JP2018185978A - 燃料電池システム - Google Patents

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Masakazu Aoki
正和 青木
山内 崇史
Takashi Yamauchi
崇史 山内
宏之 三井
Hiroyuki Mitsui
宏之 三井
究 乾
Kiwamu Inui
究 乾
章仁 細井
Akihito Hosoi
章仁 細井
茂樹 長谷川
Shigeki Hasegawa
茂樹 長谷川
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Abstract

【課題】水素タンク及び水素貯蔵材料を水素源に用いた燃料電池システムにおいて、大型の冷却装置を用いることなく燃料電池の冷却を可能にすること。【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池12と、水素タンク16と、水素貯蔵材料が内封された反応器18と、冷却装置20と、燃料電池12と水素タンク16とを接続する第1水素ガスライン30と、反応器18と第1水素ガスライン30とを接続する第2水素ガスライン40と、燃料電池12と冷却装置20とを接続する第1熱交換ライン50と、反応器18を第1熱交換ライン50に対して並列に接続する第2熱交換ライン60と、圧力検出手段72と、第1温度検出手段74と、第2温度検出手段76と、制御手段78とを備えている。制御手段78は、Pr、T1、及びT2を用いて、水素ガスの供給経路、及び冷媒の循環経路を適時に切り替える。【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関し、さらに詳しくは、燃料源として、水素ガスを貯蔵した水素タンクと、水素貯蔵材料が内封された反応器の双方を備えた燃料電池システムに関する。
水素を燃料ガスに用いた燃料電池システムにおいて、水素源には、水素ガスタンク、液体水素タンク、水素貯蔵材料を充填したタンクなどが用いられる。これらの内、水素貯蔵材料を充填したタンクは単位体積あたりの水素貯蔵密度が高いので、システムを小型化することができる。そのため、これを用いた燃料電池システムは、特に移動体用のエネルギー源として好適である。
燃料電池には適切な作動温度域があるため、高い発電効率を得るためには、燃料電池の温度を適切な温度範囲に維持する必要がある。また、水素貯蔵材料は、水素ガスの吸蔵時には発熱を伴い、水素ガスの放出時には吸熱を伴うため、適時に水素を吸蔵/放出させるためには、水素貯蔵材料の熱管理が必要となる。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、燃料電池システムの始動時において、
(a)駆動モータの車両駆動出力軸を固定した状態で駆動モータに電力を供給し、駆動モータにより消費された電力を熱として放出させ、この熱を用いて燃料電池の冷却水温度を上昇させると同時に、
(b)発電可能な電力より低い電力出力で燃料電池スタックを発電させ、燃料電池スタック自身を発熱させることで、燃料電池スタックを内部から暖機する
燃料電池システムが開示されている。
同文献には、このような方法により、エネルギーロスを大きくすることなく燃料電池スタックの暖機を促進できる点が記載されている。
また、特許文献2には、1つのラジエタファンを用いて燃料電池の冷却液と他の放熱手段とを同時に冷却する場合において、燃料電池の冷却液を所定の比率でラジエタ方向とラジエタバイパス方向に分流する冷却系制御装置が開示されている。
同文献には、ラジエタファンを用いて、主として他の放熱手段を冷却する時には、燃料電池の冷却液をラジエタバイパス方向により多く流すことにより、燃料電池の冷却液の温度が過度に低下することを抑制できる点が記載されている。
また、特許文献3には、燃料電池とラジエタとの間で冷却液を循環させ、ラジエタをファンで冷却する場合において、
(a)ファンの回転数に制限回転数を設け、
(b)燃料電池の使用環境に応じて制限回転数を変更可能とし、かつ、
(c)燃料電池の使用環境が変化し、制限回転数の変更が必要となった時には、使用環境の変化よりも遅れて制限回転数を変更する
燃料電池の冷却制御装置が開示されている。
同文献には、このような方法により、冷却性能と音振性能の双方の要求を両立することができる点が記載されている。
さらに、非特許文献1には、水素タンクと燃料電池の間に水素吸蔵合金を内封した2つの反応器を設置し、水素吸蔵合金の水素吸蔵/放出に伴う発熱/吸熱を空調に用いるシステムが提案されている。
燃料電池の温度管理は、一般にラジエタを用いて行われている。燃料電池とラジエタとの間で冷却液を循環させる場合において、燃料電池の排熱温度が相対的に低い時には、ラジエタの熱交換部と外界温度との温度差ΔTが小さくなる。この場合、燃料電池からの排熱処理を効率良く行うためには、大型のラジエタが必要となる。しかし、大型のラジエタを用いると、燃料電池システムの形状自由度が低下する。
一方、非特許文献1には、水素吸蔵合金の水素吸蔵/放出に伴う発熱/吸熱を空調に用いるシステムが開示されている。しかし、例えば、空調が冷却を必要としている時には、空調の熱を用いて水素吸蔵合金から水素を放出させることはできるが、水素吸蔵時の発熱を空調で利用することはできない。一方、空調が加熱を必要としている時には、水素吸蔵時の発熱を空調で利用することはできるが、水素吸蔵合金から水素を放出させる際には、他に熱源が必要となる。そのため、水素吸蔵合金と空調とを単に熱的に接続しただけのシステムでは、熱の有効利用が不十分である。
特開2004−247164号公報 特開2004−259472号公報 特開2006−228629号公報
Int. J. Hydrogen Energy 36(2011)3215-3221
本発明が解決しようとする課題は、水素タンク及び水素貯蔵材料を水素源に用いた燃料電池システムにおいて、大型の冷却装置を用いることなく燃料電池の温度を適切な温度に維持することを可能にすることにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、水素タンク及び水素貯蔵材料を水素源に用いた燃料電池システムにおいて、他の熱源や冷却源を用いることなく、水素の吸蔵/放出を可逆的に行うことを可能にすることにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、燃料電池からの排熱を蓄熱し、燃料電池の暖機や空調に用いることが可能な燃料電池システムを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、エネルギー効率の高い燃料電池システムを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記燃料電池システムは、
水素ガスを燃料とする燃料電池と、
前記水素ガスを貯蔵するための水素タンクと、
前記燃料電池に供給するための前記水素ガスを放出し、又は、前記水素タンクから供給される前記水素ガスを貯蔵するための水素貯蔵材料が内封された反応器と、
前記燃料電池との間で冷媒を循環させることによって、前記燃料電池と熱交換を行うための冷却装置と、
前記燃料電池の燃料流路と前記水素タンクとを接続するための第1水素ガスラインと、
前記反応器の水素流路と前記第1水素ガスラインとを接続するための第2水素ガスラインと、
前記燃料電池の冷媒流路(A)と前記冷却装置の冷媒流路(B)とを接続するための第1熱交換ラインと、
前記反応器の冷媒流路(C)を前記第1熱交換ラインに対して並列に接続するための第2熱交換ラインと、
前記反応器内の圧力Prを検出するための圧力検出手段と、
前記燃料電池の内部温度、又は前記内部温度を推定可能な温度(第1温度)T1を検出するための第1温度検出手段と、
前記燃料電池システムが設置された環境の温度(第2温度)T2を検出するための第2温度検出手段と、
前記燃料電池システムの動作を制御する制御手段と
を備えている。
(2)前記第1水素ガスラインは、前記燃料電池から前記水素タンクに向かって前記水素ガスの圧力が段階的に高くなるように、前記第1水素ガスラインをn個(n≧2)の圧力領域(第k圧力領域の圧力:Pk<第(k+1)圧力領域の圧力:Pk+1)に分割するための第k減圧手段(1≦k≦n−1)を備えている。
(3)前記第2水素ガスラインは、前記反応器の前記水素流路を前記第1圧力領域若しくは前記第k圧力領域(2≦k≦n)のいずれか一方に切り替えて接続し、又は、前記第1水素ガスラインとの接続を遮断するための水素ガス切替手段を備えている。
(4)前記第1熱交換ラインは、前記燃料電池の前記冷媒流路(A)から排出された前記冷媒を、そのまま前記燃料電池の前記冷媒流路(A)に戻すためのバイパス熱交換ラインを備えている。
(5)前記第2熱交換ラインは、前記冷媒が前記燃料電池−前記冷却装置間、又は前記燃料電池−前記バイパス熱交換ライン間を循環する時に、前記冷媒の一部を前記反応器の冷媒流路(C)に流すための流量調節手段を備えている。
(6)前記制御手段は、前記圧力Pr、前記第1温度T1、及び前記第2温度T2を用いて、前記水素ガスの供給経路、及び前記冷媒の循環経路を適時に切り替えるモード切替手段を備えている。
本発明に係る燃料電池システムは、燃料源として、水素ガスを貯蔵した水素タンクと、水素貯蔵材料を内封した反応器の双方を備えている。そのため、始動時に水素タンクから反応器に水素を供給すると、水素貯蔵材料が水素ガスを吸蔵し、発熱する。この時、熱交換ラインを燃料電池−バイパス熱交換ライン間の循環冷却に切り替えると同時に、冷媒の一部を反応器に分配すると、冷媒が冷却装置に熱を奪われることがなく、かつ、冷媒には水素吸蔵に伴う反応熱が加算される。その結果、外部熱源を用いることなく、燃料電池の温度を速やかに上昇させることができる。燃料電池が所定の温度まで上昇した後、水素ガスラインを水素タンクから燃料電池への供給に切り替え、かつ、熱交換ラインを燃料電池−冷却装置間の循環冷却に切り替える。
一方、燃料電池が定常運転状態に入った後、燃料電池の温度が過度に上昇した時には、熱交換ラインを燃料電池−冷却装置間の循環冷却に維持したまま、冷媒の一部を反応器に分配する。また、これと同時に、水素ガスラインを反応器から燃料電池への供給ラインに切り替える。その結果、水素貯蔵材料が冷媒の熱を吸収し、水素ガスを放出する。また、水素放出反応(吸熱反応)により、冷媒が冷却される。その結果、小型の冷却装置を用いた場合であっても、燃料電池を冷却することができる。
さらに、Pr、T1、及びT2を用いて、水素ガスの供給経路及び冷媒の循環経路を適時に切り替えると、排熱ロスを最小限に抑制しながら、燃料電池の暖機及び冷却を効率良く行うことができる。
本発明に係る燃料電池システムの模式図である。 反応器の一例である。 モード切替手段を実行するための制御プログラムのフローチャートである。
