JP2004025303A - コイルセグメント端部の連続溶接方法 - Google Patents

コイルセグメント端部の連続溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】回転電機のセグメントコイル端部での溶接信頼性が向上する連続溶接方法を提供すること。
【解決手段】本発明のコイルセグメント端部の連続溶接方法は、予備工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程を有する。予備工程では、各端部対1に対して、一対の端部11,12のうち少なくとも一部にアークAをとばし、この一部を予備的に溶融する。この予備工程の後、所定時間をおいて、本格溶接工程で各端部対1を本格的にアーク溶接する。予備工程で両端部11,12の間の隙間や段差が緩和されているので、本格溶接工程ではしっかりと両端部11,12が互いに溶接され、コイル端部での溶接信頼性が向上する。
【選択図】 図7

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セグメントコイルをもつ回転電機の製造方法に関する技術分野に属し、より詳しくは、コイルセグメント端部を連続的にアーク溶接する溶接方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術としては、特許文献1に開示されたコイルセグメント端部の連続溶接方法がある。
【0003】
この従来技術では、四層のコイルをもつ固定子のコイルセグメント端部に、楔状治具(カフサ)を外周側から中心に向かって差し込んだうえで、内径側と外径側とからそれぞれの保持具で半径方向にも端部対を押さえつけるようにしている。そして、この状態を保ちつつ、治具と一緒に固定子を回転させて、内周側の端部対と外周側の端部対とをTIG溶接で連続的にアーク溶接がなされる。このようにすれば、各端部対を形成するコイルセグメント端部の位置が周方向に揃い、径方向に互いに密着するので、各端部対での溶接が確実となり、連続溶接で短時間に溶接できながら、溶接部の信頼性をある程度は保つことができる。
【0004】
なお、参考までに、特許文献2〜4にも、コイルセグメント端部の溶接方法ないしその関連技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−350422号公報
【特許文献2】
特開2000−350423号公報
【特許文献3】
特開2000−139049号公報
【特許文献4】
特開2000−350421号公報
【特許文献5】
特開平7−116861号公報
【特許文献6】
特開2002−321068号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の従来技術では、一つのスロットの中に四層を越える多数層のコイルセグメントが挿置されている場合には、最外周に並ぶ端部対と最内周に並ぶ端部対とを除いて、コイルセグメント端部を互いに密着させられる保証がない。
【0007】
たとえば、より具体的に説明すると、ハイブリッドカー用の電動機では、固定子鉄心のスロットに十二層のコイルセグメントを挿置する場合がある。すると、第一層と第二層との端部対と第十一層と第十二層との端部対とでは、コイルセグメント端部が互いに密着して溶接されるので、ある程度は溶接部の信頼性が保たれるであろう。しかし、これら以外の端部対では、コイルセグメント端部が互いに密着するように治具が当たっているわけではないので、溶接部の信頼性が保たれるとは限らない。
【0008】
すなわち、図8(a)に示すように、互いに溶接されるべき端部対1を形成する二つのコイルセグメント端部11,12の間に、ある程度大きな隙間gがある場合には、溶接不良が生じることがある。具体的には、TIG溶接のアークAが溶接電極Eから二つに分かれて飛んでしまい、一方のコイルセグメント端部11の先端と他方のコイルセグメント端部12の先端とが別々に溶けてしまう。すると、図8(b)に示すように、溶融部分Mがそれぞれにできてしまって互いに接合せず、「溶け分かれ」と呼ばれる溶接不良が生じることがある。その結果、両端部11,12が互いに接合されず、導通不良が生じてしまうという不都合があり得る。
【0009】
また、設計上のトレーランスや、コイルセグメントの製造過程およびスロットへの挿置過程で生じる誤差などにより、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部の間に段差が生じる場合がある。
【0010】
すなわち、図9(a)に示すように、コイルセグメントの端部対1のうち、一方の端部12が他方の端部11よりも軸長方向に突出し、両端部11,12の先端面の間にある程度大きな段差sが生じる場合がある。すると、アーク溶接では溶接電極Eに近い方にアークAが飛び易いという性質があるので、突出した一方の端部12の先端だけが加熱されて溶融する。その結果、図9(b)に示すように、一対のコイルセグメント端部11,12のうち突出した一方12の先端にだけ溶融部分Mが形成され、他方11の先端は溶融しないので、両者11,12は互いに溶接されないという不都合が生じうる。
【0011】
したがって、前述の従来技術によっては、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部の間に隙間や段差があると、溶接不良が生じる可能性があるという不都合があった。
【0012】
そればかりではなく、前述の従来技術では、特別な治具を必要としていたので設備コストが余計にかかるうえに、その治具をワークに取付けたり取り外したりするのに時間がかかり、サイクルタイムが長くなると言う不都合もあった。
【0013】
そこで本発明は、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部の間にある程度の隙間や段差があっても溶接不良が生じにくく、端部対溶接の信頼性がより向上するコイルセグメント端部の連続溶接方法を提供することを、解決すべき主たる課題とする。また、前述の従来技術よりも設備コストを低減したりサイクルタイムを短縮することを、望むらくは解決したい課題とする。
【0014】
なお、連続溶接は以前からも行われていたが、ハイブリッドカー用モータなどの回転電機が大型化する一方で、TIG溶接などアーク溶接用装置の大型化が追いつかず、このような不都合を生じるに至った。その一方で、発電所の発電機など超大型の回転電機も以前からあったが、大量生産する必要がないので連続溶接する必要がなく、単発溶接で十分に間に合っていた。このような背景があって、本発明は、比較的大きな回転電機の生産性を向上させる必要を感じてなされたものである。
【0015】
ところで、コイルセグメントは一般的に絶縁皮膜が形成された線材から製造されている。コイルセグメント端部を溶接する時に溶接部近傍に絶縁皮膜が残存したままで溶接を行うと溶接部近傍の絶縁皮膜が劣化することがあった。溶接後に樹脂等により溶接部を被覆しても劣化部分には樹脂の付着性が悪く絶縁性が充分でなかった。絶縁皮膜の劣化は絶縁皮膜に残存する溶媒や水分の急激な蒸発乃至は熱膨張による発泡現象により発生するものと推測し、溶接前に炉に入れて事前加熱を行うことで絶縁皮膜の劣化を抑制することを試みたところ劣化抑制に大きな効果があった。しかしながら、炉による事前加熱は生産性が低く効率的でない。
【0016】
そこで本発明は、絶縁皮膜の劣化を抑制するとともに、生産性の高いコイルセグメント端部の連続溶接方法を提供することも解決すべき課題とする。なお、溶接時に、通電により絶縁皮膜を溶融除去する従来技術としては特許文献5及び特許文献6がある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。
【0018】
(第1手段)
本発明の第1手段は、対をなすコイルセグメント端部を互いに連続溶接することにより、各端部対が適正に接続されたコイル端部を製造する連続溶接工程を有するコイルセグメント端部の連続溶接方法である。この連続溶接工程は、回転電機の固定子および回転子のうちいずれかのセグメント型コイルを形成すべき導電性のセグメントを鉄心の各スロットに挿置した後、これらのセグメントの端部のうち互いに溶接されるべき端部対に溶接電極を近接させてアーク溶接を施し、この溶接電極を次々に隣の端部対に相対移動させることにより連続溶接して、この溶接により各端部対が適正に接続されたコイル端部を製造する工程である。
