JP2004024073A - 中空部を有する偏平状釣糸 - Google Patents
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Abstract
【課 題】本発明は、中空部の大きさを変化させることにより、水面や水面付近に浮かせたり釣糸の沈降速度を種々設定したりすることができ、さらにコシがある釣糸を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸。
【選択図】 図1
【解決手段】熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏平状の中空釣糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、釣りの漁法が高度化するにつれて、釣り場の状況や目的に応じて様々な釣糸が提案されている。その中で、釣糸を水面や水面付近に浮かせるために、断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有する中空釣糸が提案されている(特開2001−161237号)。
しかし、前記中空釣糸は、いわゆるコシがないという問題点を有していた。特に、フライまたは毛バリなどの軽い仕掛けを使用するフライフィッシングやテンカラ釣りにおいては、釣糸にコシがないと釣り竿の動きによって生まれた反発力を釣糸の先端まで伝えることができず、軽い仕掛けを目的のところに正確に飛ばすことができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、中空部の大きさを変化させることにより、水面や水面付近に浮かせたり釣糸の沈降速度を種々設定したりすることができ、さらにコシがある釣糸を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、中空釣糸の断面形状を偏平にすることにより、上記従来の中空釣糸が有していたコシがないという問題を解決できることを知見した。
本発明者らは、更に検討を重ね、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸、
(2) モノフィラメントの断面の短い方の長さaと長い方の長さbとの比a/bが、0.5〜0.9である(1)に記載の釣糸、
(3) 外周の少なくとも一部が溶剤処理されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(4) テーパー状であることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(5) 金属粒子が含有されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(6) 金属がタングステンであることを特徴とする(5)に記載の釣糸、
(7) 比重が0.97〜10.0であることを特徴とする(5)に記載の釣糸、
に関する。
【0006】
また、本発明は
(8) さらに、外周が合成繊維または金属繊維で被覆されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(9) 外周の少なくとも一部が樹脂被覆されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(10) テーパー状であることを特徴とする(9)に記載の釣糸、
(11) 熱可塑性樹脂または/および被覆樹脂に金属粒子が含有されていることを特徴とする(9)に記載の釣糸、
(12) 金属がタングステンであることを特徴とする(11)に記載の釣糸、
(13) 比重が0.97〜10.0であることを特徴とする(11)に記載の釣糸、
(14) さらに、外周が合成繊維または金属繊維で被覆されていることを特徴とする(9)に記載の釣糸、
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる釣糸は、断面形状が偏平状であること、および断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特長とする。なかでも、断面の短い方の長さをaとし、長い方の長さをbとしたときの比a/b(以下、偏平率という)は約0.5〜0.9程度であることが好ましい。
【0008】
本発明にかかる釣糸の断面形状の具体的態様を、図1および図2に示した。このように架橋部(図1の符号2)を設けることにより、中空部(図1の符号1)の潰れを防ぐことができ、よって所望の浮力を維持することができるという利点がある。中空部が複数ある場合は、各々の中空部の断面形状は、中空部の潰れをより有効に防止し釣糸の強度を保つために断面積を均一とすることがより好ましい。また、図2のように、中心部に中空部がある場合は、該中空部(例えば、図2の符号3で示される中空部)の面積があまり大きくならないようにすることが好ましい。
【0009】
中空部の数は特に限定されないが、釣糸の強度と形状の保持という観点から3程度以上が好ましい。また、中空部の数の上限は製造が困難とならない程度が好ましく、約20個程度とするのがより好ましい。
釣糸の断面積に対する中空部の面積の割合(以下、中空率という)は、約1〜50%程度が好ましく、約5〜35%程度がより好ましい。なお、中空率は、次式;中空率(%)=(中空部の面積の総和/釣糸の断面積)×100(数式1)により算出される。前記式中の面積は、光学顕微鏡、例えばニコン社製マイクロフォトS光学顕微鏡に顕微鏡写真撮影装置を取り付け、本発明にかかる釣糸の断面形状を撮影し、測定することができる。
【0010】
本発明にかかる釣糸は、熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントである。前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いてよい。具体的には、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、具体的に、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,10などの脂肪族ポリアミドもしくはその共重合、または芳香族ジアミンとジカルボン酸により形成される半芳香族ポリアミドもしくはその共重合体などが挙げられる。
【0011】
ポリエステル系樹脂としては、具体的に、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン2,6ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシフェニルもしくは5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸もしくはセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコールまたはテトラメチレングリコールなどのジオール化合物とから重縮合されるポリエステルもしくはその共重合体などが挙げられる。
【0012】
フッ素系樹脂としては、具体的に、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリモノクロロトリフルオロエチレンもしくはポリヘキサフルオロプロピレンまたはその共重合体などが挙げられる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等が挙げられ、中でも、重合平均分子量が約400,000以上のものが好ましい。上記ポリエチレンまたはポリプロピレンは、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。ポリエチレンのコポリマーとして具体的には、エチレンと共重合できる1以上のアルケン類を少量、好ましくは約5重量%程度以下の割合で含有し、100炭素原子当り1〜10個程度、好ましくは2〜6個程度のメチル基またはエチル基を有する共重合体が挙げられる。上記エチレンと共重合できるアルケン類としては、例えば、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンまたは4−メチルペンテン等が挙げられる。また、ポリエチレンのコポリマーとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)なども挙げられる。
【0014】
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリルと他のポリマーとのコポリマーであるポリアクリロニトリル系樹脂が挙げられる。上記他のポリマーとしては、例えばメタクリレート、アクリレートまたは酢酸ビニル等が挙げられ、該他のポリマーは約5重量%程度以下の割合で含有されていることが好ましい。
【0015】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルアルコールと他のポリマーとのコポリマーであるポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。上記他のポリマーとしては、例えば酢酸ビニル、エテンまたは他のアルケン類等が挙げられ、該他のポリマーは約5重量%程度以下の割合で含有されていることが好ましい。
ポリアセタール系樹脂としては、例えばポリオキシメチレンなどアセタール結合を主鎖に有する樹脂が挙げられる。
【0016】
本発明の釣糸を構成する上述のような熱可塑性樹脂には、発明の目的を損なわない範囲内で各種公知の耐磨耗剤、艶消し剤、改質剤もしくは顔料など、またはこれらの2種以上を配合しておくこともできる。また、熱可塑性樹脂には、磁性材料、導電性物質、高誘電率を有する物質などを配合してもよい。
なかでも、本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂に金属粒子を含有させることが好ましい。すなわち、金属粒子を含む熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸が、本発明の好ましい一態様として挙げられる。このように金属粒子を含有させることにより、釣糸の比重を任意に調整することができ、その結果、漁場、天候または潮流などの変化により細かく対応できるようになる。また、所望の比重を維持したまま釣糸を細くすることができるので、風の影響を受けにくく、また着水後に潮流の影響でポイントへの狙いをはずすことも少なくなる。
