JP2004022365A - 燃料電池システム及び燃料電池自動車 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料電池10と,熱媒流路4を介して燃料電池10に接続されていると共に水素吸蔵合金を内蔵してなる水素吸蔵合金タンク2と,水素を供給可能な水素タンク3とを有する。燃料電池10の温度が所定の暖機基準温度よりも低い場合には,水素タンク3から水素吸蔵合金タンク2へ水素を供給し,発生した熱を燃料電池10に伝達してその温度を上昇させる暖機作業を行う。さらに,水素を吸蔵している水素吸蔵合金の再生作業を行うに当たっては,水素タンク3から燃料電池10へ水素を供給しながら行い,かつ,水素吸蔵合金から放出される水素を燃料電池10へ供給する。
【選択図】 図1
Description
【技術分野】
本発明は,例えば燃料電池自動車などに搭載可能な燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来技術】
例えば燃料電池自動車に搭載されている燃料電池は,燃料極に水素,酸化剤極に酸素を供給し,電解質層を介した電気化学反応 H2+1/2O2→H2O により発電するシステムである。
燃料電池から生成する水は通常未反応ガスと共に外部へ捨てられるが,燃料電池停止時などにはガス流通路に生成した水が残ったままとなる場合がある。寒冷地などに燃料電池自動車を適用した場合,外気温が水の凝固点である0℃以下になると,ガス流通路に残った水が凍結しガス流通路を塞いでしまう。そのため,燃料ガスが流れなくなって,燃料電池が起動できないという問題が生じる。
【0003】
特に上記燃料電池が固体分子型燃料電池(PEFC)である場合には,電解質膜内又はその表面に存在する水分が低温時に凍結することがあり,発電が不能或いは発電効率が低下する場合がある。
そのため,従来においては,低温から立ち上げるときに,電気エネルギー又は燃焼エネルギーなどによって燃料電池本体を加熱する機能を設けた燃料電池システムが提案されている。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の燃料電池システムにおいては次の問題がある。
即ち,燃料電池本体を電気エネルギーを利用して加熱するためには,専用の大容量のバッテリーが必要であり,また燃焼エネルギーを利用して加熱するためには,専用の燃焼設備が必要である。そのため,燃料電池システムの大型化を来してしまう。更には,発電に寄与しない電気エネルギー又は燃焼エネルギーの消費によるエネルギー損失が大きく,燃料電池システム全体のエネルギー効率が低下してしまう。
【0005】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,低温時の立ち上げをスムーズに行うことができ,かつ,立ち上げ時のエネルギー損失を抑制すると共に,燃料電池の負荷変動に対する水素供給応答性に優れる燃料電池システム及びこれを搭載した燃料電池自動車を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】
第1の発明は,燃料電池と,
熱交換媒体を循環させる熱媒流路を介して上記燃料電池と接続されていると共に水素吸蔵合金を内蔵してなる水素吸蔵合金タンクと,
上記燃料電池及び上記水素吸蔵合金タンクに水素を供給可能な水素タンクとを有し,
上記燃料電池による発電を開始するに際し,該燃料電池の温度が所定の暖機基準温度よりも低い場合には,上記水素タンクから上記水素吸蔵合金タンクへ水素を供給し,該水素吸蔵合金タンクにおいて上記水素吸蔵合金に水素を吸蔵させて熱を発生させ,発生した熱を上記熱交換媒体によって上記燃料電池に伝達して該燃料電池の温度を上昇させる暖機作業を行い,
上記暖機作業によって水素を吸蔵している上記水素吸蔵合金から水素を放出させる再生作業を行うに当たっては,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給することによって上記燃料電池で発生する熱を,上記燃料電池へ水素が供給されている状態で,上記熱交換媒体を介して上記水素吸蔵合金に伝達して上記水素吸蔵合金の温度を上昇させることにより,上記水素吸蔵合金から水素を放出させて,上記燃料電池へ水素を供給するように構成されていることを特徴とする燃料電池システムにある(請求項1)。
【0007】
上記第1の発明の燃料電池システムは,上記熱交換媒体を循環させる熱媒流路を介して上記燃料電池と接続された上記水素吸蔵合金タンクを有している。該水素吸蔵合金タンクには,上記水素タンクから水素を供給する。そして,本発明は,この水素吸蔵合金タンクに内蔵された水素吸蔵合金が水素吸蔵を行った際の発熱特性を積極的に利用して,上記暖機作業を実現可能にしたものである。
【0008】
即ち,上記暖機作業は,まず上記水素タンクから上記水素吸蔵合金タンクに水素を供給し,内蔵された水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ発熱させる。そして,この発生した熱を上記熱交換媒体に伝達し,さらに熱交換媒体から燃料電池に伝達することで燃料電池の温度を高める。このように,上記燃料電池システムでは,外部からの電気エネルギーや燃焼エネルギーを導入することなく,上記水素タンクから供給される水素を利用して上記暖機作業を行うことができる。またこの暖機作業において上記水素吸蔵合金タンク内に吸蔵された水素は,上記再生作業により,上記燃料電池の燃料として活用することができる。そのため,エネルギー損失を抑制しつつ,上記暖機作業を実施することができる。
【0009】
また,上記燃料電池システムは,上記再生作業時には,上記水素吸蔵合金から水素を放出させて,上記燃料電池へ水素を供給するよう構成してある。そして,上記再生作業を実施するに当たっては,運転中の上記燃料電池で発生する熱を上記熱交換媒体を介して上記水素吸蔵合金に伝達して上記水素吸蔵合金の温度を上昇させることにより,上記水素吸蔵合金から水素を放出させる。
【0010】
そのため,上記暖機作業を行うための上記熱交換媒体を共用して,上記再生作業を効率的に実施することができる。このように,上記燃料電池システムでは,外部からの電気エネルギーや燃焼エネルギーを導入することなく,上記燃料電池において発生する排熱を利用して,エネルギー損失を抑制しつつ効率的に上記再生作業を行うことができる。
【0011】
さらに,上記第1の発明の上記燃料電池システムは,上記再生作業を実施するに当たって,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給しながら行う。
そのため,上記再生作業時に安定して上記燃料電池を稼動させ続けることができる。即ち,上記のごとく再生作業時に発生した水素は,上記燃料電池に供給してその燃料とする。しかし,上記再生作業時に,この再生した水素のみによって上記燃料電池を運転したならば,上記燃料電池の負荷が増大した場合などに,必要な水素量の全てを供給できない状況に陥いるおそれがある。
【0012】
これに対して,本発明においては,上記再生作業を実施する間も上記水素タンクから上記燃料電池への水素の供給を中止しないため,水素の供給量が不足するようなおそれがない。それ故,上記再生作業時の燃料電池の安定稼動を実現することができる。
【0013】
