JP2004017703A - 車両のシートのスライド装置 - Google Patents

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Tomoo Taguchi
田口 知生
Takayuki Sagahara
佐賀原 隆行
Minoru Toyoda
豊田 稔
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Abstract

【課題】シートクッションの配設高さを高くせずに、シートの前後及び左右のスライドを両立させることができる車両のシートスライド装置を提供する。
【解決手段】後部フロア15R上方に設けられたシートクッション8を有するシート6と、シート6を車両の前後方向および車幅方向にスライドさせるスライド手段を備えた車両のシートのスライド装置であって、上記スライド手段は車両の前後方向に延び、かつシートクッション8の車幅方向両側部の略下方に設けられた左右一対の前後スライドレール26と、車幅方向に延び、かつシートクッション8の前部および後部の略下方に設けられた前後一対の左右スライドレー30,30とを備え、前後スライドレール26と左右スライドレール30とはその上面が略面一状になるように一方30が他方の一対のレール間26,26に設けた。
【選択図】  図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、前部フロアの後端よりも上方に隆起した略水平の後部フロアに対して、シートを設け、このシートを前後方向および車幅方向(左右方向)にスライドさせるスライド手段を備えたような車両のシートのスライド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両のシートを車両前後方向および車幅方向にスライドさせるシートスライド装置としては、例えば特開平10−203210号公報に記載の装置がある。
すなわち、車両の前後方向に延びる一対の前後スライドレールを車体側に設け、上記前後一対の前後スライドレール(ガイドレール)の上部にロアレールとアッパレールとから成る左右スライドレール(サイドレール)を配置し、この左右スライドレールのアッパレールに対してシートブラケットを介してシートクッションを取付け、シートを車両の前後方向および車幅方向にスライドさせるように構成したものである。
【0003】
しかし、上述の従来構造においてはフロアパネル側に前後スライドレールを配置し、この前後スライドレールの上部に単に左右スライドレールを配置して、この左右スライドレールに対してシートクッションを取付けたものであるから、シートクッションの配設高さが高くなってしまい、シートに着座した乗員の頭部と車両ルーフ部との間のヘッドクリアランスが小さくなる問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、左右スライドレールの一方をシートクッションの前部と前後スライドレールとの間に設け、左右スライドレールの他方をシートクッションの後端後方と前後スライドレールとの間に設けることで、シートクッションの配設高さ、つまり、ヒップポイントの位置を低くし、可及的ヘッドクリアランスをかせぎつつ、シートの前後スライドと左右スライドとを両立させることができる車両のシートのスライド装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両のシートのスライド装置は、略水平の前部フロアと、該前部フロアの後端より上方に隆起し、かつ上面が略水平に形成された後部フロアと、該後部フロア上方に設けられたシートクッションを有するシートと、該シートを車両の前後方向および車幅方向にスライドさせるスライド手段を備えた車両のシートのスライド装置であって、上記スライド手段はシートを車両の前後方向にスライドすべく車両の前後方向に延び、かつシートクッションの車幅方向両側部の略下方に設けられた左右一対の前後スライドレールと、上記シートを車幅方向にスライドすべく車幅方向に延び、かつシートクッションの前部および後部の略下方に設けられた前後一対の左右スライドレールとを備え、前後スライドレールと左右スライドレールとはその上面が略面一状になるように一方が他方の一対のレール間に設けられたものである。
【0006】
上記構成によれば、前後スライドレールと左右スライドレールとを、その上面が略面一状になるように、何れか一方のスライドレールを何れか他方のスライドレール間に設けたので、スライド手段それ自体の高さを低くすることができ、このスライド手段を介してシートクッションを配置することができる。
【0007】
この結果、シートクッションの配設高さ、つまりヒップポイントの位置を低く抑えて、可及的ヘッドクリアランスをかせぐことができ、しかも後部フロア上のシートの前後スライドと左右スライドとを両立させることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記前後スライドレールは後部フロアに固定されたロアレールと、該ロアレール上に設けられたアッパレールとを備え、上記左右スライドレールは一対の前後スライドレール間で車幅方向に延びて、両端部が前後スライドレールのアッパレールに連結され、シートクッションは左右スライドレールに取付けられたものである。