図4(A)は、暖機モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図である。図4(B)は、暖機モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図である。 図5(A)は、暖機再生モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図である。図5(B)は、暖機再生モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図である。
図6(A)は、冷却モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図である。図6(B)は、冷却モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図である。 図7(A)は、冷却再生モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図である。図7(B)は、冷却再生モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図である。
図8(A)は、冷却準備モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図である。図8(B)は、冷却準備モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図である。 図9(A)は、暖機準備モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図である。図9(B)は、暖機準備モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 燃料電池システム]
図1に、本発明に係る燃料電池システムの模式図を示す。図1において、燃料電池システム10は、
水素ガスを燃料とする燃料電池12と、
水素ガスを貯蔵するための水素タンク16と、
燃料電池12に供給するための水素ガスを放出し、又は、水素タンク16から供給される水素ガスを貯蔵するための水素貯蔵材料が内封された反応器18と、
燃料電池12との間で冷媒を循環させることによって、燃料電池12と熱交換を行うための冷却装置20と、
燃料電池12の燃料流路と水素タンク16とを接続するための第1水素ガスライン30と、
反応器18の水素流路と第1水素ガスライン30とを接続するための第2水素ガスライン40と、
燃料電池12の冷媒流路(A)と冷却装置20の冷媒流路(B)とを接続するための第1熱交換ライン50と、
反応器18の冷媒流路(C)を第1熱交換ライン50に対して並列に接続するための第2熱交換ライン60と、
反応器18内の圧力Prを検出するための圧力検出手段72と、
燃料電池12の内部温度、又は内部温度を推定可能な温度(第1温度)T1を検出するための第1温度検出手段74と、
燃料電池システム10が設置された環境の温度(第2温度)T2を検出するための第2温度検出手段76と、
燃料電池システム10の動作を制御する制御手段78と
を備えている。
燃料電池システム10は、燃料電池12で得られた余剰電力を貯蔵する二次電池80をさらに備えていても良い。
[1.1. 燃料電池]
本発明において、燃料電池12は水素を燃料とするものであれば良く、燃料電池12の種類は特に限定されない。特に、固体高分子型燃料電池は、最大排熱温度(Tmax)が他の燃料電池に比べて低く、外界温度との温度差ΔTが相対的に小さい。そのため、効率よく冷却するためには、相対的に大型の冷却装置20が必要となる。これに対し、固体高分子型燃料電池に対して本発明を適用すると、冷却装置20を小型化することができる。
燃料電池12の内部には、燃料を流すための燃料流路、酸化剤ガスを流すための酸化剤流路、及び冷媒を流すための冷媒流路(A)(いずれも、図示せず)が設けられている。燃料電池12の酸化剤流路には、大気を空気極に供給するためのエアコンプレッサ(図示せず)が接続されている。
[1.2. 水素タンク]
水素タンク16は、水素ガスを貯蔵するためのものである。本発明において、水素タンク16の構造、容量等は、特に限定されない。水素タンク16中の水素ガスは、燃料電池12に供給される場合と、反応器18に供給される場合とがある。この点は、後述する。
[1.3. 反応器]
反応器18は、水素貯蔵材料を内封するためのものである。反応器18は、水素貯蔵材料の収容スペースと、冷媒を流すための冷媒流路(C)と、水素を流すための水素流路と(いずれも図示せず)を備えている。反応器18の構造は、水素の吸蔵/放出、及び冷媒との熱交換が可能な限りにおいて、特に限定されない。反応器18及び水素貯蔵材料の詳細については、後述する。
[1.4. 冷却装置]
冷却装置20は、燃料電池12からの排熱を外界に放出するためのものである。本発明において、冷却装置20は、燃料電池12の温度に応じて、冷媒の循環経路を切り替え可能な第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60を介して、燃料電池12及び反応器18に接続されている。そのため、単に燃料電池12と冷却装置20との間で冷媒を循環させる場合に比べて、冷却装置20を小型化することができる。
冷媒の組成は、特に限定されない。
[1.5. 第1水素ガスライン]
第1水素ガスライン30は、燃料電池12の燃料流路と水素タンク16とを接続するためのものである。第1水素ガスライン30は、燃料電池12から水素タンク16に向かって水素ガスの圧力が段階的に高くなるように、第1水素ガスライン30をn個(n≧2)の圧力領域(第k圧力領域の圧力:Pk<第(k+1)圧力領域の圧力:Pk+1)に分割するための合計(n−1)個の第k減圧手段(1≦k≦n−1)を備えている。第1水素ガスライン30の構成は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
[1.5.1. 分割数(n)]
第1水素ガスライン30の分割数(n)は、2以上であれば良い。図1に示す例において、第1水素ガスライン30は、第1主ガス管32と、第1減圧手段34aと、第2減圧手段34bとを備えている。すなわち、第1水素ガスライン30は、燃料電池12から水素タンク16に向かって、第1圧力領域32a(圧力:P1)、第2圧力領域32b(圧力:P2>P1)、及び第3圧力領域32c(圧力:P3>P2)の合計3個の圧力領域に分割されている。
第1主ガス管32は、燃料電池12の燃料流路(図示せず)と水素タンク16とを連結するためのものである。第1減圧手段34aは、圧力をP2からP1に減圧すると同時に、水素タンク16から燃料電池12への水素ガスの供給及び停止を行うためのものである。減圧機能及び開閉機能を備えた減圧手段としては、例えば、インジェクタなどがある。
第2減圧手段34bは、圧力をP3からP2に減圧するためのものである。第2減圧手段34bは、減圧機能を備えているものであれば良く、開閉機能は必ずしも必要ではない。減圧機能のみを備えた減圧手段としては、例えば、減圧弁などがある。
[1.5.2. 圧力領域の圧力]
第1圧力領域32aは、燃料電池12の燃料流路に直接、接続される。第1圧力領域32aの圧力P1が低すぎると、燃料電池12に向かって水素を流すことができない。従って、P1は、0.1MPa以上が好ましい。P1は、好ましくは、0.11MPa以上、さらに好ましくは、0.13MPa以上である。
一方、P1が高くなりすぎると、燃料電池12が破損するおそれがある。従って、P1は、0.3MPa以下が好ましい。P1は、好ましくは、0.28MPa以下、さらに好ましくは、0.25MPa以下である。
第k圧力領域(2≦k≦n)のいずれか1つ(図1に示す例では、第2圧力領域32b)は、後述する第2水素ガスライン40を介して、反応器18の水素流路に接続される。反応器18に接続される第k圧力領域(2≦k≦n)の圧力Pkが低すぎると、水素貯蔵材料に水素を吸蔵させることが困難となる。従って、Pkは、0.3MPa以上が好ましい。Pkは、好ましくは、0.6MPa以上、さらに好ましくは、0.9MPa以上である。
一方、Pkが高くなりすぎると、反応器18が破損するおそれがある。従って、Pkは、2.0MPa以下が好ましい。Pkは、好ましくは、1.7MPa以下、さらに好ましくは、1.5MPa以下である。
第1水素ガスライン30が3個以上の圧力領域に分割されている場合において、P1、及びPk以外の圧力Pj(j≠1、k)は、Pj<Pj+1の条件を満たす限りにおいて、特に限定されない。図1に示す例において、P3は約70MPaである。
[1.6. 第2水素ガスライン]
第2水素ガスライン40は、反応器18の水素流路と第1水素ガスライン30とを接続するためのものである。第2水素ガスライン40は、水素吸蔵時には水素タンク16から反応器18に水素ガスを供給し、水素放出時には反応器18から燃料電池12の燃料流路に水素ガスを供給するために用いられる。そのため、第2水素ガスライン40は、反応器18の水素流路を第1圧力領域32a若しくは第k圧力領域(2≦k≦n)32kのいずれか一方に切り替えて接続し、又は、第1水素ガスライン30との接続を遮断するための水素ガス切替手段を備えている。水素ガス切替手段の構成は、このような機能を奏するものである限りにおいて,特に限定されない。
図1に示す例において、第2水素ガスライン40は、第2主ガス管42と、第1分岐管44aと、第2分岐管44bと、第1開閉バルブ(V1)46aと、第2開閉バルブ(V2)46bとを備えている。第2主ガス管42の一端は、反応器18の水素流路に接続され、他端は、第1分岐管44aの一端及び第2分岐管44bの一端に接続されている。
第1分岐管44aの他端は、第1主ガス管32の第2圧力領域32bに接続されている。また、第1分岐管44aには、第1開閉バルブ(V1)46aが設けられている。
第2分岐管44bの他端は、第1主ガス管32の第1圧力領域32aに接続されている。また、第2分岐管44bには、第2開閉バルブ(V2)46bが設けられている。
図1に示す例において、第1分岐管44a、第2分岐管44b、第1開閉バルブ(V1)46a、及び第2開閉バルブ(V2)46bが、反応器18を第1圧力領域32a若しくは第2圧力領域32bのいずれか一方に切り替えて接続し、又は、第1水素ガスライン30との接続を遮断するための水素ガス切替手段を構成する。
[1.7. 第1熱交換ライン]
第1熱交換ライン50は、燃料電池12の冷媒流路(A)と冷却装置20の冷媒流路(B)とを接続し、燃料電池12と冷却装置20との間で冷媒を循環させるためものである。さらに、本発明においては、エネルギー効率を高めるために、第1熱交換ライン50は、バイパス熱交換ラインを備えている。バイパス熱交換ラインは、燃料電池12の冷媒流路(A)から排出された冷媒を、そのまま燃料電池12の冷媒流路(A)に戻すためのものである。すなわち、冷媒は、燃料電池12と冷却装置20の間を循環する場合と、燃料電池12とバイパス熱交換ラインとの間を循環する場合とがある。第1熱交換ライン50の構成は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