またさらに,上記再生作業中,再生した水素のみの上記燃料電池への供給と,上記水素タンクからのみの燃料電池への水素の供給とを,随時切り換える方法が考えられる。しかし,この場合には,上記燃料電池の負荷が急激に変動した場合に,迅速に対応できないおそれが生じる。
これに対して本発明は,上記のごとく,上記再生作業において,上記水素吸蔵合金タンクから上記燃料電池への水素供給と,上記水素タンクから上記燃料電池への水素供給とを同時に行うため,燃料電池の負荷変動に応じて水素の供給元を切り換える必要がない。それ故,上記再生作業時の燃料電池の応答性を悪化することなく稼動させることができる。
【0014】
このように,上記第1の発明によれば,エネルギー損失を抑制すると共に,低温時の立ち上げをスムーズに行うことができ,かつ,発電負荷の変動に対する応答性に優れる燃料電池システムを提供することができる。
【0015】
第2の発明は,上記第1の発明に基づく燃料電池システムを有し,該燃料電池システムから供給される電力により駆動モータを運転するように構成されていることを特徴とする燃料電池自動車にある(請求項9)。
上記第2の発明の燃料電池自動車は,駆動モータを有しており,上記第1の発明の燃料電池システムにより発電された電力により,上記駆動モータを回転させ,その回転力を路面に伝えて走行する。
【0016】
そのため,上記第2の発明による燃料電池自動車は,コールドスタート時には,上記水素吸蔵合金の水素吸蔵時に発生する熱量を利用して,効率良く,上記燃料電池の暖機作業を実施することができる。
また,上記再生作業を実施するに当たっては,水素を吸蔵した水素吸蔵合金を,燃料電池の運転に伴う排熱により再生する。すなわち,上記熱交換媒体を介して燃料電池の排熱を伝達し,水素吸蔵合金の温度を上昇することにより,水素を放出させる。そして,放出される水素を,燃料電池の燃料として供給する。そのため,エネルギー損失を抑制しながら,無駄を少なくして燃料電池の暖機作業及び再生作業を実施することができる。
【0017】
また,再生作業を実施する際,水素吸蔵合金から放出される水素と,水素タンクから供給される水素とを,同時に燃料電池へ供給する。そのため,上記水素吸蔵合金の再生作業中において,上記燃料電池自動車の走行負荷が急激に増加した場合であっても,水素供給量不足に起因する燃料電池の発電量が不足することがない。それ故,上記燃料システムを適用した上記燃料電池自動車は,走行負荷の変動に対する応答性が良好な優れた走行性能を発揮しうるものとなる。
このように,上記第2の発明によれば,エネルギー損失を抑制すると共に,低温時の立ち上げをスムーズに行うことができ,かつ,発電負荷の変動に対する応答性に優れる燃料電池自動車を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
上記各発明における上記燃料電池としては,例えば固体分子型燃料電池(PEFC)を適用することができる。このPEFCは,電解質膜又はその表面に存在する水分が凍結することがあり,また,凍結していなくても燃料電池本体を定常運転温度まで暖める必要があることがある。そのため,上記暖機作業を実施することが非常に有効である。なお,上記燃料電池としては,上記PEFC型以外の形式のものを適用することも勿論可能である。
【0019】
また,上記暖機基準温度としては,上記燃料電池の特性,あるいは燃料電池システム全体の特性に応じて任意に設定することができる。例えば燃料電池内での生成水の凍結を解消さえすれば十分に効率的な発電が可能な場合には,上記暖機基準温度を0℃付近に設定することができる。また,燃料電池の最適運転温度が生成水の凍結温度よりも高い場合には,その最適運転温度付近を上記暖機基準温度として設定することもできる。この場合には,最適運転温度まで早期に燃料電池を昇温することができ,最適な運転状況を早期に実現することができる。
【0020】
また,上記水素吸蔵合金タンクに内蔵される上記水素吸蔵合金としては,公知の様々な水素吸蔵合金を採用することができる。例えば,MmNi5(Mmはミッシュメタル)に代表される希土類系合金,TiFeに代表されるチタン系合金,Mg2Niに代表されるマグネシウム系合金等の様々な水素吸蔵合金がある。
【0021】
また,上記水素タンクとしては,高圧水素ボンベ,水素吸蔵合金タンク,その他の種々のタイプの水素貯蔵手段を適用することができる。このうち,特に高圧水素ボンベは,バルブの操作のみによって水素の導出及び停止を制御できるので,制御機構を比較的簡単にすることができる。
また,上記水素タンクは,1つで上記燃料電池と水素吸蔵合金タンクに水素を供給するよう構成することが好ましいが,2つ設けて燃料電池用と水素吸蔵合金タンク用に分けることも可能である。また2つ設ける場合,その形式を異なるものにすることもできる。
【0022】
また,上記燃料電池システムは,上記燃料電池の温度が所定の再生基準温度以上であって,かつ,上記水素吸蔵合金タンクにおける上記水素吸蔵合金が所定の水素吸蔵量以上の水素を吸蔵しているとき,上記再生作業を実施するよう構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0023】
この場合には,上記所定の再生基準温度以上である上記燃料電池の熱により,上記所定の水素吸蔵量以上の水素を吸蔵した上記水素吸蔵合金の温度を昇温させることにより,効率良く,上記水素吸蔵合金から水素を放出させることができる。なお,上記再生基準温度としては,上記燃料電池の特性,あるいは燃料電池システム全体の特性に応じて任意に設定することができる。
【0024】
また,上記暖機作業時における上記水素吸蔵合金タンク内の水素の圧力であるタンク圧に対して,上記再生作業時における上記タンク圧を低くするように構成されていることが好ましい(請求項3)。
水素吸蔵合金は,一般的に,周囲の圧力が高いほど,水素を吸蔵しやすい一方,周囲の圧力を低くする程,より低い温度から水素の放出を始めるという特性を有している。
【0025】
そのため,上記のごとく,再生作業時における上記タンク圧を低くした場合には,水素吸蔵合金はより低い温度から水素を放出し始める。そのため,上記再生作業可能な水素吸蔵合金の温度を低くすることができる。それ故,上記燃料電池から上記水素吸蔵合金へ熱を供給する熱交換媒体を介して,上記燃料電池から上記水素吸蔵合金へ供給する熱量を少なくして,水素吸蔵合金から水素を放出させることができる。
したがって,上記燃料電池の発電負荷が低く,燃料電池から大量の排熱が生じず,熱交換媒体の温度が十分上がらない場合であっても,上記水素吸蔵合金の再生を実施できるようになる可能性が生じる。
【0026】
また,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給するための流路として,少なくとも,上記水素タンクと上記燃料電池とを直接的に連結した上記メイン流路と,該メイン流路上の分岐点から分岐して上記水素吸蔵合金タンクに連結されたバイパス流路とを有しており,
上記分岐点と上記水素タンクとの間には,水素圧を規制圧Prに規制するタンクレギュレータが設けられていると共に,上記タンクレギュレータによる規制圧Prは設定変更可能に構成されており,
