JP2004018583A - 発泡材料用エマルジョン、及び発泡材料用エマルジョン組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として用いて重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンに、(B)1〜20質量部の酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの1種類以上を上記還元剤を用いて重合して得たトルエン不溶分が30%以下の発泡材料用エマルジョンとその組成物。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡材料用エマルジョン、発泡材料用エマルジョン組成物、及びその発泡体に関し、更に詳しくは熱分解型や熱膨張型の発泡剤で発泡させる接着剤、塗料、バインダー、バッキング材等の発泡材料に好適に使用出来るエマルジョン組成物等に関するものであり、中でも室内装飾材や壁紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から合成樹脂エマルジョンを用いた発泡材料は壁紙等に用いられている。例えば、特開昭56−103230、特開昭56−103229にはエチレン/塩化ビニル/ビニルエステルの共重合体エマルジョンを用いた発泡体用エマルジョン組成物が記載されている。また、特開昭58−4879には表面層にエチレン−酢酸ビニル共重合体のエマルジョンと水酸化アルミニウムを用い、発泡した層を有する壁紙について記載されている。
他にも合成樹脂エマルジョンを用いた発泡材料に関しては特開平1−156378、特開平4−126240、特開平7−80979、特開平7−188502、特開平9−174788、特開平10−157046、特開平10−157044、特開平12−44720に記載されている。
【0003】
中でも、壁紙用途については従来塩化ビニルを主成分、或いは共重合した樹脂が使用されてきたが、焼却処分時に有害な塩素ガスやダイオキシン類が発生するため、地球環境及び作業環境の観点から問題視されており、非塩ビ化の要望が強い。この非塩ビ化について市場ではエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンが使用され始めているが、製造の際に一般的に用いられている還元剤であるソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)からシックハウス症候群の主原因とされるホルムアルデヒドが発生し、衛生面で好ましくないという難点があった。また、SFS代替物質として知られている、L−アスコルビン酸やグリオキサール・亜硫酸塩ではエマルジョンが着色(変色)する問題があった。更に難燃性を付与するために添加される無機充填剤との混和安定性も悪く、作業性や収率といった経済性が劣るという欠点もあった。さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンはもともと塩ビシートの接着剤に使用される程接着性が良いため、室内にあるソファーや電気コード等の塩ビ製品とブロッキング(融着)するという問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願は前述の問題を解決するものであり、非塩ビ化とホルムアルデヒド含有量やエマルジョンの着色が極めて少ない上に、無機充填剤との混和安定性に優れ、且つ室内に於ける塩ビ製品との耐ブロッキング性や発泡性に優れる発泡材料用エマルジョン、発泡材料用エマルジョン組成物、及びその発泡体を提供するものである。
【0005】
【問題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(A)エチレン3〜23質量%、酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体混合物が97〜77質量%となるような共重合反応に於いて、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として用いて重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンの不揮発分100質量部当たり、(B)1〜20質量部の酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの1種類以上を混合し、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として重合することを特徴とする合成樹脂エマルジョンであり、ホルムアルデヒド含有量やエマルジョンの着色が極めて少なく、且つ無機充填剤との混和安定性に優れることを見出したものである。さらにトルエン不溶分が30質量%以下であることを特徴とする環境に優しい発泡材料用エマルジョンである。また、該発泡材料用エマルジョン、発泡剤、及び無機充填剤を含有してなる発泡材料用エマルジョン組成物であり、該発泡材料用エマルジョン組成物からなる発泡体、及び壁紙である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の発泡材料用エマルジョンは、一段目の(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン(以下、「EVA系エマルジョン」と称す)と二段目の(B)酢酸ビニルモノマーまたはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの重合触媒として使用される還元剤が、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素、及びこれら誘導体から選ばれた1種以上の化合物である。また、トルエン不溶分は30質量%以下であることが好ましい。このエマルジョンにさらに発泡剤、無機充填剤を含有することにより、発泡材料用エマルジョン組成物、その発泡体、及び壁紙が得られる。