【0019】
ここで、上記セグメントは、二つのコイル片を連結する連結部をもち、その反対側の二つの開放端が溶接部になっている略U字形のコイルセグメントであっても良い。あるいは、一つのコイル片の両端に溶接部をもつ略I字形のコイルセグメントであっても構わない。
【0020】
本手段の特徴は、前記連続溶接工程が、予備工程と本格溶接工程とをもつことである。ここで、予備工程とは、各前記端部対に対して、一対の端部のうち少なくとも一部にアークをとばし、少なくとも一部を予備的に溶接または溶融する工程のことである。一方、本格溶接工程とは、この予備工程の後、所定時間をおいて、各前記端部対を本格的にアーク溶接する工程のことである。
【0021】
本手段では、予備工程で、溶接されるべき一対のコイルセグメント端部からなる端部対に対して、一対の端部のうち少なくとも一部に溶接電極からアークが飛び、その部分が溶融して溶融金属塊を形成する。しかる後、所定時間をおいて、本格溶接工程で、両端部に本格的なアーク溶接がなされ、両端部は共通の溶融金属塊を形成して互いに溶接されるに至る。
【0022】
すなわち、両コイルセグメント端部の間に隙間がある場合には、予備工程で、両端部の先端がそれぞれに溶けて溶融金属塊を形成し、この金属塊が周囲に張り出す。すると、張り出した金属塊の間の距離はもとの両端部間の隙間よりも小さくなってしまう。この状態で、本格溶接工程が行われると、両端部の先端に形成された金属塊は再び溶融し、互いにくっついて一つの溶融金属塊を形成するに至る。そしてこの溶融金属塊が冷えて固まれば、両端部間には隙間があっても、両端部の先端部は互いにしっかりと溶接されて接合され、両コイルセグメント端部はしっかりと接続されるに至る。
【0023】
また、端部対を形成する両コイルセグメント端部の先端面の間に段差がある場合には、予備工程で、突出した方の端部の先端部にだけアークが飛び、同先端部だけが溶けて幾分周囲に張り出した溶融金属塊を形成する。すると、この金属塊が周囲に張り出している容積の分だけこの金属塊の軸長方向の寸法が縮まり、突出した方の端部の背丈が低くなる。その一方で、他方(突出していない方)の端部にはアークが飛ばないから、他方の端部の背丈は縮まらない。それゆえ、予備工程が終わると、互いに溶接されるべき一対の端部の間での段差が縮まる。この状態で本格溶接工程が行われると、両端部間の段差はほとんどなくなっているから、両端部の先端部が一緒に溶融して一つの大きな溶融金属塊を形成するに至る。そしてこの溶融金属塊が冷えて固まれば、両端部の先端部は互いにしっかりと溶接され、両コイルセグメント端部はしっかりと接続されるに至る。
【0024】
さらに、両コイルセグメント端部の間に隙間があり、さらに両端部の先端面の間に段差がある場合もあり得るであろう。この場合には、やはり予備工程で、突出した方の端部の先端部にだけアークが飛び、その先端部だけが溶けて周囲に張り出した溶融金属塊を形成する。すると、この金属塊が周囲に張り出している容積の分だけこの金属塊の軸長方向の寸法が縮まり、突出した方の端部の背丈が低くなって、互いに溶接されるべき一対の端部の間での段差が縮まる。また、この金属塊が周囲に張り出している分だけ、張り出した金属塊と他方の端部の先端部との間の距離は、もとの両端部間の隙間よりも小さくなっている。この状態で本格溶接工程が行われると、両端部間の段差はほとんどなくなっているうえに隙間も小さくなっているから、両端部の先端部が一緒に溶融して一つの大きな溶融金属塊を形成するに至る。そしてこの溶融金属塊が冷えて固まれば、両端部の先端部は互いにしっかりと溶接され、両コイルセグメント端部はしっかりと接続されるに至る。
【0025】
逆に、両コイルセグメントの間に隙間も段差もない場合には、両端部の先端は予備工程で溶接されたうえに、本格溶接工程ではさらに深く溶接され、やはり両コイルセグメント端部はしっかりと接続される。
【0026】
その結果、いずれの場合にも、両コイルセグメント端部は互いに溶接され、しっかりと接続されて、全体としてコイル端部で溶接不良がないセグメント型コイルを形成するに至る。
【0027】
したがって本手段によれば、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部の間に、ある程度の隙間や段差があっても溶接不良が生じにくく、溶接の信頼性がより向上するという効果がある。また、前述の従来技術と異なって特殊な治具を必要としないので、その分だけ設備コストを低減することができ、治具の着脱に要するサイクルタイムを短縮することができるという効果がある。
【0028】
(第2手段及び第3手段)
本発明の第2手段は、前述の第1手段における前記本格溶接工程の前に、各前記端部対に対して、前記一対の端部のうち少なくとも一部にアークをとばし、該端部対の近傍を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする。
【0029】
本発明の第3手段は、前述の第1手段における前記予備工程に代えて、各前記端部対に対して、前記一対の端部のうち少なくとも一部にアークをとばし、該端部対の近傍を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする。ここで、「端部対の近傍」とは、コイルセグメントの溶接される部分である端部対の近くであり、本格溶接工程において絶縁皮膜の温度が、残存する溶媒や水分を蒸発乃至は熱膨張させて絶縁皮膜を発泡させる程度にまで加熱される範囲である。この範囲は絶縁皮膜に残存する溶媒や水分の量、溶媒の種類、絶縁皮膜の種類等によって変化する。
【0030】
つまり、アークの出力を本格溶接工程よりも小さくすることで、コイルセグメントの端部対を溶融しないことは勿論、端部対近傍の絶縁皮膜も溶融除去させることなく絶縁皮膜中に残存する溶媒や水分を除去している。従って、乾燥工程における加熱の結果、端部対の近傍における絶縁皮膜の温度は絶縁皮膜に含まれる樹脂の融点には達しないことが好ましい。残存溶媒・水分の量等にもよるが、残存溶媒・水分の蒸発により溶融した端部対の近傍における絶縁皮膜が発泡し絶縁皮膜が劣化する虞があるからである。なお、溶接される部位である「端部対」そのものについては特に温度の上限を制限することは必須でない。また、乾燥工程は予備工程の前後を問わないが、予備工程の前であることが好ましい。
【0031】
すなわち、本手段では、乾燥工程において、アークにより端部対の近傍を加熱することにより、絶縁皮膜に残存する溶媒や水分を穏やかに除去している。後の本格溶接工程において蒸発乃至は熱膨張の元となる絶縁皮膜中に残存する溶媒や水分を予め除去することで絶縁皮膜の劣化が抑制できる。
【0032】
従って第2手段及び第3手段によれば、連続溶接工程において溶接される部分の絶縁皮膜に残存する溶媒や水分を穏和に除去できるので端部対の近傍における絶縁皮膜の劣化を抑制できる効果があり、第2手段によれば更に前述の第1手段の効果を有する。
【0033】
(第4手段)
本発明の第4手段は、前述の第1手段乃至は第3手段において、前記予備工程及び/又は乾燥工程は、前記本格溶接工程よりも溶接電流および溶接時間のうち少なくとも一方が短小な工程であることを特徴とする。
【0034】
本手段では、前述のように、予備工程で、端部対のうち突出している方の先端部を加熱溶融して突出高さを低めたり、隙間の空いた両端部の先端部を加熱溶融して隙間を狭めたり、乾燥工程において絶縁皮膜に残存する溶媒や水分を除去している。このような予備工程や乾燥工程の作用を、「予備処理」と呼ぶことにする。それゆえ、本格的な溶接は後の本格溶接工程で行われ、予備工程や乾燥工程では行われないから、予備工程や乾燥工程では溶接強度は要求されず、十分な接合深さにまで両端部の先端部を加熱溶融する必要がない。すると、予備工程や乾燥工程には本格溶接工程ほどの熱出力が要求されないから、本格溶接工程でよりも予備工程や乾燥工程での方が、溶接電流が小さくて済ませられるか、溶接時間を短くできるか、あるいはその両方かである。
【0035】