【0009】
上記構成によれば、左右スライドレールを前後スライドレールのアッパレールに連結するので、左右スライドレールと前後スライドレールとを有するスライド手段全体の高さを低く設定することができ、特に左右移動量に対して前後移動量が大の場合に有効となる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記シートの車幅方向内方または外方への移動時にシートクッションが同側の前後スライドレールをオーバランニングする位置まで移動すべく構成したものである。
上記構成によれば、シートの車幅方向内方への移動時には、シートクッションが車幅方向内方側の前後スライドレールをオーバランニングする位置まで移動し、シートの車幅方向への移動時には、シートクッションが車幅方向外方側の前後スライドレールをオーバランニングする位置まで移動するので、シートの車幅方向つまり左右方向のスライド量を大きくすることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションはシートベルトの一端が着脱自在に連結されるバックルと、上記バックルと左右スライドレールとを連通する補強部材とを備えたものである。
上記構成によれば、バックルは補強部材、左右スライドレールおよび前後スライドレールを介して車体側に固定されるので、シートベルトおよびバックルの支持剛性を確保することができ、特に車両衝突時においてシートベルトに作用する荷重をバックル、補強部材、左右スライドレール、前後スライドレールを介して車体(後部フロア)に入力することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記スライド手段は一対の前後スライドレールの車幅方向中間で、車両前後方向に延びるように設けられた第2の前後スライドレールを備え、上記一対の左右スライドレールは第2の前後スライドレールの左右にそれぞれ設けられ、上記シートクッションは第2の前後スライドレールを車幅方向に跨いで左右スライドレールに取付けられたものである。
上記構成によれば、一対の前後スライドレールに加えて、これらの中間に位置する第2の前後スライドレールを設けるので、シートの前後左右移動を確保しつつ、シートの車体に対する支持剛性の向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記シートは左右に一対設けられ、上記左右スライドレールは一対のシートが車幅方向に離反した離反状態と、近接した近接状態とを選択すべくシートの車幅方向の位置を固定する車幅方向固定手段を備えたものである。
【0014】
上記構成によれば、左右一対のシートを離反状態と近接状態とに択一的に選定することができるので、シートアレンジ性が拡大して、ユーティリティの向上を図ることができると共に、左右のシートを離反させた場合には、これらシート間の空間をウオークスルーに利用することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記一対のシートが離反状態の時、一対のシート間に着脱可能に設けられるセンタシートを備えたものである。
上記構成によれば、離反状態の左右のシート間にセンタシートを着脱することができるので、シートアレンジ性がさらに拡大して、ユーティリティをより一層向上させることができ、またセンタシートの取外し時には左右のシート間の空間をウオークスルーに利用することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記車両はシートの後方で車室側壁部より車幅方向内方に突出する左右一対のホイールハウスを備え、上記前後スライドレールは一対のシートが離反状態においてホイールハウスの前方に位置する通常着座位置と、近接状態において左右のホイールハウス間に位置する後方着座位置とを選択すべくシートの前後方向の位置を固定する前後方向固定手段を備えたものである。
【0017】
上記構成によれば、左右のシートを互に近接させた状態において、これら左右のシートを後退させると、車幅方向内方に突出する左右一対のホイールハウスを回避して、左右のシートをリヤ側へスライドさせた後方着座位置となる。
【0018】
このように左右のシートを通常着座位置と後方着座位置とに択一的に選定することができ、シートアレンジ性の拡大を図ることができ、ユーティリティの向上を図ることができる。
特に、左右のシートを後方着座位置に設定すると、シートの前方空間が拡大されるので、この空間を荷物配置スペースまたは足元拡大スペースとして利用することができる。
【0019】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のシートのスライド装置を示すが、まず図1を参照して車体構造およびシート配設構造について説明する。
【0020】
車室の前部左右には第1列目シートとしてのドライバーズシート1とパッセンジャーズシート2とを配置している。なお、上述の各シート1,2は右ハンドル車、左ハンドル車に対応してドライバーズシート1がステアリングホイールと対応するように、設定するとよい。
これらの各シート1,2はシートクッション3、シートバック4およびヘッドレスト5を有し、図示しないシートベルトにより前席乗員を拘束すべく構成している。