【0007】
本発明の一段目の(A)EVA系エマルジョンと二段目の(B)酢酸ビニルモノマーまたはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの重合触媒用還元剤は、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素、及びこれら誘導体から選ばれた1種以上の化合物である。この使用量は特に制限されるものではないが、
(A)EVA系エマルジョンを重合する場合、反応させる全単量体100質量部に対して0.01〜1.0質量部、好ましくは0.08〜0.5質量部である。
(B)酢酸ビニルモノマーまたはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーを重合する場合、反応させる全単量体100質量部に対して0.01〜2.0質量部、好ましくは0.1〜1.0質量部である。
これら還元剤の添加量がこの範囲より少ないと、重合途中に還元剤が枯渇し残存単量体が増える傾向があり、この範囲より多いと重合性は良好であるが無駄に添加することになり経済性の点で好ましくない。また使用方法としては、酸化剤を添加する前に重合系内に添加しておいても良いし、酸化剤と共に重合系内に添加しても良い。
また酸化還元反応、通称レドックス重合を円滑に進めるため、鉄、銅、コバルト、ニッケル、クロム、亜鉛、マンガン、バナジウム、モリブデン、セリウム等の硫酸塩等の水溶性金属化合物や、ピロリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩等のキレート形成化合物を併用することが望ましい。
【0008】
本発明における還元剤であるホルムアミジンスルフィン酸と二酸化チオ尿素は、水溶液中で互換異性体として存在することが公知であるが、これらの誘導体としては、N,N’−ジフェニルチオ尿酸、N,N’−ジベンジルチオ尿酸やN,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体を過酸化水素で酸化させて得られたものや、特許2808489号公報のアミノ酸と二酸化チオ尿素とを反応させて得られる水溶性の二酸化チオ尿素誘導体などが挙げられる。 勿論、これらの誘導体の1種以上を、ホルムアミジンスルフィン酸及び/又は二酸化チオ尿素と併用することができる。
【0009】
これら還元剤と併用する酸化剤、通称ラジカル開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過硼酸カリウム等の無機ラジカル開始剤や、t−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒロドパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等の有機ラジカル開始剤を使用することができる。好ましくは、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0010】
本発明によればEVA系エマルジョンに少量の酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーを混合して重合することにより、特に無機充填剤の混和安定性が改良されるが、この際の比率は、(A)EVA系エマルジョンの不揮発分100質量部当たり、(B)酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの1種類以上の混合物は1〜20質量部である必要があり、好ましい(B)成分の量は5〜15質量部である。
酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上のモノマーが少ないと、エマルジョンの安定性が向上しない。また多すぎてもそれ以上安定性は向上せず、また樹脂中のポリ酢酸ビニル、またはホモポリマーのTgが30℃以上のポリマーの含有量が増加して硬くなり過ぎる等、EVAエマルジョンとしての特性が失われる。
【0011】
本発明の(A)EVA系エマルジョン、及び(B)酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの重合温度は、使用するラジカル開始剤の種類により異なるが、一般的には40〜80℃である。
重合はエマルジョンに含有する未反応の単量体が、1質量%以下となるまで行うことが望ましい。
また公知の乳化重合法が用いられ、例えばモノマー逐次添加法、一括仕込法等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
また(B)成分の酢酸ビニルモノマーについては、(A)EVA系エマルジョンの重合後の未反応の酢酸ビニルモノマーであっても良く、あるいは残存する酢酸ビニルモノマーに新たに酢酸ビニルモノマーを混合しても良い。要は所定量の酢酸ビニルモノマーが、混合されていれば良い。