なお、所定距離が開いた溶接電極と両端部との間に確実にアークをとばすためには、両者の間にかける溶接電圧は余り変化させない方がよい。また、溶接電圧を変更するには、溶接電源装置の設定を変えたりする手間や設備が必要になるから、設備投資の面でも溶接電圧は予備工程や乾燥工程と本格溶接工程との間で変更しない方がよい。ただし、変更してはいけないということではない。
【0036】
逆に言うと、前述のように、予備工程や乾燥工程には本格溶接工程ほどにはアーク溶接時の熱出力が要求されない。それゆえ、本格溶接工程でよりも予備工程や乾燥工程での方が、溶接電流が小さくて済ませられるか、溶接時間を短くできるか、あるいはその両方かである。その結果、予備工程や乾燥工程では、本格溶接工程でよりも溶接電流および溶接時間のうち少なくとも一方がいくらか短小であっても、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部を十分に予備処理することができる。
【0037】
すなわち、本手段では、本格溶接工程と比較して予備工程や乾燥工程で溶接電流および溶接時間のうちいずれが短小な場合であっても、予備工程や乾燥工程でも本格溶接工程と同じ時間だけ同様の大電流を流す場合に比べて、電力が節約される。それでいながら、前述のように、コイルセグメントの端部対に十分な予備処理を施すことができる。
【0038】
したがって本手段によれば、前述の第1手段乃至は第3手段の効果に加えて、予備工程や乾燥工程で消費される電力が低減されるので、コストダウンの効果がある。
【0039】
(第5手段)
本発明の第5手段は、前述の第1手段、第2手段又は第4手段において、前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であることを前提とする。そして本手段の特徴は、前記予備工程は、前記溶接電極を用いて一周目に行われる工程であり、前記本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極を用いて二周目以降に行われる工程であることである。
【0040】
通常、溶接されるべき一対のコイルセグメント端部は、半径方向に重ねられ、溶接されるべき接合面は周方向に延在する。それゆえ、接合面に沿ってアーク溶接を施すには、周方向に溶接電極を相対移動して溶接が行われる。そして、連続溶接をするために、溶接電極に電圧を印加したまま溶接電極を相対移動する際にも、周方向に相対移動するのが最も合理的である。ここで、溶接電極を端部対に対して相対移動させることとしたが、実際には溶接電極を固定しておき、ワーク(コイルセグメントをスロットに保持した鉄心)の方を、軸心回りに回転移動させるのが合理的であって普通に行われている。
【0041】
本手段では、前提として、予備工程も本格溶接工程も、周方向に連続溶接されるので、溶接電極を固定しておいてワークを軸心回りに回転させるだけで済み、溶接電極とワークとの相対移動が最も合理的な経路で行われる。そのうえ、予備工程は、溶接電極を用いて一周目に行われる工程であり、本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極を用いて二周目以降に行われる工程である。それゆえ、予備工程から本格溶接工程に移行する際にも、溶接電極を交換する必要がないばかりか、溶接電極を移動させる必要さえもなく、一本の溶接電極を固定したままで予備工程および本格溶接工程を完了することができる。
【0042】
その結果、複数の溶接電極が必要とされず、溶接電極が一種類で済むので、設備コストの高騰を避けることができる。そのうえ、溶接電極が一種類で済む条件下では、溶接電極の相対移動経路が最も合理的であるから、サイクルタイムも最短である。
【0043】
したがって本手段によれば、前述の第1手段、第2手段又は第4手段の効果に加えて、設備コストの高騰を避けることができ、その範囲でサイクルタイムも最短で済むという効果がある。
【0044】
(第6手段)
本発明の第6手段は、前述の第1手段、第2手段又は第4手段において、前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であることを前提とする。そして本手段の特徴は、前記本格溶接工程は、前記予備工程で用いた前記溶接電極(予備溶接電極)とは別個の溶接電極(本格溶接電極)を用いて、前記予備溶接電極の位置とは周方向に異なる位置にこの本格溶接電極を配置して行われる工程であることである。
【0045】
ここで、予備溶接電極と本格溶接電極とは周方向に異なる位置に配置されるが、必ずしも角度位置が互いに180°離れた対局位置に両者を配置する必要はない。すなわち、予備工程での予備処理と本格溶接工程での溶接との関係を勘案して最も効果的な位置に両者を配設すればよい。
【0046】
本手段では、予備溶接電極と本格溶接電極とが別個であるから、両者の大きさや形状をそれぞれの工程に最適に変えておくことが容易であるばかりではなく、両者の電源装置もそれぞれ別個に用意することができる。それゆえ、両溶接電極の間で、印加電圧の設定や溶接電流の設定を変えておくことが容易になり、両溶接電極には、それぞれ最適な大きさの印加電圧をかけて最適な量の溶接電極を流すことも容易になる。
【0047】
そして、前述の第5手段とは異なり、本格溶接工程を施す端部対が予備工程を施す端部対よりも一周も遅れることなく追随し、一周のうち少なくとも一部は両工程が並行して行われる。それゆえ、前述の第5手段よりも一周分の連続溶接が素早く行われ、コイル端部の全体についても連続溶接のサイクルタイムがいっそう短縮されるという効果がある。
【0048】
したがって本手段によれば、前述の第1手段、第2手段又は第4手段の効果に加えて、予備工程および本格溶接工程のそれぞれに最適の大きさと形状の溶接電極を使うことができるという効果がある。また、それぞれの溶接電極に最適な大きさの印加電圧をかけて最適な量の溶接電流を流すことができるようになるという効果がある。さらに、前述の第5手段よりもサイクルタイムがいっそう短縮されるという効果がある。
【0049】
(第7手段)
本発明の第7手段は、前述の第2手段乃至は第4手段において、前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であることを前提とする。そして本手段の特徴は、前記乾燥工程は、前記溶接電極を用いて一周目に行われる工程であり、前記本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極を用いて二周目以降に行われる工程であることである。すなわち、本手段は前述の第5手段において予備工程を乾燥工程に代えたものである。
【0050】
したがって本手段によれば、前述の第2手段乃至は第4手段の効果に加えて、前述の第5手段での説明と同様の原理で、設備コストの高騰を避けることができ、その範囲でサイクルタイムも最短で済むという効果がある。
【0051】
(第8手段)
本発明の第8手段は、前述の第2手段乃至は第4手段又は第6手段において、前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であることを前提とする。そして本手段の特徴は、前記本格溶接工程は、前記乾燥工程で用いた前記溶接電極(乾燥電極)とは別個の溶接電極(本格溶接電極)を用いて、前記乾燥電極の位置とは周方向に異なる位置にこの本格溶接電極を配置して行われる工程であることである。すなわち、本手段は前述の第6手段において予備工程を乾燥工程に代えたものである。
【0052】
したがって本手段によれば、前述の第2手段乃至は第4手段又は第6手段の効果に加えて、乾燥工程及び本格溶接工程のそれぞれに最適の大きさと形状の溶接電極を使うことができるという効果がある。また、それぞれの溶接電極に最適な大きさの印加電圧をかけて最適な量の溶接電流を流すことができるようになるという効果がある。さらに、前述の第7手段よりもサイクルタイムがいっそう短縮されるという効果がある。
【0053】
【発明の実施の形態】
本発明の「コイルセグメント端部の連続溶接方法」が取りうる好ましい実施形態については、当業者に実施可能な理解が得られるように、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。
【0054】
[実施例1]
(実施例1の構成)