上記暖機作業時における上記規制圧Prに対して,上記再生作業時における上記規制圧Prを低く設定することにより,上記再生作業時における上記タンク圧が,上記暖機作業時における上記タンク圧よりも低くなるよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0027】
この場合には,上記分岐点と上記水素タンクとの間に配設した上記タンクレギュレータの規制圧Prを,上記暖機作業時と上記再生作業時とで変更することにより,暖機作業時における上記水素吸蔵合金タンクのタンク圧に対して,再生作業におけるタンク圧を低くすることができる。そのため,速やかな暖機作業と,効率の良い再生作業を両立させることができる。
【0028】
また,上記分岐点と上記燃料電池との間には,上記燃料電池に水素を供給する圧力を供給圧Psに規制する供給レギュレータが設けられていることが好ましい(請求項5)。
この場合には,上記水素タンクから供給される水素圧を上記タンクレギュレータと上記供給レギュレータとを用いて規制することにより,上記燃料電池への水素の供給圧を,さらに安定化させることができる。そして,上記燃料電池において,さらに安定的に発電させることができる。
【0029】
また,上記水素吸蔵合金タンクには上記タンク圧を計測する圧力センサが配設されていると共に,上記バイパス流路には,上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを連通させ又は遮断するタンク弁が配設されており,
上記暖機作業時には,上記タンク弁を開けて上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを連通させ,
上記再生作業時には,上記タンク圧が上記規制圧Pr以上であるときに,上記タンク弁を開けて上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを連通させ,上記タンク圧が上記規制圧Prよりも小さいときには,上記タンク弁を閉じて上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを遮断するよう構成されていることが好ましい(請求項6)。
【0030】
この場合には,再生作業中にある上記水素吸蔵合金の上記タンク圧が,上記規制圧Prを下回った場合に,上記タンク弁を閉じて,上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを遮断することにより,上記水素吸蔵合金タンクへ水素が逆流するのを防止することができる。そのため,上記再生作業中の上記水素吸蔵合金に,水素が再び吸蔵されるおそれを抑制し,上記再生作業を効率的に実施することができる。なお,上記タンク弁としては,流量調整弁を適用することもできる。
【0031】
また,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給するための流路として,少なくとも,上記水素タンクと上記燃料電池とを直接的に連結した上記メイン流路と,該メイン流路上の第1分岐点から分岐して三方弁に連結された第1バイパス流路と,該メイン流路上の第2分岐点から分岐して上記三方弁に連結された第2バイパス流路と,上記水素吸蔵合金タンクと上記三方弁とを連結する第3バイパス流路とを有し,
上記第1分岐点及び上記第2分岐点と上記水素タンクとの間には,水素圧を規制圧Prに規制するタンクレギュレータが設けられていると共に,該タンクレギュレータによる規制圧Prは設定変更可能に構成されており,
上記第2バイパス流路には,上記水素吸蔵合金タンクから上記第2分岐点に向ってのみ水素を流す逆止弁が配設されており,
上記暖機作業時には,上記第1分岐点から上記水素吸蔵合金タンクに至る流路が連通するよう上記三方弁を切り換え,
上記再生作業時には,上記水素吸蔵合金タンクから上記第2分岐点に至る流路が,上記逆止弁を介して連通するよう上記三方弁を切り換えると共に,
上記暖機作業時における上記規制圧Prに対して,上記再生作業時における上記規制圧Prを低く設定することにより,上記再生作業時における上記タンク圧が,上記暖機作業時における上記タンク圧よりも低くなるよう構成されていることが好ましい(請求項7)。
【0032】
この場合には,上記水素吸蔵合金タンクに圧力センサ等,圧力計測手段を配置しなくても,上記逆止弁と三方弁との組み合わせにより,再生作業中において,水素吸蔵合金タンクへの水素の逆流を防止することができる。そのため,再生作業中にある水素吸蔵合金が水素を再吸蔵するのを防止し,上記再生作業の効率を良くすることができる。
【0033】
また,上記水素吸蔵合金タンクには,該水素吸蔵合金タンクから放出される水素を加圧する加圧装置が接続されており,
上記再生作業時における上記水素吸蔵合金タンク内の上記タンク圧を,減圧するよう構成されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には,上記水素吸蔵合金から放出される水素を上記燃料電池へ供給するのに必要な水素圧に対して,上記水素吸蔵合金タンク内のタンク圧を,さらに低くすることができる。
そのため,より効率的かつ容易に,上記水素吸蔵合金から水素を放出させることができると共に,水素吸蔵合金を,より完全に近く再生することができる可能性がある。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる燃料電池システムにつき,図1〜図3を用いて説明する。
本例の燃料電池システム1は,燃料電池自動車に搭載するものであって,図1に示すごとく,燃料電池10と,熱交換媒体を循環させる熱媒流路4を介して上記燃料電池10に接続されていると共に水素吸蔵合金を内蔵してなる水素吸蔵合金タンク2と,燃料電池10及び水素吸蔵合金タンク2に水素を供給可能な水素タンク3とを有する。
【0035】
そして,本例の燃料電池システム1は,燃料電池10による発電を開始するに際し,燃料電池10の温度が所定の暖機基準温度よりも低い場合には,水素タンク3から水素吸蔵合金タンク2へ水素を供給し,水素吸蔵合金タンク2において水素吸蔵合金に水素を吸蔵させて熱を発生させ,発生した熱を上記熱交換媒体によって燃料電池10に伝達して燃料電池10の温度を上昇させる暖機作業を行うよう構成されている。
【0036】
さらに,燃料電池システム1は,上記暖機作業によって水素を吸蔵している水素吸蔵合金から水素を放出させる再生作業を行うに当たっては,水素タンク3から燃料電池10へ水素を供給することによって燃料電池10で発生する熱を,燃料電池10へ水素が供給されている状態で,熱交換媒体を介して水素吸蔵合金に伝達して水素吸蔵合金の温度Tmh(以下,適宜MH温度という)を上昇させることにより,水素吸蔵合金から水素を放出させて,燃料電池10へ水素を供給できるように構成されている。以下,この内容について詳しく説明する。
【0037】
本例の燃料電池システム1は,図1に示すごとく,水素の流路として,水素タンク3と燃料電池10とを直接的に連結したメイン流路53と,水素タンク3と水素吸蔵合金タンク2とを連結したバイパス流路51とを有する。
上記メイン流路53とバイパス流路51とは,水素タンク3に接続された同一の上流流路50から分岐して配設されている。
そして,上流流路50,メイン流路53及びバイパス流路51には,それぞれの流路を開閉する開閉弁V0,V3及びタンク弁V1(以下,タンク弁V1についても開閉弁V1と記載)がそれぞれ設けられている。
【0038】