図1に示す例において、第1熱交換ライン50は、第1主水管52aと、第2主水管52bと、第1冷媒ポンプ54と、バイパス水管56と、三方弁58とを備えている。第1主水管52aの一端は、燃料電池12の冷媒流路(A)の出口に接続され、他端は、冷却装置20の冷媒流路(B)の入口に接続されている。第2主水管52bの一端は、冷却装置20の冷媒流路(B)の出口に接続され、他端は、燃料電池12の冷媒流路(A)の入口に接続されている。
第1主水管52aの中間部分と第2主水管52bの中間部分は、バイパス水管56で連結されている。第1主水管52aとバイパス水管56の結合点には、冷媒の流れの方向を冷却装置20側(経路2側)又はバイパス水管56側(経路1側)のいずれか一方に切り替えるための三方弁58が設けられている。
さらに、第2主水管52bには、冷媒を一方向に循環させるための第1冷媒ポンプ54が設けられている。第1冷媒ポンプ54は、バイパス水管56と第2主水管52bとの結合点と、燃料電池12との間(すなわち、バイパス水管56よりも燃料電池12側にある第2主水管52b)に設けられている。
図1に示す例において、バイパス水管56及び三方弁58がバイパス熱交換ラインを構成する。
[1.8. 第2熱交換ライン]
第2熱交換ライン60は、反応器18の冷媒流路(C)を第1熱交換ライン50に対して並列に接続するためのものである。「並列に接続されている」とは、反応器18の冷媒流路(C)の一端が第1主水管52aに接続され、他端が第2主水管52bに接続されていることをいう。
さらに、第2熱交換ライン60は、冷媒が燃料電池12−冷却装置20間、又は燃料電池12−バイパス熱交換ライン間を循環する時に、冷媒の一部を反応器18の冷媒流路(C)に流すための流量調節手段を備えている。第2熱交換ライン60の構成は、このような機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
図1に示す例において、第2熱交換ライン60は、第1分岐水管62aと、第2分岐水管62bと、第2冷媒ポンプ64とを備えている。第1分岐水管62aの一端は、反応器18の冷媒流路(C)の出口に接続され、他端は、第2主水管52bに接続されている。第1分岐水管62aは、第2主水管52bとバイパス水管56の結合点と、第1冷媒ポンプ54との間に接続されている。
第2分岐水管62bの一端は、第1主水管52aに接続され、他端は、反応器18の冷媒流路(C)の入口に接続されている。第2分岐水管62bは、燃料電池12と三方弁58との間に接続されている。さらに、第2分岐水管62bには、冷媒を反応器18に分配するための第2冷媒ポンプ64(流量調節手段)が設けられている。
なお、第2冷媒ポンプ64は、第1分岐水管62aに設置しても良い。また、第2冷媒ポンプ64に代えて、又は、これに加えて、第1分岐水管62a及び/又は第2分岐水管62bに流量調節バルブ(流量調節手段)を設置しても良い。さらに、第1分岐水管62aを第1主水管52aに接続し、第2分岐水管62bを第2主水管52bに接続しても良い。
[1.9. 圧力検出手段]
圧力検出手段72は、反応器18内の圧力Prを検出するためのものである。圧力Prは、後述する暖機再生モード及び冷却再生モードにおいて、反応器18への水素の吸蔵/放出を制御するために用いられる。圧力検出手段72の構造及び設置位置は、このような制御が可能である限りにおいて、特に限定されない。
図1に示す例において、圧力検出手段は、反応器18と第1開閉バルブ(V1)46aとの間にある第1分岐管44a上に設置されている。
[1.10. 第1温度検出手段]
第1温度検出手段74は、燃料電池12の内部温度、又は内部温度を推定可能な温度(第1温度)T1を検出するためのものである。第1温度T1は、後述する第2温度T2と共に、燃料電池12が加熱又は冷却を必要としているか否か、及び、反応器18が水素の吸蔵又は放出を必要としているか否かを判断する際に用いられる。第1温度検出手段74の構造及び設置位置は、このような判断が可能な限りにおいて、特に限定されない。
第1温度T1としては、例えば、
(a)燃料電池12の内部温度、
(b)燃料電池12の外壁温度、
(c)燃料電池12の冷媒流路(A)の入口温度、
(d)燃料電池12の冷媒流路(A)の出口温度、
(e)冷媒流路(A)の入口温度及び出口温度以外の温度であって、第1熱交換ライン50を流れる冷媒の温度
などがある。
図1に示す例において、第1温度検出手段74は、燃料電池12の冷媒流路(A)の入口側に設けられている。すなわち、第1温度T1には、燃料電池12の冷媒流路(A)の入口側の冷媒温度が用いられている。
[1.11. 第2温度検出手段]
第2温度検出手段76は、燃料電池システム10が設置された環境の温度(第2温度)T2を検出するためのものである。第2温度T2は、上述した第1温度T1と共に、燃料電池12が加熱又は冷却を必要としているか否か、及び、反応器18が水素の吸蔵又は放出を必要としているか否かを判断する際に用いられる。第2温度検出手段76の構造及び設置位置は、このような判断が可能な限りにおいて、特に限定されない。図1に示す例において、第2温度検出手段76は、冷却装置20の近傍に設けられている。
[1.12. 制御手段]
制御手段78は、燃料電池システム10の動作を制御するためのものである。
図1に示す例において、制御手段78は、
(a)第1減圧手段34a及び第2減圧手段34b、
(b)第1開閉バルブ(V1)46a及び第2開閉バルブ(V2)46b、
(c)第1冷媒ポンプ54及び三方弁58、
(d)第2冷媒ポンプ64、並びに、
(e)二次電池80
の動作を制御する。
さらに、本発明において、制御手段78は、圧力Pr、第1温度T1、及び第2温度T2を用いて、水素ガスの供給経路、及び冷媒の循環経路を適時に切り替えるモード切替手段を備えている。モード切替手段の詳細については、後述する。
[1.13. 二次電池]
燃料電池システム10は、二次電池80を備えていても良い。二次電池80は、燃料電池12で得られた余剰電力を貯蔵するためのものである。
燃料電池12の冷却が必要になった場合、冷媒の熱を反応器18が吸収することによって反応器18から水素が放出される。放出された水素は、燃料電池12に供給され、発電に利用される。この時に得られる電力が、電力消費装置が要求している電力を超えている場合がある。このような場合、二次電池80を用いて余剰電力を貯蔵するのが好ましい。
[2. 反応器]
[2.1. 反応器の構造]
図2に、反応器18の一例を示す。図2において、反応器18は、筐体18aと、筐体18aの外周及び内部に設けられた冷媒流路(C)18bとを備えている。冷媒流路(C)18bは、内部が空洞になっており、内部に冷媒を流せるようになっている。筐体18aの上面には、冷媒の入口18cと冷媒の出口18dが設けられている。各冷媒流路(C)18bは、それぞれ冷媒の入口18c及び冷媒の出口18dと連結している。そのため、冷媒の入口18cから供給された冷媒は、冷却流路(C)18bを通って、冷媒の出口18dから排出される。
また、冷媒流路(C)18bは、筐体18aの外壁及び隔壁を兼ねている。各冷媒流路(C)18bの間にある空間は、水素ガスを流すための水素流路18eであり、空間内には水素貯蔵材料22が充填されている。水素貯蔵材料22の詳細については、後述する。
冷媒流路(C)18bは、その内部を流れる冷媒と、水素貯蔵材料22との間で熱交換を行うためのものである。そのため、冷媒流路(C)18bは、冷媒−水素貯蔵材料22との間の熱交換を促進するための伝熱フィンを備えていても良い。
例えば、冷媒流路(C)18bの内面には、冷媒と冷媒流路(C)18bとの間の熱交換を促進させるための伝熱フィン(A)(図示せず)が設けられていても良い。
あるいは、冷媒流路(C)18bの外面(すなわち、水素貯蔵材料22の充填部)には、冷媒流路(C)18bと水素貯蔵材料22との間の熱交換を促進するための伝熱フィン(B)(図示せず)が設けられていても良い。
[2.2. 水素貯蔵材料の組成]
反応器18には、水素貯蔵材料22が内封されている。本発明において、水素貯蔵材料22の組成は、水素ガスの吸蔵及び放出が可能な限りにおいて、特に限定されない。
後述するように、水素タンク16から燃料電池12に水素ガスを供給するための第1水素ガスライン30は、減圧手段を用いて、圧力の異なる複数個の圧力領域に分割される。一方、燃料電池12は、その種類に応じて、最大排熱温度(Tmax)が異なる。燃料電池12の排熱のみを用いて水素を放出させるためには、水素貯蔵材料22は、燃料電池12の最大排熱温度(Tmax)における平衡水素圧力が所定の条件を満たしているのが好ましい。この点については、後述する。
水素貯蔵材料22は、水素の吸蔵時に発熱し、水素の放出時に吸熱する。そのため、効率よく水素の吸蔵及び放出を行うためには、水素貯蔵材料22は、熱伝導率が高いものが好ましい。しかし、水素貯蔵材料22は、一般に、熱伝導率が低いものが多い。このような場合には、水素貯蔵材料22に熱伝導助剤を添加するのが好ましい。熱伝導助剤としては、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などがある。
[2.3. 水素貯蔵材料の平衡圧力]
燃料電池12の温度が過度に上昇した時は、第2水素ガスライン40を介して、反応器18から燃料電池12に水素が供給される。燃料電池12の排熱のみを用いて反応器18から水素を放出させるためには、水素貯蔵材料は、燃料電池12の最大排熱温度(Tmax)における平衡水素圧力がP1より大きいものが好ましい。
一方、燃料電池12の始動時には、第2水素ガスライン40を介して、水素タンク16から反応器18に水素が供給される。第1水素ガスライン30と反応器18の圧力差のみによって、水素貯蔵材料に水素ガスを吸蔵させるためには、水素貯蔵材料は、燃料電池12の最大排熱温度(Tmax)における平衡水素圧力が、反応器18に接続される第k圧力領域(2≦k≦n)の圧力Pk未満であるものが好ましい。
[3. モード切替手段]
制御手段78は、圧力Pr、第1温度T1、及び第2温度T2を用いて、水素ガスの供給経路、及び冷媒の循環経路を適時に切り替えるモード切替手段を備えている。
また、モード切替手段は、暖機モード実行手段、暖機再生モード実行手段、冷却モード実行手段、冷却再生モード実行手段、冷却準備モード実行手段、及び/又は、暖機準備モード実行手段を備えている。本発明において、モード切替手段は、これらのいずれか1つの手段を備えていても良く、あるいは、2以上の手段を備えていても良い。
例えば、モード切替手段は、
(a)暖機モード実行手段と、冷却モード実行手段のみを備えているもの、
(b)(a)に加えて、さらに暖機再生モード実行手段、及び冷却再生モード実行手段を備えているもの、あるいは、
(c)(a)又は(b)に加えて、さらに暖機準備モード実行手段、及び冷却準備モード実行手段を備えているもの
のいずれであっても良い。