【0017】
上記金属粒子としては特に限定されず、例えば鉄、銅、亜鉛、錫、ニッケルもしくはタングステン、またはそれら任意の2種以上の混合物もしくは合金等が挙げられる。中でも、金属粒子としては比重の大きいタングステン粒子が好ましい。このように比重の大きいタングステンを用いることにより、釣糸に重さを与えやすく、比重を高くする効果が少量の金属粒子を添加することにより現れるため、素材の熱可塑性樹脂の強度の低下を極力抑えることができる。
【0018】
これら金属粒子は粉末状であると、粒状であるとを問わない。金属粒子の平均粒径は約20μm程度以下、好ましくは約10μm以下が好適である。金属粒子の粒径が大きすぎると、熱可塑性樹脂中の金属粒子の均一性が乏しくなるので上記範囲が好ましい。更に金属粒子の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して約1〜90重量部程度、より好ましくは約5〜70重量部程度が好適である。
【0019】
また、本発明に係る釣糸は、比重が約0.97〜10.0程度であることが好ましい。比重は、電子比重計SD−200L(ミラージュ貿易株式会社製)を用いて測定する。
【0020】
本発明にかかる釣糸の製造は、公知の方法に従って行うことができる。該製造の一態様としては、本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂を、例えばエクストルーダー溶融紡糸装置などの公知の溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度約230〜270℃程度で溶融紡糸し、紡糸後の糸条を液体中に通過させて冷却固化し、一旦巻き取った後または巻き取ることなく、液体または気体中で加熱しながら延伸し、所望により弛緩熱処理を施すという製造方法が挙げられる。このとき、溶融紡糸装置は、所望の数の中空部を形成することができる中空糸用紡糸口金であって、断面形状を偏平状にすることができる口金を備えている。
上記製造方法において、口金の形状を変更する、熱可塑性樹脂の相対粘度を変更する、紡出後冷却するまでの距離(エアーギャップ)を変更する、冷却用液体の温度を変更する等の方法により、中空率を任意に設定することできる。
【0021】
また、本発明にかかる釣糸は、その断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有し、かつその断面形状が真円状であるモノフィラメント(以下、この欄において「真円状の中空モノフィラメント」という。)を偏平化することにより製造することもできる。
より具体的には、まず、公知の方法により、具体的には、所望の数の中空部を形成することができる中空糸用紡糸口金を用いて、本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂を溶融紡糸して、真円状の中空モノフィラメントを製造する。ついで、該真円状の中空フィラメントを1対の熱ローラーの間に通して、フィラメントの断面の一方向に圧力を加えながら適宜延伸し、巻き取ることにより偏平化させるという方法が挙げられる。真円状の中空モノフィラメントを偏平化する工程において、中空部が潰れることのないようにするため、中空部に空気などの気体を流すこと、または巻き取りのスピードと熱ローラーによる圧力とのバランスを適切に保つこと等が行われ得る。
【0022】
本発明にかかる釣糸が金属粒子を含有している場合は、熱可塑性樹脂の代わりに金属粒子を含有する熱可塑性樹脂を用いる以外は、前述と全く同様に製造することができる。前記金属を含有する熱可塑性樹脂は、公知の単軸又は二軸混練機で、熱可塑性樹脂に金属粒子を溶融混練することにより作製することができる。
【0023】
本発明に係る釣糸には、その他自体公知の後処理が付されてもよい。例えば、本発明に係る釣糸は着色してもよい。着色方法は、公知方法を用いてよい。例えば、本発明の釣糸を着色剤溶液が入っている浴に室温、例えば約20〜25℃程度の温度下に通過させ、その後、こうして着色剤が被覆された糸を乾燥し、これを約100〜130℃程度の温度に保たれた炉に通し、通過させることによって着色された釣糸を製造できる。着色剤としては、無機顔料、有機顔料または有機染料が知られているが、好適なものとしては、例えば、酸化チタン、カドミウム化合物、カーボンブラック、アゾ化合物、シアニン染料または多環顔料などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、上述のような断面形状が偏平状で、かつ断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有する熱可塑性樹脂からなるモノフィラメント(以下、「偏平状の中空モノフィラメント」という。)の外周の少なくとも一部を溶剤処理に付してもよい。溶剤処理を付した部分は、よりコシがでるという利点がある。
【0025】
前記溶剤処理は、約30〜50℃程度に加熱した溶剤に偏平状の中空モノフィラメントを、0を超えて数秒間以内程度浸漬することによって行われる。溶剤処理に用いられる溶剤としては、特に限定されず、当技術分野で用いられている公知の溶剤を用いてよい。例えば、具体的には、フェノール(石炭酸)、又はその誘導体もしくはその塩などが挙げられ、これらは適当な溶媒に溶解されていてもよい。なかでも、石炭酸を用いるのが好ましい。
また、前記溶剤に下記に詳述する被覆樹脂を混合しておけば、上記のような溶剤処理により、釣糸の外周の被覆をも同時に行うことができる。なかでも、約30〜50℃程度に加熱した石炭酸にナイロンもしくは共重合ナイロンなどのポリアミド樹脂を添加し、かかる混合液に偏平状の中空モノフィラメントを0を超えて数秒間以内程度浸漬することにより、前記モノフィラメントの外周が、溶媒処理され、かつ前記ポリアミド樹脂で被覆されている釣糸が得られる。
【0026】
本発明にかかる釣糸は、長手方向において径の変化がないレベルラインであってもよく、長手方向に径が変化するテーパーラインであってもよい。本発明に係る釣糸がレベルラインである場合は、上述した方法により製造することができる。本発明に係る釣糸がテーパーラインである場合の製造方法について下記に詳述する。
【0027】
本発明において、偏平状の中空モノフィラメントをテーパー状にする方法は、特に限定されず、公知の方法に従ってよい。例えば、溶融紡糸の際に熱可塑性樹脂の押出量を制御することにより、テーパー状を形成することができる。具体的には、前記押出量を多くすると径が大きくなり、前記押出量を少なくすると径が細くなる。また、延伸する際に、延伸速度を調整することによりテーパー状を形成させることもできる。具体的には、延伸速度を上げることにより径が小さくなり、延伸速度を下げることにより径が大きくなる。さらには、上記のようにして得られた本発明に係るレベルラインの釣糸を再び加熱延伸に付し、その際に延伸速度を調整することによりテーパー状を形成させることもできる。ただし、この場合は、本発明に係る釣糸は延伸可能なフィラメントであることが特に好ましい。ここで、「延伸可能なフィラメント」とは、延伸処理が行われ得るフィラメントをいう。延伸可能なフィラメントとしては、具体的に、例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、フッ素系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリアセタール系などの熱可塑性樹脂からなるフィラメントが挙げられる。
【0028】
上記いずれのテーパー形状の形成方法においても、樹脂の押出量または延伸速度を変化させる際には、それらの変化がなだらかに増加傾向または減少傾向を示すことが好ましい。それらの変化はなだらかな変化であれば、一定割合で変化してもよいし、変則的に変化してもよい。
溶融紡糸時の樹脂の押出量または延伸時の延伸速度は、本発明にかかる釣糸を構成する熱可塑性樹脂の種類またはモノフィラメントの太さ等により異なるので、一概にはいえない。具体的には、例えば、フィラメントの径の最も大きい部分を形成させる際の延伸速度と、フィラメントの径の最も小さい部分を形成させる際の延伸速度との比が、1:1.5〜4程度であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、偏平状の中空モノフィラメントの外周をさらに樹脂で被覆してもよい。かかる樹脂被覆は、偏平状の中空モノフィラメントの長手方向全てにおいて行われてもよいし、一部のみに行われてもよい。例えば、本発明にかかる釣糸がテーパー状を呈している場合、バット部と呼ばれる径の太い部分にのみ樹脂被覆を施すことが考えられる。このような形態の釣糸をテーパーリーダーとして用いた場合、バット部がよりコシを持ちロッドの反発力を糸の先端に伝えることができる一方で、糸の先のティペット部は細くてしなやかさを維持することができる。
【0030】
本発明において被覆に用いる樹脂(以下、「被覆樹脂」という。)は、特に限定されず、公知の樹脂を用いてよいが、被覆されるモノフィラメントに密着できる樹脂が好ましい。さらに、屋外での長期使用に耐え、こすれや曲げ疲労性等の耐久特性に優れているものが被覆樹脂としてより好ましい。前記被覆樹脂は、メルトインデックスが約0.1g/10分以上、より好ましくは、約0.1g/10分〜1000g/10分程度のものが好適である。コアとなる糸条の引張り強度を損なわずに被覆するためには、上記範囲のメルトインデックスを有する被覆樹脂を用いることが好ましい。ここで、樹脂のメルトインデックスは、JIS K 7210(1976)「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に従った方法にて、メルトインデクサ(宝工業株式会社製 L−202)で測定する。
【0031】
上記被覆樹脂としては、具体的には、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはエチレン酢酸ビニル共重合体などポリオレフィン系樹脂もしくはその変性物;ナイロンもしくは共重合ナイロンなどのポリアミド樹脂;アクリル系樹脂もしくはその共重合変性物;ポリウレタン樹脂;ポリスチレン樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;またはエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