また,上流流路50と分岐後のメイン流路53とには,それぞれ水素圧力を規制するタンクレギュレータR1と供給レギュレータR2が配設されている。このタンクレギュレータR1は,その規制圧Prにより,バイパス流路51に供給する水素圧力を規制するよう構成されている。本例では,上記の規制圧Prは,第2所定圧力P2〜第1所定圧力P1の範囲で適宜,設定を変更できるよう構成されている。
また,供給レギュレータR2は,メイン流路53に供給する水素圧力を第2所定圧力P2一定に規制するよう構成されている。なお,P1>P2である。
【0039】
熱交換媒体を循環させる熱媒流路4は,図1に示すごとく,燃料電池10内を循環する電池循環部41と,水素吸蔵合金タンク2内を循環するMH循環部42と,冷却用熱交換器43としてのラジエータを循環する部分とを含んでいる。そして,同図に示すごとく,上記電池循環部41と冷却用交換器43とをループ状につないだメイン回路401に,上記MH循環部42を含むループ状のサブ回路402が2つの分岐点451,452を介して並列に接続された構造となっている。
【0040】
メイン回路401には,熱交換媒体を流動させるポンプ40が配設されている。さらにメイン回路401には,バイパス路47が設けられ,その一方の分岐点に三方弁V4が配設されている。
また,サブ回路402には開閉弁V2が配設されている。
【0041】
また,本例における燃料電池10としては,固体分子型燃料電池(PEFC)を適用した。そして,燃料電池10には,図1に示すごとく,水素を供給する下流流路54を接続してあると共に,空気を供給するための空気供給路59を接続してある。そして,燃料電池10は,供給された水素と,供給された空気に含まれる酸素とによって,電解質層を介した電気化学反応H2+1/2O2→H2O
を進めて発電するよう構成されている。
【0042】
また,上記水素吸蔵合金タンク2に保持する水素吸蔵合金としては,希土類系合金(MmNi5)を採用したものを用いた。
また,上記水素タンク3としては,高圧水素を備蓄した高圧水素ボンベを採用した。
なお,上記燃料電池10,水素吸蔵合金タンク2,水素タンク3を別の形式のものに変更することも可能である。
また,燃料電池10内には,その温度を測定する温度測定手段(図示略)が配設されている。
【0043】
次に,上記構成の燃料電池システム1の制御方法の一例を,図2,図3を用いて説明する。図2は,上記暖機作業を実施する際の制御フローを示し,図3は,上記再生作業を実施する際の制御フローを示す。これらの図中においては,理解を容易にするため各開閉弁の開状態を○,閉状態を×として示した。以下,同様である。
【0044】
また,本例では,上記燃料電池10の温度Tfc(以下,適宜FC温度という)に対する第1の上記暖機基準温度として第1基準温度T1を設けた。さらに本例では,燃料電池が効率的に運転しうる第2の暖機基準温度として第2基準温度T2を設けた。なお,T1<T2である。
【0045】
上記暖機作業においては,まず,図2に示すごとく,ステップS101において燃料電池10のFC温度Tfcが第1基準温度T1以下か否かを判断する。FC温度Tfcが第1基準温度T1以下の場合には,ステップS102に示すごとく開閉弁V0〜V3の開閉状態等を設定し,暖機作業を開始する。
【0046】
即ち,ステップS102においては,開閉弁V0を開状態として水素タンク3から水素を導出可能とすると共に,開閉弁V1を開状態として水素吸蔵合金タンク2に水素を供給する。このとき,タンクレギュレータR1を第1所定圧力P1に設定し,上記第2所定圧力P2よりも高い第1所定圧力P1のもと水素吸蔵合金に水素を吸蔵させて,水素吸蔵合金を発熱させる。そして,ポンプ40を運転すると共に,開閉弁V2を開状態とする一方,バイパス路47から冷却用熱交換器43への経路を閉塞するよう三方弁V4を設定する。
【0047】
このようにして,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間において熱交換媒体を循環させ,水素吸蔵合金の水素吸蔵により生じた熱を伝達して燃料電池10を昇温する。一方,ここでは,開閉弁V3は閉状態として,燃料電池10への水素の供給は,まだ行わない。
そして,FC温度Tfcが第1基準温度T1を越えるまでは,上記ステップS102の状態を維持し,その後,ステップS103へ移行する。
該ステップS103では,FC温度TfcがMH温度Tmh以下か否か,及び第2基準温度T2以下か否かを判断する。FC温度TfcがMH温度Tmh以下かつ第2基準温度T2以下の場合には,ステップS104に示すごとく開閉弁V0〜V3の開閉状態等を設定し,燃料電池10を運転する。
【0048】
即ち,ステップS104においては,上記ステップS102において設定した開閉弁V0,開閉弁V1及びタンクレギュレータR1の状態をそのまま維持する。そして,水素吸蔵合金タンク2への水素の供給を継続して,水素吸蔵合金をさらに発熱させる。また,ポンプ40,開閉弁V2及び三方弁V4の設定についてもステップS102と同様として,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間の熱交換媒体の循環を続ける。このようにして,上記燃料電池10を昇温するごとく暖機作業を継続する一方,ステップS104では,水素タンク3から燃料電池10への水素供給を開始して燃料電池10を始動する。
【0049】
具体的には,開閉弁V3を開状態として,上記供給レギュレータR2により規制された第2所定圧力P2の供給圧のもと,燃料電池10へ水素を供給する。これにより,上記第2所定圧力P2よりも高い第1所定圧力P1のもと水素吸蔵合金タンク2に水素を供給して水素吸蔵合金を発熱させながら,同時に,燃料電池10には,上記第1所定圧力よりも低い第2所定圧力P2のもと水素を供給して発電を実施することができる。
そして,FC温度TfcがMH温度Tmh又は第2基準温度T2を越えるまでは,上記ステップS104の状態を維持する。そして,FC温度TfcがMH温度Tmh又は第2基準温度T2を越えた場合には,ステップS105に移行して,暖機作業を終了して通常運転を実施する。
【0050】
上記ステップS105においては,開閉弁V0及び開閉弁V3を開状態として保持する一方,開閉弁V1及び開閉弁V2を閉状態とする。すなわち,水素タンク3から水素吸蔵合金タンク2に通じる水素の流路,及び電池循環部41とMH循環部42との間の熱交換媒体の流路を遮断する。このようにして,燃料電池10の通常運転を実施する。
【0051】
次に,上記再生作業は,図3に示すごとく,燃料電池10の通常運転が継続され,その温度が十分に上昇してから実施する。該通常運転においては,燃料電池システム1は,開閉弁V0及び開閉弁V3を開状態とし,開閉弁V1及び開閉弁V2を閉状態とすると共に,タンクレギュレータR1の規制圧を第1所定圧力P1に設定する通常運転状態にある。そして,燃料電池10へは,上記供給レギュレータR2により規制された第2所定圧力P2の水素圧力のもと,水素が供給されている。
【0052】
上記再生作業においては,まず,ステップS201においてFC温度Tfcが再生基準温度Ts以上か否かを判断する。FC温度Tfcが再生基準温度Ts以上の場合には,さらに,ステップS202に示す条件を判断する。