【0021】
車室の中間部左右には第2列目シートとしての左右のシート6,6が左右に独立して一対設けられ、これら左右のシート6,6間には補助シートとしてのセンタシート7が着脱可能に設けられている。
【0022】
つまり、左右のシート6,6を車幅方向に離反させた離反状態下(図1参照)において、これら両シート6,6間の車幅方向側部中間にセンタシート7を着脱可能に取付けたものである。
上述の左右のシート6,6は、シートクッション8、シートバック9およびヘッドレスト10を有するものである。
【0023】
車室の後部左右には第3列目シートとしての左右のサードシート11,11を配置している。これらのサードシート11,11はシートクッション12およびシートバック13を有するものである。
【0024】
一方、車体の側部にはサイドシルアウタとサイドシルインナとを有して車両の前後方向に延びる閉断面構造のサイドシル14,14を設け、第1列目シートと第2列目シートとの間においてフロアパネル15(図8参照)の下部には左右のサイドシル14,14を車幅方向に連結する剛性部材としての第1クロスメンバ16(いわゆるNo.3クロスメンバ)を設け、フロアパネル15と第1クロスメンバ16との間には車幅方向に延びる閉断面16A(図8参照)を形成している。
【0025】
また上述のサイドシル14,14の後部から車体後方に向けて車両の略前後方向に延びる剛性部材としてのリヤサイドフレーム17,17を、フロアパネル15下部に接合し、このリヤサイドフレーム17とフロアパネル15との間には車両の略前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0026】
そして、上述の第2列目シートと第3列目シートとの間においてフロアパネル15の下部には左右のリヤサイドフレーム17,17を車幅方向に連結する剛性部材としての第2クロスメンバ18(いわゆるNo.4クロスメンバ)を設けて、この第2クロスメンバ18と上述のフロアパネル15との間には車幅方向に延びる閉断面18A(図8参照)を形成している。
【0027】
上述のフロアパネル15は図2、図8に示すように略水平の前部フロア15Fと、この前部フロア15Fの後端部からキックアップ部15aを介して上方に隆起し、かつ上面が略水平に形成された後部フロア15Rとを備え、シート1,2は前部フロア15F上に設けられ、シート6,6は後部フロア15R上に設けられ、第2列目のシート6,6の後方には後席シートとしてのサードシート11,11が設けられたものである。
【0028】
ところで、この車両は図1、図2に示すように第2列目のシート6,6の後方で車室側壁部としてのサイドパネル19より車幅方向内方の車室側に突出する左右一対のホイールハウス20,20が設けられていて、第3列目の左右のサードシート11,11はこれら左右のホイールハウス20,20間においてフロアパネル15の後部フロア15R上部に配設されたものである。
【0029】
また、上述のサードシート11は図3に示すようにシートクッション12およびシートバック13がそれぞれ起伏可能となるように構成されている。
すなわち、通常着座状態(図3のa参照)のシートクッション12の前部に支点としてのピン21を介してブラケット22を連結し、このブラケット22の後部にリンクピン23を介して連結されたリンク24の一端(後端)には支点としてのピン25を介してシートバック13の下部を連結している。
【0030】
また上述のシートクッション12およびシートバック13の下面または背面は荷物の載置が可能なように剛性のある荷物載せ面12B,13Bに形成されている。
【0031】
そして、図3のaに示す通常着座状態からピン21を支点としてシートクッション12を前方へ起立させると共に、リンク24を後部下方へ回動させた後に、リンク24一端のピン25を支点としてシートバック13を前方へ伏動させると、サードシート11は図3のbに示すように側面視略L字状となって、シートバック13上部に荷物を載置することができる。
【0032】
さらに図3のbに示す状態から、ピン21を支点としてシートクッション12を前部下方へ回動させると、図3のcに示すように、シートクッション12の荷物載せ面12Bとシートバック13の荷物載せ面13Bとが略面一状のフラットな状態となり、各荷物載せ面12B,13B上部に広い荷物載せスペースを確保することができる。
【0033】
次に図4〜図7に示す正面図および図8に示す側面図を参照して、第2列目のシート6の前後および左右スライド構造について説明する。
上述の第2列目のシート6は図8に示すようにフロアパネル15のキックアップ部15aよりも後方の略水平かつフラットな後部フロア15Rの上方に設けられている。
【0034】
左右のシート6,6のシートクッション8の車幅方向両側部の略下方において後部フロア15Rにはスライド手段の一方を構成するところの各2組の前後スライドレール26を互に離間させて車両の前後方向に向けて取付けている。
【0035】
これらの左右一対の前後スライドレール26は車体側つまりフロアパネル15の後部フロア15Rに固定されたロアレール27と、このロアレール27上を車両の前後方向にスライドするアッパレール28とを備えている。
【0036】
