三洋化成(株)製、商品名:ハイマーSBM100、ハイマーSBM73F〕を挙げることができる。
【0023】
図3は、(ロ)′成分としてアルコキシフェノール化合物及び/又はヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いた従来の加熱発色型熱変色性材料の色濃度−温度曲線の説明図であり、発色濃度がT を境に、高温側(T )で激減し、T 領域に至る低温側で激減する変色挙動を呈し、発色温度域における発色濃度の濃淡差が大きい特性を示している。
これに対し、本発明に用いられる没食子酸エステル系加熱発色型可逆熱変色性材料は、前記した図1及び図2に示す如く、発色温度域における発色濃度の濃淡差が極めて小であり、略一様の発色濃度を保持しており、加えてT が、30〜50℃の系にあっては、T −T の値が従来の系に較べて小さく、高濃度の発色挙動を呈する。
【0024】
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料を構成する各成分の配合割合について以下に説明する。
前記三成分系では、(イ)成分0.2〜20(好ましくは、0.5〜15)重量部、(ロ)′成分10〜80(好ましくは、20〜70)重量部、(ハ)成分100重量部の割合であり、四成分系では、前記に加えて(ニ)成分0.4〜20(好ましくは、1〜10)重量部の配合割合が有効である。
前記(ハ)成分10重量部に対し、(ロ)′成分が1重量部未満では、加熱発色時の発色濃度が実用的に不充分であり、一方、8重量部を超えると(ロ)′成分が過剰に存在するため、(ハ)成分中での溶解−析出の可逆性が損なわれがちであり、可逆的な発消色性を示し難く、色消えも悪い。
また前記(ハ)成分10重量部に対し、(ニ)成分が4重量部未満では、低温側変色曲線の高温側へのシフトの効果が不充分であり、一方、200重量部を超えると発消色の適性バランスに欠ける。
【0025】
前記(ハ)成分としては、前記した化合物の単独系であってもよいが、アルコール類とエステル類の併用系、アルコール類と炭化水素類の併用系が効果的であり、この点を以下に説明する。
前記四成分からなる内包組成物中において、(ロ)′没食子酸エステルの性状変化、即ち、加温時(高温時)での溶解状態、降温時(低温時)での析出状態は、(ハ)成分の化学的性状、物性により影響を受ける。
特に、アルコール中においては、(ロ)′没食子酸エステルの呈色力より、それを打ち消す力、即ち、アルコールの減感力が発揮されるため、内包組成物の発色濃度を低下させる特性を有する。
【0026】
一方、エステル類の系では、加温時(高温時)での溶解状態では、その減感力がアルコールに較べて弱く、(ロ)′没食子酸エステルの呈色力への影響が少ないため、良好な発色濃度を示すのに対し、降温時(低温時)においては、(ロ)′没食子酸エステルの析出現象が起こり難く、消色状態に変位し難い特性を有する。前記した如く、アルコ−ル類とエステル類の両特性をバランスよく組み合わせることにより、加温時(高温時)の良好な発色状態、降温時(低温時)の消色状態を共に効果的に発現させる。
前記アルコール類−エステル類の併用系において、アルコール類/エステル類=80/20〜20/80〔好ましくは、70/30〜30/70、更に好ましくは、60/40〜40/60(重量比)〕である。
炭化水素類の系では、前記エステル類を使用する系に較べて、発色濃度が大きい特性を有している。アルコール類/炭化水素類=80/20〜20/80〔好ましくは、70/30〜30/70、更に好ましくは、60/40〜40/60(重量比)〕である。
【0027】
前記加熱消色型可逆熱変色性顔料は(イ)、(ロ)、(ハ)三成分を、また加熱発色型可逆熱変色性顔料は(イ)、(ロ)′、(ハ)三成分或いは(イ)、(ロ)′、(ハ)、(ニ)四成分をマイクロカプセルに内包することにより得られる。
マイクロカプセル化は従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等が適宜選択される。更に、マイクロカプセルの表面には二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を向上させたり、表面特性を改質させて実用に供することができる。
マイクロカプセル化して顔料形態となすことにより、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は溶剤成分と接触しても、組成物の機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるため、多様な使用条件下において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができる。
前記マイクロカプセルは円形断面形状又は非円形断面形状を有しており、平均粒子径0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは、3〜20μmの範囲が実用性を満たす。
