JP4575766B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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本発明は、水素吸蔵合金に水素ガスを吸蔵する際に発生する熱を利用して燃料電池の暖機を行う燃料電池システムに関する。
燃料電池電気自動車(FCEV;Fuel Cell Electric Vehicle)では、PEM(Proton Exchange Membrane)型の燃料電池が一般に使用されている。また、この種の燃料電池では、温度が低いと発電性能が低下するため、冬季や寒冷地などで燃料電池電気自動車を使用する場合には、走行開始前に燃料電池を暖機する必要がある。この暖機手段としては、例えば、電気ヒータで燃料電池の外部から加熱して暖機したり、燃料として使用される水素ガスを燃焼させたときの燃焼熱で燃料電池を冷却する冷却媒体を加熱して暖機が行われていた。しかし、電気ヒータではバッテリが過度に消耗するおそれがあり、燃焼熱の利用では燃料を無駄に消費することになる。
そこで、他の暖機手段として、水素吸蔵合金を利用した技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、水素吸蔵合金タンク(MHタンク)を設けて、MHタンクに水素ガスを吸蔵させたときに発生する熱を利用して燃料電池を暖機し、暖機後は、MHタンク内の水素ガスを燃料電池に戻すようにしている。
特開2002−222658号公報(段落0036〜0044、図5)
しかしながら、前記特許文献1に記載の暖機手段を搭載した燃料電池システムでは、MHタンク内から水素残量の検出が、MHタンクに貯蔵した水素量と、MHタンクから放出した水素量との差を算出することにより行われていたため、誤差が発生し易かった。その結果、水素ガスの吸蔵と放出を繰り返すことで積算誤差が発生して水素残量の誤差が拡大して、水素残量の検出精度が損なわれるという問題があった。また、残量検知システムとしても、水素流量計を用いる方法では装置構成が簡便とは言い難い。
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、簡便な装置構成で、MHタンク内の水素残量の検出精度を高めることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明は、水素ガスと酸化剤ガスとの化学反応により発電する燃料電池と、前記水素ガスを吸蔵および放出する水素吸蔵合金を内蔵したMHタンクとを有し、前記MHタンクに前記水素ガスを吸蔵させる際に発生する熱で前記燃料電池を暖機するとともに、前記暖機終了後に前記MHタンクに吸蔵した前記水素ガスを放出する燃料電池システムであって、前記水素ガスの放出時に前記MHタンクの内圧が第1所定圧以下となった段階で一旦前記水素ガスの放出を停止し、前記停止後、所定時間内に前記内圧が前記第1所定圧よりも高い第2所定圧に回復した場合に、前記内圧が前記第1所定圧以下になるまで前記水素ガスの放出と停止を繰り返して、前記内圧が前記所定時間内に前記第2所定圧に回復しない場合に放出終了となるように制御することを特徴とする。
前記本発明によれば、水素ガスの放出と停止を繰り返しながらMHタンク内の圧力がほぼ一定となったときに放出終了とすることにより、水素残量を正確に検出することが可能になる。
さらに、前記燃料電池の発電時に発生する熱によって、前記燃料電池を冷却する冷却媒体を加熱することで前記MHタンクを加熱するMHタンク加熱手段と、前記燃料電池と前記MHタンクとの間に設けられ、前記MHタンクに流入する前記冷却媒体の温度を測定する温度センサと、を備え、前記内圧が前記所定時間内に前記第2所定圧に回復しない場合に放出終了とせず、前記冷却媒体の温度を測定して、前記冷却媒体の温度が所定温度を超えた場合に放出終了となるように制御する構成を追加してもよい。
この構成によれば、水素吸蔵合金を加熱する冷却媒体の温度が低いとMHタンクからの水素ガスが十分に放出されない可能性があるため、冷却媒体の温度が所定温度を超えたことを確認した後で放出終了するように制御することで、水素残量の精度をさらに高めることができる。
本発明によれば、MHタンク内の水素残量を高精度に検出できるため、水素ガスの吸蔵と放出を繰り返したとしても積算誤差が拡大することがない。その結果、MHタンクに吸蔵した水素ガスを有効に利用することが可能になる。しかも、MHタンクの水素残量検出のための装置構成を簡便にできる。
図1は、本実施形態の燃料電池システムを示す全体構成図である。以下では、燃料電池電気自動車を例に挙げて説明するが、燃料電池電気自動車に限定されるものではない。