さらに、環境温度(第2温度T2)が低い場合、一般に、冷却よりも暖機が必要とされる確率が高くなる。一方、環境温度が高い場合、一般に、暖機よりも冷却が必要とされる確率が高くなる。そのため、モード切替手段は、
前記T2があるしきい値未満である時(又は、前記T2が前記しきい値以下である時)に、下記(A)のモード群に含まれるいずれか1つ以上のモードを実行し、
前記T2があるしきい値以上である時(又は、前記T2が前記しきい値を超える時)に、下記の(B)のモード群に含まれるいずれか1つ以上のモードを実行する
暖機・冷却切替手段をさらに備えていても良い。
(A)暖機モード実行手段、暖機再生モード実行手段、又は、暖機準備モード実行手段。
(B)冷却モード実行手段、冷却再生モード実行手段、又は、冷却準備モード実行手段。
[3.1. 暖機モード実行手段(図4)]
[3.1.1. 概要]
モード切替手段は、暖機モード実行手段を備えていても良い。
ここで、「暖機モード実行手段」とは、燃料電池システム10の始動後、燃料電池12の加熱が必要と判断された場合に、水素タンク16から反応器18に水素ガスを供給し、第1熱交換ライン50をバイパス熱交換ライン側に切り替え、かつ、反応器18の冷媒流路(C)に冷媒の一部を流すことにより、水素貯蔵材料に水素ガスを吸蔵させ、水素ガスの吸蔵熱を用いて燃料電池12を加熱する手段をいう(図4参照)。換言すれば、暖機モード実行手段とは、冷却装置20からの放熱を抑制しながら、燃料電池12自身の発熱及び水素吸蔵熱を用いて、燃料電池12を速やかに昇温させる手段をいう。燃料電池システム10が暖機モードにある場合、通常、燃料電池12には、要求電力に応じて、水素タンク16から水素ガスが供給される。
燃料電池12には、適正な作動温度範囲がある。燃料電池12の内部温度が適正な作動温度範囲より低い場合及び高い場合のいずれも、発電効率が低下する。そのため、燃料電池12の温度が相対的に低い場合には、暖機モードを実行するのが好ましい。
暖機モードの実行が必要となる場合としては、例えば、
(a)燃料電池システム10の始動直後であって、第2温度T2が低い場合、
(b)燃料電池システム10の運転中であって、第2温度T2が過度に低く、かつ、燃料電池12の発電量が過度に少ない場合、
などがある。
[3.1.2. 暖機モードの開始条件]
第1温度T1及び第2温度T2が、それぞれ、以下の式(1.1)及び式(1.2)の条件を満たした場合、暖機モードを開始する。暖機モードは、始動時だけでなく、運転中にも実行される場合がある。
1<C11(又は、T1≦C11) ・・・(1.1)
2<C21(又は、T2≦C21) ・・・(1.2)
ここで、「C11」は、暖機モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値(判定基準)である。「C21」は、暖機モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT2の臨界値である。
[A. T1の条件]
1が燃料電池12の適正な作動温度範囲の下限値T1Lより低くなると、発電効率が低下する。従って、T1がT1L以上である時は、暖機モードを実行する必要はない。T1がT1L未満であっても、T1とT1Lの差が相対的に小さい時は、燃料電池12自身の発熱によって短時間でT1がT1L以上となる場合がある。このような場合もまた、必ずしも暖機モードを実行する必要はない。一方、臨界値C11を過度に小さく設定すると、暖機モードが実質的に機能せず、燃料電池12を適正な作動範囲まで昇温させるのに長時間を要するおそれがある。
11の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[B. T2の条件]
1が低い場合であっても、T2が高くなるほど、燃料電池12の暖機が必要となる確率は低くなる。これは、T2が高くなるほど、燃料電池12の発熱のみにより、燃料電池12を短時間で適正な作動温度範囲まで昇温できるためである。
具体的には、T2が低温域にある場合(T2<T2L)、始動時だけでなく、運転中においても暖機が必要となる確率は、極めて高い。T2が低温域〜中温域にある場合(T2L≦T2<T2M)、運転中において暖機が必要となる確率は、相対的に高い。T2が中温域〜高温域にある場合(T2M≦T2<T2H)、運転中において暖機が必要となる確率は、相対的に低い。さらに、T2が超高温域にある場合(T2≧T2H)、始動時だけでなく、運転中においても暖機が必要となる確率は、極めて低い。そのため、臨界値C21が不適切であると、適時に暖機モードを実行できなくなるおそれがある。
21の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.1.3. 暖機モードの終了条件]
第1温度T1が以下の式(1.3)の条件を満たした場合、暖機モードを終了する。
1≧D11(又は、T1>D11) ・・・(1.3)
ここで、「D11」は、暖機モードを終了するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。
11は、不必要な暖機モードの再実行を防ぐために、少なくとも暖機モードの開始条件(C11)より高くする必要がある。一方、暖機モードを必要以上に継続するのは、実益がない。また、D11が高くなりすぎると、燃料電池12の温度が過度に上昇するおそれがある。
11の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.2. 暖機再生モード実行手段(図5)]
[3.2.1. 概要]
モード切替手段は、暖機再生モード実行手段を備えていても良い。
ここで、「暖機再生モード実行手段」とは、暖機モード終了後、暖機モードが再度実行される可能性が高いと判断された場合に、反応器18から燃料電池12への水素ガスの供給及び停止を繰り返しながら、第1熱交換ライン50をバイパス熱交換ライン側に切り替え、かつ、反応器18の冷媒流路(C)に冷媒の一部を流すことにより、反応器18から燃料電池12に水素ガスを断続的に放出し、反応器18を水素吸蔵可能な状態に再生する手段をいう(図5参照)。換言すれば、暖機再生モード実行手段とは、エネルギー効率の低下を抑制しながら、反応器18を水素吸蔵可能な状態に再生する手段をいう。
水素貯蔵材料から水素ガスを放出させる反応は、吸熱反応である。そのため、反応器18から水素ガスを連続的に放出させると、燃料電池12の温度が過度に低下する場合がある。燃料電池12の温度が過度に低下し、適正な作動温度範囲を下回ると、発電効率が低下する。そのため、暖機再生モードにおいては、冷却装置20による冷却を停止させた状態で、反応器18からの水素の放出を断続的に行う。これにより、燃料電池12の過度の温度低下を抑制することができる。
[3.2.2. 暖機再生モードの開始条件]
暖機モード終了後、第1温度T1及び第2温度T2が、それぞれ、以下の式(2.1)及び式(2.2)の条件を満たした場合、暖機再生モードを開始する。
1≧C12(又は、T1>C12) ・・・(2.1)
22≦T2<C23(又は、C22<T2≦C23) ・・・(2.2)
ここで、「C12」は、暖機再生モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。「C22」及び「C23」は、それぞれ、暖機再生モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT2の臨界値の下限値及び上限値である。
[A. T1の条件]
暖機再生モードは、暖機モードが再度実行される確率は相対的に高いが、短時間で暖機モードが実行される確率が低い場合に実行される。直前の暖機モードにおいて、反応器18に必要以上の水素ガスを吸蔵させると、暖機モードが再度実行された時に反応器18は必要量の水素ガスを吸蔵できなくなるおそれがある。また、反応器18が必要以上の水素ガスを吸蔵した場合、吸蔵熱によりT1が過度に上昇する。このような場合には、反応器18が吸蔵した過剰の水素ガスを放出させ、次の暖機モードに備える。
臨界値C12が小さくなりすぎると、燃料電池12の温度が過度に低下して発電効率が低下する。一方、C12が大きくなりすぎると、実質的に暖機再生モードが機能しなくなる。
12の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[B. T2の条件]
2が過度に低い場合、短時間で暖機モードが実行される確率が高くなる。この場合、低速で水素を放出する暖機再生モードではなく、高速で水素を放出する暖機準備モードを実行するのが好ましい。
一方、T2が過度に高い場合、暖機モードが再度実行される確率が低くなる。このような場合、必ずしも暖機再生モードを実行する必要はない。
22及びC23の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.2.3. 暖機再生モードの終了条件]
反応器18からの水素の放出を停止させた状態で、圧力Prが以下の式(2.3)の条件を満たした場合、暖機再生モードを終了する。
r≦Pc1@D12(又は、Pr<Pc1@D12) ・・・(2.3)
ここで、「Pc1@D12」は、T1がD12(圧力を測定する際の基準温度)である時の圧力Prの臨界値である。
反応器18が必要以上の水素ガスを吸蔵している場合、反応器18の圧力Prが上昇する。また、反応器18の水素吸蔵量が同一であっても、Prは、T1に応じて変化する。さらに、暖機再生モードでは、水素の放出が断続的に行われる。そのため、水素ガスを放出している時にはT1は低下し、放出を停止している時にはT1は上昇する。これに伴い、Prも増減を繰り返す。そのため、暖機再生モードを終了するか否かを判断する場合には、圧力を測定する際の基準温度D12を定め、水素の放出を停止させた状態で、T1=D12での圧力Prの実測値と臨界値とを対比するのが好ましい。
臨界値Pc1@D12が小さくなりすぎると、必要以上に水素ガスが放出され、燃料電池12の温度が低下する。一方、Pc1@D12が大きくなりすぎると、水素ガスの放出が不十分となり、次に暖機モードが実行されたときに、必要量の水素ガスを吸蔵できなくなる。
c1@D12の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.3. 冷却モード実行手段(図6)]
[3.3.1. 概要]
モード切替手段は、冷却モード実行手段を備えていても良い。
ここで、「冷却モード実行手段」とは、燃料電池12の冷却が必要と判断された場合に、反応器18から燃料電池12への水素ガスの供給及び停止を繰り返しながら、第1熱交換ライン50を冷却装置20側に切り替え、かつ、反応器18の冷媒流路(C)に冷媒の一部を流すことにより、反応器18から燃料電池12に水素ガスを断続的に放出し、反応器18及び冷却装置20を用いて燃料電池12を冷却する手段をいう(図6参照)。換言すれば、冷却モード実行手段とは、冷却装置20の冷却能力及び水素放出熱を用いて、燃料電池12を速やかに冷却させる手段をいう。