平均粒子径が50μmを越えると、インキ、塗料等への適用に際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、平均粒子径が0.5μm以下では、高濃度の発色性を示し難くなる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の加熱発色像及び加熱消色像は、前記した加熱発色型可逆熱変色性顔料及び加熱消色型可逆熱変色性顔料をそれぞれバインダー樹脂中に分散状態で固着させた熱変色像であり、支持体上に印刷又は塗装等の手段により形成される。
また、加熱発色層と加熱消色層は、加熱発色型可逆熱変色性顔料を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散した加熱発色層上に、加熱消色型可逆熱変色性顔料を含むインキを用いて印刷又は塗装等の手段により加熱消色層を形成したり、加熱消色型可逆熱変色性顔料を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散した加熱消色層上に、加熱発色型可逆熱変色性顔料を含むインキを用いて印刷又は塗装等の手段により加熱発色層を形成したり、加熱発色型可逆熱変色性顔料を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散した加熱発色層と、加熱消色型可逆熱変色性顔料を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散した加熱消色層を貼着して形成される。
本発明の実施例及び比較例に用いられる可逆熱変色性顔料の内包物の組成を以下の表に示す。
【0029】
【表1】
Figure 2004025842
【0030】
【表2】
Figure 2004025842
【0031】
【表3】
Figure 2004025842
【0032】
なお、表1に示した可逆熱変色性組成物は本発明の可逆熱変色性表示体を構成する没食子酸エステル系の加熱発色型可逆熱変色性顔料の、表2は従来のアルコキシフェノール系加熱発色型可逆熱変色性顔料の、表3は本発明に用いられる加熱消色型可逆熱変色性顔料の内包物の組成を表わす。
【0033】
それぞれの可逆熱変色性組成物の変色温度、温度−濃度曲線におけるヒステリシス幅(ΔH値)等を以下の表に示す。
【0034】
【表4】
Figure 2004025842
【0035】
なお、加熱発色型可逆熱変色性組成物(可逆熱変色性組成物a〜f)については温度T は発色開始温度、T は完全発色温度、T は消色開始温度、T は完全消色温度を示す。又、加熱消色型可逆熱変色性組成物(可逆熱変色性組成物g〜k)の場合、温度t は消色開始温度、t は完全消色温度、t は発色開始温度、t は完全発色温度を示す。
以下に本発明の実施例について説明するが、インキ組成の「部」の数字は「重量部」を表わす。
【0036】
【実施例】
前記可逆熱変色性組成物a〜f及びkを、それぞれ芳香族イソシアネートプレポリマーと水との反応で得られる尿素樹脂を壁膜とするマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料A〜F及びKを調製した。
また、前記可逆熱変色性組成物g〜jを、それぞれエポキシ−アミン界面重合法で得られるエポキシ膜を壁膜とするマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性顔料G〜Jを調製した。
【0037】
実施例1
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料A40部をエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン50部、消泡剤3部、増粘剤1部、レべリング剤3部を含むビヒクル中に均一分散して、加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
また、前記加熱消色型可逆熱変色性顔料G40部を用いて前記と同様の処方で加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
【0038】
可逆熱変色性表示体の作成
白色上質紙上に、前記加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて、花柄模様を線画で形成した(加熱発色像A)。次に、前記加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて、前記加熱発色像A上に蝶柄模様を線画で形成して(加熱消色像G)、可逆熱変色性カードを作成した。
【0039】
