JP2004018588A - ポリエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも一方向に延伸され、次いで熱固定されたポリエステルフィルムにおいて、該フィルム幅方向における配向角分布は、少なくとも2つ以上の極値を有し、かつ全て10゜以下を満たしており、さらに該フィルムを150℃、10分間の条件で熱処理したときのフィルム長手方向、幅方向ともに、熱収縮率が3%以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。その製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱寸法安定性に優れ、フィルム幅方向に均一な物性を有する低ボーイングな二軸配向ポリエステルフィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリエステルフィルム、特に二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた機械的特性、耐熱性、電気的特性、耐薬品性、耐侯性を備えているため、工業的に様々な分野で広く使用されている。これらの優れた特性を生み出すため、代表的な製膜方法ではテンターを用いた逐次二軸延伸法が用いられている。この逐次二軸延伸法では、通常、フィルム長手方向に延伸し、次いでテンター内で幅方向に延伸した後に熱固定する方法がとられる。このテンター内で幅方向に延伸した後に熱固定する工程において、フィルム幅方向の物性の均一性を乱すボーイング現象が生じる。
【0003】
このボーイング現象は、長手方向に延伸したフィルムをテンター内で幅方向に延伸し熱固定する際に生じるものであって、テンター前でフィルム幅方向に油性マジックインキで引いた直線が、テンター後には、フィルム長手方向に弓なり状に引き戻された形に変形されてしまう挙動を示すものであり、フィルム長手方向におけるポアソン比に基づく収縮力および熱収縮力などに起因して発生するものと考えられている。このボーイング現象が生じるために、得られる二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム幅方向の中央部から離れるほど配向角が大きくなるという配向角の位置依存性を有している。ここで配向角とは、フィルム幅方向または長手方向と主配向軸とがなす角度のうち、小さい方の角度である。
【0004】
この配向角の位置依存性などの光学特性以外でも、湿度膨張率、機械強度、熱収縮率などの物性が幅方向で異なる不都合を有している。その具体例として、印刷加工時のずれ、蛇行、カールという不都合や、フレキシブルディスクのベースフィルムとして用いる場合、装置内でのそりなどによる記録特性の低下などがある。特に、近年の光エレクトロニクス産業において、偏光板セパレータなどの光学部材として二軸配向ポリエステルフィルムを用いるためには、その光学特性の低下を引き起こすボーイング現象は、改善すべき最大の問題と考えられている。
【0005】
これらの問題を引き起こすボーイング現象を抑制するための対策は、従来から種々検討されてきている。
【0006】
例えば、特公昭39−29214号公報には、加熱ロールを用いた熱処理方法が提案されている。また、特公昭42−9273号公報および特開平7−314552号公報には、フィルム幅方向に温度勾配を与えながら熱処理する方法、特開昭62−18327号公報および特開昭62−183328号公報には、フィルムの両端部を強制的に加熱して熱処理する方法がそれぞれ提案されている。また、特開昭50−73978号公報には、幅延伸機(テンター)内での延伸工程と熱処理工程の間にニップロールにより幅延伸後のフィルムを熱処理する方法が提案されており、特公昭63−24459号公報には、ニップロールによってフィルムの中央部を強制的に前進させる方法が提案されている。そして、特許2936688号公報および特開平6−262675号公報などには、幅延伸工程と熱処理工程の間に冷却工程を設けたものが提案されている。
【0007】