該ステップS202においては,水素吸蔵合金に吸蔵されている水素量が規定量以上か否かを判断する。規定量以上であれば,ステップS203に示すごとく開閉弁V1,V2の開閉状態等を設定し,再生作業を実施する。
【0053】
上記ステップS203においては,開閉弁V2を開状態としたうえポンプ40を運転することにより,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間において熱交換媒体を循環させる。このようにして,燃料電池10の排熱を水素吸蔵合金に伝達して昇温し,水素を放出させる。また,タンクレギュレータR1の設定を第2所定圧力P2とするとともに,開閉弁V1を開状態として,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧を低くして,水素吸蔵合金からの水素の放出を容易にする。
【0054】
このようにして水素吸蔵合金から放出された水素は,水素吸蔵合金タンク2から流出し,バイパス流路51を経て,上記メイン流路53に合流して,燃料電池10へ供給されることとなる。したがって,再生作業時においては,燃料電池10は,水素吸蔵合金タンク2と水素タンク3とから,同時に水素を供給されて運転することとなる。
そして,FC温度Tfcが再生基準温度Ts以上であって,かつ,水素吸蔵合金の水素吸蔵量Cが規定量以上である場合には,上記ステップS203の状態を維持し,再生作業を継続して行う。その後,ステップS202のごとく,水素吸蔵合金の水素吸蔵量Cが規定量を下回った場合には再生作業を終了する。また,FC温度Tfcが再生基準温度Tsを下回った場合には,再生作業を中断して上記通常運転状態へ復帰する。具体的には,ステップS204に示すごとく,開閉弁V1,V2を閉状態とする。
【0055】
このように,本例の燃料電池システム1は,水素吸蔵合金が水素を吸蔵する際,発熱する特性を積極的に利用して,上記暖機作業を実現することができる。
上記暖機作業は,外部からの電気エネルギーや燃焼エネルギーを導入することなく,水素タンク3から供給される水素を利用して行うことができる。
【0056】
さらに,上記暖機作業を行うことによって,水素を吸蔵した上記水素吸蔵合金は,上記通常運転状態にある燃料電池10から発生する排熱を利用して再生する再生作業を実施する。該再生作業においては,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧を,上記暖機作業時のタンク圧に比べて低く設定している。
そのため,本例によれば,効率的,かつ,容易に水素吸蔵合金を再生することができる。それ故,次回のコールドスタート時においても,水素吸蔵合金から十分な熱量を取り出し,速やかな暖機作業を実施することができる。
【0057】
さらに,本例によれば,水素吸蔵合金から放出された水素と,水素タンクから供給される水素とを同時に,燃料電池10へ供給して発電を行う。そのため,再生作業時において,水素吸蔵合金から放出された水素のみを燃料電池10へ供給する場合のごとく,燃料電池10の発電負荷の急激な増加に,水素供給量が追従できない等の問題を生じるおそれが少ない。したがって,本例による燃料電池システム1は,再生作業時においても,燃料電池の負荷変動に対する応答性が良好である。
【0058】
なお,本例では,図2,図3に示すごとく,FC温度Tfcが第1基準温度T1以下の場合に上記暖機作業を行い,第1基準温度T1を超えて第2基準温度T2に達するまでは熱交換媒体の燃料電池10と水素吸蔵合金タンク2間の循環を続けて暖機作業を継続しながら,燃料電池10の運転を実施した。この制御方法に替えて,上記各開閉弁V0〜V3及び三方弁V4の開閉切り替えタイミング,タンクレギュレータR1の規制圧力の切り替えタイミングや,供給レギュレータR2の規制圧などを変更することにより,さらにその他の制御方法に変更することもできる。
【0059】
(実施例2)
本例は,図4に示すごとく,実施例1の構成を基礎として,そのメイン流路53に配設された供給レギュレータR2を省略して,燃料電池システム1を,より簡便な構成に変更した例である。
図4に示すごとく,本例の燃料電池システム1においては,タンクレギュレータR1の下流側にある水素吸蔵合金タンク2のタンク圧と開閉弁V3側の水素圧とが,略同一となる。したがって,暖機作業において,実施例1のごとく,水素タンク3から水素吸蔵合金タンク2への水素の供給圧と,水素タンク3から燃料電池10への水素の供給圧とに差圧を設定することはできない。
【0060】
そこで,上記構成の燃料電池システム1における暖機作業を実施するに当たっては,図5に示すごとく,実施例1とは異なる制御フローに従って,燃料電池10の暖機作業を実施する。以下,制御方法の一例を,図5を用いて説明する。
本例では,上記燃料電池10の温度に対する上記暖機基準温度として始動基準温度Tbを設けた。
上記暖機作業においては,まず,図5に示すごとく,ステップS301においてFC温度Tfcが始動基準温度Tb以下か否かを判断する。FC温度Tfcが始動基準温度Tb以下の場合には,ステップS302に示すごとく開閉弁V0〜V3の開閉状態等を設定し,暖機作業を開始する。
【0061】
即ち,ステップS302においては,開閉弁V0を開状態として水素タンク3から水素を導出可能とすると共に,開閉弁V1を開状態とし,さらにタンクレギュレータR1を第1所定圧力P1に設定する。これにより上記第2所定圧力P2よりも高い第1所定圧力P1のもと水素吸蔵合金タンク2に水素を供給し,水素吸蔵合金に吸蔵させ発熱させる。そして,ポンプ40を運転すると共に,開閉弁V2を開状態とする一方,バイパス路47から冷却用熱交換器43への経路を閉塞するよう三方弁V4を設定する。
【0062】
このようにして,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間において熱交換媒体を循環させ,水素吸蔵合金による熱を伝達して燃料電池10を昇温する。その一方,開閉弁V3は閉状態としておき,燃料電池10へ水素が供給されないようにしておく。
そして,FC温度Tfcが始動基準温度Tbを越えるまでは上記ステップS302の状態を維持し,その後,ステップS303へ移行し,燃料電池10を始動する。
【0063】
即ち,FC温度Tfcが始動基準温度Tbを超えた場合には,ステップS303に示すごとく,開閉弁V3を開状態とする一方,タンクレギュレータR1を第2所定圧力P2に設定する。これにより上記第1所定圧力P1よりも低い第2所定圧力P2のもと燃料電池10に水素を供給して燃料電池10による発電を開始する。また,開閉弁V1を閉状態として水素吸蔵合金への水素の供給を停止すると共に,ポンプ40を停止し,開閉弁V2を閉状態としてMH循環部42への熱交換媒体の循環を停止する。
【0064】
次に,上記再生作業は,図6に示すごとく,燃料電池10の通常運転が継続され,その温度が十分に上昇してから実施する。該通常運転においては,燃料電池システム1は,開閉弁V0及び開閉弁V3を開状態とし,開閉弁V1及び開閉弁V2を閉状態とする通常運転状態にある。そして,燃料電池10へは,上記タンクレギュレータR1により規制された第2所定圧力P2の水素圧力のもと,水素が供給されている。
【0065】
上記再生作業においては,まず,ステップS601においてFC温度Tfcが再生基準温度Ts以上か否かを判断する。FC温度Tfcが再生基準温度Ts以上の場合には,さらに,ステップS602に示す条件を判断する。