冷却モードを実行する際には、反応器18から水素ガスを連続的に放出させても良い。しかし、水素ガスを連続的に放出させると、燃料電池12の温度が過度に低下したり、あるいは、次の冷却モードを実行する際に、水素ガスが不足するおそれがある。また、運転中に要求電力が減少し、冷却装置20のみで燃料電池12の冷却が可能となる場合がある。従って、冷却モードを実行する際には、反応器18から水素ガスを断続的に放出させるのが好ましい。
[3.3.2. 冷却モードの開始条件]
第1温度T1が以下の式(3.1)の条件を満たした場合、冷却モードを開始する。
1≧C13(又は、T1>C13) ・・・(3.1)
ここで、「C13」は、冷却モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。
また、第1温度T1が式(3.1)の条件を満たすことに加えて、さらに第2温度T2が以下の式(3.2)を満たした時に、冷却モードを開始しても良い。
2≧C24(又は、T2>C24) ・・・(3.2)
ここで、「C24」は、冷却モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT2の臨界値である。
[A. T1の条件]
1が燃料電池12の適正な作動温度範囲の上限値T1Uより高くなると、発電効率が低下する。また、T1がT1Uより過度に高くなると、燃料電池12が破損するおそれがある。このような場合には、冷却モードを実行し、燃料電池12を冷却する。
臨界値C13が小さくなりすぎると、必要以上に冷却が行われ、燃料電池12の効率が低下する。一方、C13が大きくなりすぎると、燃料電池12が破損するおそれがある。
13の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[B. T2の条件]
一般に、T2が高くなるほど、冷却モードが実行される確率が高くなる。臨界値C24が小さくなりすぎると、必要以上に冷却が行われ、燃料電池12の効率が低下する。一方、臨界値C24が大きくなりすぎると、冷却モードが実質的に機能しなくなる。
24の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.3.3. 冷却モードの終了条件]
反応器18からの水素の放出を停止した状態で、第1温度T1が以下の式(3.3)の条件を満たした場合、冷却モードを終了する。
1<D13(又は、T1≦D13) ・・・(3.3)
ここで、「D13」は、冷却モードを終了するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。
冷却モードの終了条件を満たすか否かは、T1を安定させるために、反応器18からの水素の放出を停止した状態で判断される。臨界値D13は、不必要な冷却モードの再実行を防ぐために、少なくとも冷却モードの開始条件(C13)より小さくする必要がある。但し、D13が小さくなりすぎると、必要以上に水素ガスが放出され、燃料電池12の温度が過度に低下する。
13の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.4. 冷却再生モード実行手段(図7)]
[3.4.1. 概要]
モード切替手段は、冷却再生モード実行手段を備えていても良い。
ここで、「冷却再生モード実行手段」とは、冷却モード終了後、冷却モードが再度実行される可能性が高いと判断された場合に、水素タンク16から反応器18への水素ガスの供給及び停止を繰り返しながら、第1熱交換ライン50を冷却装置20側に切り替え、かつ、反応器18の冷媒流路(C)に冷媒の一部を流すことにより、反応器18に水素ガスを断続的に供給し、反応器18を水素放出可能な状態に再生する手段をいう(図7参照)。換言すれば、冷却再生モード実行手段とは、エネルギー効率の低下を抑制しながら、反応器18を水素放出可能な状態に再生する手段をいう。燃料電池システム10が冷却再生モードにある場合、通常、燃料電池12には、要求電力に応じて、水素タンク16から水素ガスが供給される。
水素貯蔵材料に水素ガスを吸蔵させる反応は、発熱反応である。そのため、反応器18に水素ガスを連続的に供給すると、燃料電池12の温度が過度に上昇する場合がある。燃料電池12の温度が過度に上昇し、適正な作動温度範囲を超えると、発電効率が低下する。そのため、冷却再生モードにおいては、冷却装置20による冷却を行うと同時に、反応器18への水素の供給を断続的に行う。これにより、燃料電池12の過度の温度上昇を抑制することができる。
[3.4.2. 冷却再生モードの開始条件]
冷却モード終了後、第1温度T1及び第2温度T2が、それぞれ、以下の式(4.1)及び式(4.2)の条件を満たした場合、冷却再生モードを開始する。
1<C14(又は、T1≦C14) ・・・(4.1)
25≦T2<C26(又は、C25<T2≦C26) ・・・(4.2)
ここで、「C14」は、冷却再生モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。「C25」及び「C26」は、それぞれ、冷却再生モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT2の臨界値の下限値及び上限値である。
[A. T1の条件]
冷却再生モードは、冷却モードが再度実行される確率は相対的に高いが、短時間で冷却モードが実行される確率が低い場合に実行される。直前の冷却モードにおいて、反応器18から必要以上の水素ガスを放出させると、冷却モードが再度実行された時に反応器18から必要量の水素ガスを放出できなくなるおそれがある。このような場合には、反応器18が放出した過剰の水素ガスを補給し、次の冷却モードに備える。反応器18が必要以上の水素ガスを放出した場合、放出熱によりT1が過度に低下する。
臨界値C14が小さくなりすぎると、冷却再生モードが実質的に機能しなくなる。一方、C14が大きくなりすぎると、燃料電池12の温度が過度に上昇し、発電効率が低下したり、燃料電池12が破損するおそれがある。
14は、これらの点を考慮して、最適な値を選択するのが好ましい。
[B. T2の条件]
2が過度に高い場合、短時間で冷却モードが実行される確率が高くなる。この場合、低速で水素を吸蔵する冷却再生モードではなく、高速で水素を吸蔵する冷却準備モードを実行するのが好ましい。
一方、T2が過度に低い場合、冷却モードが再度実行される確率は低くなる。このような場合、必ずしも冷却再生モードを実行する必要はない。
25及びC26の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.4.3. 冷却再生モードの終了条件]
反応器18からの水素の放出を停止させた状態で、圧力Prが以下の式(4.3)の条件を満たした場合、冷却再生モードを終了する。
r≦Pc2@D14(又は、Pr<Pc2@D14) ・・・(4.3)
ここで、「Pc2@D14」は、T1がD14(圧力を測定する際の基準温度)である時の圧力Prの臨界値である。
暖機再生モードと同様に、冷却再生モードを終了するか否かを判断する場合には、圧力を測定する際の基準温度D14を定め、水素の放出を停止させた状態で、T1=D14での圧力Prの実測値と臨界値とを対比するのが好ましい。
臨界値Pc2@D14が小さくなりすぎると、水素ガスの吸蔵が不十分となり、次に冷却モードが実行されたときに、必要量の水素ガスを放出できなくなる。一方、Pc2@D14が大きくなりすぎると、過剰の水素ガスが吸蔵され、燃料電池12の温度が上昇する。
c2@D14の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.5. 冷却準備モード実行手段(図8)]
[3.5.1. 概要]
モード切替手段は、冷却準備モード実行手段を備えていても良い。
ここで、「冷却準備モード実行手段」とは、冷却モードが実行される可能性が高く、かつ、エネルギー効率の低下の抑制よりも冷却モードの実行準備が優先されると判断された場合に、水素タンク16から反応器18へ水素ガスを供給し、第1熱交換ライン50を冷却装置20側に切り替え、かつ、反応器18の冷媒流路(C)に冷媒の一部を流すことにより、反応器18に水素を連続的に供給し、反応器18を水素放出可能な状態に戻す手段をいう(図8参照)。換言すれば、冷却準備モードとは、エネルギー効率の低下を許容しながら、反応器18を速やかに水素放出可能な状態に戻す手段をいう。燃料電池システム10が冷却準備モードにある場合、通常、燃料電池12には、要求電力に応じて、水素タンク16から水素ガスが供給される。
2が過度に高い場合、短時間で冷却モードが実行される可能性が高い。このような場合には、反応器18に水素ガスを連続的に供給し、反応器18を速やかに水素放出可能な状態に戻す。その際、燃料電池12の温度が過度に上昇する場合もあるが、ここでは冷却モードの実行準備が優先される。冷却準備モードを実行する際には、燃料電池12の温度の上昇を抑制するために、冷却装置20による冷却が行われる。
[3.5.2. 冷却準備モードの開始条件]
第1温度T1及び第2温度T2が、それぞれ、以下の式(5.1)及び式(5.2)の条件を満たした場合、冷却準備モードを開始する。
1<C15(又は、T1≦C15) ・・・(5.1)
2>C27(又は、T2≧C27) ・・・(5.2)
ここで、「C15」は、冷却準備モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。「C27」は、冷却準備モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT2の臨界値である。
[A. T1の条件]
冷却準備モードは、短時間で冷却モードが実行される確率が極めて高い場合に実行される。T2が高い場合において、少なくともT1が冷却モードの終了条件(D13)以下になったときには、冷却モードが実行される確率が高くなる。
臨界値C15が小さくなりすぎると、実質的に冷却準備モードが機能せず、再度冷却が必要となった場合に水素を放出(燃料電池12を冷却)できなくなる。一方、C15が大きくなりすぎると、燃料電池12の温度T1が過度に高くなり、燃料電池12が破損するおそれがある。
15は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[B. T2の条件]
一般に、T2が高くなるほど、冷却モードが実行される確率が高くなる。特に、T2が超高温域にある場合(T2≧T2H)には、冷却モードが実行される確率が極めて高くなる。
臨界値C27が小さくなりすぎると、不必要に冷却準備モードが実行され、燃料電池12の発電効率が不必要に低下することで、システムのエネルギー効率が低下する。一方、C27が大きくなりすぎると、冷却準備モードが実質的に機能しなくなる。
27は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.5.3. 冷却準備モードの終了条件]