この燃料電池システム1は、燃料電池FCと、水素供給手段10と、空気供給手段20と、冷却手段30と、暖機手段40と、制御装置(ECU)50とを備えている。
前記燃料電池FCは、固体高分子型であるPEM型の燃料電池であり、電解質膜をアノード極とカソード極とで挟み、さらにその外側を一対のセパレータで挟んで構成された単セルを複数積層した構造を有している。
前記水素供給手段10は、燃料電池FCに水素を供給するものであり、燃料電池FCの上流側に、電磁作動の遮断弁12を備えた水素タンク11、1次レギュレータ13、2次レギュレータ14、エゼクタ15などを備え、燃料電池FCの下流側に、パージ弁16などを備えている。
前記水素タンク11は、高純度の水素ガスが非常に高い圧力で充填されたタンクである。前記1次レギュレータ13は、水素タンク11から供給される水素ガスの圧力を減圧する減圧弁である。前記2次レギュレータ14は、1次レギュレータ13で減圧された水素ガスの圧力をさらに減圧する減圧弁である。これにより、水素タンク11と1次レギュレータ13との間が高圧水素ラインL1(例えば、約35MPa)となり、1次レギュレータ13と2次レギュレータ14との間が中圧水素ラインL2(例えば、約1MPa)となり、2次レギュレータ14と燃料電池FCとの間が低圧水素ラインL3(例えば、約0.3MPa)となっている。
前記エゼクタ15は、燃料電池FCから排出された未使用の水素ガスを吸引して、再び燃料電池FCのアノード極に供給するためのポンプである。前記パージ弁16は、アノード極側にカソード極から電解質膜を介して移動した空気中に含まれる窒素などの不純物や反応によって生成された水を水素ガスとともに排出して発電効率が低下するのを防止するためのバルブである。
前記空気供給手段20は、燃料電池FCに酸化剤ガスとしての空気を供給するものであり、コンプレッサ21や図示しないインタークーラ、加湿器などで構成されている。コンプレッサ21は、機械式過給器であり、車外からエアフィルタ(図示せず)を介して取り込んだ空気を圧縮する。インタークーラは、コンプレッサ21から供給された高温高圧の空気を所定の温度に冷却し、加湿器は、冷却された空気を燃料電池FCでの反応に適した所定の湿度に加湿する。
前記冷却手段30は、前記燃料電池FCが発電に伴って発生した熱を大気中に放出するもので、冷却配管31、ラジエタ32、循環ポンプ33などで構成されている。冷却配管31は、その各端部が燃料電池FCの図示しない前記セパレータに設けられた冷却路の入口および出口と連通しており、循環ポンプ33に設けられたモータを駆動することにより、冷却媒体Cが冷却配管31内および燃料電池FC内を図中矢印方向に循環するようになっている。
前記暖機手段40は、燃料電池システム1を低温環境下で起動させる際に燃料電池FCを暖機するものであり、水素吸蔵合金(以下「MH(=Metal Hydride)」という)タンク41、MH用配管42、MH用遮断弁43を備えている。なお、本実施形態では、燃料電池FCを冷却する際の冷却媒体Cが、燃料電池FCを暖機する際の媒体として利用されるように構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、冷却用の媒体と暖機用の媒体とが全く別系統で構成されていてもよい。
前記MHタンク41は、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウム合金製であり、その内部に水素吸蔵合金が充填されている。MHタンク41内の水素吸蔵合金は、水素ガスを吸蔵することにより熱が発生し、外部から加熱(MHが吸熱)されることにより吸蔵した水素ガスを放出できる特性を有している。また、図示していないが、MHタンク41には、例えば、その周面に接するように前記冷却手段30の冷却配管31が設けられて、MHタンク41から発生した熱が冷却配管31を介して冷却媒体Cに伝達されるようになっている。
前記MH用配管42は、MH用遮断弁43を有し、一端が前記中圧水素ラインL2と接続され、他端がMHタンク41と接続されている。また、MHタンク41には、その内圧を測定するための圧力センサS1が設けられている。
本実施形態の暖機手段40では、前記ラジエタ32をバイパスするバイパス配管44が設けられて、冷却手段30の冷却媒体Cを共用するようになっている。また、バイパス配管44の入口には、三方弁45が設けられ、この三方弁45の切替によって冷却媒体Cの流路が、バイパス配管44とラジエタ32のいずれか一方に切り替えられるようになっている。また、冷却配管31上には、燃料電池FCとMHタンク41との間に、MHタンク41に流入する冷却媒体Cの温度Tを測定するための温度センサS2が設けられている。