該ステップS602においては,水素吸蔵合金に吸蔵されている水素量が規定量以上か否かを判断する。規定量以上であれば,ステップS603に示すごとく開閉弁V1,V2の開閉状態等を設定し,再生作業を実施する。
【0066】
上記ステップS603においては,開閉弁V2を開状態としたうえポンプ40を運転することにより,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間において熱交換媒体を循環させる。このようにして,燃料電池10の排熱を伝達して,水素吸蔵合金を再生する。そうすると,再生時に放出された水素は,水素吸蔵合金タンク2から流出し,開状態に設定した開閉弁V1を介してメイン流路53に合流して,燃料電池10へ供給されることとなる。したがって,再生作業時においては,燃料電池10は,水素吸蔵合金タンク2と水素タンク3とから,同時に水素を供給されて運転することとなる。
【0067】
このようにして水素吸蔵合金タンク2からメイン流路53へ水素を供給するためには,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧Pmhは,タンクレギュレータR1で規制するメイン流路53の第2所定圧力P2よりも高いことが必要である。ここで,その圧力差は,バイパス流路51及び開閉弁V1の圧力損失分程度あれば良く,その圧力差が大きすぎるとタンクレギュレータR1側への逆流や,燃料電池10に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0068】
そこで,ステップS606〜S609では,水素吸蔵合金タンク内のタンク圧Pmhを適切な圧力とするため,ポンプ40のON−OFF制御を実施する。すなわち,ステップS606において,タンク圧Pmhを判断し,第2所定圧力P2を越えていればポンプ40を停止し,第2所定圧力P2以下である場合には,ステップS609によりポンプ40を運転する。
【0069】
ここで,ポンプ40を運転しているにも関わらず,タンク圧Pmhが十分に挙がらない場合がある。このような場合には,FC温度Tfcが低い,水素吸蔵合金による水素吸蔵量Cが低下した等の原因があることがある。そこで,タンク圧Pmhが第2所定圧力以下である場合には,ステップS607によりポンプ40の運転状態を判断する。そして,ポンプ40が停止している場合には,ステップS608によりポンプ40をONする。また,ポンプ40が運転している場合には,ステップS601に戻しFC温度Tfc等を再チェックさせることとした。
【0070】
そして,ステップS601により,FC温度Tfcが再生基準温度Tsを下回ったと判断される場合には,再生作業を中断する。また,ステップS602により,水素吸蔵合金の水素吸蔵量Cが規定量を下回ったと判断される場合には,再生作業を終了する。そして,ステップS604に示すごとく,開閉弁V1,V2を閉状態として再生作業を終了・中断して,上記通常運転状態へ復帰する。
【0071】
このように,本例の燃料電池システム1は,燃料電池10を始動するために必要な暖機運転を,簡便なシステム構成により実施することができる。
その他の構成及び作用効果は,実施例1と同様である。
なお,本例においても,開閉弁等の切り替えタイミングを変更することにより,さらに制御方法を変更することができる。
【0072】
(実施例3)
本例は,図7に示すごとく,実施例1の構成を基礎として,上記水素吸蔵合金タンク2には,内部のタンク圧Pmhを計測する圧力センサS1が配設されている。
そして,本例では,再生作業時において,上記タンク圧Pmhに応じて,開閉弁V1の開閉状態を適宜,切り換えながら,水素吸蔵合金から放出された水素を,効率良く燃料電池へ供給する。
なお,上記圧力センサS1を配置する位置は,開閉弁V1と水素吸蔵合金タンク2とを接続するバイパス流路51に配置しても良い。該バイパス流路51であれば,タンク圧Pmhと略同一の圧力となっていることが期待できるからである。
【0073】
上記構成の燃料電池システム1における再生作業を実施する制御方法の一例を,図8を用いて説明する。同図は,再生作業を実施する際の制御フローを示す。再生作業は,燃料電池10の運転が継続され,その温度が十分に上昇してから実施する。このとき,燃料電池システム1は,通常運転状態にあり,ここでは,開閉弁V0及び開閉弁V3を開状態とし,開閉弁V1及び開閉弁V2を閉状態とすると共に,タンクレギュレータR1を第1所定圧力P1に設定してある。そして,燃料電池10には,供給レギュレータR2により規制されて,第2所定圧力P2の水素が供給されている。
【0074】
再生作業を実施するに当たっては,まず,ステップS401においてFC温度Tfcが再生基準温度Ts以上か否かを判断する。そして,FC温度Tfcが再生基準温度Ts以上の場合には,さらに,ステップS402に示すごとく条件に適合しているか否か確認したうえ再生作業を開始する。
該ステップS402においては,水素吸蔵合金に吸蔵されている水素量が規定量以上か否かを判断する。規定量以上であれば,ステップS403に示すごとく開閉弁V2の開閉状態等を設定し,再生作業を開始する。
【0075】
上記ステップS403においては,開閉弁V2を開状態としたうえポンプ40を運転することにより,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間において熱交換媒体を循環させる。そして,燃料電池10の排熱を水素吸蔵合金に伝達して昇温し,水素を放出させる。また,水素吸蔵合金タンク2からの水素の供給ができるようタンクレギュレータR1の設定規制圧を第2所定圧力P2に変更する。
【0076】
そしてその後,水素吸蔵合金から放出される水素を燃料電池10へ供給するか否かを,ステップS405において判断する。該ステップS405においては,上記タンク圧Pmhが,第2所定圧力P2を越えているか否かを判断する。そして,タンク圧Pmhが第2所定圧力P2を越えている場合には,ステップS406に示すごとく開閉弁V1を開状態とする。このように,タンク圧Pmhが第2所定圧力P2を上回るときに,開閉弁V1が開状態となると,水素吸蔵合金から放出され水素吸蔵合金タンク2内にある水素は,バイパス流路51及びメイン流路53を介して燃料電池10へ供給されることとなる。
一方,タンク圧Pmhが第2所定圧力P2以下である場合には,ステップS407において開閉弁V1を閉状態とし,タンク圧Pmhが第2所定圧力P2を上回るようになるまで,水素吸蔵合金タンク2から燃料電池10への水素供給を中止する。
【0077】
このように,本例によれば,タンク圧Pmhが第2所定圧力P2を上回っていることを確認した上で,開閉弁V1を開状態としている。そのため,タンク圧Pmhが,第2所定圧力P2以下であるときに開閉弁V1を開状態として,上記メイン流路53を流れる水素が水素吸蔵合金タンク2へ逆流して再吸蔵してしまうおそれが少ない。
【0078】
したがって,本例によれば,水素タンク3から燃料電池10への水素供給と同時に実施する水素吸蔵合金の再生を,確実かつ効率的に実施することができる。
その他の構成及び作用効果は,実施例1と同様である。