第1温度T1が以下の式(5.3)又は式(5.4)の条件を満たした場合、冷却準備モードを終了する。
1>D15(又は、T1≧D15) ・・・(5.3)
1<D16(又は、T1≦D16) ・・・(5.4)
ここで、「D15」は、冷却準備モードを終了するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。「D16」は、冷却準備モード開始時のT1(すなわち、C15)である。
式(5.3)を用いて冷却準備モードの終了を判断する場合において、臨界値D15は、不必要な冷却準備モードの再実行を防ぐために、少なくとも冷却準備モードの開始条件(C15)より大きくする必要がある。但し、D15が大きくなりすぎると、必要以上に水素ガスが吸蔵され、燃料電池12の温度が過度に上昇する。
15の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
一方、反応器18の水素貯蔵量が最大量に近い場合、式(5.3)を満たさないことが考えられる。このような場合には、式(5.4)を用いて冷却準備モードの終了を判断するのが好ましい。
[3.6. 暖機準備モード実行手段(図9)]
[3.6.1. 概要]
モード切替手段は、暖機準備モード実行手段を備えていても良い。
ここで、「暖機準備モード実行手段」とは、暖機モードが実行される可能性が高く、かつ、エネルギー効率の低下の抑制よりも暖機モードの実行準備が優先されると判断された場合に、反応器18から燃料電池12へ水素ガスを供給し、第1熱交換ライン50をバイパス熱交換ライン側に切り替え、かつ、反応器18の冷媒流路(C)に冷媒の一部を流すことにより、反応器18から燃料電池12に水素ガスを連続的に放出し、反応器18を水素吸蔵可能な状態に戻す手段をいう(図9参照)。換言すれば、暖機準備モードとは、エネルギー効率の低下を許容しながら、反応器18を速やかに水素吸蔵可能な状態に戻す手段をいう。
2が過度に低い場合、短時間で暖機モードが実行される可能性が高い。このような場合には、反応器18から水素ガスを連続的に放出し、反応器18を速やかに水素吸蔵可能な状態に戻す。その際、燃料電池12の温度が過度に低下する場合もあるが、ここでは暖機モードの実行準備が優先される。暖機準備モードを実行する際には、燃料電池12の温度の低下を抑制するために、冷却装置20による冷却は行われない。
[3.6.2. 暖機準備モードの開始条件]
第1温度T1及び第2温度T2が、それぞれ、以下の式(6.1)及び式(6.2)の条件を満たした場合、冷却準備モードを開始する。
1≧C16(又は、T1>C16) ・・・(6.1)
2<C28(又は、T2≦C28) ・・・(6.2)
ここで、「C16」は、暖機準備モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。「C28」は、暖機準備モードを開始するか否かを判断する際に用いられるT2の臨界値である。
[A. T1の条件]
暖機準備モードは、短時間で暖機モードが実行される確率が極めて高い場合に実行される。T2が低い場合において、T1が相対的に低いときには、暖機モードが実行される確率が高くなる。
臨界値C16が小さくなりすぎると、暖機モードによる発電効率の向上分が暖機準備モードの実行で打ち消される。一方、C16が大きくなりすぎると、暖機準備モードが実質的に機能しなくなる。
16は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[B. T2の条件]
一般に、T2が低くなるほど、暖機モードが実行される確率が高くなる。特に、T2が低温域にある場合(T2<T2L)には、暖機モードが実行される確率が極めて高くなる。
臨界値C28が小さくなりすぎると、暖機準備モードが実行される確率が低下し、暖機が必要な時に水素を吸蔵できない(暖機できない)確率が高まる。一方、C28が大きくなりすぎると、不必要に暖機準備モードが実行されることで、燃料電池12の発電効率が不必要に低下する。
28は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
[3.6.3. 暖機準備モードの終了条件]
第1温度T1が以下の式(6.3)又は式(6.4)の条件を満たした場合、暖機準備モードを終了する。
1≦D17(又は、T1<D17) ・・・(6.3)
1>D18(又は、T1≧D18) ・・・(6.4)
ここで、「D17」は、暖機準備モードを終了するか否かを判断する際に用いられるT1の臨界値である。「D18」は、暖機準備モード開始時のT1(すなわち、C16)である。
式(6.3)を用いて暖機準備モードの終了を判断する場合において、臨界値D17は、不必要な暖機準備モードの再実行を防ぐために、少なくとも暖機準備モードの開始条件(C16)より小さくする必要がある。但し、D17が小さくなりすぎると、必要以上に水素ガスが放出され、燃料電池12の温度が過度に低下する。
17の値は、これらの点を考慮して最適な値を選択するのが好ましい。
一方、反応器18の水素貯蔵量がゼロに近い場合、式(6.3)を満たさないことが考えられる。このような場合には、式(6.4)を用いて暖機準備モードの終了を判断するのが好ましい。
[3.7. 余剰電力充電手段]
燃料電池システム10が、燃料電池12で得られた余剰電力を貯蔵する二次電池80をさらに備えている場合、暖機準備モード実行手段は、余剰電力充電手段をさらに備えていても良い。
ここで、「余剰電力充電手段」とは、燃料電池12の発電出力が電力消費装置の出力を上回った場合に、余剰電力を二次電池80に充電するための手段をいう。
暖機準備モード実行手段では、燃料電池12のエネルギー効率の低下の抑制よりも反応器18からの水素放出が優先される。そのため、過剰の水素ガスが燃料電池12に供給され、燃料電池12の発電出力が電力消費装置の出力を上回る場合がある。このような場合には、余剰電力を二次電池80に充電するのが好ましい。
[3.8. 余剰電力充電手段]
燃料電池システム10が、燃料電池12で得られた余剰電力を貯蔵する二次電池80をさらに備え、暖機準備モード実行手段が余剰電力充電手段をさらに備えている場合、暖機準備モード実行手段は、発電効率低下手段をさらに備えていても良い。
ここで、「発電効率低下手段」とは、二次電池80の蓄電量が最大蓄電量の95%を超えた時に、燃料電池12の発電効率を低下させる手段をいう。
二次電池80の蓄電量には、限界がある。そため、暖機準備モードが終了する前に、二次電池80がフル充電の状態になることがある。このような場合、二次電池80の蓄電量が最大蓄電量の95%を超えた時に、燃料電池12の発電効率を低下させるのが好ましい。燃料電池12の発電効率を低下させると、発電量が低下し、燃料電池12から排出される熱エネルギーが増大する。
燃料電池12の発電効率を低下させる方法としては、例えば、水素と酸化性ガスのストイキ比を1.0(理論値)に絞った状態で運転する方法などがある。
[3.9. ノーマルモード]
燃料電池システム10が上記のいずれのモードも実行していない場合、燃料電池12をノーマルモードで運転する。「ノーマルモード」とは、反応器18を第1水素ガスライン30及び第1熱交換ライン50から遮断し、三方弁58を冷却装置20側に切り替えた状態で燃料電池12を運転するモードをいう。
[3.10. 開始条件及び終了条件の具体例]
第2温度T2及び圧力Prは、測定位置が変わっても大きく変わることはない。一方、第1温度T1は、測定位置によって大きく変わる。そのため、各モードの開始条件(臨界値C)及び終了条件(臨界値D、Pc)は、T1の測定位置に応じて最適な値を選択するのが好ましい。表1に、T1として燃料電池12の冷媒流路(A)の入口温度を用いた時の開始条件及び終了条件の一例を示す。
Figure 2018185978
[3.11. フローチャート]
図3に、モード切替手段を実行するための制御プログラムのフローチャートを示す。ステップ1(以下、単に「S1」という)において、暖機モードの開始条件を満たすか否かが判断される。開始条件を満たさない時(S1:NO)は、S7に進む。一方、開始条件を満たす時(S1:YES)には、S2に進み、暖機モードを実行する。次に、S3に進み、暖機モードの終了条件を満たすか否かが判断される。終了条件を満たさない時(S3:NO)には、S2に戻り、暖機モードを継続する。一方、終了条件を満たす時(S3:YES)には、S4に進む。
S4では、暖機再生モードの開始条件を満たすか否かが判断される。開始条件を満たさない時(S4:NO)には、S7に進む。一方、開始条件を満たす時(S4:YES)には、S5に進み、暖機再生モードを実行する。次に、S6に進み、暖機再生モードの終了条件を満たすか否かが判断される。終了条件を満たさない時(S6:NO)には、S5に戻り、暖機再生モードを継続する。一方、終了条件を満たす時(S6:YES)には、S7に進む。
S7では、冷却モードの開始条件を満たすか否かが判断される。開始条件を満たさない時(S7:NO)は、S13に進む。一方、開始条件を満たす時(S7:YES)には、S8に進み、冷却モードを実行する。次に、S9に進み、冷却モードの終了条件を満たすか否かが判断される。終了条件を満たさない時(S9:NO)には、S8に戻り、冷却モードを継続する。一方、終了条件を満たす時(S9:YES)には、S10に進む。
S10では、冷却再生モードの開始条件を満たすか否かが判断される。開始条件を満たさない時(S10:NO)には、S13に進む。一方、開始条件を満たす時(S10:YES)には、S11に進み、冷却再生モードを実行する。次に、S12に進み、冷却再生モードの終了条件を満たすか否かが判断される。終了条件を満たさない時(S12:NO)には、S11に戻り、冷却再生モードを継続する。一方、終了条件を満たす時(S12:YES)には、S13に進む。
S13では、冷却準備モードの開始条件を満たすか否かが判断される。開始条件を満たさない時(S13:NO)は、S16に進む。一方、開始条件を満たす時(S13:YES)には、S14に進み、冷却準備モードを実行する。次に、S15に進み、冷却準備モードの終了条件を満たすか否かが判断される。終了条件を満たさない時(S15:NO)には、S14に戻り、冷却準備モードを継続する。一方、終了条件を満たす時(S15:YES)には、S16に進む。
S16では、暖機準備モードの開始条件を満たすか否かが判断される。開始条件を満たさない時(S16:NO)は、S19に進む。一方、開始条件を満たす時(S16:YES)には、S17に進み、暖機準備モードを実行する。次に、S18に進み、暖機準備モードの終了条件を満たすか否かが判断される。終了条件を満たさない時(S18:NO)には、S17に戻り、暖機準備モードを継続する。一方、終了条件を満たす時(S18:YES)には、S19に進む。
S19では、反応器18を用いた燃料電池12の加熱又は冷却を終了させ、ノーマルモードを実行する。次に、S20に進み、運転を継続するか否かが判断される。運転を継続する場合(S20:YES)には、S1に戻り、上述したS1〜S19の各ステップを繰り返す。一方、運転を継続しない場合(S20:NO)には、システムを停止させる。