さらに、特開昭62−43856号公報には、横方向延伸後、ガラス転移点以下に冷却し、次いで第一熱処理区間でT1(200℃〜240℃)で熱処理し、第二熱処理区間でT2(T1以下の温度)で1〜20%の横方向に延伸させながら第三熱処理区間でT3(T2未満の温度)で降温する方法が提案されている。また、その類似例として特開平1−165423号公報には、テンターで横延伸した後に、フィルムを横延伸温度以下の温度に冷却、保持し、引続き2以上に分割された温度領域で、2〜20%幅方向に伸張させながら昇温し、ついで熱固定する方法が提案されている。以上に説明してきたボーイング現象低減効果がある方法として考えられている横延伸後の冷却工程、熱処理工程の段階的な昇温、さらに熱処理工程での横再延伸などの製造方法を全て取り入れたものが、特開平6−297561号公報および特開平6−297562号公報で提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの製造方法においても、光エレクトロニクス部材として用いられるフィルムなどを視野に入れるとその効果は未だ不十分であり、さらなるボーイング現象の低減が望まれていた。そこで、本発明は、熱寸法安定性に優れ、かつボーイング現象の指標であるフィルム幅方向の中央部と端部での配向角の位置依存性が従来よりも劇的に少ないポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のポリエステルフィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
少なくとも一方向に延伸され、次いで熱固定されたポリエステルフィルムにおいて、該フィルム幅方向における配向角分布が、少なくとも2つの極値を有し、かつ配向角が全て10゜以下であり、さらに該フィルムを150℃、10分間の条件で熱処理したときの熱収縮率が長手方向、幅方向とも3%以下であることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【0010】
また、本発明のポリエステルフイルムの製造方法は、主として次の構成を有する。すなわち、
少なくとも一方向に延伸し、次いで熱固定するポリエステルフィルムの製造方法において、熱固定領域中に冷却領域と加熱領域とを隣接して設け、式(1)を満足するように制御することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
【0011】
Ta>Tb かつ L/V>b/V≧0.2 ・・・(1)
(但し、Taは熱固定中の加熱領域におけるフィルム温度(℃)、Tbは熱固定中の冷却領域におけるフィルム温度(℃)、Lは延伸終了点から熱固定終了点までの区間距離、Vはフィルムの走行速度(m/s)、bは冷却領域において延伸終了点から熱固定開始点までの最大値(m)。)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明をする。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルである。
【0014】
ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。中でも好ましくはテレフタル酸とイソフタル酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0015】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとして好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0017】
本発明におけるポリエステルは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法等がある。この際、必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物を用いることもできる。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムは、上記溶融ポリマーを押出機に供給して、T型口金等を用いてシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを樹脂組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸する方法などで得ることができる。この際の延伸の方法は、公知の如く長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法で行えばよく、長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行なってもよい。また、長手方向と幅方向の延伸を同時に行っても良い。本発明によれば、延伸温度及び延伸倍率はいくらであっても良いが、通常のポリエステルフィルムの場合、延伸温度は80℃以上130℃以下であり、延伸倍率は2倍以上5倍以下である。さらに、効果的に本発明のポリエステルフィルムを製造するためには、延伸倍率の下限は、少なくとも長手方向には、厚みムラ、及びフィルム長手方向の熱収縮力を低減させてボーイングを抑える観点から2.5倍以上で、上限はボーイングを押さえる観点から3.5倍以下が好ましい。また、幅方向には、フィルム幅方向の熱収縮力を利用してボーイングを抑える観点から3.5倍以上5倍以下が好ましい。延伸温度は、長手方向、幅方向ともボーイングを押さえる観点から、それぞれ、95℃、105℃以上が好ましい。