前記可逆熱変色性カードを加温すると、33℃以上で蝶柄(加熱消色像G)が消えると同時に、徐々に花柄(加熱発色像A)が発色し始め、更に昇温すると40℃で濃ピンク色の花柄が明瞭に現出する。前記可逆熱変色性カードを室温条件下に放置し、自然冷却すると25℃まで花柄(加熱発色像A)の発色は保持される。次に冷却手段を適用することにより該カードを冷却していくと、10℃から徐々に花柄が消え始めるとともに、青色の蝶柄(加熱消色像G)が発色し始め、8℃以下に達すると前記蝶柄が明瞭に視認された。該カードへの冷却手段を取り去り自然放置すると前記蝶柄は25℃の室温下で保持される。前記可逆熱変色性カードは花柄或いは蝶柄の何れかを常温領域で任意に互変的に保持可能な熱変色性色彩記憶型カードであり、前述した温度による様相変化は繰り返し再現することができた。
【0040】
実施例2
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料B30部をエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン50部、消泡剤3部、増粘剤1部、レべリング剤3部、防腐剤1部からなるビヒクル中に均一分散して、加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
また、加熱消色型可逆熱変色性顔料Hを用い、前記と同様の方法で加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
【0041】
可逆熱変色性表示体の作成
軟質塩化ビニル樹脂からなる半透明支持体(シート)上に、前記加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて「女の子の顔」(加熱発色像B)を印刷した。続いて、その上面に前記加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて「男の子の顔」(加熱消色像H)を印刷した。更にその上面に一般白色インキでベタ印刷を行ない積層体を形成した。
【0042】
前記積層体の半透明支持体側を下にし、白色ベタ印刷の上に厚さ5mmの発泡ウレタンシート、及び前記支持体と同一の半透明シートを載置し、一般白色インキの周囲1cm外側部分で高周波溶着加工を行った後、不要部分を取り除き、可逆熱変色性風呂用絵本を得た。
前記風呂用絵本は、25℃の室温状態においては橙色の「男の子の顔」(加熱消色像H)が視覚されるが、40℃以上の湯中に投入すると橙色の「男の子の顔」(加熱消色像H)が消え、同時にピンク色の「女の子の顔」(加熱発色像B)が現出する。続いて、温水から取り出して25℃の水中に投入すると、ピンクの「女の子の顔」(加熱発色像B)は消え、再び「男の子の顔」(加熱消色像H)が現出する。
前述した温度による様相変化は繰り返し再現することができた。
【0043】
実施例3
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料C乾燥物15部をアクリル樹脂/キシレン溶液40部、紫外線吸収剤3部、キシレン30部メチルイソブチルケトン30部、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤10部からなるビヒクル中に攪拌混合して加熱発色型可逆熱変色性スプレー塗料を得た。
また、加熱消色型可逆熱変色性顔料Iを用い、前記と同様の方法で加熱消色型可逆熱変色性スプレー塗料を得た。
【0044】
可逆熱変色性表示体の作成
前記加熱発色型可逆熱変色性スプレー塗料をスプレーガンに充填して、ABS樹脂と白色マスターペレットの混合物を射出成形して得たミニチュアカーのボディー全体に塗装を施した後、乾燥させた。
次に前記加熱消色型可逆熱変色性スプレー塗料をスプレーガンに充填して、前記ミニチュアカーのボンネット部に星型マーク(加熱消色像I)を塗装し、乾燥させて可逆熱変色性ミニチュアカーを得た。
【0045】
前記ミニチュアカーは、25℃の室温下では全体が白色で、ボンネット部のみピンク色の星柄(加熱消色像I)が形成されたものであるが、42℃の温水中に投入して35℃以上に加温されるとピンク色の星柄(加熱消色像I)が消えると共に、更に温度が上がり40℃を超えるとボディー全体が緑色に発色した。続いて、湯から取り出して30℃以下になるとボディーの緑色は徐に薄くなり、25℃以下になるとボディー全体はほぼ白色となり、ボンネット部にピンク色の星柄(加熱消色像I)が現出した。
前述した温度による様相変化は繰り返し再現することができた。
【0046】
実施例4
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料Dの乾燥物30部を、硬質エポキシ樹脂60部、紫外線吸収剤2部、揺変性付与剤2部、及び消泡剤1部を含むビヒクル中に均一に分散練合した後、常温硬化型脂肪族ポリアミン35部を添加し、均一に分散して加熱発色型可逆熱変色性エポキシインキを得た。
また、加熱消色型可逆熱変色性顔料Jを用い、前記と同様の方法で加熱消色型可逆熱変色性エポキシインキを得た。
【0047】
可逆熱変色性表示体の作成
陶器製マグカップの側面に、非変色性青色エポキシインキを使用し、曲面印刷機で卵の図柄の略下半部を印刷し、70℃で1時間加熱硬化させて、非変色像を形成した。