【0012】
本発明の(A)EVA系エマルジョンの組成はエチレンと酢酸ビニルを必須とし、エチレンと酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体の割合は、質量比で3〜23:97〜77:0〜20である。
エチレンの割合が23質量%を越えると、樹脂が軟らかくなり過ぎて発泡体としての強度が低下するばかりでなく、塩ビ製品と高温時にブロッキングし易くなる。またエチレンの割合が3質量%未満になると、樹脂が硬くなり過ぎて発泡体として割れ易くなり、作業上好ましくない。
好ましいエチレンと酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体の割合は3〜18:97〜82:0〜20、さらに好ましくは5〜12:95〜88:0〜10である。
【0013】
その他共重合可能な単量体としては例えばプロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル(ネオノナン酸、ネオデカン酸のビニルエステル等)等の酢酸ビニル以外のビニルエステル類、アクリル酸、メタアクリル酸、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等のモノカルボン酸やそのエステル類、マレイン酸、イタコン酸等のジカルボン酸、及びそのモノまたはジエステルまたは無水物等、スチレン等の芳香族系ビニル類、(メタ)アクリルアミド等のアミド類、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能単量体類、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル等が挙げられるが、これらの成分はエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンの性能を阻害しない範囲で、一種類以上含有させることができる。
【0014】
また、(A)EVA系エマルジョンに少量混合する(B)酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上のモノマーとしては例えば、酢酸ビニルモノマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリルアミド、スチレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種類以上を混合して使用しても良い。ホモポリマーのTgが30℃未満であると、壁紙とした場合、特に塩ビ製品との耐ブロッキング性が改良されない。
【0015】
また本発明のエマルジョンのトルエン不溶分が30質量%以下であると、発泡倍率が高くなり、発泡体、とりわけ壁紙として意匠性の点で好ましい。このトルエン不溶分が多いと、発泡性、特に発泡倍率が劣る結果になる。
【0016】
本発明のEVA系エマルジョンの乳化重合に使用される乳化分散剤はポリビニルアルコール(以下「PVA」と称す)を使用することが一般的であり、接着性や強度・強靱性の点で好ましい。PVAは重合度、鹸化度、使用量等によっては、その強靱性のために発泡性を低下させることがあり、好ましくはPVAと界面活性剤の併用等により、本発明のトルエン不溶分がその範囲になるよう調整する必要がある。
【0017】
PVAとしては、通常のPVAを用いることができ、例えば脂肪酸ビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られる単独重合体または共重合体、若しくは他の共重合可能な単量体の共重合体を鹸化して得られるPVA、或いはこれらのPVAを変性した変性PVAが挙げられる。上記PVAにおいて、共重合可能な他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の重合性モノカルボン酸類、マレイン酸、イタコン酸等の重合性ジカルボン酸類、無水マレイン酸等の重合性ジカルボン酸無水物、重合性モノカルボン酸類や重合性ジカルボン酸類のエステル類、及びその塩類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の重合性酸アミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、グリシジル基を有する単量体、アルキルビニルエーテル類、スルホン基を有する単量体等が挙げられる。また、PVAの変性としては例えばアセトアセチル変性が挙げられる。
【0018】
PVAの鹸化度は65〜100モル%が好ましい。65モル%未満では、PVAの親水性が低くなり水溶性が低下し液状組成物が得られ難くなる場合がある。またPVAの重合度は、100〜4500が好ましい。100未満では得られる皮膜強度が小さく、且つ耐水性も劣る。一方4500を越えると、合成樹脂エマルジョンが高粘度液となるため、重合や各種の配合、調整に支障をきたす場合がある。
【0019】