前記制御装置50は、遮断弁12、パージ弁16およびMH用遮断弁43の開閉動作を制御し、また、圧力センサS1からMHタンク41内の圧力P、および温度センサS2から冷却媒体Cの温度Tを取得する。また、制御装置50は、燃料電池FCと接続される走行モータや補機類などの外部負荷(図示せず)に供給する電力量を制御している。
次に、本実施形態の燃料電池システム1での水素放出時の動作について図3を参照して説明する。なお、以下では、各ステップを「S」と略記して説明する。
まず、水素ガス放出時の動作を説明する前に、水素吸蔵時の動作について説明する。冬季や寒冷地などの低温環境下での使用において、車両のイグニッションスイッチをオンにしたときに、暖機が必要であると判断した場合には、暖機モードに移行して、MH用遮断弁43を開く。このとき、暖機前のMHタンク41の内圧が前記高圧水素ラインL1ないし低圧水素ラインL3の各内圧よりも低い約0.1MPaに設定されているので、制御装置50の制御により遮断弁12が開かれることにより、水素タンク11内の水素ガスがMHタンク41側に送られる。MHタンク41が水素ガスを吸蔵すると、発熱反応によって熱を発生して冷却媒体Cが加熱される。加熱された冷却媒体Cは、循環ポンプ33の吸引力によって燃料電池FCに送られて、燃料電池FCを暖機する。制御装置50では、冷却媒体Cの温度が、予め設定された加熱終了温度に至ったと判断したときに、MH用遮断弁43を閉じてMHタンク41への水素ガスの供給を停止する。
また、前記のようにして燃料電池FCの暖機が終了すると、MH用遮断弁43が閉じられて、水素タンク11から燃料電池FCのアノード極に水素ガスが、カソード極に空気がそれぞれ供給されるので、燃料電池FCにおいて水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電が開始される。
MHタンク41に吸蔵された水素ガスを放出する水素放出モードに移行した場合には、図3に示すように、S100において、MHタンク41で燃料電池FCを暖機したか否かを判断する。なお、MHタンク41に貯蔵した水素ガスの放出を開始するタイミングとしては、例えば、燃料電池FCが通常発電可能な0℃に至ったときである。MHタンク41を使って暖機していない場合には(No)、MHタンク41内には水素ガスが残留していないと判断できるので、水素ガスの放出処理に移行せず終了する(S106)。また、燃料電池FCの運転により冷却媒体Cの温度が所定温度以上(例えば、60℃以上)に達したときに三方弁45を切り替えて、冷却媒体Cがラジエタ32側に流れるようにする。
S100において、MHタンク41で暖機した場合には(Yes)、MHタンク41内には水素ガスが蓄積されているので、MH用遮断弁43を開き、MHタンク41から水素ガスの放出を開始する(S101)。このとき、燃料電池FCの発電時に発生する熱で冷却媒体Cが加熱されるので、MHタンク41が加熱されることになる。これによりMHタンク41内の水素吸蔵合金が加熱されるので、MHタンク41内の水素ガスがMH用配管42を通って燃料電池FCのアノード極に供給される。なお、このときMHタンク41の内圧が中圧水素ラインL2の圧力よりも高い場合に、MHタンク41から水素ガスの放出が可能となる。例えば、外部負荷からの電力要求量が高い場合には、水素タンク11側から水素ガスを供給し、外部負荷からの電力要求量が低い場合には、水素タンク11の遮断弁12を閉じて、MHタンク41側から水素ガスを供給するようにしてもよい。
水素ガスの放出が開始された後、制御装置50によって圧力センサS1から取得されたMHタンク41の内圧Pが予め設定された第1所定圧P1(図2参照)以下であるか否かを判断する(S102)。内圧Pが第1所定圧P1より高い場合には(No)、水素ガスの放出を継続し、第1所定圧P1以下になった場合には(Yes)、MH用遮断弁43を閉じて、MHタンク41からの水素ガスの放出を一旦停止する(S103)。そして、S104において、MHタンク41の内圧Pが第2所定圧P2(図2参照)より低いか否かを判断する(S104)。このとき、内圧Pが第2所定圧P2以上である場合には(No)、S101に戻ってMH用遮断弁43を開いて水素ガスの放出を再開し、第2所定圧P2より低い場合には(Yes)、水素ガスの放出を停止してから所定時間(例えば、10秒)経過しているか否かを判断する(S105)。このとき、所定時間経過していない場合には(No)、S104に戻って第2所定圧P2に回復したか再度判断され、所定時間t(図2参照)経過している場合には(Yes)、MH用遮断弁43を閉じて水素ガスの放出処理を終了する。