次に、前記加熱発色型可逆熱変色性エポキシインキを用いて前記卵の図柄の上半分部分に恐竜の上半身像を印刷し、70℃で1時間加熱硬化させ、加熱発色像D1を形成した。更に、前記加熱発色型可逆熱変色性エポキシインキDを用いて恐竜の図柄の両側に、卵の上半部が割れた図柄の一部を印刷し、70℃で1時間加熱硬化させて加熱発色像D2を得た。次いで、恐竜の上半身の図柄(加熱発色像D1)上に加熱消色型可逆熱変色性エポキシインキを用いて卵の図柄の上半部を重ね刷りし、70℃で1時間加熱硬化させ、加熱消色像Jを形成して可逆熱変色性マグカップを得た。
【0048】
前記可逆熱変色性マグカップは、室温環境下では加熱発色像D1及び加熱発色像D2は視覚されず非変色像と加熱消色像Jによる卵の図柄が視覚される。
前記マグカップに80℃の熱湯を注ぐと、加熱消色像Jが消色すると共に、加熱発色像D1及び加熱発色像D2が発色するため、卵の上半分が割れて恐竜が生まれた像が現出する。次に温水を取り除いて室温環境下でマグカップを自然放冷すると、徐々に元の様相に戻る。
前述した温度による様相変化は繰り返し再現することができた。
【0049】
実施例5
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料B40部をウレタン系ディスパージョン水溶液56部、消泡剤3部、増粘剤1部を含むビヒクル中に均一分散して、加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
また、前記加熱消色型可逆熱変色性顔料H40部を用いて前記と同様の処方で加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
【0050】
可逆熱変色性表示体の作製
白色合成紙上に、前記加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて、180メッシュスクリーン版にて4×6cmのサイズで印刷して加熱発色像Bを形成した。
次に、前記加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて、同じスクリーン版にて、同位置に重ね刷りを行なって加熱消色像Hを形成した。
更にその上面にポリプロピレン製ラミネートフィルム(20μm)を用いてラミネート加工を行い、印刷部分の周囲から5mm大の大きさにてカットして可逆熱変色性カードを作製した。
【0051】
前記カードは25℃の室温下においては加熱消色像Hによる橙色を呈し、カード表面を指で強く擦ると、その部分の加熱消色像Hによる橙色が消色するとともに、加熱発色像Bが発色して濃いピンク色になった。
前記カードをそのまま室温で放置すると数分後にはピンク色が消色し、橙色に戻った。
前記様相変化の中で、加温時の発色状態のカラーは加熱発色型可逆熱変色性顔料の色相のみが視認され、加熱消色型可逆熱変色性顔料は消色しているためピンクの発色に影響することはなかった。また、降温時の発色状態のカラーは加熱消色型可逆熱変色性顔料の色相のみが視認され、加熱発色型可逆熱変色性顔料は消色しているため橙色の発色に影響することはなかった。
【0052】
実施例6
前記加熱発色型可逆熱変色性顔料B40部をウレタン系ディスパージョン水溶液56部、消泡剤3部、増粘剤1部を含むビヒクル中に均一分散して、加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
また、前記加熱消色型可逆熱変色性顔料K40部を用いて前記と同様の処方で加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを得た。
【0053】
可逆熱変色性表示体の作製
裏面に粘着層と離型紙を設けた白色合成紙製ラベル表面に前記加熱消色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて、180メッシュスクリーン版にてりんごの絵柄を印刷して加熱消色像Kを形成した。
次に前記加熱発色型可逆熱変色性スクリーンインキを用いて、前記と同じスクリーン版にて、同位置に重ね刷りを行なって加熱発色像Bを形成した。
更にその上面にポリプロピレン製ラミネートフィルム(20μm)を用いてラミネート加工を行い、印刷部分の周囲から5mm大の大きさにてカットして可逆熱変色性ラベルを作製した。
前記ラベルの離型紙を剥がして白色プラスチックカップ側面に貼着した。
前記カップは室温下では加熱消色像Kによる青色のりんごの絵柄が視認され、カップに熱湯を注ぐと加熱消色像Kによる青色が消色するとともに、加熱発色像Bが発色してりんごの絵柄がピンク色になった。
湯を取り除いて室温下で数分放置すると、りんごの絵柄は再び青色に戻った。前記様相変化の中で、加温時の発色状態のカラーは加熱発色型可逆熱変色性顔料の色相のみが視認され、加熱消色型可逆熱変色性顔料は消色しているためピンクの発色に影響することはなかった。また、降温時の発色状態のカラーは加熱消色型可逆熱変色性顔料の色相のみが視認され、加熱発色型可逆熱変色性顔料は消色しているため青色の発色に影響することはなかった。
【0054】
実施例7
加熱消色型可逆熱変色性顔料K20部、分散剤5部、白色顔料1部、スチレン/合成ゴム共重合樹脂974部をエクストルーダーにて170℃で溶融混合してペレットを得た。