なお,本例においても,開閉弁等の切り替えタイミングを変更することにより,さらに制御方法を変更することができる。また,ステップS407のしきい値となる圧力値を,さらに大きくすれば,再生作業に要する時間を短縮して,急速再生を実現することもできる。
【0079】
(実施例4)
本例は,図9に示すごとく,実施例1の構成を基礎として,上記バイパス流路51とメイン流路53との間に,吸蔵バイパス流路512及び再生バイパス流路511を配設すると共に,吸蔵バイパス流路512及び再生バイパス流路511をバイパス流路51に接続する三方弁V10と,再生バイパス流路511を一方向の流れに規制する逆止弁V11を追加した例である。なお,吸蔵バイパス流路512及び再生バイパス流路511は共に,上記タンクレギュレータR1と上記供給レギュレータR2との間のメイン流路53に接続されている。
【0080】
なお,上記三方弁V10は,流路a開状態と,流路b開状態と,全閉状態とを切り換ることができる。これらの図中においては,わかりやすくするため,上記三方弁V10の状態をa(流路a開状態),b(流路b開状態),×(全閉状態)として示した。
なお,逆止弁V11には,作動差圧として0.05MPaが設定してある。
【0081】
上記構成の燃料電池システム1を制御して,暖機作業を実施する場合には,まず,三方弁V10を流路a開状態する。その後,暖機作業を終了した後には,三方弁V10を全閉状態とする。そして,暖機作業を実施するに当たって,その他の設定等については,実施例1と同様の制御を実施する。そして,本例の暖機作業においては,実施例1と同様の効果が得られる。
上記構成の燃料電池システム1を制御して,再生作業を実施する方法の一例を図10を用いて説明する。同図は,再生作業を実施する際の制御フローを示している。
【0082】
再生作業は,燃料電池10の運転が継続され,その温度が十分に上昇してから実施する。再生作業に移行する際,燃料電池システム1は,通常運転状態にあり,ここでは,開閉弁V0及び開閉弁V3を開状態,開閉弁V2を閉状態とし,三方弁V10を全閉状態とすると共に,タンクレギュレータR1を第1所定圧力P1に設定してある。そして,燃料電池10に供給される水素は,供給レギュレータR2により第2所定圧力P2の水素圧に規制されている。
【0083】
再生作業には,まず,ステップS501においてFC温度Tfcが再生基準温度Ts以上か否かを判断する。FC温度Tfcが再生基準温度Ts以上の場合には,ステップS502に示すごとく条件に適合することを確認したうえ再生作業を開始する。
即ち,ステップS502においては,水素吸蔵合金に吸蔵されている水素量が規定量以上か否かを判断する。規定量以上であれば,ステップS503に示すごとく,開閉弁V2の開閉状態や三方弁V10の状態等を設定し,再生作業を開始する。
【0084】
上記ステップS503においては,開閉弁V2を開状態としたうえポンプ40を運転することにより,上記電池循環部41と上記MH循環部42との間において熱交換媒体を循環させる。そして,燃料電池10の排熱を水素吸蔵合金に伝達して昇温し,水素を放出させる。また,タンクレギュレータR1の設定を第2所定圧力P2とするとともに,三方弁V10を流路b開状態として,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧を低くして,水素吸蔵合金からの水素の放出を容易とする。
【0085】
ここで,上記のごとく水素吸蔵合金から放出される水素が,燃料電池10へ供給されるか否かは,逆止弁V11両端に生じる差圧による。水素吸蔵合金タンク2側の水素圧が,メイン流路53の水素圧である第2所定圧力P2よりも高く,その差圧が0.05MPaを上回る場合には,上記逆止弁V11が開く。そうすると,水素吸蔵合金タンク2内の水素は,バイパス流路51,再生バイパス流路511及びメイン流路53を介して,燃料電池10へ供給されることとなる。
【0086】
一方,水素吸蔵合金タンク2側の水素圧と,メイン流路53の水素圧との差圧が0.05MPaよりも小さい場合には,逆止弁V11は閉じる。この場合には,水素吸蔵合金タンク2側の水素圧と,メイン流路53の水素圧との差圧が0.05MPaよりも大きくなるまで,水素吸蔵合金タンク2から燃料電池10への水素供給が中止される。
【0087】
このように,本例によれば,逆止弁V11両端の差圧が0.05MPaを越えたときに,逆止弁V11が開く。そして,逆止弁V11が開くと,水素吸蔵合金タンク2内の差圧を有する水素が,メイン流路53へ流入して燃料電池10へ供給されることとなる。一方,逆止弁V11両端の差圧が0.05MPa以下であるときには,逆止弁V11が閉じるため,上記メイン流路53を流れる水素が水素吸蔵合金タンク2へ逆流して再吸蔵されてしまうおそれが少ない。
【0088】
したがって,本例によれば,水素タンク3から燃料電池10への水素供給と同時に実施する水素吸蔵合金の再生を,確実かつ効率的に実施することができる。
その他の構成及び作用効果は,実施例1と同様である。
なお,本例においても,開閉弁等の切り替えタイミングを変更することにより,さらに制御方法を変更することができる。
【0089】
(実施例5)
本例は,図11に示すごとく,実施例1の構成を基礎として,上記水素吸蔵合金タンク2に接続するバイパス流路51の途中に加圧ポンプP1を配設してある。該加圧ポンプP1は,その吸入ポートから水素を吸い出して吐出ポートから吐出することにより,吸入側と吐出側との間に差圧を生じさせる圧縮式の加圧ポンプである。なお,本例では,吸入ポートを水素吸蔵合金タンク2側に,吐出ポートを開閉弁V1側に接続してある。
【0090】
そして,本例の燃料電池システム1は,再生作業時に加圧ポンプP1を運転して,水素吸蔵合金タンク2側にある水素を吸い出して,開閉弁V1側に吐出する。そうすると,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧を,メイン流路の水素圧である第2所定圧力P2より低くして,水素吸蔵合金から水素の放出をさらに容易としながら,開閉弁V1側の水素圧を高く保持させることができる。本例の燃料電池システム1は,このようにして,低圧の水素吸蔵合金タンク2内にある水素を,それよりも高い圧力にある燃料電池10へ供給する。
【0091】
このように本例によれば,再生作業時において,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧を,燃料電池10への水素供給圧よりもさらに低くすることができる。そのため,水素吸蔵合金から水素を放出させることが,さらに容易かつ効率的に実施できるようになる。このようにして,水素吸蔵合金から水素を放出させれば,水素吸蔵合金を,より完全に近く再生することができる。
なお,その他の構成及び作用効果は,実施例1と同様である。
【0092】
また,上記加圧ポンプP1として,正逆転動作を切り換えて行うことができるポンプを利用すれば,上記暖機作業の効率をさらに良くすることも可能である。この場合には,暖機作業時に,加圧ポンプP1を逆転動作して,水素吸蔵合金タンク2内のタンク圧を,水素タンク3の供給圧以上に高くすることができる。そうすると,水素タンク3の供給圧が低い場合であっても,水素吸蔵合金による水素の吸蔵を速やかに実施して,暖機作業を十分にスムースに実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,燃料電池システムの構成を示す説明図。