図2に示すように、MHタンク41では、MHタンク41の内圧Pが一旦第1所定圧P1まで低下したとしても、その後第2所定圧P2まで上昇する特性を有している。この特性を考慮して、前記のように、MHタンク41から水素ガスの放出停止(t1〜t2,t3〜t4)と放出(t2〜t3,t4〜t5)を繰り返すことにより、第1所定圧P1から第2所定圧P2までの回復時間が徐々に長くなる。つまり、MHタンク41内の水素ガスの残量を、通常残量(放出しきれずに常に残留する量)に徐々に近づけることが可能になる。最終的に、図2においてt5〜t6で示すように、水素放出停止から所定時間経過したときに内圧Pが第2所定圧P2以下になった場合、つまり内圧Pが一定またはほぼ一定となった場合に、放出処理を終了する。このようにして、MHタンク41の内圧Pを監視することにより、水素ガスのMHタンク41への貯蔵と放出の繰り返しによる積算誤差の拡大を防止でき、水素残量の検出精度を高めることが可能になる。
ところで、MHタンク41内の水素吸蔵合金は、MHタンク41の温度によって水素ガスの放出特性が変化するものであり、温度が低い場合に水素ガスの放出性能が低下する。そこで、図4に示す別の水素ガス放出の制御では、冷却媒体Cの温度を考慮するステップを追加している。すなわち、図4は、図3のフローチャートに、S110とS111の各ステップを追加した構成となっている。なお、追加したステップ以外は、図3の制御と同様であるので、追加したステップのみについて説明する。
図4に示すように、S105において、水素ガスの放出停止から所定時間経過している場合には(Yes)、処理を終了せずに、さらに、S110に移行して冷却媒体Cの温度Tが所定温度を超えているか否かを判断する。なお、この所定温度は、適宜設定できるが、例えば30℃程度である。S110で、既に所定温度を超えている場合には(Yes)、水素ガスの放出処理を終了する。S110で、所定温度以下の場合には(No)、MHタンク41の内圧Pが第1所定圧P1よりも高いか否かを判断する(S111)。このとき、内圧Pが第1所定圧P1よりも高い場合には(Yes)、S101に戻ってMH用遮断弁43を開いて水素ガスの放出を再開し、第1所定圧P1以下である場合には(No)、S110に戻り、冷却媒体Cの温度Tが所定温度を超えているか否かを再度判断する。
このように、冷却媒体Cの温度Tを水素ガス放出処理終了の条件として追加することで、MHタンク41内の水素残量の検出精度をさらに高めることが可能になる。なお、図4に示す実施形態では、S111の処理において、MHタンク41の内圧Pが第1所定圧P1よりも高いか否かを判断するようにしたが、これに限定されるものではなく、MHタンク41の内圧Pが第2所定圧P2よりも高いか否かを判断するようにしてもよい。
本実施形態の燃料電池システムを示す全体構成図である。 MHタンクを使用したときの水素ガスの放出特性を示す図である。 水素ガス放出時の処理を示すフローチャートである。 水素ガス放出時の別の処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 燃料電池システム
10 水素供給手段
13 1次レギュレータ
14 2次レギュレータ
20 空気供給手段
30 冷却手段
31 冷却配管
40 暖機手段
41 MHタンク
42 MH用配管
43 MH用遮断弁
44 バイパス配管
45 三方弁
50 制御装置
C 冷却媒体
FC 燃料電池
S1 圧力センサ
S2 温度センサ

Claims (2)

  1. 水素ガスと酸化剤ガスとの化学反応により発電する燃料電池と、前記水素ガスを吸蔵および放出する水素吸蔵合金を内蔵したMHタンクとを有し、前記MHタンクに前記水素ガスを吸蔵させる際に発生する熱で前記燃料電池を暖機するとともに、前記暖機終了後に前記MHタンクに吸蔵した前記水素ガスを放出する燃料電池システムであって、
    前記水素ガスの放出時に前記MHタンクの内圧が第1所定圧以下となった段階で一旦前記水素ガスの放出を停止し、前記停止後、所定時間内に前記内圧が前記第1所定圧よりも高い第2所定圧に回復した場合に、前記内圧が前記第1所定圧以下になるまで前記水素ガスの放出と停止を繰り返して、前記内圧が前記所定時間内に前記第2所定圧に回復しない場合に放出終了となるように制御することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池の発電時に発生する熱によって、前記燃料電池を冷却する冷却媒体を加熱することで前記MHタンクを加熱するMHタンク加熱手段と、
    前記燃料電池と前記MHタンクとの間に設けられ、前記MHタンクに流入する前記冷却媒体の温度を測定する温度センサと、を備え、
    前記内圧が前記所定時間内に前記第2所定圧に回復しない場合に放出終了とせず、前記冷却媒体の温度を測定して、前記冷却媒体の温度が所定温度を超えた場合に放出終了となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
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