図1に、図示しない固定子鉄心のスロットに収容されており、互いに溶接されるべき二層一対のコイルセグメント端部11,12だけを展開して示す。なお、同図では、一方の端部11は他方の端部12の蔭に隠れている。
【0055】
このように、本発明の実施例1は、対をなすコイルセグメント端部11,12を互いに連続溶接することにより、各端部対1が適正に接続されたコイル端部を製造する連続溶接工程を有するコイルセグメント端部の連続溶接方法である。具体的には、この連続溶接工程は、回転電機としてのハイブリッドカー用モータの固定子を製造する工程の一部であり、本実施例は、同モータの固定子を製造する方法の一部である。
【0056】
ここで、同モータは、固定子の直径が300mm程度の大きさをしており、三相交流八極型モータである。その固定子コイルはセグメント型コイルであって、同コイルを形成するコイルセグメントの端部対1は、加工時の公差などによって両端部11,12の間に不都合な段差や隙間を生じうる。発明者が試作したところによれば、両端部11,12の先端面の間で生じうる段差は最大でも0.5mm程度であり、両端部11,12の間に生じうる隙間は、最大でも0.4mm程度までであった。
【0057】
この連続溶接工程は、同モータの固定子にセグメント型コイルを形成すべき導電性のセグメントを十二層分だけ鉄心の各スロットに挿置した後に行われる。すなわち、この連続溶接工程は、これらのセグメントの端部11,12のうち互いに溶接されるべき端部対1に溶接電極Eを近接させてアーク溶接を施し、溶接電極Eを次々に隣の端部対1に相対移動させることにより連続溶接して、この溶接により各端部対1が適正に接続されたコイル端部を製造する工程である。なお、アーク溶接としては、溶接部の仕上がり品質が高く、高い信頼性の得られるTIG溶接を施す。
【0058】
そして、連続溶接工程では、電源装置によって、予備溶接電極Eに所定の大きさの電圧が印加された状態が保たれ、アークAは予備溶接電極Eに接近した端部対1に対してのみ飛ぶ。
【0059】
ここで、上記コイルセグメントは、二つのコイル片を連結する連結部をもち、その反対側の二つの開放端が溶接部になっている略U字形のコイルセグメントである。そして、図1とは反対側のコイル端部(図略)では、十二層のコイル片が前述の連結部によって適正に接続されている。
【0060】
本実施例の特徴は、連続溶接工程が、予備工程と本格溶接工程との二段階の工程をもつことである。この連続溶接工程は、再び図1に示すように、周方向に並んだ端部対1のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であり、同一の溶接電極Eを用いて同一の端部対1に対して二周して行われる。この二周のうち、一周目で予備工程が行われ、二周目で本格溶接工程が行われる。
【0061】
ここで、予備工程とは、各端部対1に対して、一対の端部11,12のうち少なくとも一部にアークをとばし、少なくとも一部を予備的に溶接または溶融する工程のことである。予備工程は、溶接電極Eを用いて一周目に行われる工程であり、本格溶接工程よりも溶接電流が弱い工程である。予備工程での溶接電流は、具体的には120A程度に設定されている。
【0062】
一方、本格溶接工程とは、この予備工程の後、所定時間をおいて、各端部対1を本格的にアーク溶接する工程のことであり、一周目の予備工程と同一の溶接電極Eを用いて二周目に行われる工程である。本格溶接工程での溶接電流は、定格にほぼ近い150A程度に設定されており、前述の予備工程での溶接電流よりもやや大きい。
【0063】
すなわち、二周目の本格溶接工程では、TIG溶接設備の溶接電極Eおよび電源装置がもつ定格電流に準ずる程度の比較的大きな電流が流れるように、電源装置が設定されている。その一方、遡って一周目の予備工程では、定格電流よりも適度に小さく制限された比較的弱い電流しか流れないように、電源装置が設定されている。
【0064】
(本実施例の自動装置)
なお、本実施例としてのコイルセグメント端部の連続溶接方法を行う自動装置(図略)は、次のような構成要素からなる。
【0065】
すなわち、本実施例で用いる連続溶接装置は、回転台座を含む治具一式と、TIG溶接の溶接電極Eを含む溶接器具と、同溶接器具を所定位置に保持するロボットアームと、同溶接器具に不活性ガスを送るガス供給装置と、溶接電極Eに電力を供給する電源装置などと、これらを統合制御する制御装置とからなる。治具一式は、コイルセグメントをスロットに保持した固定子鉄心を回転可能に保持する回転台座と、固定子鉄心から突出したコイルセグメント端部11,12の根本部の間に差し込まれアースされた多数のカフサと、この回転台座およびこれらのカフサを一体的に所定角度に回転移動させる回転駆動装置などとからなる。
【0066】
このような構成の自動装置は、次のように作用する。
【0067】
すなわち、コイルセグメントを保持した固定子鉄心は、回転台座およびその回転駆動装置により、制御装置に予めプログラムされた通りにゆっくりと回転させられ、二回転する。前述のように、この二回転のうち一回転目に比較的弱い電流で予備工程が行われ、二回転目に本格溶接工程が行われる。この間、ロボットアームは、対になったコイルセグメント端部11,12の接合面の延長面内に所定距離を置いた適正な位置に、所定の姿勢で溶接器具を固定している。
【0068】
こうして、固定子鉄心が二回転し、予備工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程が、コイルセグメント端部11,12の一周分だけ完了する。すると、ロボットアームは、固定子鉄心のスロット内の別の層に挿置された次の対をなすコイルセグメント端部11,12を溶接するように、固定子鉄心の半径方向に溶接器具を移動させる。そして、電源装置は、自動装置に予め設定された値に従って、その層の端部対1に最適な電流の設定に切替えられ、次の連続溶接工程に入る。
【0069】
このような作用を繰り返し、固定子一つ分のコイルセグメント端部の連続溶接が完了したならば、最後に三相交流の電力線と接続するコイル引き出し部のTIG溶接も自動的に行われ、固定子コイルは完成する。すると、カフサなど治具一式の固定が外され、別の搬入搬出装置によってワーク(コイルセグメントをスロットとに保持した固定子鉄心)の交換が行われる。こうして、次々に固定子のコイルセグメントが端部で結線され、その結果、自動的に固定子のセグメント型コイルが製造されていく。
【0070】
(実施例1の作用)
本実施例としての「コイルセグメント端部の連続溶接方法」は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
【0071】
すなわち、本実施例では、再び図1に示すように、固定子(ステータ)が二周分回転するうちに、予備工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程をもつコイルセグメント端部の連続溶接方法が施される。
【0072】
先ず、予備工程では、図3(a)などに示すように、溶接されるべき一対のコイルセグメント端部11,12からなる端部対1に対して、TIG溶接用の溶接電極Eから高圧電流が流される。すると、一対の端部11,12のうち少なくとも一部に溶接電極EからアークAが飛び、その部分が溶融して溶融金属塊Mを形成する。しかる後、所定時間をおいて、本格溶接工程では、図3(b)などに示すように、両端部11,12に本格的なアーク溶接がなされ、両端部11,12は共通の溶融金属塊Mを形成して互いに溶接されるに至る。
【0073】
さて、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部11,12は、溶接直前の状態では、次の四つの状態のうちいずれかの場合に当てはまるであろう。すなわち、第一に両端部11,12の間に所定の許容範囲内の隙間gが開いている場合(図2参照)と、第二に両端部11,12の先端面の間に許容範囲内の段差sがある場合(図4参照)と、第三に隙間gと段差sとの両方がある場合(図6参照)と、そして第四に隙間gも段差sもない場合(図略)とのうちいずれかの状態を、両端部11,12は取りうる。
【0074】
第一に、図2に示すように、両コイルセグメント端部11,12の間に隙間gがある場合について説明する。
【0075】