PVA以外にメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤やそれらの塩、ラウリル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルエーテル硫酸塩エステル塩やメチルタウリン酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、ポリアルキレングリコール類系、脂肪酸エステル系、高級アルコール系等のノニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩やアミン塩類等のカチオン系界面活性剤、その他の両性界面活性剤も、PVAと同様に使用することができる。尚、界面活性剤はPVAに比べ凝集力が小さく、発泡性、特に発泡倍率は良好であるものの、熱によるへたりの問題が発生する可能性がある。従って界面活性剤はPVAと併用する方法が好ましいが、単独使用しても良い。
【0020】
発泡材料用エマルジョンに添加される発泡剤は、熱により分解し窒素ガスを発生するOBSH[p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)]や、ブタン等の炭化水素を包含し熱により炭化水素と外殻の樹脂が膨張する熱膨張性マイクロカプセルが使用できるが、熱膨張性マイクロカプセルが好適に使用される。本発明ではEVA系エマルジョンのトルエン不溶分を30%以下にすることにより発泡性に優れるため、従来の合成樹脂エマルジョンに比べ同量の発泡剤添加量で高発泡体が得られ、また同じ発泡倍率の発泡体を得るためには発泡剤が少量ですむ利点がある。
これら発泡剤は一般的に市販されているものを使用することができ、例えば、OBSHは永和化成工業株式会社製の商品名「ネオセルボン」、熱膨張性マイクロカプセルは松本油脂製薬株式会社製の商品名「マイクロスフェア」、日本フィライト株式会社製の商品名「エクスパンセル」を挙げることができる。中でも、発泡倍率や発泡後の表面状態の点で、熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。
【0021】
発泡材料用エマルジョン組成物に使用される無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、塩基性炭酸亜鉛、水酸化第一鉄、タルク、シリカ類、クレー、二酸化チタン、ケイ酸マグネシウム等がある。
中でも水酸化アルミニウムや炭酸カルシウムが好適である。
【0022】
発泡材料用組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。例えば、酸化チタン等の隠蔽剤、着色を目的とする顔料、分散剤、増粘剤、消泡剤、浸透性調節剤(表面張力調節剤)、耐ブロッキング剤、難燃剤、有機系・無機系の発泡体、珪砂、珪石等の骨材、セメント等の水硬性無機材料等を、適宜使用することができる。
【0023】
発泡材料用エマルジョン組成物は、EVA系エマルジョンを主成分としてなる発泡材料用エマルジョン、発泡剤、及び無機充填剤を混合して製造される。 発泡材料用エマルジョン組成物を乾燥後、加熱することにより発泡体を得ることができる。
発泡体は基材の上に発泡材料用エマルジョン組成物を塗布し乾燥後、加熱発泡させることにより、発泡体と基材との複合材を得ることもできる。基材としてはプラスチックシート或いはフィルム、金属、木材、紙、タイル、煉瓦、コンクリート等、発泡体が接着するものであれば特に限定はされない。この中で難燃紙や一般紙上に発泡材料用エマルジョン組成物を、塗布し乾燥後、加熱発泡させた壁紙が特に好ましい。
【0024】
【実施例】
以下さらに詳細に実施例をもって説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、本発明記載の部、及び%は特に記載が無ければ何れも質量基準で示したものである。
【0025】
<(A)EVA系エマルジョンの製造例>
攪拌機付の高圧重合缶にPVA(電気化学工業株式会社製)B−05とB−17を各2部、酢酸ソーダ0.2部、ホルムアミジンスルフィン酸(和光純薬工業株式会社製)0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.005部、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム0.01部を90部の純水に溶解してから仕込み、さらに攪拌下酢酸ビニルモノマー100部を仕込み、窒素で重合缶内部を置換した後、エチレン25部を充填した。温度を55℃とした後、5%の過硫酸アンモニウム水溶液を連続添加し重合を行った。未反応の酢酸ビニルモノマー量が1%未満になるまで重合を継続し、残存するエチレンをパージし、EVAエマルジョンを得た。生成したEVAエマルジョン中の未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧除去し、未反応の酢酸ビニルモノマーが0.5質量%以下、エチレンと酢酸ビニルの組成は質量比で19:81(エチレン含有率19%)、トルエン不溶分45%、不揮発分55.0%の安定なEVA系エマルジョンを得た。以下、EVA−1と略す。酢酸ビニル71部、エチレン29部に変更した以外は、上記と同様にして未反応の酢酸ビニルモノマー0.5質量%以下、エチレン含有率27%、トルエン不溶分60%、不揮発分55.2%のEVA系エマルジョンを得た。以下、EVA−2と略す。
【0026】
EVA−1の製造において乳化分散剤組成、溶解に使用した純水の量、エチレンの仕込み量、及び酢酸ビニルモノマーの添加方法を以下のように変更した以外は、EVA−1と同様に重合を行った。