また、上述のスライド手段の他方はシートクッション8の前部および後部の略下方に設けられた前後一対の左右スライドレール30,30により構成されるが、これらの左右スライドレール30,30は一対の前後スライドレール26,26間で車幅方向に延びて、その両端部が前後スライドレール26のアッパレール28に連結されている。
【0037】
つまり、上述の左右スライドレール30はロアレール31と、このロアレール31上を車幅方向にスライドするアッパレール32とを備え、左右スライドレール30のロアレール31を前後スライドレール26のアッパレール28に連結するために、該アッパレール28には図5、図7に拡大図で示すように左右一対のアッパレール28,28の対向面側に断面L字状のレール取付け部28aを一体または一体的に形成し、これらのレール取付け部28aに左右スライドレール30のロアレール31を車幅方向に向けて張架し、前後スライドレール26の上面と左右スライドレール30の上面とを略面一状と成したものである。
【0038】
ここで、左右のスライドレール30におけるロアレール31の車幅方向の長さは、一対の前後スライドレール26,26の離間距離にほぼ対応するが、左右スライドレール30におけるアッパレール32の車幅方向の長さはロアレール31のそれに対して短く設定している。
【0039】
上述のアッパレール32にはシートフレーム33を介してシート6のシートクッション8を取付けるが、左右のシート6,6の車幅方向内方または外方への移動時にシートクッション8が同側の前後スライドレール26をオーバランニングする位置まで移動するように構成している。
【0040】
すなわち、図4は左右のシート6,6を車幅方向に離反させた離反状態を示し、図5はその部分拡大図であって、図4、図5に示すようにシート6を車幅方向外方へ移動させる時には、シートクッション8の車外側端部が一対の前後スライドレール26,26のうちの車幅方向外方側の前後スライドレール26をオーバランニングする位置まで移動するように構成している。
【0041】
同様に、図6は左右のシート6,6を車幅方向に近接させた近接状態を示し、図7はその部分拡大図であって、図6、図7に示すようにシート6を車幅方向内方へ移動させる時には、シートクッション8の車内側端部が一対の前後スライドレール26,26のうちの車幅方向内方側の前後スライドレール26をオーバランニングする位置まで移動するように構成し、シート6の左右方向のスライド量拡大を図るように構成している。
【0042】
ところで、上述の前後スライドレール26,26は図1、図8に示すように、その車幅方向内側の前後スライドレール26は後部フロア15R上において第1クロスメンバ16と第2クロスメンバ18との間に張架され、車幅方向外側の前後スライドレール26は後部フロア15R上において第1クロスメンバ16とリヤサイドフレーム17との間に張架されている。つまり前後スライドレール26を車体剛性部材間に張架することで、前後スライドレール26の支持剛性の向上を図ったものである。また左右のシート6,6において前後、左右スライド構造は左右対称に形成されている。なお、上述の前後スライドレール26は車体に対して後付けされるので、前後スライドレール26と各要素16,17,18とはボルトアップされる。
【0043】
上述の左右スライドレール30は左右のシート6,6をそれぞれ独立して車幅方向にスライドさせるスライド手段であって、この左右スライドレール30はシート6,6が図1、図10に示すように車幅方向に離反した離反状態と、図11、図12に示すように左右のシート6,6が車幅方向に近接した近接状態とを択一的に選択すべく左右のシート6,6の車幅方向の位置を固定する車幅方向固定手段いわゆるスライドロック機構35(図9参照)を備え、左右のシート6,6の離反状態下(図1、図10参照)において、これら左右のシート6,6間にセンタシート7を着脱可能に配設すべく構成している。
【0044】
また上述の前後スライドレール26は左右のシート6,6および左右スライドレール30をそれぞれ独立して車両の前後方向にスライドさせるスライド手段であって、この前後スライドレール26は左右一対のシート6,6が離反状態下においてホイールハウス20,20前方に位置する通常着座位置(図1参照)と、近接状態下において左右のホイールハウス20,20間に位置する後方着座位置(図13参照)とを選択すべく左右のシート6,6の車両前後方向の位置を固定する前後方向固定手段いわゆるスライドロック機構36(図9参照)を備えている。
【0045】
なお、図1、図10に示す第2列目シートの状態下(離反状態下)においては第3列目シートは図3のaの態様に設定され、図11、図13に示す第2列目シートの状態においては第3列目シートは図3のbの態様に設定され、図12に示す第2列目シートの状態においては第3列目シートは図3のcの態様に設定される。特に、第2列目の左右のシート6,6をホイールハウス20,20間に後退させる場合(図13参照)には、その後退量をかせぐべく第3列目のサードシート11,11は図3のbで示すようにシートクッション12を起立させる。
【0046】
図9に示すように、車幅方向固定手段としてのスライドロック機構35には該機構35を手動操作する操作レバー37を設け、この操作レバー37を車幅方向外方側へ導出している。
【0047】