前記ペレットを用いて、射出成形機にてミニチュアカーボディーを成型した(加熱消色層K)。
次いで、前記加熱発色型可逆熱変色性顔料B15部をアクリル樹脂/キシレン溶液40部、紫外線吸収剤3部、キシレン30部、メチルイソブチルケトン30部、ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤10部からなるビヒクル中に攪拌混合して加熱発色型可逆熱変色性スプレー塗料を得た。
【0055】
可逆熱変色性表示体の作製
前記加熱発色型可逆熱変色性スプレー塗料をスプレーガンに充填して、前記ミニチュアーカーのボディー全体に塗装を施した後、乾燥させて加熱発色層Bを設けた。
前記ミニチュアカーは、27℃以下では加熱消色層Kによる青色(スカイブルー)を呈し、35℃以上の温水中に浸漬すると加熱消色層Kの青色が消色するとともに、上層に塗装された加熱発色層Bが発色してピンクになった。
次いで、温水から取り出し、室温下で放置すると加熱発色層Bによるピンク色が徐々に消色すると共に、加熱消色層Kが発色して青色に戻った。
前記様相変化の中で、加温時の発色状態のカラーは加熱発色型可逆熱変色性顔料の色相のみが視認され、加熱消色型可逆熱変色性顔料は消色しているためピンクの発色に影響することはなかった。また、降温時の発色状態のカラーは加熱消色型可逆熱変色性顔料の色相のみが視認され、加熱発色型可逆熱変色性顔料は消色しているため青色の発色に影響することはほとんどなかった。
【0056】
比較例1
実施例2の加熱発色型可逆熱変色性顔料B30部を加熱発色型可逆熱変色性顔料E30部に置き換え、実施例2と同様の方法で可逆熱変色性風呂用絵本を得た。
前記風呂用絵本は、25℃の室温状態においては橙色の「男の子の顔」が視覚されるが、40℃以上の湯中に投入すると橙色の「男の子の顔」が消え、同時にピンク色の「女の子の顔」が現出する。続いて、温水から取り出して25℃の水中に投入すると、橙色の「男の子の顔」が現れるが、前記加熱発色型可逆熱変色性顔料Eの消色時における鋭敏性がやや劣るためにピンク色の「女の子の顔」が消色するのに時間がかかり、「男の子の顔」と「女の子の顔」の図柄が重なってしまい、明瞭に図柄を視認できなかった。
【0057】
比較例2
実施例4の加熱発色型可逆熱変色性顔料D30部を加熱発色型可逆熱変色性顔料F30部に置き換え、実施例4と同様の方法で加熱発色像F1、加熱発色像F2及び非変色像と加熱消色像Jが形成された可逆熱変色性マグカップを得た。
前記可逆熱変色性マグカップは、室温環境下では加熱発色像F1及び加熱発色像F2は視覚されず非変色像と加熱消色像Jによる卵の図柄が視覚される。
前記マグカップに80℃の熱湯を注ぐと、加熱消色像Jが消色すると共に、加熱発色像F1及び加熱発色像F2が発色し、卵の上半分が割れて恐竜が生まれた像が現出するが、加熱発色像F1及びF2は、呈色剤としてアルコキシフェノールを添加した加熱発色型可逆熱変色性顔料Fを用いており、60℃で最高発色濃度を呈した後、温度上昇に伴い徐々に濃度が低下し、80℃に達した時には、非熱変色像に比較して加熱発色像F1及びF2は色濃度が低く、バランスの悪い図柄になってしまった。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、特定の加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色像と、加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色像とを共存させる、或いは、特定の加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色層と、加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色層とを積層させた構成であり、加熱或いは冷却手段を適用することにより、多彩な様相変化を発現させる可逆熱変色性表示体を提供できる。とりわけ加熱発色型の可逆熱変色性顔料として没食子酸エステル系熱変色組成物を用いることにより優れた高温発色性と鋭敏な熱変色特性を備えることができ、玩具用途、装飾品用途、印刷物用途等において、変色の妙味、意外性、マジック性、デザインの多様性等を満足させた可逆熱変色性表示体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に適用する、(イ)、(ロ)′、(ハ)三成分系加熱発色型可逆熱変色性組成物の温度−色濃度曲線を示すグラフである。
【図2】本発明に適用する、(イ)、(ロ)′、(ハ)、(ニ)四成分系加熱発色型可逆熱変色性組成物の温度−色濃度曲線を示すグラフである。
【図3】従来のアルコキシフェノール系加熱発色型可逆熱変色性組成物の温度−色濃度曲線を示すグラフである。
【図4】本発明に適用する、(イ)、(ロ)、(ハ)三成分系加熱消色型可逆熱変色性組成物の温度−色濃度曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
