JP2004018816A - 撥水性塗膜形成用塗料 - Google Patents

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Hiroo Kusano
草野 広男
Katsuaki Ouchi
大内 勝明
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Abstract

【課題】ふっ素樹脂の有する優れた特質を損ねたり、適用上の制約を受けることなく、優れた撥水性を示す塗膜を形成することのできる撥水性塗膜形成用ふっ素樹脂塗料を提供する。
【解決手段】放射線の照射によって分子間を架橋された改質ふっ素樹脂の粉末をふっ素樹脂塗料に混入する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撥水性塗膜形成用塗料に関し、特に、ふっ素樹脂本来の優れた特質を損ねたり、適用上の制約を受けることなく、優れた撥水性を示す塗膜を形成することのできる撥水性塗膜形成用塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐熱性、電気絶縁性、耐化学薬品性あるいは潤滑性など多くの特性において優れた性質を示すふっ素樹脂は、絶縁材あるいは医療用部品等をはじめとする多くの用途に活用されており、その中のひとつに塗料の用途がある。
【0003】
ふっ素樹脂塗料によって形成された塗膜は、前述した特性以外に、他の樹脂塗膜には見られない優れた撥水性を示すことで知られており、最近では、この特質をさらに向上させるため、塗料中に添加物を混入したり、あるいは特殊処理を施し、これによって塗膜に微細な凹凸を形成して接触角を高める検討が進められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの施策によって接触角を高めた従来の撥水性塗料によると、添加物がふっ素樹脂本来の優れた特質を損ねたり、あるいは特殊処理が適用上の制約を受ける等の問題を有しており、実用上においては必ずしも満足できるものとはいえない。
【0005】
従って、本発明の目的は、ふっ素樹脂の特質を損ねたり、適用上の制約を受けることなく、優れた撥水性を示す塗膜を形成することのできる撥水性塗膜形成用ふっ素樹脂塗料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、ふっ素樹脂を樹脂分とした撥水性塗膜形成用塗料において、
前記ふっ素樹脂は、放射線の照射によって分子間を架橋された改質ふっ素樹脂の粉末を含むことを特徴とする撥水性塗膜形成用塗料を提供するものである。
【0007】
本発明の塗料において、上記樹脂分を構成するふっ素樹脂と改質ふっ素樹脂のベース材を構成するふっ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、あるいはこれらの混合物等が使用される。
【0008】
また、上記のPTFEには、純然たるホモポリマだけでなく、たとえば、0.2モル%以下の極く少量のコモノマを共重合させたポリマも含まれ、この場合のコモノマの具体例としては、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、あるいはクロロトリフルオロエチレン等を挙げることができる。前述したPFA等の各共重合体に、少量の第3成分を共重合させることは可能である。
【0009】
なお、本発明に使用される改質ふっ素樹脂の粉末としては、塗料塗布後の成膜のための加熱時において、低流動性を示し、これによって、塗膜の表面に凹凸を作り出せるものであることが好ましく、この意味から、改質ふっ素樹脂のベース材としては、特に、PTFEを選択することが好ましい。
【0010】
また、形成凹凸を細かくして接触角をより高めるためには、改質ふっ素樹脂の粉末の平均粒径を10μm以下に設定することが好ましく、さらに、この平均粒径としては、4μm以下に、より好ましい水準を設定することができる。
【0011】
本発明における改質ふっ素樹脂粉末の混入量は、下限においては、これを混入することによる接触角の増加を充分なものとするため、そして、上限においては、形成された塗膜強度の低下を防ぐため、1〜80重量%の範囲内に設定することが好ましい。
【0012】
また、改質ふっ素樹脂を得るための放射線の照射は、照射対象のふっ素樹脂の結晶融点以上、100torr以下の酸素濃度、および1kGy〜10MGyの照射線量の条件下で行うことが好ましい。
【0013】
照射対象のふっ素樹脂を結晶融点以上に加熱することは、ふっ素樹脂の分子運動を高め、架橋反応を効率化させる効果を生む。但し、下限においては、この効果を充分なものとするため、そして、上限においては、分子主鎖の切断と分解による解重合を防ぐため、結晶融点より10〜30℃高い温度とすることが好ましく、さらに、この温度範囲の上限値30℃は、照射対象のふっ素樹脂の形状を保つ意味からも好ましい限界値となる。
【0014】
なお、ふっ素樹脂の結晶融点は、示差走査熱量計による吸熱ピークの測定によって求めることができ、たとえば、PTFEの場合で327℃、PFAの場合で310℃、そして、FEPの場合で275℃にそれぞれ特定することができる。
【0015】
上記にいう100torr以下の酸素濃度は、酸素による架橋反応の阻害と分解を抑制するうえで好ましい水準であり、一方、1kGy〜10MGyとする照射線量は、下限が充分な架橋度合を得るため、そして、上限が伸び特性等の物性低下を招かないための好ましい境界値となる。
【0016】
本発明の塗料を焼き付けるに際しては、改質ふっ素樹脂の融点に合わせた温度とすることが望ましい。即ち、ふっ素樹脂塗料の焼付温度は、通常、ふっ素樹脂の融点より40〜70℃高く設定されるのが普通であるが、この温度での焼き付けは、改質ふっ素樹脂が形成する凹凸をなくすように作用するので好ましくなく、従って、本発明の塗料の場合には、改質前のベースポリマの融点より20℃高い温度までを焼付温度とすべきである。
【0017】
改質のための放射線としては、γ線、電子線、X線、中性子線あるいは高エネルギーイオン等の電離性放射線の使用が好ましく、一方、これらの照射を受けるふっ素樹脂の形態としては、粉末状、シート状あるいはブロック状等様々な形態が考えられ、これらは、照射後に所定の粒度に粉砕されることとなる。一旦、照射されて改質されたものに再び照射処理を施すことは可能である。
【0018】
なお、本発明の実施態様として、本発明の塗料中に含まれる樹脂分をポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂あるいはウレタン樹脂等の各種塗料に添加し、これによって撥水性塗膜形成用のふっ素樹脂塗料とすることは可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による撥水性塗膜形成用塗料の実施の形態を説明する。
【実施例1】
20μmの平均粒径と2.16の比重を有するPTFEモールディングパウダ(旭硝子社製Gー163)をジェットミルにかけて平均粒径を7μmに加工した後、これに、0.01torrの真空および350℃の加熱温度下において、照射線量が100kGyとなるように電子線を照射した。
【0020】
次に、以上により得られたおこし状の塊をジェットミルで粉砕することにより平均粒径が10μmの改質PTFE粉末とした後、この粉末を市販のコーティング用PFAディスパージョン(デュポン社製710L)に30重量%混入し、所定の塗料を調合した。
【0021】
【実施例2】
実施例1において、PFAコーティング用ディスパージョンに混入する改質PTFE粉末として、実施例1の改質PTFE粉末からの4μm粒径の分級細粉を使用し、これにより所定の塗料を調合した。
【0022】
【比較例1】
実施例1で使用したPTFEモールディングパウダ(未照射)をジェットミルで平均粒径が7μmとなるように粉砕し、得られた粉末を実施例1と同一のコーティング用PFAディスパージョンに30重量%混入することによって所定の塗料を調合した。
【0023】
【比較例2】
比較例1において、PFAディスパージョンに混入するPTFEモールディングパウダ(未照射)として4μm粒径に粉砕したものを使用し、これにより所定の塗料を調合した。
【0024】
表1は、以上の各実施例および比較例で調合した塗料による形成塗膜の撥水性を評価するために実施した接触角測定の結果をまとめたものである。
なお、測定対象のサンプルとしては、脱脂してプライマを塗布したアルミニウム板に各実施例および比較例の塗料を塗布して330℃の電気炉内で30分間焼成したものを使用した。また、接触角の測定は、サンプルの塗膜に液滴法により純水を垂らしたときの接触角を測定することによって実施した。
【0025】
【表1】
Figure 2004018816
【0026】
表1によれば、実施例1および2の塗料によって形成された塗膜が、それぞれ100°を大きく上廻る接触角を示しているのに比べ、比較例の場合には、いずれも97°という低レベルにとどまっており、当然、両者の撥水性には大きな差が生ずることとなる。
【0027】
これは、実施例の塗料のふっ素樹脂分が放射線で架橋された改質ふっ素樹脂の粉末を含むのに対して、比較例の塗料の場合には、改質されていないふっ素樹脂のみによって樹脂分を構成しているためであり、この違いが、接触角の差となって現れたものである。
【0028】
そして、実施例の塗料の場合には、添加物あるいは特殊処理等を要することなく高撥水性の塗膜を形成できるものであり、従って、従来の撥水性向上策のように、ふっ素樹脂本来の特質を損ねたり、あるいは適用上の制約を受けるようなことは一切生ずることがない
実施例の内容および表1に示された測定結果は、ふっ素樹脂塗料による塗膜の撥水性を高めるうえにおいて、本発明の有用性を充分に示しているものといえる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による撥水性塗膜形成用塗料によれば、放射線照射により分子間を架橋された改質ふっ素樹脂の粉末をふっ素樹脂塗料に混入することによって所定の塗料としているため、優れた撥水性の塗膜を形成することができ、さらに、従来の塗料のように、ふっ素樹脂の特質を損ねたり、適用上の制約を受けるようなことがない。