[4. 燃料電池システムの運転方法]
以下に、図1に示す燃料電池システム10の運転方法の具体例について説明する。なお、以下の説明では、反応器18に内封される水素貯蔵材料には、以下の平衡特性を持つ水素吸蔵合金を用いた。
水素圧力0.1MPaの平衡温度: 10℃
水素圧力0.8MPaの平衡温度: 60℃
水素圧力1.3MPaの平衡温度: 75℃
水素圧力2.0MPaの平衡温度: 90℃
水素タンク16には、最大圧力(P3)が70MPaであるものを用いた。また、減圧弁(第2減圧手段34b)を用いて第2圧力領域32bの圧力(P2)を2MPaに減圧し、さらにインジェクタ(第1減圧手段34a)を用いて第1圧力領域32aの圧力(P1)を0.1MPaに減圧した。
燃料電池12には、最大排熱温度(Tmax)が90℃であり、作動に必要な最小供給圧力が0.1MPaであるものを用いた。また、冷却装置20にはラジエタを用い、外気との熱交換により冷媒を冷却した。
燃料電池システム10の作動時において、減圧弁(第2減圧手段34b)は全モードにおいて常時開とした。インジェクタ(第1減圧手段34a)は、全モードにおいて、暖機/冷却とは別に、システムからの水素流量の要求に従って開閉した。燃料電池システム10の停止時には、三方弁58の出口をバイパス水管56側(経路1側)に設定した。第1冷媒ポンプ54は、全モードにおいて常時作動させた。
燃料電池12の冷媒流路(A)の入口側に、第1温度計T1(第1温度計測手段74)を設置した。冷却装置20の空気取り込み部に、第2温度計T2(第2温度計測手段76)を設置した。さらに、反応器18の内部圧力を検出するための圧力計Prを設置した。設置した第1温度計T1、第2温度計T2、及び圧力計Prの検出値を基に、モード開始・終了の判定を行った。また、モード中は、制御基準に従って、第1開閉バルブ(V1)46a、第2開閉バルブ(V2)46b、三方弁58、及び第2冷媒ポンプ64の動作を制御した。
[4.1. 暖機モード]
図4(A)に、暖機モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図を示す。図4(B)に、暖機モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図を示す。システム始動後、T1及びT2の検出値(図4では、T1=T2=5℃)が制御装置に入力される。T1及びT2の検出値が暖機モードの開始条件(例えば、T2<25℃、T1<55℃)を満たした場合、暖機モードを開始する。
制御装置からの出力信号により、V1が開となり、第1冷媒ポンプ54及び第2冷媒ポンプ64が作動する。この制御により、反応器18に圧力P2の水素ガスが供給され、水素吸蔵合金が水素ガスを吸蔵して発熱する。その熱により第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60の冷媒が加熱され、T1の検出値が上昇する。T1の検出値が終了条件(例えば、T1≧60℃)を満たした場合、暖機モードを終了し、第2冷媒ポンプ64を停止させ、V1を閉とする。
[4.2. 暖機再生モード]
図5(A)に、暖機再生モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図を示す。図5(B)に、暖機再生モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図を示す。暖機モード終了後、T1及びT2の検出値が暖機再生モードの開始条件(例えば、15℃≦T2<25℃、T1≧60℃)を満たした場合、暖機再生モードを開始する。
制御装置からの出力信号により、三方弁58の出口が経路1側となり、V2が開となり、第2冷媒ポンプ64が作動する。この制御により、水素吸蔵合金が低圧の水素ガスを放出して吸熱する。その熱により第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60の冷媒が冷却され、T1の検出値が低下する。T1の検出値が下限温度(例えば、58℃)になるとV2が閉となり、水素吸蔵合金からの水素放出(吸熱)が停止し、T1の検出値が上昇する。T1の検出値が上限温度(例えば、60℃)になると、再びV2が開となり、T1の検出値が低下する。上記の制御を繰り返し、V2閉の状態で終了条件(例えば、Pr≦0.75MPa@60℃)を満たした場合、暖機再生モードを終了し、三方弁58の出口を経路2側に切り替え、第2冷媒ポンプ64を停止させる。
[4.3. 冷却モード]
図6(A)に、冷却モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図を示す。図6(B)に、冷却モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図を示す。T1の検出値が冷却モードの開始条件(例えば、T2≧25℃、T1≧90℃)を満たした場合、冷却モードを開始する。
制御装置からの出力信号により、三方弁58の出口が経路2側となり、V2が開となり、第2冷媒ポンプ64が作動する。この制御により、水素吸蔵合金が低圧の水素ガスを放出して吸熱する。その熱により第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60の冷媒が冷却され、T1の検出値が低下する。T1の検出値が下限温度(例えば、86℃)になると、V2が閉となり、水素吸蔵合金からの水素放出(吸熱)が停止し、T1の検出値が上昇する。T1の検出値が上限温度(例えば、90℃)になると、再びV2が開となり、T1の検出値が低下する。上記の制御を繰り返し、V2閉の状態で終了条件(例えば、T1≦86℃)を満たした場合、冷却モードを終了し、第2冷媒ポンプ64を停止させる。
[4.4. 冷却再生モード]
図7(A)に、冷却再生モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図を示す。図7(B)に、冷却再生モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図を示す。冷却モード終了後、T1及びT2の検出値が冷却再生モードの開始条件(例えば、25℃≦T2<30℃、T1<75℃)を満たした場合、冷却再生モードを開始する。
制御装置からの出力信号により、三方弁58の出口が経路2側となり、V1が開となり、第2冷媒ポンプ64が作動する。この制御により、反応器18に圧力P2の水素ガスが供給され、水素吸蔵合金が水素ガスを吸蔵して発熱する。その熱により第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60の冷媒が加熱され、T1の検出値が上昇する。T1の検出値が上限温度(例えば、79℃)になると、V1が閉となり、水素吸蔵合金の水素吸蔵(発熱)が停止し、T1の検出値が低下する。T1の検出値が下限温度(例えば、75℃)になると、再びV1が開となり、T1の検出値が上昇する。上記の制御を繰り返し、V1閉の状態で終了条件(例えば、Pr≧1.35MPa@75℃)を満たした場合、冷却再生モードを終了し、第2冷媒ポンプ64を停止させる。
[4.5. 冷却準備モード]
図8(A)に、冷却準備モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図を示す。図8(B)に、冷却準備モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図を示す。T1及びT2の検出値が冷却準備モードの開始条件(例えば、T2≧30℃、T1≦80℃)を満たした場合、冷却準備モードを開始する。図8では、T1が80℃を検出した場合を示している。
制御装置からの出力信号により、三方弁58の出口が経路2側となり、V1が開となり、第2冷媒ポンプ64が作動する。この制御により、反応器18に圧力P2の水素ガスが供給され、水素吸蔵合金が水素ガスを吸蔵して発熱する。その熱により第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60の冷媒が加熱され、T1の検出値が上昇する。T1の検出値が終了条件(例えば、T1≧88℃)を満たした場合、冷却準備モードを終了し、V1が閉となり、第2冷媒ポンプ64が停止する。
[4.6. 暖機準備モード]
図9(A)に、暖機準備モード時の水素ガスライン及び熱交換ラインの模式図を示す。図9(B)に、暖機準備モード時の各種のバルブ操作、並びに、これに伴うT1及びPrの推移の模式図を示す。T1及びT2が暖機準備モードの開始条件(例えば、T2<15℃、T1≧55℃)を満たした場合、暖機準備モードを開始する。図9では、T1=55℃、T2=10℃を検出した場合を示している。
制御装置からの出力信号により、三方弁58の出口が経路1側となり、V2が開となり、第2冷媒ポンプ64が作動する。この制御により、水素吸蔵合金が低圧の水素ガスを放出して吸熱する。その熱により第1熱交換ライン50及び第2熱交換ライン60の冷媒が冷却され、T1の検出値が低下する。この際、燃料電池12の発電出力が電力消費装置の出力を上回る場合、余剰電力を二次電池80に充電する。二次電池の蓄電量が判定基準(例えば、最大値の95%)を超えた場合、余剰電力が発生しないように燃料電池12の発電効率を低下させる。T1の検出値が終了条件(例えば、T1≦45℃)を満たした場合、暖機準備モードを終了し、V2が閉となり、第2冷媒ポンプ64を停止させる。
[5. 作用]
本発明に係る燃料電池システム10は、燃料源として、水素ガスを貯蔵した水素タンク16と、水素貯蔵材料を内封した反応器18の双方を備えている。そのため、始動時に水素タンク16から反応器18に水素を供給すると、水素貯蔵材料が水素ガスを吸蔵し、発熱する。この時、熱交換ラインを燃料電池12−バイパス熱交換ライン56間の循環冷却に切り替えると同時に、冷媒の一部を反応器18に分配すると、冷媒が冷却装置20に熱を奪われることがなく、かつ、冷媒には水素吸蔵に伴う反応熱が加算される。その結果、外部熱源を用いることなく、燃料電池12の温度を速やかに上昇させることができる。燃料電池12が所定の温度まで上昇した後、水素ガスラインを水素タンク16から燃料電池12への供給に切り替え、かつ、熱交換ラインを燃料電池12−冷却装置20間の循環冷却に切り替える。
一方、燃料電池12が定常運転状態(ノーマルモード)に入った後、燃料電池12の温度が過度に上昇した時には、熱交換ラインを燃料電池12−冷却装置20間の循環冷却に維持したまま、冷媒の一部を反応器18に分配する。また、これと同時に、水素ガスラインを反応器18から燃料電池12への供給ラインに切り替える。その結果、水素貯蔵材料が冷媒の熱を吸収し、水素ガスを放出する。また、水素放出反応(吸熱反応)により、冷媒が冷却される。その結果、小型の冷却装置20を用いた場合であっても、燃料電池を冷却することができる。