本発明において用いられる被覆樹脂として、金属粒子を含有する樹脂を用いてもよい。すなわち、金属粒子が含有されている本発明の釣糸としては、(a)本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂に金属粒子が含有されている釣糸、(b)偏平状の中空モノフィラメントの外周が被覆樹脂で被覆されており、前記被覆樹脂に金属粒子が含有されている釣糸、(c)偏平状の中空モノフィラメントの外周が被覆樹脂で被覆されており、前記モノフィラメントと被覆樹脂との両方に金属粒子が含有されている釣糸、の3つの態様が挙げられる。いずれの態様においても、用いられる金属粒子の種類または含有量については、上述した(a)本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂に金属粒子を含有させる場合と全く同様である。
【0033】
本発明において外周を被覆樹脂で被覆する方法としては、加圧押出し被覆など公知の方法に従って行うことができる。中でも、パイプ式押出被覆による方法を用いることが好適である。パイプ式押出被覆による方法は押出成型機から溶融した被覆樹脂を押し出し、予熱されている偏平状の中空モノフィラメントに当該被覆樹脂を加圧状況下に密着させるものであり、被覆樹脂の密着性が格段に優れたものとなる。その他、例えばアプリケーター、ナイフコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ロッドコーターまたは刷毛など公知の手段を用いて被覆樹脂を塗布してもよいし、溶融状もしくは溶液状の被覆樹脂を収納した桶の中に偏平状の中空モノフィラメントを浸漬し引き上げて余剰量をしぼり取るという方法を用いてもよい。
【0034】
外周が被覆樹脂で被覆されている偏平状の中空モノフィラメントが、テーパー状である場合、その製造方法としては、テーパー形状を形成する時点により、(a)テーパー状の偏平中空モノフィラメントを用いる方法および(b)被覆部をテーパー状に形成する方法に大別することができる。
前記(a)テーパー状を有する偏平状の中空モノフィラメントを用いる方法は、前述のようにしてテーパー状の偏平中空モノフィラメントを製造し、かかるテーパー状の偏平中空モノフィラメントの外周に上述したような公知の方法で樹脂被覆をするという方法である。前記樹脂被覆は、テーパー状を有する偏平状の中空モノフィラメントの一部に行ってもよい。
【0035】
前記(b)被覆部をテーパー状に形成する方法は公知の方法を用いてよい。例えば、押出機に組み込まれている計量ポンプ(ギヤーポンプ)の回転数を任意に上下させて被覆樹脂の吐出量を変え、さらに、それぞれの状況下における回転数の持続時間をコントロールすることにより、目的とする太部と細部とテーパー部とにおいて、それぞれの長さを持ち合わせているテーパー形状を形成することができる。テーパー部の形状は計量ポンプの、高速回転から低速回転または低速回転から高速回転への切り替え時間の長短により変化を付けることができる。
【0036】
上記(b)の方法において、コアとなる偏平状の中空モノフィラメントは、長手方向において径の変化がないレベルラインであってもよく、長手方向に径が変化するテーパーラインであってもよい。また、前記テーパー状の樹脂被覆は、偏平状の中空モノフィラメントの一部に行ってもよい。
【0037】
以上述べてきた本発明にかかる釣糸は、さらにその周りが合成繊維または金属繊維で被覆されていてもよい。すなわち、(a)偏平状の中空フィラメントの周りが合成繊維または金属繊維で被覆されている釣糸、または(b)偏平状の中空フィラメントの周りが樹脂で被覆されており、さらにその周りが合成繊維または金属繊維で被覆されている釣糸も、本発明にかかる釣糸として挙げられる。なかでも、上記態様の釣糸としては、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りが合成繊維または金属繊維で製紐されている釣糸が好ましい。
【0038】
上記態様の釣糸の最外層を構成する合成繊維は、例えば、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル系繊維などの公知の合成繊維を用いてよい。また、本発明にかかる釣糸の最外層を構成する合成繊維は、上記したような金属粒子を含んでいる合成繊維であってもよい。なかでも、該合成繊維としては、易染性繊維または超高分子量ポリエチレン繊維を用いることが好ましい。
前記易染性の合成繊維として、具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはフッ素系樹脂などからなる繊維が挙げられる。このように易染性の繊維を用いることにより、本発明に係る釣糸を容易に染色することができるという利点がある。
【0039】
また、本発明にかかる釣糸の最外層を超高分子量ポリエチレン繊維で構成することにより、汚れ等が付着しにくく、釣糸表面がべたつくなどの問題を実質的に生じないという利点がある。そのため、釣糸が絡み合ったり、ひっついたりすることが少なくなり、その結果キャスティングが行いやすく、また釣糸の耐久性も向上する。さらに、最外層が超高分子量ポリエチレン繊維であると、強度が強く、環境への負荷が小さいという優れた釣糸を提供することができるという利点もある。
【0040】
ここで、前記超高分子量ポリエチレン繊維を構成する超高分子量ポリエチレンとしては、分子量が約20万程度以上、好ましくは約60万程度以上のものが好適に用いられる。かかる超高分子量ポリエチレンは、ホモポリマーであってもよいし、炭素数3〜10程度の低級α−オレフィン類、例えばプロピレン、ブテン、ペンテン、へキセン等との共重合体であってもよい。該エチレンとα−オレフィンとの共重合体としては、後者の割合が炭素数1000個当たり平均0.1〜20個程度、好ましくは平均0.5〜10個程度である共重合体を用いるのが好ましい。超高分子量ポリエチレン繊維の製造方法は、例えば特開昭55−5228、特開昭55−107506などに開示されており、これら自体公知の方法を用いてよい。また、超高分子量ポリエチレン繊維として、ダイニーマ(登録商標東洋紡株式会社製)やスペクトラ(登録商標 ハネウエル社製)等の市販品を用いてもよい。
【0041】
上記態様の釣糸の最外層を構成する金属繊維としては、例えば、合金軟線、銅線、ステンレススチール線、タングステン線またはアモルファス線などが挙げられる。
【0042】
上記態様の釣糸は、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに、公知の製紐機を用いて合成繊維または金属繊維を製紐することにより得ることができる。また、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに、合成繊維または金属繊維を配置し、隣接する合成繊維または金属繊維を少なくとも一部において接着することによっても、上記態様の釣糸を得ることができる。隣接する合成繊維または金属繊維を少なくとも一部において接着するには、公知の方法を用いてよい。例えば熱接着性樹脂を予め最外層を構成する合成繊維または金属繊維に付着させておき、かかる合成繊維または金属繊維を、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに配置し、加熱することにより熱接着性樹脂を介して隣接する合成繊維または金属繊維の少なくとも一部を接着することができる。また、糸条となっている熱接着性樹脂(以下、単に「熱接着性樹脂糸条」という。)を用い、該熱接着性樹脂糸条と最外層を構成する合成繊維または金属繊維とを、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに配置し、加熱することにより熱接着性樹脂を介して隣接する合成繊維または金属繊維の少なくとも一部を接着することもできる。前記いずれの製造方法においても、加熱温度は、熱接着性樹脂の融点以上で、かつ構成フィラメントの融点以下の温度、好ましくは約50〜200℃程度、より好ましくは約50〜160℃程度、さらに好ましくは約60〜130℃程度の温度が好適である。
【0043】
前記熱接着性樹脂は、最外層を構成する合成繊維または金属繊維の融点よりも低融点であることが好ましい。該熱接着性樹脂としては、具体的には、融点が約50〜200℃程度の樹脂、好ましくは約50〜160℃程度の樹脂、より好ましくは融点が約60〜135℃程度の樹脂、特に好ましくは融点が100℃前後の樹脂が挙げられる。前記融点は、例えばJIS L 1013(1999)に従った方法にて、公知の測定器、例えばパーキンエルマー社製「DSC7」で測定できる。具体的に、かかる熱接着性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂などが好適な例として挙げられる。また、かかる熱接着性樹脂としては、下記に詳述するホットメルト接着剤を用いることもより好ましい。
【0044】
上記態様の釣糸のうち、偏平状の中空フィラメントの周りが合成繊維または金属繊維で被覆されている釣糸の場合、偏平状の中空フィラメントと最外層の合成繊維または金属繊維とが、少なくとも部分的にホットメルト接着剤で固着されていることが好ましい。このようにすることにより、偏平状の中空フィラメントと最外層の合成繊維または金属繊維とのずれを防止でき、平滑でかつ外観も良好な釣糸を提供できるという利点がある。
【0045】
前記ホットメルト接着剤は、熱可塑性高分子を主体とする固形分100%の接着剤であって、熱溶融させて粘度を低くして塗布された後、冷却とともに固化し、接着力を発揮する接着剤をいう。本発明において、ホットメルト接着剤は、前述のようなものであれば特に限定されず、公知のホットメルト接着剤を用いてよい。中でも、本発明で用いるホットメルト接着剤は、硬化後に約100℃程度以下では溶融しないものを用いるのが好ましい。本発明にかかる釣糸の運搬時または保存時にホットメルト接着剤が溶け出し、例えばスプールに巻かれた状態で固化するのを防止するためである。また、該ホットメルト接着剤の融点は、構成フィラメントの融点よりも低いほうが好ましい。
【0046】
本発明で用いるホットメルト接着剤としては、例えば、ベースポリマーの種類により、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系接着剤、ポリエチレン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、熱可塑性ゴム系接着剤、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)系接着剤、ポリ酢酸ビニル共重合体系接着剤、ポリカーボネート(PC)系接着剤等が挙げられる。本発明で用いるホットメルト接着剤としては、中でもポリエチレン系接着剤またはポリオレフィン系接着剤を用いることが好ましい。