Claims (4)

  1. ふっ素樹脂を樹脂分とした撥水性塗膜形成用塗料において、
    前記ふっ素樹脂は、放射線の照射によって分子間を架橋された改質ふっ素樹脂の粉末を含むことを特徴とする撥水性塗膜形成用塗料。
  2. 前記改質ふっ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンをベース材とすることを特徴とする請求項1項記載の撥水性塗膜形成用塗料。
  3. 前記改質ふっ素樹脂の粉末は、10μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1項記載の撥水性塗膜形成用塗料。
  4. 前記改質ふっ素樹脂は、当該改質ふっ素樹脂のベースを構成するふっ素樹脂の結晶融点以上、100torr以下の酸素濃度、および1kGy〜10MGyの放射線の照射線量のもとに架橋されたものであることを特徴とする請求項1項記載の撥水性塗膜形成用塗料。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008110299A (ja) * 2006-10-30 2008-05-15 Hitachi Cable Ltd コーティング部材およびその製造方法
JP2009029986A (ja) * 2007-07-30 2009-02-12 Hitachi Cable Ltd コーティング材及び高撥水・高しゅう動性製品
JP2014196832A (ja) * 2007-09-26 2014-10-16 裕亮 佐藤 ポリテトラフルオロエチレン製ベローズ、およびそれを用いた流体圧送機器。
JP2019044098A (ja) * 2017-09-04 2019-03-22 ソマール株式会社 エポキシ樹脂粉体塗料組成物

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