乳化分散剤はB−05を2.8部、B−17を0.6部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを0.8部とし、溶解に使用した純水は62部とした。エチレンの仕込み量は19部とし、酢酸ビニルモノマーは全量100部のうち、重合初期には67部を仕込み過硫酸アンモニウムの添加を開始してから約3時間後に残りの33部を2時間かけて重合缶に添加した。未反応の酢酸ビニルモノマー0.5質量%以下、エチレン含有率16%、トルエン不溶分28%、不揮発分65.0%のEVA系エマルジョンを得た。以下、EVA−3と略す。
エチレンの仕込量を10部に変更した以外は、上記と同様にして未反応の酢酸ビニルモノマー0.5質量%以下、エチレン含有率9%、トルエン不溶分20%、不揮発分64.3%のEVA系エマルジョンを得た。以下、EVA−4と略す。
【0027】
EVA−1の製造に於いて、重合に使用した還元剤の種類を表−1に示す通りに変更した以外は、同様に重合を行い、EVA−5〜7を得た。
これらEVA−1〜7の還元剤種類と合成樹脂エマルジョンの物性を、表−1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
<実施例1>
攪拌機付きのガラス製フラスコに、(A)EVA−3を100部、(B)酢酸ビニルモノマーを6.5部(EVA−3の不揮発分100質量部に対して10質量部)を計量し混合した。またホルムアミジンスルフィン酸0.03部、硫酸第一鉄7水和物0.0006部を純水2部に溶解し添加して、30分間撹拌しながら温度を50℃とした。30分後から5%の過硫酸アンモニウム水溶液2.64部を90分間に渡って添加し、重合を行った。未反応の酢酸ビニルモノマー量が1%未満になるまで重合を継続し、EVA系エマルジョン中の未反応の酢酸ビニルモノマーが0.5質量%未満になるまで減圧除去し、トルエン不溶分29%、不揮発分64.8%の安定なEVA系エマルジョンを得た。ホルムアルデヒドの含有量は、定量限界以下であった。このエマルジョンを不揮発分基準で100部、市販の熱膨張性マイクロカプセルを不揮発分基準で15部、水酸化アルミニウムを主体にした酸化チタンとの混合無機充填剤を135部、熱膨張性マイクロカプセル、無機充填剤の分散剤、及び消泡剤を3部混合して、発泡材料用エマルジョン組成物(以下塗工液と称す)を得た。無機充填剤の混和安定性の尺度となる塗工液の粗粒率は、40ppmであった。次いでこの塗工液を、難燃紙上に乾燥後の厚みが0.1mmになるように塗布し、120℃で1分間乾燥後、さらに170℃で30秒間発泡させて、発泡体を得た。
これらについて以下の試験を実施した。試験結果を表2に示す。
【0030】
<試験条件>
1.合成樹脂エマルジョンの物性
(1)不揮発分:JIS K 6828に準ずる。
(2)トルエン不溶分:合成樹脂エマルジョンの乾燥皮膜を細かく裁断し、この皮膜0.5g(a)を50mlのトルエンに浸漬し、50℃で5時間振とうした後、200メッシュ金網で濾過回収した不溶分を乾燥した重量(b)を測定し、100×(b)/(a)の式より求めた。
(3)エチレン含有率:プロトンNMRによるピーク強度の積分値より算出したEVAポリマー中の含有率。
(4)ホルムアルデヒド含有量:厚生労働省令34号に準じた水蒸気蒸留法。
(5)エマルジョンの着色度:エマルジョンをガラス板に厚さ1mm程度に引き伸ばし、着色の度合を目視で確認した。
【0031】
2.壁紙(塗工液)の物性
(1)塗工液の粗粒率:50メッシュの金網で濾過したエマルジョンを使用して作製した塗工液を、200メッシュの金網で濾過した際の残存物の比率。
100gの塗工液を同量の純水で希釈・混合して、予め計量してある箱形に折った200メッシュの金網で濾過した。
金網を105℃で1時間乾燥させ、計量し重量の増加分を粗粒率とした。
(2)発泡倍率:(170℃、30秒間発泡後の発泡体単独の厚み)/(120℃、1分間乾燥後(発泡前)の発泡材料用エマルジョン組成物単独の厚み)
(3)耐ブロッキング性(常温):市販の塩ビレザーと発泡体の表面同士を重ね合わせ、23℃、65RH%の条件下で1kgf/cm2の荷重をかけて3日間放置し、その後、重ね合わせてある面を手で剥離し、○(抵抗無し)、△(抵抗有り)、×(剥離せず、材料破壊)の基準で評価した。
(4)耐ブロッキング性(高温):上記の試験を60℃、90RH%で24時間放置に変更した以外は、上記の(3)と同様に評価した。
【0032】
<実施例2、3>
実施例1において、使用した(A)EVA系エマルジョンの種類と(B)酢酸ビニルモノマーの添加量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。
得られたエマルジョン及び壁紙の試験結果を、表2に示す。
【0033】
<比較例1〜3>
実施例1において、使用した(A)EVA系エマルジョンの種類と(B)酢酸ビニルモノマーの添加量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。
得られたエマルジョン、及び壁紙の試験結果を、表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
<比較例4、5>
(A)EVA−1、EVA−4を二段目の重合を行わないでそのまま壁紙として評価した。結果を表3に示す。
【0036】
<比較例6>
実施例1に於いて(A)EVA−2を使用し、(B)酢酸ビニルモノマーの添加量を5.5部とした以外は、実施例1と同様に試験した。
結果を表3に示す。
【0037】
<比較例7>
実施例1に於いて、(B)酢酸ビニルモノマーのかわりにアクリル酸ブチル(n−BA;市販品)を使用した以外は、実施例1と同様に試験した。
結果を表3に示す。