また前後方向固定手段としてのスライドロック機構36には該機構36を手動操作する操作レバー38を設け、この操作レバー38を前側の左右スライドレール30よりも車両の前方側へ導出している。
【0048】
一方、上述のシートフレーム33は図9に示すように、一対の側板39,40と、これら両側板39,40間に車幅方向に向けて張架した前後の金属パイプ製のクロスメンバ41,42と、一対の側板39,40の中間部に車両の前後方向に向けて設けられ、その前部がクロスメンバ41と接合された断面L字状の剛性の受け部材43と、車幅方向内方側の側板39の後部から受け部材43の前部にかけて一体的に設けられた補強部材としての補強パイプ44とを備えている。
【0049】
また車幅方向外方側の側板40と上述の受け部材43との両者には、左右スライドレール30,30のアッパレール32,32に対する取付け部位に対応してフランジ部40a,40a,43a,43aが一体形成されており、これらの各フランジ部40a,43aを上記アッパレール32,32に取付けて、左右スライドレール30上にシートフレーム33を固定すべく構成している。
【0050】
さらに上述の側板39にはウエビング45を介してバックル46を設けている。換言すれば、このバックル46をウエビング45、側板39、補強パイプ44、受け部材43を介して左右スライドレール30に連結したものである。
【0051】
次に、図2を参照して第2列目シートのシートベルト装置の構造について説明する。なお、左右のシート6,6のシートベルト装置の構造は左右ほぼ対称に構成されている。
【0052】
図2に示すようにクオータピラー50内にはリトラクタ51を固定する一方、左右のシート6,6の車外側における後部フロア15Rにはアンカ(図示せず)を固定している。
【0053】
上述のリトラクタ51から巻取り可能に繰出される左右のシート乗員拘束用のシートベルト52を、ショルダアンカ53を介して車室内へ導出し、この導出中間部にはタング54を移動可能に取付けると共に、シートベルト52の導出端部つまり下端部は上述のアンカに固定している。
【0054】
而して、上述のタング54を左右のシート用バックル46に係入した時、左右のシート6,6に着座した乗員を3点式シートベルト構造にて拘束すべく構成している。
【0055】
さらに、図2に示すようにリヤピラー55内にはリトラクタ56を固定し、このリトラクタ56から巻取り可能に繰出されるセンタシート乗員拘束用のシートベルト57を、ルーフ側設けられたベゼル等のガイド部材58,59を介して、センタシート7の上方部に導出し、この導出中間部および導出端部には中間タング60および先端タング61を取付けている。
【0056】
而して、上述の各タング60,61をセンタシート用バックル62,62に係入した時、センタシート7に着座した乗員を3点式シートベルト構造にて拘束すべく構成している。なお、上述のバックル62はウエビングを介して左右のシート6のシートフレーム33に固定される。
なお、図9においてFは車両前方を示し、Rは車両後方を示し、INは車両内方を示し、OUTは車両後方を示す。
【0057】
このように構成した車両のシートのスライド装置の作用を以下に説明する。 図1、図4に示すように左右のシート6,6を互に車幅方向に離間させた離反状態下においては、これら左右のシート6,6間にセンタシート7を配設することもでき、また図10に示すように、左右のシート6,6間からセンタシート7を取外して、このセンタシート7が取外されたスペースをウオークスルーに利用することもできる。しかも、前後スライドレール26は車幅方向においてシートクッション8の側端よりも該シートクッション8の内方に位置するように設けたので、前後スライドレール26が車幅方向においてシート6から食み出すことはない。
【0058】
図10に示すセンタシート7を取外した状態下において、左右のシート6,6を左右スライドレール30,30に沿って互に近接させると、図6,図11に示すように、これら両シート6,6を近接状態と成すことができる。
【0059】
図6,図11に示す近接状態から、左右のシート6,6を前後スライドレール26に沿って後退させると、これら左右一対のシート6,6は図13に示すように左右のホイールハウス20,20間に位置する後方着座位置となり、同図に示すように左右のシート6,6と第1列目シート1,2との間の間隔が大となるので、このスペースには荷物を配設したり、或は第2列目シートに着座した乗員の足元スペースの拡大を図ることができる。
【0060】
このように図1〜図13で示した実施例の車両のシートのスライド装置は、略水平の前部フロア15Fと、該前部フロア15Fの後端より上方に隆起し、かつ上面が略水平に形成された後部フロア15Rと、該後部フロア15R上方に設けられたシートクッション8を有するシート6と、該シート6を車両の前後方向および車幅方向にスライドさせるスライド手段を備えた車両のシートのスライド装置であって、上記スライド手段はシート6を車両の前後方向にスライドすべく車両の前後方向に延び、かつシートクッション8の車幅方向両側部の略下方に設けられた左右一対の前後スライドレール26と、上記シート6を車幅方向にスライドすべく車幅方向に延び、かつシートクッション8の前部および後部の略下方に設けられた前後一対の左右スライドレール30とを備え、前後スライドレール26と左右スライドレール30とはその上面が略面一状になるように一方(例えば左右スライドレール30参照)が他方(例えば前後スライドレール26参照)の一対のレール間に設けられたものである。