【0019】
本発明の少なくとも一方向に延伸され、次いで熱固定されたポリエステルフィルムにおいて、該フィルム幅方向における配向角分布は、少なくとも2つの極値を有し、かつ配向角が全て10゜以下であり、さらに該フィルムを150℃、10分間の条件で熱処理したときの熱収縮率が長手方向、幅方向とも3%以下であることが必要である。配向角分布において極値が1つの分布は、従来のフィルムで見られる2次曲線的な最小値を有する分布であり、配向角の最大値を10°以下とすると同時に、工業材料として用いるための150℃で10分間の条件で熱処理したときの熱収縮率を長手方向、幅方向とも3%以下とすることが困難であるからである。
【0020】
ここで極値とは、フィルム幅方向左右対称に中央位置とそこから端部へ8割の位置間での位置とその配向角の関係を図にした曲線における極小値もしくは極大値を示す。また、配向角とは、フィルム長手方向と幅方向でなす直交座標軸と配向主軸となす角度のうち小さい方の角度であり、その最大値とは左右対称に中央位置とそこから端部へ8割の位置間での最大値を示す。フィルム幅方向において中央部から端部へ8割の位置は、フィルム幅の半分の値×0.8で求められる。
【0021】
なお、フィルム幅とは、テンター法において、フィルム幅方向に延伸して、次いで熱固定し終えた後のフィルムを把持しているクリップ間の距離である。
【0022】
前記したポリエステルフィルムを得るためには、例えば図1を参照しつつ説明すると、少なくとも一方向に延伸し、次いで熱固定するポリエステルフィルムの製造方法において、熱固定領域中に灰色で示した二等辺三角形形状の冷却領域と格子模様で示した加熱領域とを隣接して設け、式(1)を満足するように制御することが必要である。
【0023】
Ta>Tb かつ L/V>b/V≧0.2 ・・・(1)
(但し、Taは熱固定中の加熱領域におけるフィルム温度(℃)、Tbは熱固定中の冷却領域におけるフィルム温度(℃)、Lは延伸終了点から熱固定終了点までの区間距離、Vはフィルムの走行速度(m/s)、bは冷却領域において延伸終了点から熱固定開始点までの最大値(m)。)
本発明において、熱固定領域中に冷却領域を設けるには、例えば、熱固定領域の上下左右にアルミ板などの遮蔽板で加熱領域の熱風を遮断する方法や、かかる遮断をしたうえでさらに圧縮空気などを送り込んで積極的に冷却する方法などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、式(1)式を満足する事によって、熱固定領域侵入時の走行中の該フィルムは、フィルム幅方向において、フィルム両端部から中央部に向って供給する単位時間当りの熱量が大きい領域が拡大し、その後、フィルム幅方向において供給する熱量が一定になり、熱固定されることを意味する。ここで、単位時間当りの熱量とは、具体的には熱固定ゾーンにおいて、ノズルからフィルムに吹きつける熱風の風速、風圧、周波数および温度などによって決まる量である。しかし、熱固定装置の規格などにより、具備されたパラメータが異なるため、本発明ではもっとも一般的なパラメータであるフィルム温度を熱量と見なした。なお、通常の熱処理条件では、風速10〜50m/s、周波数は10〜80Hz程度である。
【0025】
本発明においては、Ta>Tbでなければ、例えば図1,2において灰色で示した二等辺三角形形状の冷却領域の方が、それに隣接する格子模様で示した加熱領域より熱供給量が多くなるため、ボーイングが発生する可能性がある。
【0026】
また、冷却領域における延伸終了点から熱固定開始点までの最大値bとフィルムの走行速度Vとの比であるb/Vは0.2秒以上でなければ、フィルム幅方向に関して熱収縮の時間差が確保できないため実質的にボーイングが発生してしまう可能性があり、かつ、b/Vは、少なくとも、延伸終了点から熱固定終了点までの区間距離Lとフィルムの走行速度Vとの比であるL/V以下でなければ十分な熱寸法安定性を付与することができない。
【0027】
さらに、Taは工業材料としての熱寸法安定性を一層優れたものとする観点から200℃以上が好ましく、Tbはボーイングが発生しにくくする観点から150℃以下、さらにはガラス転移点以下とするのが好ましい。