【0047】
本発明で用いるホットメルト接着剤としては、反応型ホットメルト接着剤がさらに好ましい。反応型ホットメルト接着剤においては、接着後に架橋反応が起こり耐熱性が向上する。具体的には、反応型ホットメルト接着剤を比較的低温で溶融させ、構成フィラメントに塗布または含浸させても、一旦接着すると、かかる接着剤は、低温、具体的には約100℃以下の温度では溶融しなくなる。そのため、反応型ホットメルト接着剤を用いれば、釣糸の運搬時または保存時にホットメルト接着剤が溶け出す可能性を極力低くすることができる。
【0048】
本発明で用いる反応型ホットメルト接着剤としては、特に限定されず、公知のものを用いてもよい。中でも、接着剤塗布時に、比較的低温、具体的には約60〜130℃程度、好ましくは約70〜100℃程度の温度で溶融するものが好ましい。
上記反応型ホットメルト接着剤としては、具体的には、架橋反応の種類により以下のような接着剤が挙げられる。例えば、(a)ポリマー中のカルボキシル基と多価金属イオンにより架橋反応を行わせるイオン架橋型ホットメルト接着剤;(b)接着後加熱硬化させる加熱架橋型ホットメルト接着剤;(c)二重結合を有するブロックコポリマーやポリエステルを利用し、電子線や紫外線などの高エネルギー線を照射することにより架橋反応を行わせるホットメルト接着剤;(d)溶融塗布後の空気中もしくは被着材中に存在する水分(湿気)と反応させることにより架橋を行わせる湿気硬化型ホットメルト接着剤;または(e)種々の官能基を有するポリマーとそのポリマー中に存在する官能基と反応する添加剤またはポリマーを各々溶融し、塗布直前に混合塗布することにより、2液を反応させ架橋構造を形成させるホットメルト接着剤等がある。
【0049】
本発明で用いる反応型ホットメルト接着剤としては、加熱架橋型ホットメルト接着剤または湿気硬化型ホットメルト接着剤がより好ましく、さらに湿気硬化型ホットメルト接着剤が特に好ましい。
加熱架橋型ホットメルト接着剤として、具体的には、(a)ポリエステルもしくはコポリアミドの末端カルボキシル基もしくはアミノ基、または(b)分子末端もしくは側鎖に導入したイソシアネート基を、カプロラクタムまたはフェノール等のブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートを含有するホットメルト接着剤が挙げられる。
湿気硬化型ホットメルト接着剤として、具体的には、アルコキシ基をポリマー中に導入したホットメルト接着剤、イソシアネート基やポリマー中に導入したホットメルト接着剤などが挙げられる。
【0050】
本態様において、ホットメルト接着剤の塗布量は、偏平状の中空フィラメントと最外層の合成繊維または金属繊維とが少なくとも部分的に固着されるように適宜選択することができる。ただし、ホットメルト接着剤が表面にはみ出し凹凸が生じて釣糸の滑かさが失われないように、その塗布量を選択することが好ましい。具体的には、ホットメルト接着剤の塗布量は、本発明にかかる釣糸全体の重量に対して約1〜20重量%程度、より好ましくは約5〜10重量%程度であることが好適である。
【0051】
前記態様の釣糸の製造方法について下記に詳述する。まず、偏平状の中空フィラメントにホットメルト接着剤を塗布または含浸させる。塗布または含浸方法としては、特に限定されず、公知の方法が採用され得る。具体的には、例えば、上記偏平状の中空フィラメントを溶融装置内にディッピングして所望により余剰分を搾り取る方法、スプレーなどを用いて塗布する方法、または押出し被覆機を用いて押出しコーティングする方法などが挙げられる。また、公知のアプリケーターを使用してもよい。特に、ノズルガンヘッドを有するアプリケーターを用いるのが好ましい。
【0052】
ホットメルト接着剤が塗布または含浸された偏平状の中空フィラメントの周りを合成繊維または金属繊維で被覆する。被覆方法は、上述のとおりである。
次いで、得られた芯鞘構造を有する糸条を加熱処理に付す。かかる加熱処理は、空気中もしくは水蒸気中など公知の条件下で行えばよく、また、常圧下で行っても、加圧下で行ってもよい。また、加熱処理時の加熱温度は、ホットメルト接着剤の種類または釣糸を構成するフィラメントの種類などにより異なるので一概には言えない。しかし、ホットメルト接着剤の溶融温度以上、釣糸を構成するフィラメントの融点以下の温度で行うのが好ましい。具体的には、約50〜200℃の範囲内で加熱処理を行うのがより好ましい。
【0053】
本発明においては、上記得られた芯鞘構造を有する糸条に対し、所望により延伸処理を行っても良い。かかる延伸処理は、上述の加熱処理と別々に行ってもよいし、同時に行っても良い。別々に行う場合は、いずれの処理を先に行っても良い。なかでも、本発明において延伸処理を行う場合は、加熱処理と延伸処理とを同時に行うことが好ましい。
【0054】
以上述べてきた本発明に係る釣糸の用途は特に限定されない。例えば、フライフィッシング用のフライライン、シューティングラインもしくはテーパーリーダー、またはテンカラ釣りに使用される釣糸等に好適に使用される。本発明にかかる釣糸がテーパー形状を呈している場合は、特に上記用途に用いるのが好ましい。
【0055】
【実施例】
下記実施例において、得られた釣糸の断面形状を、ニコン社製マイクロフォトS光学顕微鏡に取り付けた顕微鏡写真撮影装置を用いて撮影し、上記数式1に従って中空率を算出した。また、かかる断面形状の写真から偏平率も測定した。得られた釣糸の比重は、電子比重計SD−200L(ミラージュ貿易株式会社製)を用いて測定した。
【0056】
〔実施例1〕
エクストルーダー型溶融紡糸装置を使用し、モノフィラメントの断面形状が図1に示すような中空部の数が4個となるような紡糸口金を用いて、ペレット状ポリアミド−6(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ミツビシノバミッド1020A)を溶融紡糸した。紡出したフィラメントを20℃の水で冷却後、引き続いてこれを95℃の水蒸気雰囲気中で2.5倍に延伸し、4つの中空部を有する偏平状モノフィラメントからなる2.5号の釣糸を製造した。かかる釣糸は、偏平率が0.7、比重が1.14、中空率が10%であった。
【0057】
〔実施例2〕
ポリアミド−6の代わりに、共重合ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ミツビシノバミッド2020A)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして2.5号の釣糸を製造した。かかる釣糸は、偏平率が0.7、比重が1.14、中空率が10%であった。
【0058】
〔実施例3〕
ポリアミド−6の代わりに、主成分として共重合ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ノバミッド2030Jチップ、比重=1.14)を、また副成分として金属(タングステン、比重=19.3)を含有する高比重ナイロン樹脂(カネボウ合繊株式会社製 MCTS00005チップ、比重=3)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして2.5号の釣糸を製造した。かかる釣糸は、偏平率が0.7、比重が3.0、中空率が10%であった。
【0059】
〔実施例4〕
エクストルーダー型溶融紡糸装置を使用し、モノフィラメントの断面形状における中空部の数が8個となるような直径1.4mmの紡糸口金を用いて、ペレット状ポリアミド−6(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ミツビシノバミッド1020A)を溶融紡糸した。この際、前記溶融紡糸装置からの樹脂の押出量を制御することにより、太部と細部を有するテーパー状のフィラメントとした。紡出したフィラメントを20℃の水で冷却後、引き続いてこれを95℃の水蒸気雰囲気中で2.5倍に延伸し、8つの中空部を有する偏平状モノフィラメントからなるテーパー状の釣糸を製造した。具体的に、かかる釣糸の形状は、太部の直径が0.56mm、細部の直径が0.21mm、長さが2.7mであった。
【0060】
〔実施例5〕
実施例4で作製した8つの中空部を有する偏平状モノフィラメントからなるテーパー状の釣糸を太部同士および細部同士が揃うように束ね、太部のみを40℃に加熱した石炭酸に浸漬し、直ちに引き上げることにより、溶剤処理を行った。得られた本発明に係るテーパー状の釣糸は、太部においてよりコシが出た。
【0061】
【発明の効果】
本発明にかかる釣糸は、その断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有するため、水面や水面付近に浮かしたり、沈降速度を調整したりすることができる。さらに、本発明にかかる釣糸に金属粒子を含有させると、釣糸の比重を原料となる熱可塑性樹脂の比重にかかわらず設定できるため、より細かい沈降速度の調整が可能になる。
さらに、本発明にかかる釣糸は、その断面形状が偏平状であるから、中空部を有することに起因するコシのなさを改善することができる。その結果、本発明にかかる釣糸によれば、フライまたは毛バリなどの軽い仕掛けを使用するフライフィッシングやテンカラ釣りにおいて、釣り竿の動きによって生まれた反発力を釣糸の先端まで伝えることができ、軽い仕掛けを目的のところに正確に飛ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る釣糸の断面の一態様を示す。
【図2】本発明に係る釣糸の断面の他の態様を示す。
【符号の説明】
1 中空部
2 架橋部
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏平状の中空釣糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、釣りの漁法が高度化するにつれて、釣り場の状況や目的に応じて様々な釣糸が提案されている。その中で、釣糸を水面や水面付近に浮かせるために、断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有する中空釣糸が提案されている(特開2001−161237号)。