【0061】
この構成によれば、前後スライドレール26と左右スライドレール30とを、その上面が略面一状になるように、何れか一方のスライドレールを何れか他方のスライドレール間に設けたので、スライド手段それ自体の高さを低くすることができ、この上下寸法の小さいスライド手段を介してシートクッション8を配置することができる。
【0062】
この結果、シートクッション8の配設高さ、つまりヒップポイントP(図8参照)の位置を低く抑えて、可及的ヘッドクリアランスをかせぐことができ、しかも後部フロア15R上のシート6の前後スライドと左右スライドとを両立させることができる。
【0063】
また、上記前後スライドレール26は後部フロア15Rに固定されたロアレール27と、該ロアレール27上に設けられたアッパレール28とを備え、上記左右スライドレール30は一対の前後スライドレール26,26間で車幅方向に延びて、両端部が前後スライドレール26のアッパレール28に連結され、シートクッション8は左右スライドレール30に取付けられたものである。
【0064】
この構成によれば、左右スライドレール30を前後スライドレール26のアッパレール28に連結するので、左右スライドレール30と前後スライドレール26とを有するスライド手段全体の高さを低く設定することができ、特に左右移動量に対して前後移動量が大の場合に有効となる。
【0065】
さらに、上記シート6の車幅方向内方または外方への移動時にシートクッション8が同側の前後スライドレール26をオーバランニングする位置まで移動すべく構成したものである。
この構成によれば、シート6の車幅方向内方への移動時(図6参照)には、シートクッション8が車幅方向内方側の前後スライドレール26をオーバランニングする位置まで移動し、シート6の車幅方向への移動時(図4参照)には、シートクッション8が車幅方向外方側の前後スライドレール26をオーバランニングする位置まで移動するので、シート6の車幅方向つまり左右方向のスライド量を大きくすることができる。
【0066】
加えて、上記シートクッション8はシートベルト52の一端が着脱自在に連結されるバックル46と、上記バックル46と左右スライドレール30とを連通する補強部材(補強パイプ44参照)とを備えたものである。
この構成によれば、バックル46は補強部材(補強パイプ44参照)、左右スライドレール30および前後スライドレール26を介して車体(後部フロア15R参照)側に固定されるので、シートベルト52およびバックル46の支持剛性を確保することができ、特に車両衝突時においてシートベルト52に作用する荷重をバックル46、補強部材(補強パイプ44参照)、左右スライドレール30、前後スライドレール26を介して車体(後部フロア15R)に入力することができる。
【0067】
また、上記シート6は左右に一対設けられ、上記左右スライドレール30は一対のシート6,6が車幅方向に離反した離反状態(図1、図4、図10参照)と、近接した近接状態(図6、図11、図12参照)とを選択すべくシート6の車幅方向の位置を固定する車幅方向固定手段(図9に示すスライドロック機構35参照)を備えたものである。
【0068】
この構成によれば、左右一対のシート6,6を離反状態と近接状態とに択一的に選定することができるので、シートアレンジ性が拡大して、ユーティリティの向上を図ることができると共に、左右のシート6,6を離反させた場合には、これらシート6,6間の空間をウオークスルーに利用することができる。
【0069】
さらに、上記一対のシート6,6が離反状態の時、図1、図4に示すように一対のシート6,6間に着脱可能に設けられるセンタシート7を備えたものである。
この構成によれば、離反状態の左右のシート6,6間にセンタシート7を着脱することができるので、シートアレンジ性がさらに拡大して、ユーティリティをより一層向上させることができ、またセンタシート7の取外し時には左右のシート6,6間の空間をウオークスルーに利用することができる。
【0070】
加えて、上記車両はシート6の後方で車室側壁部(サイドパネル19参照)より車幅方向内方に突出する左右一対のホイールハウス20,20を備え、上記前後スライドレール26は一対のシート6,6が離反状態においてホイールハウス20,20の前方に位置する通常着座位置(図1参照)と、近接状態において左右のホイールハウス20,20間に位置する後方着座位置(図13参照)とを選択すべくシート6の前後方向の位置を固定する前後方向固定手段(図9に示すスライドロック機構36参照)を備えたものである。
【0071】
この構成によれば、左右のシート6,6を互に近接させた状態において、これら左右のシート6,6を後退させると、車幅方向内方に突出する左右一対のホイールハウス20,20を回避して、左右のシート6,6をリヤ側へスライドさせた後方着座位置となる。
【0072】
このように左右のシート6,6を図1に示す通常着座位置と図13に示す後方着座位置とに択一的に選定することができ、シートアレンジ性の拡大を図ることができ、ユーティリティの向上を図ることができる。