【0028】
このような熱固定方法を採用することによって、実質的に延伸終了後の走行フィルムは、該フィルムへ供給する単位時間当りの熱量をフィルム幅方向に関して、端部から中央部へと左右対称に増加させる事ができる。これにより、通常の延伸部と熱固定部の境界付近でフィルム幅方向全域において生じる収縮力を分散させ、ボーイングの発生を有効に防止できる。また、冷却領域は、延伸部と熱固定部の境界にあるフィルム左右両端の固定端2点を結ぶ直線を一辺として含む領域であって、好ましくは三角形、台形、弓形のいずれかである。これらの好ましい形状にすることによって、収縮力を連続的に上手く分散できる。
【0029】
また、本発明のポリエステルフィルムの製造方法において、少なくとも一方向に延伸された後、一旦、ガラス転移点以下に該フィルム温度を冷却し、次いで熱固定するポリエステルフィルムの製造方法とすることも好ましい。このようにすると、幅方向に延伸することによって発生する長手方向の収縮力などを遮断するため、本発明の熱固定方法をより効果的に発揮できる。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムは、逐次二軸延伸方法で製膜可能の観点からは、ポリオレフィン系、ポリスチレン、ポリフェニリンサルファイド、ポリアミド系などの熱可塑性樹脂であっても良いが、ここでは特に、その効果が最も高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
[特性の測定方法]
実施例及び比較例における評価結果は次の方法で測定されたものである。
(1)ボーイング線の形状観察:
テンター前で、フィルム幅方向にマジックインキで引いた直線が、熱固定後にどのような形になるかを観察した。ボーイング曲線は、通常の2次曲線的な極値を1つものをV型、極値を2つ以上のものをW型で表示し、評価した。
(2)ポリエステルフィルムの配向角:
ボーイング現象の発生の程度を比較するために、製造したポリエステルフィルムの配向角を自動複屈折計(新王子製紙(株)製KOBRA−21ADH)を用いて、フィルム幅方向の中央部(相対位置0)及びフィルム幅の半分の値×0.8で求められた、フィルム幅方向において8割の位置以内の領域から切り出した幾つかのサンプル(長手方向4.0cm×幅方向3.5cm)について測定し、その最大値を配向角とした。
(3)熱収縮率:
フィルム幅方向における中央部から、長手方向、幅方向、それぞれ、1×10cmのサンプルを切り出し、ギアオーブン(TABAI社製GHPS−222)で150℃、10分間の条件で熱処理した。その前後におけるフィルム長手方向と幅方向の長さをそれぞれ万能投影機(77−7ニコン社製E04)で正確に測長することにより、熱収縮率を求めた。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
[実施例1〜2]
ポリエチレンテレフタレートのペレットを180℃で2時間乾燥した後、280℃に加熱された押出機に供給し、溶融してTダイからシート状に押出し、25℃のキャスティングドラムで冷却固化した後、まず長手方向に延伸した。長手方向延伸では、100℃に加熱したロールとラジエーションヒーターによってフィルムを2.8倍延伸した。続いてテンタにて幅方向に85℃で3.6倍延伸し、さらに該テンターの後続する熱固定領域ゾーンで230℃で熱固定した。また、熱固定領域中の冷却領域においては、上下左右に張り付けたアルミ板で熱風を遮断し、図1で灰色で示した二等辺三角形の領域に圧縮空気を送って、実施例1においてはTbを73℃、実施例2においてはTbを75℃になるように冷却した。残る熱固定領域中の格子模様で示した加熱領域においては、実施例1,2とも、60Hzの周波数でフィルムに熱風を吹付け、Taを230℃とした。このようなフィルム熱固定を実施することにより厚み24μmのポリエステルフィルムを得た。結果を表1に示した。
【0032】
【表1】
[実施例3〜4]
幅方向に延伸するまでは実施例1、2と同様にして、次いで、一旦ガラス転移点以下に冷却し、さらに該テンターの後続する熱固定領域において230℃で熱固定した。また、実施例1、2との違いを示す図を図2に示す。熱固定領域中の冷却領域においては、実施例1、2と同様、上下左右に張り付けたアルミ板で熱風を遮断し、実施例3においては冷却領域の形状を弓形に、実施例4においては冷却領域の形状を二等辺三角形に設定して圧縮空気を送ることにより、実施例3においてはTbを50℃、実施例4においてはTbを49℃になるように冷却した。残る熱固定領域中の加熱領域は、実施例1、2と同様に、60Hzの周波数でフィルムに熱風を吹付け、Taを230℃とした。このようなフィルム熱固定を実施することにより厚み24μmのポリエステルフィルムを得た。結果を表1に併せて示した。