しかし、前記中空釣糸は、いわゆるコシがないという問題点を有していた。特に、フライまたは毛バリなどの軽い仕掛けを使用するフライフィッシングやテンカラ釣りにおいては、釣糸にコシがないと釣り竿の動きによって生まれた反発力を釣糸の先端まで伝えることができず、軽い仕掛けを目的のところに正確に飛ばすことができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、中空部の大きさを変化させることにより、水面や水面付近に浮かせたり釣糸の沈降速度を種々設定したりすることができ、さらにコシがある釣糸を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、中空釣糸の断面形状を偏平にすることにより、上記従来の中空釣糸が有していたコシがないという問題を解決できることを知見した。
本発明者らは、更に検討を重ね、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸、
(2) モノフィラメントの断面の短い方の長さaと長い方の長さbとの比a/bが、0.5〜0.9である(1)に記載の釣糸、
(3) 外周の少なくとも一部が溶剤処理されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(4) テーパー状であることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(5) 金属粒子が含有されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(6) 金属がタングステンであることを特徴とする(5)に記載の釣糸、
(7) 比重が0.97〜10.0であることを特徴とする(5)に記載の釣糸、
に関する。
【0006】
また、本発明は
(8) さらに、外周が合成繊維または金属繊維で被覆されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(9) 外周の少なくとも一部が樹脂被覆されていることを特徴とする(1)に記載の釣糸、
(10) テーパー状であることを特徴とする(9)に記載の釣糸、
(11) 熱可塑性樹脂または/および被覆樹脂に金属粒子が含有されていることを特徴とする(9)に記載の釣糸、
(12) 金属がタングステンであることを特徴とする(11)に記載の釣糸、
(13) 比重が0.97〜10.0であることを特徴とする(11)に記載の釣糸、
(14) さらに、外周が合成繊維または金属繊維で被覆されていることを特徴とする(9)に記載の釣糸、
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる釣糸は、断面形状が偏平状であること、および断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特長とする。なかでも、断面の短い方の長さをaとし、長い方の長さをbとしたときの比a/b(以下、偏平率という)は約0.5〜0.9程度であることが好ましい。
【0008】
本発明にかかる釣糸の断面形状の具体的態様を、図1および図2に示した。このように架橋部(図1の符号2)を設けることにより、中空部(図1の符号1)の潰れを防ぐことができ、よって所望の浮力を維持することができるという利点がある。中空部が複数ある場合は、各々の中空部の断面形状は、中空部の潰れをより有効に防止し釣糸の強度を保つために断面積を均一とすることがより好ましい。また、図2のように、中心部に中空部がある場合は、該中空部(例えば、図2の符号3で示される中空部)の面積があまり大きくならないようにすることが好ましい。
【0009】
中空部の数は特に限定されないが、釣糸の強度と形状の保持という観点から3程度以上が好ましい。また、中空部の数の上限は製造が困難とならない程度が好ましく、約20個程度とするのがより好ましい。
釣糸の断面積に対する中空部の面積の割合(以下、中空率という)は、約1〜50%程度が好ましく、約5〜35%程度がより好ましい。なお、中空率は、次式;中空率(%)=(中空部の面積の総和/釣糸の断面積)×100(数式1)により算出される。前記式中の面積は、光学顕微鏡、例えばニコン社製マイクロフォトS光学顕微鏡に顕微鏡写真撮影装置を取り付け、本発明にかかる釣糸の断面形状を撮影し、測定することができる。
【0010】
本発明にかかる釣糸は、熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントである。前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いてよい。具体的には、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、具体的に、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,10などの脂肪族ポリアミドもしくはその共重合、または芳香族ジアミンとジカルボン酸により形成される半芳香族ポリアミドもしくはその共重合体などが挙げられる。
【0011】
ポリエステル系樹脂としては、具体的に、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン2,6ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシフェニルもしくは5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸もしくはセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコールまたはテトラメチレングリコールなどのジオール化合物とから重縮合されるポリエステルもしくはその共重合体などが挙げられる。
【0012】
フッ素系樹脂としては、具体的に、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリモノクロロトリフルオロエチレンもしくはポリヘキサフルオロプロピレンまたはその共重合体などが挙げられる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等が挙げられ、中でも、重合平均分子量が約400,000以上のものが好ましい。上記ポリエチレンまたはポリプロピレンは、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。ポリエチレンのコポリマーとして具体的には、エチレンと共重合できる1以上のアルケン類を少量、好ましくは約5重量%程度以下の割合で含有し、100炭素原子当り1〜10個程度、好ましくは2〜6個程度のメチル基またはエチル基を有する共重合体が挙げられる。上記エチレンと共重合できるアルケン類としては、例えば、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンまたは4−メチルペンテン等が挙げられる。また、ポリエチレンのコポリマーとしては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)なども挙げられる。
【0014】
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリルと他のポリマーとのコポリマーであるポリアクリロニトリル系樹脂が挙げられる。上記他のポリマーとしては、例えばメタクリレート、アクリレートまたは酢酸ビニル等が挙げられ、該他のポリマーは約5重量%程度以下の割合で含有されていることが好ましい。
【0015】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルアルコールと他のポリマーとのコポリマーであるポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。上記他のポリマーとしては、例えば酢酸ビニル、エテンまたは他のアルケン類等が挙げられ、該他のポリマーは約5重量%程度以下の割合で含有されていることが好ましい。
ポリアセタール系樹脂としては、例えばポリオキシメチレンなどアセタール結合を主鎖に有する樹脂が挙げられる。
【0016】
本発明の釣糸を構成する上述のような熱可塑性樹脂には、発明の目的を損なわない範囲内で各種公知の耐磨耗剤、艶消し剤、改質剤もしくは顔料など、またはこれらの2種以上を配合しておくこともできる。また、熱可塑性樹脂には、磁性材料、導電性物質、高誘電率を有する物質などを配合してもよい。
なかでも、本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂に金属粒子を含有させることが好ましい。すなわち、金属粒子を含む熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸が、本発明の好ましい一態様として挙げられる。このように金属粒子を含有させることにより、釣糸の比重を任意に調整することができ、その結果、漁場、天候または潮流などの変化により細かく対応できるようになる。また、所望の比重を維持したまま釣糸を細くすることができるので、風の影響を受けにくく、また着水後に潮流の影響でポイントへの狙いをはずすことも少なくなる。
【0017】
上記金属粒子としては特に限定されず、例えば鉄、銅、亜鉛、錫、ニッケルもしくはタングステン、またはそれら任意の2種以上の混合物もしくは合金等が挙げられる。中でも、金属粒子としては比重の大きいタングステン粒子が好ましい。このように比重の大きいタングステンを用いることにより、釣糸に重さを与えやすく、比重を高くする効果が少量の金属粒子を添加することにより現れるため、素材の熱可塑性樹脂の強度の低下を極力抑えることができる。
【0018】
これら金属粒子は粉末状であると、粒状であるとを問わない。金属粒子の平均粒径は約20μm程度以下、好ましくは約10μm以下が好適である。金属粒子の粒径が大きすぎると、熱可塑性樹脂中の金属粒子の均一性が乏しくなるので上記範囲が好ましい。更に金属粒子の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して約1〜90重量部程度、より好ましくは約5〜70重量部程度が好適である。
【0019】
また、本発明に係る釣糸は、比重が約0.97〜10.0程度であることが好ましい。比重は、電子比重計SD−200L(ミラージュ貿易株式会社製)を用いて測定する。