特に、左右のシート6,6を後方着座位置に設定すると、シート6,6の前方空間が拡大されるので、この空間を荷物配置スペースまたは足元拡大スペースとして利用することができる。
【0073】
図14〜図19は車両のシートのスライド装置の他の実施例を示し、左右一対の前後スライドレール26,26の車幅方向中間において、車両の前後方向に延びるように後部フロア15Rに第2の前後スライドレール70を設け、第2列目の1つのシート6について合計3本の前後スライドレール26,70,26を設けたものである。
【0074】
上述の第2の前後スライドレール70は後部フロア15Rに固定されたロアレール72と、このロアレール72上にスライド自在に設けられたアッパレール71とを備え、このアッパレール71の左右両部には断面L字状のレール取付け部71aが一体または一体的に形成され、車幅方向中間に位置する第2の前後スライドレール70における上記レール取付け部71a,71aと、車幅方向側方に位置する前後スライドレール26,26における前述のレール取付け部28a,28aとの間に一直線上に並ぶように左右スライドレール30のロアレール31,31を取付けて、各前後スライドレール26,70の上面と、左右スライドレール30の上面とが略面一状になるように構成している。
【0075】
つまり前後一対の左右スライドレール30,30は図18に平面図で示すように第2の前後スライドレール70とその左右の前後スライドレール26,26との間に位置するように分割されてレール70の左右にそれぞれ設けられている。
【0076】
詳しくは、1つのシート6について、シートクッション8の下方で前部左側、前部右側、後部左側、後部右側に上述のロアレール31…が各要素28a,71a間にそれぞれ取付けられている。
【0077】
そして、これらの各ロアレール31には該ロアレール31に沿って車幅方向へスライド自在なアッパレール32がそれぞれ設けられ、シートフレーム33は第2の前後スライドレール70を車幅方向に跨いで左右スライドレール30における上記アッパレール32,32に固定され、このシートフレーム33にシートクッション8が取付けられている。
ここで、上述のシートフレーム33を構成する一対の側板間には、第2の前後スライドレール70を車幅方向に跨ぐようにクロスメンバ73が取付けられている。
【0078】
また図14〜図17に示すように前後スライドレール26の上方を覆うカバー部材74を後部フロア15Rに設け、このカバー部材74とアッパレール28との間にはクリアランスを形成している。
【0079】
さらに図18に平面図で、図19に断面図で示すように第2の前後スライドレール70と車幅方向内方側の前後スライドレール26との間には、これら要素70,26間の左右スライドレール30,30と干渉しないように該左右スライドレール30にクリアランスを介して前後方向に3分割されたカバー部材75を設けている。
【0080】
この3分割されたカバー部材75は前後スライドレール26,70のアッパレール28,71の対向面部またはそのレール取付け部28a,71aに固定され、アッパレール28,71の前後スライドに追従するように構成されていて、左右のシート6,6を図18に仮想線で示すように車幅方向に離間させた場合の見栄えの向上を図っている。
【0081】
上述のカバー部材75の上面は図19に示すように左右スライドレール30のアッパレール32の上面よりも若干低位置に設定され、左右スライドレール30によるシート6の車幅方向へのスライド時には、該カバー部材75が他の部材と干渉しないように構成している。
【0082】
このように図14〜図19で示した実施例の車両のシートのスライド装置においては、上記スライド手段が一対の前後スライドレール26,26の車幅方向中間で、車両前後方向に延びるように設けられた第2の前後スライドレール70を備え、上記一対の左右スライドレール30,30は第2の前後スライドレール70の左右にそれぞれ設けられ、上記シートクッション8は第2の前後スライドレール70を車幅方向に跨いで左右スライドレール30,30に取付けられたものである。
【0083】
この構成によれば、一対の前後スライドレール26,26に加えて、これらの中間に位置する第2の前後スライドレール70を設けるので、シート6の前後左右移動を確保しつつ、シート6の車体に対する支持剛性の向上を図ることができる。
なお、図18においていはカバー部材75の配置範囲を明確に示すために、該カバー部材75にハッチングを施している。
【0084】
図14〜図19で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図14〜図19において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0085】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のスライド手段は、実施例の前後スライドレール26および左右スライドレール30に対応し、
以下同様に、
補強部材は、補強パイプ44に対応し、
車幅方向固定手段は、スライドロック機構35に対応し、
車室側壁部は、サイドパネル19に対応し、
前後方向固定手段は、スライドロック機構36に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0086】