この場合には、予備工程で、図3(a)に示すように、両端部11,12の先端がそれぞれに溶けて二つの溶融金属塊Mを形成し、これらの金属塊Mが周囲に張り出す。すなわち、溶融金属塊Mは、重力と表面張力との釣り合いにより、上下方向につぶれて水平方向に突出した液滴状ないし略楕円球状の固まりを形成する。すると、水平方向に張り出した二つの金属塊Mの間に残った距離g’は、もとの両端部11,12の間の隙間gよりもずっと小さくなってしまう。あるいは、二つの溶融金属塊Mが互いにくっついてしまうこともあり得る。
【0076】
この状態で、本格溶接工程が行われると、図3(b)に示すように、両端部11,12の先端に形成された金属塊は、予熱されているので容易に再び溶融し、互いにくっついて一つにつながった大きな溶融金属塊Mを形成するに至る。そして大きな溶融金属塊Mが一体のまま冷えて固まって、高い電気伝導度をもつ大きな溶接部分を形成する。その結果、両端部11,12の間には隙間gがあっても、両端部11,12の先端部は、大きな溶融金属塊Mで互いにしっかりと溶接されて接合され、両コイルセグメント端部11,12は電気的にもしっかりと接続されるに至る。
【0077】
第二に、図4に示すように、端部対1を形成する両コイルセグメント端部11,12の先端面の間に段差sがある場合について説明する。
【0078】
この場合には、予備工程で、図5(a)に示すように、電界強度が強い突出した方の端部11の先端部にだけ溶接電極EからアークAが飛び、同先端部だけが溶けて幾分周囲に張り出した溶融金属塊Mを形成する。すると、金属塊Mが周囲に張り出している容積の分だけこの金属塊Mの軸長方向の寸法が縮まり、突出した方の端部11の背丈が低くなる。その一方で、電界強度が比較的低い他方(突出していない方)の端部12には、溶接電極EからアークAが飛ばず、他方の端部12の背丈は縮まらない。それゆえ、予備工程が終わると、同じく図5(a)に示すように、互いに溶接されるべき一対の端部11,12の間での段差が、元の段差sよりも小さな段差s’に縮まる。
【0079】
この状態で本格溶接工程が行われると、予備工程で両端部11,12の間の段差はほとんどなくなっているから、図5(b)に示すように、両端部11,12の先端部が一緒に溶融して一つの大きな溶融金属塊Mを形成する。そして、この溶融金属塊Mが冷えて固まれば、両端部11,12の先端部は互いにしっかりと溶接され、両コイルセグメント端部11,12は、互いにしっかりと接続されるに至る。
【0080】
第三に、図6に示すように、両コイルセグメント端部11,12の間に隙間gがあり、さらに両端部11,12の先端面の間に段差sがある場合について説明する。
【0081】
この場合には、やはり予備工程で、図7(a)に示すように、突出した方の端部11の先端部にだけアークAが飛び、その先端部だけが溶けて周囲に張り出した溶融金属塊Mを形成する。すると、この金属塊Mが周囲に張り出している容積の分だけ金属塊Mの軸長方向の寸法が縮まり、突出した方の端部11の背丈が低くなって、互いに溶接されるべき一対の端部11,12の間での段差が縮まる。また、この金属塊Mが周囲に張り出している分だけ、張り出した金属塊Mと他方の端部12の先端部との間の距離は、もとの両端部間の隙間gよりも小さくなっているか、あるいはなくなってしまっている。
【0082】
この状態では、前述のように、両端部11,12の先端の間で、段差はほとんどなくなっているうえに、隙間もほとんどなくなっている。それゆえ、この状態で本格溶接工程が行われると、図7(b)に示すように、両端部11,12の先端部が一緒に溶融して一つの大きな溶融金属塊Mを形成する。そして、この溶融金属塊Mが冷えて固まれば、両端部11,12の先端部は互いにしっかりと溶接され、両コイルセグメント端部11,12は電気的にもしっかりと接続されるに至る。
【0083】
第四に、両コイルセグメント端部11,12の間に隙間も段差もない場合(図略)について説明する。この場合には、理想的な状態であるから、両端部11,12の先端は、予備工程で溶接されたうえに、本格溶接工程ではさらに深く広く溶接され、やはり両コイルセグメント端部11,12は、電気的にもしっかりと接続される。
【0084】
その結果、いずれの場合にも、両コイルセグメント端部11,12は互いに溶接され、電気的にもしっかりと接続されて、全体としてコイル端部11,12で溶接不良がないセグメント型コイルを形成するに至る。
【0085】
なお、本実施例では、前述のように、予備工程でも本格溶接工程でも、周方向に連続溶接が施される。それゆえ、溶接電極Eを固定しておいてワーク(コイルセグメント端部11,12の円環状行列)を軸心回りに回転させるだけで済み、溶接電極Eとワークとの相対移動が最も合理的な経路で行われる。そのうえ、予備工程は、溶接電極Eを用いて一周目に行われる工程であり、本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極Eを用いて二周目に行われる工程である。
【0086】
それゆえ、予備工程から本格溶接工程に移行する際にも、溶接電極Eを交換する必要がないばかりか、溶接電極Eを移動させる必要さえもない。その結果、一本の溶接電極Eを固定したままで、予備工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程を完了することができる。
【0087】
その結果、本実施例では、複数の溶接電極が必要とされず、溶接電極Eが一種類で済むので、設備コストの高騰を避けることができる。そのうえ、溶接電極Eが一種類で済む条件下では、溶接電極Eの相対移動経路が最も合理的であるから、その意味ではサイクルタイムが最短であると考えられる。
【0088】
また、本実施例では、前述のように、予備工程で、段差sのある端部対11,12のうち突出している方の先端部を加熱溶融して突出高さを低めたり、隙間gの空いた両端部11,12の先端部を加熱溶融して隙間を狭めたりしている。このような予備処理とは異なり、両端部11,12の本格的な溶接は後の本格溶接工程で行われる。
【0089】
それゆえ、本格的な溶接は予備工程では行われないから、予備工程では溶接強度は要求されず、十分な接合深さにまで両端部の先端部を加熱溶融する必要がない。すると、予備工程には本格溶接工程ほど強力なアークAによる熱出力が要求されないから、本格溶接工程でよりも予備工程での方が、溶接電流がやや小さくて済んでいる。
【0090】
逆に言うと、前述のように、予備工程には本格溶接工程ほどにはアーク溶接時の熱出力が要求されていない。それゆえ、本格溶接工程でよりも予備工程での方が、溶接電流がやや小さくて済んでいる。その結果、予備工程では、本格溶接工程でより小さい溶接電流であっても、互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部11,12を十分に予備処理することができる。
【0091】
すなわち、本格溶接工程と比較して予備工程で溶接電流が小さくても、予備工程でも本格溶接工程と同様の大電流を流す場合に比べて、電力がいくらかは節約される。それでいながら、前述のように、コイルセグメントの端部対1に十分な予備処理を施すことができる。
【0092】
(実施例1の効果)
本実施例では以上のような作用が得られるので、本実施例によれば次のような効果がある。
【0093】
第一に、コイル端部でのTIG溶接の信頼性が向上するという主要な効果がある。すなわち、多層のコイルセグメントであって、さらに互いに溶接されるべき一対のコイルセグメント端部11,12の間にある程度の隙間gや段差sがあっても、TIG溶接部に溶接不良が生じにくく、溶接の信頼性が向上するという効果がある。
【0094】
たとえば、固定子鉄心のスロットに挿置されたコイル片は十二層もあっても全く問題はない。また、両端部11,12の間にある程度の隙間gや段差sがあってもよい。そして、具体的な数字を例示するならば、極めて大きな隙間gと極めて大きな段差sとが同時に生じた場合にのみ溶接不良が起こるものとし、それぞれが生じる確率を千分の一と仮定すると、溶接不良の起こる確率はわずか百万分の一に低減される。
【0095】
第二に、コストダウンや工数短縮という付随的な効果もある。すなわち、本実施例では、前述の従来技術と異なって特殊な治具とその着脱装置とが不要になるから、設備コストの高騰を避けることができる。また、治具の着脱に要するサイクルタイムを短縮することができ、その範囲でサイクルタイムも最短で済むという効果がある。