【0020】
本発明にかかる釣糸の製造は、公知の方法に従って行うことができる。該製造の一態様としては、本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂を、例えばエクストルーダー溶融紡糸装置などの公知の溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度約230〜270℃程度で溶融紡糸し、紡糸後の糸条を液体中に通過させて冷却固化し、一旦巻き取った後または巻き取ることなく、液体または気体中で加熱しながら延伸し、所望により弛緩熱処理を施すという製造方法が挙げられる。このとき、溶融紡糸装置は、所望の数の中空部を形成することができる中空糸用紡糸口金であって、断面形状を偏平状にすることができる口金を備えている。
上記製造方法において、口金の形状を変更する、熱可塑性樹脂の相対粘度を変更する、紡出後冷却するまでの距離(エアーギャップ)を変更する、冷却用液体の温度を変更する等の方法により、中空率を任意に設定することできる。
【0021】
また、本発明にかかる釣糸は、その断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有し、かつその断面形状が真円状であるモノフィラメント(以下、この欄において「真円状の中空モノフィラメント」という。)を偏平化することにより製造することもできる。
より具体的には、まず、公知の方法により、具体的には、所望の数の中空部を形成することができる中空糸用紡糸口金を用いて、本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂を溶融紡糸して、真円状の中空モノフィラメントを製造する。ついで、該真円状の中空フィラメントを1対の熱ローラーの間に通して、フィラメントの断面の一方向に圧力を加えながら適宜延伸し、巻き取ることにより偏平化させるという方法が挙げられる。真円状の中空モノフィラメントを偏平化する工程において、中空部が潰れることのないようにするため、中空部に空気などの気体を流すこと、または巻き取りのスピードと熱ローラーによる圧力とのバランスを適切に保つこと等が行われ得る。
【0022】
本発明にかかる釣糸が金属粒子を含有している場合は、熱可塑性樹脂の代わりに金属粒子を含有する熱可塑性樹脂を用いる以外は、前述と全く同様に製造することができる。前記金属を含有する熱可塑性樹脂は、公知の単軸又は二軸混練機で、熱可塑性樹脂に金属粒子を溶融混練することにより作製することができる。
【0023】
本発明に係る釣糸には、その他自体公知の後処理が付されてもよい。例えば、本発明に係る釣糸は着色してもよい。着色方法は、公知方法を用いてよい。例えば、本発明の釣糸を着色剤溶液が入っている浴に室温、例えば約20〜25℃程度の温度下に通過させ、その後、こうして着色剤が被覆された糸を乾燥し、これを約100〜130℃程度の温度に保たれた炉に通し、通過させることによって着色された釣糸を製造できる。着色剤としては、無機顔料、有機顔料または有機染料が知られているが、好適なものとしては、例えば、酸化チタン、カドミウム化合物、カーボンブラック、アゾ化合物、シアニン染料または多環顔料などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、上述のような断面形状が偏平状で、かつ断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有する熱可塑性樹脂からなるモノフィラメント(以下、「偏平状の中空モノフィラメント」という。)の外周の少なくとも一部を溶剤処理に付してもよい。溶剤処理を付した部分は、よりコシがでるという利点がある。
【0025】
前記溶剤処理は、約30〜50℃程度に加熱した溶剤に偏平状の中空モノフィラメントを、0を超えて数秒間以内程度浸漬することによって行われる。溶剤処理に用いられる溶剤としては、特に限定されず、当技術分野で用いられている公知の溶剤を用いてよい。例えば、具体的には、フェノール(石炭酸)、又はその誘導体もしくはその塩などが挙げられ、これらは適当な溶媒に溶解されていてもよい。なかでも、石炭酸を用いるのが好ましい。
また、前記溶剤に下記に詳述する被覆樹脂を混合しておけば、上記のような溶剤処理により、釣糸の外周の被覆をも同時に行うことができる。なかでも、約30〜50℃程度に加熱した石炭酸にナイロンもしくは共重合ナイロンなどのポリアミド樹脂を添加し、かかる混合液に偏平状の中空モノフィラメントを0を超えて数秒間以内程度浸漬することにより、前記モノフィラメントの外周が、溶媒処理され、かつ前記ポリアミド樹脂で被覆されている釣糸が得られる。
【0026】
本発明にかかる釣糸は、長手方向において径の変化がないレベルラインであってもよく、長手方向に径が変化するテーパーラインであってもよい。本発明に係る釣糸がレベルラインである場合は、上述した方法により製造することができる。本発明に係る釣糸がテーパーラインである場合の製造方法について下記に詳述する。
【0027】
本発明において、偏平状の中空モノフィラメントをテーパー状にする方法は、特に限定されず、公知の方法に従ってよい。例えば、溶融紡糸の際に熱可塑性樹脂の押出量を制御することにより、テーパー状を形成することができる。具体的には、前記押出量を多くすると径が大きくなり、前記押出量を少なくすると径が細くなる。また、延伸する際に、延伸速度を調整することによりテーパー状を形成させることもできる。具体的には、延伸速度を上げることにより径が小さくなり、延伸速度を下げることにより径が大きくなる。さらには、上記のようにして得られた本発明に係るレベルラインの釣糸を再び加熱延伸に付し、その際に延伸速度を調整することによりテーパー状を形成させることもできる。ただし、この場合は、本発明に係る釣糸は延伸可能なフィラメントであることが特に好ましい。ここで、「延伸可能なフィラメント」とは、延伸処理が行われ得るフィラメントをいう。延伸可能なフィラメントとしては、具体的に、例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、フッ素系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリアセタール系などの熱可塑性樹脂からなるフィラメントが挙げられる。
【0028】
上記いずれのテーパー形状の形成方法においても、樹脂の押出量または延伸速度を変化させる際には、それらの変化がなだらかに増加傾向または減少傾向を示すことが好ましい。それらの変化はなだらかな変化であれば、一定割合で変化してもよいし、変則的に変化してもよい。
溶融紡糸時の樹脂の押出量または延伸時の延伸速度は、本発明にかかる釣糸を構成する熱可塑性樹脂の種類またはモノフィラメントの太さ等により異なるので、一概にはいえない。具体的には、例えば、フィラメントの径の最も大きい部分を形成させる際の延伸速度と、フィラメントの径の最も小さい部分を形成させる際の延伸速度との比が、1:1.5〜4程度であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、偏平状の中空モノフィラメントの外周をさらに樹脂で被覆してもよい。かかる樹脂被覆は、偏平状の中空モノフィラメントの長手方向全てにおいて行われてもよいし、一部のみに行われてもよい。例えば、本発明にかかる釣糸がテーパー状を呈している場合、バット部と呼ばれる径の太い部分にのみ樹脂被覆を施すことが考えられる。このような形態の釣糸をテーパーリーダーとして用いた場合、バット部がよりコシを持ちロッドの反発力を糸の先端に伝えることができる一方で、糸の先のティペット部は細くてしなやかさを維持することができる。
【0030】
本発明において被覆に用いる樹脂(以下、「被覆樹脂」という。)は、特に限定されず、公知の樹脂を用いてよいが、被覆されるモノフィラメントに密着できる樹脂が好ましい。さらに、屋外での長期使用に耐え、こすれや曲げ疲労性等の耐久特性に優れているものが被覆樹脂としてより好ましい。前記被覆樹脂は、メルトインデックスが約0.1g/10分以上、より好ましくは、約0.1g/10分〜1000g/10分程度のものが好適である。コアとなる糸条の引張り強度を損なわずに被覆するためには、上記範囲のメルトインデックスを有する被覆樹脂を用いることが好ましい。ここで、樹脂のメルトインデックスは、JIS K 7210(1976)「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に従った方法にて、メルトインデクサ(宝工業株式会社製 L−202)で測定する。
【0031】
上記被覆樹脂としては、具体的には、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはエチレン酢酸ビニル共重合体などポリオレフィン系樹脂もしくはその変性物;ナイロンもしくは共重合ナイロンなどのポリアミド樹脂;アクリル系樹脂もしくはその共重合変性物;ポリウレタン樹脂;ポリスチレン樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;またはエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
本発明において用いられる被覆樹脂として、金属粒子を含有する樹脂を用いてもよい。すなわち、金属粒子が含有されている本発明の釣糸としては、(a)本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂に金属粒子が含有されている釣糸、(b)偏平状の中空モノフィラメントの外周が被覆樹脂で被覆されており、前記被覆樹脂に金属粒子が含有されている釣糸、(c)偏平状の中空モノフィラメントの外周が被覆樹脂で被覆されており、前記モノフィラメントと被覆樹脂との両方に金属粒子が含有されている釣糸、の3つの態様が挙げられる。いずれの態様においても、用いられる金属粒子の種類または含有量については、上述した(a)本発明の釣糸を構成する熱可塑性樹脂に金属粒子を含有させる場合と全く同様である。
【0033】
本発明において外周を被覆樹脂で被覆する方法としては、加圧押出し被覆など公知の方法に従って行うことができる。中でも、パイプ式押出被覆による方法を用いることが好適である。パイプ式押出被覆による方法は押出成型機から溶融した被覆樹脂を押し出し、予熱されている偏平状の中空モノフィラメントに当該被覆樹脂を加圧状況下に密着させるものであり、被覆樹脂の密着性が格段に優れたものとなる。その他、例えばアプリケーター、ナイフコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ロッドコーターまたは刷毛など公知の手段を用いて被覆樹脂を塗布してもよいし、溶融状もしくは溶液状の被覆樹脂を収納した桶の中に偏平状の中空モノフィラメントを浸漬し引き上げて余剰量をしぼり取るという方法を用いてもよい。