【発明の効果】
この発明によれば、左右スライドレールの一方をシートクッションの前部と前後スライドレールとの間に設け、左右スライドレールの他方をシートクッションの後端後方と前後スライドレールとの間に設けたので、シートクッションの配設高さ、つまり、ヒップポイントの位置を低くし、可及的ヘッドクリアランスをかせぎつつ、シートの前後スライドと左右スライドとを両立させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシートのスライド装置を備えた車両の平面図。
【図2】図1の要部の斜視図。
【図3】サードシートのアレンジ態様を示す斜視図。
【図4】第2列目のシート配設構造を示す正面図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】左右のシートの近接状態を示す正面図。
【図7】図6の部分拡大図。
【図8】シートのスライド装置を示す側面図。
【図9】スライドレールおよびシートフレームの分解斜視図。
【図10】センタシート取外し時の平面図。
【図11】左右のシートの近接状態を示す平面図。
【図12】サードシートのフラット状態を示す平面図。
【図13】左右のシートの後方着座位置を示す平面図。
【図14】シートのスライド装置の他の実施例を示す正面図。
【図15】図14の部分拡大図。
【図16】左右のシートの近接状態を示す正面図。
【図17】図16の部分拡大図。
【図18】シートの離反状態を示す平面図。
【図19】図18のA−A線矢視断面図。
【符号の説明】
6…シート
7…センタシート
8…シートクッション
15F…前部フロア
15R…後部フロア
19…サイドパネル(車室側壁部)
20…ホイールハウス
26…前後スライドレール
27…ロアレール
28…アッパレール
30…左右スライドレール
35,36…スライドロック機構(固定手段)
44…補強パイプ(補強部材)
46…バックル
52…シートベルト
70…第2の前後スライドレール

Claims (8)

  1. 略水平の前部フロアと、該前部フロアの後端より上方に隆起し、かつ上面が略水平に形成された後部フロアと、該後部フロア上方に設けられたシートクッションを有するシートと、該シートを車両の前後方向および車幅方向にスライドさせるスライド手段を備えた車両のシートのスライド装置であって、
    上記スライド手段はシートを車両の前後方向にスライドすべく車両の前後方向に延び、かつシートクッションの車幅方向両側部の略下方に設けられた左右一対の前後スライドレールと、
    上記シートを車幅方向にスライドすべく車幅方向に延び、かつシートクッションの前部および後部の略下方に設けられた前後一対の左右スライドレールとを備え、
    前後スライドレールと左右スライドレールとはその上面が略面一状になるように一方が他方の一対のレール間に設けられた
    車両のシートのスライド装置。
  2. 上記前後スライドレールは後部フロアに固定されたロアレールと、該ロアレール上に設けられたアッパレールとを備え、
    上記左右スライドレールは一対の前後スライドレール間で車幅方向に延びて、両端部が前後スライドレールのアッパレールに連結され、
    シートクッションは左右スライドレールに取付けられた
    請求項1記載の車両のシートのスライド装置。
  3. 上記シートの車幅方向内方または外方への移動時にシートクッションが同側の前後スライドレールをオーバランニングする位置まで移動すべく構成した
    請求項2記載の車両のシートのスライド装置。
  4. 上記シートクッションはシートベルトの一端が着脱自在に連結されるバックルと、
    上記バックルと左右スライドレールとを連通する補強部材とを備えた
    請求項2または3記載の車両のシートのスライド装置。
  5. 上記スライド手段は一対の前後スライドレールの車幅方向中間で、車両前後方向に延びるように設けられた第2の前後スライドレールを備え、
    上記一対の左右スライドレールは第2の前後スライドレールの左右にそれぞれ設けられ、
    上記シートクッションは第2の前後スライドレールを車幅方向に跨いで左右スライドレールに取付けられた
    請求項1記載の車両のシートのスライド装置。
  6. 上記シートは左右に一対設けられ、
    上記左右スライドレールは一対のシートが車幅方向に離反した離反状態と、近接した近接状態とを選択すべくシートの車幅方向の位置を固定する車幅方向固定手段を備えた
    請求項1,2,3,4または5記載の車両のシートのスライド装置。
  7. 上記一対のシートが離反状態の時、一対のシート間に着脱可能に設けられるセンタシートを備えた
    請求項6記載の車両のシートのスライド装置。
  8. 上記車両はシートの後方に車室側壁より車幅方向内方に突出する左右一対のホイールハウスを備え、
    上記前後スライドレールは一対のシートが離反状態においてホイールハウスの前方に位置する通常着座位置と、近接状態において左右のホイールハウス間に位置する後方着座位置とを選択すべくシートの前後方向の位置を固定する前後方向固定手段を備えた
    請求項6記載の車両のシートのスライド装置。
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