【図2】実施例1における,暖機作業における制御フローを示す説明図。
【図3】実施例1における,再生作業における制御フローを示す説明図。
【図4】実施例2における,燃料電池システムの構成を示す説明図。
【図5】実施例2における,暖機作業における制御フローを示す説明図。
【図6】実施例2における,再生作業における制御フローを示す説明図。
【図7】実施例3における,燃料電池システムの構成を示す説明図。
【図8】実施例3における,再生作業における制御フローを示す説明図。
【図9】実施例4における,燃料電池システムの構成を示す説明図。
【図10】実施例4における,再生作業における制御フローを示す説明図。
【図11】実施例5における,燃料電池システムの構成を示す説明図。
【符号の説明】
1...燃料電池システム,10...燃料電池,2...水素吸蔵合金タンク,3...水素タンク,4,6...熱媒経路,40,60...ポンプ,51...バイパス流路,53...メイン流路,7...水素用熱交換器,V1〜V3...開閉弁,V4,V10...三方弁,V11...逆止弁,
Claims (9)
- 燃料電池と,
熱交換媒体を循環させる熱媒流路を介して上記燃料電池と接続されていると共に水素吸蔵合金を内蔵してなる水素吸蔵合金タンクと,
上記燃料電池及び上記水素吸蔵合金タンクに水素を供給可能な水素タンクとを有し,
上記燃料電池による発電を開始するに際し,該燃料電池の温度が所定の暖機基準温度よりも低い場合には,上記水素タンクから上記水素吸蔵合金タンクへ水素を供給し,該水素吸蔵合金タンクにおいて上記水素吸蔵合金に水素を吸蔵させて熱を発生させ,発生した熱を上記熱交換媒体によって上記燃料電池に伝達して該燃料電池の温度を上昇させる暖機作業を行い,
上記暖機作業によって水素を吸蔵している上記水素吸蔵合金から水素を放出させる再生作業を行うに当たっては,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給することによって上記燃料電池で発生する熱を,上記燃料電池へ水素が供給されている状態で,上記熱交換媒体を介して上記水素吸蔵合金に伝達して上記水素吸蔵合金の温度を上昇させることにより,上記水素吸蔵合金から水素を放出させて,上記燃料電池へ水素を供給するように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1において,上記燃料電池システムは,上記燃料電池の温度が所定の再生基準温度以上であって,かつ,上記水素吸蔵合金タンクにおける上記水素吸蔵合金が所定の水素吸蔵量以上の水素を吸蔵しているとき,上記再生作業を実施するよう構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
- 請求項1又は2において,上記暖機作業時における上記水素吸蔵合金タンク内の水素の圧力であるタンク圧に対して,上記再生作業時における上記タンク圧を低くするように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
- 請求項3において,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給するための流路として,少なくとも,上記水素タンクと上記燃料電池とを直接的に連結した上記メイン流路と,該メイン流路上の分岐点から分岐して上記水素吸蔵合金タンクに連結されたバイパス流路とを有しており,
上記分岐点と上記水素タンクとの間には,水素圧を規制圧Prに規制するタンクレギュレータが設けられていると共に,上記タンクレギュレータによる規制圧Prは設定変更可能に構成されており,
上記暖機作業時における上記規制圧Prに対して,上記再生作業時における上記規制圧Prを低く設定することにより,上記再生作業時における上記タンク圧が,上記暖機作業時における上記タンク圧よりも低くなるよう構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項4において,上記分岐点と上記燃料電池との間には,上記燃料電池に水素を供給する圧力を供給圧Psに規制する供給レギュレータが設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
- 請求項4又は5において,上記水素吸蔵合金タンクには上記タンク圧を計測する圧力センサが配設されていると共に,上記バイパス流路には,上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを連通させ又は遮断するタンク弁が配設されており,
上記暖機作業時には,上記タンク弁を開けて上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを連通させ,
上記再生作業時には,上記タンク圧が上記規制圧Pr以上であるときに,上記タンク弁を開けて上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを連通させ,上記タンク圧が上記規制圧Prよりも小さいときには,上記タンク弁を閉じて上記メイン流路と上記水素吸蔵合金タンクとを遮断するよう構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項3において,上記水素タンクから上記燃料電池へ水素を供給するための流路として,少なくとも,上記水素タンクと上記燃料電池とを直接的に連結した上記メイン流路と,該メイン流路上の第1分岐点から分岐して三方弁に連結された第1バイパス流路と,該メイン流路上の第2分岐点から分岐して上記三方弁に連結された第2バイパス流路と,上記水素吸蔵合金タンクと上記三方弁とを連結する第3バイパス流路とを有し,
上記第1分岐点及び上記第2分岐点と上記水素タンクとの間には,水素圧を規制圧Prに規制するタンクレギュレータが設けられていると共に,該タンクレギュレータによる規制圧Prは設定変更可能に構成されており,
上記第2バイパス流路には,上記水素吸蔵合金タンクから上記第2分岐点に向ってのみ水素を流す逆止弁が配設されており,
上記暖機作業時には,上記第1分岐点から上記水素吸蔵合金タンクに至る流路が連通するよう上記三方弁を切り換え,
上記再生作業時には,上記水素吸蔵合金タンクから上記第2分岐点に至る流路が,上記逆止弁を介して連通するよう上記三方弁を切り換えると共に,
上記暖機作業時における上記規制圧Prに対して,上記再生作業時における上記規制圧Prを低く設定することにより,上記再生作業時における上記タンク圧が,上記暖機作業時における上記タンク圧よりも低くなるよう構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1〜7のいずれか1項において,上記水素吸蔵合金タンクには,該水素吸蔵合金タンクから放出される水素を加圧する加圧装置が接続されており,
上記再生作業時における上記水素吸蔵合金タンク内の上記タンク圧を,減圧するよう構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池システムを有し,該燃料電池システムから供給される電力により駆動モータを運転するように構成されていることを特徴とする燃料電池自動車。
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