【0096】
(実施例1の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、予備工程と本格溶接工程とで溶接電流の設定値を変えず、代わりに予備工程は本格溶接工程よりも溶接時間が短い工程である、コイルセグメント端部の連続溶接方法を実施することも可能である。
【0097】
本変形態様では、予備工程で、短時間ではあっても溶接電極Eから十分に強力なアークAを端部対1のうち少なくとも一部に飛ばし、前述の実施例1と同様に端部対1に予備処理を行っている。すなわち、端部対1を形成する両端部11,12のうち突出している方の先端部を加熱溶融して突出高さを低めたり(図5(a)参照)、隙間gの空いた両端部11,12の先端部を加熱溶融して隙間を狭めたり(図3(a)参照)している。
【0098】
このような予備処理は予備工程で行われ、本格的な溶接は後の本格溶接工程で行われる。それゆえ、予備工程では溶接強度は要求されず、十分な接合深さにまで両端部11,12の先端部を加熱溶融する必要がない。逆に言うと、予備工程には本格溶接工程ほどにはアークAの熱出力が要求されないから、本変形態様のように溶接電流が同じ設定であれば、本格溶接工程でよりも予備工程での方が、溶接時間が短くて済んでしまう。
【0099】
すなわち、本変形態様では、本格溶接工程と比較して予備工程での溶接時間が短いので、予備工程で連続溶接を端部対1に施しつつワークが一周するサイクルタイムは短縮される。
【0100】
したがって本変形態様によれば、前述の実施例1と同様の作用効果が得られるうえに、前述の実施例1に比べて、連続溶接工程全体としてもサイクルタイムが短縮されるという効果がある。
【0101】
[実施例2]
(実施例2の構成)
本発明の実施例2としてのコイルセグメント端部の連続溶接方法(図略)は、連続溶接工程が、端部対1のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であることを前提とする。そして本実施例の特徴は、本格溶接工程が、予備工程で用いた溶接電極E(予備溶接電極)とは別個の溶接電極(本格溶接電極)を用いて、予備溶接電極Eの位置とは周方向に異なる位置にこの本格溶接電極を配置して行われる工程であることである。
【0102】
すなわち、予備工程でTIG溶接に用いられる予備溶接電極Eと、本格溶接工程で用いられる本格溶接電極(図略)とは、別個のものである。ここで、予備溶接電極Eは、定格電流よりも小さな溶接電流でアークをとばすので、ほぼ定格通りの大きな溶接電流を流す本格溶接電極よりもやや小さく作られている。また、予備溶接電極Eにやや弱い電力を供給する電源装置と、本格溶接電極に強力な電力を供給する電源装置とは、互いに独立した別個のものである。
【0103】
そして、予備溶接電極Eと本格溶接電極とは周方向に異なる位置に配置されており、本実施例としては、本格溶接電極は、予備溶接電極Eよりも90°遅れた角度位置に配置されている。すなわち、任意の一対のコイルセグメント端部11,12からなる端部対1には、先ず、予備溶接電極Eにより予備工程が行われて予備処理が施される。しかる後、この端部対1には、固定子鉄心の回転角度にして90°だけ遅れて、本格溶接電極により本格溶接工程が行われてしっかりと溶接される。
【0104】
(実施例2の作用効果)
本実施例では、前述のように、予備溶接電極Eと本格溶接電極とが別個であるから、両者の大きさや形状をそれぞれの工程に最適に設定されており、さらに両者の電源装置もそれぞれ別個に用意されている。それゆえ、両溶接電極の間で、印加電圧の設定や溶接電流の設定を最適に変えておくことができ、両溶接電極には、それぞれに最適な大きさの印加電圧を印加して、それぞれに最適な大きさの溶接電極が流される。
【0105】
そして、前述の実施例1とは異なり、本格溶接工程を施す端部対1が予備工程を施す端部対1よりも一周も遅れることなく追随し、一周のうち270°分の回転角度範囲では、予備工程と本格溶接工程とが並行して行われる。それゆえ、前述の実施例1よりも一周分の連続溶接が素早く行われ、コイル端部の全体についても連続溶接のサイクルタイムがいっそう短縮されるという効果がある。具体的には、本実施例で予備工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程にかかるサイクルタイムは、実施例1のサイクルタイムの(360°+90°)/(360°×2)=0.625であり、三分の一以上短縮されることになる。
【0106】
したがって本実施例によれば、前述の実施例1の効果に加えて、予備工程および本格溶接工程のそれぞれに最適の大きさと形状の溶接電極を使うことができるという効果がある。その結果、それぞれの溶接電極に最適な大きさの印加電圧をかけて最適な量の溶接電極を流すことができるようになるので、TIG溶接の品質がよりいっそう向上するという効果が得られる。また、サイクルタイムが大幅に短縮されるという効果もある。さらに、予備工程で生じた溶融金属塊Mがあまり冷えないうちに重ねて本格溶接工程が行われるので、両端部11,12がより深く強力に溶接されるという効果もある。
【0107】
(実施例2の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、予備工程で生じた溶融金属塊Mの温度管理などの理由で、予備溶接電極Eに対する本格溶接電極の角度位置を変更したコイルセグメント端部の連続溶接方法を実施することができる。
【0108】
たとえば、予備工程の直後に本格溶接工程を行った方が良好な溶接品質が得られるのであれば、予備溶接電極Eに対する本格溶接電極の角度位置遅れを30°程度にしても良い。こうすれば、サイクルタイムがさらに短縮されるという効果も付随して得られる。
【0109】
逆に、予備工程の後、なるべく時間をおいて溶融金属塊Mが十分に冷えてから本格溶接工程を行う方が良ければ、予備溶接電極Eに対する本格溶接電極の角度位置遅れを180°や270°などに大きくとっても良い。その結果、サイクルタイムの短縮率は減っても、より良好な溶接部の品質管理ができるのであれば、所望の目的は達せられたものとすべきである。
【0110】
[実施例3]
(実施例3の構成)
図10に、図示しない固定子鉄心のスロットに収容されており、互いに溶接されるべき二層一対のコイルセグメント端部11’,12’だけを展開して示す。なお、同図では、一方の端部11’は他方の端部12’の蔭に隠れている。つまり、図10は図1とほぼ同様である。
【0111】
このように、本発明の実施例3は、対をなすコイルセグメント端部11’,12’を互いに連続溶接することにより、各端部対1’が適正に接続されたコイル端部を製造する連続溶接工程を有するコイルセグメント端部の連続溶接方法である。具体的には、この連続溶接工程は、回転電機としてのハイブリッドカー用モータの固定子を製造する工程の一部であり、本実施例は、同モータの固定子を製造する方法の一部である。
【0112】
ここで、同モータは、固定子の直径が300mm程度の大きさをしており、三相交流八極型モータである。その固定子コイルはセグメント型コイルである。
【0113】
この連続溶接工程は、同モータの固定子にセグメント型コイルを形成すべき導電性のセグメントを十二層分だけ鉄心の各スロットに挿置した後に行われる。すなわち、この連続溶接工程は、これらのセグメントの端部11’,12’のうち互いに溶接されるべき端部対1’に溶接電極Eを近接させてアーク溶接を施し、溶接電極Eを次々に隣の端部対1’に相対移動させることにより連続溶接して、この溶接により各端部対1’が適正に接続されたコイル端部を製造する工程である。なお、アーク溶接としては、溶接部の仕上がり品質が高く、高い信頼性の得られるTIG溶接を施す。
【0114】
そして、連続溶接工程では、電源装置によって、溶接電極Eに所定の大きさの電圧が印加された状態が保たれ、アークAは溶接電極Eに接近した端部対1’に対してのみ飛ぶ。
【0115】
ここで、上記コイルセグメントは、二つのコイル片を連結する連結部をもち、その反対側の二つの開放端が溶接部になっている略U字形のコイルセグメントである。そして、図10とは反対側のコイル端部(図略)では、十二層のコイル片が前述の連結部によって適正に接続されている。