【0034】
外周が被覆樹脂で被覆されている偏平状の中空モノフィラメントが、テーパー状である場合、その製造方法としては、テーパー形状を形成する時点により、(a)テーパー状の偏平中空モノフィラメントを用いる方法および(b)被覆部をテーパー状に形成する方法に大別することができる。
前記(a)テーパー状を有する偏平状の中空モノフィラメントを用いる方法は、前述のようにしてテーパー状の偏平中空モノフィラメントを製造し、かかるテーパー状の偏平中空モノフィラメントの外周に上述したような公知の方法で樹脂被覆をするという方法である。前記樹脂被覆は、テーパー状を有する偏平状の中空モノフィラメントの一部に行ってもよい。
【0035】
前記(b)被覆部をテーパー状に形成する方法は公知の方法を用いてよい。例えば、押出機に組み込まれている計量ポンプ(ギヤーポンプ)の回転数を任意に上下させて被覆樹脂の吐出量を変え、さらに、それぞれの状況下における回転数の持続時間をコントロールすることにより、目的とする太部と細部とテーパー部とにおいて、それぞれの長さを持ち合わせているテーパー形状を形成することができる。テーパー部の形状は計量ポンプの、高速回転から低速回転または低速回転から高速回転への切り替え時間の長短により変化を付けることができる。
【0036】
上記(b)の方法において、コアとなる偏平状の中空モノフィラメントは、長手方向において径の変化がないレベルラインであってもよく、長手方向に径が変化するテーパーラインであってもよい。また、前記テーパー状の樹脂被覆は、偏平状の中空モノフィラメントの一部に行ってもよい。
【0037】
以上述べてきた本発明にかかる釣糸は、さらにその周りが合成繊維または金属繊維で被覆されていてもよい。すなわち、(a)偏平状の中空フィラメントの周りが合成繊維または金属繊維で被覆されている釣糸、または(b)偏平状の中空フィラメントの周りが樹脂で被覆されており、さらにその周りが合成繊維または金属繊維で被覆されている釣糸も、本発明にかかる釣糸として挙げられる。なかでも、上記態様の釣糸としては、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りが合成繊維または金属繊維で製紐されている釣糸が好ましい。
【0038】
上記態様の釣糸の最外層を構成する合成繊維は、例えば、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル系繊維などの公知の合成繊維を用いてよい。また、本発明にかかる釣糸の最外層を構成する合成繊維は、上記したような金属粒子を含んでいる合成繊維であってもよい。なかでも、該合成繊維としては、易染性繊維または超高分子量ポリエチレン繊維を用いることが好ましい。
前記易染性の合成繊維として、具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはフッ素系樹脂などからなる繊維が挙げられる。このように易染性の繊維を用いることにより、本発明に係る釣糸を容易に染色することができるという利点がある。
【0039】
また、本発明にかかる釣糸の最外層を超高分子量ポリエチレン繊維で構成することにより、汚れ等が付着しにくく、釣糸表面がべたつくなどの問題を実質的に生じないという利点がある。そのため、釣糸が絡み合ったり、ひっついたりすることが少なくなり、その結果キャスティングが行いやすく、また釣糸の耐久性も向上する。さらに、最外層が超高分子量ポリエチレン繊維であると、強度が強く、環境への負荷が小さいという優れた釣糸を提供することができるという利点もある。
【0040】
ここで、前記超高分子量ポリエチレン繊維を構成する超高分子量ポリエチレンとしては、分子量が約20万程度以上、好ましくは約60万程度以上のものが好適に用いられる。かかる超高分子量ポリエチレンは、ホモポリマーであってもよいし、炭素数3〜10程度の低級α−オレフィン類、例えばプロピレン、ブテン、ペンテン、へキセン等との共重合体であってもよい。該エチレンとα−オレフィンとの共重合体としては、後者の割合が炭素数1000個当たり平均0.1〜20個程度、好ましくは平均0.5〜10個程度である共重合体を用いるのが好ましい。超高分子量ポリエチレン繊維の製造方法は、例えば特開昭55−5228、特開昭55−107506などに開示されており、これら自体公知の方法を用いてよい。また、超高分子量ポリエチレン繊維として、ダイニーマ(登録商標東洋紡株式会社製)やスペクトラ(登録商標 ハネウエル社製)等の市販品を用いてもよい。
【0041】
上記態様の釣糸の最外層を構成する金属繊維としては、例えば、合金軟線、銅線、ステンレススチール線、タングステン線またはアモルファス線などが挙げられる。
【0042】
上記態様の釣糸は、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに、公知の製紐機を用いて合成繊維または金属繊維を製紐することにより得ることができる。また、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに、合成繊維または金属繊維を配置し、隣接する合成繊維または金属繊維を少なくとも一部において接着することによっても、上記態様の釣糸を得ることができる。隣接する合成繊維または金属繊維を少なくとも一部において接着するには、公知の方法を用いてよい。例えば熱接着性樹脂を予め最外層を構成する合成繊維または金属繊維に付着させておき、かかる合成繊維または金属繊維を、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに配置し、加熱することにより熱接着性樹脂を介して隣接する合成繊維または金属繊維の少なくとも一部を接着することができる。また、糸条となっている熱接着性樹脂(以下、単に「熱接着性樹脂糸条」という。)を用い、該熱接着性樹脂糸条と最外層を構成する合成繊維または金属繊維とを、偏平状の中空フィラメントまたは樹脂被覆されている偏平状の中空フィラメントの周りに配置し、加熱することにより熱接着性樹脂を介して隣接する合成繊維または金属繊維の少なくとも一部を接着することもできる。前記いずれの製造方法においても、加熱温度は、熱接着性樹脂の融点以上で、かつ構成フィラメントの融点以下の温度、好ましくは約50〜200℃程度、より好ましくは約50〜160℃程度、さらに好ましくは約60〜130℃程度の温度が好適である。
【0043】
前記熱接着性樹脂は、最外層を構成する合成繊維または金属繊維の融点よりも低融点であることが好ましい。該熱接着性樹脂としては、具体的には、融点が約50〜200℃程度の樹脂、好ましくは約50〜160℃程度の樹脂、より好ましくは融点が約60〜135℃程度の樹脂、特に好ましくは融点が100℃前後の樹脂が挙げられる。前記融点は、例えばJIS L 1013(1999)に従った方法にて、公知の測定器、例えばパーキンエルマー社製「DSC7」で測定できる。具体的に、かかる熱接着性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂などが好適な例として挙げられる。また、かかる熱接着性樹脂としては、下記に詳述するホットメルト接着剤を用いることもより好ましい。
【0044】
上記態様の釣糸のうち、偏平状の中空フィラメントの周りが合成繊維または金属繊維で被覆されている釣糸の場合、偏平状の中空フィラメントと最外層の合成繊維または金属繊維とが、少なくとも部分的にホットメルト接着剤で固着されていることが好ましい。このようにすることにより、偏平状の中空フィラメントと最外層の合成繊維または金属繊維とのずれを防止でき、平滑でかつ外観も良好な釣糸を提供できるという利点がある。
【0045】
前記ホットメルト接着剤は、熱可塑性高分子を主体とする固形分100%の接着剤であって、熱溶融させて粘度を低くして塗布された後、冷却とともに固化し、接着力を発揮する接着剤をいう。本発明において、ホットメルト接着剤は、前述のようなものであれば特に限定されず、公知のホットメルト接着剤を用いてよい。中でも、本発明で用いるホットメルト接着剤は、硬化後に約100℃程度以下では溶融しないものを用いるのが好ましい。本発明にかかる釣糸の運搬時または保存時にホットメルト接着剤が溶け出し、例えばスプールに巻かれた状態で固化するのを防止するためである。また、該ホットメルト接着剤の融点は、構成フィラメントの融点よりも低いほうが好ましい。
【0046】
本発明で用いるホットメルト接着剤としては、例えば、ベースポリマーの種類により、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系接着剤、ポリエチレン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、熱可塑性ゴム系接着剤、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)系接着剤、ポリ酢酸ビニル共重合体系接着剤、ポリカーボネート(PC)系接着剤等が挙げられる。本発明で用いるホットメルト接着剤としては、中でもポリエチレン系接着剤またはポリオレフィン系接着剤を用いることが好ましい。
【0047】
本発明で用いるホットメルト接着剤としては、反応型ホットメルト接着剤がさらに好ましい。反応型ホットメルト接着剤においては、接着後に架橋反応が起こり耐熱性が向上する。具体的には、反応型ホットメルト接着剤を比較的低温で溶融させ、構成フィラメントに塗布または含浸させても、一旦接着すると、かかる接着剤は、低温、具体的には約100℃以下の温度では溶融しなくなる。そのため、反応型ホットメルト接着剤を用いれば、釣糸の運搬時または保存時にホットメルト接着剤が溶け出す可能性を極力低くすることができる。
【0048】
本発明で用いる反応型ホットメルト接着剤としては、特に限定されず、公知のものを用いてもよい。中でも、接着剤塗布時に、比較的低温、具体的には約60〜130℃程度、好ましくは約70〜100℃程度の温度で溶融するものが好ましい。