[比較例1]
実施例1において、冷却領域を設けることなく、熱固定のための熱風を熱固定の全領域が加熱領域になるように均等に吹き付ける以外は、他の条件を実施例1と同様にして、厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。結果を表1に併せて示した。
[比較例2]
冷却領域の二等辺三角形の高さ、すなわちbの長さが短くなるように熱固定方法を変える以外は、実施例1と同様にして、厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。結果を表1に併せて示した。
[比較例3]
実施例3において、テンター内部に冷却領域を設けることなく、熱固定のための熱風を熱固定の全領域が加熱領域になるように均等に吹き付ける以外は、他の条件を実施例3と同様にして、厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。結果を表1に併せて示した。
[比較例4]
図3に示すが如く、冷却領域を灰色で示した2つの三角形をその頂点同士で接合した形状に設定した熱固方法にする以外は、実施例3と同様にして、厚み24μmのポリエステルフィルムを得た。これは、実施例3とは逆に熱固定領域における入り口からフィルム走行方向に移動するにつれて、該フィルム幅方向に、中央部から端部へ向かって供給する単位時間当りの熱量が大きい領域が徐々に左右対称に増加する熱固定方法になっていた。結果を表1に併せて示した。
[比較例5]
熱固定温度を150℃に変更する以外は、すべて比較例1と同様にして厚み24μmのポリエステルフィルムを得た。結果を表1に併せて示した。
【0033】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られたポリエステルフィルムは、熱寸法安定性に優れ、かつ、ボーイング現象の指標であるフィルム幅方向の中央部と端部での配向角の位置依存性が従来よりも劇的に少ないポリエステルフィルムであった。
【0034】
【発明の効果】
本発明のポリエステルフィルム及びその製造方法によると、熱寸法安定性に優れ、かつボーイング現象の指標であるフィルム幅方向の配向角の位置依存性が劇的に少ないなどのフィルム幅方向の物性が均一化されたポリエステルフィルム及びその製造を供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によってなされる熱固定工程の一例を示す平面図。
【図2】実施例3の熱固定工程を示す平面図。
【図3】比較例4の熱固定工程を示す平面図。
【符号の説明】
1:予熱領域
2:延伸領域
3:延伸領域
4:熱固定領域
Claims (4)
- 少なくとも一方向に延伸され、次いで熱固定されたポリエステルフィルムにおいて、該フィルム幅方向における配向角分布が、少なくとも2つの極値を有し、かつ配向角が全て10゜以下であり、さらに該フィルムを150℃、10分間の条件で熱処理したときの熱収縮率が長手方向、幅方向とも3%以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 少なくとも一方向に延伸し、次いで熱固定するポリエステルフィルムの製造方法において、熱固定領域中に冷却領域と加熱領域とを隣接して設け、式(1)を満足するように制御することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
Ta>Tb かつ L/V>b/V≧0.2 ・・・(1)
(但し、Taは熱固定中の加熱領域におけるフィルム温度(℃)、Tbは熱固定中の冷却領域におけるフィルム温度(℃)、Lは延伸終了点から熱固定終了点までの区間距離、Vはフィルムの走行速度(m/s)、bは冷却領域において延伸終了点から熱固定開始点までの最大値(m)。) - 冷却領域の形状が、三角形、台形、弓形のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
- 少なくとも一方向に延伸された後、次いで熱固定する間にガラス転移点以下に冷却する工程を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
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