 加熱発色型可逆熱変色性組成物の発色開始温度
 加熱発色型可逆熱変色性組成物の完全発色温度
 加熱発色型可逆熱変色性組成物の消色開始温度
 加熱発色型可逆熱変色性組成物の完全消色温度
 加熱発色型可逆熱変色性組成物の高温領域
 加熱消色型可逆熱変色性組成物の消色開始温度
 加熱消色型可逆熱変色性組成物の完全消色温度
 加熱消色型可逆熱変色性組成物の発色開始温度
 加熱消色型可逆熱変色性組成物の完全発色温度

Claims (8)

  1. 消色状態からの加熱により発色し、発色状態からの降温により消色する加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色像と、発色状態からの加熱により消色し、消色状態からの冷却により発色する加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色像とを支持体上に共存させてなる可逆熱変色性表示体において、前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)′没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応を特定温度で可逆的に生起させる、融点50℃未満の、アルコール類、エステル類、ケトン類、及び炭化水素から選ばれる反応媒体を含む必須三成分を少なくとも内包させた、温度−色濃度曲線においてΔH値(ヒステリシス温度幅)が3〜40℃の範囲にあり、平均粒子径0.5〜50μmのマイクロカプセル形態の加熱発色型可逆熱変色性顔料であることを特徴とする可逆熱変色性表示体。
  2. 前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、少なくとも前記(イ)、(ロ)′及び(ハ)三成分をマイクロカプセルに内包させた、温度−色濃度曲線におけるΔH値(ヒステリシス温度幅)が7〜40℃の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の可逆熱変色性表示体。
  3. 前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、少なくとも前記(イ)、(ロ)′、(ハ)三成分と、第四成分として、(ニ)融点50℃以上の単分子化合物又は軟化点70℃以上の高分子化合物から選ばれる化合物をマイクロカプセルに内包させた、温度−色濃度曲線におけるΔH値(ヒステリシス温度幅)が3〜25℃の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の可逆熱変色性表示体。
  4. 支持体上に、前記加熱発色像と加熱消色像が隔して或いは接触して並設された、或いは一部又は全部が積層状態にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性表示体。
  5. 支持体上に、非熱変色像が併設或いは積層されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可逆熱変色性表示体。
  6. 消色状態からの加熱により発色し、発色状態からの降温により消色する加熱発色型可逆熱変色性顔料を含む加熱発色層と、発色状態からの加熱により消色し、消色状態からの冷却により発色する加熱消色型可逆熱変色性顔料を含む加熱消色層とを積層してなる可逆熱変色性表示体であって、前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)′没食子酸エステル類から選ばれる電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応を特定温度で可逆的に生起させる、融点50℃未満の、アルコール類、エステル類、ケトン類、及び炭化水素から選ばれる反応媒体を含む必須三成分を少なくとも内包させた、温度−色濃度曲線においてΔH値(ヒステリシス温度幅)が3〜40℃の範囲にあり、平均粒子径0.5〜50μmのマイクロカプセル形態の加熱発色型可逆熱変色性顔料であることを特徴とする可逆熱変色性表示体。
  7. 前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、少なくとも前記(イ)、(ロ)′及び(ハ)三成分をマイクロカプセルに内包させた、温度−色濃度曲線におけるΔH値(ヒステリシス温度幅)が7〜40℃の範囲にあることを特徴とする請求項6記載の可逆熱変色性表示体。
  8. 前記加熱発色型の可逆熱変色性顔料が、少なくとも前記(イ)、(ロ)′、(ハ)三成分と、第四成分として、(ニ)融点50℃以上の単分子化合物又は軟化点70℃以上の高分子化合物から選ばれる化合物をマイクロカプセルに内包させた、温度−色濃度曲線におけるΔH値(ヒステリシス温度幅)が3〜25℃の範囲にあることを特徴とする請求項6又は7記載の可逆熱変色性表示体。
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