上記反応型ホットメルト接着剤としては、具体的には、架橋反応の種類により以下のような接着剤が挙げられる。例えば、(a)ポリマー中のカルボキシル基と多価金属イオンにより架橋反応を行わせるイオン架橋型ホットメルト接着剤;(b)接着後加熱硬化させる加熱架橋型ホットメルト接着剤;(c)二重結合を有するブロックコポリマーやポリエステルを利用し、電子線や紫外線などの高エネルギー線を照射することにより架橋反応を行わせるホットメルト接着剤;(d)溶融塗布後の空気中もしくは被着材中に存在する水分(湿気)と反応させることにより架橋を行わせる湿気硬化型ホットメルト接着剤;または(e)種々の官能基を有するポリマーとそのポリマー中に存在する官能基と反応する添加剤またはポリマーを各々溶融し、塗布直前に混合塗布することにより、2液を反応させ架橋構造を形成させるホットメルト接着剤等がある。
【0049】
本発明で用いる反応型ホットメルト接着剤としては、加熱架橋型ホットメルト接着剤または湿気硬化型ホットメルト接着剤がより好ましく、さらに湿気硬化型ホットメルト接着剤が特に好ましい。
加熱架橋型ホットメルト接着剤として、具体的には、(a)ポリエステルもしくはコポリアミドの末端カルボキシル基もしくはアミノ基、または(b)分子末端もしくは側鎖に導入したイソシアネート基を、カプロラクタムまたはフェノール等のブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートを含有するホットメルト接着剤が挙げられる。
湿気硬化型ホットメルト接着剤として、具体的には、アルコキシ基をポリマー中に導入したホットメルト接着剤、イソシアネート基やポリマー中に導入したホットメルト接着剤などが挙げられる。
【0050】
本態様において、ホットメルト接着剤の塗布量は、偏平状の中空フィラメントと最外層の合成繊維または金属繊維とが少なくとも部分的に固着されるように適宜選択することができる。ただし、ホットメルト接着剤が表面にはみ出し凹凸が生じて釣糸の滑かさが失われないように、その塗布量を選択することが好ましい。具体的には、ホットメルト接着剤の塗布量は、本発明にかかる釣糸全体の重量に対して約1〜20重量%程度、より好ましくは約5〜10重量%程度であることが好適である。
【0051】
前記態様の釣糸の製造方法について下記に詳述する。まず、偏平状の中空フィラメントにホットメルト接着剤を塗布または含浸させる。塗布または含浸方法としては、特に限定されず、公知の方法が採用され得る。具体的には、例えば、上記偏平状の中空フィラメントを溶融装置内にディッピングして所望により余剰分を搾り取る方法、スプレーなどを用いて塗布する方法、または押出し被覆機を用いて押出しコーティングする方法などが挙げられる。また、公知のアプリケーターを使用してもよい。特に、ノズルガンヘッドを有するアプリケーターを用いるのが好ましい。
【0052】
ホットメルト接着剤が塗布または含浸された偏平状の中空フィラメントの周りを合成繊維または金属繊維で被覆する。被覆方法は、上述のとおりである。
次いで、得られた芯鞘構造を有する糸条を加熱処理に付す。かかる加熱処理は、空気中もしくは水蒸気中など公知の条件下で行えばよく、また、常圧下で行っても、加圧下で行ってもよい。また、加熱処理時の加熱温度は、ホットメルト接着剤の種類または釣糸を構成するフィラメントの種類などにより異なるので一概には言えない。しかし、ホットメルト接着剤の溶融温度以上、釣糸を構成するフィラメントの融点以下の温度で行うのが好ましい。具体的には、約50〜200℃の範囲内で加熱処理を行うのがより好ましい。
【0053】
本発明においては、上記得られた芯鞘構造を有する糸条に対し、所望により延伸処理を行っても良い。かかる延伸処理は、上述の加熱処理と別々に行ってもよいし、同時に行っても良い。別々に行う場合は、いずれの処理を先に行っても良い。なかでも、本発明において延伸処理を行う場合は、加熱処理と延伸処理とを同時に行うことが好ましい。
【0054】
以上述べてきた本発明に係る釣糸の用途は特に限定されない。例えば、フライフィッシング用のフライライン、シューティングラインもしくはテーパーリーダー、またはテンカラ釣りに使用される釣糸等に好適に使用される。本発明にかかる釣糸がテーパー形状を呈している場合は、特に上記用途に用いるのが好ましい。
【0055】
【実施例】
下記実施例において、得られた釣糸の断面形状を、ニコン社製マイクロフォトS光学顕微鏡に取り付けた顕微鏡写真撮影装置を用いて撮影し、上記数式1に従って中空率を算出した。また、かかる断面形状の写真から偏平率も測定した。得られた釣糸の比重は、電子比重計SD−200L(ミラージュ貿易株式会社製)を用いて測定した。
【0056】
〔実施例1〕
エクストルーダー型溶融紡糸装置を使用し、モノフィラメントの断面形状が図1に示すような中空部の数が4個となるような紡糸口金を用いて、ペレット状ポリアミド−6(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ミツビシノバミッド1020A)を溶融紡糸した。紡出したフィラメントを20℃の水で冷却後、引き続いてこれを95℃の水蒸気雰囲気中で2.5倍に延伸し、4つの中空部を有する偏平状モノフィラメントからなる2.5号の釣糸を製造した。かかる釣糸は、偏平率が0.7、比重が1.14、中空率が10%であった。
【0057】
〔実施例2〕
ポリアミド−6の代わりに、共重合ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ミツビシノバミッド2020A)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして2.5号の釣糸を製造した。かかる釣糸は、偏平率が0.7、比重が1.14、中空率が10%であった。
【0058】
〔実施例3〕
ポリアミド−6の代わりに、主成分として共重合ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ノバミッド2030Jチップ、比重=1.14)を、また副成分として金属(タングステン、比重=19.3)を含有する高比重ナイロン樹脂(カネボウ合繊株式会社製 MCTS00005チップ、比重=3)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして2.5号の釣糸を製造した。かかる釣糸は、偏平率が0.7、比重が3.0、中空率が10%であった。
【0059】
〔実施例4〕
エクストルーダー型溶融紡糸装置を使用し、モノフィラメントの断面形状における中空部の数が8個となるような直径1.4mmの紡糸口金を用いて、ペレット状ポリアミド−6(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社 ミツビシノバミッド1020A)を溶融紡糸した。この際、前記溶融紡糸装置からの樹脂の押出量を制御することにより、太部と細部を有するテーパー状のフィラメントとした。紡出したフィラメントを20℃の水で冷却後、引き続いてこれを95℃の水蒸気雰囲気中で2.5倍に延伸し、8つの中空部を有する偏平状モノフィラメントからなるテーパー状の釣糸を製造した。具体的に、かかる釣糸の形状は、太部の直径が0.56mm、細部の直径が0.21mm、長さが2.7mであった。
【0060】
〔実施例5〕
実施例4で作製した8つの中空部を有する偏平状モノフィラメントからなるテーパー状の釣糸を太部同士および細部同士が揃うように束ね、太部のみを40℃に加熱した石炭酸に浸漬し、直ちに引き上げることにより、溶剤処理を行った。得られた本発明に係るテーパー状の釣糸は、太部においてよりコシが出た。
【0061】
【発明の効果】
本発明にかかる釣糸は、その断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有するため、水面や水面付近に浮かしたり、沈降速度を調整したりすることができる。さらに、本発明にかかる釣糸に金属粒子を含有させると、釣糸の比重を原料となる熱可塑性樹脂の比重にかかわらず設定できるため、より細かい沈降速度の調整が可能になる。
さらに、本発明にかかる釣糸は、その断面形状が偏平状であるから、中空部を有することに起因するコシのなさを改善することができる。その結果、本発明にかかる釣糸によれば、フライまたは毛バリなどの軽い仕掛けを使用するフライフィッシングやテンカラ釣りにおいて、釣り竿の動きによって生まれた反発力を釣糸の先端まで伝えることができ、軽い仕掛けを目的のところに正確に飛ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る釣糸の断面の一態様を示す。
【図2】本発明に係る釣糸の断面の他の態様を示す。
【符号の説明】
1 中空部
2 架橋部
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、その断面形状が偏平状で、かつその断面形状において架橋部を介して2つ以上の中空部を有することを特徴とする釣糸。
- モノフィラメントの断面の短い方の長さaと長い方の長さbとの比a/bが、0.5〜0.9である請求項1に記載の釣糸。
- 外周の少なくとも一部が溶剤処理されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
- テーパー状であることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
- 金属粒子が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
- 金属がタングステンであることを特徴とする請求項5に記載の釣糸。
- 比重が0.97〜10.0であることを特徴とする請求項5に記載の釣糸。
- さらに、外周が合成繊維または金属繊維で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
- 外周の少なくとも一部が樹脂被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
- テーパー状であることを特徴とする請求項9に記載の釣糸。
- 熱可塑性樹脂または/および被覆樹脂に金属粒子が含有されていることを特徴とする請求項9に記載の釣糸。
- 金属がタングステンであることを特徴とする請求項11に記載の釣糸。
- 比重が0.97〜10.0であることを特徴とする請求項11に記載の釣糸。
- さらに、外周が合成繊維または金属繊維で被覆されていることを特徴とする請求項9に記載の釣糸。
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