【0116】
本実施例の特徴は、連続溶接工程が、乾燥工程と本格溶接工程との二段階の工程をもつことである。この連続溶接工程は、再び図10に示すように、周方向に並んだ端部対1’のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であり、同一の溶接電極Eを用いて同一の端部対1’に対して二周して行われる。この二周のうち、一周目で乾燥工程が行われ、二周目で本格溶接工程が行われる。
【0117】
ここで、乾燥工程とは、各端部対1’に対して、一対の端部11’,12’のうち少なくとも一部にアークをとばし、端部対の近傍を乾燥させる工程のことである。乾燥工程は、溶接電極Eを用いて一周目に行われる工程であり、本格溶接工程よりも溶接電流が弱い工程である。乾燥工程での溶接電流は、具体的には30A程度に設定されている。
【0118】
一方、本格溶接工程とは、この予備工程の後、所定時間をおいて、各端部対1’を本格的にアーク溶接する工程のことであり、一周目の予備工程と同一の溶接電極Eを用いて二周目に行われる工程である。本格溶接工程での溶接電流は、定格にほぼ近い150A程度に設定されている。
【0119】
すなわち、二周目の本格溶接工程では、TIG溶接設備の溶接電極Eおよび電源装置がもつ定格電流に準ずる程度の比較的大きな電流が流れるように、電源装置が設定されている。その一方、遡って一周目の乾燥工程では、定格電流よりも適度に小さく制限された比較的弱い電流しか流れないように、電源装置が設定されている。
【0120】
(本実施例の自動装置)
なお、本実施例としてのコイルセグメント端部の連続溶接方法を行う自動装置(図略)は、実施例1で説明した装置における予備工程が乾燥工程に代わる以外は概ね同様の装置であるので更なる説明は省略する。
【0121】
(実施例3の作用)
本実施例としての「コイルセグメント端部の連続溶接方法」は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
【0122】
すなわち、本実施例では、再び図10に示すように、固定子(ステータ)が二周分回転するうちに、乾燥工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程をもつコイルセグメント端部の連続溶接方法が施される。
【0123】
先ず、乾燥工程では、溶接されるべき一対のコイルセグメント端部11’,12’からなる端部対1’に対して、TIG溶接用の溶接電極Eから高圧電流が流される。すると、一対の端部11’,12’のうち少なくとも一部に溶接電極EからアークAが飛び、その端部対が加熱されて端部対1’の近傍における絶縁皮膜に残存する溶媒や水分が除去される。溶媒や水分を除去する条件はできるだけ穏和な条件であることが好ましい。特に端部対1’の近傍について絶縁皮膜が加熱される温度は、絶縁皮膜に含まれる樹脂の融点には達しない温度とする。
【0124】
その後、所定時間をおいて、本格溶接工程では、両端部11’,12’に本格的なアーク溶接がなされ、両端部11’,12’は互いに溶接されるに至る。
【0125】
なお、本実施例では、前述のように、乾燥工程でも本格溶接工程でも、周方向に連続溶接が施される。それゆえ、溶接電極Eを固定しておいてワーク(コイルセグメント端部11’,12’の円環状行列)を軸心回りに回転させるだけで済み、溶接電極Eとワークとの相対移動が最も合理的な経路で行われる。そのうえ、乾燥工程は、溶接電極Eを用いて一周目に行われる工程であり、本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極Eを用いて二周目に行われる工程である。
【0126】
それゆえ、乾燥工程から本格溶接工程に移行する際にも、溶接電極Eを交換する必要がないばかりか、溶接電極Eを移動させる必要さえもない。その結果、一本の溶接電極Eを固定したままで、乾燥工程および本格溶接工程からなる連続溶接工程を完了することができる。
【0127】
その結果、本実施例では、複数の溶接電極が必要とされず、溶接電極Eが一種類で済むので、設備コストの高騰を避けることができる。そのうえ、溶接電極Eが一種類で済む条件下では、溶接電極Eの相対移動経路が最も合理的であるから、その意味ではサイクルタイムが最短であると考えられる。
【0128】
また、本実施例では、前述のように、乾燥工程で、本格溶接工程で溶接する端部対の近傍の絶縁皮膜を乾燥させている。このような予備処理とは異なり、両端部11’,12’の本格的な溶接は後の本格溶接工程で行われる。
【0129】
それゆえ、乾燥工程には本格溶接工程ほど強力なアークAによる熱出力が要求されないから、本格溶接工程でよりも乾燥工程での方が、溶接電流がやや小さくて済んでいる。
【0130】
すなわち、本格溶接工程と比較して乾燥工程で溶接電流が小さくても、乾燥工程でも本格溶接工程と同様の大電流を流す場合に比べて、電力がいくらかは節約される。それでいながら、前述のように、コイルセグメントの端部対1’に十分な予備処理を施すことができる。
【0131】
(実施例3の効果)
本実施例では以上のような作用が得られるので、本実施例によれば次のような効果がある。
【0132】
第一に、コイル端部でのTIG溶接の信頼性が向上するという主要な効果がある。すなわち、互いに溶接されたコイルセグメントの端部近傍の絶縁皮膜が溶接により劣化することが抑制されるので絶縁皮膜の絶縁性が高いという効果がある。更に、絶縁皮膜の劣化が少ないので溶接した端部を更に樹脂皮膜で被覆しても樹脂皮膜の密着性が高くできるので高い絶縁性を保持できるという効果がある。
【0133】
(実施例3の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、乾燥工程と本格溶接工程とで溶接電流の設定値を変えず、代わりに乾燥工程は本格溶接工程よりも溶接時間が短い工程である、コイルセグメント端部の連続溶接方法を実施することも可能である。
【0134】
本変形態様では、乾燥工程で、短時間ではあっても溶接電極Eから十分に強力なアークAを端部対1’のうち少なくとも一部に飛ばし、前述の実施例3と同様に端部対1’に予備処理を行っている。すなわち、溶接を行う端部の近傍の絶縁皮膜に残存する溶媒や水分を除去している。
【0135】
このような予備処理は乾燥工程で行われ、本格的な溶接は後の本格溶接工程で行われる。それゆえ、乾燥工程では両端部11’,12’の先端部を加熱溶融する必要がない。逆に言うと、予備工程には本格溶接工程ほどにはアークAの熱出力が要求されず、本変形態様のように溶接電流が同じ設定であれば、本格溶接工程でよりも乾燥工程での方が、溶接時間が短くて済んでしまう。
【0136】
すなわち、本変形態様では、本格溶接工程と比較して乾燥工程での溶接電極Eへの印加時間を変更するのみで、それ以外の印加電圧や印加電流の設定は変更する必要がないので電源装置の制御が簡便となる。
【0137】
したがって本変形態様によれば、前述の実施例3と同様の作用効果が得られるうえに、前述の実施例3に比べて、連続溶接を行う装置を簡単にすることができるという効果がある。
【0138】
(実施例3の変形態様2)
本実施例の変形態様2は、更に実施例1で説明した予備工程を有する。つまり、固定子(ステータ)が三周分回転するうちに、乾燥工程、実施例1で説明した予備工程及び本格溶接工程からなる連続溶接工程をもつコイルセグメント端部の連続溶接方法が施される。
【0139】
その結果、たとえば、溶接する両端部11’,12’の間にある程度の隙間gや段差sがあっても予備工程を行うことで実施例1で説明したように溶接不良が発生する確率を著しく減少できる。
【0140】
[実施例4]
(実施例4の構成)
本発明の実施例4としてのコイルセグメント端部の連続溶接方法(図略)は、連続溶接工程が、端部対1’のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であることを前提とする。そして本実施例の特徴は、本格溶接工程が、乾燥工程で用いた溶接電極E(乾燥電極)とは別個の溶接電極(本格溶接電極)を用いて、乾燥電極Eの位置とは周方向に異なる位置にこの本格溶接電極を配置して行われる工程であることである。
【0141】