さらに、Pr、T1、及びT2を用いて、水素ガスの供給経路及び冷媒の循環経路を適時に切り替えると、排熱ロスを最小限に抑制しながら、燃料電池12の暖機及び冷却を効率良く行うことができる。
さらに、本発明に係る燃料電池システム10は、以下のような効果が得られる。
(1)燃料電池12の排熱処理を小型の冷却装置20で実現できるので、システムの形状自由度が向上する。
(2)燃料電池12の排熱を蓄熱する反応器18を設けたこと、及び、燃料電池12から排出される冷媒を直接、燃料電池12に戻すバイパス熱交換ラインを設けたことにより、燃料電池12の暖機・冷却に加え、空調が可能になる。また、暖機/冷却/空調に必要な動力が最小化されるため、システムのエネルギー効率が向上する。
(3)第1水素ガスライン30を3個以上の圧力領域に分割した時には、反応器18を低圧領域及び中圧領域に接続することができる。そのため、反応器18や水素ガスライン系に過度の耐圧が不要となる。また、これによって、反応器18や水素ガスライン系の機器を小型・低コスト化できる。
(4)水素タンク16から燃料電池12までの差圧を利用して水素の吸蔵・放出を行い、かつ、冷却装置20と燃料電池12の熱交換ラインを利用して水素の吸蔵・放出に伴う反応熱の放出・吸収を行っているので、反応器18を設置することに伴うバルブの追加を最小化することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る燃料電池システムは、定置型の発電システム、移動体のエネルギー源等に使用することができる。
10 燃料電池システム
12 燃料電池
16 水素タンク
18 反応器
20 冷却装置
30 第1水素ガスライン
40 第2水素ガスライン
50 第1熱交換ライン
60 第2熱交換ライン
72 圧力検出手段
74 第1温度検出手段
76 第2温度検出手段
78 制御手段
80 二次電池

Claims (12)

  1. 以下の構成を備えた燃料電池システム。
    (1)前記燃料電池システムは、
    水素ガスを燃料とする燃料電池と、
    前記水素ガスを貯蔵するための水素タンクと、
    前記燃料電池に供給するための前記水素ガスを放出し、又は、前記水素タンクから供給される前記水素ガスを貯蔵するための水素貯蔵材料が内封された反応器と、
    前記燃料電池との間で冷媒を循環させることによって、前記燃料電池と熱交換を行うための冷却装置と、
    前記燃料電池の燃料流路と前記水素タンクとを接続するための第1水素ガスラインと、
    前記反応器の水素流路と前記第1水素ガスラインとを接続するための第2水素ガスラインと、
    前記燃料電池の冷媒流路(A)と前記冷却装置の冷媒流路(B)とを接続するための第1熱交換ラインと、
    前記反応器の冷媒流路(C)を前記第1熱交換ラインに対して並列に接続するための第2熱交換ラインと、
    前記反応器内の圧力Prを検出するための圧力検出手段と、
    前記燃料電池の内部温度、又は前記内部温度を推定可能な温度(第1温度)T1を検出するための第1温度検出手段と、
    前記燃料電池システムが設置された環境の温度(第2温度)T2を検出するための第2温度検出手段と、
    前記燃料電池システムの動作を制御する制御手段と
    を備えている。
    (2)前記第1水素ガスラインは、前記燃料電池から前記水素タンクに向かって前記水素ガスの圧力が段階的に高くなるように、前記第1水素ガスラインをn個(n≧2)の圧力領域(第k圧力領域の圧力:Pk<第(k+1)圧力領域の圧力:Pk+1)に分割するための第k減圧手段(1≦k≦n−1)を備えている。
    (3)前記第2水素ガスラインは、前記反応器の前記水素流路を前記第1圧力領域若しくは前記第k圧力領域(2≦k≦n)のいずれか一方に切り替えて接続し、又は、前記第1水素ガスラインとの接続を遮断するための水素ガス切替手段を備えている。
    (4)前記第1熱交換ラインは、前記燃料電池の前記冷媒流路(A)から排出された前記冷媒を、そのまま前記燃料電池の前記冷媒流路(A)に戻すためのバイパス熱交換ラインを備えている。
    (5)前記第2熱交換ラインは、前記冷媒が前記燃料電池−前記冷却装置間、又は前記燃料電池−前記バイパス熱交換ライン間を循環する時に、前記冷媒の一部を前記反応器の冷媒流路(C)に流すための流量調節手段を備えている。
    (6)前記制御手段は、前記圧力Pr、前記第1温度T1、及び前記第2温度T2を用いて、前記水素ガスの供給経路、及び前記冷媒の循環経路を適時に切り替えるモード切替手段を備えている。
  2. 前記第1温度T1は、
    (a)前記燃料電池の内部温度、
    (b)前記燃料電池の外壁温度、
    (c)前記燃料電池の前記冷媒流路(A)の入口温度、
    (d)前記燃料電池の前記冷媒流路(A)の出口温度、又は、
    (e)前記入口温度及び前記出口温度以外の温度であって、前記第1熱交換ラインを流れる前記冷媒の温度、
    である請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記モード切替手段は、暖機モード実行手段を備え、
    前記暖機モード実行手段は、
    前記燃料電池システムの始動後、前記燃料電池の加熱が必要と判断された場合に、前記水素タンクから前記反応器に前記水素ガスを供給し、前記第1熱交換ラインを前記バイパス熱交換ライン側に切り替え、かつ、前記反応器の冷媒流路(C)に前記冷媒の一部を流すことにより、前記水素貯蔵材料に前記水素ガスを吸蔵させ、前記水素ガスの吸蔵熱を用いて前記燃料電池を加熱するものからなる
    請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記モード切替手段は、暖機再生モード実行手段を備え、
    前記暖機再生モード実行手段は、
    暖機モード終了後、前記暖機モードが再度実行される可能性が高いと判断された場合に、前記反応器から前記燃料電池への前記水素ガスの供給及び停止を繰り返しながら、前記第1熱交換ラインを前記バイパス熱交換ライン側に切り替え、かつ、前記反応器の前記冷媒流路(C)に前記冷媒の一部を流すことにより、前記反応器から前記燃料電池に前記水素ガスを断続的に放出し、前記反応器を水素吸蔵可能な状態に再生するものからなる
    請求項1から3までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  5. 前記モード切替手段は、冷却モード実行手段を備え、
    前記冷却モード実行手段は、
    前記燃料電池の冷却が必要と判断された場合に、前記反応器から前記燃料電池への前記水素ガスの供給及び停止を繰り返しながら、前記第1熱交換ラインを前記冷却装置側に切り替え、かつ、前記反応器の冷媒流路(C)に前記冷媒の一部を流すことにより、前記反応器から前記燃料電池に前記水素ガスを断続的に放出し、前記反応器及び前記冷却装置を用いて前記燃料電池を冷却するものからなる
    請求項1から4までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  6. 前記モード切替手段は、冷却再生モード実行手段を備え、
    前記冷却再生モード実行手段は、
    冷却モード終了後、前記冷却モードが再度実行される可能性が高いと判断された場合に、前記水素タンクから前記反応器への前記水素ガスの供給及び停止を繰り返しながら、前記第1熱交換ラインを前記冷却装置側に切り替え、かつ、前記反応器の冷媒流路(C)に前記冷媒の一部を流すことにより、前記反応器に前記水素ガスを断続的に供給し、前記反応器を水素放出可能な状態に再生するものからなる
    請求項1から5までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  7. 前記モード切替手段は、冷却準備モード実行手段を備え、
    前記冷却準備モード実行手段は、
    前記冷却モードが実行される可能性が高く、かつ、エネルギー効率の低下の抑制よりも前記冷却モードの実行準備が優先されると判断された場合に、前記水素タンクから前記反応器へ前記水素ガスを供給し、前記第1熱交換ラインを前記冷却装置側に切り替え、かつ、前記反応器の冷媒流路(C)に前記冷媒の一部を流すことにより、前記反応器に水素を連続的に供給し、前記反応器を水素放出可能な状態に戻すものからなる
    請求項1から6までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  8. 前記モード切替手段は、暖機準備モード実行手段を備え、
    前記暖機準備モード実行手段は、
    前記暖機モードが実行される可能性が高く、かつ、エネルギー効率の低下の抑制よりも前記暖機モードの実行準備が優先されると判断された場合に、前記反応器から前記燃料電池へ前記水素ガスを供給し、前記第1熱交換ラインを前記バイパス熱交換ライン側に切り替え、かつ、前記反応器の冷媒流路(C)に前記冷媒の一部を流すことにより、前記反応器から前記燃料電池に前記水素ガスを連続的に放出し、前記反応器を水素吸蔵可能な状態に戻すものからなる
    請求項1から7までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記燃料電池で得られた余剰電力を貯蔵する二次電池をさらに備えた請求項1から8までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記燃料電池で得られた余剰電力を貯蔵する二次電池をさらに備え、
    前記暖機準備モード実行手段は、前記燃料電池の発電出力が電力消費装置の出力を上回った場合に、余剰電力を前記二次電池に充電する余剰電力充電手段をさらに備えている請求項8に記載の燃料電池システム
  11. 前記暖機準備モード実行手段は、前記二次電池の蓄電量が最大蓄電量の95%を超えた場合に、前記燃料電池の発電効率を低下させる発電効率低下手段をさらに備えている請求項10に記載の燃料電池システム。
  12. 前記モード切替手段は、
    前記T2があるしきい値未満である時(又は、前記T2が前記しきい値以下である時)に、下記(A)のモード群に含まれるいずれか1つ以上のモードを実行し、
    前記T2があるしきい値以上である時(又は、前記T2が前記しきい値を超える時)に、下記の(B)のモード群に含まれるいずれか1つ以上のモードを実行する
    暖機・冷却切替手段をさらに備えている請求項1から11までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
    (A)請求項3に記載の暖機モード実行手段、請求項4に記載の暖機再生モード実行手段、又は、請求項8に記載の暖機準備モード実行手段。
    (B)請求項5に記載の冷却モード実行手段、請求項6に記載の冷却再生モード実行手段、又は、請求項7に記載の冷却準備モード実行手段。
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