尚、アクリル酸ブチルのホモポリマーのTgはポリマーハンドブック(POLYMER HANDBOOK THIRD Edition/John Wiley & Sons,Inc. 1989 p.VI/215)によれば、−54℃である。
【0038】
<実施例4〜6>
実施例1に於いて、(B)酢酸ビニルモノマーのかわりに、スチレン(市販品)、メタクリル酸メチル(MMA;市販品)、及びネオノナン酸ビニルエステル(ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名ベオバ9)を使用した以外は、実施例1と同様に評価した。
結果を表3に示す。
尚、スチレンとメタクリル酸メチルのホモポリマーのTgは、ポリマーハンドブックによれば105℃(p.VI/226)と100℃(p.VI/219)である。
また、ネオノナン酸ビニルエステルのホモポリマーのTgは、メーカーのカタログによれば70℃である。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例1〜6のいずれも比較例1〜3と比較して、ホルムアルデヒドの含有量が極めて低い。
また比較例2、3は、エマルジョンが黄色系に着色しており、その着色も放置時間の経過と共に激しくなっていく傾向が認められた。
【0041】
実施例1〜6と比較例4、5の比較において、本願の通り(A)EVA系エマルジョンにさらに(B)酢酸ビニルモノマーを重合させることにより、塗工液の粗粒率が低減し、無機充填剤の混和安定性が向上している。
【0042】
またEVA系エマルジョンのエチレン含有率が低いと、塩ビ製品との高温時の耐ブロッキング性が改良される。
すなわち実施例1〜2と比較例6の比較において、(A)EVA系エマルジョンのエチレン含有率が高いと、(B)酢酸ビニルモノマーを重合させても塩ビ製品との高温時の耐ブロッキング性は向上されない。
【0043】
実施例4〜6と比較例7との比較から、(B)酢酸ビニルモノマー以外のモノマーであっても、ホモポリマーのTgが高ければ、塩ビ製品との高温時の耐ブロッキング性が向上することが認められた。
すなわち比較例7のように(B)ホモポリマーのTgが低いモノマーを重合させても、耐ブロッキング性は向上されない。
【0044】
実施例1〜6と比較例1〜4及び6との比較から、トルエン不溶分が30%以下の時、発泡倍率が高くなることが認められた。
【0045】
【発明の効果】
(A)エチレン3〜23質量%、酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体混合物が97〜77質量%となるような共重合反応に於いて、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として用いて重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンの不揮発分100質量部当たり、(B)1〜20質量部の酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの1種類以上を混合し、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として重合することを特徴とする発泡材料用エマルジョンであり、それに発泡剤、及び無機充填剤を含有させた発泡材料用エマルジョン組成物、そして該組成物から得られる壁紙は、シックハウス症候群の主原因とされるホルムアルデヒド含有量やエマルジョンの着色が極めて少なく環境に優しい。
更に無機充填剤との混和安定性に優れ、且つ室内にあるソファーや電気コード等の塩ビ製品との耐ブロッキング性にも優れる。さらにトルエン不溶分を30%以下にすることにより、発泡性、特に発泡倍率に優れる。
Claims (6)
- (A)エチレン3〜23質量%、酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体混合物が97〜77質量%となるような共重合反応に於いて、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として用いて重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョンの不揮発分100質量部当たり、(B)1〜20質量部の酢酸ビニルモノマー、またはホモポリマーのTgが30℃以上であるモノマーの1種類以上を混合し、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれら誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として重合することを特徴とする無機充填材との混和安定性に優れる発泡材料用エマルジョン。
- 請求項1記載のエマルジョンのトルエン不溶分が30質量%以下である、発泡性に優れることを特徴とする発泡材料用エマルジョン。
- 発泡材料用エマルジョンに、発泡剤と無機充填剤とを含有してなる発泡材料用エマルジョン組成物。
- 発泡剤が熱膨張性カプセル、又はOBSH系であることを特徴とする請求項3に記載した発泡材料用エマルジョン組成物。
- 請求項3または請求項4のいずれか1項に記載された発泡材料用エマルジョン組成物の発泡体。
- 請求項5記載の発泡体が塩ビ製品との耐ブロッキング性に優れる室内装飾材、または壁紙。
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