すなわち、乾燥工程でTIG溶接に用いられる乾燥電極Eと、本格溶接工程で用いられる本格溶接電極(図略)とは、別個のものである。ここで、乾燥電極Eは、定格電流よりも小さな溶接電流でアークをとばすので、ほぼ定格通りの大きな溶接電流を流す本格溶接電極よりもやや小さく作られている。また、乾燥電極Eにやや弱い電力を供給する電源装置と、本格溶接電極に強力な電力を供給する電源装置とは、互いに独立した別個のものである。
【0142】
そして、乾燥電極Eと本格溶接電極とは周方向に異なる位置に配置されており、本実施例としては、本格溶接電極は、乾燥電極Eよりも適正な角度だけ遅れた角度位置に配置されている。すなわち、任意の一対のコイルセグメント端部11’,12’からなる端部対1’には、先ず、乾燥電極Eにより乾燥工程が行われて予備処理が施される。しかる後、この端部対1’には、固定子鉄心の回転角度にして残存する溶媒や水分を除去する時間をえるのに適正な角度だけ遅れて、本格溶接電極により本格溶接工程が行われてしっかりと溶接される。
【0143】
(実施例4の作用効果)
本実施例では、前述のように、乾燥電極Eと本格溶接電極とが別個であるから、両者の大きさや形状をそれぞれの工程に最適に設定されており、さらに両者の電源装置もそれぞれ別個に用意されている。それゆえ、両溶接電極の間で、印加電圧の設定や溶接電流の設定を最適に変えておくことができ、両溶接電極には、それぞれに最適な大きさの印加電圧を印加して、それぞれに最適な大きさの溶接電極が流される。
【0144】
そして、前述の実施例3とは異なり、本格溶接工程を施す端部対1’が乾燥工程を施す端部対1’よりも一周も遅れることなく追随し、一周のうち幾らかの回転角度範囲では、乾燥工程と本格溶接工程とが並行して行われる。それゆえ、前述の実施例3よりも一周分の連続溶接が素早く行われ、コイル端部の全体についても連続溶接のサイクルタイムがいっそう短縮されるという効果がある。
【0145】
したがって本実施例によれば、前述の実施例3の効果に加えて、乾燥工程および本格溶接工程のそれぞれに最適の大きさと形状の溶接電極を使うことができるという効果がある。その結果、それぞれの溶接電極に最適な大きさの印加電圧をかけて最適な量の溶接電極を流すことができるようになるので、TIG溶接の品質がよりいっそう向上するという効果が得られる。また、サイクルタイムが大幅に短縮されるという効果もある。
【0146】
(実施例4の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、更に実施例2で説明した予備溶接電極を乾燥電極Eと本格溶接電極との間に設けて実施例1又は2で説明した予備工程を行う方法である。
【0147】
その結果、たとえば、溶接する両端部11’,12’の間にある程度の隙間gや段差sがあっても予備工程を行うことで実施例1で説明したように溶接不良が発生する確率を著しく減少できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1としての連続溶接方法を示す要部の展開図
【図2】実施例1で隙間がある端部対の溶接前の状態を示す要部側面図
【図3】実施例1で隙間がある端部対の連続溶接工程の作用を示す組図
(a)予備工程の作用を示す要部側面図
(b)本格溶接工程の作用を示す要部側面図
【図4】実施例1で段差がある端部対の溶接前の状態を示す要部側面図
【図5】実施例1で段差がある端部対の連続溶接工程の作用を示す組図
(a)予備工程の作用を示す要部側面図
(b)本格溶接工程の作用を示す要部側面図
【図6】実施例1で両方がある端部対の溶接前の状態を示す要部側面図
【図7】実施例1で両方がある端部対の連続溶接工程の作用を示す組図
(a)予備工程の作用を示す要部側面図
(b)本格溶接工程の作用を示す要部側面図
【図8】従来技術で隙間がある端部対の溶接不具合を示す組図
(a)溶接中の端部対の状態を示す要部側面図
(b)溶接後の端部対の状態を示す要部側面図
【図9】従来技術で段差がある端部対の溶接不具合を示す組図
(a)溶接中の端部対の状態を示す要部側面図
(b)溶接後の端部対の状態を示す要部側面図
【図10】実施例3としての連続溶接方法を示す要部の展開図
【符号の説明】
1、1’:コイルセグメントの端部対
11、11’:コイルセグメントの端部(端部対のうち内周側)
12、12’:コイルセグメントの端部(端部対のうち外周側)
g:隙間(ギャップ)  g’:予備工程後の隙間
s:段差(ステップ)  s’:予備工程後の段差
A:アーク  E:溶接電極(乾燥電極、予備電極、本格溶接電極)  M:溶融部分

Claims (8)

  1. 回転電機の固定子および回転子のうちいずれかのセグメント型コイルを形成すべき導電性のセグメントを鉄心の各スロットに挿置した後、これらのセグメントの端部のうち互いに溶接されるべき端部対に溶接電極を近接させてアーク溶接を施し、この溶接電極を次々に隣の端部対に相対移動させることにより連続溶接して、この溶接により各端部対が適正に接続されたコイル端部を製造する連続溶接工程を有するコイルセグメント端部の連続溶接方法において、
    前記連続溶接工程は、
    各前記端部対に対して、一対の端部のうち少なくとも一部にアークをとばし、少なくとも一部を予備的に溶接または溶融する予備工程と、
    この予備工程の後、所定時間をおいて、各前記端部対を本格的にアーク溶接する本格溶接工程と、
    をもつことを特徴とする、
    コイルセグメント端部の連続溶接方法。
  2. 前記本格溶接工程の前に、
    各前記端部対に対して、前記一対の端部のうち少なくとも一部にアークをとばし、該端部対の近傍を乾燥させる乾燥工程を有する請求項1に記載のコイルセグメント端部の連続溶接方法。
  3. 請求項1に記載のコイルセグメント端部の連続溶接方法において、
    前記予備工程に代えて、
    各前記端部対に対して、前記一対の端部のうち少なくとも一部にアークをとばし、該端部対の近傍を乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とするコイルセグメント端部の連続溶接方法。
  4. 前記予備工程及び/又は前記乾燥工程は、前記本格溶接工程よりも溶接電流および溶接時間のうち少なくとも一方が短小な工程である、
    請求項1〜3のいずれかに記載されたコイルセグメント端部の連続溶接方法。
  5. 前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であって、
    前記予備工程は、前記溶接電極を用いて一周目に行われる工程であり、
    前記本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極を用いて二周目以降に行われる工程である、
    請求項1、2及び4のいずれかに記載されたコイルセグメント端部の連続溶接方法。
  6. 前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であって、
    前記本格溶接工程は、前記予備工程で用いた前記溶接電極(予備溶接電極)とは別個の溶接電極(本格溶接電極)を用いて、前記予備溶接電極の位置とは周方向に異なる位置にこの本格溶接電極を配置して行われる工程である、
    請求項1、2及び4のいずれかに記載されたコイルセグメント端部の連続溶接方法。
  7. 前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であって、
    前記乾燥工程は、前記溶接電極を用いて一周目に行われる工程であり、
    前記本格溶接工程は、一周目と同一の溶接電極を用いて二周目以降に行われる工程である、
    請求項2〜4のいずれかに記載されたコイルセグメント端部の連続溶接方法。
  8. 前記連続溶接工程は、前記端部対のアーク溶接が周方向に連続して行われる工程であって、
    前記本格溶接工程は、前記乾燥工程で用いた前記溶接電極(乾燥電極)とは別個の溶接電極(本格溶接電極)を用いて、前記予備溶接電極の位置とは周方向に異なる位置にこの本格溶接電極を配置して行われる工程である、
    請求項2、3、4及び6のいずれかに記載されたコイルセグメント端部の連続溶接方法。
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